JP4080067B2 - ゴム変性スチレン系樹脂 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はゴム変性スチレン系樹脂に関するものであり、強度及び透明性に優れ、特にシートとした際にその特性を発揮するゴム変性スチレン系樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ポリスチレンの脆さを改良することを目的として、ポリブタジエン系ゴム物質を不活性溶剤の存在下もしくは不存在下にスチレン系単量体に溶解して、連続溶液重合、連続塊状重合あるいは塊状−懸濁重合によりゴム変性スチレン系樹脂を製造する事は広く工業化されている。
強靭化剤としてポリブタジエンゴムを用いたゴム変性スチレン系樹脂は、耐衝撃性、引張強度、剛性、弾性等の各種の物性バランスに優れ、成形・加工性が良好であり、かつ比較的安価な事から家電製品、食品包材、シート、雑貨、玩具等広い分野で使用されている。これらの用途のうち、食品包材に用いられる場合は、例えば豆腐容器や乳製品容器などのように非常に薄いシートとして使用される事が多いため、その原料となるゴム変性スチレン系樹脂には耐衝撃性、抗張力、剛性、加工性が良好である事以外に、実用物性としてシート成形物の強度が求められてきた。更に最近はこれらの物性に加えてさらに、外から見て内容物の量が分かる程度の透明性が求められている。しかしながら、従来のポリブタジエンゴムを用いたゴム変性スチレン系樹脂ではゴム濃度と透明性は相反し、結果として強度と透明性の両方を満足させるに十分なものは得られていなかった。
【0003】
これらの、従来のポリブタジエンゴムを強靭化材として用いたゴム変性スチレン系樹脂の欠点を改良・補強するために既に幾つかの試みがなされてきた。例えば具体例としては、特公昭46−15017号公報では、スチレン単位量が15〜30重量%のスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)を用いる方法が提案され、また、特公昭54−37906号公報においてはSBR中のスチレン単位量やムーニー粘度およびブタジエン部分のミクロ組成を特定し、シート用ゴム変性スチレン系樹脂の欠点を改良する試みがなされている。しかし、これらの方法では確かに加工性や抗張力に改善がみられるものの、SBRを単独で用いるため生成するゴム粒子の界面張力が小さく粒子径が小さくなりやすく、得られたゴム変性スチレン系樹脂は強度が低くなりやすいという欠点がある。これは、特公平7−14989号公報にも述べられているように、ゴム粒子中の内包スチレン系重合体の含有量が多いために起こる現象であるとされており、生産性の向上を目的として重合開始剤として有機過酸化物などを用いた際に顕著となる。また、SBRを単独で用いているため、樹脂中のブタジエン単位とスチレン単位の比率を目標とする一定値に調整するためには、SBRのスチレン含有量分だけ過剰にSBRを使用せねばならず、コスト的にも有利ではない。
【0004】
また、ブタジエン系ゴムとスチレン−ブタジエンブロック共重合体を一定比率で混合して使用する方法が特開平2−34612号公報、特開平2−34613号公報、特開平2−34614号公報で提案されているが、これらの方法ではゴム粒径が1.1μm以下と小さく、光沢は優れるものの衝撃強度や、シート成形物の腰強度や透明感については充分とはいえない。更に、透明性の向上を目的として、特定粘度のポリブタジエンを用いる方法が特開平6−157687号公報に示されているが、この方法ではポリブタジエンの溶液粘度が300〜2000センチポイズと高いため溶液の取扱いに制限を受け、特に混合、伝熱などの面で不利となる。また衝撃強度も低いといった問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は従来のゴム変性スチレン系樹脂に比べて衝撃強度と透明性に優れ、特に食品包材など肉厚の薄いシート用途に適したゴム変性スチレン系樹脂および該ゴム変性スチレン系樹脂からなるシート、さらにそのシートの成形体を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の組成、構造及び性状を有する2種類のゴム状物質を特定の比率で含有させてなるゴム変性スチレン系樹脂がこの目的に適合することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ゴム状物質の存在下にスチレン系単量体を重合させて得られる、スチレン系樹脂中にゴム状物質が分散したゴム変性スチレン系樹脂であって、(I)該重合に際して(a)ゴム状物質Aとしてスチレン単位含有量が25重量%、温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が85センチポイズ、温度20℃における屈折率が1.5399であるゴム状物質(旭化成工業社製、商品名タフデン2100AS)、および(b)ゴム状物質Bとしてポリブタジエン100%、温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が202センチポイズ、温度20℃における屈折率が1.5243、ポリブタジエン部分の1,4−シス結合が98重量%であるゴム状物質(宇部興産社製、商品名UBEPOL−BR22H)または、ゴム状物質Bとしてポリブタジエン100%、温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が170センチポイズ、温度20℃における屈折率が1.5202、ポリブタジエン部分の1,4−シス結合が35重量%、1,2−ビニル結合が13重量%であるゴム状物質(旭化成工業社製、商品名ジエン 55AS) とを、下記(c)ないし(e)の条件を全て満たす比率で存在させてスチレン系単量体を重合させ、かつ(II)得られた該ゴム変性スチレン系樹脂が下記(f)ないし(g)の条件を満たすものであることを特徴とする衝撃強度と透明性に優れたゴム変性スチレン系樹脂。
(c)ゴム状物質Aとゴム状物質Bの重量割合をそれぞれWA 、WB としたとき、WA :WB が1:99〜99:1であり、(d)式、Fη=WA /(WA +WB )× Log(ηA )+WB /(WA +WB )×Log(ηB )で表されるFηの値が2.0〜2.35の範囲にあり、(但し、ここでηA およびηB はゴム状物質AおよびBの温度25℃における5重量%スチレン溶液粘度で、センチポイズ(cP)単位で示す)
(e)式、Fn =|np −nA ×WA /(WA +WB )−nB ×WB /(WA +WB )|で表されるFn の値が0.068以下の範囲にある。(但し、ここでnp 、nA およびnB は屈折率で、該スチレン系単量体からなる重合体、ゴム状物質AおよびBの温度20℃における屈折率を示す。また、||は絶対値記号である。)
(f)ゴム変性スチレン系樹脂中の共役ジエン単位の含有量WG が3〜15重量%であり、(g)ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状物質の体積平均粒子径dv が1.2〜5.0μmの範囲にある。
【0008】
また、本発明は更に該ゴム変性スチレン系樹脂からなるシート、および該シートを成形してなる成形物に関するものである。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるスチレン系単量体とは、スチレン及びo−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、エチルスチレンなどの核アルキル置換スチレン、α−メチルスチレンなどのα−アルキル置換スチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレンなどの核ハロゲン化スチレンをいい、これらから1種が選ばれる。本発明においてはとくにスチレンが好ましい。
【0010】
本発明におけるゴム状物質Aは、共役ジエン単位60〜99重量%とスチレン単位1〜40重量%からなる。共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンまたはこれらの混合物が挙げられるが、とくにブタジエンが好適である。スチレン単位量が1重量%未満であると、得られるゴム変性スチレン系樹脂の透明性が低いものとなる。スチレン単位量が40重量%を超えると、得られるゴム変性スチレン系樹脂中のゴム粒子径が小さくなり、強度が低くなる。
【0011】
更に、本発明において、好ましくはゴム状物質Aは共役ジエンとスチレンのランダム共重合体であり、ゴム状物質Aが共役ジエンとスチレンのブロック共重合体を含む場合には、ブロック状のスチレン単位量が全スチレン単位中の好ましくは0〜20%、さらに好ましくは0〜10%である。全スチレン単位中のブロック状のスチレン単位量が20%を超えると得られるゴム変性スチレン系樹脂中のゴム粒子径が小さくなり、強度が低くなることがある。なお、ここで、ブロック状スチレン単位とはスチレン単位が5個以上連続して結合しているスチレン連鎖をいう。ブロック状スチレン単位は核磁気共鳴吸収法(1 H−NMR法)により測定できる。
