JP2018509494A - コールドフロー耐性の向上したシス−1,4−ポリジエン - Google Patents

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Abstract

コールドフローに対する有用な耐性を有するシス−1,4−ポリジエンを調製するための方法であって、ランタニド系触媒及び共役ジエンモノマーを導入することにより、反応性ポリマーを含む重合系を調製する工程と、反応性ポリマーを含む重合系にルイス酸を添加する工程とを含む方法。

Description

本出願は2015年1月28日出願の米国特許仮出願第62/108,883号、2015年1月28日出願の米国特許仮出願第62/108,839号、2015年1月28日出願の米国特許仮出願第62/108,899号の利益を主張し、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の実施形態は、向上したコールドフロー特性を有するシス−1,4−ポリジエンに関する。ポリジエンは、ランタニド系触媒を用いて調製され、ルイス酸で処理される。
ランタニド系触媒系は、共役ジエンモノマーを重合させて、高シス−1,4−結合含有量と、低1,2−結合と、線状骨格とを有するポリジエンを形成する場合に有用であることが知られている。線状骨格を含むこのシス−1,4−ポリジエンは、他の触媒系(例えば、チタン系、コバルト系、及びニッケル系触媒系)を用いて調製されたシス−1,4−ポリジエンと比べて、より優れた引張特性と、より高い耐摩耗性と、より低いヒステリシスと、より優れた耐疲労特性とを提供すると考えられる。したがって、ランタニド系触媒を用いて作製されたシス−1,4−ポリジエンは特に、タイヤ部品(例えばサイドウォール及びトレッド)内で用いるのに適している。
しかし、ランタニド系触媒を用いて調製されたシス−1,4−ポリジエンにおける不利な点として、ポリマーが線状骨格構造を有しているため高いコールドフローを示すということがある。高いコールドフローは、ポリマーの貯蔵及び輸送の間に問題を生じ、ゴム化合物混合施設における自動供給装置の使用も妨げる。
ランタニド系触媒系を用いて合成されたシス−1,4−ポリジエンは、重合が完了すると、一部のポリマー鎖が、特定の官能化剤と反応して官能化シス−1,4−ポリジエンをもたらすことができる反応性末端を保有するという点で、疑似リビング特性も示し得る。これらの官能化剤は、得られたポリジエンのコールドフロー耐性を向上させるために用いられてきた。しかしながら、ポリマーに付与された特定の官能基が、コールドフロー耐性を向上できるか否か、或いは、ヒステリシスを減少できるか否かは、多くの場合に予測不可能である。更に、あるタイプのポリマーにとって有効な官能化剤が必ずしも別のタイプのポリマーにとって有効ではなく、逆もまた同様である。
そのため、高シス含有量、線状骨格、及び向上したコールドフロー耐性の組み合わせを有する官能化シス−1,4−ポリジエンを製造するためのプロセスを開発する必要がある。ポリマー特性のこの組み合わせにより、優れた性能を有するタイヤが提供される。
本発明の1又は複数の実施形態は、コールドフローに対する有用な耐性を有するシス−1,4−ポリジエンを調製するための方法であって、ランタニド系触媒及び共役ジエンモノマーを導入することにより、反応性ポリマーを含む重合系を調製する工程と、反応性ポリマーを含む重合系にルイス酸を添加する工程とを含む方法を提供する。
本発明の他の実施形態は、充填剤と、硬化剤と、シス−1,4−ポリジエンであって、ランタニド系触媒を用いて共役ジエンモノマーを重合して反応性ポリマーを形成する工程と、反応性ポリマーをルイス酸で処理する工程とを含む方法で調製されたシス−1,4−ポリジエンとを含む加硫性組成物を提供する。
ポリマーのムーニー粘度に対してプロットされた、実施例1及び2で合成されたシス−1,4−ポリブタジエンサンプルのコールドフロー耐性を示すグラフである。
ポリマーのムーニー粘度に対してプロットされた、実施例3及び4で合成されたシス−1,4−ポリブタジエンサンプルのコールドフロー耐性を示すグラフである。
本発明の実施形態は、コールドフローに対して技術的に有用な耐性を有するシス−1,4−ポリジエンを製造するための方法を見出したことに、少なくとも部分的に基づいている。本発明の態様によれば、反応性鎖末端を有するシス−1,4−ポリジエンが、共役ジエンモノマーから調製され、その後で、重合物を急冷する前に、ルイス酸で処理される。いかなる特定の理論に束縛されるものではないが、重合物を急冷する前にシス−1,4−ポリジエンを処理することにより、ポリマー鎖が少なくとも部分的に結合又はネットワーク化され、それによって所望のコールドフロー耐性が得られると考えられる。更に、ポリマーのコールドフロー耐性が向上しつつも、ポリマーのムーニー粘度が、特に高せん断で、有害な変更を受けないことが確認されている。更に、1又は複数の実施形態のシス−1,4−ポリジエンを用いて調製された加硫ゴムにおいては、特性が向上する(例えば、ヒステリシス損失が低減する)。
モノマー
共役ジエンモノマーの例には、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、及び2,4−ヘキサジエンが挙げられる。2つ以上の共役ジエンの混合物を共重合において用いてもよい。
触媒系
1又は複数の実施形態において、本発明で用いられる触媒系は、配位触媒系である。特定の実施形態において、この配位触媒系は、ランタニド系触媒系である。1又は複数の実施形態において、この触媒系は、事前形成されたランタニド系触媒系である。他の実施形態において、この触媒系は、その場で形成されるランタニド系触媒系である。
配位触媒系
配位触媒系は、一般的に知られている。配位重合の重要な機構的な特徴は、書籍(例えば、Kuran,W.,Principles of Coordination Polymerization;John Wiley & Sons:New York,2001)及び総説(例えば、Mulhaupt,R.,Macromolecular Chemistry and Physics 2003,volume 204,pages 289〜327)に記載されている。配位触媒がモノマーの重合を開始するメカニズムは、活性金属中心に対するモノマーの配位又は錯化を、モノマーを成長ポリマー鎖に挿入する前に行なうことを伴っていると考えられる。配位触媒は、重合を立体化学的に制御することにより、立体規則性ポリマーを生成することができるという有益な特徴を有する。当該技術分野で知られているように、配位触媒を形成するための方法は数多く存在する。しかし、すべての方法は、モノマーと配位してモノマーを活性金属中心と成長ポリマー鎖との間の共有結合に挿入することができる活性中間体を最終的に発生させる。共役ジエンの配位重合は、中間体としてのπ−アリル錯体を介して進むと考えられる。配位触媒は、1成分系、2成分系、3成分系、又は多成分系とすることができる。1又は複数の実施形態において、配位触媒の形成を、重金属化合物(例えば、遷移金属化合物又はランタニド含有化合物)、アルキル化剤(例えば、有機アルミニウム化合物)、及び任意的に他の共触媒成分(例えば、ルイス酸又はルイス塩基)を組み合わせて行なっても良い。1又は複数の実施形態において、重金属化合物は、配位金属化合物と称されることがある。
ランタニド系触媒系
本発明の実施は、特定のランタニド系触媒系を選択することに必ずしも限定されない。1又は複数の実施形態において、用いられる触媒系は、(a)ランタニド含有化合物、(b)アルキル化剤、及び(c)ハロゲン源を含む。他の実施形態では、ハロゲン源の代わりに、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体を含有する化合物を用いることができる。これらの又は別の実施形態では、他の有機金属化合物、ルイス塩基、及び/又は触媒改質剤を、前述した構成成分又は成分に加えて用いることができる。例えば、一実施形態では、ニッケル含有化合物を、米国特許第6,699,813号に開示されているとおり分子量調節剤として用いることができる。なおこの文献は、本明細書において参照により組み込まれている。
ランタニド含有化合物
前述したように、本発明で用いられるランタニド系触媒系には、ランタニド含有化合物を含めることができる。本発明に有用なランタニド含有化合物は、ランタニド、ネオジム、セリウム、プラセオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、及びジジムの少なくとも1つの原子を含む化合物である。一実施形態では、これらの化合物には、ネオジム、ランタン、サマリウム、又はジジムを含めることができる。本明細書で用いる場合、用語「ジジム」は、モナズ砂から得られる希土類元素の市販の混合物を示すものとする。加えて、本発明で有用なランタニド含有化合物は、元素ランタニドの形態とすることができる。
ランタニド含有化合物中のランタニド原子は、種々の酸化状態であってもよく、例えば、限定するものではないが、0、+2、+3、及び+4の酸化状態であってもよい。一実施形態では、三価のランタニド含有化合物(ここで、ランタニド原子は、+3の酸化状態である)を用いることができる。好適なランタニド含有化合物には、ランタニドカルボキシレート、ランタニド有機ホスフェート、ランタニド有機ホスホネート、ランタニド有機ホスフィナート、ランタニドカルバメート、ランタニドジチオカルバメート、ランタニドキサンテート、ランタニドβ−ジケトネート、ランタニドアルコキシド又はアリールオキシド、ランタニドハライド、ランタニド疑似ハライド、ランタニドオキシハライド、及び有機ランタニド化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
1又は複数の実施形態では、ランタニド含有化合物は、炭化水素溶媒(例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、又は脂環式炭化水素)に可溶性であり得る。しかし、炭化水素不溶性のランタニド含有化合物も、本発明で有用な場合がある。重合媒体中で懸濁させて、触媒活性種を形成することができるためである。
説明を簡単にするために、有用なランタニド含有化合物についての更なる説明では、ネオジム化合物に焦点を合わせるが、当業者であれば、他のランタニド金属に基づく同様の化合物を選択することができるであろう。
好適なネオジムカルボキシレートには、ネオジムホルメート、ネオジムアセテート、ネオジムアクリレート、ネオジムメタクリレート、ネオジムバレレート、ネオジムグルコネート、ネオジムシトレート、ネオジムフマレート、ネオジムラクテート、ネオジムマレエート、ネオジムオキサレート、ネオジム2−エチルヘキサノエート、ネオジムネオデカノエート(別名、ネオジムベルサターテ)、ネオジムナフテネート、ネオジムステアレート、ネオジムオレエート、ネオジムベンゾエート、及びネオジムピコリネートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジム有機ホスフェートには、ネオジムジブチルホスフェート、ネオジムジペンチルホスフェート、ネオジムジヘキシルホスフェート、ネオジムジヘプチルホスフェート、ネオジムジオクチルホスフェート、ネオジムビス(1−メチルヘプチル)ホスフェート、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジムジデシルホスフェート、ネオジムジドデシルホスフェート、ネオジムジオクタデシルホスフェート、ネオジムジオレイルホスフェート、ネオジムジフェニルホスフェート、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)ホスフェート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフェート、及びネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフェートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジム有機ホスホネートには、ネオジムブチルホスホネート、ネオジムペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルホスホネート、ネオジムドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルホスホネート、ネオジムフェニルホスホネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチルブチルホスホネート、ネオジムペンチルペンチルホスホネート、ネオジムヘキシルヘキシルホスホネート、ネオジムヘプチルヘプチルホスホネート、ネオジムオクチルオクチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジムデシルデシルホスホネート、ネオジムドデシルドデシルホスホネート、ネオジムオクタデシルオクタデシルホスホネート、ネオジムオレイルオレイルホスホネート、ネオジムフェニルフェニルホスホネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)(p−ノニルフェニル)ホスホネート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ブチルホスホネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(1−メチルヘプチル)ホスホネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスホネート、及びネオジム(p−ノニルフェニル)(2−エチルヘキシル)ホスホネートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジム有機ホスフィネートには、ネオジムブチルホスフィネート、ネオジムペンチルホスフィネート、ネオジムヘキシルホスフィネート、ネオジムヘプチルホスフィネート、ネオジムオクチルホスフィネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジム(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムデシルホスフィネート、ネオジムドデシルホスフィネート、ネオジムオクタデシルホスフィネート、ネオジムオレイルホスフィネート、ネオジムフェニルホスフィネート、ネオジム(p−ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムジブチルホスフィネート、ネオジムジペンチルホスフィネート、ネオジムジヘキシルホスフィネート、ネオジムジヘプチルホスフィネート、ネオジムジオクチルホスフィネート、ネオジムビス(1−メチルヘプチル)ホスフィネート、ネオジムビス(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジムジデシルホスフィネート、ネオジムジドデシルホスフィネート、ネオジムジオクタデシルホスフィネート、ネオジムジオレイルホスフィネート、ネオジムジフェニルホスフィネート、ネオジムビス(p−ノニルフェニル)ホスフィネート、ネオジムブチル(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、ネオジム(1−メチルヘプチル)(2−エチルヘキシル)ホスフィネート、及びネオジム(2−エチルヘキシル)(p−ノニルフェニル)ホスフィネートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムカルバメートには、ネオジムジメチルカルバメート、ネオジムジエチルカルバメート、ネオジムジイソプロピルカルバメート、ネオジムジブチルカルバメート、及びネオジムジベンジルカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムジチオカルバメートには、ネオジムジメチルジチオカルバメート、ネオジムジエチルジチオカルバメート、ネオジムジイソプロピルジチオカルバメート、ネオジムジブチルジチオカルバメート、及びネオジムジベンジルジチオカルバメートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムキサンテートには、ネオジムメチルキサンテート、ネオジムエチルキサンテート、ネオジムイソプロピルキサンテート、ネオジムブチルキサンテート、及びネオジムベンジルキサンテートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムβ−ジケトネートには、ネオジムアセチルアセトネート、ネオジムトリフルオロアセチルアセトネート、ネオジムヘキサフルオロアセチルアセトネート、ネオジムベンゾイルアセトネート、及びネオジム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムアルコキシド又はアリールオキシドには、ネオジムメトキシド、ネオジムエトキシド、ネオジムイソプロポキシド、ネオジム2−エチルヘキソキシド、ネオジムフェノキシド、ネオジムノニルフェノキシド、及びネオジムナフトキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なネオジムハライドには、ネオジムフルオリド、ネオジムクロリド、ネオジムブロミド、及びネオジムヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。好適なネオジム疑似ハライドには、ネオジムシアニド、ネオジムシアネート、ネオジムチオシアネート、ネオジムアジド、及びネオジムフェロシアニドが挙げられるが、これらに限定されない。好適なネオジムオキシハライドには、ネオジムオキシフルオリド、ネオジムオキシクロリド、及びネオジムオキシブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。ルイス塩基(例えばテトラヒドロフラン(「THF」))を、このクラスのネオジム化合物を不活性有機溶媒中に可溶化しやすくするために用いてもよい。ランタニドハライド、ランタニドオキシハライド、又はハロゲン原子を含有する他のランタニド含有化合物を用いる場合、ランタニド含有化合物は任意選択的に、ランタニド系触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部を提供してもよい。
本明細書で用いる場合、有機ランタニド化合物という用語は、少なくとも1つのランタニド−炭素結合を含有する任意のランタニド含有化合物を指す。これらの化合物は主に、排他的ではないが、シクロペンタジエニル(「Cp」)、置換シクロペンタジエニル、アリル、及び置換アリル配位子を含有する化合物である。好適な有機ランタニド化合物には、CpLn、CpLnR、CpLnCl、CpLnCl、CpLn(シクロオクタテトラエン)、(CMeLnR、LnR、Ln(アリル)、及びLn(アリル)Cl(Lnは、ランタニド原子を表わし、Rはヒドロカルビル基を表わす)が挙げられるが、これらに限定されない。1又は複数の実施形態では、本発明で有用なヒドロカルビル基は、へテロ原子、例えば、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子等を含有していてもよい。
アルキル化剤
前述したように、本発明で用いるランタニド系触媒系には、アルキル化剤を含めることができる。1又は複数の実施形態では、アルキル化剤(ヒドロカルビル化剤と称されることもある)には、1又は複数のヒドロカルビル基を別の金属に移すことができる有機金属化合物が含まれる。概して、これらの薬剤には、陽性金属、例えば第1族、第2族、及び第3族金属(IA族、IIA族、及びIIIA族金属)の有機金属化合物が含まれる。本発明で有用なアルキル化剤には、有機アルミニウム化合物及び有機マグネシウム化合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で用いる場合、有機アルミニウム化合物という用語は、少なくとも1つのアルミニウム−炭素結合を含有する任意のアルミニウム化合物を指す。1又は複数の実施形態では、炭化水素溶媒に可溶性である有機アルミニウム化合物を用いることができる。本明細書で用いる場合、有機マグネシウム化合物という用語は、少なくとも1つのマグネシウム−炭素結合を含有する任意のマグネシウム化合物を指す。1又は複数の実施形態では、炭化水素に可溶性である有機マグネシウム化合物を用いることができる。後に詳細に説明するように、好適なアルキル化剤のいくつかの種をハライドの形態とすることができる。アルキル化剤にハロゲン原子が含まれる場合、アルキル化剤はまた、前述の触媒系におけるハロゲン源の全部又は一部として機能する場合がある。
有機アルミニウム化合物
1又は複数の実施形態では、ランタニド系触媒系において用いることができる有機アルミニウム化合物には、一般式AlR3−n(式中、各Rは独立に、アルミニウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であってもよく、各Xは独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であってもよく、nは1〜3の範囲の整数であってもよい)によって表わされるものが含まれる。1又は複数の実施形態では、各Rは独立に、ヒドロカルビル基、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、アリル基、及びアルキニル基であってもよく、それぞれの基は、1個の炭素原子(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)から最大で約20個の炭素原子を含有している。これらのヒドロカルビル基は、へテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子を含有していてもよい。
一般式AlR3−nによって表わされる有機アルミニウム化合物の種類には、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド、ジヒドロカルビルアルミニウムカルボキシレート、ヒドロカルビルアルミニウムビス(カルボキシレート)、ジヒドロカルビルアルミニウムアルコキシド、ヒドロカルビルアルミニウムジアルコキシド、ジヒドロカルビルアルミニウムハライド、ヒドロカルビルアルミニウムジハライド、ジヒドロカルビルアルミニウムアリールオキシド、及びヒドロカルビルアルミニウムジアリールオキシド化合物が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、アルキル化剤には、トリヒドロカルビルアルミニウム、ジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド、及び/又はヒドロカルビルアルミニウムジヒドリド化合物を含めることができる。一実施形態では、アルキル化剤に有機アルミニウムヒドリド化合物が含まれる場合、前述のハロゲン源は、スズハライドによって提供することができ、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第7,008,899号に開示されている。
好適なトリヒドロカルビルアルミニウム化合物には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−n−ペンチルアルミニウム、トリネオペンチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリス(2−エチルヘキシル)アルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリス(1−メチルシクロペンチル)アルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ−p−トリルアルミニウム、トリス(2,6−ジメチルフェニル)アルミニウム、トリベンジルアルミニウム、ジエチルフェニルアルミニウム、ジエチル−p−トリルアルミニウム、ジエチルベンジルアルミニウム、エチルジフェニルアルミニウム、エチルジ−p−トリルアルミニウム、及びエチルジベンジルアルミニウムが挙げられるが、これらに限定されない。
好適なジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド化合物には、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ−n−プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ−p−トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、p−トリルエチルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、p−トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、p−トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムヒドリドが含まれるが、これらに限定されない。
好適なヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドには、エチルアルミニウムジヒドリド、n−プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n−ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、及びn−オクチルアルミニウムジヒドリドが含まれるが、これらに限定されない。
好適なジヒドロカルビルアルミニウムハライド化合物には、ジエチルアルミニウムクロリド、ジ−n−プロピルアルミニウムクロリド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジ−n−ブチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジ−n−オクチルアルミニウムクロリド、ジフェニルアルミニウムクロリド、ジ−p−トリルアルミニウムクロリド、ジベンジルアルミニウムクロリド、フェニルエチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−プロピルアルミニウムクロリド、フェニルイソプロピルアルミニウムクロリド、フェニル−n−ブチルアルミニウムクロリド、フェニルイソブチルアルミニウムクロリド、フェニル−n−オクチルアルミニウムクロリド、p−トリルエチルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−プロピルアルミニウムクロリド、p−トリルイソプロピルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−ブチルアルミニウムクロリド、p−トリルイソブチルアルミニウムクロリド、p−トリル−n−オクチルアルミニウムクロリド、ベンジルエチルアルミニウムクロリド、ベンジル−n−プロピルアルミニウムクロリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムクロリド、ベンジル−n−ブチルアルミニウムクロリド、ベンジルイソブチルアルミニウムクロリド、及びベンジル−n−オクチルアルミニウムクロリドが含まれるが、これらに限定されない。
好適なヒドロカルビルアルミニウムジハライド化合物には、エチルアルミニウムジクロリド、n−プロピルアルミニウムジクロリド、イソプロピルアルミニウムジクロリド、n−ブチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、及びn−オクチルアルミニウムジクロリドが含まれるが、これらに限定されない。
一般式AlR3−nによって表わされ得るアルキル化剤として有用な他の有機アルミニウム化合物には、ジメチルアルミニウムヘキサノエート、ジエチルアルミニウムオクトエート、ジイソブチルアルミニウム2−エチルヘキサノエート、ジメチルアルミニウムネオデカノエート、ジエチルアルミニウムステアレート、ジイソブチルアルミニウムオレエート、メチルアルミニウムビス(ヘキサノエート)、エチルアルミニウムビス(オクトエート)、イソブチルアルミニウムビス(2−エチルヘキサノエート)、メチルアルミニウムビス(ネオデカノエート)、エチルアルミニウムビス(ステアレート)、イソブチルアルミニウムビス(オレエート)、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムメトキシド、ジイソブチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムエトキシド、ジメチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジイソブチルアルミニウムフェノキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、エチルアルミニウムジメトキシド、イソブチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジフェノキシド、エチルアルミニウムジフェノキシド、及びイソブチルアルミニウムジフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
ランタニド系触媒系においてアルキル化剤として用いるのに適した別のクラスの有機アルミニウム化合物は、アルミノキサンである。アルミノキサンには、以下の一般式によって表わすことができるオリゴマー直線状アルミノキサンと、
Figure 2018509494

