JP7220082B2 - 樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]ゴム分を含む耐衝撃性ポリスチレンとスチレン系樹脂とを混練し、耐衝撃性ポリスチレンとスチレン系樹脂との混合物からなる樹脂組成物を製造する方法であって、
前記耐衝撃性ポリスチレンと前記スチレン系樹脂との合計量を100質量%としたとき、前記混合物における、前記耐衝撃性ポリスチレンの配合量が50質量%を超え99質量%以下である共に、前記スチレン系樹脂の配合量が1質量%以上50質量%未満であり、
GPC-MALS法により求められる、前記スチレン系樹脂の、重量平均分子量Mw’が100万以上500万以下であり、分子量100万以上における収縮因子gmが0.85以下であり、分子量100万~150万における収縮因子g1が0.85以下である、樹脂組成物の製造方法。
[2]前記スチレン系樹脂が分子鎖中に多官能性単量体由来の成分を含まない、[1]に記載の樹脂組成物の製造方法。
[3]前記スチレン系樹脂のテトラヒドロフラン不溶分が0.1質量%以下(0を含む)である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物の製造方法。
[4]GPC-MALS法により求められる、前記スチレン系樹脂のZ平均分子量Mz’が300万以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
[5]GPC-MALS法により求められる、前記耐衝撃性ポリスチレンの重量平均分子量Mw’が1万以上50万以下である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
[6]GPC-MALS法により求められる、前記スチレン系樹脂における、分子量が100万以上である分子の割合が20質量%以上である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
[7]前記耐衝撃性ポリスチレンと前記スチレン系樹脂との合計量を100質量%としたとき、前記混合物における、前記耐衝撃性ポリスチレンの配合量が70質量%を超え97質量%未満であると共に、前記スチレン系樹脂の配合量が3質量%を超え30質量%未満である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の樹脂組成物の製造方法。
GPC-MALS法は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」と称することがある)と多角度光散乱検出器(Multi Angle Light Scattering:MALS)とを組み合わせた手法である。
GPC-MALS法において、スチレン系樹脂をテトラヒドロフラン等の溶媒に溶解させてスチレン系樹脂溶液を調製し、これをGPC測定にかけると、分子サイズが大きいポリマーほど先に溶出することから、分子サイズによりスチレン系樹脂を分けることができる。引き続き、分けられたスチレン系樹脂溶液をMALS測定にかけることにより、分子サイズにより分けられたスチレン系樹脂の絶対分子量及び分子サイズに相当する二乗平均回転半径<R2>を算出することができ、さらに、測定結果から収縮因子gが求められる。
スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’は、具体的には、株式会社島津製作所製の「Prominence LC-20AD(2HGE)/WSシステム」、Wyatt Technology社製の多角度光散乱検出器「DAWN HELEOS II」を用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、流量1.0ml/minという条件で測定される。カラムとしては、東ソー株式会社製の「TSKgel GMHHR」×2本、東ソー株式会社製の「TSKgel HHR―H」×1本を直列に接続して用いる。測定の解析は、Wyatt Technology社の解析ソフト「ASTRA」により行い、スチレン系樹脂組成物の数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’が求められる。なお、GPC-MALS法により求められる数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’は、スチレン系樹脂の絶対分子量である。
一方、スチレン系樹脂の流動性を維持したまま、溶融張力を向上させるために、樹脂の分子鎖を分岐状とすることが有用である。分岐構造を有する樹脂は、分子鎖同士の絡み合いの程度が大きくなるため溶融張力が高くなり、延伸加工時に破断しにくくなる。スチレン系樹脂に分岐構造を導入する方法として、分岐剤としてジビニルベンゼン等の多官能性単量体の存在下でスチレン単量体の重合を行なう方法がある。しかし、このような重合方法では、多官能性単量体が重合した部分に分岐点が集中し、ミクロゲルが生成しやすいという問題があった。また、より分岐度が高いスチレン系樹脂を製造するために多官能性単量体の添加量を多くすると、反応系内にて多官能性単量体同士が近接することで、重合反応中にゲル化が生じ易くなる。そのため、分岐剤の添加量が制限されてしまい、樹脂の流動性を大きく低下させることなく、溶融張力の高いスチレン系樹脂を製造することは困難であった。また、この方法においては、スチレン系樹脂を高分子量化することが困難であった。
このようなスチレン系樹脂を、ゴム分を含む耐衝撃性ポリスチレンに所定量配合して混練することにより、樹脂組成物中に分岐度の高い高分子量成分が含まれ、分子鎖同士の絡み合いの程度が高められ、樹脂組成物の溶融張力が十分に高められる。また、成形時において、樹脂組成物が高い歪み硬化性を発現すると共に、歪み速度が小さい条件においても、樹脂組成物が歪み硬化性を発現するため、複雑な成形金型を用いた熱成形等が可能な、成形性に優れる樹脂組成物が得られるものと考えられる。
なお、歪み硬化性は、歪みの増加と共に、伸長粘度が急激に増加する現象である。
また、収縮因子は、スチレン系樹脂の分岐の程度を示しており、分岐度が大きいスチレン系樹脂ほど、その回転半径が小さくなるため、収縮因子は小さくなる。一方、分岐がほとんどない直鎖状のスチレン系樹脂ほど、収縮因子は1に近づく。
〔ゴム分〕
