以下、本発明の一実施の形態に係る車両制御装置及び車両制御方法を図面に基づき説明する。なお、本実施形態では、車両に搭載される車両制御装置を例示して本発明を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両の走行制御システム100の構成を示す図である。走行制御システム100は、車両に搭載されており、車両の走行を制御する。図1に示すように、走行制御システム100は、自車位置検出装置1と、地図データベース2と、車速センサ3と、測距センサ4と、カメラ5と、入力装置6と、ナビゲーション装置7と、通信装置8と、駆動機構9と、車両制御装置10とを備える。これら装置は、相互に情報の授受を行うためにCAN(Controller Area Network)その他の車載LANによって接続されている。
自車位置検出装置1は、GPSユニットを備えている。自車位置検出装置1は、複数の衛星通信から送信される電波をロケータ(GPSアンテナ)により検出して、自車両の位置情報を、周期的に取得する。自車位置検出装置1は、取得した自車両の位置情報と、ジャイロセンサ(図示しない)から取得した角度変化情報と、車速センサ3から取得した車速とに基づき、自車両の現在位置を検出する。また、自車位置検出装置1は、周知のマップマッチング技術を用いて、自車両の位置を検出することもできる。自車位置検出装置1により検出された自車両の位置情報は、車両制御装置10に出力される。
地図データベース2は、地図情報を格納する。地図データベース2は、車両制御装置10からのアクセスに応じて、地図情報を車両制御装置10に出力する。本実施形態では、地図情報は、各地図座標における道路の属性情報及び施設に関する情報と、交通規則情報を含む。これらの情報は、ノード、及び/又はノード間を接続するリンクに対応付けられる。リンクは車線レベルで識別される。地図情報は、自動運転に適した高精度地図情報であってもよい。なお、本実施形態では、自車両が地図データベース2を備える構成を例に挙げて説明するが、車両外部に設けられたサーバが地図データベース2を備える構成であってもよい。この場合、車両制御装置10は、後述する通信装置8を介して、サーバから地図情報を取得する。また地図情報は、可搬型の記憶装置(例えば、外付けHDD、フラッシュメモリ)に予め記録されていてもよい。この場合、車両制御装置10と記憶装置とを電気的に接続することで、記憶装置は地図データベース2として機能する。
道路の属性としては、例えば、交差点、カーブ、坂道、狭路、直線路、合流地点などが挙げられる。地図情報は、地図上の各地点における道路の属性を特定できる態様で構成される。施設に関する情報としては、例えば、施設の種別、施設利用時に利用可能な駐車場の有無、施設の利用可能な時間帯などが挙げられる。地図情報は、地図上の各地点における施設を特定できる態様で構成される。交通規則情報としては、例えば、経路上における一時停止、駐車/停車禁止、徐行、制限速度、車線変更禁止など、車両が走行時に遵守すべき交通に関する規則が挙げられる。地図情報は、地図上の各地点における交通規則を特定できる態様で構成される。なお、上記道路の属性、施設に関する情報、及び交通規則情報の内容は一例であって、これらの情報を限定するものではない。
車速センサ3は、ドライブシャフトなどの駆動系の回転速度を計測し、これに基づき自車両の走行速度(以下、車速ともいう)を検出する。車速センサ3により検出された自車両の車速情報は車両制御装置10に出力される。
測距センサ4は、自車両の周囲に存在する対象物を検出する。測距センサ4は、自車両の位置に対する対象物の相対位置、自車両から対象物までの距離と、自車両の車速に対する対象物の相対車速を演算する。測距センサ4により検出された対象物の情報は、車両制御装置10に出力される。測距センサ4が検出する対象物としては、例えば、同一車線上及び/又は隣接車線上を走行する一又は複数の車両、自転車、オートバイ、障害物、道路標識、施設などが挙げられるが、これらに限定されない。測距センサ4としては、レーザーレーダー、ミリ波レーダーなど(LRF等)を用いることができる。測距センサ4は、例えば、自車両の前方、側方、及び後方にそれぞれ設けられ、自車両の周囲全域に存在する対象物を検出する。
カメラ5は、自車両の周囲に存在する対象物を撮像する。カメラ5により撮像された対象物の撮像画像は、車両制御装置10に出力される。カメラ5が撮像する対象物としては、例えば、同一車線上及び/又は隣接車線上を走行する一又は複数の車両、自転車、オートバイ、障害物、道路標識、施設、白線を含む路面標示などが挙げられるが、これらに限定されない。カメラ5は、例えば、自車両の前方、側方、及び後方にそれぞれ設けられ、自車両の周囲全域に存在する対象物を撮像する。
測距センサ4の検出範囲及びカメラ5の撮像範囲について説明する。本実施形態では、測距センサ4は、同一車線上で自車両よりも前方を走行する、少なくとも2台の他車両を検出することができる。またカメラ5も、同一車線上で自車両よりも前方を走行する、少なくとも2台の他車両を撮像することができる。以降の説明では、自車両が走行する車線と同じ車線を自車両よりも前方で走行する他車両であって、自車両に対して最も近い位置を走行する他車両を、「先行車両」と称して説明する。また自車両が走行する車線と同じ車線を先行車両よりも前方で走行する他車両であって、先行車両に対して最も近い位置を走行する他車両を、「先々行車両」と称して説明する。なお、測距センサ4は、先行車両及び先々行車両以外の他車両を検出可能な検出範囲を有していてもよい。またカメラ5も、先行車両及び先々行車両以外の他車両を撮像可能な撮像範囲を有していてもよい。また測距センサ4の検出範囲とカメラ5の撮像範囲は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
入力装置6は、ドライバーが操作可能な操作部材である。本実施形態において、ドライバーは入力装置6を操作することで、自動運転制御のオン/オフを設定することができる。自動運転制御は、後述する車両制御装置10によって行われる。なお、本実施形態に係る車両の自動運転制御では、自車両の前方に先行車両が存在する場合、先行車追従制御が行われる。先行車追従制御とは、自車両と先行車両との車間距離をドライバーにより設定された車間距離に保ちながら先行車両を追従するように、自車両を走行させる制御である。一方、自車両の前方に先行車両が存在しない場合、ドライバーにより設定された車速で自車両を走行させる速度制御が行われる。ドライバーは、入力装置6を介して、先行車追従制御における設定車間距離(例えば、短、中、長の三段階)及び速度制御における自車両の設定車速(例えば、具体的な速度値)を設定することができる。
ナビゲーション装置7は、自車位置検出装置1により検出された自車両の位置情報に基づき、自車両の現在位置から目的地までの経路を示してドライバーを誘導する装置である。ナビゲーション装置7は、地図データベース2から地図情報を取得し、自車両の位置情報と目的地の位置情報から、自車両の走行ルート(走行経路ともいう)を演算する。自車両の走行ルートは、車両制御装置10に出力される。自車両の走行ルートは、実際に自車両が走行した経路、及びこれから自車両が走行する予定の経路を含む。
