以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
[走行支援装置の構成]
図1は、本実施形態に係る走行支援装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る走行支援装置は、物体検出装置1と、自車位置推定装置3と、地図取得装置4と、マイクロコンピュータ100とを備える。
物体検出装置1は、自車両51に搭載された、レーザレーダやミリ波レーダ、カメラなど、自車両51の周囲に存在する物体を検出する、複数の異なる種類の物体検出センサを備える。物体検出装置1は、複数の物体検出センサを用いて、自車両51の周囲における物体を検出する。物体検出装置1は、他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び駐車車両を含む静止物体を検出する。例えば、移動物体及び静止物体の自車両51に対する位置、姿勢、大きさ、速度、加速度、減速度、ヨーレートを検出する。なお、物体の位置、姿勢(ヨー角)、大きさ、速度、加速度、減速度、ヨーレートをまとめて、物体の「挙動」と呼ぶ。物体検出装置1は、検出結果として、例えば自車両51の上方の空中から眺めた天頂図(平面図ともいう)における、2次元の物体の挙動を出力する。
自車位置推定装置3は、自車両51に搭載された、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)やオドメトリなど自車両51の絶対位置を計測する位置検出センサを備える。自車位置推定装置3は、位置検出センサを用いて、自車両51の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両51の位置、姿勢及び速度を計測する。
地図取得装置4は、自車両51が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図取得装置4は、地図情報を格納した地図データベースを所有してもよいし、クラウドコンピューティングにより地図情報を外部の地図データサーバから取得しても構わない。地図取得装置4が取得する地図情報には、車線の絶対位置や車線の接続関係、相対位置関係などの道路構造の情報が含まれる。
更に、地図取得装置4は、更新頻度の高い地図情報(例えば、ダイナミックマップに埋め込まれている情報)を取得する。具体的には、地図取得装置4は、1秒以下の頻度で更新される動的情報、1分以下の頻度で更新される准動的情報、1時間以下の頻度で更新される准静的情報を自車両51の外部から無線通信により取得する。例えば、動的情報には、周辺車両、歩行者、信号機の情報が含まれ、准静的情報には、事故情報、渋滞情報、狭域気象情報が含まれ、准静的情報には、交通規制情報、道路工事情報、広域気象情報が含まれる。これに対して、上記した「道路の構造を示す地図情報」は、1時間以下の頻度で更新される静的情報に相当する。
マイクロコンピュータ100(制御部の一例)は、物体検出装置1及び自車位置推定装置3による検出結果及び地図取得装置4による取得情報に基づいて、他車両の動作を予測し、他車両の動作から自車両51の経路を生成し、生成した経路に従って自車両51を制御する。
マイクロコンピュータ100(制御部またはコントローラの一例)は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータ100には、走行支援装置として機能させるためのコンピュータプログラム(走行支援プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータ100は、走行支援装置が備える複数の情報処理回路(2a、2b、5、10、31、32)として機能する。なお、ここでは、ソフトウェアによって走行支援装置が備える複数の情報処理回路(2a、2b、5、10、31、32)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(2a、2b、5、10、31、32)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(2a、2b、5、10、31、32)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(2a、2b、5、10、31、32)は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
マイクロコンピュータ100は、複数の情報処理回路(2a、2b、5、10、31、32)として、検出統合部2aと、物体追跡部2bと、地図内位置演算部5と、動作予測部10と、自車経路生成部31と、車両制御部32とを備える。更に、動作予測部10は、挙動判定部11と、動作候補予測部12と、後方車両抽出部13と、軌道予測部16と、尤度推定部17と、後方予測要否判定部21と、環境情報抽出部25と、予測方法選択部26とを備える。
検出統合部2aは、物体検出装置1が備える複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。具体的には、物体検出センサの各々から得られた物体の挙動から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の挙動を算出する。具体的には、既知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を取得する。
物体追跡部2bは、物体検出装置1によって検出された物体を追跡する。具体的に、検出統合部2aにより統合された検出結果から、異なる時刻に出力された物体の挙動から、異なる時刻間における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体の挙動を予測する。なお、異なる時刻に出力された物体の挙動は、マイクロコンピュータ100内のメモリに記憶される。
地図内位置演算部5は、自車位置推定装置3により得られた自車両51の絶対位置、及び地図取得装置4により取得された地図データから、地図上における自車両51の位置及び姿勢を推定する。例えば、自車両51が走行している道路、更に当該道路のうちで自車両51が走行する車線を特定する。
動作予測部10では、検出統合部2aにより得られた検出結果と、地図内位置演算部5により特定された自車両51の位置に基づいて、自車両51の周囲における移動物体の動作を予測する。以下に、動作予測部10の具体的な構成を説明する。
挙動判定部11は、地図上における自車両51の位置と、検出統合部2aにより得られた物体の挙動とから、地図上における物体の位置及び挙動を特定する。更に、挙動判定部11は、物体の地図上の位置が時間の経過と共に変化する場合、当該物体は「移動物体」であると判断し、移動物体の大きさ及び速度から、当該移動物体の属性(走行中の他車両、歩行者)を判断する。そして、移動物体が走行中の「他車両」であると判断した場合、挙動判定部11は、当該他車両が走行する道路及び車線を判定する。
なお、物体の地図上の位置が時間の経過と共に変化しない場合、静止物体であると判断し、静止物体の地図上の位置、姿勢及び大きさから、静止物体の属性(停止中の他車両、駐車車両、歩行者など)を判定する。
動作候補予測部12は、地図に基づく他車両の動作候補を予測する。動作候補予測部12は、地図情報に含まれる道路構造及び他車両が属している車線情報から、他車両が次にどのように走行するのかという動作意図を予測し、当該動作意図に基づく他車両の基本軌道を道路構造に基づいて演算する。「動作候補」とは、動作意図及び基本軌道を含む上位概念である。「基本軌道」は、異なる時刻における他車両の位置のプロファイルのみならず、各位置における他車両の速度のプロファイルをも示す。