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、ゴム分を含むゴム変性ポリスチレンである。このようなゴム変性ポリスチレンは、通常、ポリブタジエン等のゴム状重合体粒子の存在下でスチレンを重合させることで得られるものである。
耐衝撃性ポリスチレン中のゴム分は、好ましくは3~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。
HIPS中のゴム分は、ウィイス法により求めることができる。具体的には、まず、HIPSをクロロホルム中に溶解させ、この溶液にウィイス試薬(一塩化ヨウ素の酢酸溶液)とヨウ化カリウム水溶液とを一定量加え、十分に反応させる。次に、この溶液中に含まれる未反応のヨウ化カリウムをチオ硫酸ナトリウム溶液を用いて滴定する。滴定の結果から、ブタジエンと反応し、ブタジエンに付加したヨウ素量を求め、この値とウィイス試薬に含まれていたヨウ素量との関係から、HIPS中のゴム分を求めることができる。
樹脂組成物の成形加工性を高める観点から、GPC-MALS法により求められる、耐衝撃性ポリスチレンの重量平均分子量Mw’は、100万以下であることが好ましく、50万以下であることがより好ましく、40万以下であることが更に好ましく、30万以下であることが特に好ましい。また、樹脂組成物を成形加工することにより得られる成形体の機械的物性を高める観点から、耐衝撃性ポリスチレンの重量平均分子量Mw’は、1万以上であることが好ましく、5万以上であることがより好ましく、10万以上であることが更に好ましく、15万以上であることが特に好ましい。
なお、耐衝撃性ポリスチレンの重量平均分子量Mw’は、ゴム分を除去する工程を実施する以外は上述したGPC-MALS法によるスチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’の測定方法と同様に測定される。
具体的には、まず、耐衝撃性ポリスチレン(ゴム変性ポリスチレン)をメチルエチルケトン/メタノール混合溶媒に溶解させ、遠心分離機にて遠心分離し、上澄み液を得る。この上澄み液をメタノール中に少量ずつ滴下し、マトリックス相を沈殿させる。次いで、ペーパーフィルタを用いてメタノール溶液を吸引ろ過し、マトリックス相であるポリスチレンをろ別する。ろ別したポリスチレンを真空乾燥した後、GPC-MALS法による測定の試料として用いる。このようにして、耐衝撃性ポリスチレンの重量平均分子量Mw’を測定することができる。
スチレン系樹脂と良好に混合させることができる観点から、耐衝撃性ポリスチレンの、分子量100万以上、分子量100万~150万及び分子量150万以上における収縮因子gm、g1、g2は、それぞれ、0.85を超えることが好ましく、0.90以上であることがより好ましく、0.95以上であることが更に好ましい。なお、耐衝撃性ポリスチレンの収縮因子gは、ゴム分を除去する工程を実施する以外は上述したGPC-MALS法によるスチレン系樹脂の収縮因子gと同様に求められる。
スチレン系樹脂と良好に混合させることができると共に、樹脂組成物の溶融時の流動性を確保し、成形加工性を高める観点から、JIS K 7210-1:2014に準拠した、200℃、荷重5kgの条件における耐衝撃性ポリスチレンのメルトフローレイトは、好ましくは20g/10min以下であり、より好ましくは10g/10min以下であり、更に好ましくは5g/10min以下であり、特に好ましくは3g/10min以下である。また、耐衝撃性ポリスチレンのメルトフローレイトの下限は、概ね0.1g/10minであることが好ましく、1g/10minであることがより好ましい。
190℃における耐衝撃性ポリスチレンの溶融張力は、好ましくは500mN以下であり、より好ましくは400mN以下であり、更に好ましくは300mN以下である。
スチレン系樹脂と良好に混合させることができると共に、樹脂組成物の溶融時の流動性を確保し、成形加工性を高める観点から、200℃、剪断速度100sec-1における耐衝撃性ポリスチレンの溶融粘度は、好ましくは3000Pa・s以下であり、より好ましくは2500Pa・s以下であり、更に好ましくは2000Pa・s以下である。その下限は、概ね500Pa・sであることが好ましく、800Pa・sであることがより好ましく、1000Pa・sであることが更に好ましい。
本発明の樹脂組成物の製造方法に用いられるスチレン系樹脂は、樹脂のゲル化を防止しつつ、上記重量平均分子量や上記収縮因子を有する樹脂が安定して得られる観点から、分子鎖中に多官能性単量体由来の成分を含まないことが好ましい。
スチレン系樹脂の数平均分子量Mn’は、樹脂組成物の溶融張力を高める観点から、好ましくは30万以上であり、より好ましくは50万以上である。また、樹脂組成物の成形加工時の流動性を確保する観点から、該数平均分子量Mn’は好ましくは300万以下であり、より好ましくは100万以下であり、更に好ましくは90万以下である。
GPC-MALS法により求められる、スチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’は100万以上500万以下である。重量平均分子量Mw’が小さすぎると、樹脂組成物としたときに、樹脂組成物の成形性を向上させることができないおそれがある。上記観点から、該重量平均分子量Mw’は、好ましくは120万以上であり、より好ましくは160万以上であり、更に好ましくは180万以上である。また、樹脂組成物の成形加工時の流動性を確保する観点から、重量平均分子量Mw’は好ましくは300万以下であり、より好ましくは250万以下である。
GPC-MALS法により求められる、スチレン系樹脂のZ平均分子量Mz’は、樹脂組成物の溶融張力を高める観点から、好ましくは300万以上であり、より好ましくは350万以上であり、更に好ましくは500万以上である。また、樹脂組成物の成形加工時の流動性を確保する観点から、該Z平均分子量Mz’は好ましくは1500万以下であり、より好ましくは1200万以下である。
スチレン系樹脂のZ平均分子量Mz’と数平均分子量Mn’との比(Mz’/Mn’)は、4以上であることが好ましい。特に、溶融時の高流動性と高溶融張力とを高いレベルで両立させ、樹脂組成物の成形性を向上させる観点から、Mz’/Mn’は、より好ましくは7以上であり、更に好ましくは8以上であり、より更に好ましくは10以上である。Mz’/Mn’の上限は、好ましくは25であり、より好ましくは20である。
スチレン系樹脂の分子量100万以上における収縮因子gmは0.85以下であり、好ましくは0.80以下であり、より好ましくは0.75以下であり、更に好ましくは0.70以下である。その下限は概ね0.4程度であることが好ましい。