通信装置8は、他車両に搭載された通信装置、自車両の外部に設けられたサーバ又はシステムと通信可能な装置である。通信装置8としては、例えば、4G LTEのモバイル通信機能を備えたデバイス、Wifi通信機能を備えたデバイス等が挙げられるが、これらに限定されない。
通信装置8は、他車両に搭載された通信装置から、他車両に関する情報を取得する。自車両と他車両で行われる通信は、車車間通信と称される。他車両に関する情報としては、例えば、他車両の車速情報、他車両の位置情報、他車両の走行制御情報が挙げられる。他車両の車速情報は、他車両の車速の絶対値、又は自車両の車速に対する他車両の相対車速で表される。他車両の位置情報は、地図上での座標、又は自車両の位置に対する他車両の相対位置(相対的な座標)で表される。他車両の走行制御情報としては、例えば、他車両で実行されている走行制御の種別、各走行制御における設定値などが挙げられる。なお、上記の他車両に関する情報は一例であって、これらに限定されない。通信装置8により取得された他車両に関する情報は、車両制御装置10に出力される。
また通信装置8は、車車間通信に限られず、道路に設けられた情報発信装置(ビーコン)又はFM多重放送等により、道路交通情報通信システム(Vehicle Information and Communication System, VICS(登録商標)、以下同じ)とも通信することができる。例えば、VICSが車両の位置情報及び車速情報を含むプローブデータに基づき交通情報を管理している場合、通信装置8は、VICSから、上記の例に挙がったような他車両に関する情報を取得することもできる。
また通信装置8は、他車両との通信に限られず、自車両の外部に設けられたサーバ又はシステムとも通信できる。通信装置8は、自車両の外部に設けられたサーバ又はシステムから、サーバ又はシステムに格納された地図情報を取得することもできる。
駆動機構9は、自車両を自動走行させるためのエンジン及び/又はモータ(動力系)、ブレーキ(制動系)およびステアリングアクチュエータ(操舵系)などを含む。また駆動機構9は、これらの装置を制御するための各種制御機構を含む。駆動機構9には、車両制御装置10から各種制御信号が入力される。例えば、駆動機構9に自車両を隣接車線へ車線変更させるための制御信号が入力されると、駆動機構9は、制御信号に応じて、自車両の移動に必要な操舵角、移動車速に応じたアクセル踏み込み量又はブレーキ踏み込み量を算出する。駆動機構9は、算出された操舵角に応じて、自車両のステアリングの操舵方向及び操舵量を制御する。また駆動機構9は、算出されたアクセル踏み込み量に応じて、自車両のアクセル開度を制御する。また駆動機構9は、算出されたブレーキ踏み込み量に応じて、自車両のブレーキ開度を制御する。このような駆動機構9の制御によって、自車両は自動的又は自律的に隣接車線へ車線変更することができる。なお、車線変更の制御を実行する場合、駆動機構9は、方向指示器(図示しない)の点灯及び消灯の制御も行う。
駆動機構9に含まれる各種機構の制御は、完全に自動で行われてもよいし、ドライバーの運転操作を支援する態様で行われてもよい。各種機構の制御は、ドライバーの介入操作により中断又は中止させることができる。駆動機構9による走行制御の方法は、上記の制御方法に限られず、その他の周知の方法を適用することができる。
車両制御装置10は、自車位置検出装置1、地図データベース2、車速センサ3、測距センサ4、カメラ5、入力装置6、ナビゲーション装置7、及び通信装置8から入力される情報に基づき、自車両の走行を制御するための制御信号を生成し、制御信号を駆動機構9に出力する。
車両制御装置10は、ハードウェア及びソフトウェアを備えたコンピュータにより構成され、プログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成されている。なお、動作回路としては、CPUに代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。図1に示す制御装置11はCPUに相当する。制御装置11は、ROM及びRAMを備えている。
なお、本実施形態では、制御装置11により実行されるプログラムがROMに予め記憶されている構成を例に挙げて説明するが、プログラムが記憶される場所はROMに限定されない。例えば、プログラムは、コンピュータが読み取ることができ、かつ、可搬型のコンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、ディスクメディア、フラッシュメモリなど)に記憶されていてもよい。この場合、制御装置11は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体からプログラムをダウンロードし、ダウンロードしたプログラムを実行する。言い換えると、車両制御装置10が動作回路のみを備え、プログラムを外部からダウンロードする構成であってもよい。
図2は、制御装置11が実現する機能を模式的に表したブロック図である。図2に示すように、制御装置11には、情報取得部21と、先行車追従制御部22と、周辺状況認識部23と、追従走行認識部24と、状況変化認識部25と、移動先候補特定部26と、車間制御部27と、車線変更制御部28が含まれる。これらのブロックは、ROMに確立されたソフトウェアによって、後述する各機能を実現する。なお、本実施形態では、制御装置11が有する機能を8つのブロックとして分けた上で、各機能ブロックの機能を説明するが、制御装置11の機能は必ずしも8つのブロックえ分ける必要はなく、7以下の機能ブロック、あるいは、9つ以上の機能ブロックで分けてもよい。
情報取得部21について説明する。情報取得部21は、自車位置検出装置1、地図データベース2、車速センサ3、測距センサ4、カメラ5、入力装置6、ナビゲーション装置7、通信装置8のそれぞれから、各種情報を取得する。
情報取得部21は、自車位置検出装置1から自車両の位置情報を取得する。情報取得部21は、地図データベース2から地図情報を取得する。情報取得部21は、車速センサ3から自車両の車速情報を取得する。情報取得部21は、ナビゲーション装置7から自車両の走行ルートの情報を取得する。
情報取得部21は、自車両の周辺情報として、測距センサ4、カメラ5、及び通信装置8から、自車両の周辺に存在する対象物の情報を取得する。測距センサ4から取得する情報としては、例えば、自車両の車速に対する他車両の相対車速、自車両の位置に対する他車両の相対位置、自車両から他車両までの距離が挙げられる。カメラ5から取得する情報としては、例えば、他車両の撮像画像、施設の撮像画像、道路標識の撮像画像、路面の撮像画像などが挙げられる。通信装置8から取得する情報としては、例えば、自車両の車速に対する他車両の相対車速、自車両の位置に対する他車両の相対位置、自車両から他車両までの距離、他車両の走行制御情報が挙げられる。なお、上記説明において、他車両は、先行車両及び先々行車両に限られず、その他の他車両を含む。他車両の走行制御情報としては、例えば、前方車両との車間距離を保つように追従して走行する追従走行を他車両が走行制御によって行っているか否かを示す情報が挙げられる。
