JP2019077770A - ポリアセタール樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
〔1〕
(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の含有量が0.001〜0.1質量部であり、(C)ホルムアルデヒド捕捉剤の含有量が0.1質量部未満であるポリアセタール樹脂組成物であって、温度220℃で成形した成形品において、VDA275試験におけるホルムアルデヒド放出量が3mg/kg以下である、ポリアセタール樹脂組成物。
〔2〕
前記(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の融点が200℃以上である、前記〔1〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔3〕
前記(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物がヒドラジン構造を含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔4〕
窒素不含ヒンダードフェノール化合物0.001〜0.3質量部をさらに含有する、前記[1]〜〔3〕のいずれかに1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
〔5〕
残存フッ素濃度が20ppm以下である、前記[1]〜〔4〕のいずれかに1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
なお、本発明は、以下の本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の含有量が0.001〜0.1質量部であり、(C)ホルムアルデヒド捕捉剤の含有量が0.1質量部未満であり、且つ、温度220℃で成形した成形品において、VDA275試験におけるホルムアルデヒド放出量が3mg/kg以下である。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含有される(A)ポリアセタール樹脂は、オキシメチレン基を主鎖に有するポリマーをいい、例えば、ホルムアルデヒド単量体、又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーを単独重合して得られる実質上オキシメチレン単位のみからなるポリアセタールホモポリマー;ホルムアルデヒド単量体、又はその3量体(トリオキサン)や4量体(テトラオキサン)等のホルムアルデヒドの環状オリゴマーと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロルヒドリン、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールなどのグリコール、ジグリコールの環状ホルマール等の環状エーテル、又は環状ホルマールとを共重合させて得られたポリアセタールコポリマー;単官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる分岐を有するポリアセタールコポリマー;多官能グリシジルエーテルを共重合させて得られる架橋構造を有するポリアセタールコポリマー等が挙げられる。
上記ポリアセタールホモポリマーは、例えば、モノマーであるホルムアルデヒド、連鎖移動剤(分子量調節剤)及び重合触媒を、炭化水素系重合溶媒を導入した重合反応器にフィードし、スラリー重合法により重合することにより製造することができる。
この際、原料モノマー、連鎖移動剤、重合触媒には、連鎖移動可能な成分(不安定末端基を生成する成分)、例えば、水、メタノール及び蟻酸等が含まれ得るため、まずこれら連鎖移動可能な成分の含有量を調整することが好ましい。これら連鎖移動可能な成分の含有量は、モノマーであるホルムアルデヒドに対して、好ましくは1〜1000ppmの範囲であり、より好ましくは1〜500ppm、さらに好ましくは1〜300ppmである。連鎖移動可能な成分の含有量を上記範囲に調整することにより、熱安定性に優れるポリアセタールホモポリマーを得ることができる。
分子量調節剤の導入量は、目的とするポリアセタールホモポリマーの特性(特にメルトフローレート)に応じて調節し決定する。例えば、ポリアセタールホモポリマーは、メルトフローレート(MFR値(ISO1133に準拠))が、0.1〜100g/10分の範囲になるようにすることが好ましく、1.0g/10分〜70g/10分の範囲になるようにすることがより好ましい。ポリアセタールホモポリマーのMFR値を上記範囲とすることにより、機械強度に優れるポリアセタールホモポリマーを得ることができる。
[R1R2R3R4M]+X− ・・・(I)
(式(I)中、R1、R2、R3及びR4は、各々、独立してアルキル基を示し、Mは孤立電子対を持つ元素を示し、Xは求核性基を示す。)
R5COOCOR6 ・・・(II)
(式(II)中、R5及びR6は、各々、独立してアルキル基を示す。R5及びR6は、互いに同じであっても異なっていてもよい。)
まず、ポリアセタールコポリマーの製造で用いる材料、具体的には、トリオキサン、環状エーテル及び/又は環状ホルマール、重合触媒、低分子量アセタール化合物、及び有機溶剤について説明する。
トリオキサンとは、ホルムアルデヒドの環状3量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルマリン水溶液を反応させることにより得られる。
