JP2018188181A - プレススルーパック包装体用蓋材及びプレススルーパック包装体 - Google Patents

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Abstract

【課題】低温、短時間でヒートシールした場合でも十分なヒートシール強度を有し、蓋材の滑り性が良好で、速い剥離速度における蓋材破れの伝搬に対する抵抗性(耐ピール性)に優れたPTP包装体用蓋材を提供する。【解決手段】ヒートシール剤からなるヒートシール層3、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材において、ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂、及びガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とした接着性樹脂と、フィラーとを含み、ヒートシール層のうちフィラーを含まない部分の厚みが3〜20μmであり、フィラーが、ポリオレフィンワックス、及び変性ポリオレフィンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体を主体としてなる有機フィラーを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、主に錠剤やカプセル等の医薬品、又はキャンディーやチョコレート等の食品のプレススルーパック包装体に好適に使用できる、プレススルーパック包装用蓋材及びプレススルーパック包装体に関する。
医薬品や食品等の包装形態の一つとして、底材と蓋材とを備えるプレススルーパック(本明細書において「PTP」と称する場合がある)包装体が知られている。PTP包装体は、ポリ塩化ビニル系樹脂又はポリプロピレン系樹脂等からなるプラスチックシートを、真空成形又は圧空成形することによって、ポケット状の凹部を有する底材として成形し、この凹部に内容物を充填し、その後、凹部以外の部分であるフランジ部をヒートシール性の蓋材でシールすることによって形成される。
PTP包装体は、収納された内容物に対して底材の外側から蓋材の方向に力を加えて、蓋材を破ることによって、内容物を取り出すように構成されたものである。従来のPTP包装体の蓋材としては、例えば、蓋材フィルムと、該蓋材フィルムの一方の表面に設けられたヒートシール層、並びに蓋材フィルムの他方の表面(反対面)に設けられた印刷部及びOP(オーバープリント)ニス層とで構成される蓋材が知られている。
蓋材フィルムとしては、現在、内容物を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)に優れた、アルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂の延伸フィルム等が用いられている。ヒートシール層を形成するためのヒートシール剤としては、塩化ビニル樹脂系ヒートシール剤(特許文献1参照)、塩化ビニル・ポリエステル樹脂系ヒートシール剤(特許文献2参照)、アクリル変性ポリプロピレン系ヒートシール剤(特許文献3参照)等が知られている。また、フィラー含有するヒートシール剤としては、ポリメチルメタクリレート架橋共重合体(架橋PMMA)ビーズやポリスチレン架橋重合体(架橋PS)ビーズを混合したエマルジョン型ヒートシール剤(特許文献4参照)が知られている。
特開2008−174302号公報 特開2005−178829号公報 特開平09−57920号公報 特開2012−201839号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたヒートシール剤を使用したPTP包装体用蓋材は、塩化ビニル−ポリエステル樹脂等の樹脂が、塗工前には溶媒であるトルエン、酢酸エチル、MEK等の有機溶剤を大量に含みそれらに溶解しているため、塗工時の乾燥工程において、有機溶剤中毒の観点から大規模な有機溶剤対応の換気設備が必要となったり、乾燥条件によっては巻き取り工程で巻きジワが発生して外観が悪化したり、その後のスリット工程の繰り出し時にブロッキングが発生したりする。また、蓋材フィルムに熱可塑性樹脂の延伸フィルムを用いる場合は、樹脂は一般的に耐薬品性に劣るため、塗工が困難となる場合が多い。ここで「ブロッキング」とは、ロール状に巻き取った蓋材において、蓋材の一方の面と、ロールを一周した後のもう一方の面とが貼り付いてしまい、剥がしにくくなる現象をいう。
また、特許文献1〜3に記載のPTP包装体用蓋材は、PTP包装工程において底材とヒートシールする際のシール温度を高温(一般的には220℃〜260℃程度)とする必要があるために、PTPの内容物(錠剤、食品等)が熱に晒されやすい。このため、特許文献1〜3に記載のPTP包装体用蓋材は、熱のダメージをうけやすい内容物に適用するのが困難であり、内容物と蓋材とのクリアランス(図1におけるクリアランス9を参照)が小さすぎる場合は、内容物に焼け跡がつく場合があった(例えば「錠剤のヤケド」といわれる現象)。そのため、底材の凹部サイズと内容物のサイズが制限されてしまう。
また、高温にてヒートシールされたPTP包装体は、底材の加熱収縮等によりカールしやすく、包装体の外観を損ねる、PTP包装体を重ね合わせたものをピロー包装や外装箱に梱包する際に重ね合わせにくい、梱包の容積が大きくなる、PTP包装体がひっかかってうまく箱に入らない等の問題が生じやすい。
特許文献4に記載されたフィラー含有する接着性樹脂組成物を塗工してなる接着性積層体として、フィラーとして0.25〜1.00質量%の架橋PMMA粒子や架橋PS粒子を含有したエチレン酢酸ビニル系エマルジョン型ヒートシール剤を塗工したOPPフィルムの開示があり、保管後の耐ブロッキング性や低温ヒートシール性に優れるとしている。しかしながら、PTP包装体用蓋材とした場合、夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)高湿(90%RH)下で保管した後の耐ブロッキング性に劣る、低温(100℃程度)短時間(0.1秒)でヒートシールしたPTP包装体では、フランジ部分に折り込みシワが入って未接着部分が発生してしまい、PTP包装体の外観と低温ヒートシール性に劣る等の問題がある。
