JP7089177B2 - スチレン系樹脂 - Google Patents

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Description

本発明は、分岐構造を有するスチレン系樹脂に関する。
スチレン系樹脂は、寸法安定性、成形安定性などに優れ、剛性が高く、安価なことから、種々の成形品の原料として用いられている。一般に、スチレン系樹脂の分子量を高めることで、樹脂の溶融張力を高めることができるが、高分子量であるほど、樹脂の流動性が低下し、成形加工性及び生産性が低下し易かった。かかる問題を解消するために、種々の試みが行われている。
例えば、線状ポリスチレンと多分岐状ポリスチレンとを含有してなるスチレン系樹脂組成物であって、(1)そのGPC-MALS法により求められる重量平均分子量(絶対重量平均分子量)が25万~75万であり、(2)重量平均分子量を横軸とし、又GPC-MALS法により求められる樹脂組成物の慣性半径を縦軸とした対数グラフにおける傾きが0.35~0.45となるスチレン系樹脂組成物を用いて、深さと開口部との比の広い範囲の容器を製造することが開示されている(例えば特許文献1参照)。
スチレン系樹脂の溶融張力を高める方法として、スチレン系樹脂の分子鎖を分岐状にすることが知られている。しかし、分子鎖を分岐状にするためには多官能性単量体の使用が欠かせず、多官能性単量体は樹脂の合成時にゲル化を招くおそれがある。かかる問題を解消するために、例えば、ゲル化を抑制し、超高分子量の高分岐型ポリスチレン及び線状ポリスチレンからなるスチレン系樹脂組成物を製造する方法として、次の方法が開示されている。
すなわち、スチレンを必須成分とするビニル系モノマーに、平均して1分子中にビニル基を2以上有し、分岐構造を有する溶剤可溶性多官能ビニル化合物共重合体を、重量基準で50ppm~5000ppm添加し、水中で懸濁重合を行うことにより、溶剤可溶性多官能ビニル化合物共重合体とビニル系モノマーが重合して生じる高分岐型超高分子量共重合体とビニル系モノマーが重合して生じる線状重合体とを含むスチレン系樹脂組成物を製造する方法が開示されている(例えば特許文献2参照)。
また、発泡成形品の軽量化と、成形時の生産性を向上し得る発泡用ポリスチレン系樹脂組成物を得るために、発泡用ポリスチレン系樹脂組成物を、多官能ビニル系芳香族化合物とスチレン系単量体由来の成分を基材樹脂として含み、多官能ビニル系芳香族化合物が、100以上、1000未満の分子量を有し、基材樹脂が、スチレン系単量体中に多官能ビニル系芳香族化合物を50~500ppm含む単量体混合物を重合させることにより得、基材樹脂を、測定条件200℃において、以下の関係式(α)を満たすメルトフローレート(MFR:g/10分)と溶融張力値(MT:cN)、以下の関係式(β)を満たす0.01rad/sと100rad/sの角周波数ωでの損失正接tanδの比を有するものとすることが開示されている(例えば特許文献3参照)。
MT≧-3×ln(MFR)+12 ・・・(α)
4≦tanδ(ω=0.01(rad/s))/tanδ(ω=100(rad/s))≦20・・・(β)
また、発泡成形品へのスチレン及びそのオリゴマーの溶出を低減させつつ、成形時の生産性を向上し得る押出発泡用ポリスチレン系樹脂組成物を得るために、押出発泡用のポリスチレン系樹脂組成物を、(1)分子量分布におけるトップピーク分子量(Mp)が14万~22万;(2)Mp以下の分子量の割合が全体の40~55%;(3)z+1平均分子量が80万~350万;(4)スチレンダイマーとスチレントリマーとからなるオリゴマーの含有量が2000ppm以下;及び(5)スチレンの含有量が1000ppm以下の物性を有するものとすることが開示されている(例えば特許文献4参照)。
特開2005-281405号公報 特開2014-189767号公報 特開2015-193761号公報 特開2015-193764号公報
しかしながら、特許文献1~4等に開示の従来のスチレン系樹脂は、長鎖分岐度が低く、重量平均分子量が100万に満たない。そのため、スチレン系樹脂の溶融張力が不十分であり、成形加工性や成形加工時の分子配向性にも改良の余地がある。また、多官能性単量体を用いて分岐構造を有するスチレン系樹脂を製造する場合、その溶融張力を高めるために分岐度を高くしようとすると流動性が低下し、成形加工性が不十分になる。長鎖分岐度をさらに高めるために重合度を高めようとすると、ゲル化が起こり、スチレン系樹脂が多くのゲル分を含有することとなるという問題が生じる。
一方、成形加工性を高めるために、多官能性単量体を減らすと、分岐度が低下し、その結果、溶融張力が低下する。したがって、分岐構造を有するスチレン系樹脂の溶融張力の向上と流動性の向上との両立は困難であった。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、高い溶融張力と高い流動性とを兼ね備えたスチレン系樹脂を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、GPC-MALS法により求められる、重量平均分子量Mw’が100万~300万であり、数平均分子量Mn’が30万以上100万以下であるスチレン系樹脂であって、
数平均分子量Mn’に対するZ平均分子量Mz’の比Mz’/Mn’が7以上であると共に、スチレン1000単位あたりの分岐度が0.2以上5以下であり、
上記スチレン系樹脂を構成する高分子鎖における多官能性単量体由来の成分の含有量が上記スチレン系樹脂100質量部中に50質量ppm未満(0を含む)である、スチレン系樹脂にある。
上記スチレン系樹脂は、分岐構造を有しながらも、高い溶融張力と高い流動性とを兼ね備える。このようなスチレン系樹脂は、例えば他の樹脂への加工助剤として好適である。つまり、例えば分岐のない又は分岐の少ないスチレン系樹脂等の他の樹脂の溶融張力を高めて、延伸加工時の破断を抑制することができる。さらに、上記スチレン系樹脂は流動性が高いため、例えば他の樹脂への配合が容易になり、配合後の樹脂の成形性も良好になる。
スチレン系樹脂をGPC-MALS法により測定したときに得られるデバイプロット(Debye Plot)の一例を示す図。 実施例1におけるシミュレーション結果のグラフを示す図。 実施例2におけるシミュレーション結果のグラフを示す図。 実施例3におけるシミュレーション結果のグラフを示す図。 実施例4におけるシミュレーション結果のグラフを示す図。 実施例5におけるシミュレーション結果のグラフを示す図。 比較例1におけるシミュレーション結果のグラフを示す図。
本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後に記載される数値あるいは物理値を含む意味で用いることとする。
[スチレン系樹脂]
上記スチレン系樹脂は、分岐構造を有し、重量平均分子量Mw’が100万~300万、数平均分子量Mn’に対するZ平均分子量Mz’の比Mz’/Mn’が7以上であると共に、スチレン1000単位あたりの分岐度が0.2以上である。このようなスチレン系樹脂を、以下適宜、「高分岐型スチレン系樹脂」という。
スチレン系樹脂の溶融張力を向上し、強度を向上させる手段として、高分子量化が有用ではあるが、単純に高分子量化すると、樹脂の流動性が低下し、成形加工性が悪化する。流動性を維持したまま強度を向上させる手段として、分子鎖に分岐構造を導入することが有用である。分岐構造を有する樹脂は、分子鎖同士の絡み合いの程度が大きくなるため溶融張力が高くなり、延伸加工時に破断しにくくなる。
しかし、従来の分岐構造を有するスチレン系樹脂は、分岐化剤としてジビニルベンゼン等の多官能性単量体が用いられて製造されたため、多官能性単量体が重合した部分に分岐点が集中し、ミクロゲルが生成しやすい。分岐構造を増やすために、多官能性単量体の添加量を増加させると、ゲル化が起きやすくなるので、溶融張力を一定レベル以上に高めることは困難であった。
これに対し、上記多分岐型スチレン系樹脂は、重量平均分子量Mw’が100万~300万、数平均分子量Mn’に対するZ平均分子量Mz’の比Mz’/Mn’が7以上であると共に、スチレン1000単位あたりの分岐度が0.2以上である。Mw’、Mz’/Mn’、及びスチレン1000単位あたりの分岐度が上記のすべての条件を満足することにより、ジビニルベンゼンなどの多官能性単量体に由来する成分を必ずしも含まなくとも、分岐点の数が多く(つまり、高分岐度)、分岐点間が適度に離れた構造を有することとなると考えられ、さらに、高分子量であると共に、分子量分布が広いものである。そのため、多分岐型スチレン系樹脂は、溶融張力が高く、かつ流動性にも優れる。
スチレン系樹脂を構成する高分子鎖における多官能性単量体由来の成分の含有量は、スチレン系樹脂100質量部中に50質量ppm未満(0を含む)であることが好ましい。この場合には、ジビニルベンゼンなどの多官能性単量体に由来の成分が少なくても、溶融張力が高く、かつ流動性にも優れるという効果が顕著になる。この効果をより顕著にするという観点から、多官能性単量体由来の成分の含有量は、30質量ppm以下(0を含む)であることがより好ましく、20質量ppm以下(0を含む)であることがさらに好ましく、実質的に0であることがさらにより好ましい。
