JP2019019295A - スチレン系樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形加工性に優れるスチレン系樹脂を提供する。【解決手段】GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上であると共に、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上であり、テトラヒドロフラン不溶分が0.1重量%以下(0を含む)であり、分子鎖中に多官能性単量体由来の成分を含まないことを特徴とするスチレン系樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、スチレン系樹脂に関する。
スチレン系樹脂は、寸法安定性、成形安定性などに優れ、剛性が高く、安価なことから、種々の成形品の原料として用いられている。一般に、スチレン系樹脂の分子量を高めることで、樹脂の溶融張力を高めることができるが、高分子量であるほど、樹脂の流動性が低下し、成形加工性及び生産性が低下し易かった。
かかる問題を解消するために、種々の試みが行われている。
例えば、線状ポリスチレンと多分岐状ポリスチレンとを含有してなるスチレン系樹脂組成物であって、(1)そのGPC−MALS法により求められる重量平均分子量(絶対重量平均分子量)が25万〜75万であり、(2)該重量平均分子量を横軸とし、又GPC−MALS法により求められる該樹脂組成物の慣性半径を縦軸とした対数グラフに於ける傾きが0.35〜0.45となるスチレン系樹脂組成物を用いて、溶融張力が高く、流動性が高く、深さと開口部との比の広い範囲の容器を製造することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
スチレン系樹脂の溶融張力を高める方法として、スチレン系樹脂の分子鎖を分岐状にすることが知られている。しかし、分子鎖を分岐状にするために欠かせない多官能性単量体は、樹脂の合成時にゲル化を招くおそれがある。かかる問題を解消するために、例えば、ゲル化を抑制し、超高分子量の高分岐型ポリスチレンおよび線状ポリスチレンからなるスチレン系樹脂組成物を製造する方法として、次の方法が開示されている。すなわち、スチレンを必須とするビニル系モノマーに、平均して1分子中にビニル基を2以上有し、分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル化合物共重合体を、重量基準で50ppm〜5000ppm添加し、水中で懸濁重合を行うことにより、該溶剤可溶性多官能ビニル共重合体と該ビニル系モノマーが重合して生じる高分岐型超高分子量共重合体と該ビニル系モノマーが重合して生じる線状重合体とを含むスチレン系樹脂組成物を製造する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
また、発泡成形品の軽量化と、成形時の生産性を向上し得る発泡用ポリスチレン系樹脂組成物を得るために、発泡用ポリスチレン系樹脂組成物を、多官能ビニル系芳香族化合物とスチレン系単量体由来の成分を基材樹脂として含み、前記多官能ビニル系芳香族化合物が、100以上、1000未満の分子量を有し、前記基材樹脂が、前記スチレン系単量体中に多官能ビニル系芳香族化合物を50〜500ppm含む単量体混合物を重合させることにより得、
前記基材樹脂を、(1)測定条件200℃において、以下の関係式を満たすメルトフローレート(MFR:g/10分)と溶融張力値(MT:cN)
MT≧−3×ln(MFR)+12
(2)以下の関係式を満たす0.01rad/sと100rad/sの角周波数ωでの損失正接tanδの比
4≦tanδ(ω=0.01(rad/s))/tanδ(ω=100(rad/s))≦20
を有するものとすることが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
更に、発泡成形品へのスチレン及びそのオリゴマーの溶出を低減させつつ、成形時の生産性を向上し得る押出発泡用ポリスチレン系樹脂組成物を得るために、押出発泡用のポリスチレン系樹脂組成物を、(1)分子量分布におけるトップピーク分子量(Mp)が14万〜22万;(2)Mp以下の分子量の割合が全体の40〜55%;(3)z+1平均分子量が80万〜350万;(4)スチレンダイマーとスチレントリマーとからなるオリゴマーの含有量が2000ppm以下;及び(5)スチレンの含有量が1000ppm以下の物性を有するものとすることが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
特開2005−281405号公報 特開2014−189767号公報 特開2015−193761号公報 特開2015−193764号公報
しかし、特許文献1〜4のいずれに開示されているスチレン系樹脂も、長鎖分岐度が低く、重量平均分子量も数十万と、100万に満たないため、スチレン系樹脂の溶融張力が不十分であると共に、成形加工時の分子配向性にも改善の余地があった。また、多官能性単量体を用いて長鎖分岐度の高い分岐状スチレン系樹脂を製造しようとすると、流動性が低下するため、成形加工性に優れなかった。また、長鎖分岐度をさらに高めようと重合度を高めると、ゲル化してしまい、得られたスチレン系樹脂が多くのゲル分を含んでしまうという問題点があった。
本発明は、成形加工性に優れるスチレン系樹脂を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は次のとおりである。
<1> GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上であると共に、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上であり、テトラヒドロフラン不溶分が0.1重量%以下(0を含む)であり、分子鎖中に多官能性単量体由来の成分を含まないことを特徴とするスチレン系樹脂である。
<2> GPC−MALS法により求められるZ平均分子量Mz’が300万以上である<1>に記載のスチレン系樹脂である。
<3> スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量が0.1重量%以下である<1>または<2>に記載のスチレン系樹脂である。
<4> 200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度が2100Pa・s以下であると共に、200℃における溶融張力が350mN以上であり、前記溶融粘度に対する前記溶融張力の比(溶融張力/溶融粘度〔mN/(Pa・s)〕)は、0.20以上である<1>〜<3>のいずれか1つに記載のスチレン系樹脂である。
本発明によれば、成形加工性に優れるスチレン系樹脂を提供することができる。
スチレン系樹脂をGPC−MALS法により測定したときに得られるDebyeプロットの一例である。
<スチレン系樹脂>
本発明のスチレン系樹脂は、GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上であると共に、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上であるスチレン系樹脂である。さらに、本発明のスチレン系樹脂中のテトラヒドロフラン不溶分の割合が0.1重量%以下(0を含む)である。そして、本発明のスチレン系樹脂の分子鎖中に多官能性単量体由来の成分を含まない。すなわち、スチレン系樹脂の分子鎖中の多官能性単量体由来の成分の含有量が0重量%である。
ここで、GPC−MALS法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)と多角度光散乱検出器(Multi Angle Light Scattering:MALS)とを組み合わせた手法である。GPC−MALS法により、スチレン系樹脂の絶対分子量と分子サイズを測定することができ、測定結果から、スチレン系樹脂の長鎖分岐度を求めることができる。