例えば、他車両が単車線の単路及びカーブ路を走行する場合、動作候補予測部12は、車線の形状に沿って走行する動作意図(直進)を予測し、基本軌道として、地図上の車線に沿った軌道を演算する。また、他車両が複数車線の単路及びカーブ路を走行する場合、動作候補予測部12は、直進する動作意図(直進)と、右側もしくは左側へ車線変更する動作意図(車線変更)を予測する。動作意図(車線変更)における他車両の基本軌道は、道路構造及び所定の車線変更時間に基づいて車線変更する軌道である。さらに、交差点を走行する場合、動作候補予測部12は、停止、直進、右折及び左折の動作意図を予測し、地図上の交差点における道路構造に基づいて、交差点手前で停止する「停止軌道」、交差点に進入する「直進軌道」、「右折軌道」、「左折軌道」を基本軌道として演算する。なお、「基本軌道」の演算において、道路構造を考慮するが、検出統合部2aにより統合された他車両の挙動は考慮しない。
後方予測要否判定部21は、自車両51の動作意図に基づいて、後方車両61(自車両51の進行方向において自車両51よりも後方に位置する他車両)の動作を予測する必要があるか否かを判定する。自車両51の動作意図として、自車両51が自車線TL1を直進する動作意図、自車線TL1から隣接車線TL2にレーンチェンジする動作意図、走行中の自車両51が路肩に停止する動作意図、もしくは、停車中の自車両51が発進する動作意図などが挙げられる。すなわち、後方予測要否判定部21は、後方車両61が存在すると仮定して、後方車両61の基本軌道に影響を及ぼす可能性のある動作意図を自車両51が有している場合に、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。
後方車両抽出部13は、後方予測要否判定部21によって後方車両61の動作を予測する必要があると判定された場合に、物体検出装置1により検出された移動物体の中から、自車両51よりも後方に位置する他車両を後方車両61として抽出する。後方車両抽出部13によって抽出される後方車両61には、自車線TL1に存在する他車両のみならず、自車線TL1と同じ進行方向の車線であって自車線TL1に隣接する隣接車線TL2を走行する他車両や、自車両51よりも前方で自車線TL1と合流する合流車線TL7を走行する他車両が含まれる。このように、後方車両抽出部13は、自車両51が干渉し得る基本軌道を有する後方車両61を抽出する。
環境情報抽出部25は、地図情報に含まれる道路構造、他車両が位置する車線の状況、周囲の信号機の状態、他車両の車両種別、自車両と他車両の間の位置関係などの、環境情報から、走行シーン(後方車両が置かれた環境の種類)を抽出する。環境情報抽出部25は、1つの走行シーンのみならず、複数の走行シーンを同時に抽出するものであってもよい。環境情報抽出部25が抽出する走行シーンについては、後述するように、図4A、図4B、図5〜図12に示すものが挙げられる。
予測方法選択部26は、環境情報抽出部25によって抽出された走行シーンに対応する予測方法を選択する。予測方法選択部26は、1つの予測方法のみならず、複数の予測方法を同時に選択するものであってもよい。
軌道予測部16は、予測方法選択部26によって選択された予測方法を用いて、後方車両61の動作候補のうち、選択された予測方法の対象となる動作候補を抽出し、予測動作として設定する。特に、複数の予測方法が選択された場合には、軌道予測部16は、選択された予測方法ごとに、予測の対象となる動作候補を抽出し、予測動作として設定する。予測方法の詳細については、図4A、図4B、図5〜図12に示す各走行シーンの説明と合わせて後述する。
尤度推定部17は、選択された予測方法と環境情報に基づいて、設定された各予測動作の尤度を求める。尤度は、後方車両61の予測動作が実際に発生する可能性を表す指標の一例であって、尤度以外の表現であっても構わない。
以上説明したように、動作予測部10では、尤度推定部17により想定された各動作候補の尤度に基づいて、自車両51の周囲における、後方車両61を含む他車両の動作を予測する。なお、「他車両の動作」には、他車両の軌道及び速度のプロファイルを含む。他車両の軌道とは、異なる時刻における他車両の位置のプロファイルを示す。
自車経路生成部31は、動作予測部10により予測された他車両の動作に基づいて、自車両51の経路を生成する。障害物回避の動作が予測された場合、障害物の存在を予測した上での経路を生成することができる。よって、他車両と衝突せず、かつ、他車両の挙動により自車両51が急減速又は急ハンドルとならない滑らかな自車両51の経路を生成することができる。「自車両51の経路」は、異なる時刻における自車両51の位置のプロファイルのみならず、各位置における自車両51の速度のプロファイルをも示す。
車両制御部32では、自車経路生成部31により生成された経路に従って自車両51が走行するように、地図内位置演算部5により演算された自己位置に基づいて、ステアリングアクチュエータ、アクセルペダルアクチュエータ、及びブレーキペダルアクチュエータの少なくとも1つを駆動する。なお、実施形態では、自車両51の経路に従って制御する場合を示すが、自車両51の経路を生成せずに、自車両51を制御してもよい。
[走行支援方法]
図2及び図3を参照して、実施形態に係わる走行支援方法を説明する。図2は、図1の走行支援装置の動作の一例を示すフローチャートである。図3は、図2のステップS06の詳細な手順の一例を示すフローチャートである。
先ず、ステップS01において、物体検出装置1が、複数の物体検出センサを用いて、自車両51の周囲における物体の挙動を検出する。ステップS02に進み、検出統合部2aが、複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。そして、物体追跡部2bが、検出及び統合された各物体を追跡する。
ステップS03に進み、自車位置推定装置3が、位置検出センサを用いて、所定の基準点に対する自車両51の位置、姿勢及び速度を計測する。ステップS04に進み、地図取得装置4が、自車両51が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。
ステップS05に進み、地図内位置演算部5が、ステップS03で計測された自車両51の位置、及びステップS04で取得された地図データから、地図上における自車両51の位置及び姿勢を推定する。ステップS06に進み、動作予測部10が、ステップS02で得られた検出結果(他車両の挙動)と、ステップS05で特定された自車両51の位置に基づいて、自車両51の周囲における他車両の動作を予測する。
ステップS06の詳細を、図3を参照して説明する。先ず、ステップS610において、後方予測要否判定部21が、自車両51の動作意図に基づいて、後方車両61(自車両51の進行方向において自車両51よりも後方に位置する他車両)の動作を予測する必要があるか否かを判定する。後方予測要否判定部21によって後方車両61の動作を予測する必要があると判定された場合には、ステップS612に進み、後方車両抽出部13が、物体検出装置1により検出された移動物体の中から、自車両51よりも後方に位置する他車両を後方車両61として抽出する。
ステップS614に進み、環境情報抽出部25が、ステップS612で抽出された全ての後方車両61について、後方車両61が置かれている走行シーン(後方車両が置かれた環境の種類)を検出する。なお、環境情報抽出部25は、各後方車両61について1つの走行シーンのみならず、複数の走行シーンを同時に抽出するものであってもよい。その後、ステップS616に進み、予測方法選択部26が、抽出された各走行シーンに対応する予測方法を選択する。予測方法選択部26は、1つの予測方法のみならず、複数の予測方法を同時に選択するものであってもよい。
