次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。説明において、同一のものには同一符号を付して重複説明を省略する。
[車両挙動予測装置の構成]
図1を参照して、車両挙動予測装置の構成を説明する。車両挙動予測装置は、物体検出部21と、自車位置推定部23と、地図情報取得部25と、処理部100(コントローラ)とを備える。
車両挙動予測装置は、自動運転機能を有する車両に適用されてもよく、自動運転機能を有しない車両に適用されてもよい。また、車両挙動予測装置は、自動運転と手動運転とを切り替えることが可能な車両に適用されてもよい。
なお、本実施形態における自動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングなどのアクチュエータの内、少なくとも何れかのアクチュエータが乗員の操作なしに制御されている状態のことを指す。そのため、その他のアクチュエータが乗員の操作により作動していたとしても構わない。また、自動運転とは、加減速制御、横位置制御などのいずれかの制御が実行されている状態であればよい。また、本実施形態における手動運転とは、例えば、ブレーキ、アクセル、ステアリングを乗員が操作している状態のことを指す。
物体検出部21は、自車両に搭載された、レーザレーダ、ミリ波レーダ、カメラなどの物体検出センサを備える。物体検出部21は、複数の物体検出センサを用いて自車両の外部の物体を検出する。また、物体検出部21は、自車両の前方または側方の物体を検出する。物体検出部21は、他車両、バイク、自転車、歩行者を含む移動物体、及び駐車車両、建物を含む静止物体を検出する。例えば、物体検出部21は、移動物体及び静止物体の自車両に対する位置、姿勢(ヨー角)、大きさ、速度、加速度、ジャーク、減速度、ヨーレートを検出する。なお、物体の位置、姿勢(ヨー角)、大きさ、速度、加速度、減速度、ヨーレートをまとめて、物体の「挙動」と呼ぶ。
自車位置推定部23は、自車両に搭載された、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)、オドメトリなど自車両の絶対位置を計測する位置検出センサを備える。自車位置推定部23は、位置検出センサを用いて、自車両の絶対位置、すなわち、所定の基準点に対する自車両の位置、車速、加速度、操舵角、姿勢を計測する。自車位置推定部23には、慣性航法装置(Inertial Navigation System、INS)や、ブレーキペダルやアクセルペダルに設けられたセンサや、車輪側センサやヨーレートセンサなど車両の挙動を取得するセンサや、レーザレーダ、カメラなどが含まれていてもよい。
地図情報取得部25は、自車両が走行する道路の構造を示す地図情報を取得する。地図情報取得部25が取得する地図情報には、車線の絶対位置、車線の接続関係、相対位置関係などの道路構造の情報が含まれる。また、地図情報取得部25が取得する地図情報には、駐車場、ガソリンスタンドなどの施設情報も含まれる。その他、地図情報には、信号機の位置情報や、信号機の種別などが含まれる。地図情報取得部25は、地図情報を格納した地図データベースを所有してもよいし、クラウドコンピューティングにより地図情報を外部の地図データサーバから取得してもよい。また、地図情報取得部25は、車車間通信、路車間通信を用いて地図情報を取得してもよい。
その他、地図情報取得部25は、GPSから自車両の位置を取得し、レーン情報が記載された地図情報から自車前方の交差点を検出するものであってもよい。なお、自車両の位置の取得のためにGPSの代わりに慣性航法装置や自車両のオドメトリを使用したり、GPSとともにそれらを使用したりしてもよい。なお、道路構造はLiDARなどの前方を検出するセンサを用いて推定してもよい。
処理部100は、物体検出部21、自車位置推定部23による検出結果、及び、地図情報取得部25による取得情報に基づいて、他車両の動作を予測し、他車両の動作から自車両の走行予定経路を生成し、生成した走行予定経路に従って自車両を制御する。
処理部100(制御部またはコントローラの一例)は、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のマイクロコンピュータである。処理部100には、車両挙動予測装置として機能させるためのコンピュータプログラム(車両挙動予測プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、処理部100は、車両挙動予測装置が備える複数の情報処理回路(41、43、45、50、70、80、90)として機能する。
なお、ここでは、ソフトウェアによって車両挙動予測装置が備える複数の情報処理回路(41、43、45、50、70、80、90)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(41、43、45、50、70、80、90)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(41、43、45、50、70、80、90)を個別のハードウェアにより構成してもよい。更に、情報処理回路(41、43、45、50、70、80、90)は、車両にかかわる他の制御に用いる電子制御ユニット(ECU)と兼用してもよい。
処理部100は、複数の情報処理回路(41、43、45、50、70、80、90)として、検出統合部41、物体追跡部43、道路構造特定部45、車両挙動予測部50、自車経路生成部70、速度プロファイル生成部80、車両制御部90を備える。更に、車両挙動予測部50は、交差車両特定部51、先行車両特定部53、挙動変化検出部55、挙動予測用閾値変更部57、挙動予測部59を備える。
検出統合部41は、物体検出部21が備える複数の物体検出センサの各々から得られた複数の検出結果を統合して、各物体に対して一つの検出結果を出力する。具体的には、物体検出センサの各々から得られた物体の挙動から、各物体検出センサの誤差特性などを考慮した上で最も誤差が少なくなる最も合理的な物体の挙動を算出する。具体的には、既知のセンサ・フュージョン技術を用いることにより、複数種類のセンサで取得した検出結果を総合的に評価して、より正確な検出結果を得る。
その他、検出統合部41は、検出した物体が車両である場合には、当該車両のウィンカー点灯有無を検出して当該車両の挙動を検出するものであってもよい。
物体追跡部43は、検出統合部41によって検出された物体を追跡する。具体的に、物体追跡部43は、異なる時刻に出力された物体の挙動から、異なる時刻間における物体の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、物体を追跡する。
道路構造特定部45は、自車位置推定部23により得られた自車両の絶対位置、及び地図情報取得部25により取得された地図情報から、自車両の走行予定経路上の道路構造の種別を特定する。例えば、道路構造特定部45は、自車両の走行予定経路にある交差点、合流車線との合流点、T字路などを特定する。その他にも、道路構造特定部45は、交差点に設置された信号機の位置やその種別を特定するものであってもよいし、道路構造内の車線のうちから優先車線、非優先車線を特定するものであってもよい。