以下の一般式によって表わすことができるオリゴマー環式アルミノキサン
Figure 2018509494

(式中、xは1〜約100、又は約10〜約50の範囲の整数であってもよく、yは2〜約100、又は約3〜約20の範囲の整数であってもよく、各Rは独立に、アルミニウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であってもよい)と、を含めることができる。一実施形態では、各Rは独立に、ヒドロカルビル基、例えば、限定するものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、アリル基、及びアルキニル基であってもよく、各基は、1個の炭素原子(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)から最大で約20個の炭素原子を含有している。これらのヒドロカルビル基はまた、へテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子を含有していてもよい。なお、本出願で用いるアルミノキサンのモル数とは、オリゴマーアルミノキサン分子のモル数ではなく、アルミニウム原子のモル数を指すことに留意すべきである。この慣習は、アルミノキサンを用いる触媒系の技術分野において広く用いられている。
アルミノキサンの調製は、トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を水と反応させることによって行うことができる。この反応は、(1)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を有機溶媒中に溶解した後に水と接触させる方法、(2)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、例えば金属塩に含有される結晶体の水又は無機若しくは有機化合物に吸着された水と反応させる方法、又は(3)トリヒドロカルビルアルミニウム化合物を、重合するモノマー又はモノマー溶液の存在下で水と反応させる方法、等の既知の方法により行なうことができる。
好適なアルミノキサン化合物には、メチルアルミノキサン、改質メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n−プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n−ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n−ヘキシルアルミノキサン、n−オクチルアルミノキサン、2−エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1−メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、及び2,6−ジメチルフェニルアルミノキサンが含まれるが、これらに限定されない。改質メチルアルミノキサンの形成は、当業者に既知の技術を用いて、メチルアルミノキサンのメチル基の約5〜95%を、C〜C12ヒドロカルビル基、好ましくは、イソブチル基と置換することによって可能である。
1又は複数の実施形態では、アルミノキサンを、単独で又は他の有機アルミニウム化合物と組み合わせて用いることができる。一実施形態では、メチルアルミノキサンと、少なくとも1種の他の有機アルミニウム化合物(AlR3−n等)、例えば、ジイソブチルアルミニウムヒドリドとを、組み合わせて用いることができる。米国特許出願公開第2008/0182954号には、アルミノキサン及び有機アルミニウム化合物を組み合わせて用いることができる他の例が示されており、この文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている。1又は複数の実施形態では、本発明で用いられる触媒組成物は、アルミノキサンを欠いている、或いは、実質的に欠いている。
有機マグネシウム化合物
前述したように、ランタニド系触媒系において有用なアルキル化剤には、有機マグネシウム化合物を含めることができる。1又は複数の実施形態では、用いることができる有機マグネシウム化合物には、一般式MgR(式中、各Rは独立に、マグネシウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であってもよい)によって表わされるものが含まれる。1又は複数の実施形態では、各Rは独立に、ヒドロカルビル基、例えば、限定するものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、及びアルキニル基であってもよく、各基は、1個の炭素原子(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)から最大で約20個の炭素原子を含有している。これらのヒドロカルビル基にはまた、へテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素、酸素、ケイ素、硫黄、及びリン原子を含有していてもよい。
一般式MgRで表わされ得る好適な有機マグネシウム化合物には、ジエチルマグネシウム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、及びジベンジルマグネシウムが挙げられるが、これらに限定されない。
アルキル化剤として用いることができる別のクラスの有機マグネシウム化合物は、一般式RMgX(式中、Rは、マグネシウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であってもよく、Xは、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であってもよい)で表わされ得る。アルキル化剤が、ハロゲン原子を含む有機マグネシウム化合物である場合、有機マグネシウム化合物は、触媒系において、アルキル化剤とハロゲン源の少なくとも一部との両方として機能することができる。1又は複数の実施形態では、Rは、ヒドロカルビル基、例えば、限定するものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、置換シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、置換シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、置換アリール基、アラルキル基、アルカリル基、及びアルキニル基であってもよく、各基は、1個の炭素原子(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)から最大で約20個の炭素原子を含有している。これらのヒドロカルビル基はまた、へテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素原子、酸素原子、ホウ素原子、ケイ素原子、硫黄原子、及びリン原子を含有していてもよい。一実施形態では、Xは、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であってもよく、各基は、1〜約20の範囲の炭素原子を含有している。
一般式RMgXで表わされ得る有機マグネシウム化合物の種類には、ヒドロカルビルマグネシウムヒドリド、ヒドロカルビルマグネシウムハライド、ヒドロカルビルマグネシウムカルボキシレート、ヒドロカルビルマグネシウムアルコキシド、及びヒドロカルビルマグネシウムアリールオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
一般式RMgXによって表わされ得る好適な有機マグネシウム化合物には、メチルマグネシウムヒドリド、エチルマグネシウムヒドリド、ブチルマグネシウムヒドリド、ヘキシルマグネシウムヒドリド、フェニルマグネシウムヒドリド、ベンジルマグネシウムヒドリド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヘキサノエート、エチルマグネシウムヘキサノエート、ブチルマグネシウムヘキサノエート、ヘキシルマグネシウムヘキサノエート、フェニルマグネシウムヘキサノエート、ベンジルマグネシウムヘキサノエート、メチルマグネシウムエトキシド、エチルマグネシウムエトキシド、ブチルマグネシウムエトキシド、ヘキシルマグネシウムエトキシド、フェニルマグネシウムエトキシド、ベンジルマグネシウムエトキシド、メチルマグネシウムフェノキシド、エチルマグネシウムフェノキシド、ブチルマグネシウムフェノキシド、ヘキシルマグネシウムフェノキシド、フェニルマグネシウムフェノキシド、及びベンジルマグネシウムフェノキシドが挙げられるが、これらに限定されない。
ハロゲン源
前述したように、本発明で用いるランタニド系触媒系には、ハロゲン源を含めることができる。本明細書で用いる場合、ハロゲン源という用語は、少なくとも1つのハロゲン原子を含む任意の物質を指す。1又は複数の実施形態では、ハロゲン源の少なくとも一部を、前述したランタニド含有化合物及び/又は前述したアルキル化剤のいずれかによって提供することが、これらの化合物に少なくとも1つのハロゲン原子が含有されているときに可能である。言い換えれば、ランタニド含有化合物は、ランタニド含有化合物とハロゲン源の少なくとも一部との両方として機能することができる。同様に、アルキル化剤は、アルキル化剤とハロゲン源の少なくとも一部との両方として機能することができる。
別の実施形態では、ハロゲン源の少なくとも一部は、触媒系において、別個で異なるハロゲン含有化合物の形態で存在することができる。1又は複数のハロゲン原子を含有する種々の化合物(又はそれらの混合物)をハロゲン源として用いることができる。ハロゲン原子の例には、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。2種類以上のハロゲン原子の組み合わせを用いることもできる。炭化水素溶媒に可溶性であるハロゲン含有化合物が、本発明で用いるのに適している。しかし、炭化水素不溶性のハロゲン含有化合物は、重合系において懸濁させて触媒活性種を形成することができるため、やはり有用である。
使用できる有用な種類のハロゲン含有化合物には、元素ハロゲン、混合ハロゲン、ハロゲン化水素、有機ハライド、無機ハライド、金属ハライド、及び有機金属ハライドが挙げられるが、これらに限定されない。
好適な元素ハロゲンには、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられるが、これらに限定されない。好適な混合ハロゲンのいくつかの具体例には、一塩化ヨウ素、一臭化ヨウ素、三塩化ヨウ素、及び五フッ化ヨウ素が挙げられる。
好適なハロゲン化水素には、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、及びヨウ化水素が挙げられるが、これらに限定されない。
好適な有機ハライドには、t−ブチルクロリド、t−ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ−ジ−フェニルメタン、ブロモ−ジ−フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、及びメチルブロモホルメートが挙げられるが、これらに限定されない。
好適な無機ハライドには、リントリクロリド、リントリブロミド、リンペンタクロリド、リンオキシクロリド、リンオキシブロミド、ボロントリフルオリド、ボロントリクロリド、ボロントリブロミド、シリコンテトラフルオリド、シリコンテトラクロリド、シリコンテトラブロミド、シリコンテトラヨージド、ヒ素トリクロリド、ヒ素トリブロミド、ヒ素トリヨージド、セレンテトラクロリド、セレンテトラブロミド、テルルテトラクロリド、テルルテトラブロミド、及びテルルテトラヨージドが挙げられるが、これらに限定されない。
好適な金属ハライドには、スズテトラクロリド、スズテトラブロミド、アルミニウムトリクロリド、アルミニウムトリブロミド、アンチモントリクロリド、アンチモンペンタクロリド、アンチモントリブロミド、アルミニウムトリヨージド、アルミニウムトリフルオリド、ガリウムトリクロリド、ガリウムトリブロミド、ガリウムトリヨージド、ガリウムトリフルオリド、インジウムトリクロリド、インジウムトリブロミド、インジウムトリヨージド、インジウムトリフルオリド、チタンテトラクロリド、チタンテトラブロミド、チタンテトラヨージド、亜鉛ジクロリド、亜鉛ジブロミド、亜鉛ジヨージド、及び亜鉛ジフルオリドが挙げられるが、これらに限定されない。
好適な有機金属ハライドには、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムヨージド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ−t−ブチルスズジクロリド、ジ−t−ブチルスズジブロミド、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジブロミド、トリブチルスズクロリド、及びトリブチルスズブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。
非配位アニオン/非配位アニオン前駆体
1又は複数の実施形態では、ランタニド系触媒系には、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体を含有する化合物を含めることができる。1又は複数の実施形態では、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体を含有する化合物を、前述したハロゲン源の代わりに用いることができる。非配位アニオンは、立体的に嵩高いアニオンであり、立体障害があるために、例えば、触媒系の活性中心と配位結合を形成することはない。本発明で有用な非配位アニオンには、テトラアリールボレートアニオン及びフッ素化テトラアリールボレートアニオンが挙げられるが、これらに限定されない。また、非配位アニオンを含有する化合物は、対カチオン、例えば、カルボニウム、アンモニウム、又はホスホニウムカチオンを含有することができる。例示的な対カチオンには、トリアリールカルボニウムカチオン及びN,N−ジアルキルアニリニウムカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。非配位アニオン及び対カチオンを含有する化合物の例には、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、及びN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートが挙げられるが、これらに限定されない。