また、低温ヒートシール性を改善するために、単純にヒートシール剤のガラス転移温度Tgを低下させると、蓋材シール面がタック性を有するようになり、蓋材の滑り性が低下するという問題がある。
さらに、低温、短時間でヒートシールしたPTP包装体は伝熱が乏しく、底材に蓋材が食い込むことが無いため、錠剤を取り出した後、破られた蓋材を素早く剥離するとシール目で蓋材が破断しないため、隣の錠剤ポケット部分まで蓋材が剥離してしまうという問題もある。
そこで本発明は、低温、短時間でヒートシールした場合でも十分なヒートシール強度を有し、蓋材の滑り性が良好で、速い剥離速度における蓋材破れの伝搬に対する抵抗性(耐ピール性)に優れたPTP包装体を得ることを可能にする、PTP包装体用蓋材を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、特定のガラス転移温度を有するアクリル系樹脂、及び/又は特定のガラス転移温度を有するポリエステル系樹脂を主体とした接着性樹脂と、特定の含有量の有機フィラーとを含むヒートシール剤からなる特定の厚みのヒートシール層を有するPTP包装体用蓋材、及びそれを用いたPTP包装体とすることで、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下のPTP包装体用蓋材を提供するものである。
(1)ヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材において、
前記ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂、及びガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とした接着性樹脂と、フィラーとを含み、
前記ヒートシール層のうち前記フィラーを含まない部分の厚みが3〜20μmであり、
前記フィラーが、ポリオレフィンワックス、及び変性ポリオレフィンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体を主体としてなる有機フィラーを含み、
前記有機フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して5質量部超30質量部以下である
ことを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材。
(2)前記接着性樹脂が、アクリル系樹脂を主体とした樹脂からなり、
前記アクリル系樹脂が、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、及びアクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基をもつエチレン性不飽和単量体と、エチレン、スチレン、及びα−メチルスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の他の単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる共重合体である、
(1)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(3)前記有機フィラーの粒子径が、前記ヒートシール層のうち前記フィラーを含まない部分の厚みの0.02倍以上1.0倍未満である、(1)又は(2)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(4)前記フィラーが、アンチブロッキング粒子をさらに含み、
前記アンチブロッキング粒子の粒子径が、前記ヒートシール層のうち前記フィラーを含まない部分の厚みの1.0倍以上である、
(3)に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(5)前記蓋材フィルムが、スチレン系樹脂を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の蓋材と、内容物を収容する凹部、及び前記プレススルーパック包装体用蓋材のヒートシール層と貼り合わされるフランジ部を有する底材と、を互いに貼り合わせてなるプレススルーパック包装体。
(7)前記底材と前記ヒートシール層との間の動摩擦係数(μD)が0.8未満である、
(6)に記載のプレススルーパック包装体。
(8)前記底材を構成する樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂を含む、(7)に記載のプレススルーパック包装体。
本発明によれば、低温、短時間でヒートシールした場合でも十分なヒートシール強度を有し、蓋材の滑り性が良好で、速い剥離速度における蓋材破れの伝搬に対する抵抗性(耐ピール性)に優れたPTP包装体を得ることを可能にする、PTP包装体用蓋材を提供することができる。
図1は、本発明に係るPTP包装体用蓋材を備えたPTP包装体の一実施形態を示す断面図である。 図2は、本発明に係るPTP包装体用蓋材の一実施形態を示す断面図である。 図3は、本発明に係るPTP包装体の一実施形態を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態のPTP包装体用蓋材は、内容物として、主に錠剤やカプセル等の医薬品、又はキャンディーやチョコレート等の食品等を充填するためのPTP包装体に用いられるものである(ここでは、錠剤を充填する場合を例示する。)。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、PTP包装体用蓋材を、単に「蓋材」と称する場合がある。
<PTP包装体>
図1に示す本実施形態のPTP包装体10は、底材1と本実施形態のPTP包装体用蓋材8とを備える。底材1は、成型されたポケット状の凹部1aと、蓋材8と貼りあわされるフランジ部1bとを有する。凹部1aには、内容物2が充填されている。蓋材8は、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3を備え、ヒートシール層3はフランジ部1bで底材1と接着している。