このトリオキサンは、水、メタノール、蟻酸、蟻酸メチル等の連鎖移動させる不純物を含有している場合があるので、例えば蒸留等の方法でこれら不純物を除去精製することが好ましい。その場合、連鎖移動させる不純物の合計量をトリオキサン1molに対して、1×10−3mol以下とすることが好ましく、0.5×10−3mol以下とすることがより好ましい。不純物の合計量を上記上限以下まで低減化することにより、重合反応速度を実用上十分に高めることができ、生成したポリマーにおいて優れた熱安定性が得られる。
環状エーテル及び/又は環状ホルマールは、上記トリオキサンと共重合可能な成分であり、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、エピクルロルヒドリン、エピブロモヒドリン、スチレンオキサイド、オキサタン、1,3−ジオキソラン、エチレングリコールホルマール、プロピレングリコールホルマール、ジエチレングリコールホルマール、トリエチレングリコールホルマール、1,4−ブタンジオールホルマール、1,5−ペンタンジオールホルマール、1,6−ヘキサンジオールホルマール等が挙げられる。そして、環状エーテル及び/又は環状ホルマールは、これらの中でも、1,3−ジオキソラン、1,4−ブタンジオールホルマールが好ましい。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
重合触媒としては、ルイス酸に代表されるホウ酸、スズ、チタン、リン、ヒ素及びアンチモン化物が挙げられ、特に、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素系水和物、及び酸素原子又は硫黄原子を含む有機化合物と三フッ化ホウ素との配位錯化合物が好ましい。例えば、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラートが好適例として挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
低分子量アセタール化合物は、重合反応において連鎖移動剤として機能するものであり、分子量が200以下、好ましくは60〜170のアセタール化合物である。具体的には、メチラール、メトキシメチラール、ジメトキシメチラール、トリメトキシメチラールを好適例として挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤としては、重合反応に関与したり悪影響を及ぼしたりするものでなければ特に限定されるものではないが、例えば、ベンゼン(沸点80℃)、トルエン(沸点110.63℃)、キシレン(沸点144℃)のような芳香族炭化水素;n−ヘキサン(沸点69℃)、n−ヘプタン(沸点98℃)、シクロヘキサン(沸点80.74℃)のような脂肪族炭化水素;クロロホルム(沸点61.2℃)、ジクロロメタン(沸点40℃)、四塩化炭素(沸点76.8℃)のようなハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル(沸点35℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、1,4−ジオキサン(沸点101.1℃)のようなエーテル類等が挙げられ、特に、タール状析出物の抑制の観点から、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素を好適例として挙げることができる。これら有機溶剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリアセタールコポリマーの重合方法としては、特に限定されるものではないが、ポリアセタールホモポリマーの製造に関して既述したスラリー重合法の他に、例えば、塊状重合法、メルト重合法が挙げられる。また、ポリアセタールコポリマーの重合は、バッチ式、連続式のいずれも適用可能である。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物を含有する。ここで、窒素含有ヒンダードフェノール化合物とは、その構造式に少なくとも一つの窒素原子を含んでいるヒンダードフェノール化合物を指す。また、ヒンダードフェノール化合物とは、水酸基の少なくとも一つのオルト位に第3級アルキル基を有するフェノール化合物を指す。
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物における(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の含有量は、(A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、0.005質量部以上0.1質量部以下であることが好ましく、0.01質量部以上0.1質量部以下であることがより好ましく、0.03質量部以上0.06質量部以下であることがさらに好ましい。
(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の添加方法としては特に制限はされないが、上述の粗ポリアセタールコポリマーの不安定な末端部の分解除去処理を行う際に同時に添加するのが好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、任意に、(C)ホルムアルデヒド捕捉剤を含有することができる。(C)ホルムアルデヒド捕捉剤としては、例えば、アミノ置換トリアジン化合物、尿素誘導体、ヒドラジド誘導体、アミド化合物、ポリアミド、及び、アクリルアミド重合体等が挙げられる。
上記N−置換尿素としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アルキル基等の置換基を有するメチル尿素、アルキレンビス尿素、アリール置換尿素が挙げられる。上記尿素縮合体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、尿素とホルムアルデヒドの縮合体等が挙げられる。上記ヒダントイン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒダントイン、5,5−ジメチルヒダントイン、5,5−ジフェニルヒダントイン等が挙げられる。上記ウレイド化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アラントイン等が挙げられる。