スチレン系樹脂の溶融張力を向上し、強度を向上させる手段として、高分子量化が有用であるが、単純に高分子量化すると、樹脂の流動性が低下し、成形加工性が悪化するという問題があった。流動性を維持したまま強度を向上させる手段として、分子鎖に分岐構造を導入することが有用である。分岐構造を有する樹脂は、分子鎖同士の絡み合いの程度が大きくなるため溶融張力が高くなり、延伸加工時に破断しにくくなる。
しかし、従来の分岐構造を有するスチレン系樹脂は、分岐剤としてジビニルベンゼン等の多官能性単量体が用いられ、製造されたため、多官能性単量体が重合した部分に分岐点が集中し、ミクロゲルが生成しやすいという問題があった。分岐構造を増やすために、多官能性単量体の添加量を増加させると、ゲル化が起きやすくなるので、溶融張力を一定レベル以上に高めることは困難であった。
これに対し、本発明のスチレン系樹脂は、分岐点の数が多く(高分岐度)、高分子量であると共に、分岐点間が離れている構造であることから、溶融張力が高く、かつ流動性にも優れると考えられる。
本発明のスチレン系樹脂について、GPC−MALS法により分子解析をすると、GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上であり、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上である。
まず、GPC−MALS法の基本原理について説明する。
〔GPC−MALS法の基本原理〕
スチレン系樹脂を、テトラヒドロフラン等の溶媒に溶解してスチレン系樹脂溶液を調製し、GPC測定にかけると、分子サイズが大きいポリマーほど先に溶出することから、分子サイズにより分けられる。引き続き、分けられたスチレン系樹脂溶液をMALS測定にかけることにより、分子サイズにより分けられたスチレン系樹脂の重量平均分子量(Mw’)及び分子サイズに相当する二乗平均回転半径<R >を算出することができる。
具体的には、GPCで分子サイズにより分けられたスチレン系樹脂溶液に、レーザー光を照射し、レイリー散乱によってスチレン系樹脂溶液から生じた散乱光強度を計測する。得られた測定値から、以下の式(1)及び図1に示すDebyeプロットを用いてMw’及び<R >を算出する。
:光学パラメーター(4π (dn/dc)/[λ ])
:溶媒の屈折率
dn/dc:屈折率の濃度増分
λ:真空中での入射光の波長
:アボガドロ数
c:サンプル濃度(g/mL)
R(θ):過剰散乱のレイリー比
Mw’:重量平均分子量(g/mole)
P(θ):干渉因子
P(θ)=(1−2{(4π/λ)sin(θ/2)}<R >/3!+・・・)
λ:測定系における波長 λ/n
<R >:二乗平均回転半径
:第二ビリアル係数
図1は、樹脂濃度の異なるスチレン系樹脂溶液について、GPC−MALS法で測定をし、縦軸(Y軸)を「Kc/R(θ)」、横軸(X軸)を「sin(θ/2)」としてプロットしたDebyeプロットの一例である。
Debyeプロットにより得られる回帰直線と縦軸との切片(Y軸切片)から、GPCで分子サイズにより分けられたスチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’、回帰直線の初期勾配から、該スチレン系樹脂の二乗平均回転半径<R >が求まる。
GPC測定において、各溶出時間における濃度は非常に希薄であるため,第二ビリアル係数Aを0として解析すると、GPCで分子サイズにより分けられたスチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’と二乗平均回転半径<R >は、それぞれ、下記式(2)、(3)により求めることができる。
*c/R:角度θ=0°におけるK*c/R(θ)
dy/dx:回帰直線の初期勾配
本発明においては、島津製作所社製Prominence LC−20AD(2HGE)/WSシステム、Wyatt Technology社製の多角度光散乱検出器 DAWN HELEOS IIを用いて、Wyatt社の解析ソフト ASTRAにより解析を行い、各分子サイズのスチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’及び二乗平均回転半径<R >から、スチレン系樹脂の数平均分子量(Mn’)、重量平均分子量(Mw’)、Z平均分子量(Mz’)、スチレン1000単位あたりの長鎖分岐度を求める。
この解析により得られる数平均分子量Mn’が、本発明における「GPC−MALS法により求められる数平均分子量Mn’」であり、重量平均分子量Mw’が、本発明における「GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’」であり、Z平均分子量Mz’が、本発明における「GPC−MALS法により求められるZ平均分子量Mz’」である。
測定条件は、以下のとおりとすることが好ましい。
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、
流量:1.0ml/min、
カラム:東ソー社製TSKgel HHR−H×1本と、TSKgel GMHHR×2本と、を直列に接続する。
GPC−MALS法により求められる数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’は、スチレン系樹脂の絶対分子量である。
一方、直鎖ポリスチレンを標準物質として、GPC法により求められる数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、Z平均分子量Mzは、スチレン系樹脂の相対分子量である。
また、本発明において、スチレン系樹脂の収縮因子gは、次のようにして求める値を用いる。
本発明の分岐構造を有するスチレン系樹脂の二乗平均回転半径<R と直鎖スチレン系樹脂の二乗平均回転半径<R の比を収縮因子gとして、下記式(4)〜(8)に基づき、収縮因子gを求めることができる。そして、収縮因子gから、長鎖分岐度Bを求めることができる。本発明においては、スチレン系樹脂が3本鎖分岐の構造であると仮定して長鎖分岐度を求める。
収縮因子g、1分子あたりの長鎖分岐度Bm,w、スチレン1000単位あたりの長鎖分岐度Bm,1000は、下記式(4)〜(8)で求められる。
上記式において、gは区間iにおける収縮因子;Bm,iは区間iにおける長鎖分岐度;cは区間iにおける濃度である。
本発明のスチレン系樹脂のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は0.1重量%以下(0を含む)である。上述したように、本発明のスチレン系樹脂は、高い分子量を有し、かつ多くの長鎖分岐を有していても、分子鎖中に多官能性単量体に由来する成分を含んでいないため、前記THF不溶分を達成することができる。スチレン系樹脂中のTHF不溶分の割合は0.05重量%以下であることが好ましく、0.01重量%以下であることがより好ましい。
スチレン系樹脂中のスチレン系樹脂1gを精秤して、テトラヒドロフラン30mlを加え、23℃で24時間浸漬後、5時間振とうし、静置する。次いで上澄みをデカンテーションにより取り除き、再度テトラヒドロフラン10mlを加えて静置し、上澄みをデカンテーションにより取り除き、23℃で24時間乾燥し、乾燥後の重量を求め、次式によりテトラヒドロフラン不溶分を求める。
テトラヒドロフラン不溶分(%)=[乾燥後の不溶分重量/試料の重量]×100
〔重量平均分子量Mw’〕
本発明のスチレン系樹脂は、GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上である。
スチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’が100万以上であることで、押出成形、発泡成形、ブロー成形等の成形時において樹脂が破断しにくくなる。スチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’は、120万以上が好ましく、155万以上がより好ましく、180万以上が更に好ましい。
また、溶融時の流動性の観点から、スチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’は500万以下であることが好ましい。
スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’は、70万以上であることが好ましく、85万以上であることがより好ましく、100万以上であることが更に好ましい。
また、スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’は300万以下であることが好ましい。
〔Z平均分子量Mz’〕
本発明のスチレン系樹脂のZ平均分子量Mz’は、300万以上であることが好ましく、350万以上であることが好ましく、500万以上であることがより好ましい。
また、スチレン系樹脂のZ平均分子量Mz’は1500万以下であることが好ましい。
(重量平均分子量Mw’と数平均分子量Mn’との比Mw’/Mn’)
本発明のスチレン系樹脂のGPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’とGPC−MALS法により求められる数平均分子量Mn’との比(Mw’/Mn’)は、1.5〜2.0であることが好ましい。
(Z平均分子量Mz’と重量平均分子量Mw’との比Mz’/Mw’)
本発明のスチレン系樹脂のGPC−MALS法により求められるZ平均分子量Mz’とGPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’との比(Mz’/Mw’)は、2.0〜3.5であることが好ましい。
〔収縮因子g
本発明のスチレン系樹脂のGPC−MALS法により求められる収縮因子gは、0.80未満であることが好ましく、0.75以下であることがより好ましく、0.70未満であることがさらに好ましく、0.67以下であることが特に更に好ましい。その下限は概ね0.4程度であることが好ましい。
(1分子当たりの長鎖分岐度Bm,w
本発明のスチレン系樹脂のGPC−MALS法により求められる1分子当たりの長鎖分岐度Bm,wは、4〜20であることが好ましく、5〜18であることがより好ましい。
本発明のスチレン系樹脂のGPC−MALS法により求められるスチレン1000単位当たりの長鎖分岐度Bm,1000は0.3以上であり、好ましくは0.32以上、さらに好ましくは0.35以上、特に好ましくは0.4以上である。その上限は概ね2である。
(重量平均分子量Mwと重量平均分子量Mw’との比Mw/Mw’)
本発明のスチレン系樹脂は、直鎖ポリスチレンを標準物質として、GPC法により求められる重量平均分子量Mwと、GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’との比(Mw/Mw’)が、0.5以下であることが好ましい。
本発明のスチレン系樹脂は、GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上であり、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上であれば、特に制限されるものではなく、スチレン単量体の単独重合体、スチレン単量体と他の単量体とのスチレン共重合体であってもよい。
スチレン系樹脂が共重合体である場合、その共重合体に含まれるスチレン単量体に由来する構造単位は少なくとも50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
スチレン系樹脂として、具体的には、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が例示できる。
本発明のスチレン系樹脂は、スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量が0.1重量%以下であることが好ましい。
スチレンダイマー及びスチレントリマー(「残存スチレンオリゴマー」又は「残留オリゴマー」と称することがある)は、スチレン系樹脂の製造過程で除去しきれずに残存する成分である。スチレン系樹脂が残存スチレンオリゴマーを含有していると、発泡成形品から残存スチレンオリゴマーが抽出されることがあるため、スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量は0.1重量%以下であることが好ましく、より少ないことが好ましい。
本発明のスチレン系樹脂は、200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度が2100Pa・s以下であることが好ましい。
本発明のスチレン系樹脂は、既述のように、重量平均分子量Mw’が100万以上と高分子量でありながらも、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上であることから、従来の分岐状スチレン系樹脂よりも、分子鎖中に多くの長鎖分岐鎖が存在している。そのため、流動性を高くすることができ、200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度を2100Pa・s以下とし易く、200℃における溶融張力を400mNとしやすい。
200℃、剪断速度100sec−1におけるスチレン系樹脂の溶融粘度は、2000Pa・s以下であることがより好ましく、1900Pa・s以下であることが更に好ましい。当該溶融粘度の下限は特に制限されないが、1000Pa・s以上であることが好ましい。
200℃におけるスチレン系樹脂の溶融張力は、400mN以上であることが好ましく、500mN以上であることがより好ましく、600mN以上であることがさらに好ましい。
前記溶融粘度に対する前記溶融張力の比(溶融張力/溶融粘度〔mN/(Pa・s)〕)は、0.20以上であることが好ましく、0.30以上であることがより好ましく、0.40以上であることがさらに好ましい。
以上の中でも、本発明のスチレン系樹脂は、GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上であると共に、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上であり、テトラヒドロフラン不溶分が0.1重量%以下(0を含む)であり、分子鎖中に多官能性単量体由来の成分を含まず(多官能性単量体由来の成分の分子鎖中の含有量が0重量%)、かつ、GPC−MALS法により求められる収縮因子gが0.80未満であることが好ましい。
<スチレン系樹脂の製造方法>
本発明のスチレン系樹脂の製造方法は、スチレン系樹脂を、多官能性単量体を用いずに、GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上、さらに、テトラヒドロフラン不溶分の割合が0.1重量%以下(0を含む)となるように製造し得る製造方法であれば、特に制限されず、種々の方法を用いることができる。
従来の分岐構造を有するスチレン系樹脂は、分岐剤としての多官能性単量体の存在下でスチレン単量体の重合を行うことにより製造されていた。しかし、このような重合方法では、多官能性単量体が重合した部分が過度に高分子量化し、高分子量側に多くの分岐鎖を有するスチレン系樹脂が得られやすくなるため、分岐構造を導入しても、スチレン系樹脂の溶融張力を一定レベル以上に高めにくい。
また、より高度に分岐化したスチレン系樹脂を製造するために、多官能性単量体の添加量を多くすると、反応系内にて多官能性単量体同士が近接することで、重合中にゲル化が生じ易くなる。そのため、分岐化剤(多官能性単量体等)の添加量が制限されてしまい、流動性を維持しながら、溶融張力が高いスチレン系樹脂を製造することは難しい。
以下の方法により、多官能性単量体を使用せずに、分子量が高く、かつ高度な長鎖分岐構造を有するスチレン系樹脂を製造することができる。
すなわち、本発明のスチレン系樹脂を製造する方法(以下、「本発明の製造方法」と称することがある)は、スチレン系樹脂を含む核粒子を水性媒体中に分散させる分散工程と、
前記水性媒体中に、有機過酸化物を含む重合開始剤及びスチレン単量体を添加し、実質的にスチレン単量体の重合が進行しない温度で前記核粒子に前記重合開始剤及び前記スチレン単量体を含浸させる含浸工程と、
前記水性媒体を昇温して、前記スチレン単量体の重合を開始させる重合開始工程と、