蓋材8のうち、ヒートシール層3は底材1のフランジ部1bの表面と蓋材フィルム4Aの表面F1とを接着している。ヒートシール層3は、底材1のフランジ部1bと融着される側の面を形成している。
また、蓋材フィルム4Aの底材1と反対側の表面F2上には、製品名称ロゴ等の印刷部分5が、着色されたウレタン系樹脂やアクリル系樹脂等のインキにより形成される場合があり、この場合、印刷部分5を保護するための表面保護層(OP(オーバープリント)ニス層)6が表面F2の全面を覆うように形成される(図1参照)。更に、内容物が医薬品である場合には、医療過誤防止を目的に表面F1にも印刷やアルミ等の蒸着処理がなされる場合がある。
ヒートシール層3は、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂、及びガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を主体とした接着性樹脂3bと、フィラーとを含んでいる。
本実施形態の蓋材8は、図2に示す様に、ヒートシール層3のうちフィラーを含まない部分の厚みSが3〜20μmである。
また、フィラーは、ポリオレフィンワックス、及び変性ポリオレフィンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体を主体としてなる有機フィラー3cを含んでおり、有機フィラー3cの含有量は、100質量部の接着性樹脂3bに対して5質量部超30質量部以下である。この有機フィラー3cを含むことにより、蓋材8が優れた滑り性を示すことができる。ここで、「優れた滑り性」とは、蓋材8と底材1の間の摩擦係数が低く、蓋材8と底材1が接触しても、底材1に対して蓋材8が容易に滑ることを指す。
本実施形態の蓋材8は、フィラーが、アンチブロッキング粒子(本明細書において、単に「AB粒子」と称する場合がある)3aを更に含んでいても良い。AB粒子3aは、図2及び図3に示すその粒子径(ヒートシール前r1、ヒートシール後r2)が、ヒートシール層3のフィラーを含まない部分の厚みSの1.0倍以上であることが好ましい。
本実施形態の蓋材を有する包装体10は、図3に示す様に、内容物2を収容する凹部1a、及びプレススルーパック包装体用蓋材8のヒートシール層3と貼り合わされるフランジ部1bを有する底材1と、を互いに貼り合わせてなり、フランジ部1bとヒートシール層3との貼り合わせ面の少なくとも一部において、フランジ部1bにAB粒子3aが食い込んでいる構造をとることで、100〜150℃程度の低温で、0.1〜0.2秒程度の短時間ヒートシールをした場合でも、底材1と蓋材8とが十分なヒートシール強度を有し、ヒートシールされるフランジ部分1bに折り込みシワが入ることのない良好な外観を有する。
また、図1に示す様な内容物2と蓋材8とのクリアランス9が小さい場合であっても、内容物2が高温の熱に晒されにくい、PTP成形機の昇温時間が短い、PTP包装体がカールしにくい、という長所も有する。
<PTP包装体用蓋材>
(蓋材フィルム)
蓋材フィルム4Aは、内容物2を押し出すことによって容易に破れるという性質(プレススルー性)を持つ素材であればいずれのものからなっていてもよく、一般的にはアルミ箔、グラシン紙、熱可塑性樹脂からなるフィルム等が挙げられ、廃棄時の易焼却性、リサイクル性、印刷判読性等の観点から、熱可塑性樹脂を含むフィルムが好ましく、熱可塑性樹脂からなるフィルムが更に好ましい。
蓋材フィルム4Aが熱可塑性樹脂からなるフィルムである場合は、延伸フィルムであることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、フィルム状に製膜できるものであれば特に制限されず、スチレン系樹脂、エチレン系樹脂やプロピレン系樹脂等のオレフィン系樹脂、エステル系樹脂(ポリ乳酸を含む)、アミド系樹脂等が挙げられる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。熱可塑性樹脂の中でも、剛性と脆性の観点から、好ましくはスチレン系樹脂が用いられる。
スチレン系樹脂とは、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体及びこれらの混合組成物であり、スチレン系単量体とは、スチレン(例えば、GPPS)、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン等が挙げられる。また、スチレン系単量体の共重合体とは、スチレン成分が50質量%(wt%)以上である、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、
スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酸無水物共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、耐衝撃性ポリスチレン(例えば、HIPS)、スチレン−α−メチルスチレン共重合体等が挙げられる。
また、スチレン系樹脂には、ポリスチレンとポリフェニレンエーテル樹脂のポリマーアロイ(m−PPE)等も用いられる。
これらの中でも、より好ましくは、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、及び、これら3種の共重合体のいずれか1種を構成する2種のモノマー成分に更なるモノマー成分であるエステル成分を含む三元共重合樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が用いられる。
上記三元共重合樹脂のエステル成分としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等が挙げられる。これらエステル成分は、例えば押出機での溶融加工時等の、連続して熱が加わるような場合に、樹脂の熱安定性を向上させる点で有効である。
なお、上記スチレン系単量体の共重合体は、共重合する成分の種類数に関わらず、「スチレン系共重合樹脂」とも呼ばれる。