情報取得部21は、入力装置6から自動運転制御の設定に関する情報を取得する。例えば、ドライバーにより自動運転制御がオンに設定された場合、情報取得部21は、自動運転制御が有効なことを示す情報を取得する。また、ドライバーが先行車追従制御における設定車間距離及び速度制御における設定車速を設定した場合、情報取得部21は、設定車間距離及び設定車速の情報を取得する。
先行車追従制御部22について説明する。先行車追従制御部22は、先行車両との車間距離を所定の距離に保つように自車両を走行させる先行車追従制御を実行する。所定の距離は、例えば、ドライバーによって設定された設定車間距離である。先行車追従制御部22は、後述する周辺状況認識部23によって先行車両の存在が認識されると、例えば以下に説明する方法を用いて、先行車両との車間距離を保つための自車両の目標車速を設定し、目標車速を駆動機構9に出力する。
例えば、先行車追従制御部22は、自車両の車間時間(THW:Time Head Way)、及び自車両の余裕時間(TTC:Time to Collision)を算出する。先行車追従制御部22は、例えば、測距センサ4から取得した情報に基づき、先行車両との車間距離を算出する。そして、先行車追従制御部22は、先行車両との車間距離を自車両の車速で除算することで、自車両の車間時間を算出する。また先行車追従制御部22は、先行車両との車間距離を先行車両の車速に対する自車両の相対車速で除算することで、自車両の余裕時間を算出する。
先行車追従制御部22は、自車両の車間時間が所定の範囲内にあるように、自車両の目標車速を設定する。所定の範囲は、ドライバーにより設定された車間距離を換算した範囲であってもよいし、予め定められた範囲であってもよい。所定の範囲としては、例えば、1秒~3秒という範囲が挙げられる。また先行車追従制御部22は、自車両の余裕時間が所定の閾値よりも大きくなるように、自車両の目標車速を設定する。所定の閾値は予め定められた閾値であって、特に限定されない。所定の閾値としては、例えば、4秒という値が挙げられる。先行車追従制御部22は、自車両の車間時間及び余裕時間のいずれにおいても上記の条件を満たすように、自車両の目標車速を設定する。先行車追従制御における先行車両との車間距離は、自車両の車速が高いほど長くなる。
次に、具体例を挙げて先行車追従制御を説明する。自車両及び先行車両が加減速することなく定速で走行し、先行車両との車間距離が保たれている状態から、先行車両が減速した場面を例に挙げる。この場面において、先行車追従制御部22は、自車両の車間時間及び余裕時間を算出する。先行車両との車間距離は先行車両が減速する前に比べて短くなるため、自車両の車間時間は、先行車両が減速する前に比べて小さく算出される。例えば、自車両の車間時間が所定の範囲より小さくなった場合、先行車追従制御部22は、自車両の車間時間を所定の範囲内にするために、自車両の目標車速を定速走行時よりも低く設定する。また先行車両の車速に対する自車両の相対車速は先行車両が減速する前に比べて高くなるため、自車両の余裕時間は、先行車両が減速する前に比べて小さく算出される。例えば、自車両の余裕時間が所定の閾値よりも小さくなった場合、先行車追従制御部22は、自車両の余裕時間を所定の閾値よりも大きくするために、自車両の目標車速を定速走行時よりも低く設定する。自車両は目標車速に従って減速するため、自車両は先行車両との車間距離を保つように走行する追従走行を行うことができる。先行車両との車間距離、車間時間、余裕時間の算出方法については、公知の技術を先行車追従制御部22に適用することができる。
周辺状況認識部23について説明する。周辺状況認識部23は、自車両の周辺情報に基づき、自車両の周辺状況を認識する。周辺状況認識部23は、自車両が走行する車線及び当該車線に隣接する隣接車線を認識する。例えば、周辺状況認識部23は、カメラ5により撮像された路面の撮像画像から、自車両の左右の側方それぞれから所定距離内に位置する白線を検出した場合、白線間の領域を自車両が走行する車線として認識する。
また周辺状況認識部23は、先行車両の存否を認識する。例えば、周辺状況認識部23は、測距センサ4により検出された一又は複数の対象物のうち、自車両の前方に位置する一又は複数の対象物を抽出する。周辺状況認識部23は、抽出された対象物の相対位置から、自車両が走行する車線上に対象物が位置するか否かを判定する。周辺状況認識部23は、対象物が同一車線上に位置すると判定した場合、対象物が写る撮像画像に対して画像処理を実行し、対象物が車両か否かを判定する。画像処理としては、パターンマッチング等の周知技術が用いられる。周辺状況認識部23は、対象物が車両と判定した場合、先行車両が存在すると認識する。
また周辺状況認識部23は、先々行車両の存否を認識する。周辺状況認識部23は、先行車両の存否を判定する処理において、自車両が走行する車線上を自車両よりも前方に位置する複数の対象物が存在すると判定した場合、各対象物について車両か否かを判定する。周辺状況認識部23は、複数の車両が存在すると判定した場合、複数の車両のうち、自車両から最も近くに位置する車両を先行車両、先行車両から最も近くに位置する車両を先々行車両としてそれぞれ認識する。
追従走行認識部24について説明する。追従走行認識部24は、自車両の周辺情報に基づき、先行車両の追従走行を認識する。先行車両の追従走行とは、先々行車両との車間距離を保つように先行車両が走行することである。本実施形態では、先行車両の追従走行を行う主体は特に限定されない。先行車両の追従走行を行う主体は、ドライバー(人間)、ドライバーの運転を支援する運転支援装置、ドライバーの運転を必要とせずに車両の走行を制御する走行制御装置を含む。
追従走行認識部24は、自車両の周辺情報に基づき、先行車両が追従走行を行っているか否かを判定する。例えば、追従走行認識部24は、自車両から先行車両までの距離及び自車両から先々行車両までの距離に基づき、先行車両と先々行車両との車間距離を算出する。追従走行認識部24は、先行車両と先々行車両との車間距離を先行車両の車速で除算することで、先行車両の車間時間(THW)を算出する。また追従走行認識部24は、自車両の車速に対する先行車両の相対車速と自車両の車速に対する先々行車両の相対車速に基づき、先々行車両の車速に対する先行車両の相対車速を算出する。追従走行認識部24は、先行車両と先々行車両との車間距離を先々行車両の車速に対する先行車両の相対車速で除算することで、先行車両の余裕時間(TTC)を算出する。
追従走行認識部24は、先行車両の車間時間が所定の範囲内にあるか否かを判定する。また追従走行認識部24は、先行車両の余裕時間が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。所定の範囲は、先行車追従制御部22での説明で用いた所定の範囲と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また所定の閾値は、先行車追従制御部22での説明で用いた所定の閾値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