ステップS618に進み、軌道予測部16は、予測方法選択部26によって選択された1つあるいは複数の予測方法を用いて、後方車両61の動作を予測する。
ステップS620に進み、軌道予測部16が、選択された予測方法ごとに、予測の対象となる動作候補を抽出し、予測動作として設定する。
ステップS622に進み、尤度推定部17が、選択された予測方法と環境情報に基づいて、S618で設定された設定された各予測動作の尤度を推定する。これにより、図2のステップS06が終了する。
図2のステップS07に進み、自車経路生成部31が、ステップS06で予測された他車両の動作に基づいて、自車両51の経路を生成する。ステップS08に進み、車両制御部32が、ステップS07で生成された経路に従って自車両51が走行するように、自車両51を制御する。
[走行シーンと予測方法]
次に、図4A、図4B、図5〜図12を参照して、環境情報抽出部25によって抽出される走行シーン、及び、各走行シーンに対応して、予測方法選択部26で選択される予測方法を説明する。
(第1走行シーン)
初めに、「第1走行シーン」を説明する。図4Aは、片側2車線の道路において交差点に自車両51が進入する直前の走行シーン(第1走行シーン)を示す平面図である。また、図4Bは、図4Aに示す走行シーンから時間が経過し交差点を自車両51が通過した直後の走行シーンを示す平面図である。
図4A、図4Bに示すように、自車両51が走行する自車線TL1において、自車両51の前方に、例えばカラーコーンなどで囲まれた通行禁止エリア101が存在する状況を想定する。
このような状況において、自車両51が自車線TL1から隣接車線TL2にレーンチェンジする動作意図を有している場合、自車両51の動作は、隣接車線TL2を走行する後方車両61の基本軌道に影響を及ぼす可能性がある。そのため、後方予測要否判定部21は、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。この判定に基づき、後方車両抽出部13は、図4Aに示す、隣接車線TL2を走行する後方車両61を抽出する。
図4A、図4Bに示すように、自車両51及び後方車両61の進行方向の前方には交差点が存在し、自車線TL1および隣接車線TL2を走行する車両は、信号機201に従って交差点への進入動作を行う。一方、交差点で自車線TL1と隣接車線TL2と交差する交差車線を走行する車両は、信号機202に従って交差点への進入動作を行うとする。環境情報抽出部25は、自車両51及び後方車両61の前方に交差点が存在し、自車両51及び後方車両61の動作が信号機201に応じて決定される状況であると判定した場合に、後方車両61が「第1走行シーン」に置かれていると判定する。すなわち、環境情報抽出部25は、環境情報に基づき、後方車両61に対応付けて第1走行シーンを抽出する。
第1走行シーンが抽出されたとき、予測方法選択部26は、後方車両61の動作の予測方法として、信号機201の状態に基づく予測方法を選択する。
図4Aで想定される後方車両61の動作候補は、交差点手前で停止する「停止軌道」、交差点に進入する「直進軌道」、「右折軌道」、「左折軌道」のいずれかであると考えられる。これらの動作候補のうち、軌道予測部16は、自車両51のレーンチェンジに影響を及ぼす可能性のある動作候補として「停止軌道」と「直進軌道」とを選択し、後方車両61の予測動作として設定する。「右折軌道」及び「左折軌道」については、自車両51のレーンチェンジに影響を及ぼす可能性が「停止軌道」及び「直進軌道」よりも低いため、予測対象とする必要性が低い。そのため、本実施形態では、「右折軌道」及び「左折軌道」を予測動作として選択していない
尤度推定部17は、自車両51が交差点を通過する前後での信号機201の状態変化を用いて、後方車両61の予測動作の尤度を推定する。
一般的には、信号機201の点灯色は、(1)交差点への進入が可能であることを意味する「青色」(あるいは「緑色」)、(2)交差点への進入が禁止されるが、交差点の停止位置で安全に止まることが難しい場合には交差点への進入が許可されることを意味する「黄色」、(3)交差点への進入が禁止されていることを意味する「赤色」、の3種類である。
図4Aに示すような自車両51が交差点に進入する直前の状態において、信号機201の点灯色は「青色」となっている。
図4Aに示す状態から時間が経過し、図4Bに示すように自車両51が交差点を通過した直後の状態になったとする。この状態において、信号機201の点灯色が「青色」になったとする(パターン1−1)。このパターン1−1の場合、後方車両61は交差点への進入を開始してそのまま隣接車線TL2を直進しているものと考えられる。すなわち、後方車両61が交差点を通過する確率は高いと考えられる。そのため、尤度推定部17は、「直進軌道」の尤度が「停止軌道」の尤度よりも大きいと推定する。
自車両51が交差点を通過した直後の状態において、信号機201の点灯色が「黄色」になったとする(パターン1−2)。このパターン1−2の場合、後方車両61が交差点を通過する確率は、上述したパターン1−1における確率よりも低いと考えられる。そのため、パターン1−1で推定する「直進軌道」の尤度に比べて、尤度推定部17は、「直進軌道」の尤度を小さく推定する。また、パターン1−1で推定する「停止軌道」の尤度に比べて、尤度推定部17は、「停止軌道」の尤度を大きく推定する。
自車両51が交差点を通過した直後の状態において、信号機201の点灯色が「赤色」になったとする(パターン1−3)。このパターン1−3の場合、後方車両61は交差点への進入を開始せず、交差点の手前で停止するものと考えられる。すなわち、後方車両61が交差点を通過する確率は、上述したパターン1−2における確率よりも更に低いと考えられる。そのため、パターン1−2で推定する「直進軌道」の尤度に比べて、尤度推定部17は、「直進軌道」の尤度を更に小さく推定する。また、パターン1−2で推定する「停止軌道」の尤度に比べて、尤度推定部17は、「停止軌道」の尤度を更に大きく推定する。
このように、尤度推定部17は、自車両51が交差点を通過した直後の状態における信号機201の点灯色が「青色」「黄色」「赤色」のいずれかであるかによって、この順番で後方車両61の「直進軌道」の尤度が順に小さくなるように推定する。また、この順番で後方車両61の「停止軌道」の尤度が順に大きくなるように推定する。
このように、動作予測部10は、信号機201の状態変化に基づいて後方車両61の動作を予測するため、例えば、図4Bに示すように自車両51の後方に他車両71が接近し、後方車両61が視認できない位置に隠れてしまう場合であっても、後方車両61の動作を予測できる。
走行シーンに基づいた予測方法が選択され、後方車両61の予測動作および予測動作の尤度が推定されるため、自車経路生成部31は、より安全で適切な経路を自車両51の経路として生成することができる。具体的には、自車経路生成部31は、後方車両61の「直進軌道」の尤度が小さいほど、通行禁止エリア101から離れた経路を自車両51の経路として生成することができる。図4Bには、自車両51の経路として、経路R1、経路R2、経路R3が生成される様子を示している。経路R1、経路R2、経路R3は、それぞれ上述のパターン1−1、パターン1−2、パターン1−3の場合に対応して生成される。
なお、信号機201の状態の取得には、種々の方法を用いることが可能である。例えば、自車両51がインフラストラクチャと通信可能である場合には、直接、通信によってインフラストラクチャから信号機201の点灯色を環境情報として取得してもよい。また、インフラストラクチャとの通信ができない場合であっても、自車両51に搭載されているカメラによって信号機201を検出し、点灯色を識別してもよい。さらに、信号機201の点灯色を識別できない場合であっても、走行する時間帯、交差点の前までの交通流の周期、自車線TL1と交わる交差車線を走行する他車両の動きなどから、信号機201の点灯色を予測してもよい。
