JP2019006933A - ポリイミドフィルム及びその製造方法 - Google Patents

ポリイミドフィルム及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2019006933A
JP2019006933A JP2017125508A JP2017125508A JP2019006933A JP 2019006933 A JP2019006933 A JP 2019006933A JP 2017125508 A JP2017125508 A JP 2017125508A JP 2017125508 A JP2017125508 A JP 2017125508A JP 2019006933 A JP2019006933 A JP 2019006933A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
polyimide
formula
polyimide film
solvent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2017125508A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6912287B2 (ja
Inventor
加藤 聡
Satoshi Kato
聡 加藤
俊明 長澤
Toshiaki Nagasawa
俊明 長澤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Asahi Kasei Corp filed Critical Asahi Kasei Corp
Priority to JP2017125508A priority Critical patent/JP6912287B2/ja
Publication of JP2019006933A publication Critical patent/JP2019006933A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6912287B2 publication Critical patent/JP6912287B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Macromolecular Compounds Obtained By Forming Nitrogen-Containing Linkages In General (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Moulding By Coating Moulds (AREA)
  • Shaping By String And By Release Of Stress In Plastics And The Like (AREA)

Abstract

【課題】複数回の屈曲に対する改善された屈曲耐性を有するポリイミドフィルムを提供すること。【解決手段】ポリイミドを主成分として含むポリイミドフィルムであって、上記ポリイミドフィルムのMD方向における屈折率とTD方向における屈折率との差(ΔN)が0.02以上であり、屈曲半径2mm、屈曲角度135°、荷重1.25kg/m2の条件で10万回屈曲させたときに破断せず、屈曲痕が目視で確認できない、ポリイミドフィルム。【選択図】図2