スチレン系樹脂の分子量100万~150万における収縮因子g1は、0.85以下であり、好ましくは0.80以下であり、より好ましくは0.75以下であり、更に好ましくは0.70以下である。その下限は概ね0.4程度であることが好ましい。
スチレン系樹脂の分子量150万以上における収縮因子g2は、0.85以下であり、好ましくは0.80以下であり、より好ましくは0.75以下であり、更に好ましくは0.70以下である。その下限は概ね0.4程度であることが好ましい。
GPC-MALS法により求められる、スチレン系樹脂における、分子量が100万以上である分子の割合は20質量%以上であることが好ましい。前記割合を満たすことで、分子鎖中に多くの分岐が存在する高分子量成分が多く含まれたスチレン系樹脂となり、樹脂組成物としたときに、樹脂組成物の成形性をさらに向上させることができる。上記観点から、分子量が100万以上である分子の割合は、より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは30質量%以上である。
スチレン系樹脂が共重合体である場合、その共重合体に含まれるスチレン単量体に由来する構造単位の割合は、少なくとも50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
スチレン系樹脂として、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が例示される。
樹脂組成物の溶融時の流動性を大きく低下させない観点から、JIS K 7210-1:2014に準拠した、200℃、荷重5kgの条件におけるスチレン系樹脂のメルトフローレイトは、好ましくは5g/10min以下であり、より好ましくは3g/10min以下である。また、スチレン系樹脂のメルトフローレイトの下限は、概ね0.1g/10minであることが好ましい。
190℃におけるスチレン系樹脂の溶融張力は、好ましくは1000mN以上であり、より好ましくは1500mN以上であり、更に好ましくは2000mN以上である。その上限は、概ね5000mNであることが好ましく、4000mNであることがより好ましい。
樹脂組成物の溶融時の流動性を大きく低下させない観点から、200℃、剪断速度100sec-1におけるスチレン系樹脂の溶融粘度は、好ましくは4000Pa・s以下であり、より好ましくは3000Pa・s以下であり、更に好ましくは2500Pa・s以下である。その下限は、概ね1000Pa・sであることが好ましい。
樹脂のゲル化を防止しつつ、上記重量平均分子量や上記収縮因子を有する樹脂が安定して得られる観点や、樹脂組成物としたときにゲル状物の発生を抑制する観点から、スチレン系樹脂のテトラヒドロフラン不溶分は、好ましくは0.1質量%以下(0を含む)であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、更に好ましくは0.01質量%以下である。
THF不溶分(%)=[乾燥後の不溶分の質量/試料の質量]×100
GPC-MALS法により求められる、重量平均分子量Mw’が100万以上500万以下であり、分子量100万以上における収縮因子gmが0.85以下であり、分子量100万~150万における収縮因子g1が0.85以下である、本発明の樹脂組成物の製造方法に用いられるスチレン系樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下の工程(A)~(D)を含むことが好ましい。なお、スチレン系樹脂の製造方法は、得られたスチレン系樹脂を洗浄する工程等の他の工程を、更に含んでいてもよい。
工程(B):前記水性媒体中に、有機過酸化物を含む重合開始剤及びスチレン単量体を添加し、実質的にスチレン単量体の重合が進行しない温度で前記核粒子に前記重合開始剤及び前記スチレン単量体を含浸させる含浸工程、
工程(C):前記水性媒体を昇温して、前記スチレン単量体の重合を開始させる重合開始工程、
工程(D):前記水性媒体中に、スチレン単量体を追加して添加し、前記核粒子に該スチレン単量体を含浸させつつ、スチレン系樹脂にスチレン単量体をグラフト重合させる追加含浸重合工程。
分散工程では、核粒子を水性媒体中に分散させることが好ましい。核粒子の水性媒体中への分散方法は、特に制限されず、例えば、核粒子と共に、水性媒体に懸濁剤と、必要に応じて界面活性剤とを添加し、混合すればよい。
核粒子は、スチレン系樹脂を主成分とする。
スチレン系樹脂としては、スチレン単量体の重合体、スチレン単量体と他の単量体との共重合体、及びこれらの2種以上の混合物が挙げられる。その共重合体に含まれるスチレン単量体に由来する構造単位は50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
スチレン系樹脂として、具体的には、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が例示される。スチレン系樹脂は、1種で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、水素引抜反応が生じ易く、分岐状の分子鎖を生じ易い点から、スチレン系樹脂はポリスチレンであることが好ましい。
核粒子は、スチレン系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよいが、スチレン系樹脂を70質量%以上含んでいることが好ましく、85質量%以上含んでいることがより好ましく、スチレン系樹脂からなることが更に好ましい。
水性媒体としては、通常、脱イオン水等の水が用いられるが、核粒子が溶解しない限度において、該水性媒体はアルコール等の水溶性有機溶剤を含んでいてもよい。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。具体的には、界面活性剤としては、アルキルスルホン酸塩(例えば、ドデシルスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸二ナトリウム)、ポリオキシアルキルエーテルリン酸エステル、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸塩等が挙げられる。界面活性剤は1種で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、界面活性剤と共に、例えば、塩化リチウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム等の電解質を用いてもよい。