本実施形態では、非配位アニオン前駆体を用いることもできる。非配位アニオン前駆体とは、反応条件下で非配位アニオンを形成することができる化合物である。有用な非配位アニオン前駆体には、トリアリールホウ素化合物、BR(ここで、Rは、電子求引性の高いアリール基、例えば、ペンタフルオロフェニル又は3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である)が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明で用いるランタニド系触媒組成物の形成は、前述の触媒構成成分を組み合わせるか又は混合することによって行なってもよい。1又は複数の活性触媒種は、ランタニド系触媒構成成分の組み合わせから得られると考えられるが、種々の触媒構成成分又は成分間の相互作用又は反応の程度は、それほど正確には分かっていない。したがって、用語「触媒組成物」は、構成成分の単純混合物、物理的若しくは化学的な引力によって生じる種々の構成成分の合成物、構成成分の化学反応生成物、又は前述の組み合わせを包含するように用いている。
前述のランタニド系触媒組成物は、共役ジエンを重合してシス−1,4−ポリジエンにすることを広範囲の触媒濃度及び触媒構成成分比に亘って行なうための高い触媒活性を有する場合がある。いくつかの要因が、触媒構成成分のうちのいずれか1つの最適濃度に影響を及ぼす場合がある。例えば、触媒構成成分は相互作用して活性種を形成する場合があるため、任意の1つの触媒構成成分に対する最適濃度が、他の触媒構成成分の濃度に依存する場合がある。
1又は複数の実施形態において、ランタニド含有化合物に対するアルキル化剤のモル比(アルキル化剤/Ln)は、約1:1〜約1,000:1、他の実施形態では、約2:1〜約500:1、他の実施形態では、約5:1〜約200:1で変動してもよい。
アルミノキサン及び少なくとも1つの他の有機アルミニウム剤がアルキル化剤として用いられるこれらの実施形態において、ランタニド含有化合物に対するアルミノキサンのモル比(アルミノキサン/Ln)は、5:1〜約1,000:1、他の実施形態では、約10:1〜約700:1、他の実施形態では、約20:1〜約500:1で変動してもよく、また、ランタニド含有化合物に対する少なくとも1つの他の有機アルミニウム化合物のモル比(Al/Ln)は、約1:1〜約200:1、他の実施形態では、約2:1〜約150:1、他の実施形態では、約5:1〜約100:1で変動してもよい。
ランタニド含有化合物に対するハロゲン含有化合物のモル比は、ランタニド含有化合物中のランタニド原子のモル数に対するハロゲン源中のハロゲン原子のモル数の比(ハロゲン/Ln)の観点で最もよく説明される。1又は複数の実施形態では、ハロゲン/Lnモル比は、約0.5:1〜約20:1、他の実施形態では約1:1〜約10:1、及び他の実施形態では約2:1〜約6:1で変動し得る。
更に別の実施形態では、ランタニド含有化合物に対する非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体のモル比(An/Ln)は、約0.5:1〜約20:1、他の実施形態では約0.75:1〜約10:1、及び他の実施形態では約1:1〜約6:1であってもよい。
触媒系の調製
本発明で用いられる触媒系は、種々の方法によって形成することができる。
1又は複数の実施形態では、ランタニド系触媒組成物をその場で形成することは、触媒構成成分を、モノマー及び溶媒を含有する溶液(又はバルクモノマー)に段階的又は同時に添加することによって行なってもよい。一実施形態では、アルキル化剤を最初に添加し、次にランタニド含有化合物、そして次にハロゲン源又は非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体を含有する化合物を添加することができる。
1又は複数の実施形態では、ランタニド系触媒組成物は事前形成され得る。つまり、触媒構成成分を、重合系外で予備的に混合する。1又は複数の実施形態では、触媒構成成分を予備的に混合することによって、活性触媒系が形成される。この活性触媒系は、モノマー、特に共役ジエンモノマーを重合して、本発明の1又は複数の実施形態で所望される所望のシス−1,4−ポリジエンとすることができる。ランタニド系触媒組成物を事前形成するための有用なプロセスの例が、米国特許第5,686,371号、同第6,576,731号、米国特許出願公開第2002/0,035,226号、同第2012/0,208,964号、同第2013/0,237,669号に開示されている。なお、これらの文献は、本明細書において参照により組み込まれている。
添加の順序
1又は複数の実施形態では、触媒構成成分を同時に又は連続的に混合することにより、触媒系を形成する場合がある。構成成分を連続的に混合する場合、まず、アルキル化剤をランタニド含有化合物と混合し、次にその混合物をハロゲン源又は非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体を含有する化合物と混合することができる。他の実施形態では、まず、アルキル化剤とハロゲン源(又は、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体)とを混合し、次にその混合物をランタニド含有化合物と混合することができる。更に他の実施形態では、まず、ランタニド含有化合物とハロゲン源(又は、非配位アニオン又は非配位アニオン前駆体)とを混合し、次にその混合物をアルキル化剤と混合することができる。
溶媒の使用
1又は複数の実施形態において、溶媒を担体として用いて触媒を溶解又は懸濁させて、重合系への触媒の送達を容易にしても良い。他の実施形態では、モノマーを担体として用いることができる。更に他の実施形態では、触媒又は開始剤を、いずれの溶媒も用いることなくそれらの無希釈の状態で用いることができる。
1又は複数の実施形態において、触媒は事前形成されている。1又は複数の実施形態では、触媒の事前形成は、溶媒と共に行うことができる。1又は複数の実施形態において、溶媒を担体として用いて触媒を溶解又は懸濁させて、重合系への触媒の送達を容易にしても良い。他の実施形態では、モノマーを担体として用いることができる。更に他の実施形態では、触媒を、いかなる溶媒も用いることなく無希釈の状態で用いることができる。
1又は複数の実施形態において、好適な溶媒には、触媒又は開始剤の存在下でのモノマーの重合中に、重合することも伝搬ポリマー鎖に取り込まれることもない有機化合物が含まれる。1又は複数の実施形態では、これらの有機種は、周囲温度及び圧力で液体である。1又は複数の実施形態では、これらの有機溶媒は、触媒又は開始剤に対して不活性である。例示的な有機溶媒には、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素のような低い又は比較的低い沸点を有する炭化水素が挙げられる。芳香族炭化水素の非限定的な例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、及びメシチレンが挙げられる。脂肪族炭化水素の非限定的な例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、イソペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、イソオクタン、2,2−ジメチルブタン、石油エーテル、ケロシン、及び石油スピリットが挙げられる。また、脂環式炭化水素の例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、及びメチルシクロヘキサンが挙げられるが、これらに限定されない。上記の炭化水素の混合物を使用することもできる。当該技術分野で知られているように、環境上の理由から、脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素を用いることが望ましい場合がある。低沸点の炭化水素溶媒は典型的に、重合が終了したらポリマーから分離される。
有機溶媒の他の例としては、一般に油展ポリマーに使用される炭化水素油を含む高分子量の高沸点炭化水素が挙げられる。これらのオイルの例には、パラフィン系オイル、芳香油、ナフテン系オイル、ヒマシ油以外の植物油、及び低PCAオイル、例えばMES、TDAE、SRAE、重ナフテン系オイルが挙げられる。これらの炭化水素は不揮発性であるため、それらは典型的に、分離する必要がなく、ポリマー内に取り込まれたままである。
安定剤の使用
1又は複数の実施形態では、触媒系の調製は、任意的に、触媒系を安定させ得る少量のアルケン含有化合物の存在下で行われる場合がある。有用なアルケン含有化合物には、本明細書で定義されるモノマーが含まれ得る。触媒系を安定させるのに好適なモノマーの具体例には、1,3−ブタジエン又はイソプレン等の共役ジエンモノマーが挙げられる。触媒を安定させるのに用いることができるアルケン含有化合物の量は、ランタニド含有化合物のモル当たり、約1〜約500モル、他の実施形態では約2〜約250モル、他の実施形態では約3〜約100モル、他の実施形態では約5〜約500モル、他の実施形態では約10〜約20モルの範囲とすることができる。
触媒系形成の条件
1又は複数の実施形態では、本発明で用いられる触媒系は、特定の温度で調製される場合がある。1又は複数の実施形態では、触媒組成物の調製は、−20℃以上、他の実施形態では0℃以上、他の実施形態では20℃以上、他の実施形態では40℃以上の温度で行うことができる。これらの又は他の実施形態では、触媒組成物の調製は、100℃以下、他の実施形態では80℃以下、他の実施形態では60℃以下、他の実施形態では40℃以下、他の実施形態では20℃以下、他の実施形態では0℃以下の温度で行うことができる。
触媒系の熟成
1又は複数の実施形態では、触媒組成物は、使用の前に(即ち、重合系への添加の前に)熟成される場合がある。
1又は複数の実施形態では、触媒組成物の熟成は、−20℃以上、他の実施形態では0℃以上、他の実施形態では20℃以上、他の実施形態では40℃以上の温度で行う場合がある。これらの又は他の実施形態では、触媒組成物の熟成は、100℃以下、他の実施形態では80℃以下、他の実施形態では60℃以下、他の実施形態では40℃以下、他の実施形態では20℃以下、他の実施形態では0℃以下の温度で行う場合がある。ある実施形態では、触媒組成物は、温度制御が行われない環境(そこでは、変化する環境温度に触媒組成物がさらされる可能性がある)において熟成される場合がある。これらの又は他の実施形態では、触媒組成物は、上述の温度で熟成される場合がある。また、熟成時間の少なくとも一部において、制御されない温度で更に熟成される場合がある。
1又は複数の実施形態では、触媒組成物の熟成は、10分以上、他の実施形態では30分以上、他の実施形態では1時間以上、他の実施形態では3時間以上、他の実施形態では6時間以上、他の実施形態では12時間以上、他の実施形態では24時間以上、他の実施形態では6日間以上、他の実施形態では12日間以上、他の実施形態では30日間以上、他の実施形態では60日間以上行われる場合がある。これらの又は他の実施形態では、触媒組成物の熟成は、1000日間以下、他の実施形態では750日間以下、他の実施形態では500日間以下、他の実施形態では300日間以下、他の実施形態では100日間以下、他の実施形態では24日間以下、他の実施形態では18日間以下、他の実施形態では12日間以下行われる場合がある。1又は複数の実施形態では、触媒組成物の熟成は、約4〜約16日間、他の実施形態では約5〜約15日間、他の実施形態では約6〜約12日間行われる。
具体的な触媒系
1又は複数の実施形態では、本発明の実施において用いられる触媒は、ランタニドカルボキシレート、アルミニウムヒドリド、及び有機金属ハライドの組み合わせ又は反応生成物である、事前形成触媒である。具体的な実施形態では、ランタニドカルボキシレートはネオジムカルボキシレートであり、アルミニウムヒドリドはジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド及び/又はヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドであり、有機金属ハライドはヒドロカルビルアルミニウムセスキクロリドである。更に具体的な実施形態では、触媒系は、ネオジムネオデカノエート、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、及びエチルアルミニウムセスキクロリドの組み合わせ又は反応生成物である。触媒系のジイソブチルアルミニウムヒドリド対ネオジムネオデカノエートのモル比は約5〜約40、他の実施形態では約10〜約20である場合がある。また、触媒系のエチルアルミニウムセスキクロリド対ネオジムネオデカノエートのモル比(エチルアルミニウムセスキクロリド内のハロゲン原子のモル対ネオジムネオデカノエート内のランタニド原子のモルのモル比(ハロゲン/Ln)で最もよく説明される)は約1〜約4、他の実施形態では約2〜約3である場合がある。これらの又は他の実施形態では、これらの具体的な触媒系は、安定剤として共役ジエン(例えば、1,3−ブタジエン又はイソプレン)を含む場合がある。更に具体的な実施形態では、記載されている具体的な触媒系は、本明細書に記載のとおり、熟成される。
本発明の1又は複数の実施形態で用いられ得る触媒系は、市販のものである場合がある。例えば、有用な事前形成触媒系としては、商標名COMCAT Nd−FC(NH)、COMCAT Nd−FC/20(NH)、COMCAT Nd−FC/SF[COMAR CHEMICALS(Pty)Ltd]のものを用いることができる。
重合混合物
本発明による反応性ポリマーの製造は、所望の分子量のポリマーを生成するのに十分な量の共役ジエンモノマーを、触媒的に有効な量の触媒の存在下で重合することによって行うことができる。触媒及び共役ジエンモノマーを導入することにより、重合混合物が形成される。なお、この重合混合物は、重合系と呼ばれることもあり、ここで反応性ポリマーが形成される。用いるべき触媒の量は、種々の要因(例えば、用いる触媒又は開始剤の種類、構成成分の純度、重合温度、所望の重合速度及び重合転化率、所望の分子量、及び多くの他の要因)の相互作用に依存する場合がある。したがって、具体的な触媒又は開始剤量については、触媒的に有効な量の触媒又は開始剤を用いてもよいと言う以外に、明確に述べることはできない。
1又は複数の実施形態において、使用する配位金属化合物(例えば、ランタニド含有化合物)の量を、約0.001〜約2mmol、他の実施形態では約0.005〜約1mmol、更に他の実施形態では約0.01〜約0.2mmol(モノマー100グラム当たり)と変えることができる。
1又は複数の実施形態では、重合は、相当量の溶媒を含む重合系において行なわる場合がある。一実施形態では、溶液重合系として、重合すべきモノマー及び形成されたポリマーの両方が溶媒に可溶であるものを用いてもよい。別の実施形態では、沈殿重合系を用いることを、形成されたポリマーが不溶性である溶媒を選択することによって行なってもよい。いずれの場合も、触媒又は開始剤を調製するときに用いてもよい溶媒量に加えて、ある量の溶媒が、通常、重合系に添加される。付加的な溶媒は、触媒又は開始剤を調製するときに用いる溶媒と同じであってもよいし又は異なっていてもよい。例示的な溶媒については前述している。1又は複数の実施形態において、重合混合物の溶媒含有量は、重合混合物の総重量に対して、20重量%超、他の実施形態では50重量%超、更に他の実施形態では80重量%超であり得る。