追従走行認識部24は、一定期間の間、先行車両の車間時間が所定の範囲内であり、かつ、先行車両の余裕時間が所定の閾値よりも大きい場合、先行車両が追従走行を行っていると判定する。一方、追従走行認識部24は、一定期間の間で、先行車両の車間時間及び余裕時間のうち少なくとも何れか一方が上記の条件を満たさない期間が存在すると、先行車両が追従走行を行っていないと判定する。一定期間の表し方は特に限定されず、一定期間は、時間(例えば、20秒)であってもよいし、自車両が特定の区域(例えば、交差点間)を走行する期間であってもよい。先行車両の車間時間及び余裕時間が一定期間の間で条件を満たした場合、先行車両が追従走行を行っていると判定することで、先行車両が追従走行を行い続ける可能性が高いと予測できる。これは、先行車両が追従走行を行いつつ、別の挙動(例えば、路肩への駐車、交差点での左折、車線変更)をする可能性は低いという観点に基づく。
また追従走行認識部24は、上記の方法に限られず、その他の方法で先行車両の追従走行を判定してもよい。例えば、追従走行認識部24は、通信装置8を介して、先行車両から、先行車両が追従走行を行っていることを示す情報を取得した場合、先行車両は追従走行を行っていると判定してもよい。一方、追従走行認識部24は、通信装置8を介して、先行車両から、先行車両が追従走行を行っていないことを示す情報を取得した場合、先行車両は追従走行を行っていないと判定してもよい。先行車両が追従走行を行っていることを示す情報は、先行車両で実行されている追従制御の情報、追従制御を実行する際の先々行車両との設定車間距離の情報を含む。
状況変化認識部25について説明する。状況変化認識部25は、自車両の周辺情報に基づき、先行車両の追従走行が行われている状況が変化したか否かを認識する。具体的には、状況変化認識部25は、自車両の周辺情報に基づき、先行車両の追従走行が終了したか否かを判定する。状況変化認識部25は、先行車両の追従走行が終了したと判定した場合、先行車両が追従走行を行っている状況が変化したと認識する。一方、状況変化認識部25は、先行車両の追従走行が終了していないと判定した場合、先行車両の追従走行が継続していると認識する。
状況変化認識部25は、先行車両と先々行車両との車間距離が長くなったことに対して、一定期間の間に先行車両が加速しない場合、先行車両の追従走行が終了したと判定する。例えば、状況変化認識部25は、追従走行認識部24により先行車両が追従走行を行っていると判定された後、所定の周期ごとに、先行車両の車間時間及び余裕時間を算出する。状況変化認識部25は、一定期間の間、先行車両の車間時間が所定の範囲よりも大きく、かつ、先行車両の余裕時間が負の値の場合、先行車両の追従走行が終了したと判定する。一方、状況変化認識部25は、一定期間の間で、先行車両の車間時間及び余裕時間のうち少なくとも何れか一方が上記の条件を満たさない期間が存在する場合、先行車両の追従走行は終了していない判定する。
先行車両及び先々行車両が加減速することなく定速で走行し、先々行車両との車間距離が保たれている状態から、先々行車両が加速した場面を例に挙げて説明する。この場面において、状況変化認識部25は、先行車両の車間時間及び余裕時間を算出する。先行車両と先々行車両との車間距離は先々行車両が加速する前に比べて長くなるため、先行車両の車間時間は、先々行車両が加速する前に比べて大きく算出される。また先々行車両の車速に対する先行車両の相対車速は、先々行車両が加速する前に比べて低くなり負の値となる。このため、先行車両の余裕時間は、負の値となる。
また、先行車両の追従走行を判定するための条件である一定期間は、予め設定された期間であって特に限定されない。例えば、一定期間としては、2秒という時間が挙げられる。既述のように、車両が所定距離を保ちながら追従走行を行っている場面では、追従対象の車両の加減速に伴い、車間距離は所定距離よりも長く又は短くなり、その後、所定距離に保たれる。このため、一定期間を設けずに、追従走行の終了判定を行うと、先行車両の追従走行が行われているにもかかわらず、先行車両の追従走行が終了したと誤って判定する恐れがある。例えば、先々行車両が加速した場合、先々行車両の加速直後に追従走行の終了条件を満たしたため、先行車両の追従走行が終了したと判定しても、その後、車間距離を保つために先行車両が加速する場合がある。このような状況を考慮し、本実施形態では、追従走行の判定にあたり、一定期間を設けている。これにより、誤判定の可能性を低減することができる。
また状況変化認識部25は、上記の方法に限られず、その他の方法で先行車両の追従走行が終了したと判定してもよい。例えば、状況変化認識部25は、通信装置8を介して、先行車両から、先行車両が追従走行を行っていないことを示す情報を取得した場合、先行車両の追従走行は終了したと判定してもよい。反対に、状況変化認識部25は、通信装置8を介して、先行車両から、先行車両が追従走行を行っていることを示す情報を取得した場合、先行車両は追従走行を行っていると判定してもよい。
移動先候補特定部26について説明する。移動先候補特定部26は、地図情報及び自車両の周辺情報の少なくとも何れか一方に基づき、先行車両の移動先候補の存否を判定する。移動先候補特定部26は、先行車両の移動先候補が存在すると判定した場合、当該移動先候補の位置を特定する。先行車両の移動先候補とは、追従走行を終了した後、先行車両が向かう先の候補である。先行車両の移動先候補は、先行車両が走行している車線の内外は問わない。
先行車両の移動先候補としては、例えば、施設(レストラン、コンビニエンスストアなど)の駐車場、ガソリンスタンドなどが挙げられる。また先行車両が2車線以上の道路を走行している場面では、先行車両は車線変更する可能性がある。このような場面では、移動先候補は隣接車線を含む。また路上駐車が可能な車線を先行車両が走行している場合、先行車両は路上駐車を行う可能性がある。このような場面では、移動先候補は路上駐車可能なスペースを含む。また先行車両の前方に交差点があり、当該交差点を左折可能な車線を先行車両が走行している場合、先行車両は交差点を左折する可能性がある。このような場面では、移動先候補は交差点を含む。
移動先候補特定部26は、地図情報に基づき、例えば、先行車両の位置から前方の所定範囲内を検索条件として、先行車両の移動先候補を検索する。移動先候補特定部26は、検索結果として一又は複数の先行車両の移動先候補が得られた場合、先行車両の移動先候補が存在すると判定する。一方、移動先候補特定部26は、検索結果として移動先候補が一つも得られない場合、先行車両の移動先候補が存在しないと判定する。また移動先候補特定部26は、カメラ5により撮像された撮像画像から、一又は複数の先行車両の移動先候補が検出された場合、先行車両の移動先候補が存在すると判定してもよい。移動先候補が存在すると判定された場合、移動先候補特定部26は、地図情報及び撮像画像の少なくとも何れか一方に基づき、先行車両の移動先候補の位置を特定する。なお、移動先候補の特定には、地図情報のみを用いてもよいし、撮像画像のみを用いてもよい。また移動先候補の特定には、地図情報及び撮像画像を用いてもよい。