Description

本発明は、ポリイミドフィルム及びその製造方法に関する。
近年、透明電極フィルムのようなタッチパネル材料の分野でガラスに替わり、軽量化、薄膜化の観点でプラスチックフィルムを基板として用いることが検討されている。
さらに、フレキシブルディスプレイなどの折り曲げが可能なフレキシブルデバイスや有機EL照明や有機ELディスプレイなどの曲面を有するデバイスが検討されている。上記デバイスにおいては、硬質基板ではなく折り曲げ可能なフィルムを、表面保護層、カラーフィルター、タッチパネル、TFTなどを形成する基板として用いることが検討されている。
折り曲げ可能なフィルムとして、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)やポリエチレンナフタレートフィルム(PENフィルム)、また光学特性に優れるシクロオレフィンフィルム(COPフィルム)の採用が検討されている。
一方、ポリイミド樹脂は、一般的に、耐熱酸化性、耐熱特性、耐熱放射性、耐低温性、及び、耐薬品性などに優れた特性を有しているため、ポリイミドフィルムを上記折り曲げ可能なフィルムとして採用することも検討されている。
国際公開第2016/158825号 特開2004−231946号公報 国際公開第2006/112286号
繰り返し屈曲することが求められる光学デバイス、例えばフレキシブルディスプレイ等に用いられるフィルムは、折り曲げ可能であることだけでなく、光学特性に優れ、かつ複数回の屈曲に対する屈曲耐性に優れることが求められる。前述のPETフィルムやPENフィルムは光学特性に劣り視認性が悪く、COPフィルムは靱性が劣るという欠点を有しているため、そのようなフレキシブル光学デバイスの基板として用いることは困難である。
一方、ポリイミド樹脂は、一般的に、光学特性、屈曲耐性、耐熱酸化性、耐熱特性、耐熱放射性、耐低温性、及び耐薬品性などの特性に優れているため、発明者らは、特許文献1〜3に記載されているようなポリイミドフィルムをフレキシブル光学デバイスの基板として採用することを検討した。しかしながら、特許文献1〜3に記載されているような従来のポリイミドフィルムは、複数回の屈曲に対する屈曲耐性を改善する余地があることが分かった。
したがって、本発明の目的の一つは、複数回の屈曲に対する改善された屈曲耐性を有するポリイミドフィルムを提供することである。
本願発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリイミドフィルムのMD方向における屈折率とTD方向における屈折率との差(ΔN)を特定の範囲にすることにより上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
ポリイミドを主成分として含むポリイミドフィルムであって、上記ポリイミドフィルムのMD方向における屈折率とTD方向における屈折率との差(ΔN)が0.02以上であり、
屈曲半径2mm、屈曲角度135°、荷重1.25kg/mの条件で10万回屈曲させたときに破断せず、屈曲痕が目視で確認できない、
ポリイミドフィルム。
[2]
上記フィルムの黄色度(YI)が5.0以下である、項目1に記載のポリイミドフィルム。
[3]
上記ポリイミドが、下記式(1)で表されるポリイミドを含有し、下記式(1)におけるAとして、下記式(A−1)で表される構造と、下記式(A−2)、下記式(A−3)、及び下記式(A−4)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1種以上とを含む、項目1又は2に記載のポリイミドフィルム。
上記式(1)中、Aは2価の有機基、Bは4価の有機基、nは2以上である。
上記式(A−2)中、Xは、下記式(X−1)〜(X−3)から選択される2価の有機基である。
上記式(A−3)中、aは0又は1である。
[4]
上記ポリイミドは、上記式(1)におけるAとして、上記式(A−1)で表される構造と、下記式(A−5)で表される構造とを含む、項目3に記載のポリイミドフィルム。
[5]
上記式(A−1)で表される構造と、上記式(A−5)で表される構造との比(式(A−1)で表される構造/式(A−5)で表される構造)が、モル基準で2/8〜6/4の範囲内である、項目4に記載のポリイミドフィルム。
[6]
上記式(1)におけるBとして、下記式(B−1)〜(B−4)で表される構造のうち少なくとも一つを含む、項目3〜5のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
上記式(B−1)中、Yは、下記式(Y−1)〜(Y−3)から選択されるいずれかである。
[7]
上記式(1)におけるBとして、下記式(B−5)で表される構造を含む、項目2及び3〜6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
[8]
上記フィルムのMD方向及びTD方向のうち、ヤング率が高い方向におけるヤング率が3.5GPa以上である、項目1〜7のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
[9]
請求項1に記載のポリイミドフィルムを製造する方法であって、上記方法は、
ポリイミド及び溶媒を含むポリイミドワニスを支持体上に塗工することと、
上記溶媒を仮乾燥させて、上記溶媒を0.1質量%〜20質量%含む溶媒含有フィルムを形成することと、
上記溶媒含有フィルムを延伸することと、
上記溶媒含有フィルムから上記溶媒を0.1質量%未満に乾燥させることと
を含み、
上記延伸において、上記溶媒含有フィルムのMD方向における延伸倍率が1.5倍以上である、方法。
[10]
請求項1に記載のポリイミドフィルムを製造する方法であって、上記方法は、
ポリイミド及び溶媒を含むポリイミドワニスを支持体上に塗工することと、
上記溶媒を乾燥させて、上記溶媒を0.1質量%未満のフィルムを形成することと、
上記フィルムを延伸することと、
上記延伸において、上記フィルムのMD方向における延伸倍率が1.5倍以上である、方法。
本発明は、複数回の屈曲に対する改善された屈曲耐性を有するポリイミドフィルムを提供することができる。なお、上述の記載は、本発明の全ての実施形態及び本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
図1は、本願明細書における屈曲試験の例を示す模式図である。 屈曲試験後のフィルムの状態を説明するための模式図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。本願明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
《ポリイミドフィルム》
本実施形態のポリイミドフィルムは、ポリイミドを主成分として含むポリイミドフィルムである。本願明細書において、フィルムが「ポリイミドを主成分として含む」とは、フィルムの全質量を基準として、ポリイミドを50質量%以上含むことを意味する。ポリイミドフィルムは、フィルムの全質量を基準として、ポリイミドを好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上含み、特に好ましくはポリイミドフィルムから構成される。
〈屈折率差〉
本実施形態のポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムのMD方向(「機械方向」ともいう。)における屈折率とTD方向(「幅方向」ともいう。)における屈折率との差(ΔN)が0.02以上である。本実施形態のポリイミドフィルムは、この構成に主に起因して、複数回の屈曲に対する屈曲耐性に優れる。理論に限定されないが、その理由としては、例えば以下のことが考えられる。フィルムの屈折率は、フィルム中のポリマーの分子配向に相関する。ポリイミドフィルムのMD方向における屈折率と、TD方向における屈折率との差が0.02以上であることは、ポリイミド分子がより高い屈折率を有する方向に優先して配向していることを意味する。高い芳香環密度を有するポリイミド分子がMD又はTD方向に配向することによって、フィルム平面内の引張弾性率(以下、「ヤング率」という。)に差を生じ、ポリイミドの配向方向における弾性率(ヤング率)を高めることができる。したがって、本発明によれば、複数回の屈曲に対する屈曲耐性に優れるポリイミドフィルムを提供することができる。
ポリイミドフィルムのMD方向における屈折率とTD方向における屈折率との差(ΔN)の下限は、屈曲耐性の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.023以上、更に好ましくは0.026以上である。屈折率の差の上限は、透明性の観点から、好ましくは0.073以下、より好ましくは0.061以下、更に好ましくは0.048以下である。MD方向とTD方向の屈折率に差を生じる方法としては、後述するように、ポリイミドフィルムのMD方向における延伸倍率とTD方向における延伸倍率とに差をつけることが挙げられる。屈折率は、MD方向がTD方向より高くてもよく、TD方向がMD方向より高くてもよいが、いわゆるロール・ツー・ロールプロセスによって製造することが容易である点から、MD方向における屈折率がTD方向における屈折率よりも高いことが好ましい。
本実施形態のポリイミドフィルムのMD方向及びTD方向のうち一方向における屈折率は、未延伸のポリイミドフィルムの当該方向における屈折率に比べて高くてもよい。そして、本実施形態のポリイミドフィルムの他方向における屈折率は、未延伸のポリイミドフィルムの当該方向における屈折率とほぼ同じであってもよく、低くてもよい。例えば、本実施形態のポリイミドフィルムのMD方向における屈折率は、未延伸のポリイミドフィルムのMD方向における屈折率に比べて、好ましくは0.011以上高く、より好ましくは0.013以上高くてもよい。本実施形態のポリイミドフィルムのTD方向における屈折率は、未延伸のポリイミドフィルムのTD方向における屈折率とほぼ同じであってよく、好ましくは0.005以上低く、より好ましくは0.01以上低くてもよい。
本実施形態のポリイミドフィルムのMD方向及びTD方向のうち、屈折率が高い方向における屈折率の下限は、好ましくは1.580以上、より好ましくは1.600以上、更に好ましくは1.650以上、上限は、好ましくは1.740以下、より好ましくは1.730以下、更に好ましくは1.720以下である。本実施形態のポリイミドフィルムのMD方向及びTD方向のうち、屈折率が低い方向における屈折率の下限は、好ましくは1.540以上、より好ましくは1.590以上、更に好ましくは1.610以上、上限は、好ましくは1.700以下、より好ましくは1.690以下、更に好ましくは1.680以下である。
〈ヤング率〉
ポリイミドフィルムのMD方向における屈折率とTD方向における屈折率に差を生じることによって、MD方向におけるヤング率とTD方向におけるヤング率に差を生じることができる。本実施形態のポリイミドフィルムは、MD方向及びTD方向のうち、ヤング率が高い方向におけるヤング率の下限は、好ましくは3.5GPa以上、より好ましくは3.55GPa以上、更に好ましくは3.60GPa以上であり、上限は、好ましくは6.00GPa以下、より好ましくは5.50GPa以下、更に好ましくは5.00GPa以下である。ヤング率が低い方向におけるヤング率の下限は、好ましくは2.50GPa以上、より好ましくは2.80GPa以上、更に好ましくは3.00GPa以上であり、上限は、好ましくは5.50GPa以下、より好ましくは5.00GPa以下、更に好ましくは4.50GPa以下である。ヤング率は、MD方向がTD方向より高くてもよく、TD方向がMD方向より高くてもよいが、いわゆるロール・ツー・ロールプロセスによって製造することが容易である点から、MD方向におけるヤング率がTD方向におけるヤング率よりも高いことが好ましい。
本実施形態のポリイミドフィルムのMD方向及びTD方向のうち一方向におけるヤング率は、未延伸のポリイミドフィルムの当該方向におけるヤング率に比べて高くてもよい。そして、本実施形態のポリイミドフィルムの他方向におけるヤング率は、未延伸のポリイミドフィルムの当該方向におけるヤング率とほぼ同じであってもよく、低くてもよい。例えば、本実施形態のポリアミドフィルムのMD方向におけるヤング率は、未延伸のポリイミドフィルムのMD方向におけるヤング率に比べて好ましくは0.10GPa以上高く、より好ましくは0.20GPa以上高くてもよい。本実施形態のポリアミドフィルムのTD方向におけるヤング率は、未延伸のポリイミドフィルムのTD方向におけるヤング率とほぼ同じであってよく、好ましくは0.1GPa以上低く、より好ましくは0.2GPa以上低くてもよい。
〈収縮率及び膨張率〉
本実施形態のポリイミドフィルムは、ポリイミドのガラス転移温度(Tg)以上に加熱したとき、MD方向及びTD方向のうち、屈折率が高い方向に収縮し、屈折率が低い方向に膨張してもよい。このことは、配向したポリイミド分子鎖が加熱によってほぐれて配向性を失うことにより、配向方向においては収縮し、配向していない方向においては膨張することに起因する。好ましくは、ポリイミドフィルムは、ポリイミドのTg以上に加熱したとき、MD方向に収縮し、TD方向に膨張する。ポリイミドフィルムは、ポリイミドのTg以上に加熱したとき、屈折率が高い方向に好ましくは5%以上収縮し、より好ましくは7%以上収縮し、更に好ましくは10%以上収縮し、屈折率が低い方向に好ましくは5%以上膨張し、より好ましくは7%以上膨張し、更に好ましくは10%以上膨張してもよい。ポリイミドフィルムの収縮率及び膨張率の測定は、ポリイミドフィルムを3mm×20mmの大きさにカットしたものを試験片として、熱機械分析により行うことができる。例えば、測定装置としてセイコーインスツル株式会社製(EXSTAR6000)を用い、引張荷重49mN、昇温速度10℃/分及び窒素気流下(流量100ml/分)の条件で、温度50〜350℃(Tg以上)の範囲における試験片伸びの測定を行う。測定後のサンプルの長さを測定し、測定前のサンプルの長さの日から収縮率および膨張率を求めることができる。
〈屈曲耐性〉
本実施形態のポリイミドフィルムは、屈曲半径2mm、屈曲角度135°、荷重1.25kg/mの条件で10万回屈曲させたときに破断せず、屈曲痕が目視で確認できない。本実施形態のポリイミドフィルムは、この構成を有するため、フレキシブル光学デバイスの基板として好適に用いることができる。
このような屈曲耐性は、上記条件を実現することができれば任意の方法で試験することができ、例えば、図1に示すようにして行うことができる。試験対象のフィルム(1)のサイズは、幅10〜20mm、長さ110mm、厚さ5〜20μmとすることができる。図1に示すように、試験対象のフィルム(1)を、回転台(2)の上部に配置されているプランジャー(3)に取り付けられたチャック(4)で挟持し、回転台(2)の中心を通るように垂下させる。回転台(2)に取り付けられた2つのクランプ(5)が回転台(2)の回転中心でフィルム(1)に接するように、フィルム(1)を2つのクランプ(5)で挟持する。クランプの先端は半径2mmの曲面になっており、これによって、フィルム(1)を屈曲半径2mmで屈曲させることができる。プランジャー(3)の先には錘がセットできるようになっており、錘の重さを変更させることで1.25kg/mの荷重をフィルム(1)にかけることが出来る。回転台(2)は、左回転及び右回転を切り換えて繰り返し回転運動することができる。開始状態のフィルムの下端の位置を開始点(0°)とし、回転台(2)を左(又は右)回転させる。回転台(2)の回転に伴いフィルムの下端はクランプ(5)に挟持されつつ上方に持ち上げられ、フィルム(1)はクランプ(5)に当接しながら屈曲する。屈曲角度(6)が135°に到達したら、回転台(2)の回転方向を逆方向に切り換える。フィルム(1)が開始点を通過し、当該逆方向に向かって屈曲角度(6)が再び135°に到達したら、再び回転台(2)の回転方向を切り換える。以上、フィルム(1)が開始点を出発して、右(又は左)に135°、開始点、左(又は右)に135°、そして再び開始点に戻るまでの動作を1回の屈曲とする。