【0012】
更に、ゴム状物質Aの好ましい例は、共役ジエンがブタジエン単位であって、かつブタジエン単位の1,4−シス結合が全ブタジエン単位に対して30〜45%、1,2ビニル結合が5〜15%の範囲にあるゴム状物質Aの例である。1,4−シス結合が30〜45%、1,2ビニル結合が5〜15%の範囲にあれば、得られるゴム変性スチレン系樹脂中のゴム粒子に内包されるスチレン単位量またはグラフト重合したスチレン単位量が多くなり、強度の高いゴム変性スチレン系樹脂が得られる。
【0013】
本発明におけるゴム状物質Bは共役ジエンからなる。共役ジエンとしては、前記ゴム状物質Aで説明したものと同様のものが用いられ、とくにブタジエンが好適に用いられる。
【0014】
更に、ゴム状物質Bの好ましい例は、ブタジエン単位の1、4−シス結合が全ブタジエン単位の90重量%以上であるゴム状物質である。ゴム状物質B中のブタジエン部分の1、4−シス結合がこの範囲にあれば、透明性が高いゴム変性スチレン系樹脂が得やすい。
【0015】
ゴム状物質Aおよびゴム状物質Bは、その製造方法にはとくに制限はなく、例えば共役ジエン単独または共役ジエンとスチレンを有機リチウム系触媒の存在下に溶液重合をして得られたもの、チーグラー触媒等で配位重合をして得られたもの、または乳化重合によって得られたもので良い。
【0016】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂は、含有するゴム状物質Aとゴム状物質Bの重量を各々WA 、WB としたとき、WA :WB が1:99〜99:1、好ましくは10:90〜90:10、さらに好ましくは30:70〜70:30の範囲にその比率が選ばれる。WA :WB がこの範囲外であると、得られるゴム変性スチレン系樹脂は透明性と強度のバランスに欠けたものとなる。
【0017】
本発明において、ゴム状物質AおよびBの温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度を各々ηA センチポイズ、ηB センチポイズとしたとき、下記式で定義されるFηが2.0〜2.35の範囲になるようにゴム状物質Aの重量WA およびゴム状物質Bの重量WB の比率が選ばれる。
Fη=WA /(WA +WB )× Log(ηA )+WB /(WA +WB )× Log(ηB )
Fηの値が2.0未満であれば、得られるゴム変性スチレン系樹脂中のゴム粒子径が小さくなり易く、強度が低くなり易い。反対に、2.35を超える場合には、該ゴム状物質をスチレン系単量体に溶解するときにこのゴム溶液の粘度が高くなり、多大なエネルギーを要し、やはり好ましくない。
【0018】
本発明に使用されるゴム状物質Aとゴム状物質B、およびスチレン系単量体からなる重合体の温度20℃における屈折率を各々nA 、nB 、およびnp としたとき、下記式で定義されるFn が0.068以下になるようにゴム状物質Aおよびゴム状物質Bの重量WA 、WB が選ばれる。
Fn =|np −nA ×WA /(WA +WB )−nB ×WB /(WA +WB )|
但し、| |は絶対値記号である。このFn の値が0.068を超えると透明性が損なわれる。なお、ここでいう屈折率は、該ゴム状物質を0.5mm以下の薄片とし、アッベ式屈折計(例えばアタゴ社製、「NAR−1T」)で20℃における屈折率を読みとることで測定できる。
上記式中のnp は、スチレン系単量体の種類に基づいて、例えばポリマーハンドブック(POLYMER HANDBOOK、Third Edition 、VI-451〜461 頁)のような文献値からそのスチレン系単量体からなる重合体の屈折率を知ることができる。スチレン系単量体がスチレンである場合はその重合体ポリスチレンの屈折率は1.592を用いる。
【0019】
更に本発明では、得られたゴム変性スチレン系樹脂中の共役ジエン単位の重量WG が、ゴム変性スチレン系樹脂量に対して3〜15重量%であることが必要であり、好ましくは5〜10重量%である。WG が3重量%未満または15重量%を超えた範囲にあると、得られるゴム変性スチレン系樹脂は透明性と強度のバランスに欠けたものとなる。
【0020】