本明細書においては、絶対分子量をプライム記号「’」を付けて表し、相対分子量をプライム記号を付けずに表す。つまり、重量平均分子量Mw’、数平均分子量Mn’、Z平均分子量Mz’は、いずれも絶対分子量であり、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn、Z平均分子量Mzは、いずれも直鎖ポリスチレン換算の相対分子量である。
重量平均分子量Mw’、数平均分子量Mn’、Z平均分子量Mz’、分岐度は、GPC-MALS法によって求められる。GPC-MALS法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(つまり、GPC)と、多角度高散乱検出器(Multi Angle Light Scattering、つまりMALS)とを組み合わせた手法である。GPC-MALS法により、スチレン系樹脂の絶対分子量と分子サイズを測定することができ、その測定結果から、スチレン系樹脂の分岐度を求めることができる。以下に、GPC-MALS法の基本原理について説明する。
[GPC-MALS法の基本原理]
スチレン系樹脂を、テトラヒドロフラン(つまり、THF)等の溶媒に溶解してスチレン系樹脂溶液を調製し、GPC測定にかけると、分子サイズが大きいポリマーほど先に溶出することから、スチレン系樹脂を分子サイズにより分けられる。引き続き、分けられたスチレン系樹脂溶液をMALS測定にかけることにより、分子サイズにより分けられたスチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’及び分子サイズに相当する二乗平均回転半径<Rg2>を算出することができる。
具体的には、GPCで分子サイズにより分けられたスチレン系樹脂溶液に、レーザー光を照射し、レイリー散乱によってスチレン系樹脂溶液から生じた散乱光強度を計測する。得られた測定値から、以下の式(1)及び図1に示すデバイプロット(つまり、Debye plot)を用いてMw’及び<Rg2>を算出する。
Figure 0007089177000001
*:光学パラメータ(4π20 2(dn/dc)2/[λ0 4A])
0:溶媒の屈折率
dn/dc:屈折率の濃度増分
λ0:真空中での入射光の波長
A:アボガドロ数
c:サンプル濃度(g/mL)
R(θ):過剰散乱のレイリー比
Mw’:重量平均分子量(g/mole)
P(θ):干渉因子
P(θ)=(1-2{(4π/λ)sin(θ/2)}2<Rg2>/3!+・・・)
λ:測定系における波長 λ0/n0
<Rg2>:二乗平均回転半径
2:第二ビリアル係数
図1は、樹脂濃度の異なるスチレン系樹脂溶液について、GPC-MALS法で測定し、縦軸(Y軸)を「K*c/R(θ)」、横軸(X軸)を「sin2(θ/2)」としてプロットしたデバイプロットの一例である。デバイプロットにより得られる回帰直線と縦軸との切片(Y軸切片)から、GPCで分子サイズにより分けられたスチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’、回帰直線の初期勾配から、スチレン系樹脂の二乗平均回転半径<Rg2>が求まる。GPC測定において、各溶出時間における濃度は非常に希薄であるため、第二ビリアル係数A2を0として解析すると、GPCで分子サイズにより分けられたスチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’と二乗平均回転半径<Rg2>は、それぞれ、下記式(2)、(3)により求めることができる。
Figure 0007089177000002
Figure 0007089177000003
*c/R0:角度θ=0°におけるK*c/R(θ)
dy/dx:回帰直線の初期勾配
GPC-MALS法により求められる数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’は、スチレン系樹脂の絶対分子量である。
一方、既知の分子量を有する直鎖ポリスチレンを標準物質として、GPC法により求められる数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、Z平均分子量Mzは、スチレン系樹脂の相対分子量である。
また、スチレン系樹脂の収縮因子gは、次のようにして求める値を用いる。スチレン系樹脂の二乗平均回転半径<Rg2Bと直鎖スチレン系樹脂の二乗平均回転半径<Rg2Lの比を収縮因子gとして、下記式(4)~(8)に基づき、収縮因子gを求めることができる。そして、収縮因子gから、分岐度Bmを求めることができる。分岐度は、スチレン系樹脂が3本鎖分岐の構造であると仮定したときのものである。
収縮因子gw、1分子あたりの分岐度Bm,w、スチレン1000単位あたりの分岐度Bm,1000は、下記式(4)~(8)で求められる。
Figure 0007089177000004
Figure 0007089177000005
Figure 0007089177000006
Figure 0007089177000007
Figure 0007089177000008
上記式において、giは区間iにおける収縮因子、Bm,jは区間iにおける分岐度、ciは区間iにおける濃度である。
<重量平均分子量Mw’>
上記スチレン系樹脂(つまり、高分岐型スチレン系樹脂)の重量平均分子量Mw’は100万~300万である。Mw’が100万未満の場合には、十分な溶融張力を示さないおそれがある。溶融張力をより高めるという観点から、Mw’は、120万以上であることが好ましく、150万以上であることがより好ましい。また、Mw’が100万~300万の範囲において、後述するMz’/Mn’比及びスチレン1000単位あたりの分岐度の範囲を満足することにより、スチレン系樹脂は溶融時に高流動性を示す。より流動性を高めるという観点からMw’は、250万以下が好ましい。
<数平均分子量Mn’に対するZ平均分子量Mz’の比Mz’/Mn’>
スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’に対するZ平均分子量Mz’の比Mz’/Mn’は7以上である。7未満の場合には、スチレン系樹脂の分子量分布が狭くなる。その結果、高流動性と高溶融張力とを高いレベルで両立できなくなるおそれがある。溶融粘度をより低下させ、溶融張力をより高めて、成形加工性をよりバランスよく向上させるという観点から、Mz’/Mn’は8以上が好ましく、10以上がより好ましい。また、その上限は、Mz’/Mn’は25が好ましく、20がより好ましい。
<数平均分子量Mn’>
スチレン系樹脂の溶融張力をより高めるという観点から、スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’は、30万以上であることが好ましく、50万以上であることがより好ましい。また、スチレン系樹脂の流動性をより高めるという観点からMn’は、100万以下が好ましく、90万以下がより好ましい。
<Z平均分子量Mz’>
スチレン系樹脂の溶融張力をより高めるという観点から、スチレン系樹脂の数平均分子量Mz’は、500万以上であることが好ましく、800万以上であることがより好ましい。また、Mz’の上限は、1500万が好ましく、1200万がより好ましい。
<収縮因子gw
溶融粘度をより低下させ、溶融張力をより高めるという観点から、スチレン系樹脂の収縮因子gwは、0.8以下であることが好ましく、0.75以下であることがより好ましい。また、収縮因子gwの下限は、0.4が好ましく、0.5がより好ましい。
<スチレン1000単位あたりの分岐度>
スチレン系樹脂のスチレン1000単位あたりの分岐度は0.2以上である。0.2未満の場合には、スチレン系樹脂の分岐点が少なかったり、分岐点間が離れすぎたりするため、溶融張力が低下するおそれがある。溶融張力をより高めるという観点から、スチレン1000単位あたりの分岐度は0.25以上であることが好ましい。また、スチレン1000単位あたりの分岐度の上限は、5以下が好ましく、2以下がより好ましい。
<THF不溶分>
スチレン系樹脂は、テトラヒドロフラン(つまり、THF)不溶分が0.1質量%以下(0を含む)であることが好ましい。このようなスチレン系樹脂は、その高分子鎖中に多官能性単量体に由来する成分を含んでいないために実現される。つまり、スチレン系樹脂が高い分子量を有し、かつ多くの長鎖分岐を有しているにも関わらず、高分子鎖中に多官能性単量体に由来する成分を含んでいないことにより、THF不溶分を0.1質量%以下(0を含む)にすることができる。スチレン系樹脂が多くの分岐鎖を有しながらも、THF不溶分が0.1質量%以下(0を含む)であることにより、スチレン系樹脂は、より高い流動性を示す。同様な観点から、スチレン系樹脂中のTHF不溶分の割合は0.05質量%以下(0を含む)であることが好ましく、0.01質量%以下(0を含む)であることがより好ましい。
THF不溶分は次のようにして測定される。スチレン系樹脂1gを精秤して、テトラヒドロフラン30mlを加え、温度23℃で24時間浸漬後、5時間振とうし、静置した。次いで上澄みをデカンテーションにより取り除き、再度テトラヒドロフラン10mlを加えて静置し、上澄みをデカンテーションにより取り除いた後、温度23℃で24時間乾燥させた。乾燥後の重量を求め、次式によりTHF不溶分を求めた。