懸濁剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の親水性高分子;第三リン酸カルシウム、硝酸マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、ヒドロキシアパタイト、酸化アルミニウム、タルク、カオリン、ベントナイト等の難水溶性無機塩等が挙げられる。
懸濁剤は1種で又は2種以上組み合わせて用いられてもよい。親水性高分子及び難水溶性無機塩のいずれか一方又は両方を用いてもよい。
懸濁剤として難水溶性無機塩を使用する場合には、アルキルスルホン酸ナトリウムやアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤を併用することが好ましい。
含浸工程では、核粒子が分散している水性媒体中に、有機過酸化物を含む重合開始剤及びスチレン単量体を添加し、実質的にスチレン単量体の重合が進行しない温度で核粒子に重合開始剤及びスチレン単量体を含浸させることが好ましい。
ここで、「実質的にスチレン単量体の重合が進行しない温度」とは、有機過酸化物が実質的に分解しない温度である。
前記含浸工程におけるスチレン単量体の添加量は、前記核粒子100質量部に対して10~200質量部であることが好ましく、30~180質量部であることがより好ましく、40~160質量部であることが更に好ましい。上記範囲とすることで、核粒子に重合開始剤を十分に含浸させることができると共に、細粒の発生を抑制することができる。
有機過酸化物の分解を抑制するという観点から、有機過酸化物の10時間半減期温度をT1/2としたとき、含浸工程における水性媒体の温度を(T1/2-15)℃以下とすることが好ましく、(T1/2-18)℃以下とすることがより好ましい。核粒子へのスチレン単量体の含浸性の観点から、含浸工程における水性媒体の温度を70℃以上とすることが好ましく、75℃以上とすることがより好ましい。なお、含浸工程の水性媒体の温度を、前記範囲内で一定としてもよく、徐々に上昇させるなど、変化させてもよい。
本発明の製造方法においては、重合開始剤は、有機過酸化物を含む。
有機過酸化物としては、例えば過酸化ベンゾイル、ジラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。これらの有機過酸化物は1種で又は2種以上組み合わせて用いられてもよい。
重合開始工程では、重合開始剤とスチレン単量体が含浸された核粒子を分散している水性媒体の温度を昇温し、スチレン単量体の重合を開始させる。具体的には、水性媒体の温度を、有機過酸化物が実質的に分解する温度とすることにより、スチレン単量体の重合を開始させることが好ましい。生産性の観点から、水性媒体の温度を(T1/2-10)℃以上とすることが好ましく、(T1/2-5)℃以上とすることがより好ましい。
追加含浸重合工程では、水性媒体中、すなわち、重合開始工程を経て、核粒子内でスチレン単量体の重合が始まっている核粒子を含む水性媒体中に、スチレン単量体を追加して添加して、核粒子にスチレン単量体を含浸させて重合させることが好ましい。
前記追加含浸重合工程におけるスチレン単量体の添加量は、前記核粒子100質量部に対して50~700質量部であると共に、前記追加含浸重合工程における前記核粒子中のスチレン単量体の含有量を10質量%以下に維持することが好ましい。上記範囲とすることで、スチレン系樹脂の収率を低下させることなく、スチレン系樹脂へのスチレン単量体のグラフト重合による分岐鎖の生成を促進させることができ、十分な分岐鎖を有するスチレン系樹脂を安定して得ることができる。
かかる観点から、前記追加含浸重合工程におけるスチレン単量体の添加量は、前記核粒子100質量部に対して100~600質量部であることがより好ましく、200~550質量部であることが更に好ましい。また、前記追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン単量体の含有量は8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることが更に好ましい。
なお、追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン単量体の含有量は、重合に用いる重合開始剤の化学的特性、重合温度から求めたスチレンの重合速度等をもとに計算することが可能である。その計算値をもとに所望の含有量となるようにスチレン単量体の追加添加のタイミング及び添加速度(添加割合)を調整することにより、追加含浸重合工程における核粒子中のスチレン単量体の含有量を調整することができる。また、重合中の核粒子を反応系から抜き出し、実際の各粒子中のスチレン単量体の含有量を求めることもできる。
上記工程(D)においては、連鎖移動剤の存在下でスチレン単量体を重合させることが好ましい。連鎖移動剤により、スチレン系樹脂の分岐点の数をより多くして分岐度を高め、スチレン系樹脂をより高分子量化することができ、さらに、分岐点間の距離を離すことによりゲル化を回避することができる。
また、連鎖移動剤の総添加量は、核粒子とスチレン単量体の総添加量の合計100質量部に対して、概ね0.01~2質量部であることが好ましく、より好ましくは0.02~1質量部である。
(II)含浸工程において、核粒子に連鎖移動剤を含浸させる方法。
(III)重合開始工程において核粒子に連鎖移動剤を含浸させる方法。
(IV)追加含浸重合工程において核粒子に連鎖移動剤を含浸させる方法。
本発明の樹脂組成物の製造方法は、上述したゴム分を含む耐衝撃性ポリスチレンと、上述したスチレン系樹脂とを混練し、耐衝撃性ポリスチレンとスチレン系樹脂との混合物からなる樹脂組成物を製造するものである。
耐衝撃性ポリスチレンとスチレン系樹脂との混合物において、耐衝撃性ポリスチレンとスチレン系樹脂との合計量を100質量%としたとき、耐衝撃性ポリスチレンの配合量が50質量%を超え99質量%以下であると共に、スチレン系樹脂の配合量が1質量%以上50質量%未満である。
耐衝撃性ポリスチレンの配合量が少なすぎると、樹脂組成物中のスチレン系樹脂の配合量が多くなりすぎ、耐衝撃性ポリスチレンに由来する、樹脂組成物の耐衝撃性が低下するおそれがある。一方、耐衝撃性ポリスチレンの配合量が多すぎると、樹脂組成物中のスチレン系樹脂の配合量が少なくなりすぎ、樹脂組成物の熱成形等による成形加工性を十分に高めることが困難となる。