更に本発明では、ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状物質の体積平均粒子径dV が1.2〜5.0μmの範囲にあることが必要である。dV が1.2μm未満であるとゴム変性スチレン系樹脂の強度が発現せず、5.0μmを超える場合には、強度の向上率に比較して弾性の低下率が著しく、また、得られるゴム変性スチレン系樹脂を成形加工した場合の成形物表面が粗くなり、いずれも実用的でない。ここで、ゴム状物質の体積平均粒子径dv は、30μmのアパーチャーチューブを装着したコールターカウンター(COULTER社製、TA-II型)において、少量の樹脂ペレット(2〜3粒)を常温でジメチルホルムアミド(DMF)約5ミリリットルに溶かし、その後DMFとチオシアン酸アンモニウムとの混合電解液に適度な濃度で分散させて測定して求めた。粒子径をd、粒子径dのゴム粒子の個数をnとして、次式により求めることができる。
dV =Σ(d4 n)/Σ(d3 n)
なお、ゴム状物質の体積平均粒子径dV は、例えば重合反応時の攪拌数によって調整される。
【0021】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂を得る方法として、スチレン系単量体に本発明に規定する比率でゴム状物質Aおよびゴム状物質Bを溶解し、これを公知の方法で重合反応させることにより製造できる。重合時には必要に応じてエチルベンゼンやトルエン等の溶剤を加えて重合反応に供することもできる。
【0022】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂の製造方法についてさらに説明する。
本発明のゴム変性スチレン系樹脂の製造方法には、従来から広く工業的に行われている連続溶液重合法、連続塊状重合法、連続塊状−懸濁二段重合法、ならびにこれらの回分式重合法が採用できる。
【0023】
重合方法の例として連続塊状重合法の場合は、0〜50重量%の溶剤を含んだ原料溶液を温度80〜180℃に昇温された1個または2個以上が連結された重合反応器へ連続的に供給し、ゴム状物質がスチレン単量体の重合したマトリックスにゴム粒子として分散する(転相する)まで重合を進め、この重合反応液を原料供給量に相当する量だけ連続的に抜き出し、必要に応じて、後段に直列に接続された反応器で重合反応をおこない、スチレン単量体の転化率を60重量%以上とする。重合操作が完了した後、重合生成物中に残留した未反応単量体や溶剤を除去する場合には、生成物を減圧下の揮発分除去槽(脱揮槽)や揮発分除去を目的とした押し出し装置などで除去する。得られた重合生成物は通常はペレット化もしくは粉末化して使用される。
【0024】
塊状−懸濁二段回分重合法の場合は、通常溶剤を含まない原料溶液を温度80〜180℃に昇温された撹拌機付きの反応器で回分操作によりゴム状物質がゴム粒子として分散するまでスチレン系単量体を部分的に重合する。ついでこの部分的に重合した重合反応液を懸濁安定剤及び/または界面活性剤の存在下に撹拌状態で水性溶媒中に懸濁・分散させながら所定の転化率まで重合を進め、実質的に反応を完結させて重合生成物を得る。重合生成物は、濾過、遠心分離により水性溶媒から単離し、水洗・乾燥した後必要に応じてペレット化し使用される。
【0025】
これらの重合反応は、重合開始剤を加えない熱重合によっても良いが、重合開始剤を加えるラジカル重合が好ましい。重合開始剤としては有機過酸化物やアゾ化合物などが選ばれる。この様な有機過酸化物の例として1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどのパーオキシケタール類、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートなどのパーオキシエステル類、アゾ化合物としてはアゾビスイソブチロニトリルや1,1’−アゾビス−1−シクロヘキサンカーボニトリルなどが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して用いる事ができる。
【0026】
これらの重合反応を行う際には更に、必要に応じて連鎖移動剤、例えばメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルピノーレン等を添加することができる。
【0027】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂は、スチレン系単量体種の互いに異なる2種以上を混合してシートやその成形体に用いてもよい。また、本発明のゴム変性スチレン系樹脂に、所望によりさらにこれと別に製造されたゴム変性スチレン系樹脂あるいはポリスチレンを混合したゴム変性スチレン系樹脂組成物としてシートやその成形体に用いることも可能である。