上記のスチレン系共重合樹脂におけるスチレン成分は、スチレン系共重合樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として70〜97質量%であることが好ましく、75〜95質量%がより好ましい。スチレン成分が97質量%以下であると、プレススルー性が向上するばかりか、樹脂の耐熱性が向上し、PTP包装体10の製造工程において底材とのヒートシール時に蓋材フィルム4Aが変形せずに安定した製造が可能となる。また、スチレン成分が70質量%以上であると蓋材フィルム4Aを作る際に延伸製膜しやすく、剛性とプレススルー性の両立が可能となる。
上記のうち、スチレン−メタクリル酸共重合体及びこれにエステル成分を含む三元共重合樹脂が押出延伸製膜のしやすさといった点でより好ましい。
本実施形態において好適に用いられる上記スチレン系樹脂に対し、延伸製膜する際の安定性(ネッキングがなく、延伸開始位置が安定しており、実用上問題がない程度に厚さ斑が小さい(一般的にRとして10μm以下))を向上させ、また、その後のPTP包装にいたる種々の工程において、一時停止後の再起動時や包装工程の打ち抜き時等の衝撃に対する耐衝撃性が必要とされる場合がある。これらの特性を改善する目的で、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、スチレン−共役ジエン系共重合体、及びスチレン−共役ジエン系共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種を、スチレン系樹脂を構成する樹脂成分の合計を基準(100質量%)として0.5〜80質量%配合するのが好ましい。より好ましい配合量は、1.0〜45質量%であり、更に好ましい配合量は、1.0〜30質量%である。0.5質量%以上配合した場合、延伸の安定性や耐衝撃性が改善され、80質量%以下の場合はプレススルー性、フィルムの腰(スティフネス)が保たれる。
蓋材フィルム4Aを熱可塑性樹脂で形成する場合、当該熱可塑性樹脂にフィラー、特に無機フィラーを配合してもよい。無機フィラーを配合しなくとも、良好なプレススルー性の発現は可能であるが、PTP包装体10の使用者が常に健常者とは限らず、力が弱い高齢者や子供も使用者となり得る点も考慮して、内容物2を押し出す際の使用感の好みに応じて、無機フィラーの配合により突刺し強さを低下させ、プレススルー性を調節することが可能である。無機フィラーとしては、非晶質アルミナ珪酸塩、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、マイカ、ワラストナイト、クレー、炭酸カルシウム、ガラス繊維、硫酸アルミニウム等を使用することができる。
また、蓋材フィルム4Aには、当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、上記無機フィラーの分散を補助する金属石鹸、着色剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の配合や、印刷や蒸着処理の特性改善を目的としたコロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、AC(アンカーコート)処理等の処理を行ってもよい。
特に、白色の着色剤や印刷は、下記の理由から好ましい。近年、医薬品用のPTP包装体では、従来の製品名称ロゴや使用方法を示す図柄の他に、医療事故の防止やトレーザビリティーの確保を目的とした商品コード、有効期限、製造番号、数量といった各種情報を含んだバーコードを印刷することのニーズが高まりつつある。熱可塑性樹脂に白色の着色剤を配合した蓋材フィルム4Aや白色印刷したものを用いると、バーコードの読取りの際、線のない部分(蓋材フィルム4Aが直接見える部分)が白いために、無地のアルミ箔の蓋材に比べ鏡面反射が起こりにくく、バーコードの線のある部分(一般的には黒色)との色の濃淡もあるため、バーコードが読み取りやすく好ましい。
蓋材フィルム4Aを熱可塑性樹脂で形成する場合、当該熱可塑性樹脂のビカット軟化点は、底材1とのヒートシール時において蓋材フィルム4Aにシワ等の変形が発生しない安定したヒートシールが可能となる観点から、好ましくは80℃以上であり、更に好ましくは95℃以上、最も好ましくは110℃以上である。後述するヒートシール剤は、低温ヒートシールに適しているため、蓋材フィルム4Aの材質が耐熱性の低いもの(具体的にはビカット軟化点が80〜150℃又は融点が80〜150℃である材質)であっても、ヒートシール用の蓋材フィルム4Aとして用いることができる。
蓋材フィルム4Aは、延伸フィルムであることが好ましい。蓋材フィルム4Aは、使用に供されるまでの各加工工程でフィルムに強い張力が負荷される場合が多いため、各加工に耐え得る引張り強度が必要となる。熱可塑性樹脂フィルムは延伸配向されることにより延伸方向の引張り強度が大きく向上する一方、突刺し強さの向上は比較的小さい傾向にある。このため、熱可塑性樹脂フィルムを薄くしたり、無機フィラーを添加したりすることで突刺し強度が低下した場合でも、延伸フィルムとすることで、加工に耐え得る引張り強度を付与することができる。
延伸フィルムを製造する方法の代表的な例として、熱可塑性樹脂(必要に応じて無機フィラーを所定の割合で配合した樹脂)を、スクリュー押出機等により溶融混錬し、Tダイによりシート状にした後、ロール延伸又はテンター延伸により一軸延伸する方法、ロール延伸に続いてテンター延伸することにより二軸延伸する方法、インフレーション法により延伸する方法等が挙げられる。この時の延伸倍率は縦及び横の少なくとも一方向で2〜20倍が好ましく、5〜10倍がより好ましい。
蓋材フィルム4Aは、JIS Z1707の突刺し強さ試験に準拠して測定される突刺し強さが1〜5Nであることが好ましい。突刺し強さが1N以上であると、強度が適度でPTP包装体10として使用したときに意図せずに蓋材8が破れてしまうことが少ない。突刺し強さが5N以下であると、フィルムが破れやすく適度なプレススルー性が発現する。PTP包装体10の使用者が力の弱い高齢者や子供である場合を考慮すると、突刺し強さは1〜3Nであることがより好ましい。
なお、突刺し強さは、JIS Z1707に準拠し、直径1mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力のことをいう。