通行禁止エリアの検出には、種々の方法を用いることが可能である。例えば、自車両51がインフラストラクチャと通信可能である場合には、直接、通信によってインフラストラクチャから通行禁止エリアの位置を取得してもよい。また、画像認識によって、道路上に配置されたカラーコーンを検出し、カラーコーンで囲まれた領域を、通行禁止エリアとして検出してもよい。もしくは、画像認識によって、路面標示された導流帯(ゼブラゾーン)を検出し、導流帯を通行禁止エリアとして検出してもよい。
(第2走行シーン)
次に、「第2走行シーン」を説明する。図5は、自車両51が隣接車線TL2を横切る走行シーン(第2走行シーン)を示す平面図である。
図5に示すように、自車両51が自車線TL1から方向転換して隣接車線TL2を横切る動作意図を有している場合(例えば、建物105に隣接する駐車場に進入するような場合)、自車両51の動作は、隣接車線TL2を走行する後方車両61の基本軌道に影響を及ぼす可能性がある。そのため、後方予測要否判定部21は、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。この判定に基づき、後方車両抽出部13は、図5に示す、隣接車線TL2を走行する後方車両61を抽出する。
環境情報抽出部25は、図5に示すように隣接車線TL2に障害物102が存在する状況であると判定した場合に、後方車両61が「第2走行シーン」に置かれていると判定する。すなわち、環境情報抽出部25は、環境情報に基づき、後方車両61に対応付けて第2走行シーンを抽出する。
第2走行シーンが抽出されたとき、予測方法選択部26は、後方車両61の動作の予測方法として、障害物102の状況に基づく予測方法を選択する。
図5で想定される後方車両61の動作候補は、障害物102を無視して隣接車線TL2を直進する「直進軌道」、障害物102の手前で減速する「減速軌道」、隣接車線TL2から自車線TL1にレーンチェンジする「LC軌道」のいずれかであると考えられる。これらの動作候補のうち、軌道予測部16は、自車両51の動作に影響を及ぼす可能性のある動作候補として「直進軌道」と「減速軌道」とを選択し、後方車両61の予測動作として設定する。「LC軌道」については、後述する「第8走行シーン」で取り扱うため、ここでは説明しない。
尤度推定部17は、隣接車線TL2の幅方向に沿って測った障害物102の幅ΔKが、隣接車線TL2のレーン幅ΔWに占める割合に基づいて、後方車両61の予測動作の尤度を推定する。
障害物102が隣接車線TL2を占有する割合が大きいほど、後方車両61は障害物102を無視して直進することが困難であることが予想される。そのため、尤度推定部17は、割合ΔK/ΔWが大きいほど、後方車両61の予測動作のうち「直進軌道」の尤度は小さいと推定する。逆に、尤度推定部17は、割合ΔK/ΔWが大きいほど、「減速軌道」の尤度が大きいと推定する。
走行シーンに基づいた予測方法が選択され、後方車両61の予測動作および予測動作の尤度が推定されるため、自車経路生成部31は、より安全で適切な経路を自車両51の経路として生成することができる。具体的には、自車経路生成部31は、後方車両61の「直進軌道」の尤度が大きいほど、隣接車線TL2を横切る前に自車両51が一時停止する経路を生成することができる。このような、自車両51が一時停止する経路を取ることにより、後方車両61が自車両51の横を通り過ぎた後に、自車両51が隣接車線TL2を横切るよう、自車両51を制御することができる。
また、自車経路生成部31は、後方車両61の「直進軌道」の尤度が大きいほど、自車両51がより短時間で隣接車線TL2を横切る経路を生成するものであってもよい。このような、自車両51が短時間で隣接車線TL2を横切る経路を取ることにより、後方車両61が自車両51に接近する前に、自車両51が隣接車線TL2を横切る動作を完了するよう、自車両51を制御することができる。
(第3走行シーン)
次に、「第3走行シーン」を説明する。図6は、自車両51が隣接車線TL2に向かってレーンチェンジする際の走行シーン(第3走行シーン)を示す平面図である。
図6に示すように、自車両51が自車線TL1から隣接車線TL2にレーンチェンジする動作意図を有している場合、自車両51の動作は、隣接車線TL2を走行する後方車両61の基本軌道に影響を及ぼす可能性がある。そのため、後方予測要否判定部21は、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。この判定に基づき、後方車両抽出部13は、図6に示す、隣接車線TL2を走行し、かつ、停留所BSよりも後方を走行する後方車両61を抽出する。すなわち、後方車両抽出部13は、停留所BSをまだ通り過ぎていない後方車両61を抽出する。
環境情報抽出部25は、図6に示すように隣接車線TL2に停留所BSが存在する状況であると判定した場合に、後方車両61が「第3走行シーン」に置かれていると判定する。すなわち、環境情報抽出部25は、環境情報に基づき、後方車両61に対応付けて第3走行シーンを抽出する。
第3走行シーンが抽出されたとき、予測方法選択部26は、後方車両61の動作の予測方法として、停留所BSの状態、後方車両61の車両種別、後方車両61の位置、及び、挙動に基づく予測方法を選択する。
図6で想定される後方車両61の動作候補は、停留所BSに停車する「停止軌道」と、停留所BSに停車せず隣接車線TL2を直進する「直進軌道」のいずれかであると考えられる。特に、後方車両61が停留所BSに対応する旅客自動車運送事業に係る車両である場合には、後方車両61は、停留所BSに停車する「停止軌道」を動作候補として有する。軌道予測部16は、自車両51のレーンチェンジに影響を及ぼす可能性のある動作候補として「停止軌道」と「直進軌道」とを選択し、後方車両61の予測動作として設定する。
尤度推定部17は、後方車両61が停留所BSに対応する旅客自動車運送事業に係る車両であるか否か、停留所BSで人が待っているか否かなどに基づいて、後方車両61の予測動作の尤度を推定する。
後方車両61が旅客自動車運送事業に係る車両であるか否かは、例えば画像認識によって検出される後方車両61の長さ、後方車両61の表面の文字、図形、記号、立体的形状、色彩や、その他、インフラストラクチャとの通信、車両間通信に基づいて得られる車両種別の情報を用いて、判定される。旅客自動車運送事業に係る車両としては、路線バスや、タクシーなどが挙げられる。
後方車両61が旅客自動車運送事業に係る車両であるかが確率付きで決定される場合、後方車両61が旅客自動車運送事業に係る車両である確率が高いほど、尤度推定部17は、停留所BSに停車する「停止軌道」の尤度が大きいと推定する。
停留所BSで人が待っているか否かは、例えば画像認識によって判定される。その他、停留所BSにいる人の携帯端末の位置情報に基づいて、判定するものであってもよい。
停留所BSで人が待っている場合、後方車両61は、待っている人を乗せるために停留所BSに停車する可能性が高いものと考えられる。そのため、尤度推定部17は、停留所BSで人が待っている場合には「停止軌道」の尤度が大きいと推定し、逆に停留所BSで人が待っていない場合には「停止軌道」の尤度が小さいと推定する。
上述の他、後方車両61の挙動に基づいて、尤度推定部17は「停止軌道」の尤度を推定してもよい。例えば、後方車両61が停留所BSに接近する際の、後方車両61の加速度に基づいて「停止軌道」の尤度を推定してもよい。後方車両61が停留所BSに停車しようとする場合には、後方車両61は減速する。この点に着目して、尤度推定部17は、後方車両61の加速度が減速方向の向きである場合に、「停止軌道」の尤度が大きく、「直進軌道」の尤度が小さいと推定してもよい。逆に、後方車両61の加速度が加速方向の向きである場合に、「停止軌道」の尤度が小さく、「直進軌道」の尤度が大きいと推定してもよい。