前記水性媒体中に、スチレン単量体を追加して添加し、前記核粒子に該スチレン単量体を含浸させて、スチレン系樹脂にスチレン単量体をグラフト重合させる追加含浸重合工程と、
を含み、
前記含浸工程におけるスチレン単量体の添加量は、前記核粒子とスチレン単量体の総添加量の合計100重量部に対して3〜25重量部であり、
前記追加含浸重合工程におけるスチレン単量体の添加量は、前記核粒子とスチレン単量体の総添加量の合計100重量部に対して50〜90重量部であるとともに、前記追加含浸重合工程における前記核粒子中のスチレン単量体の含有量を10重量%以下に維持することが好ましい。
本発明の製造方法は、得られたスチレン系樹脂を洗浄する工程等の他の工程を、更に含んでいてもよい。
本発明の製造方法は、主として、核粒子を水性媒体中に分散させる分散工程と、核粒子内に重合開始剤及びスチレン単量体を含浸させる含浸工程、スチレン単量体の重合を開始する重合開始工程と、水性媒体中にスチレン単量体を追加添加して核粒子に含浸させ、スチレン系樹脂にスチレン単量体をグラフト重合させる追加含浸重合工程とを有する。本発明では、追加含浸重合工程で、重合の反応場となる核粒子内におけるスチレン単量体の濃度を特定の濃度に保つことで、多官能性単量体を用いずに、GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上であると共に、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上であるスチレン系樹脂を得ることができる。
通常、反応場には、重合開始剤と多くのスチレン単量体とが存在し、重合開始剤から生成した開始剤ラジカルやポリマー鎖の生長末端ラジカルは、スチレン単量体のビニル基と優先的に反応するため、直鎖状のスチレン系樹脂が形成され易いと考えられる。
一方、反応場のスチレン単量体の濃度が低い場合、開始剤ラジカルやポリマー鎖の生長末端ラジカルはスチレン単量体との重合反応だけではなく、ポリマー鎖の水素引抜反応を生じやすくなると考えられる。その結果、水素引抜反応により発生したポリマー鎖上のラジカルに、スチレン単量体がグラフト重合したり、あるいは、ポリマー鎖の生長末端ラジカルが再結合したりすることで、ポリマー鎖に分岐鎖が生成すると考えられる。更に、ポリマー鎖に分岐鎖が生成した位置は、立体的に混み合った状況にあることから、生成した分岐点の近くには更なる分岐鎖は生じにくいと考えられる。つまり、立体障害が生じない程度に、分岐点から離れたポリマー鎖上で、再び水素引き抜き反応が生じ、分岐鎖が生成すると考えられる。そのため、分岐点間が適度に離れながら、分岐鎖を生成するため、ゲル化が生じることなく、多くの分岐鎖を有するスチレン系樹脂が得られるものと考えられる。
以下、本発明の製造方法の各工程について詳細に説明する。
〔分散工程〕
分散工程では、スチレン系樹脂を含む核粒子を水性媒体中に分散させることが好ましい。
核粒子の水性媒体中への分散方法は、特に制限されず、例えば、核粒子と共に、水性媒体に懸濁剤と、必要に応じて界面活性剤を添加し、混合すればよい。
(核粒子)
核粒子は、スチレン系樹脂を含む。
スチレン系樹脂としては、スチレン単量体の重合体、スチレン単量体と他の単量体との共重合体、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。その共重合体に含まれるスチレン単量体に由来する構造単位は少なくとも50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
スチレン系樹脂として、具体的には、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が例示できる。スチレン系樹脂は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。これらのスチレン系樹脂の中でも、水素引き抜き反応を生じ易く、スチレン単量体と共に分岐鎖を生じ易い点から、ポリスチレンからなることが好ましい。
核粒子は、スチレン系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよいが、スチレン系樹脂を70重量%以上含んでいることが好ましく、85重量%以上含んでいることがより好ましく、スチレン系樹脂からなることが更に好ましい。
核粒子の平均粒子径は、0.3〜1.2mmであることが好ましい。核粒子の平均粒子径が0.3mm以上であることで、得られる分岐状スチレン系樹脂に含まれる細粒の発生量が低減でき、1.2mm以下であることで比表面積が大きくなり核粒子へのスチレン単量体の含浸性が向上する。核粒子の平均粒子径は、0.3〜1.0mmであることがより好ましく、0.3〜0.5mmであることが更に好ましい。
核粒子の平均粒子径は、63%体積平均粒子径を意味する。
(水性媒体)
水性媒体としては、通常、脱イオン水等の水を用いることができるが、核粒子が溶解しない限度において、アルコール等の水溶性有機溶剤を含んでいてもよい。
(界面活性剤)
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1つを有することが好ましい。具体的には、アルキルスルホン酸塩(例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウム)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、ポリオキシアルキルエーテルリン酸エステル、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸塩等が挙げられる。
界面活性剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
更に、界面活性剤と共に、例えば塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等の電解質を用いてもよい。
(懸濁剤)
懸濁剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の親水性高分子:第三リン酸カルシウム、硝酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、酸化アルミニウム、タルク、カオリン、ベントナイト等の難水溶性無機塩等が挙げられる。
懸濁剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。親水性高分子又は難水溶性無機塩のいずれか一方又は両方を、それぞれ1種のみ用いてもよいし、それぞれ2種以上を用いてもよい。
懸濁剤として難水溶性無機塩を使用する場合には、アルキルスルホン酸ナトリウムやアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤を併用することが好ましい。
懸濁剤の使用量は、核粒子とスチレン単量体の総添加量の合計100重量部に対して、0.01〜5重量部であることが好ましい。難水溶性無機塩からなる懸濁剤とアニオン性界面活性剤とを併用する場合は、核粒子とスチレン単量体の総添加量の合計100重量部に対して、懸濁剤を0.05〜3重量部、アニオン性界面活性剤を0.0001〜0.5重量部用いることが好ましい。
〔含浸工程〕
含浸工程では、分散工程により水性媒体中に分散させた核粒子と、必要に応じて懸濁剤、界面活性剤等を含む水性媒体中に、有機過酸化物を含む重合開始剤及びスチレン単量体を添加し、実質的にスチレン単量体の重合が進行しない温度で核粒子に重合開始剤及びスチレン単量体を含浸させることが好ましい。
ここで、「実質的にスチレン単量体の重合が進行しない温度」とは、有機過酸化物が実質的に分解しない温度であり、有機過酸化物の分解を抑制するという観点から、有機過酸化物の10時間半減期温度をT1/2としたとき、含浸工程における水性媒体の温度を(T1/2−15)℃以下とすることが好ましく、(T1/2−18)℃以下とすることがより好ましい。核粒子へのスチレン単量体の含浸性の観点から、含浸工程における水性媒体の温度を70℃以上とすることが好ましく、75℃以上とすることがより好ましい。
また、含浸工程の水性媒体の温度は前記範囲内であれば一定でもよく、徐々に上昇させるなど、変化させてもよい。