蓋材フィルム4Aの厚みは、5〜50μmが好ましく、より好ましくは15〜30μmである。厚みが5μm以上であるとフィルムの強度が適度で加工工程に耐える引張り強度が発現しやすく、50μm以下であると適度なプレススルー性が発現しやすい。
(ヒートシール層)
蓋材8を構成するヒートシール層3は、後述するヒートシール剤を原料とするものであり、ヒートシール剤のみからなることが好ましい。
ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂、及びガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下、「樹脂α」と称する場合がある。)を主体としてなる接着性樹脂3bとフィラーとを含む。本実施形態では、フィラーとして有機フィラー3c(後述)を含み、任意選択的にアンチブロッキング粒子3a(後述)を含む。
なお、本開示における主体とする成分とは、最も含有量(含有率)が多い成分を意味し、その含有量は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
−接着性樹脂−
樹脂αは、熱によって樹脂αが融解し、又は樹脂αが底材1と共に融解し、相互に融着(ヒートシール)し得るものとして、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂、又はガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるポリエステル系樹脂を、単独で用いてもよいが、二種以上を併用してもよい。
接着性樹脂3bに、接着性樹脂3bの性質を損なわない範囲で、ポリウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル・ポリエステル樹脂、塩素化ポリオレフィン類(塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等)、スチレン系ブロック共重合体及びその誘導体(スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物及び無水マレイン酸変性物等)等が、好適には50質量%未満の範囲で、より好適には30質量%未満の範囲で、特に好ましくは20質量%未満の範囲で含まれていてもよい。
上記樹脂αの好ましいガラス転移温度は、−65〜25℃、より好ましくは−60〜0℃である。ガラス転移温度が−65℃未満であると、蓋材8のブロッキング性に問題のある場合があり、25℃以上であると、蓋材8の低温ヒートシール性が不十分となる場合がある。ここで「低温ヒートシール性」とは、低温域(100〜150℃)で短時間(0.1〜0.2秒)のヒートシールが可能であることをいう。
なお、ガラス転移温度が複数存在する様な混合樹脂のヒートシール剤の場合、質量比率はJIS K7121に準じたDSC法により20℃/分の昇温速度で測定したチャートの、それぞれのガラス転移ピークの各ベースライン間の距離の比率により求めることができる。また、各ベースラインが平行でない場合は、各ベースラインの延長した直線間にある中間点ガラス転移点を通過する位置での各ベースライン間の距離を用いることができる。
樹脂αとしては、低温ヒートシール性、ヒートシール強度に優れるという観点から、アクリル系樹脂を主体とした接着性樹脂3bが好ましい。
−−アクリル系樹脂−−
アクリル系樹脂とは、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体を単量体成分として含む重合体であり、少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体の単独重合体又は共重合体であっても、これと共重合可能な他の単量体との共重合体であってもよい。また、アクリル系樹脂は、上記単独重合体又は上記共重合体の、カルボキシル基(カルボン酸)のアルカリ金属塩、アミン塩、又はアンモニウム塩であってもよい。
カルボキシル基又はカルボン酸エステル基を持つエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合、上記「他の単量体」としては、エチレン;スチレン、α−メチルスチレン(ビニルトルエン)、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノ基含有エチレン性不飽和単量体;アクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体;等が挙げられる。
アクリル系樹脂が共重合体である場合の具体例としては、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
共重合させる単量体の種類や割合を適宜変更することにより、ガラス転移温度を調整することができる。アクリル系樹脂が共重合体である場合、アクリル構造を有する構造単位の割合が共重合体全体の20%以上を占めることが好ましい。
−−ポリエステル系樹脂−−
ポリエステル系樹脂とは、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合反応によって合成されるポリマーであり、各種の原料を使用することができる。
ポリエステル系樹脂の種類としては、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有しない)飽和ホモポリエステル樹脂、飽和共重合ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、(ポリエステル主鎖に不飽和結合を有する)不飽和ポリエステル樹脂のいずれでもよいが、低温ヒートシール性と耐ブロッキング性に優れる観点から、飽和共重合ポリエステル樹脂が好ましい。
重縮合させる多価カルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、フタル酸、クエン酸等が挙げられる。重縮合させる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ポリエステル系樹脂としては、例えば、1種の多価カルボン酸(例えば、フタル酸等)と、2種の多価アルコール(例えば、エチレングリコールとブタンジオール等)とからなる樹脂等が挙げられる。