THF不溶分(%)=[乾燥後の不溶分重量/試料の重量]×100
スチレン系樹脂とてしは、スチレン系単量体の重合体、スチレン系単量体と他の単量体との共重合体、これらの2種以上の混合物等が挙げられる。本発明のスチレン系樹脂は、発明の効果を阻害しない範囲において、スチレン系単体以外の他の単量体由来の成分を含有する共重合体であってもよいが、共重合体に含まれるスチレン系単量体に由来の構造単位は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン、2,4,6-トリブロモスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。上記スチレン系単量体は、単独でも、2種類以上の組み合わせでも良い。スチレン系単量体としてはスチレンが好ましい。
スチレン系単量体と共重合可能な上述の他の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等の不飽和脂肪酸及びその無水物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等のメタクリル酸エステル;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等の水酸基を含有するビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を含有するビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の有機酸ビニル化合物;エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン等のオレフィン化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン化合物;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル化合物;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン化合物;N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド等のマレイミド化合物などが挙げられる。
スチレン系樹脂の具体例としては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(例えば耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン-(メタ)アクリロニトリル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が例示される。本明細書では、(メタ)アクリロニトリルは、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルの少なくとも一方を表し、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方を表す。
スチレン系樹脂中のスチレンオリゴマーの含有量は、0.1質量%以下であることが好ましい。この場合には、スチレン系樹脂からのスチレンオリゴマーの揮発を防止できる。したがって、例えば食品容器等の揮発成分に対する要求の厳しい用途にも適用可能になり、スチレン系樹脂の用途の選択の幅が広がる。例えば押出発泡により得られる発泡成形品にも好適になる。本明細書において、スチレンオリゴマーは、スチレンダイマー及びスチレントリマーのことを意味し、スチレンオリゴマーの含有量は、スチレンダイマーとスチレントリマーとの合計含有量である。
スチレン系樹脂は、温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度が2000Pa・s以下であると共に、温度200℃における溶融張力が500mN以上であることが好ましい。温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度は、1900Pa・s以下であることがより好ましく、1700Pa・s以下であることがさらに好ましい。同様の観点から、温度200℃における溶融張力は、800mN以上であることがより好ましく、1000mN以上であることがさらに好ましい。
スチレン系樹脂は、流動性が高く、かつ溶融張力が高いため、押出成形、発泡成形、ブロー成形等に用いられる。また、スチレン系樹脂(つまり、高分岐型スチレン系樹脂)は、他の樹脂に添加され、それらの樹脂の流動性を維持しつつ、溶融張力を高めるための加工助剤として用いることができる。他の樹脂は、特に限定されるものではないが、分岐のない又は分岐の少ない例えば市販のポリスチレンや耐衝撃性ポリスチレン等のスチレン系樹脂等が挙げられる。
[スチレン系樹脂の製造方法]
スチレン系樹脂(つまり、高分岐型スチレン系樹脂)は、後述のとおり、分散工程と、含浸工程と、重合開始工程と、追加含浸重合工程とを行うことより製造することができる。
[分散工程]
分散工程においては、スチレン系樹脂核粒子を水性媒体中に分散させる。スチレン系樹脂核粒子のことを、以下適宜「核粒子」という。核粒子の水性媒体への分散方法は、特に限定されず、例えば、核粒子と共に水性媒体に、懸濁剤、界面活性剤を添加して混合することができる。
(核粒子)
核粒子は、スチレン系樹脂を含有する。核粒子中のスチレン系樹脂は、通常、直鎖状のポリマー鎖を有するものを用いることができるが、分岐鎖を含んでいてもよい。核粒子は、スチレン系樹脂以外の樹脂を含んでもよいが、核粒子中のスチレン系樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、実質的な樹脂成分がスチレン系樹脂であることが更に好ましい。
核粒子の平均粒子径は、0.3~1.2mmであることが好ましい。核粒子の平均粒子径が0.3mm以上であることにより、多分岐型スチレン系樹脂中の細粒の発生量を低減できる。核粒子の平均粒子径が1.2mm以下であることにより、核粒子の比表面積が増大し、核粒子へのスチレン系単量体の含浸性が向上する。核粒子の平均粒子径は、0.3~1.0mmであることがより好ましく、0.3~0.5mmであることがさらに好ましい。
(水性媒体)
水性媒体としては、通常、脱イオン水等の水を用いることができる。核粒子が溶解しない限り、水性媒体はアルコールなどの水溶性有機溶剤を含んでいてもよい。
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1つを有することが好ましい。具体的には、アルキルスルホン酸塩(例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウム)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)、ポリオキシアルキルエーテルリン酸エステル、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸塩等が挙げられる。界面活性剤は1種類を用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
(電解質)
分散工程においては、界面活性剤と共に電解質を水性媒体中に添加することができる。電解質としては、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等を用いることができる。
(懸濁剤)
懸濁剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の親水性高分子;第三リン酸カルシウム、硝酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、酸化アルミニウム、タルク、カオリン、ベントナイト等の難水溶性無機塩が挙げられる。懸濁剤は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。親水性高分子及び難水溶性無機塩のうち、いずれか一方を用いてもよいし、両方を用いてもよい。懸濁剤として難水溶性無機塩を使用する場合には、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤を併用することが好ましい。
懸濁剤の使用量は、核粒子とスチレン系単量体の総添加量の合計100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましい。難水溶性無機塩からなる懸濁剤とアニオン性界面活性剤とを併用する場合には、核粒子とスチレン系単質量体の総添加量の合計100質量部に対して、懸濁剤を0.05~3質量部、アニオン性界面活性剤を0.0001~0.5質量部用いることが好ましい。
[含浸工程]