なお、「モノ(ジ)ヒドラジド」とは、2つのカルボン酸の一方又は両方がヒドラジド化されていることを示す。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、さらに、上述したもののほかに、(D)その他添加剤、例えば、窒素不含酸化防止剤、ギ酸捕捉剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、導電剤、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、染顔料、顔料、あるいは無機充填剤又は有機充填剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
これらの添加剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ギ酸補捉剤は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
また、熱可塑性樹脂としては、上述した樹脂の変性物も含まれる。
無機系顔料とは、樹脂の着色用として一般的に使用されているものをいい、以下に限定されるものではないが、例えば、硫化亜鉛、酸化チタン、硫酸バリウム、チタンイエロー、コバルトブルー、燃成顔料、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩やカーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられる。
有機系顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、縮合ウゾ系、イノン系、フロタシアニン系、モノアゾ系、ジアゾ系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、複素環系、ペンノン系、キナクリドン系、チオインジコ系、ベリレン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系等の顔料である等の顔料が挙げられる。
染顔料は、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
顔料の添加割合は色調により大幅に変わるため明確にすることは難しいが一般的には、ポリアセタール樹脂100質量部に対して、0.05〜5質量部の範囲で用いられる。
前記熱可塑性樹脂以外のその他の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリカーネート樹脂、未硬化のエポキシ樹脂が挙げられる。
その他の樹脂は1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
繊維状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、シリコーン繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、さらにステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属繊維等の無機質繊維が挙げられる。また、繊維長の短いチタン酸カリウムウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等のウイスカー類も含まれる。
粉粒子状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、タルク、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等の珪酸塩;酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;炭酸マグネシウム、ドロマイト等の炭酸塩;その他炭化珪素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔が挙げられる。
中空状充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、金属バルーン等が挙げられる。
これらの充填剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用して使用してもよい。これらの充填剤としては、表面処理された充填剤、未表面処理の充填剤、何れも使用可能であるが、成形表面の平滑性、機械的特性の面から、表面処理剤で表面処理の施された充填剤の使用の方が好ましい場合がある。
表面処理剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、シラン系、チタネート系、アルミニウム系、ジルコニウム系等の各種カップリング処理剤、樹脂酸、有機カルボン酸、有機カルボン酸の塩等、界面活性剤が使用できる。具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリスステアロイルチタネート、ジイソプロポキシアンモニウムエチルアセテート、n−ブチルジルコネート等が挙げられる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、温度220℃で成形した成形品において、VDA275試験におけるホルムアルデヒド放出量が3mg/kg以下である。