他の実施形態では、使用する重合系は概ね、実質的に溶媒が含まれないか又は最小量の溶媒が含まれるバルク重合系であると考えられ得る。当業者であれば、バルク重合プロセス(すなわち、モノマーが溶媒として働くプロセス)の利益を理解するであろう。したがって、重合系に含まれる溶媒の量が、バルク重合を行なうことによって求められる利益に有害な影響を及ぼす量よりも少ないことを理解するであろう。1又は複数の実施形態では、重合混合物の溶媒含有量は、重合混合物の総重量に対して、約20重量%未満、他の実施形態では約10重量%未満、更に他の実施形態では約5重量%未満であり得る。別の実施形態では、重合混合物には、使用する原材料に固有の溶媒以外の溶媒は含有されていない。更に別の実施形態では、重合混合物は溶媒を実質的に欠いている。これは、存在していれば重合プロセスにかなりの影響を及ぼすであろう量の溶媒が、存在していないことを指す。溶媒を実質的に欠いている重合系は、溶媒を実質的に含まないとも言える。特定の実施形態では、重合混合物は溶媒を欠いている。
重合は、当該技術分野で知られている任意の従来の重合容器内で行なってもよい。1又は複数の実施形態では、溶液重合を従来の攪拌槽型反応器内で行なうことができる。他の実施形態では、特にモノマー転化率が約60%未満である場合、バルク重合を従来の攪拌槽型反応器内で行なうことができる。更に他の実施形態では、特にバルク重合プロセスにおけるモノマー転化率が約60%を超える場合(この場合、典型的に、高粘性のセメントが得られる)、バルク重合を細長い反応器(重合中の粘性セメントがピストンによって又は実質的にピストンによって動かされる)内で行う場合がある。例えば、セメントが自浄式1軸スクリュー又は2軸スクリュー撹拌器によって押し出される押出機が、この目的に適している。有用なバルク重合プロセスの例は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第7,351,776号に開示されている。
1又は複数の実施形態において、重合に対して使用する構成成分をすべて単一容器(例えば、従来の撹拌タンク反応器)内で混合することができ、重合プロセスのすべてのステップをこの容器内で行なうことができる。他の実施形態では、2つ以上の構成成分を1つの容器内で事前に組み合わせてから別の容器に移し、そこでモノマー(又は少なくともその大部分)の重合を行なうことができる。
重合は、バッチプロセス、連続プロセス、又は半連続プロセスとして行なうことができる。半連続プロセスでは、モノマーを必要に応じて断続的に充填して、すでに重合したモノマーと入れ替える。1又は複数の実施形態において、重合が進む条件を制御して、重合混合物の温度を、約−10℃〜約200℃、他の実施形態では約0℃〜約150℃、他の実施形態では約20℃〜約100℃の範囲に維持しても良い。1又は複数の実施形態において、重合の熱を取り除くことを、熱的に制御された反応器ジャケットによる外部冷却、反応器に接続された還流凝縮器を用いることによるモノマーの気化及び凝縮による内部冷却、又は2つの方法の組み合わせによって行なっても良い。また、重合条件を制御して、重合を行なう圧力を約0.01MPa〜約5MPa(約0.1気圧〜約50気圧)、他の実施形態では約0.05MPa〜約2MPa(約0.5気圧〜約20気圧)、他の実施形態では約0.1MPa〜約1MPa(約1気圧〜約10気圧)にしてもよい。1又は複数の実施形態では、重合を行ない得る圧力には、大部分のモノマーが確実に液相となる圧力が含まれる。これらの又は他の実施形態では、重合混合物を嫌気条件下で維持してもよい。
疑似リビングポリマー
ランタニド系触媒による重合によって生成されるポリマーは、その結果得られるポリマー鎖の一部又はすべてが、重合混合物が急冷される前に反応性鎖末端を保有するようなポリマーであり得る。そのため、反応性ポリマーについて言及する際は、反応性鎖末端を有するポリマーについて言及している。前述したように、ランタニド系触媒を用いて調製された反応性ポリマーは、疑似リビングポリマーと呼ばれることもある。1又は複数の実施形態において、反応性ポリマーを含む重合混合物は、活性重合混合物又は活性重合系と呼ばれることもある。反応性末端を所有するポリマー鎖のパーセンテージは、種々の要因(例えば、触媒又は開始剤の種類、モノマーの種類、構成成分の純度、重合温度、モノマー転化率、及び多くの他の要因)に依存する。1又は複数の実施形態において、ポリマー鎖の少なくとも約20%が反応性末端を保有し、他の実施形態では、ポリマー鎖の少なくとも約50%が反応性末端を保有し、更に他の実施形態では、ポリマー鎖の少なくとも約80%が反応性末端を保有している。いずれの場合でも、本発明の態様に従って、反応性ポリマーをルイス酸で処理することができる。
官能化反応
1又は複数の実施形態では、反応性鎖末端を含む反応性ポリマーは、任意的に、その反応性鎖末端を官能化剤と反応させることにより、末端官能化され得る。1又は複数の実施形態では、この官能化は、ルイス酸を用いた処理の前に行われる。1又は複数の実施形態では、本発明のポリジエンは、官能化されていない。
1又は複数の実施形態において、任意の官能化剤と反応性ポリマーとの反応を、所望のモノマー転化率が実現された後、かつ、重合混合物が急冷剤によって急冷される前に行なうことができる。1又は複数の実施形態において、官能化剤と反応性ポリマーとの反応は、ピーク重合温度に達した後2時間以内、他の実施形態では1時間以内、他の実施形態では30分以内、他の実施形態では5分以内、他の実施形態では1分以内に起きる場合がある。1又は複数の実施形態において、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、ピーク重合温度に達し後すぐに起こり得る。他の実施形態では、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、反応性ポリマーが貯蔵された後に起こり得る。1又は複数の実施形態において、反応性ポリマーの貯蔵は、室温で又は室温未満で、不活性雰囲気下で行なう。1又は複数の実施形態において、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応が起こる温度は、約10℃〜約150℃であっても良く、他の実施形態では約20℃〜約100℃であっても良い。官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応が終了するのに必要な時間は、種々の要因(例えば、反応性ポリマーを調製するのに用いる触媒の種類及び量、官能化剤の種類及び量、並びに官能化反応が行なわれる温度)に依存する。1又は複数の実施形態において、官能化剤と反応性ポリマーとの間の反応は、約10〜60分間、行なわれ得る。
1又は複数の実施形態では、重合が行われた場所(例えば、容器内)で、任意の官能化剤を重合混合物に導入する場合がある。他の実施形態では、重合が行われた場所とは異なる場所で、任意の官能化剤を重合混合物に導入する場合がある。例えば、下流の容器(下流の反応器又はタンク、インライン反応器又はミキサー、押出機、又は脱揮装置を含む)内で、任意の官能化剤を重合混合物に導入する場合がある。
官能化剤
1又は複数の実施形態において、好適な任意の官能化剤には、本発明に従って生成される反応性ポリマーと反応し得る基を含有する化合物が含まれる。例示的な官能化剤としては、ケトン類、キノン類、アルデヒド類、アミド類、エステル類、イソシアネート類、イソチオシアネート類、エポキシド類、イミン類、アミノケトン類、アミノチオケトン類、及び酸無水物類が挙げられる。これらの化合物の例は、米国特許第4,906,706号、同第4,990,573号、同第5,064,910号、同第5,567,784号、同第5,844,050号、同第6838,526号、同第6977,281号、及び同第6,992,147号、米国特許出願公開第2006/0004131(A1)号、同第2006/0025539(A1)号、同第2006/0030677(A1)号、及び同第2004/0147694(A1)号、並びに日本国特許出願第05−051406(A)号、同第05−059103A号、同第10−306113(A)号、及び同第11−035633(A)号に開示されている。なお、これらの文献は、参照により本明細書に組み込まれている。官能化剤の他の例には、米国特許第7,879,952号に記載されているようなアジン化合物、同第7,671,138号に開示されているようなヒドロベンズアミド化合物、同第7,732,534号に開示されているようなニトロ化合物、同第8,088,868号に開示されているような保護オキシム化合物、同第8,314,189号に開示されている複素環式ニトリル化合物、同第8,258,332号に開示されているアミノ基を含有するハロシラン、同第7,906,592号に開示されている保護アミノ基を含有するイミド化合物、米国特許出願公開第2010/0168378号に開示されているニトロソ化合物、同第2010/0099826号に開示されているアミノ含有化合物、同第2011/0077325号に開示されているシリル化アミノ基を含有するカルボン酸エステル又はチオカルボン酸エステル、同第2011/0152449号に開示されているポリオキシム化合物、同第2011/0288200号に開示されているポリシアノ化合物、同第2012/0059112号に開示されている保護アミノ基を含有するニトリル化合物が挙げられる。これらの開示はすべて参照により本明細書に組み込まれる。
官能化ポリマーを得るために重合混合物に添加することができる任意の官能化剤の量は、種々の要因(反応性ポリマーを合成するために用いる触媒の種類及び量、及び所望の官能化度を含む)に依存する場合がある。1又は複数の実施形態において、ランタニド系触媒を用いて反応性ポリマーを調製する場合、用いられる官能化剤の量は、ランタニド含有化合物のランタニド金属を基準にして説明することができる。例えば、ランタニド金属に対する官能化剤のモル比は、約1:1〜約200:1、他の実施形態では、約5:1〜約150:1、及び他の実施形態では、約10:1〜約100:1であってもよい。
ルイス酸処理
本発明の態様によると、反応性ポリマーは、ルイス酸で処理される。1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、反応性ポリマーを含む重合系へ(すなわち、活性重合混合物へ)導入される。1又は複数の実施形態において、ルイス酸の活性重合混合物への導入を、所望のモノマー転化率が実現された後、かつ、重合混合物が急冷剤によって急冷される前に行なわれる。1又は複数の実施形態において、ルイス酸の活性重合混合物への導入は、ピーク重合温度に達した後2時間以内、他の実施形態では1時間以内、他の実施形態では30分以内、他の実施形態では5分以内、他の実施形態では1分以内に行われ得る。1又は複数の実施形態において、ルイス酸の活性重合混合物への導入は、ピーク重合温度に達した後すぐに行われ得る。他の実施形態において、ルイス酸の活性重合混合物への導入は、反応性ポリマーが貯蔵された後に行われ得る。1又は複数の実施形態において、反応性ポリマーの貯蔵は、室温で又は室温未満で、不活性雰囲気下で行なう。1又は複数の実施形態では、ルイス酸の反応性ポリマーへの導入は、急冷及び/又は官能化の前に行われるため、ルイス酸の導入時にはポリマーは反応性(すなわち、疑似リビング)状態にある。
前述したように、ポリマーは、任意的に官能化されてもよい。1又は複数の実施形態では、ルイス酸の導入は、任意の官能化剤の導入と同時に行われ得る。他の実施形態では、ルイス酸の重合混合物への導入は、任意の官能化剤が導入された後、かつ、重合混合物が急冷剤によって急冷される前に行なわれ得る。1又は複数の実施形態において、ルイス酸の活性重合混合物への導入は、任意の官能化剤が導入された後2時間以内、他の実施形態では1時間以内、他の実施形態では30分以内、他の実施形態では5分以内、他の実施形態では1分以内に行われ得る。
1又は複数の実施形態において、ルイス酸を活性重合混合物へ導入するときの温度は、約10℃〜約150℃であっても良く、他の実施形態では約20℃〜約100℃であっても良い。ルイス酸と重合混合物の任意の構成成分との間の反応又は相互作用に必要な時間は、種々の要因(例えば、反応性ポリマーの調製に用いる触媒の種類及び量、ルイス酸の種類及び量、並びにルイス酸を導入するときの温度)に依存する場合がある。1又は複数の実施形態では、ルイス酸及び反応性ポリマーは、重合系のあらゆる急冷の前に、1分間以上、他の実施形態では5分間以上、他の実施形態では20分間以上、他の実施形態では1時間以上、他の実施形態では2時間以上熟成される。
1又は複数の実施形態では、重合が行われた場所(例えば、容器内)で、ルイス酸を重合混合物に導入する場合がある。他の実施形態では、重合が行われた場所とは異なる場所で、ルイス酸を重合混合物に導入する場合がある。例えば、下流の容器(下流の反応器又はタンク、インライン反応器又はミキサー、押出機、又は脱揮装置を含む)内で、ルイス酸を重合混合物に導入する場合がある。
1又は複数の実施形態では、重合系に導入されるルイス酸の量は、ポリマーの調製に用いられる重合系内のランタニド金属の量(例えば、ネオジム原子)と相対的に定義される場合がある。1又は複数の実施形態では、ランタニド含有化合物内のランタニド金属に対するルイス酸のモル比(LA/Ln)は、少なくとも0.5:1、他の実施形態では少なくとも1:1、他の実施形態では少なくとも5:1である。これらの又は他の実施形態では、ランタニド金属に対するルイス酸のモル比(LA/Ln)は、多くとも150:1、他の実施形態では多くとも100:1、他の実施形態では多くとも50:1である。1又は複数の実施形態では、LA/Lnモル比は、約0.5:1〜約150:1、他の実施形態では約1:1〜約100:1、及び他の実施形態では約5:1〜約50:1である。
ルイス酸
当業者であれば、ルイス酸が、ルイス塩基と反応してルイス付加体を形成する化合物を含むことを理解するであろう。このメカニズムによれば、ルイス塩基は電子対をルイス酸に供与し、ルイス酸は電子対を受け取る。1又は複数の実施形態では、ルイス酸はブレンステッド−ローリー酸ではなく、酸性水素原子を有しない。
1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、チタンテトラアルコキシド、ボロントリハライド、トリヒドロカルビルボラン、トリヒドロカルビルオキシボレート、トリヒドロカルビルシリルハライド、トリヒドロカルビルシリルトリフラート、シリコンテトラハライド、チタンテトラハライド、アルミニウムトリハライド、亜鉛ジハライド、及びリントリハライドから選択される場合がある。
1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、ボロントリハライド、トリヒドロカルビルボラン、トリヒドロカルビルオキシボレート、トリヒドロカルビルシリルハライド、シリコンテトラハライド、チタンテトラハライド、及びリントリハライドから選択される場合がある。
1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、ボロントリハライド、トリヒドロカルビルオキシボレート、チタンテトラハライド、及びリントリハライドから選択される場合がある。
1又は複数の実施形態では、ボロントリハライドは、以下の式によって規定され得る:
Figure 2018509494