【0028】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、ミネラルオイル、シリコンオイルなどの添加剤を添加することができる。これらの添加剤は、重合反応の原料に添加、または、重合反応途中に添加、または、重合反応終了後の造粒工程で添加することができ、更には、シート化や他樹脂との混合する際や成形体を得る際に添加しても良く、これらの複数箇所で添加しても良い。
【0029】
本発明のゴム変性スチレン系樹脂は、一般に使用されている成形機を使用することができ、成形法としては、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形、インジェクションブロー成形等公知の成形法が挙げられる。
【0030】
このようにして得られたゴム変性スチレン系樹脂は、従来のゴム変性ポリスチレン系樹脂に比して、強度及び透明性および加工性のバランスに優れたものであり、特に食品包材など肉厚の薄いシート用途に供した際にその特性を発揮し、本発明の工業的価値は大きい。
【0031】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示す。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
はじめに、本発明において実施した測定・評価方法について記す。
▲1▼ゴム粒子径dV ;前記説明のとおり実施した。
▲2▼共役ジエン含有量;ハロゲン付加(沃素滴定)により測定した。
▲3▼衝撃強度;射出成形機により厚さ2mm、120mm×120mmの角板を50枚成形し、この試験片を用いて落錘衝撃試験(JIS K7211に準拠)によった。
▲4▼全光線透過率;射出成形機により厚さ1mmの試験片を10枚成形し、この試験片の全光線透過率をJIS K7105の方法に従って測定した。全光線透過率が大きい程、透明性が良好である。
▲5▼透明性(目視評価);押出成形機により厚さ0.35mmのシートを成形し、肉眼により透明性を観察・評価した。
【0033】
実施例1
ゴム状物質Aとしてスチレン単位含有量が25重量%、温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が85センチポイズ、温度20℃における屈折率が1.5399であるゴム状物質(旭化成工業社製、商品名タフデン 2100AS)1.3重量%、およびゴム状物質Bとしてポリブタジエン100%、温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が202センチポイズ、温度20℃における屈折率が1.5243、ポリブタジエン部分の1,4−シス結合が98重量%であるゴム状物質(宇部興産社製、商品名UBEPOL−BR22H)3.8重量%を81.1重量%のスチレンモノマー、12.3重量%のエチルベンゼン、1.5重量%のミネラルオイル、0.0001重量%の重合開始剤(1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ3,3,5トリメチルシクロヘキサン)の混合溶液に溶解し原料溶液とした。この原料溶液を容積18リットルの撹拌機付きのオートクレーブ及びオートクレーブの後段に直列に接続された容積42リットルの管型反応器に毎時7.2リットルで連続的に供給した。オートクレーブでの撹拌数は110rpm、反応温度128℃に、管型反応器での反応温度は、反応液の流れ方向に100〜170℃の温度勾配がつくように調整した。オートクレーブ出口におけるモノマー転化率は31重量%、管型反応器出口におけるモノマー転化率は91重量%であった。管型反応器を出た反応液は熱交換器によって220℃まで加熱された後、真空度10torrに調整された脱揮槽に導かれ、未反応モノマー、溶剤等揮発分を除去した後、ギアポンプにより脱揮槽から抜き出しダイプレートを通してストランドとし水冷後ペレット化して製品として回収した。
【0034】
得られた製品の物性を測定した結果、ゴム粒子径dV は4.0μm、ブタジエン単位の含有量WG は6.0重量%であった。重合仕込み時のWA :WB が1.3:3.8、Fηの値が2.21、Fn の値が0.064であり、これらは、本発明のゴム変性スチレン系樹脂の条件に全て合致するものである。50%破壊エネルギーは1.25ジュール、全光線透過率は64.7%で良好であった。また、シートの透明性も良好であった。得られたこれらの組成、性状、評価結果を表1に記載した。
【0035】
実施例2