樹脂組成物の成形加工性をより高める観点からは、前記混合物における、耐衝撃性ポリスチレンの配合量が97質量%未満であると共に、スチレン系樹脂の配合量が3質量%を超えることが好ましく、耐衝撃性ポリスチレンの配合量が95質量%以下であると共に、スチレン系樹脂の配合量が5質量%以上であることがより好ましく、耐衝撃性ポリスチレンの配合量が92質量%以下であると共に、スチレン系樹脂の配合量が8質量%以上であることが更に好ましく、耐衝撃性ポリスチレンの配合量が85質量%以下であると共に、スチレン系樹脂の配合量が15質量%以上であることが特に好ましい。
また、耐衝撃性ポリスチレンに由来する耐衝撃性をより発現させる観点からは、前記混合物における、耐衝撃性ポリスチレンの配合量が70質量%を超えると共に、スチレン系樹脂の配合量が30質量%未満であることが好ましく、耐衝撃性ポリスチレンの配合量が85質量%以上であると共に、スチレン系樹脂の配合量が15質量%以下であることがより好ましい。
本発明の方法により製造される樹脂組成物は、ゴム分を含む耐衝撃性ポリスチレンとスチレン系樹脂との混合物からなる樹脂組成物であって、樹脂組成物中のゴム分が好ましくは3~20質量%であり、GPC-MALS法により求められる、樹脂組成物を形成しているポリスチレン系樹脂の、分子量100万以上における収縮因子gmが好ましくは0.85以下であり、分子量100万~150万における収縮因子g1が好ましくは0.85以下である。
耐衝撃性と剛性とのバランスに優れる樹脂組成物とする観点から、樹脂組成物中のゴム分は、好ましくは3~20質量%であり、より好ましくは4~15質量%であり、更に好ましくは5~12質量%である。
樹脂組成物中のゴム分は、耐衝撃性ポリスチレン中のゴム分の測定方法と同様に測定することができる。
前記樹脂組成物を形成しているポリスチレン系樹脂の数平均分子量Mn’は、機械的物性を高める観点から、好ましくは10万以上であり、より好ましくは15万以上である。また、樹脂組成物の成形加工性を高める観点から、該数平均分子量Mn’は好ましくは35万以下であり、より好ましくは32万以下であり、更に好ましくは30万以下である。
前記樹脂組成物を形成しているポリスチレン系樹脂の重量平均分子量Mw’は、機械的物性を高める観点から、好ましくは18万以上であり、より好ましくは20万以上である。また、樹脂組成物の成形加工性を高める観点から、重量平均分子量Mw’は、好ましくは100万以下であり、より好ましくは80万以下であり、更に好ましくは70万以下である。
前記樹脂組成物を形成しているポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mz’は、成形加工性を高める観点から、好ましくは40万以上であり、より好ましくは50万以上であり、更に好ましくは120万以上である。また、樹脂組成物の成形加工時の流動性を確保する観点から、該Z平均分子量Mz’は好ましくは500万以下であり、より好ましくは350万以下であり、更に好ましくは300万以下である。
前記樹脂組成物を形成しているポリスチレン系樹脂のZ平均分子量Mz’と数平均分子量Mn’との比(Mz’/Mn’)は、3以上であることが好ましい。特に、成形加工性に優れる樹脂組成物とする観点から、Mz’/Mn’は、より好ましくは6以上であり、更に好ましくは7以上であり、より更に好ましくは8以上である。Mz’/Mn’の上限は、概ね20であり、好ましくは15であり、より好ましくは12である。
前記樹脂組成物を形成しているポリスチレン系樹脂の分子量100万以上における収縮因子gmは好ましくは0.85以下であり、より好ましくは0.80以下であり、更に好ましくは0.75以下である。その下限は概ね0.40程度であることが好ましい。
前記樹脂組成物を形成しているポリスチレン系樹脂の分子量100万~150万における収縮因子g1は、好ましくは0.85以下であり、より好ましくは0.80以下であり、更に好ましくは0.75以下である。その下限は概ね0.40程度であることが好ましい。
前記樹脂組成物を形成しているポリスチレン系樹脂の分子量150万以上における収縮因子g2は、好ましくは0.85以下であり、より好ましくは0.80以下であり、更に好ましくは0.75以下である。その下限は概ね0.40程度であることが好ましい。
GPC-MALS法により求められる、前記樹脂組成物を形成しているポリスチレン系樹脂の、分子量が100万以上である分子の割合は、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは6質量%以上である。その上限は概ね30質量%であることが好ましい。特に、分子量が100万以上である分子の割合が6質量%以上の場合は、樹脂組成物の成形加工性をさらに高めることができる。
溶融時の流動性を確保する観点から、JIS K 7210-1:2014に準拠した、200℃、荷重5kgの条件における樹脂組成物のメルトフローレイトは、0.1~10g/10minであることが好ましく、0.1~5g/10minであることがより好ましく、0.5~3g/10minであることが更に好ましい。
成形加工性を高める観点から、190℃における樹脂組成物の溶融張力は、好ましくは300mN以上であり、より好ましくは400mN以上であり、更に好ましくは500mN以上であり、特に好ましくは700mN以上である。その上限は、概ね1200mNであることが好ましい。
溶融時の流動性を確保する観点から、200℃、剪断速度100sec-1における樹脂組成物の溶融粘度は、好ましくは3500Pa・s以下であり、より好ましくは3000Pa・s以下であり、更に好ましくは2500Pa・s以下である。その下限は、概ね1000Pa・sであることが好ましく、1200Pa・sであることがより好ましい。
熱成形性を高める観点から、160℃、伸長速度5.0s-1における一軸伸長粘度から求められる樹脂組成物の歪み硬化度は、好ましくは2.0以上であり、より好ましくは3.0以上である。その上限は、7.0であることが好ましい。
また、熱成形性をさらに高める観点から、160℃、伸長速度1.0s-1における一軸伸長粘度から求められる樹脂組成物の歪み硬化度は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは2.0以上であり、更に好ましく2.5以上である。その上限は、5.0であることが好ましい。上記範囲とすることで、複雑な成形金型を用いた熱成形等であっても、安定して良好な成形体を得ることができる。