(式中、各Xは独立にハロゲン原子である)。好適なハロゲン原子には、フッ化物、塩化物、及び臭化物が挙げられる。1又は複数の実施形態では、各Xは同一であってもよい。例えば、各Xがフッ素原子である場合、ボロントリハライドはボロントリフルオリドであってもよい。
1又は複数の実施形態では、トリヒドロカルビルオキシボレートは、以下の式によって規定され得る:
Figure 2018509494

(式中、各Rは独立に一価の有機基である)。
1又は複数の実施形態では、一価の有機基はヒドロカルビル基であってもよく、これには、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基、アリル基、アラルキル基、アルカリル基、又はアルキニル基が挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロカルビル基にはまた、置換ヒドロカルビル基も含まれており、置換ヒドロカルビル基は、1つ又は2つ以上の水素原子がヒドロカルビル、ヒドロカルビルオキシ、シリル、又はシリルオキシ基などの置換基によって交換されているヒドロカルビル基を指す。1つ又は2つ以上の実施形態において、これらの基には、1個(又は基を形成するのに適切な最小数の炭素原子)〜約20個の炭素原子が含まれていてもよい。これらの基はまた、ヘテロ原子、例えば、限定するものではないが、窒素原子、ホウ素原子、酸素原子、ケイ原子素、硫黄原子、スズ原子、及びリン原子を含有していてもよい。
1又は複数の実施形態において、チタンテトラハライドは、以下の式によって規定され得る:
Figure 2018509494

(式中、各Xは独立にハロゲン原子である)。好適なハロゲン原子には、フッ化物、塩化物、及び臭化物が挙げられる。1又は複数の実施形態では、各Xは同一であってもよい。
1又は複数の実施形態では、リントリハライドは、以下の式によって規定され得る:
Figure 2018509494