−フィラー−
ヒートシール剤は、接着性樹脂3bとフィラーを含む混合物である。接着性樹脂3bの100質量部に対してフィラーの配合量は、5〜50質量部、好ましくは10〜40質量部、更に好ましくは15〜30質量部である。フィラーの含有量が5質量部以下であると、夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)で且つ高湿(90%RH)の雰囲気下でブロッキングが起こる場合や低温ヒートシール性が悪くなる場合がある。
50質量部を超えると、ヒートシール層3と蓋材フィルム4Aとの間の印刷部分5の印刷印字の輪郭がぼやけて視認性、透明性が悪化する場合や、蓋材8と底材1の間に隙間が出来て接着が不十分となる場合がある。
−−有機フィラー−−
有機フィラー3cは、ポリオレフィンワックス、及び変性ポリオレフィンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体を主体としてなり、100質量部の接着性樹脂3bに対して5質量部超30質量部以下含まれる。この有機フィラー3cを含むことにより、優れた滑り性が得られると共に、遅い剥離速度でも良好なシール性を保持しつつ、速い剥離速度の際のピール性を向上させることができる。また、特にヒートシール層にアルミ等の蒸着層7が設けられた場合に、包装機でカメラ検査を行う際にハレーションが起こりにくくなる。更に、ヒートシール時にフランジ部分に折り込みシワが生じにくくなる。
ポリオレフィンワックス及び変性ポリオレフィンワックスとしては、例えば、低密度ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、EVAワックス、EAAワックス等が挙げられる。低温ヒートシール性能保持、および速い剥離速度の際のピール性向上の観点から、特にポリエチレンワックス(低密度ポリエチレンワックス、高密度ポリエチレンワックス、酸化高密度ポリエチレンワックス)が好ましい。
有機フィラー3cの粒子径r3は、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが更に好ましい。また、有機フィラー3cの粒子径r3は、ヒートシール層3のうちフィラーを含まない部分の厚みSの1.0倍未満であることが好ましく、0.9倍未満であることがより好ましく、0.8倍未満であることが更に好ましい。1μm以上であると、ヒートシール剤への分散が良好となり、また蒸着面を有するフィルムの場合はハレーション防止効果が望める。また、ヒートシール層3のうちフィラーを含まない部分の厚みSに対する有機フィラー3cの粒子径r3(r3/S)が、1.0倍未満であると、低温ヒートシール性能が抑制される。
上記有機フィラー3cの粒子径は、JIS Z8825に準拠したレーザー回折・散乱法により、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、個々の粒子を球状粒子に換算して求めた平均粒子径をいう。
上記ヒートシール層3のフィラーを含まない部分の厚みSは、ミクロトームを用いて作製したヒートシール前の蓋材8の薄片の切断面を、顕微鏡観察して、フィラーの無い部分を3か所測定した平均厚みをいう。
有機フィラー3cの含有量は、接着性樹脂3bの100質量部に対して5質量部超30質量部以下であり、8〜25質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。有機フィラー3cの含有量が5質量部超であると、速い剥離速度の際の蓋材破れの伝搬に対する抵抗性(耐ピール性)を向上させるとともに、ハレーションを防止することができ、30質量部以下であると、低温ヒートシール性能を阻害しない。
−−アンチブロッキング粒子−−
アンチブロッキング(AB)粒子3aとしては、炭酸カルシウム、フッ素樹脂、シリコーン、シリカ、ガラスビーズ、タルクや、チタニア、アルミナ、マグネシア等の金属酸化物等の無機フィラーや、種々の粒状高分子、例えば、ナイロン、PE、ポリスチレン(PS)、PP、ポリエステル、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレートの架橋共重合体等)、ウレタンのプラスチック等の有機フィラーを用いることができる。このうち1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
AB粒子3aの粒子径r(ヒートシール前r1及びヒートシール後r2)は、ヒートシール層3のうちフィラーを含まない部分の厚みSの1.0倍以上であることが好ましく、1.2〜4.0倍であることがより好ましく、1.5〜3.0倍であることが最も好ましい。ヒートシール層3のうちフィラーを含まない部分の厚みSに対するAB粒子3aの粒子径r(r/S)が、1.0倍未満では、ロール状の蓋材8の夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)で且つ高湿(90%RH)の雰囲気下での耐ブロッキング性が悪い場合があり、r/Sが4.0倍を超えるとAB粒子3aを介して蓋材8と底材1との間に隙間が出来てしまい、接着が不十分で低温ヒートシール性が悪くなる場合がある。更に、ヒートシール層3と蓋材フィルム4Aとの間に印刷層が設けられている場合は、印字の輪郭がぼやけて視認性も悪くなる場合がある。r/Sが1.2〜4.0倍の範囲であることにより、ヒートシール後のPTP包装体は、フランジ部1bに折り込みシワが入ることがなく外観が良好となり、また、AB粒子3aの一部が底材1のフランジ部1bに食い込んだ投錨効果を有する構造を有することで、低温でも十分なヒートシール強度を有する。
上記AB粒子3aの粒子径(ヒートシール前のAB粒子3aの粒子径r1)は、JIS Z8825に準拠したレーザー回折・散乱法により、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて、個々の粒子を球状粒子に換算して求めた平均粒子径をいう。