含浸工程においては、分散工程後の水性媒体中に、スチレン系単量体及び重合開始剤を添加し、実質的にスチレン系単量体の重合が進行しない温度で、核粒子にスチレン系単量体及び重合開始剤を含浸させる。重合開始剤をスチレン系単量体と共に核粒子に含浸させることにより、核粒子中に重合開始剤を十分に含浸させることができる。分散工程後の水性媒体中には、核粒子の他に、必要に応じて添加される懸濁剤や界面活性剤などが含まれる。重合開始剤は、例えば有機過酸化物であり、少なくとも有機過酸化物を含むことが好ましい。実質的にスチレン系単量体の重合が進行しない温度とは、重合開始剤(具体的には、有機過酸化物)が実質的に分解しない温度である。
重合開始剤の分解を抑制するという観点から、含浸工程における水性媒体の温度を(T1/2-15)℃以下とすることが好ましく、(T1/2-18)℃以下とすることがより好ましい。T1/2は重合開始剤の10時間半減期温度(単位:℃)である。一方、核粒子へのスチレン系単量体の含浸性の低下を防止するという観点から、含浸工程における水性媒体の温度を70℃以上とすることが好ましく、75℃以上とすることがより好ましい。含浸工程における水性媒体の温度は一定でもよく、徐々に上昇させるなど変化させてもよいが、上記範囲内であることが好ましい。
含浸工程の時間は、スチレン系単量体と重合開始剤とを核粒子中に十分に含浸させるという観点から、0.5~2.0時間とすることが好ましく、1.0~2.0時間とすることがより好ましい。
スチレン系単量体の添加量が少なすぎる場合には、核粒子を十分に可塑化させることができず、重合開始剤を核粒子に十分に含浸させることができなくなるおそれがある。一方、スチレン系単量体の添加量が多すぎる場合には、核粒子外でスチレン系単量体が重合し細粒が発生し易くなるおそれがある。したがって、含浸工程におけるスチレン系単量体の添加量は、核粒子100質量部に対して10~200質量部であることが好ましい。含浸性をより高めるという観点からは、スチレン系単量体の添加量は、核粒子100質量部に対して、20質量部以上であることがより好ましく、30質量部以上であることがさらに好ましい。細粒の発生をより防止するという観点からは、スチレン系単量体の添加量は、核粒子100質量部に対して、100質量部以下であることがより好ましく、60質量部以下であることがさらに好ましい。
(重合開始剤)
重合開始剤としては、通常、少なくとも有機過酸化物が用いられる。有機過酸化物以外の重合開始剤を併用してもよい。
有機過酸化物としては、例えば過酸化ベンゾイル、ジラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-へキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエー卜、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス-(2-エチルヘキサノイルパオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネ-ト、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。これらの有機過酸化物は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
重合開始剤の10時間半減期温度T1/2は、85~120℃であることが好ましく、90~110℃であることがより好ましい。なお、2種類以上の有機過酸化物を重合開始剤として用いる場合には、10時間半減期温度の最も低い有機過酸化物の10時間半減期温度をT1/2とする。有機過酸化物としては、10時間半減期温度が上記範囲を満足し、かつ水素引抜能の高いものが好ましい。このような有機過酸化物としては、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエートなどのt-ブトキシラジカルを生成する有機過酸化物;ジクミルパーオキサイドなどのクミルオキシラジカルを生成する有機過酸化物が挙げられる。
重合開始剤は、有機過酸化物以外の重合開始剤を含んでいてもよいが、水素引抜反応を起こしやすくする観点から、重合開始剤は、有機過酸化物を70質量%以上含むことが好ましく、85質量%以上含むことが好ましく、有機過酸化物からなることが更に好ましい。
重合開始剤の添加量は、核粒子とスチレン系単量体の総添加量の合計100質量部に対して0.1~2.0質量部であることが好ましい。この範囲であることで生産性を過度に低下させることなく、水素引抜反応を起こし易くなる。この効果をより高める観点から、重合開始剤の添加量は、核粒子とスチレン系単量体の総添加量の合計100質量部に対して、0.2~1.5質量部であることがより好ましい。
(水性媒体中の酸素濃度)
水性媒体の温度30℃における酸素濃度は4mg/L以上であることが好ましい。水性媒体中の酸素は、水性媒体中での重合禁止剤として機能しており、細粒の発生を阻害する。したがって、水性媒体中の酸素濃度が高いほど、スチレン系樹脂の収率が向上する。細粒の発生をより抑制する観点から、温度30℃における酸素濃度は5mg/L以上であることがより好ましい。また、水性媒体に、例えば亜硝酸ナトリウムのような水溶性の重合禁止剤を30~200質量ppm添加することによっても、細粒発生を抑制することができる。
[重合開始工程]
重合開始工程では、含浸工程後の水性媒体を昇温して、スチレン系樹脂核粒子中でスチレン系単量体の重合を開始させる。含浸工程後の水性媒体には、重合開始剤とスチレン系単量体が含浸された核粒子が分散されている。重合開始工程における水性媒体の温度の昇温により、スチレン系単量体の重合が開始される。
具体的には、昇温により、重合開始剤(具体的には、有機過酸化物)が実質的に分解する温度とすることにより、スチレン系単量体の重合を開始させることが好ましい。生産性の観点から、水性媒体の温度を(T1/2-10)℃以上の温度とすることが好ましく、(T1/2-5)℃以上の温度とすることがより好ましい。上記温度(つまり、重合開始温度)までの昇温時間は特に限定されるものではないが、昇温中に核粒子中のスチレン系単量体の重合を進め、後述する追加含浸重合工程において核粒子中のスチレン系単量体の含有量を10質量%以下に制御しやすくなるという観点から、3時間以上とすることが好ましく、5時間以上とすることがより好ましい。一方、生産性の観点からは10時間以内とすることが好ましい。
[追加含浸重合工程]
追加含浸重合工程においては、重合開始工程後の水性媒体にスチレン系単量体を追加添加する。そして、核粒子にスチレン系単量体を含浸させつつ、核粒子中のスチレン系単量体をスチレン系樹脂のポリマー鎖にグラフト重合させる。つまり追加含浸重合工程では、重合開始工程を経て、内部でスチレン系単量体の重合が始まっている核粒子を含む水性媒体中に、スチレン系単量体を追加して添加し、核粒子にスチレン系単量体を含浸させて重合させる。
追加含浸重合工程においてスチレン系単量体の添加量が少なすぎる場合には、分岐鎖を十分に生成させることができなくなるおそれがある。一方、多すぎる場合には、核粒子外でのスチレン系単量体同士の重合が起こりやすくなり、スチレン系樹脂の収率が低下するおそれがある。したがって、追加含浸重合工程におけるスチレン系単量体の添加量は、核粒子100質量部に対して50~700質量部であることが好ましい。分岐鎖をより十分に生成させるという観点から、核粒子100質量部に対するスチレン系単量体の添加量は、100質量部以上であることがより好ましく、200質量部以上であることがさらに好ましい。スチレン系樹脂の収率をより高めるという観点から、核粒子100質量部に対するスチレン系単量体の添加量は、600質量部以下であることがより好ましく、550質量部以下であることがさらに好ましい。
追加含浸重合工程においては、核粒子中のスチレン系単量体の含有量(具体的には、濃度)を10質量%以下に維持させることが好ましい。スチレン系単量体は、断続的に又は連続的に添加することができる。重合開始工程を経ることにより、スチレン系単量体の重合は核粒子内を反応場として開始されている。そして、追加含浸重合工程においては、核粒子中のスチレン系単量体の含有量を10質量%以下に維持させることにより、スチレン系単量体同士での重合だけではなく、スチレン系樹脂(つまり、ポリマー)にスチレン系単量体のグラフト重合が生じやすくなり、分岐鎖が生成しやすくなる。長鎖分岐度をより高めるという観点から、追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン単量休の含有量は8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。
追加含浸重合工程においては、上記のように核粒子中のスチレン系単量体の含有量を10質量%以下に維持させることが好ましいが、上記高分岐型スチレン系樹脂が得られる範囲において、核粒子中のスチレン系単量体の含有量は10質量%を超えることができる。核粒子中のスチレン系単量体の含有量が10質量%を超える時間は、追加含浸重合工程の全時間のうち2割以下であることが好ましく、1割以下であることがより好ましい。追加含浸重合工程全てにおいて核粒子中のスチレン系単量体の含有量を10質量%以下とすることが最も好ましい。分岐鎖を十分に生長させるという観点から、追加含浸重合工程の時間は、150分以上とすることが好ましく、180分以上であることがより好ましい。生産効率の観点から、追加含浸重合工程の時間の上限は600分程度とすることが好ましい。