交差車両特定部51は、物体追跡部43から取得した物体情報、及び、道路構造特定部45によって特定された道路構造の種別に基づいて、物体検出部21によって検出した物体から、自車両の走行予定経路と交差する走行予定経路を有する交差車両を特定する。なお、交差車両特定部51での交差車両の特定の前提として、既に自車両の走行予定経路が生成されているものとする。また、物体追跡部43から取得した物体情報や道路情報などに基づいて、交差車両の走行予定経路についても、暫定的に生成されているものとする。交差車両の走行予定経路は例えば、自車両の走行予定経路上の交差点において対向車線の右折レーン上、あるいは交差点内で右折レーンの延長線上の位置に物体が検出された場合に物体が交差車両であって、且つ交差車両が対向車線の右折レーンからの右折経路を走行予定経路として生成することができる。
先行車両特定部53は、物体追跡部43から取得した物体情報、及び、道路構造特定部45によって道路構造の種別に基づいて、物体検出部21によって検出した物体から、自車両の走行予定経路を走行している先行車両を特定する。例えば、自車両の前方を走行している先行車両を特定する。
挙動変化検出部55は、先行車両特定部53によって特定した先行車両に対し、物体追跡部43から取得した物体情報の時間変化に基づいて先行車両の挙動変化を検出する。
なお、上述した交差車両の特定方法、先行車両の特定方法、先行車両の挙動変化の検出方法は、それぞれ道路構造の種別に基づいて様々に変更される。
挙動予測用閾値変更部57は、先行車両の有無、自車両や他車両(先行車両及び交差車両を含む)の位置関係、道路情報、挙動変化検出部55において検出した先行車両の挙動変化、などに基づいて、挙動予測用閾値T(第1閾値)を設定する。挙動予測用閾値変更部57における挙動予測用閾値Tの設定の詳細は後述する。
挙動予測部59は、物体追跡部43から取得した物体情報に基づいて、自車両の走行予定経路への交差車両の進入予測のための指標値を算出する。例えば、先行車両が存在しない場合には、自車両の走行予定経路と交差車両の走行予定経路の交差する位置に自車両が到達するまでの時間を指標値として算出する。先行車両が存在する場合には、先行車両に対する自車両の車頭時間(THW:Time Headway)、衝突余裕時間(TTC:Time to Collision)などの、自車両の走行予定経路上の区間であって先行車両と自車両で挟まれる区間の距離を示す指標値を算出する。
そして、挙動予測部59は、挙動予測用閾値変更部57において設定された挙動予測用閾値Tと、算出した指標値とに基づいて、自車両の走行予定経路に交差車両が進入するか否かを予測する。挙動予測部59における、交差車両の進入予測の詳細については、後述する。
自車経路生成部70は、物体追跡部43から取得した物体情報、地図情報取得部25によって取得した地図情報、自車両の位置に基づいて、自車両の走行予定経路を生成する。
ここで、自車両の走行予定経路に交差車両が進入するか否かの予測が車両挙動予測部50によって行われている場合には、自車経路生成部70は、物体情報、地図情報、自己位置に加えて、車両挙動予測部50による予測結果に基づいて、自車両の走行予定経路を生成する。
速度プロファイル生成部80は、物体追跡部43から取得した物体情報、地図情報取得部25によって取得した地図情報、自車両の位置に基づいて、自車両が走行予定経路を走行する際の速度プロファイルを生成する。ここで、速度プロファイルとは、走行予定経路に沿って自車両が移動する際の、自車両の速度の変化の様子を示すデータである。
ここで、自車両の走行予定経路に交差車両が進入するか否かの予測が車両挙動予測部50によって行われている場合には、自車経路生成部70は、物体情報、地図情報、自己位置に加えて、車両挙動予測部50による予測結果に基づいて、自車両が走行予定経路を走行する際の速度プロファイルを生成する。
車両制御部90は、自車経路生成部70にて生成された走行予定経路、及び、速度プロファイル生成部80にて生成された速度プロファイルに基づいて、自車両に対する車両制御を行う。
[車両挙動予測の処理手順]
次に、図2のフローチャートを用いて本実施形態に係る車両挙動予測の処理手順を説明する。図2に示す車両挙動予測の処理は、自車両のイグニッションがオンされると開始され、イグニッションがオンとなっている間、繰り返し実行される。
まず、ステップS101において、交差車両特定部51は交差車両を特定する。なお、自車両のイグニッションをオンにした直後など、自車両の走行予定経路が生成されていない場合には、交差車両特定部51は交差車両を特定しない。
次に、ステップS103において、車両挙動予測部50は、特定された交差車両が存在するか否かを判定する。特定された交差車両が存在する場合(ステップS103でYESの場合)には、図2の処理はステップS105に進む。一方、特定された交差車両が存在しない場合(ステップS103でNOの場合)には、交差車両の車両挙動予測の処理を終了する。
ステップS105において、先行車両特定部53は先行車両を特定する。
ステップS107において、車両挙動予測部50は、特定された先行車両が存在するか否かを判定する。特定された先行車両が存在する場合(ステップS107でYESの場合)には、図2の処理はステップS109に進む。一方、特定された先行車両が存在しない場合(ステップS107でNOの場合)には、ステップS115に進む。
ステップS109において、挙動変化検出部55は、先行車両の挙動変化を検出する。
ステップS111において、車両挙動予測部50は、先行車両の挙動変化の有無を判定する。先行車両の挙動変化がある場合(ステップS111でYESの場合)には、図2の処理はステップS113に進む。一方、先行車両の挙動変化がない場合(ステップS111でNOの場合)には、ステップS115に進む。
ステップS113において、挙動予測用閾値変更部57は、検出した先行車両の挙動変化などに基づいて、挙動予測用閾値Tを変更する。
ステップS115において、挙動予測部59は、交差車両の挙動を予測する。交差車両の挙動として、例えば、自車両の走行予定経路に交差車両が進入するか否かを予測する。
上述した処理に基づいて予測された交差車両の挙動に基づいて、自車経路生成部70は自車両の走行予定経路を生成し、速度プロファイル生成部80は自車両が走行予定経路を走行する際の速度プロファイルを生成する。また、車両制御部90は、生成された自車両の走行予定経路および速度プロファイルに基づいて、自車両に対する車両制御を行う。
[挙動予測用閾値の設定]
次に、挙動予測用閾値変更部57における挙動予測用閾値Tの設定について、具体的に説明する。
挙動予測用閾値T(第1閾値)は、先行車両の有無に加え、自車両や他車両(先行車両及び交差車両を含む)の位置関係、道路情報、挙動変化検出部55において検出した先行車両の挙動変化、などの外乱因子に基づいて設定される。自車両の走行予定経路に対する交差車両の進入確率は、このような外乱因子によって変化しうるからである。
例えば、図3の曲線F1で示すように、自車両の走行予定経路に対する交差車両の進入確率は、自車両の走行予定経路と交差車両の走行予定経路の交差する位置に自車両が到達するまでの時間、先行車両に対する自車両のTHW、TTCなどの指標値に依存して変化する。指標値が大きくなるほど、交差車両がより安全に自車両の走行予定経路に進入できる状態であるため、交差車両の進入確率は増加する傾向にある。
そこで、先行車両が存在しない場合には、挙動予測用閾値変更部57は、自車両の走行予定経路に対する交差車両の進入確率が50%となる場合における、自車両の走行予定経路と交差車両の走行予定経路の交差する位置に自車両が到達するまでの時間を挙動予測用閾値Tとして設定する。
また、先行車両の挙動変化がない場合には、挙動予測用閾値変更部57は、自車両の走行予定経路に対する交差車両の進入確率が50%となる場合における、先行車両に対する自車両のTHW若しくはTTCを挙動予測用閾値Tとして設定する。
図3の曲線F1で示すように、指標値が挙動予測用閾値T以上である場合の交差車両の進入確率は、指標値が挙動予測用閾値Tと等しい場合の進入確率以上の値となる。そのため、指標値が挙動予測用閾値T以上である場合には、自車両の走行予定経路に交差車両が進入すると予測することができる。
一方、指標値が挙動予測用閾値T未満である場合の交差車両の進入確率は、指標値が挙動予測用閾値Tと等しい場合の進入確率未満の値となる。そのため、指標値が挙動予測用閾値T未満である場合には、自車両の走行予定経路に交差車両が進入しないと予測することができる。
このように、指標値と挙動予測用閾値Tの比較によって、自車両の走行予定経路に対して交差車両が進入するか否かを予測することができる。
上述のように設定した挙動予測用閾値Tは、自車両や他車両(先行車両及び交差車両を含む)の位置関係、道路情報、挙動変化検出部55において検出した先行車両の挙動変化、などの外乱因子に基づき、挙動予測用閾値変更部57によって変更される。
例えば、外乱因子による影響のため、指標値と進入確率の関係が図3の曲線F1から曲線F2のように変化したとする。ここで、曲線F1に基づいて定まる挙動予測用閾値Tの値は「Tc」、曲線F2に基づいて定まる挙動予測用閾値Tの値は「Tc-Δ」であるとする。
外乱因子による影響下にある交差車両の進入予測を行う際に、指標値と進入確率の関係が曲線F1から曲線F2に変化しているにも関わらず、挙動予測用閾値Tの値を「Tc」に設定したままでは、交差車両の進入予測の正確性が失われてしまう。そこで、外乱因子の種別や影響度に基づいて、挙動予測用閾値変更部57は、補正量Δを決定し、挙動予測用閾値Tの値を「Tc」から正しい「Tc-Δ」に変更する。符号の向きから明らかなように、補正量Δを増加させるほど、変更後の挙動予測用閾値Tは減少する。
このように、補正量Δによって挙動予測用閾値Tの値を変更することで、外乱因子による影響がある場合における、交差車両の進入予測の正確性を向上させることができる。
なお、先行車両の挙動変化が生じるタイミングと、交差車両の進入予測の基準時は必ずしも一致しない。例えば、先行車両の挙動変化が生じた後に先行車両の車速の変化が生じて、自車両や他車両の位置関係などが変動する可能性がある。交差車両の進入予測の正確性を向上させるため、補正量Δの決定にあたっては、交差車両の進入予測の基準時における自車両や他車両の位置関係、道路情報などを考慮することが好ましい。
[交差車両の進入予測]
次に、挙動予測部59における交差車両の進入予測について、具体的に説明する。
挙動予測部59は、自車両の走行予定経路と交差車両の走行予定経路の交差する位置に自車両が到達するまでの時間、先行車両に対する自車両のTHW、TTCといった指標値を算出する。
なお、交差車両の進入予測の正確性を向上させるため、指標値の算出の基準時と交差車両の進入予測の基準時は、なるべく一致、近接していることが好ましい。指標値の算出の基準時から交差車両の進入予測の基準時までの間に、先行車両の車速の変化が生じる場合、交差車両の進入予測の正確性に影響を及ぼす可能性があるからである。
挙動予測部59は、算出した指標値が挙動予測用閾値T以上である場合に、自車両の走行予定経路に交差車両が進入すると予測する。一方、挙動予測部59は、算出した指標値が挙動予測用閾値T未満である場合に、自車両の走行予定経路に交差車両が進入しないと予測する。
その他、挙動予測部59は、算出した指標値と挙動予測用閾値Tに基づいて、自車両の走行予定経路に交差車両が進入を開始する時刻を予測するものであってもよい。
例えば、算出した指標値が挙動予測用閾値T以上である場合には、自車両の走行予定経路と交差車両の走行予定経路の交差する位置を自車両が通過する前に、当該位置を交差車両が通過すると考えられる。そのため、挙動予測部59は、当該位置を自車両が通過する予定時刻よりも所定時間だけ過去の時刻を、交差車両が進入を開始する時刻として予測するものであってもよい。
また、算出した指標値が挙動予測用閾値T未満である場合には、自車両の走行予定経路と交差車両の走行予定経路の交差する位置を自車両が通過した後に、当該位置を交差車両が通過すると考えられる。そのため、挙動予測部59は、当該位置を自車両が通過する予定時刻よりも所定時間だけ未来の時刻を、交差車両が進入を開始する時刻として予測するものであってもよい。
[交差車両の進入予測結果に基づく制御]
自車両の走行予定経路に交差車両が進入するか否かの予測が車両挙動予測部50によって行われている場合には、自車経路生成部70は、物体情報、地図情報、自己位置に加えて、車両挙動予測部50による予測結果に基づいて、自車両の走行予定経路を生成する。例えば、自車両の走行予定経路への交差車両の進入確率が危険水準値以上である場合には、自車両の走行予定経路と交差車両の走行予定経路の交差する位置を走行する前に自車両の減速を行うよう、車両制御部90が自車両の制御を行うものであってもよい。
また、自車両の走行予定経路に交差車両が進入しないと予測した場合に、予測結果に反して交差車両が自車両の走行予定経路に進入する状況を回避するよう、車両制御部90は自車両を制御するものであってもよい。具体的には、算出した指標値が挙動予測用閾値T未満であり、指標値と挙動予測用閾値Tとの差の絶対値が所定値以下である場合、車両制御部90は、先行車両と自車両の間の車間距離を減少させる制御を行うものであってもよい。先行車両と自車両の間の車間距離が減少することで、交差車両の進入確率が減少するため、予測結果に反する状況が生じる可能性を抑えることができる。