含浸工程の時間は、スチレン単量体と重合開始剤とを核粒子中に十分に含浸させるという観点から、0.5〜2.0時間程度とすることが好ましく、1.0〜2.0時間とすることがより好ましい。
含浸工程におけるスチレン単量体の添加量は、核粒子とスチレン単量体の総添加量の合計100重量部に対して、3〜25重量部であることが好ましく、5〜20重量部であることがより好ましい。含浸工程において、スチレン単量体の添加量が前記範囲である場合、核粒子を十分に可塑化させることができ、重合開始剤を核粒子に十分に含浸させやすくなると共に、核粒子外でスチレン単量体が重合し細粒が発生することを抑制することができる。
(重合開始剤)
重合開始剤は、少なくとも有機過酸化物を含むことが好ましい。
有機過酸化物としては、例えば過酸化ベンゾイル、ジラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
これらの有機過酸化物は1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
重合開始剤としては、10時間半減期温度T1/2が85〜120℃の有機過酸化物を用いることが好ましく、T1/2が90〜110℃のものを用いることがより好ましい。なお、2種類以上の有機過酸化物を重合開始剤として用いる場合、10時間半減期温度の最も低い有機過酸化物の10時間半減期温度をT1/2とする。また、有機過酸化物としては、これらの温度範囲を満足し、かつ水素引抜能の高いもの、例えば、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどのt−ブトキシラジカルを生成する有機過酸化物や、ジクミルパーキサイドなどのクミルオキシラジカルを生成する有機過酸化物を用いることがより好ましい。
重合開始剤は、有機過酸化物以外の重合開始剤を含んでいてもよいが、水素引き抜き反応を起こし易くする観点から、重合開始剤は、有機過酸化物を70重量%以上含むことが好ましく、85重量%以上含むことが好ましく、有機過酸化物からなることが更に好ましい。
重合開始剤の添加量は、核粒子とスチレン単量体の総添加量の合計100重量部に対して、0.1〜2.0重量部であることが好ましい。この範囲であることで生産性を過度に低くせず、水素引き抜き反応を起こし易い。重合開始剤の添加量は、核粒子とスチレン単量体の総添加量の合計100重量部に対して、0.2〜1.5重量部であることがより好ましい。
(水性媒体中の酸素濃度)
水性媒体として、30℃における酸素濃度が4mg/L以上の水性媒体を用いることが好ましい。水性媒体の酸素は、水性媒体中での重合禁止剤として機能しており、細粒の発生を阻害する。従って、水性媒体中の酸素濃度が高いほど、スチレン系樹脂の収率が向上する。30℃における酸素濃度は5mg/L以上であることがより好ましい。
また、水性媒体に、水溶性の重合禁止剤、例えば亜硝酸ナトリウムを30〜200ppm添加することによっても細粒発生を抑制することができる。
〔重合開始工程〕
重合開始工程では、重合開始剤とスチレン単量体が含浸された核粒子を分散している水性媒体の温度を昇温し、スチレン単量体の重合を開始させることが好ましい。具体的には、有機過酸化物が実質的に分解する温度とすることにより、スチレン単量体の重合を開始させることが好ましい。生産性の観点から、水性媒体の温度を(T1/2−10)℃以上の温度とすることが好ましく、(T1/2−5)℃以上の温度とすることがより好ましい。
前記温度までの昇温時間は特に限定されるものではないが、昇温中に核粒子中のスチレン単量体の重合を進め、後述する追加含浸重合において核粒子中のスチレン単量体の含有量を10重量%以下に制御しやすいことから、3時間以上とすることが好ましく、5時間以上とすることがより好ましい。一方、生産性の観点からは10時間以内とすることが好ましい。
〔追加含浸重合工程〕
追加含浸重合工程では、水性媒体中、すなわち、重合開始工程を経て、核粒子内でスチレン単量体の重合が始まっている核粒子を含む水性媒体中に、スチレン単量体を追加して添加して、核粒子にスチレン単量体を含浸させて重合させることが好ましい。この際、スチレン単量体の添加量は、追加含浸重合工程において、核粒子とスチレン単量体の総添加量の合計100重量部に対して、50〜90重量部であることが好ましく、55〜85重量部であることがより好ましい。追加含浸重合工程においてスチレン単量体の添加量が前記範囲であると、十分に分岐鎖を生成させることができると共に、核粒子外でスチレン単量体同士が重合するのを抑制でき、スチレン系樹脂の収率を高めることができる。そして、追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン単量体の含有量(濃度)を10重量%以下に維持するようにスチレン単量体を断続的に又は連続的に添加することが好ましい。
重合開始工程を経ることにより、スチレン単量体が核粒子内を反応場として重合を開始している。そして、追加含浸重合工程において、核粒子中のスチレン単量体の含有量を10重量%以下に維持することで、スチレン単量体の重合だけではなく、スチレン系樹脂にスチレン単量体のグラフト重合が生じやすくなり、分岐鎖を生成する。
なお、本発明の目的効果を阻害しない範囲において、追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン単量体の含有量は10重量%を超えることができる。核粒子中のスチレン単量体の含有量が10重量%を超える時間は、追加含浸重合工程の時間のうち2割以下であることが好ましく、1割以下であることがより好ましく、追加含浸重合工程全てにおいて核粒子中のスチレン単量体の含有量を10重量%以下とすることが最も好ましい。分岐鎖を高度に生成させるという観点から、追加含浸重合工程の時間は、150分以上とすることが好ましく、より好ましくは180分以上である。生産効率の観点から、追加含浸重合工程の時間の上限は600分程度とすることが好ましい。
追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン単量体の含有量は8重量%以下であることが好ましく、6重量%以下であることがより好ましい。
なお、追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン単量体の含有量は、重合に用いる重合開始剤の化学的特性、重合温度から求めたスチレンの重合速度等をもとに計算することが可能であり、その計算値をもとに所望の含有量となるようにスチレン単量体の追加添加のタイミング及び添加速度(添加割合)を調整することにより、追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン単量体の含有量を調整することができる。また、実際の核粒子中のスチレン単量体の含有量は、重合中の核粒子を反応系から抜き出し、後述する方法により求めることができる。
核粒子中のスチレン単量体の含有量が低い条件ほど、重合開始反応だけではなく水素引抜反応を起こしやすくなり、分岐度が向上すると考えられる。また、核粒子に対してスチレン単量体の比率が高い場合、絶対分子量及び分岐度が向上し易い。
既述のように、核粒子の平均粒子径を1.2mm以下とすることで、比表面積が大きくなり、スチレン単量体の含浸性が向上し、分岐を生成しやすくなるものと考えられる。
追加含浸重合工程の温度条件は特に制限されないが、水素引き抜き反応を生じ易くする観点から、追加含浸重合工程における水性媒体の温度は、(T1/2−10)℃〜(T1/2+20)℃であることが好ましく、(T1/2−5)℃〜(T1/2+10)℃であることがより好ましい。
また、追加含浸重合工程の水性媒体の温度は前記範囲内であれば一定でもよく、徐々に上昇させるなど変化させてもよい。
追加含浸重合工程に加え、本発明の製造方法は、更に、追加含浸重合工程後にスチレン系樹脂粒子中に残存するスチレン単量体を重合させる残重合工程、得られたスチレン系樹脂に付着した懸濁剤、界面活性剤等を水で洗浄する洗浄工程、スチレン系樹脂表面に帯電防止剤等の機能性成分を被覆する被覆工程等を含んでいてもよい。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。「部」及び「%」は、特に記載しない限り重量基準である。オートクレーブ内の温度は、水性媒体の温度を意味する。