なお、追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン系単量体の含有量は、重合に用いる重合開始剤の化学的特性、重合温度から求めたスチレンの重合速度等をもとに計算することが可能であり、その計算値をもとに所望の含有量となるようにスチレン系単量体の追加添加のタイミング及び添加速度(添加割合)を調整することにより、追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン系単量体の含有量を調整することができる。また、実際の核粒子中のスチレン系単量体の含有量は、重合中の核粒子を反応系から抜き出し、後述する方法により求めることができる。
核粒子中のスチレン系単量体の含有量が低い条件ほど、重合開始反応だけではなく水素引抜反応を起こしやすくなり、分岐度が向上すると考えられる。さらに、既述のように、核粒子の平均粒子径を1.2mm以下とすることにより、比表面積が大きくなり、スチレン系単量体の含浸性が向上し、分岐を生成しやすくなるものと考えられる。
(連鎖移動剤)
追加含浸工程においては、連鎖移動剤の存在下でスチレン系単量体を重合させる。連鎖移動剤は、重合時の反応場において、ポリマー鎖の生長末端ラジカル、ポリマー鎖上のラジカル、スチレン系単量体ラジカル、開始剤ラジカル等のラジカル反応性分子の連鎖移動反応を引き起こす分子である。連鎖移動剤としては、例えばα-メチルスチレンダイマー(以下、適宜「α-MSD」と記す)、n-オクチルメルカプタン、t-ノニルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、フェニルチオール、シクロヘキサンチオール、4,4‘-チオビスベンゼンチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオナート)、4-メチルベンゼンチオール、3-メルカプトプロピオン酸イソオクチル、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、ブロモトリクロロメタン、四塩化炭素、1,4-ナフトキノン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、ペンタフェニルエタン等を用いることができる。臭気が少なく、着色のないスチレン系樹脂を得ることができるため、α-メチルスチレンダイマーを用いることが好ましい。
連鎖移動剤は、追加含浸工程においてスチレン系単量体と共に存在していればよい。重合開始剤の総添加量Miに対する連鎖移動剤の総添加量Mtの比(つまり、Mt/Mi)が小さくなりすぎると、分子量分布が小さくなるおそれがある。一方、Mt/Miが大きくなりすぎると、重量平均分子量Mw’が小さくなるおそれや、分岐度が小さくなるおそれがあり、その結果、溶融張力が低下するおそれがある。しがって、Mt/Miは0.1~0.6に調整することが好ましい。高溶融張力を維持しつつ流動性をより高めるという観点から、Mt/Miの下限は0.12であることがより好ましく、0.15であることがさらに好ましい一方、Mt/Miの上限は0.5であることが好ましく、0.4であることがより好ましい。
連鎖移動剤の添加方法は、限定されるものではないが、例えば下記の(I)~(IV)が挙げられる。(I)~(IV)の方法は、いずれか1つの方法でも、複数の方法を組み合わせてもよい。つまり、連鎖移動剤は、(I)~(IV)のうちの少なくとも1つの方法により添加することができる。
(I)分散工程前に核粒子に連鎖移動剤を含有させておく方法。
(II)含浸工程において、核粒子に連鎖移動剤を含浸させる方法。
(III)重合開始工程において核粒子に連鎖移動剤を含浸させる方法。
(IV)追加含浸工程において核粒子に連鎖移動剤を含浸させる方法。
(I)の場合においては、水性媒体に添加する前に核粒子中に連鎖移動剤を含有させることができる。具体的には、スチレン系樹脂と連鎖移動剤とを配合し、造粒により核粒子を製造する。これにより、連鎖移動剤を含有するスチレン系樹脂核粒子が得られる。
(II)の場合においては、含浸工程において核粒子に連鎖移動剤を含浸させることができる。連鎖移動剤は、含浸工程において、水性媒体中に添加することにより、核粒子に含浸させることができる。連鎖移動剤は、スチレン系単量体や重合開始剤と同じタイミングで水性媒体中に添加してもよいし、異なるタイミングで添加してもよい。連鎖移動剤は、スチレン系単量体、重合開始剤と共に、水性媒体中に添加することが好ましい。この場合には、含浸工程において、連鎖移動剤が、スチレン系単量体や重合開始剤と共に、核粒子中に十分に分散される。したがって、重合開始工程や追加含浸重合工程において、ポリマー鎖の開裂反応などの副反応抑制とポリマー鎖の水素引抜反応を両立させることができ、スチレン系樹脂の長鎖分岐度を十分に高めることができる。
(III)の場合においては、重合開始工程において核粒子に連鎖移動剤を含浸させることができる。連鎖移動剤の添加は、昇温中でも昇温後であってもよい。
(IV)の場合においては、追加含浸重合工程において核粒子に連鎖移動剤を含浸させることができる。具体的には、重合開始工程後に、水性媒体中にスチレン系単量体を追加添加しつつ、核粒子中のスチレン系単量体の含有量を10質量%以下にしながら、核粒子に連鎖移動剤を含浸させることができる。連鎖移動剤を添加するタイミングは、本発明の目的、効果を損ねない限り特に限定されず、追加含浸重合工程の初期に連鎖移動剤をまとめて添加してもよいし、例えば所定の添加速度で添加してもよい。また、添加速度は、徐々に低下させるなどのように変化させてもよい。追加含浸重合工程において、連鎖移動剤を添加する場合には、例えばスチレン系単量体と連鎖移動剤とを混合して添加させることが好ましい。
(I)~(IV)の中でも、(II)のように含浸工程において核粒子に連鎖移動剤を含浸させることが好ましい。この場合には、重合開始工程前に、核粒子中において重合開始剤の近くに連鎖移動剤を存在させることができるため、重合開始工程あるいは追加含浸重合工程において発生する反応性の高いラジカルの一部を、ポリマー鎖の開裂反応などの副反応を起こす前に、連鎖移動反応により反応性の適度に低いラジカルに置き換えることができる。その結果、より分子量分布が広く、より分岐度の高い、溶融張力と高い流動性とを高い次元で兼ね備えた、分岐鎖を有するスチレン系樹脂を得ることができる。
(温度条件)
追加含浸重合工程の温度条件は特に制限されないが、水素引抜反応を生じ易くする観点から、追加含浸重合工程における水性媒体の温度は、(T1/2-10)℃~(T1/2+20)℃であることが好ましく、(T1/2-5)℃~(T1/2+10)℃であることがより好ましい。追加含浸重合工程における水性媒体の温度は、上記範囲内であれば一定でもよく、徐々に上昇させるなど変化させてもよい。
また、重合開始剤の10時間半減期温度T1/2が85~120℃であり、かつ、含浸工程における水性媒体の温度が70℃以上(T1/2-15)℃以下であり、かつ、追加含浸重合工程における上記水性媒体の温度が(T1/2-10)℃以上(T1/2+20)℃以下であることが好ましい。この場合には、実質的に重合を開始させる前に、含浸工程において核粒子にスチレン系単量体、開始剤、連鎖移動剤を十分に含浸させることができ、追加含浸重合工程において重合開始反応と水素引抜反応を起こすことができる。
上記追加含浸重合工程においては、重合の反応場となる核粒子内におけるスチレン系単量体の濃度を特定の範囲に保ち、連鎖移動剤の存在下でスチレン系単量体を重合させる。さらに、重合開始剤の総添加量に対する連鎖移動剤の総添加量の比を所定の範囲内に調整する。これにより、スチレン系樹脂の分岐点の数を大きくして分岐度を高め、高分子量にすることができ、さらに、分岐点間距離を広げて長鎖分岐度を高めることによりゲル化を回避することができ、また、流動性を高めることができると考えられる。
通常、スチレン系単量体の重合時の反応場には、重合開始剤と多くのスチレン系単量体とが存在し、重合開始剤から生成した開始剤ラジカルやポリマー鎖の生長末端ラジカルは、スチレン系単量体のビニル基と優先的に反応するため、直鎖状のスチレン系樹脂が形成され易いと考えられる。一方、上記追加含浸重合工程のように反応場のスチレン系単量体の濃度が低い場合、相対的にポリマー鎖が多くなることになるため、開始剤ラジカルやポリマー鎖の生長末端ラジカルは、スチレン系単量体との重合反応だけではなく、ポリマー鎖の水素引抜反応を生じやすくなると考えられる。その結果、水素引抜反応によりポリマー鎖上にラジカルが発生し、このポリマー鎖上のラジカルにスチレン系単量体がグラフト重合したり、あるいは、ポリマー鎖の生長末端ラジカルが再結合したりすることで、ポリマー鎖に分岐鎖が生成すると考えられる。
ポリマー鎖に分岐鎖が生成した位置は、立体的に混み合った状況にあることから、生成した分岐点の近くには更なる分岐鎖は生じにくいと考えられる。つまり、立体障害が生じない程度に、分岐点から離れたポリマー鎖上で、再び水素引抜反応が生じ、分岐鎖が生成すると考えられる。したがって、分岐点間が適度に離れながら、分岐鎖が生成するため、ゲル化が生じることなく、多くの分岐鎖を有するスチレン系樹脂が得られるものと考えられる。