(式中、各Xは独立にハロゲン原子である)。好適なハロゲン原子には、フッ化物、塩化物、及び臭化物が挙げられる。1又は複数の実施形態では、各Xは同一であってもよい。
1又は複数の実施形態では、ルイス酸は、ルイス酸−ルイス塩基錯体の一部であってもよい。例えば、ルイス酸ボロントリハライドが、ボロントリフルオリド錯体として用いられ得る。錯体の形成に好適なルイス塩基には、アルコール、水、酸素含有鉱酸、水、アルデヒド、アミン、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、ケトン、及びニトリルが含まれるが、これらに限定されない。
1又は複数の実施形態では、ケトンは式RCOR(式中、各Rは独立に一価の有機基である)によって定義され得る。ボロントリフルオリド錯体に好適に用いられるケトンの代表的な例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルオクチルケトン、2,4−ペンタンジオン、ブチルシクロヘプタノン、アセトフェノン、アミルフェニルケトン、ブチルフェニルケトン、ベンゾフェノン、フェニルトリルケトン、及びキノンが挙げられる。ボロントリフルオリドケトン錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドアセトフェノン及びボロントリフルオリドベンゾフェノンが挙げられる。
1又は複数の実施形態では、アルデヒドは式RCHO(式中、各Rは独立に一価の有機基である)によって定義され得る。ボロントリフルオリド錯体に好適に用いられるアルデヒドの代表的な例には、ブチルアルデヒド、アニスアルデヒド、シンナムアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ヘプタアルデヒド、ドデシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、m−トルアルデヒド、p−トルアルデヒド、m−ニトロベンズアルデヒド、p−ニトロベンズアルデヒド、及びm−ヒドロベンズアルデヒドが挙げられる。ボロントリフルオリドアルデヒド錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドベンズアルデヒド及びボロントリフルオリドトルアルデヒドが挙げられる。
1又は複数の実施形態では、エステルは式R−COOR(式中、各Rは独立に一価の有機基である)によって定義され得る。エステルの代表的な例には、エチルブチレート、エチルオクタノエート、イソプロピルヘキサノエート、アミルアセテート、ヘキシルプロピオナート、セチルアセテート、エチルベンゾエート、アミルベンゾエート、フェニルアセテート、フェニルブチラート、及びフェニルベンゾアートが挙げられる。ボロントリフルオリドエステル錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドエチルベンゾエート、ボロントリフルオリドエチルアセテート、及びボロントリフルオリドフェニルアセテートが挙げられる。当業者であれば、エステルに関する上記説明に基づいて、チオエステル類似体を容易に調製することができるであろう。
1又は複数の実施形態において、エーテルは式R−O−R(式中、各Rは独立に一価の有機基である)によって定義され得る。エーテルの代表的な例には、エトキシブタン、ブトキシブタン、エトキシオクタン、イソプロポキシヘキサン、プロポキシヘキサン、エトキシベンゼン、及びアミルオキシベンゼンが挙げられる。ボロントリフルオリドエーテル錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドメチルt−ブチルエーテル、ボロントリフルオリドジブチルエーテル、及びボロントリフルオリドジメチルエーテルが挙げられる。当業者であれば、エーテルに関する上記説明に基づいて、チオエーテル類似体を容易に調製することができるであろう。
1又は複数の実施形態において、ニトリルは式RCN(式中、各Rは一価の有機基である)によって表され得る。ニトリルの代表的な例には、アセトニトリル、ブチロニトリル、アクリロニトリル、ベンゾニトリル、o−トルニトリル、m−トルニトリル、p−トルニトリル、及びフェニルアセトニトリルが挙げられる。ボロントリフルオリドニトリル錯体の代表的な例には、ボロントリフルオリドベンゾニトリルが挙げられる。
急冷
1又は複数の実施形態において、反応性ポリマーとルイス酸との間の反応が行なわれたか又は終了した後に、急冷剤を重合混合物に添加して、反応性ポリマーとルイス酸との間の反応生成物にプロトンを付加し、任意の残りの反応性ポリマー鎖を不活性化し、及び/又は触媒若しくは触媒成分を不活性化することができる。急冷剤には、プロトン性化合物が含まれていてもよく、これには、アルコール、カルボン酸、無機酸、水、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、イソプロパノール等のアルコールによる急冷が用いられる。これは、イソプロピルアルコールの使用が、最終ポリマーにおける特定の望ましい特性(例えば、望ましいコールドフロー)に貢献することが分かっているからである。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤を、急冷剤の添加と共に、前に、又は後に行なってもよい。使用する酸化防止剤の量は、ポリマー生成物の重量に対して0.2重量%〜1重量%の範囲であってもよい。更に加えて、ポリマー生成物は、オイルをポリマーに添加することによって油展することができ、これは、モノマー内で溶解又は懸濁されたポリマーセメント又はポリマーの形態であってもよい。本発明の実施では、添加してよいオイル量を限定してはおらず、したがって通常の量を添加してもよい(例えば、5〜50phr)。使用してもよい有用なオイル又は伸展剤としては、芳香族油、パラフィン系油、ナフテン系油、ヒマシ油以外の植物油、MES、TDAE、及びSRAEなどの低PCA油、並びに重ナフテン系油が挙げられるが、これらに限定されない。
ポリマーの回収
重合混合物を急冷させた後、重合混合物の種々の成分を回収してもよい。1又は複数の実施形態では、未反応モノマーを重合混合物から回収することができる。例えば、当該技術分野で既知の技術を用いてモノマーを重合混合物から蒸留することができる。1又は複数の実施形態では、脱揮装置を用いてモノマーを重合混合物から取り出してもよい。モノマーを重合混合物から取り出した後、モノマーを精製してもよいし、貯蔵してもよいし、かつ/又はリサイクルして重合プロセスに戻してもよい。
ポリマー生成物を重合混合物から回収することを、当該技術分野で知られた技術を用いて行なってもよい。1又は複数の実施形態では、脱溶媒及び乾燥技術を用いてもよい。例えば、ポリマーの回収を、重合混合物を加熱されたスクリュー装置(例えば脱溶媒押出機)に通すことによって行なうことができる。この装置では、揮発性物質の除去が、適温(例えば、約100℃〜約170℃)かつ大気圧又は準大気圧下の気化によって行われる。この処理によって、未反応モノマー及び任意の低沸点溶媒が除去される。代替的に、ポリマーの回収を、重合混合物に蒸気脱溶媒を施し、続いて、結果として得られたポリマークラムを熱風トンネル内で乾燥させることによって行なうこともできる。ポリマーの回収はまた、重合混合物をドラム乾燥機上で直接乾燥させることによって行なうこともできる。
ポリマーの特性
1又は複数の実施形態において、本発明のポリマーは、シス−1,4−ポリジエンであって、シス−1,4−結合含有量が60%を超えるもの、他の実施形態では約75%を超えるもの、他の実施形態では約90%を超えるもの、他の実施形態では約95%を超えるもの、他の実施形態では約96%を超えるもの、他の実施形態では約97%を超えるもの、他の実施形態では約98%を超えるもの、他の実施形態では約99%を超えるものであり得る。これらのパーセンテージは、ジエンマー単位の数に基づいており、シス−1,4結合対ジエンマー単位総数を採用している。また、これらのポリマーは、1,2−結合含有量が7%未満、他の実施形態では5%未満、他の実施形態では2%未満、他の実施形態では1%未満であり得る。これらのパーセンテージは、ジエンマー単位の数に基づいており、1,2−結合対ジエンマー単位総数を採用している。ジエンマー単位の残部には、トランス−1,4−結合を採用してもよい。シス−1,4−、1,2−、及びトランス−1,4−結合含有量の測定は、赤外分光法によって行なってもよい。
1又は他の実施形態では、本発明のシス−1,4−ポリジエンの数平均分子量(M)は、約1,000〜約1,000,000、他の実施形態では約5,000〜約200,000、他の実施形態では約25,000〜約150,000、他の実施形態では約50,000〜約120,000であり得る。この数値は、ポリブタジエン標準と当該のポリマーに対するMark−Houwink定数とを用いて校正されるゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される。本発明のシス−1,4−ポリジエンの分子量分布又は多分散性(M/M)は、約1.5〜約5.0、他の実施形態では約2.0〜約4.0であり得る。これらの又は他の実施形態では、本発明のシス−1,4−ポリジエンのM/Mは3.0未満、他の実施形態では2.5未満、他の実施形態では2.3未満、他の実施形態では2.2未満、他の実施形態では2.1未満、及び他の実施形態では2.0未満であり得る。
1又は複数の実施形態では、ポリマーのコールドフロー耐性は、Scott plasticity testerを使用して測定され得る。コールドフロー耐性の測定は、ポリマーのサンプルから調製した円筒状ボタンの上に重しを置くことにより行われ得る。ポリマーサンプルのボタンの調製は、約2.5gのポリマーを100℃で20分間成形して、直径15mm及び高さ12mmの円筒状ボタンを調製することによって行われ得る。ボタンを室温まで冷却した後で、ボタンを型から取り外し得る。その後、ボタンを室温でScott plasticity tester内に載置して、49N(5kg)の負荷をサンプルに加えることにより、試験が行われ得る。8分後、残留サンプルゲージ(即ち、サンプルの厚さ)が測定され得る。一般的に、残留サンプルゲージは、ポリマーのコールドフロー耐性の指標とすることができ、残留サンプルゲージが高いほど、良好なコールドフロー耐性を示す。
本発明の1又は複数の実施形態によって製造されたポリマー生成物は、有益なコールドフロー耐性という特徴を有し得る。この有益なコールドフロー耐性は、本発明の態様によるルイス酸を用いた処理が行われていない同様のポリマー組成物(すなわち、シス−1,4−ポリジエン)と比べたとき、重力によるコールドフローの少なくとも10%の増加、他の実施形態では少なくとも20%の増加、他の実施形態では少なくとも30%の増加、他の実施形態では少なくとも40%の増加、他の実施形態では少なくとも80%の増加、他の実施形態では少なくとも100%の増加、他の実施形態では少なくとも200%の増加、他の実施形態では少なくとも300%の増加として表され得る。なお、増加したコールドフロー耐性は、Scott tester及び上述の分析を用いて求められる。
産業上の利用
本発明のシス−1,4−ポリジエンポリマーは、タイヤ部品の製造に使用することができるゴム組成物の調製に特に有用であるという点で、有利である。ゴム配合技術及び当該技術で用いられる添加物は、概して、The Compounding and Vulcanization of Rubber,in Rubber Technology(2nd Ed.1973)に開示されている。
ゴム組成物の調製は、ポリマーを単独で又は他のエラストマー(即ち、ゴム又はエラストマー特性を有する組成物を形成するために加硫処理できるポリマー)とともに用いることによって行なうことができる。使用してもよい他のエラストマーには、天然及び合成ゴムが含まれる。合成ゴムは、典型的に、共役ジエンモノマーの重合、共役ジエンモノマーと他のモノマー(例えばビニル置換芳香族モノマー)との共重合、或いはエチレンと1つ又は複数のα−オレフィン及び任意的に1つ又は複数のジエンモノマーとの共重合から得られる。
例示的なエラストマーとしては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン−コ−イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン−コ−プロピレン)、ポリ(スチレン−コ−ブタジエン)、ポリ(スチレン−コ−イソプレン)、ポリ(スチレン−コ−イソプレン−コ−ブタジエン)、ポリ(イソプレン−コ−ブタジエン)、ポリ(エチレン−コ−プロピレン−コ−ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、及びこれらの混合物などが挙げられる。これらのエラストマーは、無数の巨大分子構造、例えば、直線状、分岐状、及び星形構造を有することができる。
ゴム組成物には、充填剤、例えば、無機及び有機充填剤が含まれていてもよい。有機充填剤の例には、カーボンブラック及びデンプンが含まれる。無機充填剤の例には、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マイカ、タルク(水和ケイ酸マグネシウム)、及びクレイ(水和アルミニウムシリケート)が挙げられる。カーボンブラック及びシリカは、タイヤの製造において用いられる最も一般的な充填剤である。ある実施形態では、異なる充填剤の混合物を有利に用いてもよい。
1又は複数の実施形態では、カーボンブラックには、ファーネスブラック、チャンネルブラック、及びランプブラックが含まれる。カーボンブラックのより具体的な例には、超摩耗ファーネスブラック、中間超摩耗ファーネスブラック、高磨耗ファーネスブラック、高速押出ファーネスブラック、微細ファーネスブラック、半強化ファーネスブラック、中級加工チャンネルブラック、ハード加工チャンネルブラック、導電性チャンネルブラック、及びアセチレンブラックが挙げられる。
特定の実施形態では、カーボンブラックの表面積(EMSA)は、少なくとも20m/g、別の実施形態では、少なくとも35m/gであってもよく、表面積値は、ASTM D−1765によって、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)技術を用いて決定することができる。カーボンブラックは、ペレット化された形態又はペレット化されていない綿状形態であり得る。カーボンブラックの好ましい形態は、ゴム化合物を混合するために使用される混合機器の種類に依存し得る。