〔核粒子の作製〕
(製造例1)
撹拌装置を備えた内容積が1mのオートクレーブに、脱イオン水350kg、懸濁剤として第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製、20.5%スラリー)2.1kg、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(10%水溶液)0.158kg、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸二ナトリウム(花王社製、ペレックスSSH 10%水溶液)0.053kg、電解質として酢酸ナトリウム0.535kgを投入した。
ついで、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.975kg(日本油脂社製、パーブチルO)及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート0.284kg(化薬アクゾ社製、トリゴノックス117)、重合禁止剤として4−tert−ブチルカテコール15.4gを、スチレン390kgに溶解させ、110rpmで撹拌しながら、これをオートクレーブ内に供給した。オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間15分かけて90℃まで昇温した。
90℃到達後、100℃まで5時間かけて昇温した。100℃到達後、1時間30分かけて115℃まで昇温した。115℃で2時間40分保持し、その後40℃まで2時間かけて冷却した。90℃までの昇温中、60℃到達の時点で、懸濁助剤として過硫酸カリウム1.95gをオートクレーブ内に投入した。
冷却後、内容物を取り出し、スチレン系樹脂粒子の表面に付着した第三リン酸カルシウムを硝酸により溶解させた後、遠心分離機で脱水、洗浄し、さらに気流乾燥装置で粒子の表面に付着した水分を除去して、スチレン系樹脂粒子を得た。
得られたスチレン系樹脂粒子を篩にかけて、直径が0.5〜1.3mmの粒子(平均粒子径0.8mm)を取り出し、核粒子1とした。
なお、スチレン系樹脂粒子(前記核粒子1及び後述する核粒子2)の平均粒子径d63は、日機装株式会社の粒度分布測定装置「ミリトラック JPA」により測定した。
(製造例2)
撹拌装置を備えた内容積が1mのオートクレーブに、脱イオン水380kg、懸濁剤として第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製、20.5%スラリー)6.15kg、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(10%水溶液)0.499kg、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸二ナトリウム(花王社製、ペレックスSSH 10%水溶液)0.166kg、懸濁助剤として過硫酸カリウム4gを供給した。
次いで、重合開始剤としてt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.440kg(日本油脂社製、パーブチルO)及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート0.520kg(化薬アクゾ社製、トリゴノックス117)をスチレン360kgに溶解させ、110rpmで撹拌しながら、これをオートクレーブに供給した。オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間15分かけて90℃まで昇温した。
90℃到達後、120℃まで6時間かけて昇温し、120℃で3時間保持し、40℃まで3時間かけて冷却した。
冷却後、内容物を取り出し、スチレン系樹脂粒子の表面に付着した第三リン酸カルシウムを硝酸により溶解させた後、遠心分離機で脱水、洗浄し、さらに気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去して、スチレン系樹脂粒子を得た。
得られたスチレン系樹脂粒子を篩にかけて、直径が0.3〜0.5mmの粒子(平均粒子径0.4mm)を取り出し、核粒子2とした。
〔スチレン系樹脂の製造〕
(実施例1)
[分散工程]
撹拌装置を備えた内容積が1.5mのオートクレーブに、脱イオン水421kg、ピロリン酸ナトリウム2.63kg、硝酸マグネシウム6.56kgを供給し、塩交換によりオートクレーブ内で懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムを合成した。界面活性剤としてアルキルスルホン酸ナトリウム(花王社製、ラテムルPS、40%水溶液)0.131kg、核粒子として製造例1で得られたスチレン系樹脂粒子(核粒子1)112kgをオートクレーブに供給した後、オートクレーブ内を窒素置換した。具体的には窒素によりオートクレーブ内を0.3MPa(G)まで加圧し、その後オートクレーブ内の圧力が大気圧になるまでオートクレーブ内の気体を放出した。
[含浸工程]
次いで、50rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温した。80℃に到達後、脱イオン水84kg、アルキルスルホン酸ナトリウム(花王社製、ラテムルPS、40%水溶液)0.171kg、スチレン(スチレン単量体)80kg、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(化薬アクゾ社製、トリゴノックス117;BE、10時間半減期温度T1/299.0℃)1.58kgの混合物をホモジナイザーにより乳化液に調製し、乳化液をオートクレーブ内に供給した。その後、オートクレーブ内を0.1MPa(G)になるまで窒素で加圧し、80℃で1時間保持した。
[重合開始工程]
その後、2時間かけて105℃まで昇温した。
[追加含浸重合工程]
105℃到達後、5.5時間保持した。オートクレーブ内の温度が105℃に到達時から5時間10分かけて、スチレン(スチレン単量体)254kgを0.8kg/分の割合でオートクレーブ内に連続的に添加した。
[残重合工程]
追加含浸重合工程後、水性媒体を120℃まで2時間かけて昇温し、120℃で3時間保持することで未反応のスチレン単量体を重合させた。
[冷却工程]
残重合工程後、6時間かけて水性媒体を35℃まで冷却した。
オートクレーブ内を冷却後、オートクレーブから取り出したスチレン系樹脂粒子を希硝酸で洗浄して樹脂粒子表面に付着した懸濁剤を溶解除去した後、水洗を行い、さらに遠心分離機で脱水した。帯電防止剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル0.01重量部(スチレン系樹脂100重量部に対する値)で被覆後、気流乾燥機により樹脂粒子表面の水分を除去した。
(実施例2)
実施例1とは、以下の点を変更した。具体的には、核粒子を、核粒子1から製造例2で得られたスチレン系樹脂粒子(核粒子2)66.9kgに変更した。また、追加含浸重合工程において、105℃での保持時間を6時間10分に変更し、追加添加するスチレンの量を299kgに変更し、スチレンを6時間10分かけて0.8kg/分の割合で連続的に添加した。
(実施例3)
含浸工程後80℃から2時間かけて100℃に昇温し、追加含浸重合工程の温度を100℃に変更したことを除いては実施例1と同様にスチレン系樹脂を作製した。
(実施例4)
実施例1とは、以下の点を変更した。具体的には、分散工程において、核粒子の供給量を55.6kgに変更した。含浸工程において、スチレンの量を26.8kgに変更し、重合開始剤をt−ヘキシルパーオキシベンゾエート(日油社製、パーヘキシルZ;HZ、10時間半減期温度T1/299.4℃)6.3kgに変更した。追加含浸重合工程において、105℃での保持時間を8時間12分に変更し、追加添加するスチレンの量を366kgに変更した。
(実施例5)
重合開始剤の量を6.3kgから4.75kgに変更した以外は実施例4と同様にスチレン系樹脂を作製した。