多くの分岐鎖を生成させるためには、追加含浸重合工程中の重合系内のラジカル濃度を高めて、ポリマー鎖上で水素引抜反応の頻度を増やす必要がある。しかし、開始剤添加量を増やしたり、追加含浸重合工程の温度を高めて開始剤の分解を促進させる等により、反応性の高い開始剤ラジカル濃度を高めてしまうと、ポリマー鎖の開裂反応等の望ましくない副反応が起きやすくなり、所望の分岐構造を有するスチレン系樹脂を得ることができない。
一方、ラジカル重合において、連鎖移動剤は、ポリマー鎖の分子量を低く調整するために用いられ、通常、高分子量のポリマー鎖を合成するために添加することはない。しかし、本発明者らは、重合開始剤の総添加量に対する連鎖移動剤の総添加量の比を所定の範囲内に調整することで、分子量低下を起こさず、逆に分岐度が高く、高分子量のスチレン系樹脂が生成されることを見出した。
上記の理由は、核粒子中のスチレン系単量体の濃度が特定の範囲内において、重合開始剤の総添加量に対する連鎖移動剤の総添加量の比を所定の範囲内に調整することで、開始剤ラジカルのような反応性の高いラジカルの一部が、連鎖移動反応により反応性が適度に低いラジカルに置き換わることで、ポリマー鎖の開裂反応などの副反応を抑制しつつ、ポリマー鎖の水素引抜反応により、分岐度が高く、高分子量のスチレン系樹脂が生成されるためと考えられる。重合開始剤の総添加量に対する連鎖移動剤の総添加量が少なすぎる場合は、ポリマー鎖の開裂反応などの副反応を抑制できなくなると考えられ、逆に重合開始剤の総添加量に対する連鎖移動剤の総添加量が多すぎる場合は、水素引抜反応が起きにくくなると考えられ、いずれの場合も、分岐度が高く、高分子量のスチレン系樹脂を得ることが困難となる。
また、本来、連鎖移動剤は、低分子量ポリマーを生成させるので、分岐鎖の生成に関与しなかった一部の連鎖移動剤により、分子量の小さいスチレン系樹脂も生成すると考えられる。その結果、水素引抜反応により生成した分岐度が高く高分子量のスチレン系樹脂と連鎖移動反応により生成した低分子量のスチレン系樹脂が同時に生成されるため、得られるスチレン系樹脂の分子量分布が広がり、高い溶融張力と高い流動性とを兼ね備えた、分岐鎖を有するスチレン系樹脂を製造することができると考えられる。
このようなスチレン系樹脂は、多くの分岐鎖を有しており、分岐鎖も長いと考えられる。本発明の製造方法によって得られるスチレン系樹脂のことを、以下適宜「多分岐型スチレン系樹脂」という。多分岐型スチレン系樹脂においては、分子鎖同士の絡み合いの程度が大きくなると考えられる。このようにして、多分岐型スチレン系樹脂においては、流動性が高く維持されながらも溶融張力が高くなると考えられる。
スチレン系樹脂(つまり、多分岐型スチレン系樹脂)の製造方法においては、必ずしも多官能性単量体(つまり、分岐化剤)を用いることなく、スチレン系樹脂を製造することができる。つまり、多官能性単量体を用いても、多官能性単量体の使用量を例えば実質的に0近くにまで減らしても、多官能性単量体を用いなくても、スチレン系樹脂の製造が可能になる。多官能性単量体の使用量を減らしたり、多官能性単量体を使用しないことは、ゲル化の更なる防止や流動性の更なる向上につながる。ただし、重合時のゲル化が生じない限り、多官能性単量体を添加することも可能である。
水性媒体中の多官能性単量体の添加量は、核粒子100質量部に対して0.2質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。多官能性単量体を添加する場合には、いずれの工程において添加することができるが、例えば含浸工程、重合開始工程、追加含浸重合工程などにおいて添加が可能である。
多官能性単量体は、例えばラジカル重合性の二重結合を2つ以上有する単量体である。多官能性単量体としては、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルナフタレン、トリメチロールプロパントリアクリラート、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、シクロヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
[他の工程]
追加含浸重合工程後には、例えば粒子状のスチレン系樹脂が得られる。粒子状とは、球状、楕円体状、外観上、これらに近い形状などが含まれる。追加含浸工程後には、スチレン系樹脂中に残存するスチレン系単量体を重合させる残留モノマー重合工程を行うことができる。また、追加含浸重合工程後又は残留モノマー重合工程後に、スチレン系樹脂に付着した懸濁剤、界面活性剤等を水で洗浄する洗浄工程を行うことができる。また、追加含浸重合工程後、残留モノマー重合工程、又は洗浄工程後に、スチレン系樹脂の表面に、例えば帯電防止剤のような機能性成分を被覆する被覆工程を行うことができる。残留モノマー重合工程、洗浄工程、被覆工程は、選択的に行われる工程である。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではなく、本発明の要旨を超えない限り、種々の変更が可能である。「部」及び「%」は、特に記載しない限り質量基準である。オートクレーブ内の温度は、水性媒体の温度を意味する。
〔核粒子の作製〕
(製造例1)
撹拌装置を備えた内容積が1m3のオートクレーブに、脱イオン水350kg、懸濁剤として第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製、20.5%スラリー)2.1kg、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(10%水溶液)0.158kg、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸二ナトリウム(花王社製、ペレックスSSH 10%水溶液)0.053kg、電解質として酢酸ナトリウム0.535kgを投入した。
ついで、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.975kg(日油社製、パーブチルO)及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート0.284kg(日油社製、パーブチルE)、重合禁止剤として4-tert-ブチルカテコール15.4gを、スチレン390kgに溶解させ、110rpmで撹拌しながら、これをオートクレーブ内に供給し、オートクレーブ内の気相部を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間15分かけて90℃まで昇温した。
90℃到達後、100℃まで5時間かけて昇温した。100℃到達後、撹拌回転数を90rpmに変更し、1時間30分かけて115℃まで昇温した。115℃で2時間40分保持し、その後40℃まで2時間かけて冷却した。90℃までの昇温中、60℃到達の時点で、懸濁助剤として過硫酸カリウム1.95gをオートクレーブ内に投入した。
冷却後、内容物を取り出し、スチレン系樹脂粒子の表面に付着した第三リン酸カルシウムを硝酸により溶解させた後、遠心分離機で脱水、洗浄し、さらに気流乾燥装置で粒子の表面に付着した水分を除去して、スチレン系樹脂粒子を得た。
得られたスチレン系樹脂粒子を篩にかけて、直径が0.5~1.3mmの粒子(平均粒子径0.8mm)を取り出した。これを核粒子とした。なお、スチレン系樹脂粒子の平均粒子径d63は、日機装株式会社の粒度分布測定装置「ミリトラック JPA」により測定した。
(実施例1)
[分散工程]
撹拌装置を備えた内容積が1.5m3のオートクレーブに、脱イオン水410kg、ピロリン酸ナトリウム2.56kg、硝酸マグネシウム6.39kgを供給し、塩交換によりオートクレーブ内で懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムを合成した。界面活性剤としてアルキルスルホン酸ナトリウム(花王社製、ラテムルPS、40%水溶液)0.128kg、核粒子として製造例1で得られたスチレン系樹脂粒子(核粒子)78.2kgをオートクレーブに供給した後、オートクレーブ内の気相部を窒素置換した。具体的には窒素によりオートクレーブ内を0.3MPa(G)まで加圧し、その後オートクレーブ内の圧力が大気圧になるまでオートクレーブ内の気体を放出した。
[含浸工程]
次いで、50rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温した。80℃に到達後、撹拌回転数を100rpmに変更し、脱イオン水82kg、アルキルスルホン酸ナトリウム(花王社製、ラテムルPS、40%水溶液)0.166kg、スチレン(スチレン系単量体)27.6kg、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油社製、パーブチルE;BE、10時間半減期温度T1/299.0℃)1.54kg、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー(日油株式会社製、ノフマーMSD)0.22kgの混合物をホモジナイザーにより乳化液に調製し、乳化液をオートクレーブ内に供給した。その後、オートクレーブ内を0.1MPa(G)になるまで窒素で加圧し、80℃で15分保持した。