得られる成形体の機械的物性を高める観点から、JIS K 7171:2016に基づく樹脂組成物の曲げ強さは、好ましくは40MPa以上であり、より好ましくは42MPa以上である。
得られる成形体の機械的物性を高める観点から、JIS K 7171:2016に基づく樹脂組成物の曲げ弾性率は、好ましくは2.0GPa以上である。
得られる成形体の耐衝撃性を高める観点から、JIS K 7111-1:2012に準拠して測定される樹脂組成物のシャルピー衝撃強度は、好ましくは8kJ/m2以上である。
具体的には、例えば、Tダイを備えた押出機等を用いた押出成形により、樹脂組成物をシート状に加工して熱成形用の樹脂シートとし、このシートを熱成形することで、容器等の、所望とする形状を有する成形体を得ることができる。
熱成形方法としては、真空成形法、マッチモールド法等、従来公知の成形方法を適用することができる。
樹脂組成物をシート状に加工する場合、機械的強度と成形性とのバランスを高める観点から、樹脂組成物からなる樹脂シートの厚みは、概ね0.1mm~5mmであることが好ましく、0.2mm~3mmであることがより好ましく、0.3mm~2mmであることが更に好ましい。
また、同様の観点から、樹脂シートの坪量は、概ね100~5000g/m2であることが好ましく、200~3000g/m2であることがより好ましく、300~2000g/m2であることが更に好ましい。
なお、樹脂シートの坪量は、樹脂シートから所定寸法の試験片を切り出し、試験片の重量(g)を測定した後、試験片の面積でその質量を割り算することで求められる。
本発明の樹脂組成物の製造方法に用いた耐衝撃性ポリスチレン(ゴム変性スチレン系樹脂A及びB)の物性を表1に示す。
なお、GPC-MALS測定では、ゴム変性スチレン系樹脂から、ゴム分を除去した。ゴム分の除去は、まず、ゴム変性スチレン系樹脂1.5gをメチルエチルケトン/メタノール混合溶媒(質量比10/1)30mLに溶解させ、遠心分離機にて2,000rpmで20分間遠心分離した。分離後の上澄み液を600mLのメタノールに少量ずつ滴下し、マトリックス相を沈殿させ、次いでペーパーフィルタを用いて吸引ろ過し、マトリックス相であるスチレン系樹脂をろ別した。これを60℃で24時間真空乾燥した後、測定試料として用いた。
なお、ゴム変性スチレン系樹脂Aは、PSジャパン株式会社製の商品名「475D」であり、ゴム変性スチレン系樹脂Bは、PSジャパン株式会社の商品名「H8117」である。
(核粒子の作製)
撹拌装置を備えた内容積が1m3のオートクレーブに、脱イオン水350kg、懸濁剤として第三リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製、20.5%スラリー)2.1kg、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製、10%水溶液)0.158kg、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸二ナトリウム(花王株式会社製、ペレックスSSH、10%水溶液)0.053kg、電解質として酢酸ナトリウム0.535kgを投入した。
次いで、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.975kg(日油株式会社製、パーブチルO)及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート0.284kg(日油株式会社製、パーブチルE)、重合禁止剤として4-tert-ブチルカテコール15.4gを、スチレン390kgに溶解させ、110rpmで撹拌しながら、これをオートクレーブ内に供給した。オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間15分かけて90℃まで昇温した。
オートクレーブ内の温度が90℃に到達後、100℃まで5時間かけて昇温した。100℃到達後、1時間30分かけて115℃まで昇温した。115℃で2時間40分保持し、その後40℃まで2時間かけて冷却した。90℃までの昇温中、60℃到達の時点で、懸濁助剤として過硫酸カリウム1.95gをオートクレーブ内に投入した。
冷却後、内容物を取り出し、スチレン系樹脂粒子の表面に付着した第三リン酸カルシウムを硝酸により溶解させた後、水で洗浄し、遠心分離機で脱水し、さらに気流乾燥装置で粒子の表面に付着した水分を除去して、スチレン系樹脂粒子を得た。
得られたスチレン系樹脂粒子を篩にかけて、直径が0.5~1.3mmの粒子(平均粒子径0.8mm)を取り出し、核粒子とした。
[分散工程]
撹拌装置を備えた内容積が1.5m3のオートクレーブに、脱イオン水410kg、ピロリン酸ナトリウム2.56kg、硝酸マグネシウム6.39kgを供給し、塩交換によりオートクレーブ内で懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムを合成した。界面活性剤としてアルキルスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、ラテムルPS、40%水溶液)0.128kg、上述した方法で得られた核粒子78.2kgをオートクレーブに供給した後、オートクレーブ内を窒素置換した。具体的には、窒素によりオートクレーブ内を0.3MPa(G)まで加圧し、その後オートクレーブ内の圧力が大気圧になるまでオートクレーブ内の気体を放出した。
次いで、50rpmで撹拌しながら、80℃まで昇温した。80℃に到達後、脱イオン水82kg、アルキルスルホン酸ナトリウム(花王株式会社製、ラテムルPS、40%水溶液)0.166kg、スチレン(スチレン単量体)27.6kg、重合開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(日油株式会社製、パーブチルE、10時間半減期温度T1/2:99.0℃)3.06kg、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー(日油株式会社製、ノフマーMSD)1.15kgの混合物をホモジナイザーにより乳化液に調製し、乳化液をオートクレーブ内に供給した。その後、オートクレーブ内を0.1MPa(G)になるまで窒素で加圧し、80℃で15分保持した。