図2は、屈曲試験後のフィルムの状態を説明するための模式図である。本実施形態のポリイミドフィルムは、上記のような屈曲を10万回繰り返しても、図2(a)に例示的に示すように、破断せず、屈曲痕が目視で確認できない。例えば、屈曲試験後、フィルムの屈曲部のヘイズを測定すると5.0以下であることが好ましく、さらに好ましくは3.0以下であり、より好ましくは1.0以下である。図2(b)は、約29,000回屈曲させたとき破断した、従来のポリイミドフィルムの例を示す。図2(c)は、約1,000回屈曲させた後に屈曲痕を目視で確認することができた、PETフィルムの例を示す。
〈ポリイミド〉
本実施形態に係るポリイミドフィルムは、下記式(1)で表されるポリイミドを含有することが好ましい。
ここで上記式(1)中、Aは2価の有機基、Bは4価の有機基、nは2以上である。
式(1)におけるA
ポリイミドフィルムに含有されるポリイミドは、酸二無水物とジアミンとを原料に生成することができる。式(1)のAは、ジアミンから得ることができる。
また、本実施形態では、式(1)におけるAとして、下記式(A−1)で表される構造(以下、「構造A1」ともいう。)と、下記式(A−2)、下記式(A−3)、及び下記式(A−4)で表される構造のうちいずれか1種(以下、「構造A2」ともいう。)以上と、を含む(以下、「第一のポリイミドフィルム」ともいう)ことが好ましい。
上記式(A−2)中、Xは、下記式(X−1)〜(X−3)から選ばれる2価の有機基である。
上記式(A−3)中、aは0または1である。
式(A−1)で表される構造は、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(3,3’−Diaminodiphenyl Sulfone:以下、3,3’−DDSともいう)由来、式(A−2)、と(X−1)とを組み合わせて表される構造(式(A−5)に該当)は、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン(4,4’−Diaminodiphenyl Sulfone:以下、4,4’−DDSともいう)由来、式(A−2)と(X−2)とを組み合わせて表される構造は、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(以下、BAPDBともいう)由来、式(A−2)と(X−3)とを組み合わせて表される構造は、4,4‘−ビス(4−アミノフェノキシビフェニル)(以下、BAPBともいう)由来、式(A−3)で表される構造は、aが0の場合はシクロヘキシルジアミン(以下、CHDAともいう)由来、aが1の場合は1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(以下、14BACともいう)由来、式(A−4)で表される構造は、ビス(アミノメチル)ノルボルナン由来(以下、BANBDAともいう)である。ただし、これらの化合物に限定されるものではない。
式(A―2)と(X−1)の組み合わせの式(A−5)を以下に示す。
式(A−2)と(X−2)の組み合わせの式(2)を以下に示す。
式(A−2)と(X−3)の組み合わせの式(3)を以下に示す。
本実施形態におけるポリイミドは、式(1)のAとして、式(A−1)で表される構造(3,3’−ジアミノジフェニルスルホン由来)を必須の繰り返し単位として含み、更に、式(A−1)の構造と組み合わせる繰り返し単位として、式(A−2)、式(A−3)、及び、式(A−4)で表される構造のうちいずれか1種以上と、を含む。
本実施形態におけるポリイミドは、上記のような繰り返し単位を含むことで、黄色度(Yellowness Index、以下「YI」ともいう。)が低く、屈曲耐性に優れるフィルムを得ることができる。なお、YIは、できるだけ低いことが望ましい。YIが低ければ、ポリイミドフィルムの色づきや曇り、濁りを少なくし、タッチパネル、有機EL照明、フレキシブルディスプレイ等の表示デバイスの視認性を向上させることができる。したがって、YIをできる限り低くし、可視光における全光線透過率を上げることが好ましい。ポリイミドの着色は、ポリイミド分子間の電荷移動錯体(CT錯体)の形成に由来すると言われている。式(A−1)から式(A−4)で表される構造は、いずれも主鎖の折れ曲がりによりポリイミド分子間のCT錯体の形成を阻害すると考えられる。なかでも式(A−1)及び(A−5)で表される構造は、SO基の持つ電子吸引性によりイミド基のN原子の電子供与性を弱めることができ、CT錯体が形成し難くなると考えられ、特に好ましい。
芳香族ポリイミドが有する可視光の吸収もまたポリイミドの着色の原因となる。式(A−3)および式(A−4)の脂環式の構造は、芳香族ポリイミドに比べ可視光の吸収を低減することができると考えられる。
ポリイミドの溶解性は、ポリイミドの配向が乱れることにより向上すると考えられる。式(A−1)から式(A−4)で表される構造は、いずれも主鎖の折れ曲がりによりポリイミド分子の配向が乱れる為、溶解性を発現すると考えられる。なかでも式(A−1)で表される構造は、SO基の屈曲構造と、3位および3’位から生じる結合による屈曲構造により、著しくポリイミド分子の配向が乱れる為、優れた溶解性を発現すると考えられる。
このように本実施形態におけるポリイミドフィルムに含有されるポリイミドは、式(1)のAとして、式(A−1)で表される構造と、式(A−2)、式(A−3)、及び、式(A−4)で表される構造のうちいずれか1種以上と、を含むことに特徴がある。
式(A−1)で表される構造と、式(A−5)で表される構造とを共重合させることでポリイミドの分子量が増加し、このポリイミドを用いて生成されたフィルムの屈曲耐性をより改善することができる。なお、少なくとも、式(A−1)で表される構造を有し、かつ式(A−2)、(A−3)および(A−4)で表される構造から選ばれる少なくとも1種以上の構造を有するポリイミドについても同様の効果が発揮される。
本実施形態において、少なくとも、式(A−1)で表される構造と式(A−5)で表される構造とを用いることが好適である。以下では、3,3’−DDSと4,4’−DDSの両方をジアミンとして用いた構成について説明する。
式(A−1)で表される構成単位は、上記したように、3,3’−DDS成分から得ることができる。式(A−1)で表される構造は、溶媒への可溶性を発現させるための部位である。
式(A−5)で表される構成単位は、4,4’−DDSから得ることができる。式(A−5)で表される構造は、本実施形態のポリイミドを溶媒に溶解して得られるワニス(樹脂組成物)を加熱乾燥させたポリイミドフィルムにおいて、ガラス転移温度(Tg)を250〜350℃の範囲に発現させることができる。
本実施形態では式(A−1)で表される構造と式(A−5)で表される構造の双方を含有することが好ましい。式(A−1)で表される構造単位は、ポリイミドの溶解性の観点から導入することが好ましい。式(A−5)で表される構造単位は、高いガラス転移温度(Tg)の観点から好ましい。式(A−1)で表される構造と式(A−5)で表される構造の双方を含有することで、各々単独では成しえない、ポリイミドの溶解性とフィルムの破断伸度及び高いガラス転移温度(Tg)とを、無色透明性や、高い全光線透過率を損なうことなく得ることができる。
本実施形態では、構造A1と構造A2との組成比(構造A1/構造A2)が、ポリイミドフィルムの屈曲耐性を更に向上できる観点から、モル比で、2/8〜8/2であることが好ましい。特に、構造A2として式(A−5)で表される構造を有する場合には、構造A1と式(A−5)で表される構造(以下、「構造A21」ともいう。)との組成比(構造A1/構造A21)は、モル比で、2/8〜6/4の範囲内であることが好ましく、3/7〜4/6の範囲であることが更に好ましい。すなわち構造A1は、式(1)におけるAの全量を100モル%としたときに、20モル%以上60%以下であることが好ましい。構造A21は、式(1)におけるAの全量を100モル%としたときに、の40モル%以上80%モル%以下であることが好ましい。
また構造A1と、構造A2として式(A−2)から式(A−4)で表される構造単位の少なくとも1種(ただし上述した式(A−5)で表される構造単位を除く)(以下、「構造A22」ともいう。)を有する場合、構造A1と構造A22との組成比(構造A1/構造A22)は、モル比で、5/5〜8/2が好ましい。
なお、目的とする破断伸度を発現させることができる範囲において、更に好ましくは目的とするガラス転移温度(Tg)を発現させることができる範囲において、式(A−1)及び式(A−5)で表される構造単位以外の構造単位を少量含むことができる。すなわち、本実施形態に係るポリイミドは、その性能を損なわない範囲で、4,4’−DDS及び3,3’−DDS以外のジアミン成分由来の構成単位を含んでもよい。例えば、炭素数が6〜30の芳香族ジアミンが好ましい態様としてあげられる。
具体的には、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、1,4−ジアミノベンゼン、4−アミノベンゼンスルホン酸−4−アミノフェニルエステル、4−アミノベンゼンスルホン酸−3−アミノフェニルエステル、3−アミノベンゼンスルホン酸−3−アミノフェニルエステル、2−アミノベンゼンスルホン酸−2−アミノフェニルエステル、2,2’−ジメチル4,4’−ジアミノビフェニル、1,3−ジアミノベンゼン、4−アミノフェニル4’−アミノベンゾエート、4,4’−ジアミノベンゾエート、4,4’−(又は3,4’−、3,3’−、2,4’−)ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(又は3,3’−)ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ベンゾフェノンジアミン、3,3’−ベンゾフェノンジアミン、4,4’−ジ(4−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、4,4’−ジ(3−アミノフェノキシ)フェニルスルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,6,6’−テトラトリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、ビス{(4−アミノフェニル)−2−プロピル}1,4−ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)フルオレン、3,3’−ジメチルベンチジン、3,3’−ジメトキシベンチジン及び3,5−ジアミノ安息香酸、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、ビス(4−アミノフェニル−2−プロピル)−1,4−ベンゼン、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’−6F)、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’−6F)等の芳香族ジアミン成分由来の構成単位を挙げることができる。
また2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(3,3’−TFDB)、2,2’−ビス[3(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(3−BDAF)、2,2’−ビス[4(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(4−BDAF)、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(3,3’−6F)、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(4,4’−6F)はフッ素原子の傘高い立体障害の導入によりポリイミドの分子間のCT錯体の形成を抑制でき、フィルムのYIを低下する為に導入することができる。
なお、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)由来の構造単位は、以下の式(4)で表される。
式(1)におけるB
次に、式(1)のBについて説明する。式(1)のBは、当該構造単位は、酸二無水物から得ることができる。
本実施形態では、ポリイミドに含まれる酸二無水物成分由来の構造単位は、同一分子でもよく、違う構造の分子でもよい。
Bで表される構造単位は、式(B−1)から式(B−4)で表される構造単位であることが好ましい。
本実施形態では、式(1)中のBとして下記式(B−1)から下記式(B−4)で表される構造のうち少なくとも一つ以上を含むことが好ましい。
上記式(B−1)中、Yは、下記式(Y−1)ないし下記式(Y−3)から選ばれる構造のうちいずれかである。
式(B−1)、と(Y−1)とを組み合わせて表される構造(式(B−5)の構造に該当)は、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下、ODPAともいう)由来、式(B−1)と式(Y−2)とを組み合わせて表される構造は、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(以下、6FDAともいう)由来、式(B−1)と式(Y−3)とを組み合わせて表される構造は、9,9−ジフェニルフルオレン酸二無水物(以下、DPFLDAともいう)由来、式(B−2)で表される構造は、ヒドロキシピロメリット酸二無水物(以下、HPMDAともいう)由来、式(B−3)で表される構造は、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(以下、BODAともいう)由来、式(B−4)で表される構造は、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン(以下、TDAともいう)由来である。
本実施形態に係るポリイミドは、その性能を損なわない範囲で、上記式(B−1)から上記式(B−4)で表される構造単位以外の酸二無水物成分由来の構成単位を含んでもよい。
例えば、炭素数8〜36の芳香族テトラカルボン酸二無水物、炭素数が6〜50の脂肪族テトラカルボン酸二無水物、及び炭素数が6〜36の脂環式テトラカルボン酸二無水物から選択される化合物であることが好ましい。ここでいう炭素数には、カルボキシル基に含まれる炭素の数も含む。