ここで、VDA275試験におけるホルムアルデヒド放出量とは、ドイツ自動車工業会が定めた規格であり、例えば自動車車室内における密閉された空間内でのポリアセタール樹脂成形品から徐々に放出されるホルムアルデヒドを定量する測定方法である。成形品から放出されるホルムアルデヒド量を上記範囲とすることで、対金属防錆性、特に高温高湿下での対金属防錆性を優れたものとすることができる。同様の観点から、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、上記のホルムアルデヒド放出量が、2.5mg/kg以下であることが好ましく、2.0mg/kg以下であることがより好ましい。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物に含有される(A)ポリアセタール樹脂は、上述の通り、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテラート、三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート等の重合触媒を用いた重合により得られるため、ポリアセタール樹脂組成物には、フッ素が残存し得る。しかしながら、対金属防錆性及び金型汚染性を高める観点から、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物中の残存フッ素濃度は、30ppm以下であることが好ましく、20ppm以下であることがより好ましく、10ppm以下であることがさらに好ましい。
なお、ポリアセタール樹脂組成物中の残存フッ素濃度の調整は、特に制限はされないが、例えば、重合時に添加する重合触媒の種類及び/又は濃度を適宜調節することにより、行うことができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物を製造する方法に特に限定はない。
一般的には、(A)ポリアセタール樹脂と、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物と、必要に応じて(C)ホルムアルデヒド捕捉剤と、必要に応じて上述した所定の成分とを、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラー、V字型ブレンダ―等で混合した後、単軸又は多軸の押出機、加熱ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより得られる。中でも、ベント減圧装置を備えた押出機による混練が、熱安定性、及び生産性の観点から好ましい。また、ポリアセタール樹脂組成物を大量に安定して製造するには、単軸又は二軸押出機が好適に用いられ、この場合には、ペレット化されたポリアセタール樹脂組成物(以下、「ポリアセタール樹脂ペレット」と称することがある。)を得ることができる。
また、予め混合することなく、定量フィーダーなどで各成分を単独あるいは数種類ずつまとめて押出機に連続フィードすることもできる。
また、予め各成分からなる高濃度マスターバッチを作製しておき、押出溶融混練時にポリアセタール樹脂で希釈することもできる。
これらの中でも、箱型乾燥機、回転及び通気回転乾燥機、溝型撹拌乾燥機、流動層乾燥機、多段円盤乾燥、機気流乾燥機が好ましく、さらに好ましくは生産性の観点から流動層乾燥機である。
乾燥温度としては、熱媒体の温度として80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。また、乾燥時間としては、ポリアセタール樹脂ペレットの品温が100℃以上に到達した時点を開始時間とした場合に、0〜10時間が好ましく、0〜6時間がより好ましく、1〜6時間がさらに好ましい。
そこで、(C)ホルムアルデヒド捕捉剤の添加量を本実施形態のポリアセタール樹脂組成物における含有量と同じとし、且つ、成形品から放出されるホルムアルデヒドの量を効果的に低減することができる具体的な操作について、以下に説明するが、これらの操作に限定されることはない。
第1に、ポリアセタールコポリマーの重合反応の前段階において、上記環状エーテル及び/又は環状ホルマールと上記重合触媒と上記有機溶剤とを予め混合(プレ混合)し、プレ混合物を得て、その後、上記プレ混合物とトリオキサンとを、重合反応機へ供給する操作である。このようなプレ混合を行うことにより、混合物の急激な粘性上昇を抑制できるとともに、後の重合反応の均一性が向上し、長期安定運転を確実に実施することができる。さらには、成形品からのホルムアルデヒド放出量が少ないポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
なお、トリオキサンを重合反応機へ供給する際には、さらに上述した低分子量アセタール化合物を重合反応機へ供給することができる。
第2に、ポリアセタールコポリマーの末端安定化を、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物を同時に添加しながら行う操作である。
通常、ポリアセタール樹脂の酸化・熱劣化を抑制するため、該ポリアセタール樹脂を製造は、窒素等の不活性雰囲気下で行われることが知られている。しかしながら、製造工程系内への微量酸素の進入を抑制することは、非常に困難である。そこで、ポリアセタールコポリマーの末端安定化を(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の存在下で行うことで、系内に進入した微量酸素による酸化・熱劣化の影響を低減し、(A)ポリアセタール樹脂の熱安定性を向上させることができ、成形品からのホルムアルデヒド放出量が少ないポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