さらに、自車両の走行予定経路に交差車両が進入すると予測した場合に、予測結果に反して交差車両が自車両の走行予定経路に進入しない状況を回避するよう、車両制御部90は自車両を制御するものであってもよい。具体的には、算出した指標値が挙動予測用閾値T以上であり、指標値と挙動予測用閾値Tとの差の絶対値が所定値以下である場合、車両制御部90は、先行車両と自車両の間の車間距離を増加させる制御を行うものであってもよい。先行車両と自車両の間の車間距離が増加することで、交差車両の進入確率が増加するため、予測結果に反する状況が生じる可能性を抑えることができる。
[走行シーンごとの車両挙動予測の例]
次に、図4~6を参照して、走行シーンごとの車両挙動予測の例について説明する。
(第1走行シーン)
初めに、図4の「第1走行シーン」に基づいて車両挙動予測を説明する。図4では、交差点の手前において、自車両VS及び車両VBが車線TL1を走行しており、車両VCが、交差点に進入して、車線TL4から車線TL5若しくは車線TL6に向かって走行している様子が示されている。
図4において、車線TL1、車線TL3は左折・直進のいずれも可能な車線であり、車線TL2、車線TL4は右折専用の車線である。
道路構造特定部45は、道路情報に基づいて自車両VSの走行予定経路上に存在する交差点を特定する。図4では、当該交差点において、車線TL1~TL4と車線TL5,TL6が交差している。さらに、自車両VSが走行する自車道路(車線TL1、TL2)と対向する対向道路(車線TL3、車線TL4)に、対向道路から自車道路に向かう方向である一方向への旋回可否を示す右左折信号がないことを特定する。ここで、「一方向」とは、自車両VSおよび車両VBにとっては、左折方向であり、車両VCにとっては、右折方向である。
一方向への旋回可否を示す右左折信号が対向道路にない場合、対向道路を走行して交差点内で一方向への旋回を行う車両VCの挙動は、自車道路を走行して交差点に進入する車両VBの挙動によって影響を受けると考えられる。
交差車両特定部51は、物体追跡部43から取得した対向道路を走行する車両VCの挙動に基づいて、交差点内での車両VCの旋回予定の有無を判定する。そして、交差車両特定部51は、車両VCが一方向へ旋回予定(右折予定)である場合に、車両VCを車両挙動予測の対象となる交差車両として特定する。
なお、車両VCが、右折専用の車線である車線TL4を走行していることに基づいて、車両VCを対象となる交差車両として特定するものであってもよい。車両VCの走行予定経路と自車両VSの走行予定経路の交差する位置までの車両VCの到達時間と、当該位置までの自車両VSの到達時間の差の絶対値が所定の値(例えば1秒)以下であることに基づいて、車両VCを交差車両として特定するものであってもよい。
また、車両VCが、車線TL4の車線中心よりも、一方向の側に移動する動作(移動動作)をした場合、車両VCが減速動作をした場合、若しくは、車両VCが一方向への旋回を示すウィンカー表示の動作をした場合などに、車両VCを交差車両として特定するものであってもよい。さらには、車両VCの交差点までの到達時間に基づいて、車両VCを交差車両として特定するものであってもよい。
先行車両特定部53は、物体追跡部43から取得した自車道路を走行する車両VBの挙動に基づいて、車両VBに対する自車両VSのTHW、及び、車両VBの交差点までの到達時間を算出する。そして、先行車両特定部53は、車両VBに対する自車両VSのTHWがフィルタリング用閾値A1(第2閾値)以下であり、かつ、車両VBの交差点までの到達時間がフィルタリング用閾値A2(第3閾値)以下である場合に、車両VBを車両挙動予測の対象となる先行車両として特定する。さらに、先行車両特定部53は、車両VBが自車両VSの前方にあることを判定する。
ここで、フィルタリング用閾値A1を用いて判定する理由は、自車両の挙動に影響を及ぼしうる先行車両のみを対象として車両挙動予測の処理を行うためである。フィルタリング用閾値A1は統計的な結果から7~8秒程度が望ましい。
また、フィルタリング用閾値A2を用いて判定する理由は、交差車両の挙動に影響を及ぼしうる先行車両のみを対象として車両挙動予測の処理を行うためである。フィルタリング用閾値A2は、走行シーンに基づいて決定され、典型的には、10秒程度とすることが望ましい。
挙動変化検出部55は、物体追跡部43から取得した物体情報の時間変化に基づいて、先行車両として特定された車両VBの挙動変化を検出する。具体的には、挙動変化検出部55は、車両VBの旋回予備動作を検出する。
例えば、車両VBが、車線TL1の車線中心よりも、一方向の側に移動する動作(移動動作)を、車両VBの旋回予備動作として検出するものであってもよい。ここで、一方向の側に移動する動作は、車線幅方向に測った車線TL1の車線中心から車両VBの車両中心までの距離を車線幅で割った値が所定の閾値(例えば0.3)以上であるかに基づいて判定するものであってもよい。
さらに、車両VBが減速動作(例えば、車両VBの加速度が閾値「-20km/h^2」以下である減速動作)を、車両VBの旋回予備動作として検出するものであってもよい。
また、車両VBが一方向への旋回を示すウィンカー表示の動作を、車両VBの旋回予備動作として検出するものであってもよい。
挙動予測用閾値変更部57は、先行車両の有無、自車両や他車両(先行車両及び交差車両を含む)の位置関係、道路情報、挙動変化検出部55において検出した先行車両の挙動変化などの外乱因子に基づいて、補正量Δを決定し、挙動予測用閾値Tの値を増減させる。
図4の「第1走行シーン」では、先行車両として特定された車両VBが存在するため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを1秒だけ増加させる)。
また、車両VB及び車両VCが交差点通過後に進入可能な車線は車線TL5、車線TL6である。そのため、車両VB及び車両VCが交差点通過後に進入可能な車線の数が、2車線以上であり、車両VCの進入先に十分なスペースがあると判定できる。そのため、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。したがって、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
さらに、仮に、自車道路のうち、一方向とは逆向きに旋回予定の車両が走行する車線である車線TL2を除いた車線が2車線以上である場合には、車両VCが交差点内で交差する車線の数は増えるため、車両VCの交差点通過の時間は長くなる。この場合、車両VCの進入確率は小さくなると考えられるため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを増加させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ減少させる)。
また、仮に、車両VCの後方に交差点に進入予定である車両が2台以上待機している場合には、車両VCの後方の車両の待機状態を解消すべく、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。そのため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