さらに、隣接車線TL2の幅方向に沿って測った後方車両61の中心位置と停留所BSの間の距離を距離Δx1として、尤度推定部17は、距離Δx1が小さいほど、「停止軌道」の尤度が大きく、「直進軌道」の尤度が小さいと推定してもよい。逆に、尤度推定部17は、距離Δx1が大きいほど、「停止軌道」の尤度が小さく、「直進軌道」の尤度が大きいと推定してもよい。
走行シーンに基づいた予測方法が選択され、後方車両61の予測動作および予測動作の尤度が推定されるため、自車経路生成部31は、より安全で適切な経路を自車両51の経路として生成することができる。具体的には、自車経路生成部31は、後方車両61の「直進軌道」の尤度が大きいほど、停留所BSあるいは後方車両61から離れた経路を自車両51のレーンチェンジのための経路として生成することができる。このような、自車両51が後方車両61から離れた経路を取ることにより、レーンチェンジの際に自車両51が後方車両61に接近して危険な状態となることを避けるよう、自車両51を制御することができる。
自車経路生成部31は、「直進軌道」の尤度が大きいほど、自車両51のレーンチェンジのための経路の生成を抑制するものであってもよい。自車両51のレーンチェンジが抑制されることで、自車両51が後方車両61に接近して危険な状態となることを避けるよう、自車両51を制御することができる。
(第4走行シーン)
次に、「第4走行シーン」を説明する。図7は、片側1車線の道路において、停車中の自車両51が発進しようとする際の走行シーン(第4走行シーン)を示す平面図である。
図7に示すように、自車両51が自車線TL1の路肩に停車している状態から、発進しようとしている状況を想定する。自車両51が発進する動作は、自車両51の停車位置よりも後方にあって、自車線TL1を走行中の後方車両61の基本軌道に影響を及ぼす可能性がある。そのため、後方予測要否判定部21は、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。この判定に基づき、後方車両抽出部13は、図7に示す、自車線TL1を走行する後方車両61を抽出する。
図7に示すように、自車線TL1に隣接している車線は、対向車線TL3とは進行方向が逆の対向車線TL3となっている。環境情報抽出部25は、自車線TL1に隣接している車線が対向車線TL3であり、かつ、自車両51の前方にあって対向車線TL3を走行している他車両72(対向車)が存在する状況であると判定した場合に、後方車両61が「第4走行シーン」に置かれていると判定する。すなわち、環境情報抽出部25は、環境情報に基づき、後方車両61に対応付けて第4走行シーンを抽出する。
第4走行シーンが抽出されたとき、予測方法選択部26は、後方車両61の動作の予測方法として、自車両51、後方車両61、他車両72の位置関係、及び、後方車両61と他車両72の挙動に基づく予測方法を選択する。
図7で想定される後方車両61の動作候補は、路肩に停車中の自車両51の横を通り抜けて、自車両51の前方に向けて進む「迂回軌道」と、自車両51の横を通り抜けず、発進した自車両51の後方を走行する「追従軌道」のいずれかであると考えられる。後方車両61が「迂回軌道」を取る場合、自車両51の横を通り抜ける際に、自車線TL1から対向車線TL3にはみ出し、その後、自車線TL1に戻る軌道を取る。軌道予測部16は、自車両51の動作に影響を及ぼす可能性のある動作候補として「迂回軌道」と「追従軌道」とを選択し、後方車両61の予測動作として設定する。
ここで、後方車両61の先頭から自車両51の先頭までの距離を距離ΔL11とし、他車両72の先頭から自車両51の先頭までの距離を距離ΔL12とし、後方車両61の速度を速度v61、他車両72の速度を速度v72とする。尤度推定部17は、距離ΔL11、距離ΔL12、速度v61、速度v72に基づいて、後方車両61の予測動作の尤度を推定する。
後方車両61が「迂回軌道」を取る場合、対向車線TL3を走る他車両72との接触を避ける必要があることから、他車両72が距離ΔL12を走り抜ける時間t12(=ΔL12/v72)に比べて、後方車両61が距離ΔL11を走り抜ける時間t11(=ΔL11/v61)の方が短い必要がある。また、他車両72と自車両51で挟まれる区間が、後方車両61が安全に進入可能な長さを有している必要がある。
この点に着目して、尤度推定部17は、割合t11/t12が1未満であり、かつ、割合t11/t12が小さいほど、「迂回軌道」の尤度が大きく、「追従軌道」の尤度が小さいと推定する。割合t11/t12が1以上である場合には、「迂回軌道」の尤度が小さく、「追従軌道」の尤度が大きいと推定する。
また、尤度推定部17は、距離ΔL12が大きいほど、「迂回軌道」の尤度が大きく、「追従軌道」の尤度が小さいと推定するものであってもよい。これは、距離ΔL12が大きいほど、後方車両61と他車両72が接近する可能性は低く、後方車両61が安全に「迂回軌道」を取ることが可能と考えられることによる。
走行シーンに基づいた予測方法が選択され、後方車両61の予測動作および予測動作の尤度が推定されるため、自車経路生成部31は、より安全で適切な経路を自車両51の経路として生成することができる。具体的には、自車経路生成部31は、後方車両61の「追従軌道」の尤度が大きく、「迂回軌道」の尤度が小さい場合に、自車両51が発進する経路を生成することができる。
逆に、後方車両61「追従軌道」の尤度が小さく、「迂回軌道」の尤度が大きい場合には、後方車両61が自車両51の横を通り過ぎるのを待ってから自車両51が発進するような経路を生成することができる。このように、後方車両61の動作候補を考慮した自車両51の経路を生成することで、自車両51の動作に起因して後方車両61が必要以上に対向車線TL3にはみ出す状況を防ぐことができ、後方車両61と対向車線TL3を走行中の他車両72が衝突する危険性を減らすことができる。
(第5走行シーン)
次に、「第5走行シーン」を説明する。図8は、自車両51が路肩に停車しようとする際の走行シーン(第5走行シーン)を示す平面図である。
図8に示すように、自車線TL1を走行中の自車両51が、自車線TL1の路肩の位置P1に停車しようとしている状況を想定する。自車両51が路肩に停車する動作は、自車両51の停車位置よりも後方にあって、自車線TL1を走行中の後方車両61の基本軌道に影響を及ぼす可能性がある。そのため、後方予測要否判定部21は、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。この判定に基づき、後方車両抽出部13は、図8に示す、自車線TL1を走行する後方車両61を抽出する。
環境情報抽出部25は、図8に示すように自車両51と抽出した後方車両61との間に他車両73(後続車)が存在する状況であると判定した場合に、後方車両61が「第5走行シーン」に置かれていると判定する。すなわち、環境情報抽出部25は、環境情報に基づき、後方車両61に対応付けて第5走行シーンを抽出する。
第5走行シーンが抽出されたとき、予測方法選択部26は、後方車両61の動作の予測方法として、後方車両61の位置、及び、挙動に基づく予測方法を選択する。
図8では、特に後方車両61として、バイクや自転車など、車幅の狭い小型車両を想定している。想定される後方車両61の動作候補は、他車両73の横を通り抜けて、自車線TL1の路肩を走行して自車両51に接近する「路肩走行軌道」と、他車両73の横を通り抜けず、他車両73の後方を走行する「追従軌道」のいずれかであると考えられる。軌道予測部16は、自車両51の動作に影響を及ぼす可能性のある動作候補として「路肩走行軌道」と「追従軌道」とを選択し、後方車両61の予測動作として設定する。