(比較例1)
含浸工程後80℃から2時間かけて90℃に昇温し、追加含浸重合工程の温度を90℃に変更したことを除いては実施例1と同様にスチレン系樹脂を作製した。スチレン単量体の追加添加開始時、添加開始から2.5時間経過時、追加添加終了時のそれぞれにおいて、後述する方法によりスチレン系樹脂粒子中のスチレン含有量を測定したところ、核粒子中のスチレン含有量は、追加添加開始時は19重量%、添加開始から2.5時間経過時は25重量%、追加添加終了時は24重量%であった。
(比較例2)
実施例1とは、以下の点を変更した。具体的には、分散工程において、核粒子(核粒子1)の供給量を105kgに変更した。含浸工程の温度を75℃に変更し、75℃に到達後、スチレンの量を53kgに変更し、重合開始剤を過酸化ベンゾイル(日本油脂社製 ナイパーBW、水希釈粉体品、純度75重量%;BPO、10時間半減期温度T1/273.6℃)1.79kg、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(化薬アクゾ社、トリゴノックス117;BE、10時間半減期温度T1/299.0℃)0.18kgに変更し、分岐剤(多官能性単量体)としてジビニルベンゼン11gを添加した乳化液をオートクレーブ内に供給した。その後、75℃で2時間保持した。75℃で2時間保持した後、温度はそのままにして2時間30分かけてスチレン321kgとジビニルベンゼン89gの混合物を2.1kg/分の割合で連続的に添加した。スチレン単量体の追加添加開始時、添加開始から1.5時間経過時、追加添加終了時のそれぞれにおいて、後述する方法によりスチレン系樹脂粒子中のスチレン含有量を測定したところ、核粒子中のスチレン含有量は、追加添加開始時は8重量%、添加開始から1.5時間経過時は58重量%、追加添加終了時は66重量%であった。次いで、2時間かけて108℃まで昇温し、20分かけて112℃まで昇温し、2時間かけて125℃まで昇温した。その後、125℃で1時間30分保持し、6時間かけて35℃まで冷却した。
(比較例3)
スチレン系樹脂として、市販品(DIC社製ポリスチレン「HP780AN」)を用いて評価を行なった。
(比較例4)
スチレン系樹脂として、市販品(PSジャパン製ポリスチレン「G0002」)を用いて評価を行なった。
<評価>
下記方法にて実施例及び比較例のスチレン系樹脂の物性を測定した。結果を表1及び2に示す。
〔残存スチレン単量体(残留モノマー)の測定〕
スチレン系樹脂1gを精秤し、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶解させ、ガスクロマトグラフィー(GC)で測定し、検量線で校正して、残存スチレンを定量した。なお、ガスクロマトグラフィーの測定条件は次の通りである。
使用機器:島津製作所社製ガスクロマトグラフGC−9A
カラム充填剤:
〔液相名〕PEG−20M
〔液相含浸率〕25重量%
〔担体粒度〕60/80メッシュ
〔担体処理方法〕AW−DMCS(水洗、焼成、酸処理、シラン処理)
カラム材質:内径3mm、長さ3000mmのガラスカラム
キャリアガス:N
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
定量:内部標準法
〔残存スチレンオリゴマー(スチレンダイマー+スチレントリマー;残留オリゴマー)の測定〕
スチレン系樹脂約0.1gを精秤し、テトラヒドロフラン10mlに溶解させ、23℃のn−ヘプタン約250ml中に滴下して樹脂を析出させた。樹脂を濾別した濾液をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。なお、ガスクロマトグラフ質量分析の測定条件は次の通りである。
使用機器:島津製作所社製ガスクロマトグラフ質量分析計GC/MS−QP5050A
カラム:J&W Scientific社製DB−5MS、0.25mm×30m(固定相:5%ジフェニル−95%ジメチル−ポリシロキサン)
キャリアガス:ヘリウム、カラム流量1.6ml/min
試料注入量:1μL
〔スチレン系樹脂のメルトフローレート測定〕
JIS K7210−1:2014に基づき、温度190℃、荷重2.16kgの条件でスチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)を測定した。
〔溶融粘度の測定〕
東洋精機社製キャピログラフ1Dにより、200℃、せん断速度100sec−1におけるスチレン系樹脂の溶融粘度を測定した。測定には内径1mm、長さ10mmのオリフィスを用いた。得られたスチレン系樹脂から無作為に採取した5つの測定用試料に対して溶融粘度の測定を行い、それらの測定値の算術平均値をスチレン系樹脂の溶融粘度とした。
〔溶融張力(MT;Melt Tension)の測定〕
東洋精機社製キャピログラフ1Dにより、200℃におけるスチレン系樹脂の溶融張力を測定した。測定には内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスを用いた。ピストン降下速度10mm/分にてオリフィスからストランド状に押出された溶融状態の樹脂を、荷重測定部を通して引取り速度5m/分にて引取り、荷重を測定した。なお、得られたスチレン系樹脂を均質化するために、東洋精機社製ラボプラストミルを用いて行い、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度200℃の条件で混練したものを測定用試料として用いた。なお、スチレン系樹脂の溶融張力が高すぎて単体では溶融張力が測定できない場合には、得られたスチレン系樹脂にPSジャパン製ポリスチレン「680」をそれぞれ75重量%、50重量%の割合で混練したスチレン系樹脂組成物を測定試料として用いてそれらの溶融張力を測定し、外挿することにより「680」の配合量が0重量%のときの溶融張力を求め、その値をスチレン系樹脂の溶融張力とした。
〔テトラヒドロフランの不溶分(THF不溶分)〕
スチレン系樹脂1gを精秤して、テトラヒドロフラン30mlを加え、23℃で24時間浸漬後、5時間振とうし、静置した。次いで上澄みをデカンテーションにより取り除き、再度テトラヒドロフラン10mlを加えて静置し、上澄みをデカンテーションにより取り除き、23℃で24時間乾燥し、乾燥後の重量を求め次式によりテトラヒドロフラン不溶分を求めた。
テトラヒドロフラン不溶分(%)=[乾燥後の不溶分重量/試料の重量]×100
〔ポリスチレン換算分子量(GPC)〕
直鎖ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により、スチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)を測定した。具体的には、東ソー社製のHLC−8320GPC EcoSECを用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、流量:0.6ml/分、試料濃度:0.1wt%という条件で測定した。カラムとしては、TSKguardcolumn SuperH−H×1本、TSK−GEL SuperHM−H×2本を直列に接続して用いた。すなわち、スチレン系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、GPCで分子量を測定した。そして、測定値を標準ポリスチレン(直鎖)で校正して、スチレン系樹脂の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、Z平均分子量Mzをそれぞれ求めた。
〔絶対分子量(GPC−MALS)〕
GPC−MALS法により、スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’を測定した。