その後、1時間かけて105℃まで昇温した。
オートクレーブ内の温度が105℃に到達後、7時間30分間保持しながら、スチレン(スチレン単量体)354.3kgを0.87kg/分の割合でオートクレーブ内に連続的に添加した。
なお、スチレンの添加に当たっては、上記添加条件、重合に用いた重合開始剤の化学的特性、及び重合温度から計算したスチレンの重合速度をもとに、シミュレーションにより経過時間に対する核粒子中のスチレン含有量変化と温度変化を確認し、そのシミュレーションに基づき、スチレン添加中(スチレンの追加添加開始時から追加添加終了時までの間)の核粒子中のスチレン含有量が10質量%以下となるようにスチレンを追加添加した。
スチレンの追加添加開始時、添加開始から2.5時間経過時、追加添加終了時のそれぞれにおいて、スチレン系樹脂粒子中のスチレン含有量を測定したところ、核粒子中のスチレン含有量はそれぞれ3質量%、5質量%、4質量%であった。
追加含浸重合工程後、水性媒体を120℃まで2時間かけて昇温し、120℃で3時間保持することで未反応のスチレン単量体を重合させた。
残重合工程後、6時間かけて水性媒体を35℃まで冷却した。オートクレーブ内を冷却後、オートクレーブから取り出したスチレン系樹脂粒子を希硝酸で洗浄して樹脂粒子表面に付着した懸濁剤を溶解除去した後、水洗を行い、さらに遠心分離機で脱水した。帯電防止剤としてのポリオキシエチレンラウリルエーテル0.01質量部(スチレン系樹脂100質量部に対する値)で被覆後、気流乾燥機により樹脂粒子表面の水分を除去し、スチレン系樹脂Aを得た。
重合開始剤の量を3.06kgから1.54kg、連鎖移動剤の量を1.15kgから0.22kgに変更した以外は製造例1と同様にスチレン系樹脂Bを作製した。
スチレンの追加添加開始時、添加開始から2.5時間経過時、追加添加終了時のそれぞれにおいて、スチレン系樹脂粒子中のスチレン含有量を測定したところ、核粒子中のスチレン含有量はそれぞれ7質量%、7質量%、6質量%であった。
ゴム変性スチレン系樹脂Aを75質量%、スチレン系樹脂Aを25質量%混合し、Tダイを有する単軸押出機にて、シリンダー温度230~250℃、ロール温度110℃で、厚み0.6mmの樹脂組成物シートを製膜した。
ゴム変性スチレン系樹脂Aを90質量%、スチレン系樹脂Bを10質量%に変更した以外は実施例1と同様に樹脂組成物シートを成膜した。
ゴム変性スチレン系樹脂Aを95質量%、スチレン系樹脂Aを5質量%に変更した以外は実施例1と同様に樹脂組成物シートを成膜した。
ゴム変性スチレン系樹脂Aをゴム変性スチレン系樹脂Bに変更した以外は実施例1と同様に樹脂組成物シートを成膜した。
スチレン系樹脂を配合しなかった以外は、実施例1と同様に樹脂組成物シートを成膜した。
スチレン系樹脂Aをスチレン系樹脂Cに変更した以外は実施例1と同様に樹脂組成物シートを成膜した。
スチレン系樹脂Aをスチレン系樹脂Dに変更した以外は実施例1と同様に樹脂組成物シートを成膜した。
スチレン系樹脂Aをスチレン系樹脂Cに変更した以外は実施例4と同様に樹脂組成物シートを成膜した。
スチレン系樹脂Aをスチレン系樹脂Dに変更した以外は実施例4と同様に樹脂組成物シートを成膜した。
下記の方法にて実施例及び比較例の樹脂組成物シートの物性を測定すると共に評価を行った。結果を表3に示す。
絶対分子量である、ゴム変性ポリスチレン、スチレン系樹脂、及び樹脂組成物の数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、Z平均分子量Mz’は、具体的には、株式会社島津製作所製「Prominence LC-20AD(2HGE)/WSシステム」、Wyatt Technology社製の多角度光散乱検出器「DAWN HELEOS II」を用いて、溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、流量1.0ml/minという条件で測定を行った。カラムとしては、東ソー株式会社製の「TSKgel GMHHR」×2本、東ソー株式会社製の「TSKgel HHR―H」×1本を直列に接続して用いた。測定の解析は、Wyatt Technology社の解析ソフト「ASTRA」により行い、ゴム変性ポリスチレン、スチレン系樹脂、及び樹脂組成物の数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、及びZ平均分子量Mz’を求めた。なお、GPC-MALS法により求められる数平均分子量Mn’、重量平均分子量Mw’、及びZ平均分子量Mz’は、絶対分子量である。また、樹脂組成物におけるGPC-MALS測定においては、上述した耐衝撃性ポリスチレンにおける除去工程と同様にして、ゴム分を除去する工程を実施した。
JIS K 7210-1:2014に準拠して、200℃、荷重5kgの条件で、ゴム変性ポリスチレン、スチレン系樹脂、及び樹脂組成物のメルトフローレイト(MFR)を測定した。
株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dにより、温度190℃におけるゴム変性ポリスチレン、スチレン系樹脂、及び樹脂組成物の溶融張力を測定した。測定には内径2.095mm、長さ8mmのオリフィスを用いた。ピストン降下速度10mm/分にてオリフィスからストランド状に押出された溶融状態の樹脂を、荷重測定部を通して、引取速度が0.5分で0m/分から200m/分に達するように、一定の速度で引取速度を増加させながら、ストランド状の樹脂を引き取った。ストランド状の樹脂が破断した場合は、破断直前の溶融張力を、その測定における溶融張力とした。
なお、ストランド状の樹脂が破断しない場合は、引取速度200m/分における溶融張力を、その測定における溶融張力とする。
詳しくは、引取速度が200m/分に到達してから溶融張力のデータの取り込みを開始し、30秒後にデータの取り込みを終了する。この30秒の間に得られたテンション荷重曲線から得られたテンション最大値(Tmax)とテンション最小値(Tmin)の平均値(Tave)を溶融張力とする。なお、上記Tmaxは、上記テンション荷重曲線において、検出されたピーク(山)値の合計値を検出された個数で除した値であり、上記Tminは、上記テンション荷重曲線において、検出されたディップ(谷)値の合計値を検出された個数で除した値である。
上記溶融張力の測定を計10回行い、10回で得られた極大値の最も大きな値から順に3つの値と、極大値の最も小さな値から順に3つの値を除き、残った中間の4つの極大値を相加平均して得られた値を溶融張力とした。