オートクレーブの撹拌数を170rpmとした以外は実施例1と同一条件で製造を行った。重合仕込み組成、得られた製品の組成、性状、評価結果を表1に記載した。シートの透明性も良好であった。これらは、本発明のゴム変性スチレン系樹脂の条件に全て合致するものである。
【0036】
実施例3
実施例1とおなじゴム状物質A(旭化成工業社製、商品名タフデン 2100AS)2.6重量%、および実施例1とおなじゴム状物質B(宇部興産社製、商品名UBEPOL−BR22H)3.0重量%を80.6重量%のスチレンモノマー、12.3重量%のエチルベンゼン、1.5重量%のミネラルオイル、0.0001重量%の重合開始剤(1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ3,3,5トリメチルシクロヘキサン)に溶解し原料溶液とした。そしてオートクレーブの撹拌数を140rpmとした以外は実施例1と同一条件で製造を行った。重合仕込み組成、得られた製品の組成、性状、評価結果を表1に記載した。シートの透明性も良好であった。これらは、本発明のゴム変性スチレン系樹脂の条件に全て合致するものである。
【0037】
実施例4
ゴム状物質Bとしてポリブタジエン100%、温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が170センチポイズ、温度20℃における屈折率が1.5202、ポリブタジエン部分の1,4−シス結合が35重量%、1,2−ビニル結合が13重量%であるゴム状物質(旭化成工業社製、商品名ジエン 55AS)を用いた以外は実施例3と同一条件で製造を行った。重合仕込み組成、得られた製品の組成、性状、評価結果を表1に記載した。シートの透明性も良好であった。これらは本発明のゴム変性スチレン系樹脂の条件に全て合致するものである。
【0038】
比較例1
ゴム状物質として実施例4で使用したゴム状物質B(旭化成工業社製、商品名ジエン 55AS)4.9重量%のみを81.3重量%のスチレンモノマー、12.3重量%のエチルベンゼン、1.5重量%のミネラルオイル、0.0001重量%の重合開始剤(1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ3,3,5トリメチルシクロヘキサン)に溶解し原料溶液とした。このときのFηは2.23、Fn は0.072と計算される。そしてオートクレーブの撹拌数を140rpmとした以外は実施例1と同じ条件で製造を行った。得られた製品の組成、性状、評価結果を表2に記載した。得られた製品は強度、透明性ともに不十分であった。また、シートの透明性は、実施例1〜4に比較し劣るものであった。なお、比較例1はゴム状物質Aを含まず、Fn が0.072である点で本発明の要件を満足していない。
【0039】
比較例2
ゴム状物質Aとして実施例1で使用したゴム状物質(旭化成工業社製、商品名タフデン 2100AS)0.8重量%、およびゴム状物質Bとして実施例4で使用したゴム状物質(旭化成工業社製、商品名ジエン 55AS)4.1重量%を81.3重量%のスチレンモノマー、12.3重量%のエチルベンゼン、1.5重量%のミネラルオイル、0.0001重量%の重合開始剤(1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ3,3,5トリメチルシクロヘキサン)に溶解し原料溶液とした。そしてオートクレーブの撹拌数を140rpmとした以外は実施例1と同じ条件で製造を行った。得られた製品の組成、性状、評価結果を表2に記載した。得られた製品は強度、透明性ともに満足できるものではなかった。また、シートの目視による評価結果も実施例1〜4に比較し劣っていた。なお、比較例2はFn が0.069と計算されるので本発明の要件を満足していない。
【0040】
比較例3
ゴム状物質Aとして実施例1で使用したゴム状物質(旭化成工業社製、商品名タフデン 2100AS)1.3重量%、およびゴム状物質Bとしてポリブタジエン100%、25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が85センチポイズ、20℃における屈折率が1.5202、ポリブタジエン部分の1,4−シス結合が35重量%、1,2−ビニル結合が13重量%であるゴム状物質(旭化成工業社製、商品名ジエン35AS)3.8重量%を81.1重量%のスチレンモノマー、12.3重量%のエチルベンゼン、1.5重量%のミネラルオイル、0.0001重量%の重合開始剤(1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ3,3,5トリメチルシクロヘキサン)に溶解し原料溶液とした。そしてオートクレーブの撹拌数を140rpmとした以外は実施例1と同じ条件で製造を行った。得られた製品の組成、性状、評価結果を表2に記載した。得られた製品は強度は満足できるものではなかった。なお、比較例3はFηが1.93と計算され、ゴム粒子径dv は0.9μmであるので本発明の要件を満足していない。