車間制御部27について説明する。車間制御部27は、状況変化認識部25により先行車両の追従走行が終了したと判定された場合、先行車両との車間距離を先行車追従制御における車間距離よりも長くする車間制御を行う。車間制御部27は、先行車追従制御の実行を停止し、先行車両との車間距離を広げるための車間制御を行う。例えば、車間制御部27は、先行車追従制御が実行されている際の目標車速よりも低く自車両の目標車速を設定する。車間制御部27は、設定した目標車速を駆動機構9に出力する。これにより、自車両の車速は、先行車追従制御を実行していた際の車速から、減速し始める。その結果、先行車両との車間距離は、先行車追従制御が実行されていた時よりも長くなる。
また本実施形態では、車間制御部27は、上記の車間制御において、先行車追従制御における自車両の車速に基づき、先行車追従制御における車間距離に対して先行車両との車間距離を長くする程度(レベル、割合ともいう)を変える。例えば、車間制御部27は、先行車追従制御を実行している際の自車両の車速が低いほど、先行車追従制御における車間距離に対して先行車両との車間距離が長くなるように制御する。この場合、先行車追従制御における自車両の車速と先行車両との車間距離は比例関係となり、先行車追従制御における自車両の車速に応じて、先行車両との車間距離は連続的に長くなる。例えば、車間制御部27は、先行車追従制御における自車両の車速に応じて、自車両の車間時間が0.5秒~2秒加算されるように、自車両の目標車速を先行車追従制御における自車両の車速に比べて低く設定する。
また例えば、車間制御部27は、先行車追従制御における自車両の車速が所定の判定閾値より低いか否かを判定し、先行車追従制御における自車両の車速が判定閾値よりも低い場合、先行車追従制御における自車両の車速が判定閾値よりも高い場合に比べて、先行車両との車間距離が長くなるように制御してもよい。この場合、先行車両との車間距離は判定閾値を境に変化する関係となり、例えば、複数の判定閾値を段階的に設けることで、先行車追従制御における自車両の車速に応じて、先行車両との車間距離は段階的に長くなる。なお、上記の先行車追従制御における自車両の車速に応じた先行車両との車間距離の制御において、対象となる自車両の車速としては、先行車追従制御が行われている期間であればよい。例えば、車間制御部27は、先行車両の追従走行が終了したと判定した時点での自車両の車速、言い換えると、先行車追従制御が終了する時点での自車両の車速を、先行車追従制御における自車両の車速とする。
また本実施形態では、車間制御部27は、上記の車間制御において、先行車両から移動先候補までの距離(先行車両の移動予定距離ともいう)に応じて設定された減速度で、自車両を減速させる。車間制御部27は、移動先候補特定部26により先行車両の移動先候補が特定された場合、先行車両の位置及び移動先候補の位置に基づき、先行車両から移動先候補までの距離(先行車両の移動予定距離ともいう)を算出する。車間制御における自車両の減速度は、先行車両の移動予定距離に応じて予め設定されている。
例えば、車間制御部27は、先行車両の移動予定距離が短いほど、自車両の減速度が大きくなるように自車両の目標車速を設定する。この場合、先行車両との車間距離と先行車両の移動予定距離は比例関係となり、先行車両の移動予定距離に応じて、先行車両との車間距離は連続的に長くなる。また例えば、車間制御部27は、先行車両の移動予定距離が所定の判定閾値より短い否かを判定し、先行車両の移動予定距離が判定閾値よりも短い場合、先行車両の移動予定距離が判定閾値よりも長い場合に比べて、自車両の減速度が大きくなるように自車両の目標車速を設定してもよい。この場合、先行車両との車間距離は判定閾値を境に変化する関係となり、例えば、複数の判定閾値を段階的に設けることで、先行車両の移動予定距離に応じて、先行車両との車間距離は段階的に長くなる。なお、車間制御における自車両の減速度は、先行車両の移動予定距離だけでなく、先行車両の車速を考慮して設定された値であってもよい。例えば、自車両の減速度は、先行車両の余裕時間(先行車両から移動先候補までの距離を移動先候補に対する先行車両の相対車速で除算した値)に応じて設定された値でもよい。
車線変更制御部28について説明する。車線変更制御部28は、自車両の周辺情報に基づき、自車両の車線変更に関する制御を行う。本実施形態では、車線変更制御部28は、自車両の周辺情報に基づき、自車両が隣接車線へ車線変更可能か否かを判定する。車線変更制御部28は、車線変更可能と判定した場合、車線変更による自車両のルートへの影響を判定する。車線変更制御部28は、車線変更が自車両のルートに影響を与えないと判定した場合、先行車両との車間距離が先行車追従制御における車間距離よりも長くなった後に、自車両を所定のタイミングで車線変更させる。なお、車線変更制御部28は、先行車両との車間距離が先行車追従制御における車間距離よりも長くなった後に自車両を車線変更させればよく、車線変更可能か否かの判定、及び自車両のルートへの影響の判定のタイミングは特に限定されない。例えば、車線変更制御部28は、車間制御部27により車間制御が実行されている最中、すなわち、先行車両との車間距離が長くなっている最中に車線変更可能か否かの判定、及び自車両のルートへの影響の判定を行ってもよい。
図3A及び図3Bは、本実施形態の制御処理のフローを示す図である。図3A及び図3Bに示す制御処理は、車両制御装置10の制御装置11によって実行される。
ステップS1では、制御装置11は、先行車追従制御を実行する。制御装置11は、先行車追従制御を実行するにあたり、自車位置検出装置1、地図データベース2、車速センサ3、測距センサ4、カメラ5、入力装置6、ナビゲーション装置7、通信装置8のそれぞれから、各種情報を取得する。制御装置11が取得する情報には、自車両の周辺情報、地図情報などが含まれる。
制御装置11は、自車両の周辺情報に基づき、自車両の周辺状況を認識するとともに、先行車両の存否を認識する。制御装置11は、先行車両の存在を認識した場合、先行車追従制御を実行し、自車両が先行車両との車間距離を所定の距離に保つように自車両を走行させる。
ステップS2では、制御装置11は、先々行車両の存否を判定する。制御装置11は、ステップS1で取得した情報に基づき、先々行車両の存否を判定する。肯定的な判定をした場合、ステップS3に進み、否定的な判定をした場合、制御装置11は制御処理を終了させる。
ステップS3では、制御装置11は、自車両の周辺情報に基づき、先行車両が追従走行を行っているか否かを判定する。例えば、制御装置11は、先行車両の車間時間及び余裕時間を用いて、先行車両が追従走行を行っているか否かを判定する。制御装置11は、一定期間の間、先行車両の車間時間が所定の範囲内であり、かつ、先行車両の余裕時間が所定の閾値よりも大きい場合、先行車両が追従走行を行っていると判定する。一方、制御装置11は、一定期間の間で、先行車両の車間時間及び余裕時間のうち少なくとも何れか一方が上記の条件を満たさない期間が存在する場合、先行車両は追従走行を行っていないと判定する。肯定的な判定をした場合、ステップS4へ進み、否定的な判定をした場合、ステップS3の処理を繰り返す。