さらに具体的には、炭素数が8〜36の芳香族テトラカルボン酸二無水物として、4,ピロメリット酸二無水物(以下、PMDAとも記す)1,2,3,4−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAととも記す)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,1’−エチリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、2,2’−プロピリデン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−トリメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,4−テトラメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,5−ペンタメチレン−4,4’−ジフタル酸二無水物、チオ−4,4’−ジフタル酸二無水物、スルホニル−4,4’−ジフタル酸二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、1,4−ビス[2−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2−プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2’−ビス[3−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2’−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(以下、BPADAとも記す)、ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1’,3,3’−テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
炭素数が6〜50の脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物等を挙げることができる。
炭素数が6〜36の脂環式テトラカルボン酸二無水物として、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(以下、CBDAとも記す)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、メチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,2−エチレン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、1,1’−エチリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、2,2’−プロピリデン−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、オキシ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、チオ−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、スルホニル−4,4’−ビス(シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸)二無水物、rel−[1S,5R,6R]−3−オキサビシクロ[3,2,1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸二無水物、エチレングリコール−ビス−(3,4−ジカルボン酸二無水物フェニル)エーテル、4,4’−ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸二無水物)等を挙げることができる。
上記式(B−1)中、式(Y−1)および式(Y−2)は、ポリイミドの溶媒に対する溶解性、及び、ポリイミドフィルムにした際の黄色度の低減の観点から好ましい。また、式(Y−3)は、負の固有複屈折を有する為、ポリイミドフィルムにした際の黄色度の低減、及びガラス転移温度(Tg)の向上の観点から好ましい。
上記式(B−2)から式(B−4)は、ポリイミドの溶媒に対する溶解性、及び、ポリイミドフィルムにした際の黄色度低減、の観点から好ましい。
中でも式(1)中のBとしてポリイミドの溶媒に対する溶解性、ポリイミドフィルムにした際の高い全光線透過率、低い黄色度、高い弾性率、及び、高い破断伸度の観点から、ODPA由来の成分である下記式(B−5)で表される構造を含んで使用することが特に好ましく、式(1)で表されるポリイミド中、酸二無水物由来の構成単位Bのうち、式(B−5)は酸二無水物全体に対し50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがさらに好ましく、100モル%であってもよい。
本実施形態に係るポリイミドは、下記式(5)で表されるユニット1、及び、下記式(6)で表されるユニット2を主として含む。
本実施形態において、ユニット1及びユニット2以外のユニットを更に含む場合、ユニット1、及びユニット2以外のユニットの含有量は、ユニット1、及びユニット2の含有量より少ないことが好ましい。これらのユニットは高分子鎖の中で交互に結合していても順列に結合していても良く、これらのユニットがランダムに結合していてもよい。
ポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、ポリイミドフィルムにおいて高い破断伸度を得る観点から、10,000以上であることが好ましく、25,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが特に好ましい。また、ポリイミドの重量平均分子量(Mw)は、1,000,000以下であることが好ましく、500,000以下であることがより好ましく、250,000以下であることが特に好ましい。重量平均分子量が1,000,000以下であると、溶媒への溶解性も良好で、塗工などの加工の際に所望する膜厚にて滲みなく塗工できることができる。特に、ポリイミドフィルムにおいて高い破断伸度を得る観点から、重量平均分子量は30,000以上であることが好ましい。ここで、重量平均分子量とは、既知の数平均分子量のポリスチレンを標準として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される分子量をいう。
〈ポリイミドワニス〉
上述のポリイミドは、これを溶媒に溶解したポリイミドワニス(ポリイミド樹脂組成物、以下、単に「ワニス」ともいう。)として、本実施形態のポリイミドフィルムの製造原料として用いることができる。
本実施形態におけるポリイミドは溶媒に対する溶解性に優れることが後述の実験でも証明されている。したがって本実施形態のポリイミドを用いることで、簡単なプロセスにより所望の特性を備えたワニスを得ることができる。本実施形態のポリイミドワニスによれば、ポリイミドが適切に溶解しているため、ワニスを塗布面上に塗布した際、塊にならず平滑性に優れたフィルムを形成することができる。このため、均一な厚みの樹脂層を形成することができるとともに高い屈曲耐性を得ることができる。
ポリイミドワニスは、例えば、酸二無水物成分及びジアミン成分を、溶媒、例えば有機溶媒に溶解し、トルエンなどの共沸溶媒を加え、イミド化の際に発生する水を系外に除去することで、ポリイミド及び溶媒を含有するポリイミド溶液として製造することができる。ここで、反応時の条件は特に限定されないが、例えば、反応温度は0℃〜200℃、反応時間は3〜72時間である。スルホン基含有ジアミン類との反応を充分に進めるために、180℃で12時間程度加熱反応させることが好ましい。また、反応時、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気であることが好ましい。また適宜、塩基性の化合物、例えばピリジンなど、をイミド化触媒として添加しても良い。
溶媒は、ポリイミドを溶解する溶媒であれば、特に限定されない。公知の反応溶媒として、フェノール系溶媒として例えば、m−クレゾール、アミド系溶媒として例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ラクトン系溶媒として例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−クロトノラクトン、γ−ヘキサノラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン、δ−ヘキサノラクトン、スルホキシド系溶媒として例えば、N,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)、ケトン系溶媒として例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、エステル系溶媒として例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジメチル、等から選ばれる1種以上の極性溶媒が有用である。このうち、好ましくは、溶解性の観点からNMP及びGBLである。更にフィルムのYIを低減させる観点からGBLが好ましい。
本実施形態におけるポリイミドワニスには適宜添加剤を添加してもよい。添加剤として、負の複屈折率を示す物質を添加してもよい。例えば、炭酸ストロンチウム等の無機粒子やポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリメチルメタクリレート、セルローストリアセテート、フルオレン誘導体等の有機化合物、が挙げられる。
添加剤としては、例えば、フィルムの塗工性を改善する為のレべリング剤、分散剤や界面活性剤、フィルムの支持体からの剥離性や接着性を調整する為の界面活性剤や密着助剤、フィルムに難燃性を付与する為の難燃剤などである。そのほか、添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、可塑剤、ワックス類、充填剤、顔料、染料、発泡剤、消泡剤、脱水剤、帯電防止剤、抗菌剤、防カビ剤などが挙げられる。
ポリイミドワニスに添加された添加剤は、そのままポリイミドフィルムに含有されていてもよい。
本実施形態に係るポリイミドフィルムは、例えば、支持体の表面上に形成されたポリイミドフィルムであってもよく、支持体がなくても支持性のあるフィルム(自立フィルム)であってもよい。本実施形態のポリイミドフィルムは、支持体がなくても支持性のあるフィルム(自立フィルム)であることが、フィルム基板としての強度を保持する観点から好ましい。本願明細書において、支持性のあるフィルムとは、5%以上の破断伸度を有するフィルムを意味する。支持体を有するフィルムについては、剥がしたフィルムが5%以上の破断伸度を有している場合、支持性のあるフィルムに該当する。
尚、破断伸度の測定法は後述する(破断伸度、破断強度の評価)に記載の方法を用いることができる。
ポリイミドフィルムは、ポリイミド及び溶媒を含有するポリイミドワニス(樹脂組成物)を支持体の表面上に塗工等により成膜し、次いで、ポリイミドワニスを加熱して溶媒を蒸発させることにより得ることができる。より具体的には、上述のように、酸二無水物成分及びジアミン成分を有機溶媒中に溶解して反応させて得られるポリイミド溶液を支持体に成膜することができる。
ポリイミドワニス(樹脂組成物)を支持体の表面上に塗工等により成膜し、フィルムにべとつきがなくなるまで仮乾燥をし、溶媒を0.1質量%〜20質量%含む溶媒含有フィルムを形成する。次いでフィルムを支持体から剥離した後、更にフィルムを加熱して、溶媒を0.1質量%未満になるまで蒸発させることによっても得ることができる。この場合は支持体がなくても支持性のあるフィルム(自立フィルム)となる。
ここで、支持体は、例えば、アルカリガラス基板、無アルカリガラス基板(Eagle XG(登録商標)、コーニング社製)、及び、銅基板、アルミ基板、SUS基板等の金属基板や、Upilex(登録商標)フィルム(宇部興産製)、Kapton(登録商標)フィルム(東レ・デュポン製)、ポリカーボネートフィルム、PETフィルム等のようなプラスチックフィルムや銅箔、アルミ箔、SUS箔等のような金属箔であるが、ポリイミドワニスに対する加熱・乾燥は支持体が無くとも実施することができ、支持体の種類は特に限定されるものではない。ここで、支持体としての基板とは、高剛性で折り曲げ等に適さないものを意味し、フィルム或いはフィルム基板とは、可撓性であり、折り曲げ加工が可能なものを意味する。
本実施形態では、ポリイミドの溶媒への溶解性が良好であり、支持体上にポリイミドワニスを塗布し、仮乾燥を行い、支持体を取り外しても、ポリイミドフィルムは自立性を保つことができる。したがって支持体に支持されない自由状態で、溶媒を0.1質量%〜20質量%含む仮乾燥後のポリイミドフィルム(本願明細書において、「仮乾燥フィルム」、及び「溶媒含有フィルム」ともいう。)に加熱を実施して、ポリマーの配向が少ない状態で溶媒含有量が0.1質量%未満のポリイミドフィルムを得ることができる。
ポリイミドワニスに対して、不活性ガス雰囲気下で150〜350℃の温度を施すことで、溶媒を除去して、ポリイミドフィルムを形成することができるが、乾燥は大気雰囲気下でも実施することができ、特に限定されるものではない。
溶媒は、上記したように、例えば、m−クレゾール、NMP、DMF、DMAc、GBL、DMSO、アセトン、ジエチルアセテート等であり、このうちGBLを溶媒に用いることで、ポリイミドフィルムの低YIを担保することができる。上記のようにポリイミドワニスに対する加熱・乾燥により溶媒はほぼ除去されるものの、所望のYI、及び屈曲耐性を得ることができる等、所望の物性を損なわない観点からポリイミドフィルム中に、GBLの含有量は、3質量%よりも小さいことが好ましく、1質量%よりも小さいことがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好適である。なお、GBLは少なくとも0.01質量%程度が残量として残される。
ここで、ポリイミドワニスの成膜方法としては、例えば、スピンコート、スリットコート、スロットダイコート及びブレードコートなどの公知の塗工方法が挙げられる。
本実施形態におけるポリイミドフィルムは、優れた屈曲耐性を有している。式(A−1)及び式(A−5)で表される構造の双方を含む場合、式(A−1)及び式(A−5)で表される構造の一方しか含まない場合に比べて、より高い破断伸度と破断強度とを得ることができる。上記したように、ジアミン成分由来として、4,4’−DDS成分由来(式(A−5)で表される構造)のみでは、ポリイミドの分子量が低下し、膜の屈曲耐性が低くなる。このため本実施形態では、4,4’−DDS成分由来の異性体であり、4,4’−DDS成分由来から見てモノマー骨格が屈曲した構造となる3,3’−DDS成分由来(式(A−1)で表される構造)を含有させ、このとき、好ましくは、3,3’−DDS成分由来を4,4’−DDS成分由来よりも少ない添加量とすることで、分子量を高めつつ、屈曲耐性を向上させることができる。