【0041】
比較例4
実施例1で使用したゴム状物質A(旭化成工業社製、商品名タフデン 2100AS)0.4重量%およびゴム状物質B(宇部興産社製、商品名UBEPOL−BR22H)1.4重量%を84.4重量%のスチレンモノマー、12.3重量%のエチルベンゼン、1.5重量%の白色鉱油、0.0001重量%の重合開始剤(1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ3,3,5トリメチルシクロヘキサン)に溶解し原料溶液とした。そしてオートクレーブの撹拌数を140rpmとした以外は実施例1と同じ条件で製造を行った。得られた製品の組成、性状、評価結果を表2に記載した。得られた製品は強度が満足できるものではなかった。なお、比較例4はWG が2.1重量%であるので本発明の要件を満足していない。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【発明の効果】
以上記述した様に本発明によるゴム変性スチレン系樹脂は、特定組成および特定性状のゴム状物質を内包しているため、衝撃強度、透明性といった実用物性に優れており、とくにシートおよび該シートの成形品としたときにその特性を発揮する。
Claims (3)
- ゴム状物質の存在下にスチレン系単量体を重合させて得られる、スチレン系樹脂中にゴム状物質が分散したゴム変性スチレン系樹脂であって、(I)該重合に際して(a)ゴム状物質Aとしてスチレン単位含有量が25重量%、温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が85センチポイズ、温度20℃における屈折率が1.5399であるゴム状物質(旭化成工業社製、商品名タフデン2100AS)、および(b)ゴム状物質Bとしてポリブタジエン100%、温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が202センチポイズ、温度20℃における屈折率が1.5243、ポリブタジエン部分の1,4−シス結合が98重量%であるゴム状物質(宇部興産社製、商品名UBEPOL−BR22H)または、ゴム状物質Bとしてポリブタジエン100%、温度25℃で測定した5重量%スチレン溶液粘度が170センチポイズ、温度20℃における屈折率が1.5202、ポリブタジエン部分の1,4−シス結合が35重量%、1,2−ビニル結合が13重量%であるゴム状物質(旭化成工業社製、商品名ジエン 55AS) とを、下記(c)ないし(e)の条件を全て満たす比率で存在させてスチレン系単量体を重合させ、かつ(II)得られた該ゴム変性スチレン系樹脂が下記(f)ないし(g)の条件を満たすものであることを特徴とする衝撃強度と透明性に優れたゴム変性スチレン系樹脂。
(c)ゴム状物質Aとゴム状物質Bの重量割合をそれぞれWA 、WB としたとき、WA :WB が1:99〜99:1であり、(d)式、Fη=WA /(WA +WB )× Log(ηA )+WB /(WA +WB )×Log(ηB )で表されるFηの値が2.0〜2.35の範囲にあり、(但し、ここでηA およびηB はゴム状物質AおよびBの温度25℃における5重量%スチレン溶液粘度で、センチポイズ(cP)単位で示す)
(e)式、Fn =|np −nA ×WA /(WA +WB )−nB ×WB /(WA +WB )|で表されるFn の値が0.068以下の範囲にある。(但し、ここでnp 、nA およびnB は屈折率で、該スチレン系単量体からなる重合体、ゴム状物質AおよびBの温度20℃における屈折率を示す。また、||は絶対値記号である。)
(f)ゴム変性スチレン系樹脂中の共役ジエン単位の含有量WG が3〜15重量%であり、(g)ゴム変性スチレン系樹脂中のゴム状物質の体積平均粒子径dv が1.2〜5.0μmの範囲にある。 - 請求項1記載の衝撃強度と透明性に優れたゴム変性スチレン系樹脂からなることを特徴とするシート。
- 請求項2記載のシートを成形してなることを特徴とする成形体。
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