さらに、仮に、対向道路が片側1車線の道路である場合であって、車両VCの後方に交差点に進入予定である車両が待機している場合には、車両VCの後方の車両の待機状態を解消すべく、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。そのため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
また、仮に、車両VBの後方に交差点に進入予定である車両が5台以上待機している場合には、車両VBの後方の車両の交差点進入による車両VCの待機を回避すべく、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。そのため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
挙動予測用閾値変更部57は、上述のように増減変更した後の挙動予測用閾値Tの値が、交差車両の進入予測に使用するのに適切な範囲内に収まっていることを確認する(例えば、挙動予測用閾値Tが、上限値8秒以下であり、かつ、下限値4秒以上であることを確認する)。そして、適切な範囲内に収まっている場合には、挙動予測用閾値Tの変更の処理を終了する。
なお、自車両と他車両の位置、姿勢、速度、加速度と道路構造とを用いて、計算によって動的に挙動予測用閾値Tを決定してもよい。
以上、「第1走行シーン」では、道路の形状を片側2車線として記載したが、これに限定されるものではなく、片側1車線や片側3車線以上、車線のない交差点としてもよい。また、左側通行を前提として記載したが、これに限定されるものではなく、右側通行が法整備化されている国で、先行車両を右折車、交差車両を左折車としてもよい。さらに、対象物は自動車を前提として記載したが、その他にも二輪車や軽車両であってもよい。また、交通信号のない交差点であっても、交通信号のある交差点であってもよい。
(第2走行シーン)
次に、図5の「第2走行シーン」に基づいて車両挙動予測を説明する。図5では、自車両VS及び車両VBが走行する車線TL7と、車両VCが走行する車線TL8とが合流する様子が示されている。
道路構造特定部45は、道路情報に基づいて自車両VSが走行する車線TL7と合流点において合流する車線TL8を合流車線として特定する。そして、交差車両特定部51は、合流車線として特定された車線TL8を走行する車両VCを、車両挙動予測の対象となる交差車両として特定する。
なお、車両VCの走行予定経路と自車両VSの走行予定経路の交差する位置までの車両VCの到達時間と、当該位置までの自車両VSの到達時間の差の絶対値が所定の値(例えば1秒)以下であることに基づいて、車両VCを交差車両として特定するものであってもよい。
先行車両特定部53は、物体追跡部43から取得した、自車両VSの前方にある車両VBの挙動に基づいて、車両VBに対する自車両VSのTHW、及び、車両VBの合流点までの到達時間を算出する。そして、先行車両特定部53は、車両VBに対する自車両VSのTHWがフィルタリング用閾値A1(第2閾値)以下であり、かつ、車両VBの合流点までの到達時間がフィルタリング用閾値A2(第3閾値)以下である場合に、車両VBを車両挙動予測の対象となる先行車両として特定する。フィルタリング用閾値A1、フィルタリング用閾値A2を用いて判定する理由は、「第1走行シーン」の場合と同様である。
フィルタリング用閾値A1、フィルタリング用閾値A2を用いて判定する代わりに、先行車両特定部53は、合流点を通過する前の車両VBであって、合流点を通過する際の車両VBに対する車頭時間あるいは衝突余裕時間が、フィルタリング用閾値B1(第4閾値)以下であるような車両VBを車両挙動予測の対象となる先行車両として特定するものであってもよい。
挙動変化検出部55は、物体追跡部43から取得した物体情報の時間変化に基づいて、先行車両として特定された車両VBの挙動変化を検出する。
例えば、車両VBが加速動作(例えば、車両VBの加速度が閾値「10km/h^2」以上である動作)を、車両VBの挙動変化として検出するものであってもよい。
挙動予測用閾値変更部57は、先行車両の有無、自車両や他車両(先行車両及び交差車両を含む)の位置関係、道路情報、挙動変化検出部55において検出した先行車両の挙動変化などの外乱因子に基づいて、補正量Δを決定し、挙動予測用閾値Tの値を増減させる。
図5の「第2走行シーン」では、先行車両として特定された車両VBが存在するため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを1秒だけ増加させる)。
また、挙動予測用閾値変更部57は、車両VCの合流予備動作を検出する。
例えば、車両VCが、車線TL8の車線中心よりも、合流対象の車線である車線TL7の側に移動する動作(移動動作)を、車両VCの合流予備動作として検出するものであってもよい。ここで、合流対象の車線の側に移動する動作は、車線幅方向に測った車線TL8の車線中心から車両VCの車両中心までの距離を車線幅で割った値が所定の閾値(例えば0.3)以上であるかに基づいて判定するものであってもよい。
さらに、車両VCが加速動作(例えば、車両VCの加速度が閾値「10km/h^2」以上である動作)を、車両VCの合流予備動作として検出するものであってもよい。
また、車両VCが合流対象の車線の側への旋回を示すウィンカー表示の動作を、車両VCの合流予備動作として検出するものであってもよい。
上述のような合流予備動作を車両VCが示している場合、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。したがって、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
上述のような合流予備動作を車両VCが示していない場合であっても、車両VCが合流車線の終了地点に近づいた結果、車両VCが合流点に到達するまでの時間が、フィルタリング用閾値B2(第5閾値)以下となった場合には、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。したがって、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
また、車両VCの速度が、自車両VSの速度よりも所定の割合以上大きい場合(例えば20%以上大きい場合)には、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。したがって、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
挙動予測用閾値変更部57は、上述のように増減変更した後の挙動予測用閾値Tの値が、交差車両の進入予測に使用するのに適切な範囲内に収まっていることを確認する(例えば、挙動予測用閾値Tが、上限値8秒以下であり、かつ、下限値4秒以上であることを確認する)。そして、適切な範囲内に収まっている場合には、挙動予測用閾値Tの変更の処理を終了する。