図4は、図3Aに示す制御処理が実行される場面の一例である。図4は、自車両Vが片側二車線(車線L1、車線L2)のうち路肩側の車線L1を走行している場面を示す。図4に示すように、他車両A及び他車両Bも車線L1を走行している。他車両Aは自車両Vの前方を走行し、他車両Bは他車両Aの前方を走行している。
図4に示す場面では、制御装置11は、自車両の周辺情報に基づき、自車両が車線L1を走行していることを認識するとともに、他車両Aを先行車両、他車両Bを先々行車両としてそれぞれ認識する。以降、他車両Aを先行車両Aと称し、他車両Bを先々行車両Bと称して説明する。自車両Vのドライバーによって自動運転制御を有効にする設定がされると、まず制御装置11は、自車両の車間時間(THW)及び余裕時間(TTC)を算出する。次に、制御装置11は、自車両の車間時間が所定の範囲内であり、かつ、自車両の余裕時間が所定の閾値よりも大きくなるように、自車両の目標車速を設定する。自車両Vの目標車速が設定されると、自車両Vは、先行車両Aとの車間距離D1を保つように先行車両Aに追従して走行する。なお、自車両Vの目標車速は、所定の周期毎に設定されるため、自車両Vは先行車両Aの加減速に応じた車速で走行する。車間距離D1は、自車両Vの車速が高いほど長くなる。
また、図4に示す場面で、制御装置11は、先行車両Aの車間時間及び余裕時間を算出する。制御装置11は、例えば、自車両Vが交差点間を走行している間、先行車両Aの車間時間が所定の範囲内であり、かつ、先行車両Aの余裕時間が所定の閾値よりも大きい場合、先々行車両Bとの車間距離D2を保つように走行する追従走行を先行車両Aが行っていると判定する。
図3Aに戻り、制御処理について説明する。ステップS4では、制御装置11は、自車両の周辺情報に基づき、先行車両の追従走行が終了したか否かを判定する。例えば、制御装置11は、一定期間の間、先行車両の車間時間が所定の範囲よりも大きく、かつ、先行車両の余裕時間が負の値の場合、先行車両の追従走行が終了したと判定する。一方、制御装置11は、一定期間の間で、先行車両の車間時間及び余裕時間のうち少なくとも何れか一方が上記の条件を満たさない期間が存在する場合、先行車両の追従走行は終了していないと判定する。肯定的な判定をした場合、ステップS5へ進み、否定的な判定をした場合、ステップS3に戻る。
図5は、制御装置11が先行車両の追従走行が終了したと判定した場面の一例である。図5に示す場面は、図4に示す場面から所定時間経過した後の場面である。先々行車両Bは図4に示す場面から加速し、先行車両Aは図4に示す場面と同じ車速を維持している。このため、図5では、先行車両Aと先々行車両Bとの車間距離D2
'は、図4に示す車間距離D2よりも長くなる。このような場面では、先行車両Aの車間時間は図4での先行車両Aの車間時間よりも大きくなり、先行車両Aの余裕時間は負の値となる。制御装置11は、先行車両Aの車間時間が所定の範囲よりも大きく、かつ、先行車両Aの余裕時間が負の値であるとして、先行車両Aの追従走行が終了したと判定する。
図3Aに戻り、制御処理について説明する。ステップS5では、制御装置11は、先行車両との車間距離を先行車追従制御における車間距離よりも長くする車間制御を実行する。制御装置11は、自車両の車速に応じて予め定められた減速度に従って、自車両の目標車速を設定する。制御装置11は、自車両の目標車速を駆動機構9に出力する。これにより、自車両は減速を開始するため、先行車両との車間距離は、時間の経過とともに、先行車追従制御が実行されている際の先行車両との車間距離よりも長くなる。
ステップS6では、制御装置11は、自車両の周辺情報及び地図情報のうち少なくとも何れか一方に基づき、先行車両の移動先候補を特定する。例えば、制御装置11は、地図情報を参照し、追従走行を終了した後、先行車両が向かう先の候補の存否を判定する。制御装置11は、先行車両の移動先候補が存在すると判定した場合、先行車両から移動先候補までの距離を算出する。なお、このステップで移動先候補が特定されない場合でも、次のステップに進む。
ステップS7では、制御装置11は、ステップS5で算出された先行車両から先行車両の移動先候補までの距離が所定の距離未満であるか否かを判定する。肯定的な判定をした場合、ステップS8に進み、否定的な判定をした場合、ステップS9に進む。所定の閾値は、予め定められた閾値であって、自車両の減速度を高くするか否かを判定するための閾値である。このステップは、先行車両との車間距離を長くするために自車両が要する時間に対して、先行車両が追従走行を終了してから挙動を変化させるまでの時間が短いか否かを判定するためのステップである。
ステップS8では、制御装置11は、減速制御を実行する。このステップでの減速制御は、ステップS5に示す車間制御に含まれる。制御装置11は、ステップS5の車間制御における減速度よりも高い減速度で自車両を減速させる。例えば、制御装置11は、先行車両から先行車両の移動先候補までの距離が短いほど、自車両の減速度が大きくなるように自車両の目標車速を設定する。このステップにより、例えば、先行車両から移動先候補までの距離が短く、先行車両が追従走行を終了してから挙動を変化させるまでの時間が短い場合であっても、自車両の減速度を高くすることができる。より短時間で、先行車両との車間距離を先行車追従制御における車間距離よりも長くすることができる。
図6は、制御装置11が車間制御を実行した後の場面の一例である。図6に示す場面は、図5に示す場面から所定時間経過した後の場面である。制御装置11による車間制御によって、自車両Vは減速を開始する。図6に示すように、先行車両Aとの車間距離D1
’は、図4又は図5に示す先行車両Aとの車間距離D1よりも長くなる。なお、図6の例では、先々行車両Bの加速によって、先行車両Aと先々行車両Bとの車間距離D2
''は、図5に示す車間距離D2
'よりも長くなっている。
図3Bに戻り、制御処理について説明する。ステップS9では、制御装置11は、自車両の周辺情報に基づき、自車両が隣接車線へ車線変更可能か否かを判定する。例えば、制御装置11は、カメラ5の撮像画像から、隣接車線における自車両の前方に自車両が進入可能なスペース(進入可能領域)が存在するか否かを判定する。制御装置11は、進入可能領域が存在すると判定した場合、進入可能領域に対して隣接車線の前方又は後方を走行する車両の存否を判定する。制御装置11は、そのような車両が存在しないと判定した場合、自車両は車線変更可能と判定する。この場合、ステップS10に進む。一方、制御装置11は、進入可能領域が存在しない、又は進入可能領域に対して隣接車線の前方又は後方を走行する車両が存在する場合、自車両は車線変更不可能と判定する。この場合、ステップS7に戻る。
ステップS10では、制御装置11は、自車両の周辺情報に基づき、車線変更先の車線が右折専用車線以外であるか否かを判定する。例えば、制御装置11は、地図情報を参照することで、車線変更先の車線が右折専用車線以外であるか否かを判定する。肯定的な判定をした場合、ステップS11に進み、否定的な判定をした場合、ステップS7に戻る。このステップでは、例えば、先行車両が追従走行を終了した後、交差点を右折するために車線変更して右折専用車線を走行する可能性を判定するためのステップである。