ゴム組成物中で用いるカーボンブラックの量は、ゴム100重量部(phr)当たり最大で約50重量部であってもよく、約5〜約40phrが典型的である。
使用され得るいくつかの市販のシリカとしては、Hi−Sil(商標)215、Hi−Sil(商標)233、及びHi−Sil(商標)190(PPG Industries,Inc.;Pittsburgh,Pa.)が挙げられる。市販のシリカの他の供給業者としては、Grace Davison(Baltimore,Md.)、Degussa Corp.(Parsippany,N.J.)、Rhodia Silica Systems(Cranbury,N.J.)、及びJ.M.Huber Corp.(Edison,N.J.)が挙げられる。
1又は複数の実施形態では、シリカは、その表面積によって特徴付けることができ、これにより、その補強特性の尺度が与えられる。ブルナウアー−エメット−テラー(「BET」)法(J.Am.Chem.Soc.,vol.60,p.309 et seq.に記載されている)は、表面積を決定するための広く認められている方法である。シリカのBET表面積は、一般に450m/g未満である。表面積の有用な範囲としては、約32〜約400m/g、約100〜約250m/g、約150〜約220m/gが挙げられる。
シリカのpHは、概して、約5〜約7である。或いは、わずかに7より高い。また、他の実施形態では、約5.5〜約6.8である。
1又は複数の実施形態では、シリカを充填剤として(単独で又は他の充填剤と組み合わせて)用いる場合、混合中に結合剤及び/又は遮蔽剤をゴム組成物に添加して、シリカとエラストマーとの相互作用を高めることがある。有用な結合剤及び遮蔽剤は以下の文献に開示されている。米国特許第3,842,111号、同第3,873,489号、同第3,978,103号、同第3,997,581号、同第4,002,594号、同第5,580,919号、同第5,583,245号、同第5,663,396号、同第5,674,932号、同第5,684,171号、同第5,684,172号、同第5,696,197号、同第6,608,145号、同第6,667,362号、同第6,579,949号、同第6,590,017号、同第6,525,118号、同第6,342,552号、及び同第6,683,135号。これらは本明細書において参照により組み込まれている。
ゴム組成物中に用いるシリカの量は、約1〜約100phr、又は他の実施形態では約5〜約80phrであり得る。有用な上限範囲は、シリカによって与えられる高粘性によって限定される。シリカをカーボンブラックと共に用いるとき、シリカの量を約1phr程度に低くすることができる。シリカの量が低いため、使用する結合剤及び遮蔽剤の量を少なくすることができる。概ね、結合剤及び遮蔽剤の量は、使用するシリカの重量に対して、約4%〜約20%の範囲である。
硫黄又は過酸化物系硬化系を含む、多数のゴム硬化剤(加硫剤とも呼ばれる)が用いられてもよい。硬化剤は、Kirk−Othmer,Encyclopedia of Chemical Technology,Vol.20,pgs.365〜468,(3rd Ed.1982)、特に、Vulcanization Agents and Auxiliary Materials,pgs.390〜402、及びA.Y.Coran,Vulcanization,Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,(2nd Ed.1989)に記載されており、これらは、参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
ゴム配合において典型的に用いられる他の成分もまた、ゴム組成物に添加されてもよい。これらには、促進剤、促進活性剤、油、可塑剤、蝋、スコーチ防止剤、加工助剤、酸化亜鉛、粘着付与樹脂、強化用樹脂、脂肪酸、例えばステアリン酸、解こう剤、劣化防止剤、例えば酸化防止剤及びオゾン劣化防止剤が挙げられる。特定の実施形態では、用いられる油としては、従来から伸展油として用いられるものが挙げられる。これは、前述したとおりである。
ゴム組成物のすべての成分は、標準的な混合機器、例えばバンバリー又はブラベンダーミキサ、押出機、ニーダー、及び2つの圧延ミルを用いて混合することができる。1又は複数の実施形態では、構成成分を2段階以上で混合する。第1の段階(多くの場合、マスターバッチ混合段階とも呼ばれる)において、いわゆるマスターバッチ(典型的に、ゴム成分及び充填剤が含まれる)を調製する。早期加硫(別名スコーチ)を防止するために、マスターバッチから加硫剤を除外してもよい。マスターバッチの混合を、開始温度が約25℃〜約125℃、吐出温度が約135℃〜約180℃で行なってもよい。マスターバッチが調製されたらすぐに、加硫剤をマスターバッチに導入して混合することを、最終的な混合段階で行なっても良く、これを典型的に比較的低温で行なって、早期加硫が起きる可能性を小さくする。任意的に、しばしば再ミルと呼ばれる付加的な混合段階を、マスターバッチ混合段階と最終的な混合段階との間で用いることができる。ゴム組成物にシリカが充填剤として含まれる場合、1又は複数の再ミル段階が用いられることが多い。本発明のポリマーを含む種々の構成成分の添加を、これらの再ミル中に行うことができる。
シリカ充填されたタイヤ配合物に特に適用可能な混合手順及び条件は、米国特許第5,227,425号、同第5,719,207号、及び同第5,717,022号、並びに欧州特許第890,606号に記載されており、これらはすべて、参照により本明細書に組み込まれている。一実施形態では、最初のマスターバッチの調製は、結合剤及び遮蔽剤が実質的に存在しない状態で本発明のポリマー及びシリカを含めることによって行なう。
本発明のポリマーから調製されるゴム組成物が特に有用であるのは、タイヤ部品、例えばトレッド、サブトレッド、サイドウォール、ボディプライスキム、ビーズ充填剤などを形成する場合である。好ましくは、本発明のポリマーが、トレッド配合及びサイドウォール配合物で用られる。1又は複数の実施形態において、これらのトレッド又はサイドウォール配合物には、約10%〜約100重量%、他の実施形態では約35%〜約90重量%、及び他の実施形態では約50%〜約80重量%(配合物内のゴムの総重量に基づく)のポリマーが含まれていても良い。
ゴム組成物をタイヤの製造において用いる場合、これらの組成物を処理してタイヤ部品にすることを、普通のタイヤ製造技術、例えば、標準的なゴム成形技術、成型技術、及び硬化技術により行なうことができる。典型的に、加硫は、加硫性組成物を成形型内で加熱することによって達成される。例えば、成形型は、約140℃〜約180℃に加熱されてもよい。硬化又は架橋されたゴム組成物は、加硫ゴム(一般的に熱硬化性の三次元ポリマー網状組織を含有する)と称され得る。充填剤及び加工助剤などの他の成分は、架橋された網状組織全体に亘って一様に分散してもよい。空気入りタイヤは、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,866,171号、同第5,876,527号、同第5,931,211号、及び同第5,971,046号に記載されるように作製され得る。
本発明の実施を示すために、以下の実施例が調製され、試験された。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を制限するものとして見なされるべきではない。特許請求の範囲が本発明を定義するものとする。
以下の実施例において、ポリマーサンプルのムーニー粘度(ML1+4)が、大ロータ、1分間の予備加熱時間、及び4分間の運転時間でMonsanto Mooney粘度計を用いて100℃で求められた。ポリマーサンプルの数平均(M)及び重量平均(M)分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求められた。GPC機器は、示差屈折率(RI)検出器及び紫外(UV)吸収検出器を備えていた。ポリマーサンプルのシス−1,4−結合、トランス−1,4−結合、及び1,2−結合含有量は、赤外分光法によって求めた。
ポリマーのコールドフロー耐性を、前述したように、Scott plasticity testerを使用して測定した。
実施例1
未改質シス−1,4−ポリブタジエンの合成
窒素パージされた密封ガラス容器に、92.9gの無水ヘキサンとヘキサン中の240.4gの20.8重量%ブタジエン溶液とを充填した。この混合物に、ヘキサン中の2.81mLの1.03Mトリイソブチルアルミニウム溶液と、シクロヘキサン中の0.91mLの0.093Mネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の0.76mLの0.167Mエチルアルミニウムジクロリド溶液とを順次添加した。この重合混合物を、直ちに80℃の撹拌槽内に載置した。50分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量% 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表1を参照のこと。
実施例2
BF・BuO改質シス−1,4−ポリブタジエンの合成
窒素パージされた密封ガラス容器に、92.9gの無水ヘキサンとヘキサン中の240.4gの20.8重量%ブタジエン溶液とを充填した。この混合物に、ヘキサン中の2.81mLの1.03Mトリイソブチルアルミニウム溶液と、シクロヘキサン中の0.91mLの0.093Mネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の0.76mLの0.167Mエチルアルミニウムジクロリド溶液とを順次添加した。この重合混合物を、直ちに80℃の撹拌槽内に載置した。50分間撹拌した後で、ヘキサン中の1.70mLの1.00M BF・BuO溶液を充填して重合溶液を50℃で撹拌することにより、重合物をルイス酸で処理した。30分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量% 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表1を参照のこと。
実施例3
未改質シス−1,4−ポリブタジエンの合成
窒素パージされた密封ガラス容器に、92.9gの無水ヘキサンとヘキサン中の240.4gの20.8重量%ブタジエン溶液とを充填した。事前形成触媒の調製を、トルエン中の6.31mLの3.17Mメチルアルミノキサン溶液と、ヘキサン溶液中の1.53mLの21.4重量% 1,3−ブタジエンと、シクロヘキサン中の2.16mLの0.093Mネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の3.89mLの1.09Mジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の0.80mLの1.07Mジエチルアルミニウムクロリド溶液とを混合することによって行なった。触媒を15分間熟成させ、6.00mLのトルエンで希釈し、その後、2.59mLの触媒溶液を、ブタジエン及びヘキサンを含む容器に充填した。この重合混合物を、直ちに65℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量% 2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表1を参照のこと。
実施例4
BF・BuO改質シス−1,4−ポリブタジエンの合成
窒素パージされた密封ガラス容器に、92.9gの無水ヘキサンとヘキサン中の240.4gの20.8重量%ブタジエン溶液とを充填した。事前形成触媒の調製を、トルエン中の6.31mLの3.17Mメチルアルミノキサン溶液と、ヘキサン溶液中の1.53mLの21.4重量% 1,3−ブタジエンと、シクロヘキサン中の2.16mLの0.093Mネオジムベルサターテ(versatate)溶液と、ヘキサン中の3.89mLの1.09Mジイソブチルアルミニウムヒドリド溶液と、ヘキサン中の0.80mLの1.07Mジエチルアルミニウムクロリド溶液とを混合することによって行なった。触媒を15分間熟成させ、6.00mLのトルエンで希釈し、その後、2.59mLの触媒溶液を、ブタジエン及びヘキサンを含む容器に充填した。この重合混合物を、直ちに65℃の撹拌槽内に載置した。60分間撹拌した後で、ヘキサン中の2.00mLの1.00M BF・BuO(ボロントリフルオリドジブチルエーテル化合物)溶液を充填して重合溶液を50℃で撹拌することにより、重合物をルイス酸で処理した。30分間撹拌した後で、重合混合物に、イソプロパノール中の3.0mLの10重量%2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール溶液を充填することにより、重合を停止させた。このポリマーを、15gの2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールを含有する8リットルのイソプロパノール中で凝固させ、それからドラム乾燥させた。ポリマーの特性評価データについては、表1を参照のこと。
表1に、未改質シス−1,4−ポリジエン及びBF・BuO改質シス−1,4−ポリジエンの特性を要約して示す。2つの異なる触媒系を用いて作製した未改質対照サンプルを、実施例1及び3に示す。同じ2つの触媒系から作製されたBF・BuO改質ポリマーを、実施例2及び4に示す。
図1中のデータより、BF・BuOで改質したシス−1,4−ポリブタジエンサンプル(実施例2)が、未改質ポリマーと比べると、同じポリマームーニー粘度において、著しく高い残留サンプルゲージの値を示し、その結果、著しく良好なコールドフロー耐性を示すことが分かる。
図2中のデータより、BF・BuOで改質したシス−1,4−ポリブタジエンサンプル(実施例4)が、未改質ポリマーと比べると、同じポリマームーニー粘度において、著しく高い残留サンプルゲージの値を示し、その結果、著しく良好なコールドフロー耐性を示すことが分かる。
Figure 2018509494
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない様々な修正及び変更が当業者には明らかであろう。
本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態に正式に限定されるものではない。