なお、自車両と他車両の位置、姿勢、速度、加速度と道路構造とを用いて、計算によって動的に挙動予測用閾値Tを決定してもよい。
以上、「第2走行シーン」では、車線同士の合流の場合として記載したが、これに限定されるものではなく、例えば、道路上に工事車両や駐車車両が存在することにより道路幅が減少する場合であってもよい。
(第3走行シーン)
次に、「第3走行シーン」を例に挙げて説明する。図6では、T字路の手前において、自車両VS及び車両VBが車線TL9を走行しており、車両VCが、T字路の交差点に進入して、車線TL12から車線TL13若しくは車線TL14に向かって走行している様子が示されている。
図6において、車線TL9は左折・直進のいずれも可能な車線であり、車線TL10は、直進専用の車線である。
道路構造特定部45は、道路情報に基づいて自車両VSの走行予定経路上に存在するT字路を特定する。図6では、当該T字路の交差点において、車線TL9、車線TL10、車線TL13、車線TL14が優先車線となっており、一方、車線TL11、車線TL12は、当該優先車線よりも優先度が低い非優先車線となっている。
交差車両特定部51は、物体追跡部43から取得した非優先車線である車線TL12を走行する車両VCの挙動に基づいて、車両VCのT字路の交差点への進入予定の有無を判定する。そして、車両VCがT字路の交差点への進入予定ありと判定された場合には、
交差車両特定部51は、車両VCを車両挙動予測の対象となる交差車両として特定する。
なお、車両VCが、非優先車線である車線TL12を走行していることに基づいて、車両VCを対象となる交差車両として特定するものであってもよい。車両VCの走行予定経路と自車両VSの走行予定経路の交差する位置までの車両VCの到達時間と、当該位置までの自車両VSの到達時間の差の絶対値が所定の値(例えば1秒)以下であることに基づいて、車両VCを交差車両として特定するものであってもよい。
また、車両VCが、車線TL12の車線中心から外れて車線TL12の端に移動する動作をした場合(移動動作)、車両VCが減速動作をした場合、若しくは、車両VCが旋回を示すウィンカー表示の動作をした場合などに、車両VCを交差車両として特定するものであってもよい。さらには、車両VCの交差点までの到達時間に基づいて、車両VCを交差車両として特定するものであってもよい。
先行車両特定部53は、物体追跡部43から取得した自車道路を走行する車両VBの挙動に基づいて、車両VBに対する自車両VSのTHW、及び、車両VBの交差点までの到達時間を算出する。そして、先行車両特定部53は、車両VBに対する自車両VSのTHWがフィルタリング用閾値A1(第2閾値)以下であり、かつ、車両VBのT字路の交差点までの到達時間がフィルタリング用閾値A2(第3閾値)以下である場合に、車両VBを車両挙動予測の対象となる先行車両として特定する。さらに、先行車両特定部53は、車両VBが自車両VSの前方にあることを判定する。フィルタリング用閾値A1、フィルタリング用閾値A2を用いて判定する理由は、「第1走行シーン」の場合と同様である。
挙動変化検出部55は、「第1走行シーン」の場合と同様に、物体追跡部43から取得した物体情報の時間変化に基づいて、先行車両として特定された車両VBの挙動変化を検出する。
挙動予測用閾値変更部57は、先行車両の有無、自車両や他車両(先行車両及び交差車両を含む)の位置関係、道路情報、挙動変化検出部55において検出した先行車両の挙動変化などの外乱因子に基づいて、補正量Δを決定し、挙動予測用閾値Tの値を増減させる。
図6の「第3走行シーン」では、先行車両として特定された車両VBが存在するため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを1秒だけ増加させる)。
また、車両VCがT字路の交差点通過後に進入可能な車線は、車線TL9、車線TL10、車線TL13、車線TL14である。そのため、車両VCがT字路の交差点通過後に進入可能な道路の数が、2車線以上であり、車両VCの進入先に十分なスペースがあると判定できる。そのため、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。したがって、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
さらに、仮に、車両VCの後方にT字路の交差点に進入予定である車両が2台以上待機している場合には、車両VCの後方の車両の待機状態を解消すべく、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。そのため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
また、非優先車線が片側1車線である道路である場合であって、車両VCの後方にT字路の交差点に進入予定である車両が待機している場合には、車両VCの後方の車両の待機状態を解消すべく、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。そのため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
さらに、仮に、車両VBの後方にT字路の交差点に進入予定である車両が5台以上待機している場合には、車両VBの後方の車両の交差点進入による車両VCの待機を回避すべく、車両VCの進入確率は大きくなると考えられる。そのため、挙動予測用閾値変更部57は挙動予測用閾値Tを減少させる(例えば、補正量Δを0.5秒だけ増加させる)。
挙動予測用閾値変更部57は、上述のように増減変更した後の挙動予測用閾値Tの値が、交差車両の進入予測に使用するのに適切な範囲内に収まっていることを確認する(例えば、挙動予測用閾値Tが、上限値8秒以下であり、かつ、下限値4秒以上であることを確認する)。そして、適切な範囲内に収まっている場合には、挙動予測用閾値Tの変更の処理を終了する。
なお、自車両と他車両の位置、姿勢、速度、加速度と道路構造とを用いて、計算によって動的に挙動予測用閾値Tを決定してもよい。
以上、「第3走行シーン」では、道路の形状を片側2車線として記載したが、これに限定されるものではなく、片側1車線や片側3車線以上、車線のないT字路としてもよい。また、左側通行を前提として記載したが、これに限定されるものではなく、右側通行であってもよい。さらに、対象物は自動車を前提として記載したが、その他にも二輪車や軽車両であってもよい。また、交通信号のない交差点であっても、交通信号のある交差点であってもよい。
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、自車両の外部の物体を検出し、検出した物体から、自車両の走行予定経路と交差する走行予定経路を有する交差車両と、自車両の走行予定経路を走行している先行車両とを特定し、先行車両の挙動変化を検出し、挙動変化に基づいて第1閾値を設定し、自車両の走行予定経路における先行車両と自車両で挟まれる区間の距離を示す指標値と第1閾値に基づいて、自車両の走行予定経路への交差車両の進入を予測する。