ステップS11では、制御装置11は、車線変更による自車両の走行ルートへの影響を判定する。例えば、制御装置11は、ナビゲーション装置7から、自車両が車線変更した場合の自車両の走行ルートを取得する。制御装置11は、車線変更前後での自車両の走行ルートを比較し、例えば、自車両が走行する予定の道路に変更が生じない場合、車線変更による自車両の走行ルートへの影響がないと判定する。一方、制御装置11は、比較結果から、例えば、自車両が走行する予定の道路に変更が生じる場合、車線変更による自車両の走行ルートへの影響があると判定する。自車両の走行ルートへの影響がないと判定した場合、ステップS12に進み、自車両の走行ルートへの影響があると判定した場合、ステップS7に戻る。
ステップS12では、制御装置11は、自車両の周辺情報に基づき、先行車両が路肩側に寄ったか否かを判定する。例えば、制御装置11は、自車両の位置に対する先行車両の相対位置の単位時間当たりの変化に基づき、車線における先行車両の車幅方向の位置の変化を算出する。制御装置11は、先行車両の車幅方向の位置が路肩側へ移動した場合、先行車両が路肩側に寄ったと判定する。この場合、ステップS13に進む。一方、制御装置11は、先行車両の車幅方向の位置が路肩側へ移動していない場合、先行車両は路肩側に寄っていないと判定する。この場合、ステップS14に進む。
ステップS13では、制御装置11は、自車両を隣接車線へ車線変更させる車線変更制御を実行する。例えば、制御装置11は、車線変更するための制御量(目標車速、操舵角を含む)を算出し、算出した制御量に応じた制御信号を駆動機構9に出力する。自車両は、駆動機構9により自動的又は自律的に隣接車線へ車線変更する。このステップが終了すると、制御装置11は制御処理を終了させる。なお、このステップでの処理を実行する時点で、先行車両との車間距離は、ステップS5又はステップS8での処理により、先行車追従制御における先行車両との車間距離よりも長くなっている。
ステップS12で否定的な判定した場合、ステップS14に進む。ステップS14では、制御装置11は、先行車両の路肩側の方向指示器が点灯したか否かを判定する。例えば、制御装置11は、カメラ5により撮像された先行車両の後部の撮像画像に対して画像処理を実行することで、先行車両の路肩側の方向指示器が点灯したか否かを判定できる。肯定的な判定をした場合、ステップS13に進み、否定的な判定をした場合、ステップS15に進む。
ステップS14で否定的な判定した場合、ステップS15に進む。ステップS15では、制御装置11は、自車両の車間時間が所定時間以上か否かを判定する。このステップは、先行車両との車間距離が先行車追従制御における先行車両との車間距離よりも長くなった結果、減速することなく車線変更制御を実行できるか否かを判定するためのステップである。所定時間は、減速することなく車線変更制御を実行できることを判定するための時間であって、予め定められた時間である。肯定的な判定をした場合、ステップS13に進み、否定的な判定をした場合、ステップS7に戻る。
ここで、自車両が先行車両に追従している場面で、減速することなく自車両がスムーズに車線変更するために必要な車間時間について説明する。以降では、具体的な数値を用いて説明するが、各数値は一例であって、本発明を限定するものではない。
先行車追従制御を実行している際の自車両の車速が低いほど、自車両を減速せずに車線変更させることが困難とされている。減速せずに車線変更するのに要する時間には、方向指示器の点灯制御など車線変更のための準備制御を行う時間も含まれる。減速せずに車線変更するのに要する時間は、実験結果から6秒とされている。
自車両が先行車追従制御により、車間時間を2秒に保つように先行車両に追従しており、先行車両が0.15G(G:標準重力を基準とする単位)で減速する場面を例に挙げる。例えば、先行車追従制御によって自車両が40km/hで走行している場合、自車両の車速を維持したままでの自車両の余裕時間は約5.5秒になり、減速せず車線変更するのに要する時間(6秒)に対して約0.5秒不足する。また例えば、先行車追従制御によって自車両が30km/hで走行している場合、自車両の車速を維持したままでの自車両の余裕時間は約4.8秒になり、減速せず車線変更するのに要する時間(6秒)に対して約1.2秒不足する。また例えば、先行車追従制御によって自車両が20km/hで走行している場合、自車両の車速を維持したままでの自車両の余裕時間は約3.9秒になり、減速せず車線変更するのに要する時間(6秒)に対して約2.1秒不足する。このような結果から、先行車両が減速することを予測し、先行車両が減速を開始する前に、自車両の余裕時間を、減速せずに車線変更するのに要する時間よりも多く確保する必要がある。
本実施形態に係る車両制御装置10では、先行車両の追従走行が終了したことを、先行車両の挙動が変化する前兆と捉え、先行車両が挙動を変化させる前に、先行車両との車間距離が先行車追従制御における車間距離よりも長くなるように、自車両を制御する。これにより、先行車両の挙動の変化として、例えば、先行車両が減速する場合、先行車両が減速を開始する前に、自車両の余裕時間を、減速せずに車線変更するのに要する時間よりも多く確保することができる。その結果、先行車両が減速されたことに伴い自車両を減速させることを防ぎ、先行車両の挙動に備えて自車両を制御できる。例えば、車線変更が可能な場合には、自車両を減速させずに車線変更することができる。
交差点手前での先行車両の挙動の変化を例に挙げて説明する。追従走行を行っている先行車両が、追従走行を終了させて交差点で左折する場面を例として挙げる。なお、先行車両は、例えば、横断歩道があるため左折のために交差点で一時停止する。この場面において、先行車両のドライバーは、先行車両が交差点に到達する8秒前~10秒前(TTI=8秒~10秒、TTI:Time To Intersection)で、運転操作を変化させるとされている。そして、先行車両のドライバーは、先行車両が交差点に到達する4秒前~5秒前(TTI=4秒~5秒)で、減速を開始させるとされている。
このような場面で、本実施形態に係る車両制御装置10によれば、交差点に到達する8秒前~10秒前で、先行車両の追従走行が終了したと判定する。そして、車両制御装置10によって、例えば、自車両が0.05G(<先行車両の減速:0.15G)で減速する場合、自車両の減速が開始してから約4秒後には、自車両の余裕時間は、減速せずに車線変更するのに要する時間よりも多くなる。すなわち、本実施形態に係る車両制御装置10によれば、先行車両が交差点に到達する4秒前~6秒前には、自車両の余裕時間を減速せずに車線変更するのに要する時間よりも多く確保することができる。このため、先行車両が交差点に到達する4秒前~5秒前で、先行車両が減速を開始しても、自車両を減速させずにスムーズに車線変更させることができる。先行車両の挙動の変化(例えば、先行車両の停止、先行車両の急減速)に備えることができるため、自車両の急制動や急操舵が行われる可能性を抑制し、自車両の走行挙動を安定させることができる。