上記ヒートシール層3のフィラーを含まない部分の厚みSは、前述の通り、ミクロトームを用いて作製したヒートシール前の蓋材8の薄片の切断面を、顕微鏡観察して、フィラーの無い部分を3か所測定した平均厚みをいう。
ヒートシール後のAB粒子3aの粒子径r2は、ミクロトームを用いて作製したPTP包装体10の薄片の切断面を、顕微鏡観察して、AB粒子3aの少なくとも一部がフランジ部1bに食い込んだ投錨構造を構成しているAB粒子3aの平均粒子径をいう。r1とr2とを比較することにより、PTP包装体製造時(特に、ヒートシール時)のAB粒子3aの潰れを確認することができる。
AB粒子3aの含有量は、接着性樹脂3bの100質量部に対して、2.5〜20質量部が好ましく、5.0〜15質量部がより好ましい。AB粒子3aの含有量が2.5質量部未満であると夏場の船便輸送時や亜熱帯地方等に相当する高温(40℃)で且つ高湿(90%RH)の雰囲気下でブロッキングが起こる場合や耐圧低温ヒートシール性が悪くなる場合がある。20質量部を超えると、ヒートシール層と蓋材フィルムとの間の印刷部分の印刷印字の輪郭がぼやけて視認性、透明性が悪化する場合や、蓋材と底材の間に隙間が出来て接着が不十分となる場合がある。
なお、本実施形態のヒートシール層3には、本発明の効果に影響しない範囲で、ヒートシール層3のうちフィラーを含まない部分の厚みSよりも、粒子径が小さいフィラーが更に含まれていてもよい。
蓋材フィルム4A上にヒートシール層3を設ける方法の代表的な例として、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工して乾燥させる方法、蓋材フィルム4Aの上にヒートシール性を有する樹脂を押出ラミする方法、蓋材フィルム4Aの上にヒートシール性を有するフィルムをラミネートする方法等が挙げられ、中でも、工程が簡略であり生産性に優れる観点から、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工して乾燥する方法が好ましい。
また、ヒートシール剤を塗工して乾燥する方法の場合、ヒートシール剤を水中にポリマー粒子を分散させた水性エマルジョンの状態で用いることが、環境性の観点や耐溶剤性に劣る樹脂フィルムにも塗工できる観点から、好ましい。
本実施形態では、上記水性エマルジョンをヒートシール剤を構成する接着性樹脂3bを重合させながら調製してもよく、この場合の水性エマルジョンの調製方法としては、特に限定されないが、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、ミニエマルジョン重合等の重合方法等が挙げられ、特に、平均粒子径が10nm〜1μm程度の分散安定性の良好なエマルジョンを安定的に製造する観点から、乳化重合が好ましい。
ヒートシール層3のうちフィラーを含まない部分の厚みSは、3〜20μmであり、ヒートシール性及びPTP包装体10の突き破り性の観点から、5〜18μmであることがより好ましく、8〜15μmであることが更に好ましい。3μm以上であると、十分なヒートシール性を有し、20μm以下であると、内容物2が蓋材8を突き破りやすくなるので好ましい。
なお本開示で、ヒートシール層3の厚みは、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。
上記ヒートシール剤は、接着性樹脂3bに、ブロッキング防止剤及び投錨剤(アンカー剤)として、フィラーを加えた混合物であり、必要に応じて水やイソプロピルアルコール等の希釈剤を加えて撹拌混合することで塗工液とされる。そして、例えば、図2に示すように、接着性樹脂3bにAB粒子3aを加えることにより、塗布・乾燥後、蓋材フィルム4Aの上に形成されたヒートシール層3の表面に、凸部が形成される。そして、AB粒子3aは、それ自体が露出することはなく、その表面及び周囲は、接着性樹脂3bで覆われる。AB粒子3aの表面及び周囲が接着性樹脂3bに覆われるので、接着対象の底材1に、AB粒子3aが存在しない部分及びAB粒子3aが存在する部分が、接着性樹脂3bを介して接着することが可能となる。
一方で、ロール状に巻き取られた保管状態においては、AB粒子3aの凸部の影響により、巻き取り時に、蓋材8のヒートシール層3表面と、その反対側の蓋材フィルム4A表面との接触面積が低減するため、ブロッキングを防止できる。
更には、低温でヒートシールした後のPTP包装体10の状態においては、底材1と蓋材8のヒートシール層3表面とが面接触して熱融着する時に、AB粒子3aの凸部の影響により、両者の接触面積が低減して適度な滑り性を有することと、空気逃しの通り道が形成される作用が発現することにより、ヒートシールされるフランジ部1bに折り込みシワが入ることのない包装機械適性を有することとなり、良好な外観を示すPTP包装体10を得ることができる。
(PTP包装体用蓋材のグロス値)
本実施形態のPTP包装体用蓋材8は、ヒートシール層3側から測定したグロス値が、30〜600であることが好ましく、50〜400がより好ましく、50〜200が更に好ましい。30以上であると、ヒートシール層の下に印刷された文字を容易に判別できる一方、600以下であることにより包装機でカメラ検査を行う際にハレーションが起こりにくくなる。
なお本開示で、PTP包装体用蓋材8のグロス値は、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。
(PTP包装体用蓋材の製造方法)
本実施形態のPTP包装体用蓋材8は、前述の通り、蓋材フィルム4A上に、接着性樹脂3b、フィラー等の混合物であるヒートシール剤を適用して、ヒートシール層3を形成することにより製造することができる。以下、蓋材フィルム4Aにヒートシール剤を塗工し乾燥する方法を例に挙げて、詳細を説明する。
塗工法としては、例えば、グラビアコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法、キスコート法、その他等の方法が挙げられ、塗工量の調整、操作性、塗工速度等の観点から、グラビアコート法が好ましい。
ヒートシール剤の塗工量としては、ヒートシール性を高める観点から、3〜20g/m(厚さに換算して3〜20μmに相当)であることが好ましく、5〜15g/mであることがより好ましい。