ここで、自車線TL1の幅方向に沿って測った他車両73の中心位置から自車線TL1の端までの距離を距離Δx2とする。尤度推定部17は、後方車両61の車幅、距離Δx2に基づいて、後方車両61の予測動作の尤度を推定する。
後方車両61の車幅は、例えば画像認識によって検出される。後方車両61の車幅が小さいほど、後方車両61が自車線TL1の路肩を走行して他車両73の横を通り抜けることで、後方車両61が他車両73の前方に向けて進みやすいと考えられる。また、距離Δx2が大きいほど、同様に、後方車両61が他車両73の前方に向けて進みやすいと考えられる。
この点に着目して、尤度推定部17は、後方車両61の車幅が小さいほど、あるいは、距離Δx2が大きいほど、「路肩走行軌道」の尤度が大きく、「追従軌道」の尤度が小さいと推定する。
走行シーンに基づいた予測方法が選択され、後方車両61の予測動作および予測動作の尤度が推定されるため、自車経路生成部31は、より安全で適切な経路を自車両51の経路として生成することができる。具体的には、自車経路生成部31は、後方車両61の「路肩走行軌道」の尤度が小さく、「追従軌道」の尤度が大きい場合に、自車両51が停車する経路を生成することができる。
逆に、後方車両61の「路肩走行軌道」の尤度が大きく、「追従軌道」の尤度が小さい場合には、自車両51が停車する経路の生成を抑制することができる。このように、後方車両61の動作候補を考慮した自車両51の経路を生成することで、自車両51に後方車両61が接近して追突してしまう危険性を減らすことができる。
(第6走行シーン)
次に、「第6走行シーン」を説明する。図9は、片側2車線の道路において交差点を自車両51が通過した直後であって、交差点で交わる車線から他車両74が交差点に進入しようとする際の走行シーン(第6走行シーン)を示す平面図である。
図9は、図4Bに示す状態に似ているが、交差点に他車両74が進入している点で異なっている。ここでは、交差点で自車線TL1と隣接車線TL2と交差する交差車線を交差車線TL5、交差車線TL6として示している。他車両74は、交差車線TL6から隣接車線TL2に向けて、交差点内で左折しようとしている。自車両51、後方車両61から見ると、他車両74は、自車両51及び後方車両61の進行方向に対して側方から接近する車両である。
自車両51が自車線TL1から隣接車線TL2にレーンチェンジする状況を想定する。この場合、後方予測要否判定部21は、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。この判定に基づき、後方車両抽出部13は、図9に示す、隣接車線TL2を走行する後方車両61を抽出する。
環境情報抽出部25は、自車両51及び後方車両61の前方に交差点が存在し、交差車線TL5および交差車線TL6から交差点に向けて他車両74(側方車両)が進入してくる状況であると判定した場合に、後方車両61が「第6走行シーン」に置かれていると判定する。すなわち、環境情報抽出部25は、環境情報に基づき、後方車両61に対応付けて第6走行シーンを抽出する。
第6走行シーンが抽出されたとき、予測方法選択部26は、後方車両61の動作の予測方法として、交差車線TL5あるいは交差車線TL6から交差点に向けて進入してくる他車両74の動作に基づく予測方法を選択する。
第1走行シーンでの説明と同様、図9で想定される後方車両61の動作候補は、交差点手前で停止する「停止軌道」、交差点に進入する「直進軌道」、「右折軌道」、「左折軌道」のいずれかであると考えられる。これらの動作候補のうち、軌道予測部16は、自車両51のレーンチェンジに影響を及ぼす可能性のある動作候補として「停止軌道」と「直進軌道」とを選択し、後方車両61の予測動作として設定する。
尤度推定部17は、他車両74の速度に基づいて、後方車両61の予測動作の尤度を推定する。
後方車両61が「直進軌道」を取る場合、側方から接近する他車両74は、後方車両61との接触を避けるために減速しながら交差点に進入するものと考えられる。一方、後方車両61が「停止軌道」を取る場合、他車両74は、後方車両61との接触を避ける必要がないことから、減速することなく、交差点に進入することが考えられる。
この点に着目して、尤度推定部17は、側方から交差点に進入する他車両74の速度が大きいほど、後方車両61の「直進軌道」の尤度が小さく、「停止軌道」の尤度が大きいと推定する。逆に、他車両74の速度が小さいほど、後方車両61の「直進軌道」の尤度が大きく、「停止軌道」の尤度が小さいと推定する。
このように、動作予測部10は、他車両74の速度に基づいて後方車両61の動作を予測するため、例えば、自車両51の後方に他車両71が接近し、後方車両61が視認できない位置に隠れてしまう場合であっても、後方車両61の動作を予測できる。
第1走行シーンでの説明と同様、図9に示す第6走行シーンにおいても、走行シーンに基づいた予測方法が選択され、後方車両61の予測動作および予測動作の尤度が推定されるため、自車経路生成部31は、より安全で適切な経路を自車両51の経路として生成することができる。
(第7走行シーン)
次に、「第7走行シーン」を説明する。図10は、自車両51の前方において道路の合流点が存在する走行シーン(第7走行シーン)を示す平面図である。
図10に示すように、自車両51の前方で、自車線TL1が合流車線TL7と合流している場合、自車両51の動作は合流車線TL7を走行する後方車両61の基本軌道に影響を及ぼす可能性がある。そのため、後方予測要否判定部21は、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。この判定に基づき、後方車両抽出部13は、図10に示す、合流車線TL7を走行する後方車両61を抽出する。
環境情報抽出部25は、自車両51が走行する自車線TL1と、後方車両61が走行する合流車線TL7とが、自車両51の前方の合流点で合流する状況であると判定した場合に、後方車両61が「第7走行シーン」に置かれていると判定する。すなわち、環境情報抽出部25は、環境情報に基づき、後方車両61に対応付けて第7走行シーンを抽出する。
第7走行シーンが抽出されたとき、予測方法選択部26は、後方車両61の動作の予測方法として、自車両51および後方車両61の位置関係、挙動に基づく予測方法を選択する。
図9で想定される後方車両61の動作候補は、直進して自車両51よりも前方を走る「第1直進軌道」と、直進して自車両51の後方を走る「第2直進軌道」のいずれかであると考えられる。軌道予測部16は、自車両51の動作に影響を及ぼす可能性のある動作候補として「第1直進軌道」と「第2直進軌道」とを選択し、後方車両61の予測動作として設定する。
ここで、自車両51の先頭から合流点までの距離を距離ΔL21とし、後方車両61の先頭から合流点までの距離を距離ΔL22とし、自車両51の速度を速度v51、後方車両61の速度を速度v61とする。尤度推定部17は、距離ΔL21、距離ΔL22、速度v51、速度v61に基づいて、後方車両61の予測動作の尤度を推定する。
自車両51が距離ΔL21を走り抜ける時間t21(=ΔL21/v51)に比べて、後方車両61が距離ΔL22を走り抜ける時間t22(=ΔL22/v61)の方が短い場合、後方車両61は自車両51よりも先に合流点に到達すると考えられる。逆に、t21に比べて、t22の方が長い場合、後方車両61は自車両51よりも後に合流点に到達すると考えられる。
この点に着目して、尤度推定部17は、割合t21/t22が小さいほど、「第1直進軌道」の尤度が大きく、「第2直進軌道」の尤度が小さいと推定する。逆に、尤度推定部17は、割合t21/t22が大きいほど、「第1直進軌道」の尤度が小さく、「第2直進軌道」の尤度が大きいと推定する。
また、図示していないが、合流点と後方車両61の間に通行禁止エリアが存在し、後方車両61が合流点に到達することができないことが明らかである場合には、尤度推定部17は、「第1直進軌道」の尤度が極めて小さいとして推定するものであってもよい。