〈その他の特徴〉
本実施形態に係るポリイミドフィルムの黄色度(YI)は、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下、更に好ましくは4.0以下である。このとき、ポリイミドフィルムの膜厚は、0.1μmから30μmの範囲内であることが好ましく、1μmから20μmの範囲内であることがより好ましい。
フレキシブルデバイス用のフィルム基板に用いる際は、デバイスの薄膜化による屈曲耐性向上の観点から、ポリイミドフィルムの膜厚は、1μmから10μmの範囲内であることが好ましく、更に好ましくは1μmから5μmの範囲内である。
10μm未満のフィルムは例えば、膜厚が10μm以上のポリイミドフィルムを延伸処理することにより作製することができる。支持体上にポリイミドワニスを塗布し、支持体を取り外してもポリイミドフィルムが自立性を有することができる状態まで仮乾燥を行う。支持体としては前述したPETフィルムやKapton(東レ・デュポンの登録商標)、Upilex(宇部興産の登録商標)などのポリイミドフィルム、金属箔などを用いることができる。延伸処理の際、溶媒含有フィルム中に残存する溶媒量は、フィルムの自立性と延伸性加工性の観点から0.1〜20質量%であることが好ましい。
仮乾燥フィルムは支持体がついたまま、或いは支持体上から剥離した状態で、150℃〜250℃に加熱しながら二軸延伸にて、MD方向及び/又はTD方向に、1.5倍から5倍に延伸し作製することができる。延伸後の仮乾燥フィルムは、次いで本乾燥を実施し、残溶媒が0.1質量%未満となるまで乾燥される。
本実施形態では、黄色度(YI)を2.0以下に調整することもできる。このように本実施形態では、低い黄色度に抑えることができ、すなわち無色透明なポリイミドフィルムを得ることができる。なお本実施形態でいう「無色透明」とは、フィルムの全光線透過率が80%以上であり、ヘイズが2以下であり、黄色度(YI)が、5.0以下の状態を指す。従って、本実施形態のポリイミドフィルムは、タッチパネルやディスプレイなどの光学用途に好適に用いることができる。例えば、本実施形態に係るポリイミド樹脂を透明電極フィルムの基板フィルムとして用いる際には、基板フィルムの上下面の少なくとも一方の面にタッチパネル素子を作製し、基板フィルムの表面、あるいは、基板フィルムの表面と対向する側を視認面とした場合でも画面の色づき、明度に悪影響を与えない。
本実施形態のポリイミドフィルムは、PETフィルムやCOPフィルムと同様にガラスの代替品として用いることができ、更には本実施形態のポリイミドフィルムは屈曲耐性に優れる為、折り畳み式の表示体や曲面に追従した表示体に用いることができる。
《積層体》
本実施形態において、ポリイミドフィルムの表面上に、透明電極層を設けて、積層体を製造することができる。
積層体は、ポリイミドフィルムの表面上に透明電極層をスパッタリング装置で成膜等することにより得ることができる。ポリイミドフィルムは支持体を有していてもよく、支持体を有しない単層であってもよい。積層体は、透明電極層をポリイミドフィルムの両面に有してもよい。このとき、ポリイミドフィルムの両面に、それぞれ、少なくとも1層以上の透明電極層を有することが好ましい。また、透明電極層とポリイミドフィルムとの間に、平滑性を付与する為のアンダーコート層、表面硬度を付与する為のハードコート層、視認性を向上する為のインデックスマッチング層、ガスバリア性を付与する為のガスバリア層、など他の層を有していてもよい。表面硬度を付与する為のハードコート層、視認性を向上する為のインデックスマッチング層、は透明電極層とポリイミドフィルムの上に積層されていてもよい。本実施の形態の積層体は、透明電極フィルムのようなタッチパネル材料への使用に適している。
透明電極フィルムを形成する場合、透明電極層のポリイミドフィルム表面への成膜工程は、例えば、80〜100℃の低い温度範囲で実施されるが、実際に所望する性能発現のためには、より高温でのスパッタリングを行い、比抵抗の低い透明電極層を形成することが好ましい。透明電極層は、ポリイミドフィルムの両面に形成される構成にできる。これにより、例えば、両面にタッチパネル素子を配置することができる。
この際、透明電極層を成膜する温度が、成膜面を構成するポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)が高い場合においては、高温領域でポリイミドフィルムの収縮や破断などの問題が生じる。一般的に、PETフィルム上に透明電極層を形成する場合、PETフィルムのガラス転移温度(Tg)である約100℃よりも低い80℃程度でのスパッタリングが行われる。これに対して本実施形態に係るポリイミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が約250℃以上(フィルムの厚さ15μmを基準)と高く、耐熱性に優れる。すなわち200℃以上の高温に曝されても高い屈曲耐性を保ち得る。したがって、本実施形態のポリイミドフィルム10の表面に対して、例えば、150〜250℃程度でのスパッタリングを行って、比抵抗の低い透明電極層を成膜することができる。
また、本実施形態において、ポリイミドは、透明電極層21を成膜する際の歩留まりを向上させる観点から、ポリイミドフィルムの厚さ15μmを基準として、破断強度が100MPa以上であることが好ましい。
また、本実施形態に係るポリイミドフィルムは、透明電極フィルムの性能を向上させる観点から、上記したように、フィルムの厚さ15μmを基準として、ガラス転移温度(Tg)が250℃以上であることが好ましい。
《ポリイミドフィルムの製造方法》
本実施形態におけるポリイミドフィルムの製造方法は:ポリイミド及び溶媒を含むポリイミドワニスを支持体上に塗工することと;溶媒を仮乾燥させて、溶媒を0.1質量%〜20質量%含む溶媒含有フィルムを形成することと;溶媒含有フィルムを延伸することと;溶媒含有フィルムから溶媒を0.1質量%未満に乾燥させることとを含む。また、延伸において、溶媒含有フィルムのMD方向における延伸倍率が1.5倍以上である。これによって、ポリイミドフィルムのMD方向における屈折率とTD方向における屈折率との差(ΔN)を0.02以上に調整することがより容易である。
他の実施形態における、ポリイミドフィルムの製造方法は:ポリイミド及び溶媒を含むポリイミドワニスを支持体上に塗工することと;溶媒を乾燥させて、溶媒を0.1質量%未満のフィルムを形成することと;フィルムを延伸することとを含む。また、延伸において、フィルムのMD方向における延伸倍率が1.5倍以上である。これによって、ポリイミドフィルムのMD方向における屈折率とTD方向における屈折率との差(ΔN)を0.02以上に調整することがより容易である。
仮乾燥における温度は、一般的には100℃〜350℃、好ましくは100℃〜300℃、より好ましくは100℃〜250℃である。延伸における温度は、一般的には200℃〜400℃、好ましくは200℃〜350℃、より好ましくは250℃〜350℃である。延伸後の本乾燥における温度は、一般的には200℃〜400℃、好ましくは200℃〜350℃、より好ましくは250℃〜350℃である。
延伸において、溶媒含有フィルムのMD方向における延伸倍率とTD方向における延伸倍率との差の下限は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは1.0以上であり、上限は、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.0以下である。溶媒含有フィルムのMD方向における延伸倍率の下限は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.3倍以上、更に好ましくは1.5倍以上であり、上限は、好ましくは5.0倍以下、より好ましくは4.5倍以下、更に好ましくは4.0倍以下である。溶媒含有フィルムのTD方向における延伸倍率の下限は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、更に好ましくは1.3倍以上であり、上限は、好ましくは4.0倍以下、より好ましくは3.0倍以下、更に好ましくは2.0倍以下である。また、屈折率の差をより容易に0.02以上に調整する観点から、TD方向には延伸せずに、MD方向に好ましくは1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上、更に好ましくは2.5倍以上、かつ好ましくは5.0倍以下、より好ましくは4.5倍以下、更に好ましくは4.0倍以下に延伸してもよい。
本実施形態のポリイミドフィルムの製造方法は、支持体上にポリイミドワニスを塗工することを含む。本実施形態では、あらかじめイミド化されたポリイミド溶液から成膜している為、仮乾燥を行った後、支持体を取り外してポリイミドの自立フィルムを得ることができる。したがって、支持体に支持されない自由状態で、延伸及び加熱を実施することで、MD方向における屈折率とTD方向における屈折率との差を0.02以上に調整することがより容易である。
支持体上にポリイミド前駆体を含むワニスを塗布した状態で加熱してイミド化する方法では、支持体との膨張差による歪みにより、ポリイミドフィルムの残留歪みが大きくなりやすい。また、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸フィルムからイミド化したポリイミドフィルムはポリアミド酸フィルムが強度に劣る為、支持体が必要であり、仮乾燥後に自立フィルムを得ることが困難である。更に脱水収縮による歪みが発生する為、ポリイミドフィルムの残留歪みが大きくなりやすい。
本実施形態のポリイミドフィルムは、PETフィルムやCOPフィルムと同様にガラスの代替品として用いることができ、屈曲耐性に優れるため、例えば、折り畳み式の表示体や曲面に追従した表示体に本実施形態のポリイミドフィルムを用いてもフィルム破損が生じにくく、使い勝手が良い。
以下、本発明について、例に基づきさらに詳述するが、これらは説明のために記述されるものであって、本発明の範囲が下記例に限定されるものではない。例における各種評価は次のとおりに行った。
《測定及び評価方法》
〈屈折率の評価〉
ポリイミドフィルムの屈折率は、フィルムを25℃、相対湿度50%にて24時間調湿後、プリズムカップラー(MODEL2010 Prism coupler、Metricon社製)を用いて、波長532nm、632.8nm、838nmの光源を用いて下記(a)で表される屈折率(N)を求めた。この平均屈折率の値から波長589nmにおける平均屈折率(N589)を求めた。
式(a): N=(NTE×2+NTM)/3
[式中、NTEはフィルム平面方向の変更で測定した屈折率であり、NTMはフィルム面法線方向の偏光で測定した屈折率である。]
続いて、調湿されたフィルムを、複屈折測定装置(KOBRA−WR、王子計測機器社製)を用いて、平行ニコル回転法により、589nmの光源で測定を行い、波長589nmにおける平均屈折率(N589)の値からNx及びNyを求め、下記(b)で表される屈折率差(ΔN)を求めた。
式(b): ΔN=Nx−Ny
[式中、Nxはフィルム面内の遅相軸(x)方向の屈折率であり、Nyはフィルムの新相軸(y)方向の屈折率である。]
〈屈曲耐性の評価〉
ポリイミドフィルムの屈曲耐性の評価は、フィルムを25℃、相対湿度50%にて24時間調湿後、MIT型繰り返し折り曲げ試験機(MIT−DA、株式会社東洋精機製作所製)を用い、幅15mm、長さ100mm、厚み7〜20μmの試験片に荷重が1.25kg/mmとなる錘をかけた状態で、折り曲げ半径R2mm、折り曲げ角度135°、速度90回/分の条件で100,000回往復での繰り返し折曲げ試験を行った。試験後サンプルを装置から外し、目視で屈曲痕がついていないものを〇、フィルムが破断したもの、屈曲痕が目視で確認されたもの、又はヘイズが5.0以上のものを×とした。
〈重量平均分子量(Mw)及び、数平均分子量(Mn)の測定〉
重量平均分子量(Mw)及び、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて、下記の条件により測定した。溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を用い、測定前に24.8mol/Lの臭化リチウム一水和物(和光純薬工業社製、純度99.5%)及び63.2mol/Lのリン酸(和光純薬工業社製、高速液体クロマトグラフ用)を加えたものを使用した。また、重量平均分子量を算出するための検量線は、スタンダードポリスチレン(東ソー社製)を用いて作製した。
カラム:TSK−GEL SUPER HM−H
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
ポンプ:PU−2080(JASCO社製)
検出器:RI−2031Plus(RI:示差屈折計、JASCO社製)
UV−2075Plus(UV−Vis:紫外可視吸光計、JASCO社製)
〈ヤング率、破断伸度及び破断強度の評価〉
乾燥したサンプル長3×50mm、ポリイミドフィルムを引張試験機(株式会社A&D社製:RTG−1210)を用いて、速度100mm/minで引張り、ヤング率、破断伸度、及び破断強度を測定した。
〈黄色度(YI)およびヘイズの評価〉
ポリイミドフィルムを、コニカミノルタ株式会社製分光測色計(CM3600A)にてD65光源を用い、黄色度(YI値)、ヘイズ及び全光線透過率を測定した。なお、特に記載のない限り、サンプルとして20±1μmの膜厚のフィルムについて測定を行った。
〈ガラス転移温度(Tg)の評価〉
温度50〜350℃の範囲におけるガラス転移温度(Tg)の測定は、ポリイミドフィルムを3mm×20mmの大きさにカットしたものを試験片として、熱機械分析により行った。測定装置としてセイコーインスツル株式会社製(EXSTAR6000)を用い、引張荷重49mN、昇温速度10℃/分及び窒素気流下(流量100ml/分)の条件で、温度50〜350℃の範囲における試験片伸びの測定を行った。得られたチャートの変曲点をガラス転移温度として求めた。
続いて、ポリイミドの合成条件およびポリイミドフィルムの作製条件について具体的に説明する。
《ポリイミドワニスの合成例》