具体的には、島津製作所社製Prominence LC−20AD(2HGE)/WSシステム、Wyatt Technology社製の多角度光散乱検出器 DAWN HELEOS IIを用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、流量1.0ml/minという条件で測定した。カラムとしては、東ソー社製TSKgel HHR−H×1本、TSKgel GMHHR×2本、を直列に接続して用いた。測定の解析は、Wyatt社の解析ソフト ASTRAにより行い、スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’を求めた。屈折率の濃度増分dn/dcには0.185ml/gの値を用いて解析を行った。
〔収縮因子及び長鎖分岐度〕
既述の式(4)〜(8)に基づき、収縮因子g、長鎖分岐度Bm,w、長鎖分岐度Bm,1000を求めた。本解析では3本鎖分岐と仮定して長鎖分岐度を求めた。直鎖ポリスチレンとしては、製造例1で得られたスチレン系樹脂のデータを用いた。
〔追加含浸重合工程中のスチレン単量体添加中の核粒子中のスチレン含有量の測定方法〕
スチレン単量体の追加添加開始、開始2.5時間目、終了時のそれぞれの系において、反応器の温度を10分以内に30℃まで冷却し、重合中のスチレン系樹脂を取り出した。
スチレン系樹脂をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、ガスクロマトグラフィー(GC)で測定し、検量線で校正して、スチレン系樹脂中の残存スチレンを定量した。
なお、ガスクロマトグラフィーの測定条件は次の通りである。
使用機器:島津製作所製のガスクロマトグラフGC−9A
カラム充填剤:
〔液相名〕PEG−20M
〔液相含浸率〕25重量%
〔担体粒度〕60/80メッシュ
〔担体処理方法〕AW−DMCS(水洗、焼成、酸処理、シラン処理)
カラム材質:内径3mm、長さ3000mmのガラスカラム
キャリアガス:N
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
定量:内部標準法
表1及び2からわかるように、市販のスチレン系樹脂(比較例3)では、重量平均分子量Mw’が100万未満であり、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.26と低すぎることで、溶融時の流動性は高いものの、溶融張力が小さくなった。
重量平均分子量Mw’が100万を超える比較例2のスチレン系樹脂は、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.26と低すぎることで、溶融時の流動性が下がった。
比較例2と同様に重量平均分子量Mw’が100万を超える比較例1は、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.14と低すぎることで、溶融粘度が小さく、溶融時の流動性は上がるものの、溶融張力も小さくなった。
これに対し、実施例1〜5のスチレン系樹脂は、いずれも溶融粘度が2100Pa・sを下回り、流動性に優れ、かつ、400mN以上の高い溶融張力を有した。
<積層発泡シートの熱成形性の評価>
〔積層発泡シートの製造〕
(押出1)
ポリスチレン系樹脂として、実施例1で得たスチレン系樹脂35重量部と、比較例4で用いたPSジャパン株式会社製ポリスチレン「G0002」65重量部とを混合したポリスチレン系樹脂100重量部に対してタルク1.8重量部を配合した原料を、内径90mmの第一押出機と内径120mmの第二押出機が連結されたタンデム型押出機の第一押出機に供給し、220℃でポリスチレン系樹脂を溶融させると共に両者を混練することにより溶融樹脂組成物とし、該溶融樹脂組成物にイソブタン65重量%とノルマルブタン35重量%の混合ブタン発泡剤を圧入してさらに混練し、発泡性溶融樹脂組成物とした。なお、発泡剤の添加量は、上記ポリスチレン系樹脂100重量部に対して2.7重量部とした。
次いで、第二押出機にて、上記発泡性溶融樹脂組成物を冷却して樹脂温度を165℃(第二押出機とダイとの間に測定)に調整し、該発泡性溶融樹脂組成物を吐出量105kg/hrで、口径68mm、間隙0.67mmの円環状のスリットを通して円筒状に押出して発泡させ、その直後に、この円筒状の発泡体の内面側及び外面側から温度25℃の冷却エアを吹き付けつつ、円筒状の発泡体の内面を直径270mmの円柱状冷却装置(マンドレル)の円柱側面に沿わせて8.2m/minの速度で引取りながら、マンドレルの後部に取り付けられたカッターで円筒状の発泡体を押出方向に切り開くことにより、見掛け密度91kg/m、厚み2.2mm、幅850mmの発泡シートを得た。なお、円筒状発泡体の内面側に吹き付ける冷却エアの風量を0.6m/min、外面側に吹き付ける冷却エアの風量を1.6m/minとした。
なお、発泡シートの見掛け密度は、発泡シートの重量を、発泡シートの見掛けの体積で割算することにより求めた。発泡シートの見掛けの体積は、水中に発泡シートを水没させ、その水位上昇から求めた。
得られた発泡シートを23℃の雰囲気下で3週間養生した後、押出ラミネート方式により該発泡シートの片面に坪量120g/mの耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)樹脂層を積層接着させて積層発泡シートを得た。
(押出2)
押出1とは、以下の点を変更して積層発泡シートを得た。具体的には、用いるポリスチレン系樹脂を、比較例3で用いたDIC株式会社製ポリスチレン「HP780AN」35重量部と、比較例4で用いたPSジャパン株式会社製ポリスチレン「G0002」65重量部との混合物に変更した。
(押出3)
押出1とは、以下の点を変更して積層発泡シートを得た。具体的には、用いるポリスチレン系樹脂を、比較例4で用いたPSジャパン株式会社製ポリスチレン「G0002」100重量部に変更した。
〔熱成形性の評価〕
株式会社浅野研究所製、品番:FKS−0631−10の成形機を用いて、マッチモールド真空成形により、積層発泡シートのHIPS樹脂層面が成形体の外面側となるように、積層発泡シートを熱成形して丼形状の成形体(開口部直径140mm、深さ75mm)を得た。積層発泡シートを熱成形するにあたり、積層発泡シートを加熱する際の加熱炉のヒータ温度は、HIPS樹脂層積層面側を310℃、HIPS樹脂層非積層面側を260℃とし、加熱時間は、11秒、13秒、15秒、17秒、19秒と変えて、それぞれ積層発泡シートの熱成形を行なった。
熱成形性は以下の通り評価した。評価結果を表3に示す。
○:成形体に、表面の裂け、伸びムラ等の成形不具合が見られず、成形性良好である。
△:成形体に、表面の裂け、伸びムラ等の成形不具合がわずかに見られる。
×:成形体に、表面の裂け、伸びムラ等の成形不具合が多く見られる。
表3からわかるように、実施例のスチレン系樹脂を用いて製造した押出1による積層発泡シートは、熱成形性評価「○」の条件(加熱時間)が3点あり、熱成形可能範囲が広いことがわかる。
本発明のスチレン系樹脂は、流動性が高く、かつ、溶融張力が高いため、押出成形、発泡成形、ブロー成形等に用いたり、これらの成形時に、加工助剤として市販のスチレン系樹脂に混合してスチレン系樹脂組成物とすることで、延伸加工時に樹脂を破断しにくくすることができる。

Claims (4)

  1. GPC−MALS法により求められる重量平均分子量Mw’が100万以上であると共に、スチレン1000単位当たりの長鎖分岐度が0.3以上であり、テトラヒドロフラン不溶分が0.1重量%以下(0を含む)であり、分子鎖中に多官能性単量体由来の成分を含まないことを特徴とするスチレン系樹脂。
  2. GPC−MALS法により求められるZ平均分子量Mz’が300万以上である請求項1に記載のスチレン系樹脂。
  3. スチレンダイマー及びスチレントリマーの合計含有量が0.1重量%以下である請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂。
  4. 200℃、剪断速度100sec−1における溶融粘度が2100Pa・s以下であると共に、200℃における溶融張力が350mN以上であり、前記溶融粘度に対する前記溶融張力の比(溶融張力/溶融粘度〔mN/(Pa・s)〕)は、0.20以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂。
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