走行シーンに基づいた予測方法が選択され、後方車両61の予測動作および予測動作の尤度が推定されるため、自車経路生成部31は、より安全で適切な経路を自車両51の経路として生成することができる。具体的には、自車経路生成部31は、後方車両61の「第1直進軌道」の尤度と「第2直進軌道」の尤度とを比較して、いずれかが十分に大きい場合には、合流点で自車両51と後方車両61が接触する可能性が低いと判定して、自車両51が速度を維持したまま、合流点に到達する経路を生成することができる。
また、「第1直進軌道」の尤度と「第2直進軌道」の尤度とが同程度である場合には、合流点で自車両51と後方車両61が接触する可能性が高いと判定して、自車両51が減速あるいは加速して、合流点に到達する経路を生成することができる。自車両51の減速、もしくは、加速により、合流点に到達するまでの時間が変化するため、合流点で自車両51と後方車両61が接触する危険性を減らすことができる。
(第8走行シーン)
次に、「第8走行シーン」を説明する。図11は、自車両51の前方において隣接車線TL2に通行禁止エリア101が存在する走行シーン(第8走行シーン)を示す平面図である。
図11に示すように、自車両51が、自車両51の前方であって隣接車線TL2に存在する通行禁止エリア101の横を通り過ぎて直進しようとしている状況を想定する。通行禁止エリア101が存在することによって、後方車両61は隣接車線TL2から自車両51が走行する自車線TL1へのレーンチェンジをする必要がある。後方車両61の動作候補として、自車両51を追い越して自車両51の前方でレーンチェンジする「第1LC軌道」と、自車両51を追い越さずに自車両51の後方でレーンチェンジする「第2LC軌道」の、2種類の「LC軌道」を有する。
自車両51が隣接車線TL2に存在する通行禁止エリア101の横をどのように通り過ぎるかで、隣接車線TL2を走行する後方車両61の基本軌道に影響を及ぼす可能性がある。そのため、後方予測要否判定部21は、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。この判定に基づき、後方車両抽出部13は、図11に示す、隣接車線TL2を走行する後方車両61を抽出する。
環境情報抽出部25は、図11に示すように隣接車線TL2に通行禁止エリア101が存在する状況であると判定した場合に、後方車両61が「第8走行シーン」に置かれていると判定する。すなわち、環境情報抽出部25は、環境情報に基づき、後方車両61に対応付けて第8走行シーンを抽出する。
第8走行シーンが抽出されたとき、予測方法選択部26は、後方車両61の動作の予測方法として、自車両51および後方車両61の位置関係、挙動に基づく予測方法を選択する。
ここで、第8走行シーンは、先に説明した第7走行シーンと似たような状況となっている。すなわち、図11に示す、自車線TL1上の、通行禁止エリア101に近接する位置を、第7走行シーンにおける仮想合流点とみなせば、仮想合流点において、自車線TL1と隣接車線TL2が合流していると見ることができる。
そこで、軌道予測部16は、自車両51の動作に影響を及ぼす可能性のある動作候補として「第1LC軌道」と「第2LC軌道」とを選択し、後方車両61の予測動作として設定する。
自車両51の先頭から通行禁止エリア101までの距離を距離ΔL31とし、後方車両61の先頭から通行禁止エリア101までの距離を距離ΔL32とする。第7走行シーンで説明した予測方法において、距離ΔL21、距離ΔL22の代わりに、距離ΔL31、距離ΔL32をそれぞれ用いることにより、尤度推定部17は、第8走行シーンにおいて、後方車両61の「第1LC軌道」及び「第2LC軌道」の尤度を推定する。
第7走行シーンでの説明と同様、図11に示す第8走行シーンにおいても、走行シーンに基づいた予測方法が選択され、後方車両61の予測動作および予測動作の尤度が推定されるため、自車経路生成部31は、より安全で適切な経路を自車両51の経路として生成することができる。
(第9走行シーン)
次に、「第9走行シーン」を説明する。図12は、自車両51が路肩に停車しようとする際に、自車両51の後方の停止線P10の位置に後方車両61が存在する走行シーン(第9走行シーン)を示す平面図である。
図12に示すように、自車線TL1を走行中の自車両51が、自車線TL1の路肩の位置P2に停車しようとしている状況を想定する。自車両51が路肩に停車する動作は、自車両51の停車位置よりも後方にあって、自車線TL1を走行中の後方車両61の基本軌道に影響を及ぼす可能性がある。そのため、後方予測要否判定部21は、後方車両61の動作を予測する必要があると判定する。この判定に基づき、後方車両抽出部13は、図12に示す、自車線TL1を走行する後方車両61を抽出する。
環境情報抽出部25は、図12に示すように、後方車両61が、自車両51の後方の停止線P10に存在する状況であると判定した場合に、後方車両61が「第9走行シーン」に置かれていると判定する。すなわち、環境情報抽出部25は、環境情報に基づき、後方車両61に対応付けて第9走行シーンを抽出する。
第9走行シーンが抽出されたとき、予測方法選択部26は、後方車両61の動作の予測方法として、停止線P10の位置における、後方車両61からの前方および側方の見通しのよさに基づく予測方法を選択する。
軌道予測部16は、図12で想定される後方車両61の動作候補のうち、自車両51の動作に影響を及ぼす可能性のある動作候補として、交差点を通過して直進して自車両51に接近する「第1直進軌道」と、「第1直進軌道」よりも遅い速度で自車両51に接近する「第2直進軌道」を予測対象として設定する。
停止線P10の位置における後方車両61の見通しの良さは、後方車両61からの視線VL1と視線VL2で囲まれる、角度θによって定義される。ここで、後方車両61から交差点に連結する道路を視認しようとしたとき、後方車両61の進行方向に向かって左右に存在する建物110と建物120によって、後方車両61からの視界が妨げられる。後方車両61から視認可能な領域と視認不可能な領域の境目を表す線を、視線VL1、視線VL2としている。
建物110および建物120が存在しない場合、後方車両61から交差点に連結する道路の全体を見渡すことができる。この場合には、停止線P10の位置での前方と側方の見通しは良いと言える。
一方、建物110および建物120によって視界が妨げられる場合には、停止線P10の位置での前方と側方の見通しは悪いと言える。見通しが良い場合に比べて、見通しは悪い場合には、角度θは小さな値を取る。また、後方車両61は、遅い速度で交差点に進入するものと考えられる。
この点に着目して、尤度推定部17は、停止線P10の位置における後方車両61からの前方および側方の見通しのよさを表す指標として角度θを用い、尤度推定部17は、角度θが大きいほど、「第1直進軌道」の尤度が大きく、「第2直進軌道」の尤度が小さいと推定する。
走行シーンに基づいた予測方法が選択され、後方車両61の予測動作および予測動作の尤度が推定されるため、自車経路生成部31は、より安全で適切な経路を自車両51の経路として生成することができる。具体的には、自車経路生成部31は、後方車両61の「第1直進軌道」の尤度が大きいほど、交差点から離れた位置を、自車両51が停車するための位置P2とし、停車するための経路を生成することができる。後方車両61が、高速で交差点を通過して自車両51に接近すると予測される場合に、交差点に近い位置での自車両51の停車を抑制することができるため、自車両51が後方車両61に接近して危険な状態となることを避けるよう、自車両51を制御することができる。