[合成例1]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)22.19g(69.30mmol)、γ−ブチロラクトン(GBL)50.00gを加えた。続いて4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)31.09g(70.00mmol)、GBL22.28g、トルエン26.02gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミドGBL溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例2]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)22.19g(69.30mmol)、GBL50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)21.71g(70.00mmol)、GBL22.28g、トルエン26.02gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミドGBL溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例3]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら4,4’−DDS13.77g(55.44mmol)、3,3’−DDS3.44g(13.86mmol)、NMP50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)21.71g(70.00mmol)、NMP22.28g、トルエン26.02gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにNMPを加え、ポリイミドNMP溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例4]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら4,4’−DDSを12.05g(48.51mmol)に、3,3’−DDSを5.16g(20.79mmol)、GBL50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)21.71g(70.00mmol)、GBL22.28g、トルエン26.02gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミドGBL溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例5]
4,4’−DDSを10.32g(41.58mmol)に、3,3’−DDSを6.90g(27.72mmol)に変更し、180℃での反応時間を7時間とした以外は、合成例4と同様にポリイミドワニスを得た。
[合成例6]
4,4’−DDSを8.61g(34.65mmol)に、3,3’−DDSを8.61g(34.65mmol)に変更した以外は、合成例4と同様にポリイミドワニスを得た。
[合成例7]
4,4’−DDSを6.89g(27.72mmol)に、3,3’−DDSを10.34g(41.58mmol)に変更した以外は、合成例4と同様にポリイミドワニスを得た。
[合成例8]
4,4’−ODPAをピロメリット酸二無水物(PMDA)15.27g(70.00mmol)に、溶媒をGBLからNMPに変更した以外は、合成例6と同様にポリイミドワニスを得た。
[合成例9]
4,4’−ODPAを3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)20.59g(70.00mmol)、に溶媒をGBLからNMPに変更した以外は、合成例6と同様にポリイミドワニスを得た。
[合成例10]
4,4’−ODPAを4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)31.09g(70.00mmol)に変更した以外は、合成例6と同様にポリイミドワニスを得た。
[合成例11]
4,4’−DDSを13.77g(55.44mmol)に、3,3’−DDSを3.44g(13.86mmol)に変更した以外は、合成例10と同様にポリイミドワニスを得た。
[合成例12]
4,4’−DDSを6.89g(27.72mmol)に、3,3’−DDSを10.34g(41.58mmol)に変更した以外は、合成例10と同様にポリイミドワニスを得た。
[合成例13]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらtrans−1,4−シクロヘキシルジアミン(CHDA)を1.81(15.84mmol)、3,3−DDSを15.73g(63.36mmol)、NMP50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)24.82g(80.00mmol)、NMP28.67g、トルエン27.14gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。3時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにNMPを加え、ポリイミドNMP溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例14]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(14BAC)を4.93g(34.65mmol)に、3,3’−DDSを8.61g(34.65mmol)、GBL50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)21.71g(70.00mmol)、GBL15.46g、トルエン26.02gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。4時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミドGBL溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例15]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらビス(アミノメチル)ノルボルナン(BANBDA)5.13g(33.25mmol)に、3,3’−DDSを8.26g(33.25mmol)、GBL50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)21.71g(70.00mmol)、GBL15.19g、トルエン24.90gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。6時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミドGBL溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例16]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら4,4’−ビス(4−アミノフェノキシビフェニル)(BAPB)5.11g(13.86mmol)に、3,3−DDSを13.77g(55.44mmol)、GBL50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)21.71g(70.00mmol)、GBL22.28g、トルエン25.63gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。6時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにNMPを加え、ポリイミドNMP溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例17]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながらα,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(BAPDB)を11.94g(34.65mmol)に、3,3’−DDSを8.61g(34.65mmol)、GBL50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)21.71g(70.00mmol)、GBL28.47g、トルエン26.99gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。6時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミドGBL溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例18]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら4,4’−DDS8.61g(34.65mmol)に、3,3’−DDS8.61g(34.65mmol)、GBL50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)10.86g(35.00mmol)、ヒドロキシピロメリット酸二無水物(HPMDA)7.85g(35.00mmol)、GBL16.69g、トルエン24.41gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミドGBL溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例19]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら4,4’−DDS8.61g(34.65mmol)に、3,3’−DDS8.61g(34.65mmol)、GBL50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)を17.37g(56.00mmol)、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ―2,5−ジオキソ−3−フラニル)ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン(TDA)4.20g(14.00mmol)、GBL22.02g、トルエン26.07gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミドGBL溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
[合成例20]
ディーン・スターク管及び還流管を上部に備えた撹拌棒付き500mLセパラブルフラスコに、窒素ガスを導入しながら4,4’−DDS8.61g(34.65mmol)に、3,3’−DDS8.61g(34.65mmol)、GBL50.00gを加えた。続いて4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)17.37g(56.00mmol)、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物(BODA)3.47g(14.00mmol)、GBL20.67g、トルエン25.58gを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、ポリイミドGBL溶液(以下、ポリイミドワニスともいう)を得た。
合成例1〜20で得られたポリイミドの組成を以下の表1に示す。
《ポリイミドフィルムの作製例》
[作製例A1]
ポリイミドワニスを、支持体としての幅508mmのポリエチレンテレフタレート(コスモシャイン100A4100)上に塗工厚み150μm、塗工幅500mmで塗工して、50℃で30分乾燥させた。この時のポリイミドフィルム中の残溶媒は15.5質量%濃度であった。この溶媒含有ポリイミドフィルムを支持体から剥離し、フィルムを加熱炉内に搬送し、MD方向に間隔をあけて配置された延伸ローラーの周速差を利用して、フィルムの延伸速度60%/minとなる条件で、MD方向、又はMD方向及びTD方向に延伸を施した。このときの延伸ローラーの表面温度は290℃であった。加熱炉入口のフィルムの幅は500mmであり、乾燥後の加熱炉出口でのフィルムの幅は470mmであった。
[作製例A2]
ポリイミドワニスを、支持基材としての幅508mmのupilex(宇部興産製、製品番号upilex125s)上に塗工厚み150μm、塗工幅500mmで塗工して、50℃で30分乾燥させた。この時のポリイミドフィルム中の残溶媒は16質量%濃度であった。この溶媒含有ポリイミドフィルム付きupilexフィルムを加熱炉内に搬送し、270℃で1時間乾燥を施した。加熱炉入口のフィルムの幅は500mmであり、乾燥後の加熱炉出口でのポリイミドフィルムの幅は500mmであった。得られたフィルムをupilexから剥離しポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムを加熱炉内に搬送し、MD方向に間隔をあけて配置された延伸ローラーの周速差を利用して、フィルムの延伸速度60%/minとなる条件でMD延伸を施した。このときの延伸ローラーの表面温度は290℃であった。加熱炉入口のフィルムの幅は500mmであり、乾燥後の加熱炉出口でのフィルムの幅は470mmであった。
[作製例B]
ポリイミドワニスを、支持基材としての幅508mmのupilex(宇部興産製、製品番号upilex125s)上に塗工厚み150μm、塗工幅500mmで塗工して、50℃で30分乾燥させた。この時のポリイミドフィルム中の残溶媒は16質量%濃度であった。この溶媒含有ポリイミドフィルム付きupilexフィルムを加熱炉内に搬送し、270℃で1時間乾燥を施した。加熱炉入口のポリイミドフィルムの幅は500mmであり、乾燥後の加熱炉出口でのポリイミドフィルムの幅は500mmであった。得られたフィルムをupilexから剥離しポリイミドフィルムを得た。
《実施例1〜34及び比較例1〜5》
表2又は3に示すとおり、合成例1〜20で得られたポリイミドのいずれかとフィルム作製例A〜Bのいずれかとを組み合わせて、ポリイミドフィルムを作製し、上記評価方法に従って評価した。実施例1〜34の評価結果を以下の表2に示し、かつ比較例1〜5の評価結果を以下の表3に示す。表2及び3中、延伸倍率「1」は、当該方向に延伸操作を行わなかったことを示す。
《参考例1〜3》
上記評価方法に従って、参考例1ではポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(コスモシャイン100A4100)のみを評価し、参考例2ではポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社「テオネックス(登録商標)」)のみを評価し、参考例3ではポリイミド(PI)フィルム(東レ・デュポン株式会社「カプトン(登録商標)」)のみを評価した。評価結果を以下の表4に示す。
本発明のポリイミドフィルムは、表面保護フィルム、カラーフィルター、TFT、などの基板フィルム、絶縁保護膜として用いることができる。本実施形態におけるポリイミドフィム及び積層体は、光学デバイス、例えば、タッチパネル機能を備えたディスプレイ、有機EL照明、スマートフォン、及びタブレット端末;フレキシブル光学デバイス、例えば、フレキシブルディスプレイ、フレキシブル太陽電池、フレキシブルタッチパネル、折り曲げが可能なスマートフォンやタブレット端末;その他のフレキシブルデバイス、例えば、フレキシブルバッテリー;並びに、曲面を有する有機EL照明や有機ELディスプレイ等の製品に好適に利用することができる。
1 フィルム
2 プランジャー
3 チャック
4 回転台
5 クランプ
6 屈曲角度