これにより、走行方向前方の先行車両の挙動変化による影響も考慮した予測が行われるため、交差車両の進入予測の精度が向上する。さらには、進入予測の精度の向上により、交差車両の進入予測に基づく自車両の制御において、自車両の急減速が生じる可能性を低減できる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、指標値が第1閾値以上である場合に、自車両の走行予定経路に交差車両が進入すると予測するものであってもよい。このため、交差車両の進入予測を、指標値と第1閾値との比較という、計算コストの少ない方法で実現できる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、指標値と第1閾値に基づいて、自車両の走行予定経路に交差車両が進入を開始する時刻を予測するものであってもよい。このため、進入予測結果と共に進入開始時刻の情報を得ることができ、交差車両の進入予測に基づく自車両の制御を行う際に、より精度のよい自車両の制御を行うことが可能となる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、地図情報に基づいて、自車両の走行予定経路上の交差点であって、自車両が走行する自車道路と対向する対向道路に、対向道路から自車道路に向かう方向である一方向への旋回可否を示す右左折信号を有しない交差点を特定するものであってもよい。これにより、交差車両の進入予測を、自車両の急減速が生じやすい走行シーンにおいて実施することができる。その結果、自車両の急減速が生じる可能性を低減できる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、対向道路を走行し、交差点において一方向へ旋回予定の車両を、交差車両として特定するものであってもよい。このため、自車両の急減速が生じさせる原因となり得る交差車両について進入予測を行うことができる。さらには、自車両の急減速が生じる可能性を低減できる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、交差点に進入する前の先行車両の旋回予備動作に基づいて、先行車両の挙動変化を検出するものであってもよい。例えば、旋回予備動作は、先行車両の減速動作、先行車両が走行する車線内における先行車両の一方向への移動動作、先行車両の右左折ウィンカー表示の動作などである。
このような先行車両の旋回予備動作は、先行車両の挙動変化が実際に生じるよりも早いタイミングで発生しうるものであり、先行車両の旋回予備動作に基づいて先行車両の挙動変化を検出することで、交差車両の進入予測をより早いタイミングで行うことができる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、先行車両が交差点に進入を開始するまでの時間が第2閾値以下であり、かつ、先行車両に対する自車両の衝突余裕時間が第3閾値以下であるような先行車両を特定するものであってもよい。これにより、自車両への影響を生じさせないことが明らかな先行車両を、進入予測に用いる対象から除外することができる。その結果、交差車両の進入予測を行う際の計算コストを削減できる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、先行車両及び交差車両が交差点を通過した後に進入する道路が片側2車線以上の車線を有する道路である場合に、第1閾値を減少させるものであってもよい。交差車両と先行車両の進入先が片側2車線以上の車線を有する道路である場合には、交差車両の進入先に十分なスペースがあると想定でき、交差車両の進入確率が大きくなることが期待される。このような道路構造と交差車両の進入確率の関係を、交差車両の進入予測に利用することができるため、進入予測の精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、交差点に進入する前の交差車両の進行方向後方に、交差点に進入予定である2台以上の車両が待機している場合に、第1閾値を減少させるものであってもよい。このような場合、交差車両の後方の車両の待機状態を解消すべく、交差車両の進入確率は大きくなると考えられる。このような車両の待機状態と交差車両の進入確率の関係を、交差車両の進入予測に利用することができるため、進入予測の精度を向上させることができる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、交差点に進入する前の先行車両の進行方向後方に、交差点に進入予定である所定の台数以上の車両が待機している場合に、第1閾値を減少させるものであってもよい。このような場合、先行車両の後方の車両の交差点進入による交差車両の待機を回避すべく、交差車両の進入確率は大きくなると考えられる。このような車両の待機状態と交差車両の進入確率の関係を、交差車両の進入予測に利用することができるため、進入予測の精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、交差点に進入する前の交差車両の進行方向後方に、交差点に進入予定である車両が待機しており、かつ、対向道路が片側1車線である場合に、第1閾値を減少させるものであってもよい。このような場合、交差車両の後方の車両の待機状態を解消すべく、交差車両の進入確率は大きくなると考えられる。このような、道路構造及び車両の待機状態と交差車両の進入確率の関係を、交差車両の進入予測に利用することができるため、進入予測の精度を向上させることができる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、先行車両及び自車両が走行する道路が、一方向とは逆向きに旋回予定の車両が走行する車線を除いて片側2車線以上の車線からなる場合に、第1閾値を増加させるものであってもよい。この場合、交差車両が交差点内で交差する車線の数は増えるため、車両VCの交差点通過の時間は長くなる。この場合、車両VCの進入確率は小さくなると考えられる。このような、道路構造と交差車両の進入確率の関係を、交差車両の進入予測に利用することができるため、進入予測の精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、地図情報に基づいて、先行車両及び自車両が走行する車線と合流点において合流する合流車線を特定するものであってもよい。これにより、交差車両の進入予測を、自車両の急減速が生じやすい走行シーンにおいて実施することができる。その結果、自車両の急減速が生じる可能性を低減できる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、合流点を通過する前の先行車両の加速動作に基づいて、先行車両の挙動変化を検出するものであってもよい。