第3に、ポリアセタール樹脂ペレットの品温が100℃以上に到達した時点を開始時間とした場合に、乾燥時間を、1〜6時間とする操作である。これにより、成形品からのホルムアルデヒド放出量が少ないポリアセタール樹脂を得ることができる。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、成形し、成形品として使用することができる。成形する方法については、特に限定はなく、公知の成形方法、例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法の何れかによって成形することができる。これらの中でも、安定生産性の観点からは、射出成形法が好ましい。
また、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物は、ホットランナー金型を用いた成形などの、材料が高温に長時間曝される金型成形法に用いて、連続成形を行ったとしても、金型の汚染が少ない。
本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の成形品は、対金属防錆性に優れ、そのため、様々な用途の成形品として使用することが可能である。例えば、ギア、カム、スライダー、レバー、軸、軸受け及びガイド等に代表される機構部品、アウトサート成形の樹脂部品またはインサート成形の樹脂部品(シャーシ、トレー、側板部品)、プリンター又は複写機用部品、デジタルカメラ又はデジタルビデオ機器用部品、音楽、映像又は情報機器用部品、通信機器用部品、電気機器用部品、電子機器用部品用に用いられる。
さらに、本実施形態のポリアセタール樹脂組成物の成形品は、住宅設備機器に代表される工業部品としても好適に使用できる。
なお、実施例及び比較例において適用した測定・評価方法を下記に示す。
<ポリアセタール樹脂ペレットの残存フッ素濃度の測定>
作製したポリアセタール樹脂ペレット10gと1NのHCl20mlとを密閉ガラス容器に入れ、120℃、3時間滅菌器で加熱分解した後、フッ素イオン電極(HORIBA製)を用いてフッ素濃度を測定した。
作製したポリアセタール樹脂ペレットを、(株)東芝製IS−100GN射出成形機を用いて、シリンダー温度220℃、金型温度80℃、射出圧力60MPa、射出時30秒、冷却時間15秒により成形した。成形開始から5ショットまでの成形品は廃棄し、6ショット目の成形品の試験片について、下記に示す条件(VDA275法)により、成形品から放出されるホルムアルデヒド量を測定した。
※VDA275法:
ポリエチレン容器に蒸留水50mLと規定されたサイズ(縦100mm×横40mm×厚み3mm)の試験片とを入れ密閉し、60℃で3時間加熱しながら蒸留水中にホルムアルデヒドを抽出し、その後室温まで冷却した。
冷却後、ホルムアルデヒドを吸収した蒸留水5mLに、アセチルアセトン0.4質量%水溶液5mL、及び酢酸アンモニウム20質量%水溶液5mLを加えて混合液を得、40℃で15分間加熱を行い、ホルムアルデヒドとアセチルアセトンとの反応を行った。
さらに、当該混合液を室温まで冷却後、UV分光光度計を用い、412nmの吸収ピークより蒸留水中のホルムアルデヒド量を定量した。
成形品から放出されるホルムアルデヒド量(mg/kg)は、下記式により求めた。
成形品から放出されるホルムアルデヒド量(mg/kg)
=蒸留水中のホルムアルデヒド量(mg)/測定に用いたポリアセタール樹脂成形品の質量(kg)
作製したポリアセタール樹脂ペレットを、図1に示す構成を有するホットランナー金型成形機を用い、下記(a)成形条件に従って成形し、縦40mm×横40mm×厚み3mmの試験片を作製した。
(a)成形条件
・射出成形機 :東芝機械(株)IS−100GN
・シリンダー設定温度 :220℃
・マニホールド設定温度:230℃(ノズル自動開閉式)
・金型設定温度 :80℃
・金型タイプ :ホットランナータイプ
・成形サイクル :射出時間/冷却時間=20/20秒
作製した試験片と、縦40mm×横40mm×厚み3mmのS45C(炭素鋼)とを、蒸留水50mLが入ったポリエチレン広口瓶の中に吊るし、密閉した。なお、試験片とS45C(炭素鋼)とは、1cmの隙間を空けて吊るした。この密閉した容器を、90℃×3週間の条件で加熱した。その後、容器の中からS45C(炭素鋼)を取り出して表面状態を観察し、対金属防錆性を以下の基準で評価した。
1:炭素鋼表面の錆が、試験片と向き合っている面の90%以上の面積範囲で観察された。
2:炭素鋼表面の錆が、試験片と向き合っている面の70%以上90%未満の面積範囲で観察された。
3:炭素鋼表面の錆が、試験片と向き合っている面の50%以上70%未満の面積範囲で観察された。
4:炭素鋼表面の錆が、試験片と向き合っている面の5%以上50%未満の面積範囲で観察された。
5:炭素鋼表面の錆が、観察されなかったか、或いは、試験片と向き合っている面の5%未満の面積範囲で観察された。
作製したポリアセタール樹脂ペレットを、図1に示す構成を有するホットランナー金型成形機を用い、下記(b)成形条件に従って成形した。そして、このときのモールドデポジッド性を、下記(c)の評価基準で評価した。
(b)成形条件
・射出成形機 :東芝機械(株)IS−100GN
・シリンダー設定温度 :220℃
・マニホールド設定温度:230℃(ノズル自動開閉式)
・金型設定温度 :80℃
・金型タイプ :ホットランナータイプ
・金型サイズ :70×60mm×3mm(溶融樹脂流路末端先端部ガス抜き部無、ウエルド部有)
・成形サイクル :射出時間/冷却時間=20/20秒
(c)評価基準
以下の評価基準に基づいて、成形開始から1000ショット目と2000ショット目の金型キャビティ内のモールドデポジッド付着状況を観察した。
1:付着物が、金型キャビティ内の20%以上の範囲で観察された。
2:付着物が、金型キャビティ内の15%以上20%未満の範囲で観察された
3:付着物が、金型キャビティ内の10%以上15%未満の範囲で観察された。