なお、樹脂組成物の溶融張力の測定においては、株式会社東洋精機製作所製のラボプラストミルを用いて、ゴム変性ポリスチレン、スチレン系樹脂、及び各実施例及び比較例と同比率のゴム変性ポリスチレンとスチレン系樹脂とを、それぞれスクリュー回転数50rpm、樹脂温度200℃の条件で溶融混練したものを、測定用試料として用いた。
また、スチレン系樹脂の溶融張力が高すぎて単体では溶融張力が測定できない場合には、スチレン系樹脂にPSジャパン株式会社製ポリスチレン「680」をそれぞれ75質量%、50質量%の割合で混練したものを測定用試料として用いてそれらの溶融張力を測定し、外挿することにより「680」の配合量が0質量%のときの溶融張力を求め、その値をスチレン系樹脂の溶融張力とした。
ゴム変性ポリスチレン、スチレン系樹脂、及び樹脂組成物の溶融粘度は、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dを使用して測定した。具体的には、まず、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径1.0mm、長さ10mmのオリフィスを備えた測定機を準備した。次に、シリンダー及びオリフィスの設定温度を200℃とし、シリンダー内に測定用の試料を約15g入れ、4分間放置して溶融樹脂とした後、剪断速度100sec-1で溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出した。この際に測定された溶融樹脂の粘度を、溶融粘度とした。
各実施例及び比較例と同比率のゴム変性ポリスチレン系樹脂とスチレン系樹脂とを、スクリュー回転数50rpm、樹脂温度200℃の条件で溶融混練した樹脂組成物を、熱プレス成形により温度200℃で成形し、所定寸法を有するシートを成形した。該シートから、30mm×13mm×0.6mmの試験片を切り出した。TAインスツルメント社製の「Discovery HR-2 hybrid rheometer」を用いて、試験片の一軸伸長粘度を測定した。横軸を歪みの対数、縦軸を伸長粘度の対数とした両対数のグラフに測定値をプロットし、非線形領域の一次近似直線の傾き/線形領域の一次近似直線の傾きから、各伸長速度条件における樹脂組成物の歪み硬化度を求めた。
測定条件:160℃
測定伸長速度:0.1、0.5、1.0、5.0sec-1
製膜した樹脂組成物シートから、300mm×400mm×0.6mmの寸法を有するシート(坪量:630g/m2)を切り出した。株式会社ラヤマパック製の卓上真空成形機「v.former」と、開口部直径:20mm、高さ/開口部直径:0.67の容器状成形体を4個取りすることが可能で、上記形状の型が均等な位置関係(2行×2列)で配置された、230mm×330mmの寸法の4個取り型とを用いて、切り出したシートから、4個取り成形体を成形した。
なお、成形時のヒーター温度は160℃とし、加熱時間を20、25、30、35、40、45、50、55秒と変えて、真空成形を行った。得られた成形体を以下の基準で評価した。
A:4つの容器状成形体のすべてで良好な成形体が得られた。
B:3つ以上の容器状成形体で良好な成形体が得られ、かつ4個取り成形体に発生したシワが2本以下(0本を含む)であった。
C:良好な容器状成形体が得られた個数が2個以下、あるいは4個取り成形体に発生したシワが3本以上であった。
加熱時間を変えて成形を行った際に、B評価以上となった条件(加熱時間)が4つ以上あり、かつA評価以上となった条件が3つ以上となったものを合格とした。
なお、良好な成形体とは、容器状成形体に孔等の破れがなく、型形状が十分に転写されているものを意味する。
JIS K 7171:2016に基づき、樹脂組成物シートの曲げ強さを測定した。
JIS K 7171:2016に基づき、樹脂組成物シートの曲げ弾性率を測定した。
JIS K 7111-1:2012(ノッチ付き)に準拠して、樹脂組成物シートのシャルピー衝撃強度を測定した。
Claims (7)
- ゴム分を含む耐衝撃性ポリスチレンとスチレン系樹脂とを混練し、耐衝撃性ポリスチレンとスチレン系樹脂との混合物からなる樹脂組成物を製造する方法であって、
前記耐衝撃性ポリスチレンと前記スチレン系樹脂との合計量を100質量%としたとき、前記混合物における、前記耐衝撃性ポリスチレンの配合量が50質量%を超え99質量%以下である共に、前記スチレン系樹脂の配合量が1質量%以上50質量%未満であり、
GPC-MALS法により求められる、前記スチレン系樹脂の、重量平均分子量Mw’が100万以上500万以下であり、分子量100万以上における収縮因子gmが0.85以下であり、分子量100万~150万における収縮因子g1が0.85以下である、樹脂組成物の製造方法。 - 前記スチレン系樹脂が分子鎖中に多官能性単量体由来の成分を含まない、請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記スチレン系樹脂のテトラヒドロフラン不溶分が0.1質量%以下(0を含む)である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物の製造方法。
- GPC-MALS法により求められる、前記スチレン系樹脂のZ平均分子量Mz’が300万以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
- GPC-MALS法により求められる、ゴム分を除く前記耐衝撃性ポリスチレンの重量平均分子量Mw’が1万以上50万以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
- GPC-MALS法により求められる、前記スチレン系樹脂における、分子量が100万以上である分子の割合が20質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
- 前記耐衝撃性ポリスチレンと前記スチレン系樹脂との合計量を100質量%としたとき、前記混合物における、前記耐衝撃性ポリスチレンの配合量が70質量%を超え97質量%未満であると共に、前記スチレン系樹脂の配合量が3質量%を超え30質量%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物の製造方法。
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