[重合開始工程]
その後、内容物を100rpmで撹拌しながら、1時間かけて105℃まで昇温した。
[追加含浸重合工程]
105℃到達後、内容物を100rpmで撹拌しながら、7時間30分保持した。オートクレーブ内の温度が105℃に到達時から7時間30分かけて、スチレン(スチレン系単量体)354.3kgを0.87kg/分の割合でオートクレーブ内に連続的に添加した。なお、スチレンの添加に当たっては、上記添加条件、重合に用いた重合開始剤の化学的特性、及び重合温度から計算したスチレンの重合速度をもとに、シミュレーションを行い、スチレンの添加中の核粒子中のスチレン含有量が10質量%以下となるようにスチレンを追加添加した。
なお、図2~図7に、実施例及び比較例におけるシミュレーション結果のグラフを示した。グラフは、横軸に経過時間(hr)、左側の縦軸に追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン系単量体の含有量(質量%)、右側の縦軸に重合温度(℃)をとった。グラフ中、経過時間に対する核粒子中のスチレン含有量変化を実線で示し、経過時間に対する重合温度変化を破線で示した。
[残留モノマー重合工程]
追加含浸重合工程後、内容物を100rpmで撹拌しながら、水性媒体を120℃まで2時間かけて昇温し、120℃で3時間保持することで未反応のスチレン系単量体を重合させた。
[冷却工程]
残留モノマー重合工程後、内容物を100rpmで撹拌しながら、6時間かけて水性媒体を35℃まで冷却した。
オートクレーブ内を冷却後、オートクレーブから取り出したスチレン系樹脂粒子を希硝酸で洗浄して樹脂粒子表面に付着した懸濁剤を溶解除去した後、水洗を行い、さらに遠心分離機で脱水した。帯電防止剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル0.01質量部(スチレン系樹脂100質量部に対する値)で被覆後、気流乾燥機により樹脂粒子表面の水分を除去した。
(実施例2)
重合開始剤の量を1.54kgから2.43kg、連鎖移動剤の量を0.22kgから0.88kgに変更した以外は実施例1と同様にスチレン系樹脂を作製した。
(実施例3)
重合開始剤の量を1.54kgから3.06kg、連鎖移動剤の量を0.22kgから1.15kgに変更した以外は実施例1と同様にスチレン系樹脂を作製した。
(実施例4)
重合開始剤をt-ヘキシルパーオキシベンゾエート(日油社製、パーヘキシルZ;HZ、10時間半減期温度T1/2:99.4℃)1.62kg、連鎖移動剤の量を0.22kgから0.88kgに変更した以外は実施例1と同様にスチレン系樹脂を作製した。
(実施例5)
重合開始剤をt-ヘキシルパーオキシベンゾエート(日油社製、パーブチルZ;TBPB、10時間半減期温度T1/2:104.3℃)1.62kg、連鎖移動剤の量を0.22kgから0.88kg、追加含浸重合工程の温度を105℃から110℃に変更した以外は実施例1と同様にスチレン系樹脂を作製した。
(比較例1)
実施例1とは、以下の点を変更した。具体的には、分散工程において、核粒子の供給量を105kgに変更した。含浸工程の温度を75℃に変更し、75℃に到達後に添加するスチレンの量を53kgに変更し、重合開始剤を過酸化ベンゾイル(日本油脂社製 ナイパーBW、水希釈粉体品、純度75質量%;BPO、10時間半減期温度T1/2:73.6℃)1.79kg、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油社製、パーブチルE;BE、10時間半減期温度T1/2:99.0℃)0.18kgに変更し、多官能性単量体(つまり、分岐化剤)としてジビニルベンゼン11gを添加した乳化液をオートクレーブ内に供給した。連鎖移動剤は用いていない。その後、75℃で2時間保持した。75℃で2時間保持した後、温度はそのままにして2時間30分かけてスチレン321kgとジビニルベンゼン89gの混合物を2.1kg/分の割合で連続的に添加した。スチレン系単量体の追加添加開始時、添加開始から1.5時間経過時、追加添加終了時のそれぞれにおいて、後述する方法によりスチレン系樹脂粒子中のスチレン含有量を測定したところ、核粒子中のスチレン含有量は、追加添加開始時は8質量%、添加開始から1.5時間経過時は58質量%、追加添加終了時は66質量%であった。次いで、2時間かけて108℃まで昇温し、20分かけて112℃まで昇温し、2時間かけて125℃まで昇温した。その後、125℃で1時間30分保持し、6時間かけて35℃まで冷却した。なお、これら工程は、75℃到達時までは内容物を50rpmで撹拌し、それ以降は100rpmで撹拌しつつ行った。
(比較例2)
スチレン系樹脂として、市販品のDIC社製ポリスチレン「HP780AN」を用いて評価を行った。
(比較例3)
スチレン系樹脂として、市販品のPSジャパン社製ポリスチレン「G0002」を用いて評価を行った。比較例3のスチレン系樹脂は直鎖状のポリスチレンである。
<評価>
下記方法にて実施例及び比較例のスチレン系樹脂の物性を測定した。その結果を後述の表1~表3に示す。
〔残存スチレン単量体(残留モノマー)の測定〕
スチレン系樹脂1gを精秤し、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)25mlに溶解させ、ガスクロマトグラフィー(GC)で測定し、検量線で校正して、残存スチレンを定量した。なお、ガスクロマトグラフィーの測定条件は次の通りである。
使用機器:島津製作所社製ガスクロマトグラフGC-9A
カラム充填剤:
〔液相名〕PEG-20M
〔液相含浸率〕25質量%
〔担体粒度〕60/80メッシュ
〔担体処理方法〕AW-DMCS(水洗、焼成、酸処理、シラン処理)
カラム材質:内径3mm、長さ3000mmのガラスカラム
キャリアガス:N2
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
定量:内部標準法
〔残留オリゴマー量の測定〕
残留オリゴマー量は、残留するスチレンダイマーとスチレントリマーとの合計量である。まず、スチレン系樹脂約0.1gを精秤し、テトラヒドロフラン10mlに溶解させ、23℃のn-ヘプタン約250ml中に滴下して樹脂を析出させた。樹脂を濾別した濾液をガスクロマトグラフ質量分析計で測定した。なお、テクノベル製小型二軸押出機を用いて、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度200℃の条件で混練したものを測定用試料として用いた。ガスクロマトグラフ質量分析の測定条件は次の通りである。
使用機器:島津製作所社製ガスクロマトグラフ質量分析計GC/MS-QP5050A
カラム:J&W Scientific社製DB-5MS、0.25mm×30m(固定相:5%ジフェニル-95%ジメチル-ポリシロキサン)
キャリアガス:ヘリウム、カラム流量1.6ml/min
試料注入量:1μL
〔溶融粘度の測定〕
東洋精機社製キャピログラフ1Dにより、温度200℃、せん断速度100sec-1におけるスチレン系樹脂の溶融粘度を測定した。測定には内径1mm、長さ10mmのオリフィスを用いた。得られたスチレン系樹脂から無作為に採取した5つの測定用試料に対して溶融粘度の測定を行い、それらの測定値の算術平均値をスチレン系樹脂の溶融粘度とした。
〔溶融張力(Melt Tension;MT)の測定〕
東洋精機社製キャピログラフ1Dにより、温度200℃におけるスチレン系樹脂の溶融張力を測定した。測定には内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスを用いた。ピストン降下速度10mm/分にてオリフィスからストランド状に押出された溶融状態の樹脂を、荷重測定部を通して引取り速度5m/分にて引取り、荷重を測定した。なお、得られたスチレン系樹脂を均質化するために、東洋精機社製ラボプラストミルを用いて行い、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度200℃の条件で混練したものを測定用試料として用いた。なお、スチレン系樹脂の溶融張力が高すぎて単体では溶融張力が測定できない場合には、得られたスチレン系樹脂にPSジャパン社製ポリスチレン「680」をそれぞれ75質量%、50質量%の割合で混練したものを測定試料として用いてそれらの溶融張力を測定し、外挿することにより「680」の配合量が0のときの溶融張力を求め、その値をスチレン系樹脂の溶融張力とした。
〔テトラヒドロフランの不溶分(THF不溶分)〕
スチレン系樹脂1gを精秤して、テトラヒドロフラン30mlを加え、温度23℃で24時間浸漬後、5時間振とうし、静置した。次いで上澄みをデカンテーションにより取り除き、再度テトラヒドロフラン10mlを加えて静置し、上澄みをデカンテーションにより取り除いた後、温度23℃で24時間乾燥させた。乾燥後の重量を求め、次式によりTHF不溶分を求めた。
THF不溶分(%)=[乾燥後の不溶分重量/試料の重量]×100
〔ポリスチレン換算分子量(GPC)〕