4:付着物が、金型キャビティ内の5%以上10%未満の範囲で観察された。
5:付着物が、観察されなかったか、或いは、金型キャビティ内の5%未満の範囲で観察された。
実施例及び比較例に用いた原料成分を、下記に示す。
B−1:1,2−ビス[3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(Irganox MD1024)、融点:226℃
B−2:N,N’−ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンアミド](Irganox 1098)、融点:158℃
B−3:1,3,5−トリス[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(Irganox 3114)、融点:220℃
C−1:アクリルアミド重合体(1級アミド量:69.3mol%、平均粒子径:5.2μm)
C−2:アクリルアミド重合体(1級アミド量:50.2mol%、平均粒子径:5.4μm)
C−3:ナイロン6−6(平均粒子径:10.5μm)
C−4:セバシン酸ジヒドラジド
C−5:アジピン酸ジヒドラジド
C−6:メラミン
C−7:アラントイン
D−1:トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート](Irganox 245)
D−2:1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’,−テトラメチル−3,9− [2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物
D−3:2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス (α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
<溶融サイドフィード用ポリアセタールコポリマーの調製>
ジャケット付き二軸パドル式連続重合反応機((株)栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8)を、80℃に調整した。まず、重合触媒としての三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート0.1g/hr、及び有機溶媒としてのシクロヘキサン(沸点:80.74℃)6.5g/hrを温度28℃にて連続的に混合し、次に環状エーテル及び/又は環状ホルマールとしての1,3−ジオキソラン120.9g/hrを、温度25℃、混合時間2分にて連続的にプレ混合し、プレ混合物を得た。なお、プレ混合には、スタティックミキサーを用いた。
ジャケット付き二軸パドル式連続重合反応機((株)栗本鐵工所製、径2B、L/D=14.8)を、80℃に調整した。まず、重合触媒としての三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート0.1g/hr、及び有機溶媒としてのシクロヘキサン(沸点:80.74℃)6.5g/hrを温度28℃にて連続的に混合し、次に環状エーテル及び/又は環状ホルマールとしての1,3−ジオキソラン120.9g/hrを、温度25℃、混合時間2分にて連続的にプレ混合し、プレ混合物を得た。なお、プレ混合には、スタティックミキサーを用いた。
一方、溶融サイドフィード用ポリアセタールコポリマー10質量部に、(C)ホルムアルデヒド捕捉剤としての(C−1)アクリルアミド重合体0.05質量部を加えて均一に混合し、二軸押出機に取り付けた溶融サイドフィード単軸30mm押出機より供給し、溶融混練した。そして、溶融混練したものの全量を溶融状態のまま二軸押出機の減圧脱揮ゾーン以降に供給して、末端安定化されたポリアセタールコポリマーと合わせて溶融混練した後、ペレット化した。
なお、本段落に記載された製法を「製法1」と称することとする。
表1又は2に示す組成に変更し、及び/又は、以下に示す、実施例1の方法との相違点1〜10の少なくともいずれかを採用したこと以外は、実施例1と同様な操作を行い、ポリアセタール樹脂ペレットを作製した。作製したポリアセタール樹脂ペレットを用いて、上述した測定・評価を行った。結果を表1及び2に示す。
プレ混合物を得る際に、重合触媒としての三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート、有機溶媒としてのシクロヘキサン(沸点:80.74℃)を連続的に混合する際の温度を、28℃に代えて15℃とした。
プレ混合を行わなかった。具体的には、プレ混合を経て粗ポリアセタールコポリマーを得る代わりに、重合触媒としての三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラート0.1g/hr、及び有機溶媒としてのシクロヘキサン6.5g/hrを温度10℃にて連続的に混合した混合液と、低分子量アセタール化合物としてのメチラール2.4g/hr、及び環状エーテル及び/又は環状ホルマールとしての1,3−ジオキソラン120.9g/hrを、トリオキサン3500g/hrに連続的に混合した混合液とを、別々の配管にて重合反応機に連続的に供給し重合を行い、粗ポリアセタールコポリマーを得た。
重合触媒としての三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラートのフィード量を0.1g/hrから0.23g/hrとし、プレ混合物のフィード量を127.5g/hrから127.68g/hrとすることで、トリオキサン1molに対する重合触媒としての三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラートの添加量を、0.13×10−4molから0.30×10−4molとした。