Claims (10)

  1. ポリイミドを主成分として含むポリイミドフィルムであって、前記ポリイミドフィルムのMD方向における屈折率とTD方向における屈折率との差(ΔN)が0.02以上であり、
    屈曲半径2mm、屈曲角度135°、荷重1.25kg/mの条件で10万回屈曲させたときに破断せず、屈曲痕が目視で確認できない、
    ポリイミドフィルム。
  2. 前記フィルムの黄色度(YI)が5.0以下である、請求項1に記載のポリイミドフィルム。
  3. 前記ポリイミドが、下記式(1)で表されるポリイミドを含有し、下記式(1)におけるAとして、下記式(A−1)で表される構造と、下記式(A−2)、下記式(A−3)、及び下記式(A−4)で表される構造からなる群から選択される少なくとも1種以上とを含む、請求項1又は2に記載のポリイミドフィルム。
    前記式(1)中、Aは2価の有機基、Bは4価の有機基、nは2以上である。
    前記式(A−2)中、Xは、下記式(X−1)〜(X−3)から選択される2価の有機基である。
    前記式(A−3)中、aは0又は1である。
  4. 前記ポリイミドは、前記式(1)におけるAとして、前記式(A−1)で表される構造と、下記式(A−5)で表される構造とを含む、請求項3に記載のポリイミドフィルム。
  5. 前記式(A−1)で表される構造と、前記式(A−5)で表される構造との比(式(A−1)で表される構造/式(A−5)で表される構造)が、モル基準で2/8〜6/4の範囲内である、請求項4に記載のポリイミドフィルム。
  6. 前記式(1)におけるBとして、下記式(B−1)〜(B−4)で表される構造のうち少なくとも一つを含む、請求項3〜5のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
    前記式(B−1)中、Yは、下記式(Y−1)〜(Y−3)から選択されるいずれかである。
  7. 前記式(1)におけるBとして、下記式(B−5)で表される構造を含む、請求項2及び3〜6のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
  8. 前記フィルムのMD方向及びTD方向のうち、ヤング率が高い方向におけるヤング率が3.5GPa以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリイミドフィルム。
  9. ポリイミドフィルムの製造方法であって、前記方法は、
    ポリイミド及び溶媒を含むポリイミドワニスを支持体上に塗工することと、
    前記溶媒を仮乾燥させて、前記溶媒を0.1質量%〜20質量%含む溶媒含有フィルムを形成することと、
    前記溶媒含有フィルムを延伸することと、
    前記溶媒含有フィルムから前記溶媒を0.1質量%未満に乾燥させることと
    を含み、
    前記延伸において、前記溶媒含有フィルムのMD方向における延伸倍率が1.5倍以上である、ポリイミドフィルムの製造方法。
  10. ポリイミドフィルムの製造方法であって、前記方法は、
    ポリイミド及び溶媒を含むポリイミドワニスを支持体上に塗工することと、
    前記溶媒を乾燥させて、前記溶媒を0.1質量%未満のフィルムを形成することと、
    前記フィルムを延伸することと、
    前記延伸において、前記フィルムのMD方向における延伸倍率が1.5倍以上である、ポリイミドフィルムの製造方法。
JP2017125508A 2017-06-27 2017-06-27 ポリイミドフィルム及びその製造方法 Active JP6912287B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017125508A JP6912287B2 (ja) 2017-06-27 2017-06-27 ポリイミドフィルム及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017125508A JP6912287B2 (ja) 2017-06-27 2017-06-27 ポリイミドフィルム及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019006933A true JP2019006933A (ja) 2019-01-17
JP6912287B2 JP6912287B2 (ja) 2021-08-04