Claims (20)

  1. コールドフローに対する有用な耐性を有するシス−1,4−ポリジエンを調製するための方法であって、
    (i)ランタニド系触媒及び共役ジエンモノマーを導入することによって、反応性ポリマーを含む重合系を調製する工程と、
    (ii)反応性ポリマーを含む前記重合系にルイス酸を添加する工程とを含む、方法。
  2. 前記ランタニド系触媒は事前形成されている、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ランタニド系触媒は、1時間以上熟成されている、請求項2に記載の方法。
  4. 前記ランタニド系触媒は、30日間以上熟成されている、請求項2に記載の方法。
  5. 前記ランタニド系触媒は、ランタニドカルボキシレート、アルミニウムヒドリド、及び有機金属ハライドを含む、請求項2に記載の方法。
  6. 前記ランタニド系触媒は、(a)ランタニド含有化合物、(b)アルキル化剤、及び(c)ハロゲン源を含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記アルキル化剤は、アルミノキサン及び式AlR3−n(式中、各Rは、同じであってもよいし異なっていてもよいが、アルミニウム原子に炭素原子を介して結合される一価の有機基であり、各Xは、同じであってもよいし異なっていてもよいが、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシレート基、アルコキシド基、又はアリールオキシド基であり、nは1〜3の整数である)によって表わされる有機アルミニウム化合物を含む、請求項6に記載の方法。
  8. モノマーを重合する前記工程は、有機溶媒が20重量%未満で含まれる重合混合物内で行なわれる、請求項1に記載の方法。
  9. 前記ルイス酸は、チタンテトラアルコキシド、ボロントリハライド、トリヒドロカルビルボラン、トリヒドロカルビルオキシボレート、トリヒドロカルビルシリルハライド、トリヒドロカルビルシリルトリフラート、シリコンテトラハライド、チタンテトラハライド、アルミニウムトリハライド、亜鉛ジハライド、及びリントリハライドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  10. 前記ルイス酸は、ボロントリハライド、トリヒドロカルビルボラン、トリヒドロカルビルオキシボレート、トリヒドロカルビルシリルハライド、シリコンテトラハライド、チタンテトラハライド、及びリントリハライドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  11. 前記ルイス酸は、ボロントリハライド、トリヒドロカルビルオキシボレート、チタンテトラハライド、及びリントリハライドからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  12. 前記ルイス酸は、以下の式:
    Figure 2018509494

    (式中、各Xは独立にハロゲン原子である)によって定義されるボロントリハライドである、請求項1に記載の方法。
  13. 前記ルイス酸は、以下の式:
    Figure 2018509494

    (式中、各Rは独立に一価の有機基である)によって定義されるトリヒドロカルビルオキシボレートである、請求項1に記載の方法。
  14. 前記ルイス酸は、以下の式:
    Figure 2018509494

    (式中、各Xは独立にハロゲン原子である)によって定義されるチタンテトラハライドである、請求項1に記載の方法。
  15. 前記ルイス酸は、以下の式:
    Figure 2018509494

    (式中、各Xは独立にハロゲン原子である)によって定義されるリントリハライドである、請求項1に記載の方法。
  16. 前記ルイス酸は、ルイス酸−ルイス塩基錯体の一部である、請求項1に記載の方法。
  17. 前記方法は、反応性ポリマーを含む前記重合系に官能化剤を添加する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  18. 前記方法は、反応性ポリマーを含む前記重合系に冷却剤を添加する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  19. 充填剤と、硬化剤と、
    シス−1,4−ポリジエンであって、
    (i)ランタニド系触媒を用いて共役ジエンモノマーを重合して、反応性ポリマーを形成する工程と、
    (ii)前記反応性ポリマーをルイス酸で処理する工程とを含む方法で調製されたシス−1,4−ポリジエンとを含む、加硫性組成物。
  20. 請求項19に記載の前記加硫性組成物を用いることによって調製されたタイヤ部品。
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