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置では、自車両の後方に位置する後方車両を検出し、後方車両が置かれた環境を検出し、後方車両が置かれた環境に基づいて、前記後方車両の動作を予測する。後方車両以外の物体の状況など、後方車両が置かれた環境を用いて後方車両の動作を予測することができるため、後方車両の動作の予測精度が向上する。
さらに、後方車両の予測精度の向上に伴って、後方車両の動作に起因する自車両の挙動の急変が抑制され、乗員に与える違和感を軽減することができる。
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置では、後方車両が置かれた環境の種類の検出として、後方車両が置かれた環境から走行シーンを抽出する。そして、走行シーンに対応する予測方法を用いて後方車両の動作を予測する。これにより、走行シーンに応じて、走行シーンが後方車両の動作に与える影響を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
さらに、後方車両が置かれた環境から抽出される走行シーンは1つに限られず、同時に複数の走行シーンが抽出されうる。そのため、複数の走行シーンのそれぞれに対応して、複数の予測方法を同時に用いることができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
また、第1走行シーンで説明したように、自車両の周囲の信号の状態を検出し、信号の状態に基づいて、後方車両の動作を予測する。これにより、自車両の周囲の信号が後方車両に与える影響を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
さらに、第2走行シーンで説明したように、後方車両の周囲に、後方車両の走行に影響を与える障害物がある場合には、障害物の状況に基づいて、後方車両の動作を予測する。これにより、障害物が後方車両に与える影響を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
また、第3走行シーンで説明したように、自車両の周囲に、旅客自動車運送事業に係る停車場所があるか否かを判定し、停車場所がある場合には、後方車両が旅客自動車運送事業に対応する車両であるか否かに基づいて、後方車両の動作を予測する。停車場所の存在が後方車両に与える影響を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
さらに、第4走行シーン、第5走行シーン、第6走行シーンで説明したように、後方車両の周囲を走行する他車両の属性(対向車、後続車、側方車両のいずれであるか、及び、他車両の動作)を検出し、検出した他車両の属性に基づいて、後方車両の動作を予測する。これにより、他車両の属性が後方車両に与える影響を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
また、第6走行シーンで説明したように、自車両が交差点を走行する場合には、後方車両の動作の予測尤度を、自車両が走行する車線と交差点で交わる交差車線に位置する他車両の走行状態に基づいて算出する。これにより、交差車線に位置する他車両が後方車両に与える影響を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
さらに、第7走行シーンで説明したように、後方車両の周囲の道路構造を検出し、道路構造に基づいて後方車両の動作を予測する。これにより、道路構造が後方車両に与える影響を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
また、第8走行シーンで説明したように、後方車両の周囲の通行禁止エリアを検出し、通行禁止エリアがある場合には、通行禁止エリアに基づいて後方車両の動作を予測する。これにより、道路構造が後方車両に与える影響を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
さらに、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置では、後方車両の挙動を検出して記録しておき、後方車両が置かれた環境における後方車両の挙動に基づいて、後方車両の動作を予測するものであってもよい。これにより、後方車両自身の挙動を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
また、本実施形態に係る走行支援方法及び走行支援装置では、自車両の前方状況を検出し、前方状況に基づいて、後方車両の動作を予測するものであってもよい。これにより、自車両の前方の状況が後方車両に与える影響を加味して後方車両の動作を予測することができ、その結果、後方車両の動作の予測精度が向上する。
さらに、各走行シーンで説明したように、後方車両の動作を予測する際に、後方車両が置かれた環境に基づいて、後方車両の動作候補の尤度を合わせて算出するようにしてもよい。これにより、後方車両の動作を適切に予測できる。さらには、後方車両が取り得る動作候補に対応した、適切な自車両の走行支援を行うことができるようになる。
また、各走行シーンで説明したように、後方車両の動作を予測した後、予測結果に基づいて自車両の走行を制御するようにしてもよい。これにより、後方車両の動作を正確に予測した上で自車両を制御することができるため、自車両および後方車両の周囲の状況に合わせて、自車両を適切に制御できるようになる。
[その他の実施形態]
その他の変形例として、各走行シーンにおいて、自車両51から後方車両61が視認可能であるか否かの情報に基づいて、後方車両61の動作候補の尤度を算出するものであってもよい。
例えば、図13に示すように、自車両51の後方を走行する他車両71の存在によって、後方車両61が死角領域DR2に位置する場合を想定する。自車両51から視認可能な領域として図13には、視認可能領域DR1および視認可能領域DR3を示している。
自車両51の上方から空中から眺めた図において、視認可能領域DR1と視認可能領域DR3の領域面積の合計である領域面積A1と、死角領域DR2の領域面積A2とを比較する。ここで、割合A1/A2が大きいほど、後方車両61は自車両51から離れた場所に位置すると考えられる。そのため、割合A1/A2が大きいほど、後方車両61が取り得る動作候補のうち、自車両51に接近するような動作候補の尤度を小さく推定するものであってもよい。
実施形態では、自車両51が走行する車線は片側1車線あるいは片側2車線の場合を例示したが、3車線以上の車線を走行する場合でもってもよい。また、実施形態では、右側通行の場合を例示したが、左側通行の場合であっても本発明を適用可能である。
実施形態では、自車両51が自動運転車両である場合を例示したが、自車両51が手動運転車両であってもよい。この場合、車両制御部32の代わりに、音声或いは画像などを用いて、ステアリング、アクセル、ブレーキの操作を運転者に対して案内するためのスピーカ、ディスプレイ、及びこれらのユーザインターフェースを制御するコントローラを備えていればよい。
記載された機能や処理の各々は、一つ以上の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサや、電気回路などが含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置や、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素なども含まれる。
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。この開示の一部をなす論述および図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。