Family

ID=65028410

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017125508A Active JP6912287B2 (ja) 2017-06-27 2017-06-27 ポリイミドフィルム及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6912287B2 (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020169241A (ja) * 2019-04-01 2020-10-15 大日本印刷株式会社 フィルム、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置
TWI726704B (zh) * 2019-05-08 2021-05-01 南韓商Skc股份有限公司 聚酯膜及包含其之可撓性顯示裝置
CN114867767A (zh) * 2019-12-27 2022-08-05 三菱瓦斯化学株式会社 聚酰亚胺树脂、聚酰亚胺清漆和聚酰亚胺薄膜
CN115175816A (zh) * 2020-03-23 2022-10-11 东洋纺株式会社 层叠体
JP7356895B2 (ja) 2019-12-24 2023-10-05 株式会社カネカ 透明ポリイミド樹脂を含む光学フィルム並びにその製造方法
WO2023199718A1 (ja) * 2022-04-15 2023-10-19 三菱瓦斯化学株式会社 共重合ポリイミド

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08337665A (ja) * 1995-04-11 1996-12-24 Toray Ind Inc 芳香族ポリアミド又は芳香族ポリイミドからなるフィルム
JPH10133017A (ja) * 1996-10-25 1998-05-22 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> ポリイミド光波長板の製造方法
WO2016088641A1 (ja) * 2014-12-04 2016-06-09 コニカミノルタ株式会社 ポリイミドフィルムとその製造方法、フレキシブルプリント基板、フレキシブルディスプレイ用基材、フレキシブルディスプレイ用前面板、led照明装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置
WO2016158825A1 (ja) * 2015-03-31 2016-10-06 旭化成株式会社 ポリイミドフィルム、ポリイミドワニス、ポリイミドフィルムを用いた製品、及び、積層体

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08337665A (ja) * 1995-04-11 1996-12-24 Toray Ind Inc 芳香族ポリアミド又は芳香族ポリイミドからなるフィルム
JPH10133017A (ja) * 1996-10-25 1998-05-22 Nippon Telegr & Teleph Corp <Ntt> ポリイミド光波長板の製造方法
WO2016088641A1 (ja) * 2014-12-04 2016-06-09 コニカミノルタ株式会社 ポリイミドフィルムとその製造方法、フレキシブルプリント基板、フレキシブルディスプレイ用基材、フレキシブルディスプレイ用前面板、led照明装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置
WO2016158825A1 (ja) * 2015-03-31 2016-10-06 旭化成株式会社 ポリイミドフィルム、ポリイミドワニス、ポリイミドフィルムを用いた製品、及び、積層体

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020169241A (ja) * 2019-04-01 2020-10-15 大日本印刷株式会社 フィルム、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置
JP7334446B2 (ja) 2019-04-01 2023-08-29 大日本印刷株式会社 フィルム、ポリイミドフィルム、積層体、ディスプレイ用部材、タッチパネル部材、液晶表示装置、及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置
TWI726704B (zh) * 2019-05-08 2021-05-01 南韓商Skc股份有限公司 聚酯膜及包含其之可撓性顯示裝置
JP7356895B2 (ja) 2019-12-24 2023-10-05 株式会社カネカ 透明ポリイミド樹脂を含む光学フィルム並びにその製造方法
CN114867767A (zh) * 2019-12-27 2022-08-05 三菱瓦斯化学株式会社 聚酰亚胺树脂、聚酰亚胺清漆和聚酰亚胺薄膜
CN115175816A (zh) * 2020-03-23 2022-10-11 东洋纺株式会社 层叠体
CN115175816B (zh) * 2020-03-23 2024-03-08 东洋纺株式会社 层叠体
WO2023199718A1 (ja) * 2022-04-15 2023-10-19 三菱瓦斯化学株式会社 共重合ポリイミド

Also Published As

Publication number Publication date
JP6912287B2 (ja) 2021-08-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6817389B2 (ja) ポリイミドフィルムの製造方法
JP6912287B2 (ja) ポリイミドフィルム及びその製造方法
JP6956524B2 (ja) ポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムを用いた製品、及び、積層体
JP4802934B2 (ja) 脂環系ポリイミド共重合体及びその製造方法
JP2020019960A (ja) 剥離層形成用組成物
JP6850352B2 (ja) ポリイミドワニス及びその製造方法
JP6492934B2 (ja) ポリアミック酸溶液組成物およびポリイミドフィルム
JP2008297360A (ja) 溶剤可溶性ポリイミド樹脂
JP2021014564A (ja) ポリイミドワニス及びポリイミドフィルム、並びにこれらの製造方法
JP2019172746A (ja) ポリアミド酸、ポリアミド酸溶液、ポリイミド、ポリイミド膜、積層体およびフレキシブルデバイス、ならびにポリイミド膜の製造方法。
JP7172981B2 (ja) 透明電極用基材フィルムおよびその製造方法
JP2020111713A (ja) ポリイミドワニス及びポリイミドフィルム、並びにこれらの製造方法
JP2019214657A (ja) 透明ポリイミドワニス及びフィルム
CN110154475B (zh) 层叠体
TW201734091A (zh) 聚醯亞胺共聚物及使用其之成形體
KR20220092774A (ko) 폴리아미드이미드 공중합체 및 그를 포함하는 필름
JP2019214159A (ja) ポリイミドフィルムとフレキシブルガラスとの積層体
WO2023132310A1 (ja) 樹脂組成物、成形体およびフィルム
WO2023195525A1 (ja) フィルムおよびその製造方法、ならびに画像表示装置
JP2022068709A (ja) ポリアミド酸、ポリアミド酸溶液、ポリイミド、ポリイミド膜、積層体およびフレキシブルデバイス、ならびにポリイミド膜の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20200306

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210302

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210421

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210615

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210708

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6912287

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150