以上のように、本実施形態に係る車両制御装置10及び車両制御装置10の制御装置11が実行する車両制御方法では、同一車線上の先行車両との車間距離を所定距離に保つように自車両を走行させる先行車追従制御を実行し、自車両の周辺の情報を取得する測距センサ4、カメラ5、及び通信装置8から、自車両の周辺情報を取得する。そして、自車両の周辺情報に基づき、同一車線上の先々行車両との車間距離を保つように走行する追従走行を先行車両が行っていると判定し、先行車両が追従走行を行っていると判定した後、自車両の周辺情報に基づき、先行車両の追従走行が終了したか否かを判定する。先行車両の追従走行が終了したと判定した場合、先行車両との車間距離を先行車追従制御における先行車両との車間距離よりも長くする車間制御を実行する。先行車両が追従走行を終了したことをトリガにして、先行車両との車間距離を先行車追従制御における車間距離よりも長くできるため、予めサーバ等に車両の走行パターンを蓄積させる必要がない。その結果、任意の場所で、先行車両の挙動の変化に備えて、自車両を制御することができる。
また、本実施形態では、自車両の周辺情報に基づき、自車両が車線変更できるか否かを判定し、自車両が車線変更できると判定した場合、先行車両との車間距離が先行車追従制御における先行車両との車間距離よりも長くなった後、車線変更制御を実行する。先行車両の挙動が変化し始める前に、先行車両との車間距離を先行車追従制御における車間距離よりも長くできるため、自車両を減速させることなくスムーズに車線変更することができる。
さらに、本実施形態では、自車両が車線変更すると、自車両のルートが変更されるか否かを判定し、自車両のルートが変更されると判定した場合、車線変更制御を実行しない。車線変更したことで自車両のルートが変更されることを抑制できるため、自車両の挙動への違和感を自車両の乗員に与えるのを抑制できる。
加えて、本実施形態では、地図情報及び自車両の周辺情報の少なくとも何れか一方に基づき、先行車両の移動先候補を特定し、車間制御において、先行車両から移動先候補までの距離に応じて設定された減速度で、自車両を減速させる。これにより、先行車両から移動先候補までの距離に応じて、先行車両との車間距離を長くするまでに要する時間を変えることができる。例えば、減速度が先行車両から移動先候補までの距離が短いほど高くなるように設定されている場合、先行車両から移動先候補までの距離が短いほど、短時間で先行車両との車間距離を長くすることができる。その結果、先行車両の挙動の種別にかかわらず、先行車両の挙動の変化に備えて、自車両を制御することができる。
また、本実施形態では、車間制御において、先行車追従制御における自車両の車速が低いほど、先行車両との車間距離が長くなるように自車両を制御する。先行車追従制御における自車両の車速に応じて、先行車両との車間距離は連続的に長くすることができる。既述のとおり、先行車追従制御における自車両の車速が低いほど、自車両の余裕時間は、減速せずに車線変更するのに要する時間に対して不足する時間が多くなる。例えば、先行車追従制御における自車両の車速を、先行車追従制御が終了する際の自車両の車速とした場合、減速直前の自車両の車速に応じて、先行車両の車間距離を確保することができる。
さらに、本実施形態では、車間制御において、先行車追従制御における自車両の車速が所定の判定閾値よりも低い場合、当該車速が判定閾値よりも高い場合に比べて、先行車両との車間距離が長くなるように自車両を制御する。複数の判定閾値を段階的に設けることで、先行車追従制御における自車両の車速に応じて、先行車両との車間距離を段階的に長くすることができる。例えば、追従対象の車両が変わる度に、先行車追従制御における自車両の車速が変化する場合であっても、自車両の車速が判定閾値を超えない場合、同じ車間制御を実行することができる。追従対象の車両が変わる度に、先行車両との車間距離が異なる車間制御を実行するのを防ぎ、車間制御が煩雑になるのを抑制することができる。
加えて、本実施形態では、自車両の周辺情報に基づき、先行車両と先々行車両との車間距離を特定し、先行車両と先々行車両との車間距離が長くなったことに対して、一定期間の間、先行車両が加速しない場合、先行車両の追従走行が終了したと判定する。先行車両は追従走行を終了した後、追従走行とは異なる挙動を行う可能性があり、先行車両の挙動の変化に備えて、自車両の制御を行うことができる。
また、本実施形態では、通信装置を介して、先行車両等から、自車両の周辺情報として、先行車両が先々行車両を追従走行していないことを示す情報を取得した場合、先行車両の追従走行が終了したと判定する。先行車両と先々行車両との車間距離を監視せずに、先行車両の追従走行が終了したと判定できるため、測距センサ4の検出範囲及びカメラ5の撮像範囲に依存することなく、先行車両の挙動の変化に備えて、自車両の制御を行うことができる。
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
例えば、上述の実施形態の変形例として、制御装置11は、車線変更制御を実行して自車両を車線変更させた後、自車両が先行車両の側方を通過するための制御を実行してもよい。例えば、制御装置11は、自車両の周辺情報に基づき、自車両が先行車両の側方を通過できるか否かを判定し、自車両が先行車両の側方を通過できると判定した場合、車線変更制御によって自車両が車線変更した後、自車両を先行車両の側方を通過させるための加速制御を実行してもよい。これにより、例えば、先行車両が追従走行を終了した後に減速する場合であっても、自車両は減速することなくスムーズに、先行車両の側方を通過することができる。なお、先行車両の側方を通過した後、再び車線変更制御を実行して、先行車両の前方に進入する追い越し制御を実行してもよい。また先行車両のルートに影響がないと判定した場合、先行車両の側方を通過した後、車線変更先の車線を走行させる制御を実行してもよい。
また例えば、上述の実施形態では、先行車両の追従走行が終了したと判定した場合、車間制御を実行する構成を例に挙げて説明したが、先行車両の追従走行が終了したと判定した場合であっても、先行車追従制御を実行してもよい。制御装置11は、自車両の周辺情報に基づき、先々行車両が制限速度を超えるほど加速したことを特定した場合、先行車両の追従走行が終了したと判定しても、先行車追従制御を実行してもよい。例えば、制御装置11は、測距センサ4の検出結果に基づき、先々行車両の車速と制限速度を比較し、先々行車両の車速が制限速度を超えたことを特定することができる。先行車両と先々行車両との車間距離が長くなる要因の一つとしては、先々行車両の加速が挙げられる。例えば、先々行車両が何らかの理由により制限速度を超えるほど加速した場合、先行車両のドライバーは制限速度を遵守するために、追従走行を行わないことがある。このような場合、先行車両の挙動は変化しない可能性が高い。それにもかかわらず、車間制御によって先行車両との車間距離が長くなると、自車両の乗員は自車両の挙動に違和感を覚える。このような自車両の挙動に対する違和感を自車両の乗員に与えるのを抑制できる。