先行車両の加速動作に基づいて先行車両の挙動変化を検出することで、交差車両の進入予測をより早いタイミングで行うことができる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、合流点を通過する前の先行車両であって、合流点を通過する際の自車両に対する車頭時間が第4閾値以下であるような先行車両を特定するものであってもよい。これにより、自車両への影響を生じさせないことが明らかな先行車両を、進入予測に用いる対象から除外することができる。その結果、交差車両の進入予測を行う際の計算コストを削減できる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、合流点を通過する前の先行車両であって、合流点を通過する際の自車両に対する衝突余裕時間が第4閾値以下であるような先行車両を特定するものであってもよい。これにより、自車両への影響を生じさせないことが明らかな先行車両を、進入予測に用いる対象から除外することができる。特に、車頭時間の代わりに衝突余裕時間を用いて先行車両を特定するものであるため、先行車両の速度変化に基づいて自車両への影響を生じさせないことが明らかな先行車両を、進入予測に用いる対象から除外することができる。その結果、交差車両の進入予測を行う際の計算コストを削減できる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、合流点を通過する前の合流車線を走行する車両を、交差車両として特定するものであってもよい。このため、自車両の急減速が生じさせる原因となり得る交差車両について進入予測を行うことができる。さらには、自車両の急減速が生じる可能性を低減できる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、合流点に到達するまでの時間が第5閾値以下である交差車両が合流予備動作を示していない場合に、第1閾値を減少させるものであってもよい。交差車両が合流車線の終了地点に近づいた場合には、交差車両が合流予備動作を示していない場合であっても、交差車両の進入確率は大きくなると考えられる。このような、道路構造と交差車両の進入確率の関係を、交差車両の進入予測に利用することができるため、進入予測の精度を向上させることができる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、交差車両の速度が、自車両の速度よりも所定の割合以上大きい場合に、第1閾値を減少させるものであってもよい。この場合には、交差車両の進入確率は大きくなると考えられる。このような自車両と交差車両との速度関係が交差車両の進入確率に与える性質を、交差車両の進入予測に利用することができるため、進入予測の精度を向上させることができる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、地図情報に基づいて、自車両の走行予定経路上のT字路を特定するものであってもよい。これにより、交差車両の進入予測を、自車両の急減速が生じやすい走行シーンにおいて実施することができる。その結果、自車両の急減速が生じる可能性を低減できる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、T字路で合流する複数の道路のうち自車両が走行する車線よりも優先度が低い非優先車線を走行してT字路に進入予定の車両を、交差車両として特定するものであってもよい。このため、自車両の急減速が生じさせる原因となり得る交差車両について進入予測を行うことができる。さらには、自車両の急減速が生じる可能性を低減できる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、T字路に進入する前の先行車両の旋回予備動作に基づいて、先行車両の挙動変化を検出するものであってもよい。例えば、旋回予備動作は、先行車両の減速動作、先行車両が走行する車線内における先行車両の一方向への移動動作、先行車両の右左折ウィンカー表示の動作などである。
このような先行車両の旋回予備動作は、先行車両の挙動変化が実際に生じるよりも早いタイミングで発生しうるものであり、先行車両の旋回予備動作に基づいて先行車両の挙動変化を検出することで、交差車両の進入予測をより早いタイミングで行うことができる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法及び車両挙動予測装置は、先行車両がT字路に進入を開始するまでの時間が第2閾値以下であり、かつ、先行車両に対する自車両の衝突余裕時間が第3閾値以下であるような先行車両を特定するものであってもよい。これにより、自車両への影響を生じさせないことが明らかな先行車両を、進入予測に用いる対象から除外することができる。その結果、交差車両の進入予測を行う際の計算コストを削減できる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法を用いる車両制御方法、及び、車両挙動予測装置を用いる車両制御装置において、自車両の走行予定経路への交差車両の進入確率が危険水準値以上である場合には、自車両の走行予定経路と交差車両の走行予定経路の交差する位置を走行する前に自車両の減速を行うものであってもよい。これにより、自車両の走行予定経路へ交差車両が実際に進入を開始する前に、事前に自車両の減速を行うことが可能となり、自車両の急減速を回避することができる。
また、本実施形態に係る車両挙動予測方法を用いる車両制御方法、及び、車両挙動予測装置を用いる車両制御装置において、指標値が第1閾値未満であり、指標値と第1閾値との差の絶対値が所定値以下である場合、先行車両と自車両の間の車間距離を減少させる制御を行うものであってもよい。先行車両と自車両の間の車間距離が減少することで、交差車両の進入確率が減少するため、予測結果に反する状況が生じる可能性を抑えることができ、自車両の急減速を回避できる。
さらに、本実施形態に係る車両挙動予測方法を用いる車両制御方法、及び、車両挙動予測装置を用いる車両制御装置において、指標値が第1閾値以上であり、指標値と第1閾値との差の絶対値が所定値以下である場合、先行車両と自車両の間の車間距離を増加させる制御を行うものであってもよい。先行車両と自車両の間の車間距離が増加することで、交差車両の進入確率が増加するため、予測結果に反する状況が生じる可能性を抑えることができ、自車両が無駄に交差車両の進入を待機する状況を回避できる。
以上、実施形態に沿って本発明の内容を説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
上述した実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路により実装され得る。処理回路は、電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含む。処理装置は、また、実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC)や従来型の回路部品のような装置を含む。