相違点2において、重合触媒としての三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラートのフィード量を0.1g/hrから0.23g/hrとすることで、トリオキサン1molに対する重合触媒としての三フッ化ホウ素−ジ−n−ブチルエーテラートの添加量を、0.13×10−4molから0.30×10−4molとした。
製法1に代えて、下記の製法2を用いた。
製法2:
得られた末端安定化前のポリアセタールコポリマー100質量部に、表1又は2に記載の種類及び量の(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物を均一に混合し、200℃に設定された、末端安定化ゾーンと減圧脱揮ゾーンとを有する30mm二軸押出機に、トップフィード口より供給した。該二軸押出機では、供給された末端安定化前のポリアセタールコポリマーを末端安定化ゾーンで加熱溶融しながら、末端安定化剤としてのトリエチルアミン0.8%水溶液を3.0質量部フィードし、該ポリアセタールコポリマーの末端安定化を行った。次の減圧脱揮ゾーンでは、末端安定化時に発生したホルムアルデヒド等を減圧操作により系外に除去するとともに、ペレット化した。
次に、該ペレット100質量部に、表1又は2に記載の種類及び量の(C)ホルムアルデヒド捕捉剤を加えて均一に混合し、再度、30mm二軸押出機に、トップフィード口より供給し、溶融混練した後、ペレット化した。
製法1に代えて、下記の製法3を用いた。
製法3:
製法1において、トップフィード口からの(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の供給を行わず、且つ、溶融サイドフィードからの(C)ホルムアルデヒド捕捉剤の供給を行わなかったこと以外は、製法1と同様とした。
製法1に代えて、下記の製法4を用いた。
製法4:
製法1において、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物として、表1又は2に記載の種類及び量のものを用い、且つ、溶融サイドフィードからの(C)ホルムアルデヒド捕捉剤の供給を行わなかったこと以外は、製法1と同様とした。
製法1に代えて、下記の製法5を用いた。
製法5:
製法1において、トップフィード口からの(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の供給を行わず、且つ、(C)ホルムアルデヒド捕捉剤として、表1又は2に記載の種類及び量のものを用いたこと以外は、製法1と同様とした。
製法1に代えて、下記の製法6を用いた。
製法6:
得られた末端安定化前のポリアセタールコポリマー90質量部を、200℃に設定された、末端安定化ゾーンと減圧脱揮ゾーンとを有する30mm二軸押出機に、トップフィード口より供給した。該二軸押出機では、供給された末端安定化前のポリアセタールコポリマーを末端安定化ゾーンで加熱溶融しながら、末端安定化剤としてのトリエチルアミン0.8%水溶液を3.0質量部フィードし、該ポリアセタールコポリマーの末端安定化を行った。次の減圧脱揮ゾーンでは、末端安定化時に発生したホルムアルデヒド等を減圧操作により系外に除去した。
一方、溶融サイドフィード用ポリアセタールコポリマー10質量部に、表1又は2に記載の種類及び量の(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物及び(C)ホルムアルデヒド捕捉剤を加えて均一に混合し、二軸押出機に取り付けた溶融サイドフィード単軸30mm押出機より供給し、溶融混練した。そして、溶融混練したものの全量を溶融状態のまま二軸押出機の減圧脱揮ゾーン以降に供給して、末端安定化されたポリアセタールコポリマーと合わせて溶融混練した後、ペレット化した。
ペレットを品温100℃の状態で乾燥する時間を、6時間に代えて、1時間、又は10分間とした。
(C)ホルムアルデヒド捕捉剤を用いる際に、(C)ホルムアルデヒド捕捉剤に加えて、表1に記載の種類及び量の(D)その他添加剤を併用した。
一方、表2に示したように、比較例1〜36で得られたポリアセタール樹脂組成物は、樹脂組成物が高温に長時間曝される成形方法により得られた成形品の耐防錆性が劣り、連続成形でのモールドデポジッド性も劣った。
Claims (5)
- (A)ポリアセタール樹脂100質量部に対し、(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の含有量が0.001〜0.1質量部であり、(C)ホルムアルデヒド捕捉剤の含有量が0.1質量部未満であるポリアセタール樹脂組成物であって、温度220℃で成形した成形品において、VDA275試験におけるホルムアルデヒド放出量が3mg/kg以下である、ポリアセタール樹脂組成物。
- 前記(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物の融点が200℃以上である、請求項1に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 前記(B)窒素含有ヒンダードフェノール化合物がヒドラジン構造を含む、請求項1又は2に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 窒素不含ヒンダードフェノール化合物0.001〜0.3質量部をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
- 残存フッ素濃度が20ppm以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアセタール樹脂組成物。
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