直鎖ポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により、スチレン系樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)を測定した。具体的には、東ソー社製のHLC-8320GPC EcoSECを用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、流量:0.6ml/分、試料濃度:0.1wt%という条件で測定した。カラムとしては、TSKguardcolumn SuperH-H×1本、TSK-GEL SuperHM-H×2本を直列に接続して用いた。すなわち、スチレン系樹脂をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させ、GPCで分子量を測定した。そして、測定値を標準ポリスチレン(直鎖)で校正して、スチレン系樹脂の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、Z平均分子量Mzをそれぞれ求めた。
〔絶対分子量(GPC-MALS)〕
GPC-MALS法により、スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’を測定した。具体的には、島津製作所社製Prominence LC-20AD(2HGE)/WSシステム、Wyatt Technology社製の多角度光散乱検出器 DAWN HELEOS IIを用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、流量:1.0ml/minという条件で測定した。カラムとしては、東ソー社製TSKgel HHR-H×1本、TSKgel GMHHR×2本、を直列に接続して用いた。測定の解析は、Wyatt社の解析ソフト ASTRAにより行い、スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’を求めた。屈折率の濃度増分dn/dcには0.185ml/gの値を用いて解析を行った。
〔収縮因子、分岐度〕
分岐状スチレン系樹脂の回転半径(Rb)の二乗と直鎖状スチレン系樹脂の回転半径(Rl)の二乗の比を収縮因子gとして、分岐度Bm,w、分岐度Bm,1000を求めた。本解析ではスチレン系樹脂を3本鎖分岐と仮定して分岐度を求めた。直鎖ポリスチレンとしては、製造例1で得られたスチレン系樹脂のデータを用いた。
各実施例及び比較例と同条件で、スチレン系樹脂の製造を開始し、追加含浸重合工程開始時、追加含浸重合工程開始から3時間目、追加含浸重合工程終了時のそれぞれの系において、反応器の温度を10分以内に30℃まで冷却し、重合中のスチレン系樹脂粒子を取り出した。次いで、スチレン系樹脂粒子をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させた。溶解物についてのガスクロマトグラフィー(GC)により、スチレン系樹脂粒子中の残存スチレンを定量して、追加含浸重合工程開始時、追加含浸重合工程開始時から3時間目、及び追加含浸重合工程終了時の核粒子中のスチレン系単量体の含有量を確認した。定量は、検量線で校正することにより行った。その結果、シミュレーションによる核粒子中のスチレン系単量体の含有量と、実測した核粒子中のスチレン系単量体の含有量とが一致していることを確認した。また、追加含浸重合工程開始時、追加含浸重合工程開始時から3時間目、及び追加含浸重合工程終了時の核粒子中のスチレン系単量体の含有量の算術平均値を求めた。
ガスクロマトグラフィーの測定条件は次の通りである。
使用機器:島津製作所製のガスクロマトグラフGC-9A
カラム充填剤:
〔液相名〕PEG-20M
〔液相含浸率〕25質量%
〔担体粒度〕60/80メッシュ
〔担体処理方法〕AW-DMCS(水洗、焼成、酸処理、シラン処理)
カラム材質:内径3mm、長さ3000mmのガラスカラム
キャリアガス:N2
検出器:FID(水素炎イオン化検出器)
定量:内部標準法
Figure 0007089177000009
Figure 0007089177000010
表1及び表2からわかるように、市販の分岐状のスチレン系樹脂(比較例2)では、重量平均分子量Mw’が100万未満で分子量が小さく、Mz’/Mn’が7未満で分子量分布が狭い。したがって、比較例2は、溶融張力が低い。
比較例1は、重量平均分子量Mw’が100万を超えている。しかし、比較例1は、Mz’/Mn’が7未満で分子量分布が狭い。また、比較例1では、さらに多官能性単量体が添加されているため、溶融時の流動性が低いだけでなく、溶融張力も低い。
比較例3は、市販の直鎖状のスチレン系樹脂であり、溶融張力が低い。
これに対し、実施例のスチレン系樹脂は、いずれも溶融粘度が2000Pa・sを下回り、流動性に優れ、かつ、500mN以上の高い溶融張力を示した。
(応用例1)
本例は、市販の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)に、実施例のスチレン系樹脂(つまり、多分岐型スチレン系樹脂)を混合した混合樹脂を用いて、一軸伸張粘度を調べた例である。
具体的には、まず、実施例1~5、比較例1(従来の分岐ポリスチレン)、比較例2(市販の分岐ポリスチレン)、比較例3(市販の直鎖ポリスチレン)の各スチレン系樹脂と、PSジャパン社製HIPS(グレード名:475D、溶融粘度:1310Pa・s、比(a1/a2):1.04)とをそれぞれ重量比1:9の割合で混合し、混合物を二軸押出機を用いて(スクリュー回転数50rpm、樹脂温度200℃)で混練して混合樹脂ペレットを得た。
次に、混合樹脂ペレットを熱プレス機にて200℃の条件下でプレスして厚さ0.8mmの板状に加工した。このようにして、一軸伸長粘度の測定用試料を作製した。測定は、動的粘弾性測定装置Anton Paar社製PHYSICA MCR301及び一軸伸長粘度測定用冶具SERを用いて、160℃、0.5s-1、300測定点数(0.01sから26sを「対数にて取得」)の条件にて行い、時間-一軸伸長粘度曲線(両対数プロット)における線形領域の一次近似直線の傾き(a2)に対する非線形領域の一次近似直線の傾き(a1)の比(a1/a2)を求めた。その結果を上述の表2に併記する。この比(a1/a2)が大きいほど、樹脂のひずみ硬化が大きく、ブロー成形や真空成形などの成形加工において成形性に優れる樹脂であることを意味する。また、混合樹脂ペレットの溶融粘度を上記方法により測定した。表2より知られるように、実施例1~5の各スチレン系樹脂を耐衝撃性ポリスチレンに添加することにより、耐衝撃性ポリスチレンが有する流動性を損なうことなく、比較例に比べて、比(a1/a2)が大きくなっている。
このことは、実施例のスチレン系樹脂を他の汎用樹脂等に添加することにより、その成形性の向上が可能になることを意味している。これは、実施例のスチレン系樹脂が、上述のように溶融張力が高く、流動性に優れるからであると考えられる。つまり、例えば分岐のない又は分岐の少ないスチレン系樹脂等の汎用樹脂に添加することにより、延伸加工時の破断を抑制でき、さらに汎用樹脂が有する流動性を損なうことないため、他の樹脂への配合も容易になるからであると考えられる。

Claims (7)

  1. GPC-MALS法により求められる、重量平均分子量Mw’が100万~300万であり、数平均分子量Mn’が30万以上100万以下であるスチレン系樹脂であって、
    数平均分子量Mn’に対するZ平均分子量Mz’の比Mz’/Mn’が7以上であると共に、スチレン1000単位あたりの分岐度が0.2以上5以下であり、
    上記スチレン系樹脂を構成する高分子鎖における多官能性単量体由来の成分の含有量が上記スチレン系樹脂100質量部中に50質量ppm未満(0を含む)である、スチレン系樹脂。
  2. 上記スチレン系樹脂を構成する高分子鎖における多官能性単量体由来の成分の含有量が0である、請求項に記載のスチレン系樹脂。
  3. 上記GPC-MALS法により求められるZ平均分子量Mz’が462万以上である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂。
  4. 上記GPC-MALS法により求められるZ平均分子量Mz’が500万以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂。
  5. 上記スチレン系樹脂中のスチレンオリゴマーの含有量が0.1質量%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂。
  6. 上記スチレン系樹脂中のテトラヒドロフラン不溶分の含有量が0.1質量%以下(0を含む)、請求項1~のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂。
  7. 上記スチレン系樹脂の温度200℃、剪断速度100sec-1における溶融粘度が2000Pa・s以下であると共に、温度200℃における溶融張力が500mN以上である、請求項1~のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂。
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