塗工の速度は、好ましくは10〜300m/分であり、より好ましくは、20〜200m/分である。10m/分以上であると、乾燥時の過加熱がなく塗工後に熱シワが生じにくく、生産性が良好である。300m/分以下であると、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、蓋材フィルム4Aが破断しにくい。
塗工後の乾燥方法は、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル、高速エアキャップ、カウンターフロー)、ドラム式、赤外線、マイクロ波(誘導加熱)、電磁誘導加熱、紫外線、電子線、その他の方法が挙げられ、操作性、塗工速度、塗工後のシワ等の観点から、熱風噴射式(トンネル式、エアフローティング、丸孔ノズル)が好ましく、中でも熱風噴射式(エアフローティング)がより好ましい。
乾燥の温度及び時間としては、ヒートシール剤の種類、希釈溶剤の種類、固形分、液の粘度、塗工速度、乾燥機の種類によっても異なるが、下記の通りとしてよい。
乾燥温度は、好ましくは50〜115℃、より好ましくは60〜100℃である。50℃以上だと、乾燥不足による巻きジワやブロッキングが発生しにくく、115℃以下だと、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくい。
乾燥時間は、好ましくは1秒〜200秒、より好ましくは2秒〜100秒、更に好ましくは3秒〜30秒である。1秒以上であれば、乾燥不足による巻きジワやブロッキングの発生が起こりにくく、200秒以下であれば、乾燥時の過加熱がなく、塗工後にシワが生じにくく、生産性が向上する。
なお、上記製造工程において、蓋材フィルム4Aに対し、グラビア印刷機等を用いて文字やバーコードを印刷することができる。更に、文字やバーコードを印刷した表面に対し、ニス層を設けることもできる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、単層の延伸フィルムからなる蓋材フィルム4Aを例示したが、2層以上の多層延伸フィルムからなる蓋材フィルム4Aであってもよい。
また、上記実施形態においては、蓋材フィルム4Aの表面F1上にヒートシール層3を直接設けた場合を例示したが、蓋材フィルム4Aとヒートシール層3との間(F1の位置)や反対側(F2の位置)に他の層を介在させてもよい。
例えば、蓋材フィルム4Aとして熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いる場合は、他の層としてアルミニウムの蒸着層7を設けることが、バリア性の向上や、近赤外線を利用した異物検査の適性が向上する観点から、好ましい。蒸着層7の厚さは、要求されるバリア性(特に水蒸気透過性)、近赤外線の反射特性、又は両面印刷時の隠蔽性に応じて適宜調整されるが、バリア性の観点からは、好ましくは10〜500nmであり、より好ましくは20〜100nmである。500nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性を向上させる効果は得られない。また、近赤外線の反射特性や両面印刷時の隠蔽性の観点からは、好ましくは10〜200nmであり、より好ましくは20〜100nmである。
<底材>
本実施形態におけるPTP包装体10に用いる底材1としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、環状オレフィンからなる樹脂等)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエステル等の周知の合成樹脂を含む、好適にはこれらの合成樹脂からなるシート材が挙げられる。中でも、底材1のポケット状の凹部1aへの真空又は圧空成形する成形条件範囲の広さ、機械的強度、透明性、コスト面の観点から、ポリ塩化ビニル系樹脂からなるシート材が特に好ましい。
上記底材1は、底材1のポケット状の凹部1aへの真空又は圧空成形する成形条件範囲の広さの観点から、JIS K7191(A法及びB法)に準拠した熱変形温度が50〜110℃であることが好ましく、60〜90℃であることがより好ましい。
底材1の形状としては、特に限定されないが、凹部1aの底面部分及び開口部分の形状が、矩形(正方形、長方形、三角形等)、円形(円、楕円等)であってよく、矩形は角が丸みを帯びていてもよい。
また、ヒートシール後に成形機で打ち抜かれたサンプルの底材1のサイズとしては、凹部1aの深さが、1〜15mmであってよく、好ましくは2〜10mmであり、また、特に、凹部1aの開口部分及び底面部分の形状が円形である場合、開口部分の直径は、それぞれ10〜150mmであってよく、好ましくは20〜100mmであり、底面部分の直径は、それぞれ開口部分の直径より10〜20%小さくてよい。
また、フランジ部1bは、特に限定されないが、凹部1aの深さ方向に直交する方向に延びるように設けられていてよい。
フランジ部1bの平均幅としては、2〜100mmであってよく、好ましくは4〜50mmである。
底材1の厚みL2としては、特に限定されないが、100〜500μmであってよく、好ましくは150〜300μmである。
本実施形態のPTP包装体10は、蓋材8と底材1をヒートシールした際に、主に各材の熱収縮率の差により蓋材8側、もしくは底材1側に湾曲する。PTP包装体10はヒートシール後にコンベアによる分配工程や、完成したPTP包装体10を箱に自動的に梱包する箱詰め工程を経て出荷されるが、湾曲したPTP包装体10は機械でうまく運べなかったり、箱に入らなかったりするなど、後工程における適性を欠いてしまう。これらの適性の観点からカールの度合いは低いことが望ましい。
このカールの度合いは、作成したPTP包装体10を、ヒートシールから1日後に、蓋材8側を下にして平らな机の上に置き、PTP包装体10の蓋材8の一端部を指で押さえ、浮き上がった蓋材8の別の端部と机との最大距離を定規で測定することによって評価することができる。より具体的には、凹部1aの開口部分及び底面部分の形状が円形であるPTP包装体10の場合、PTP包装体10を机の上に置いた後、PTP包装体10のフランジ部1bの一端部を指で押さえたときに浮き上がった当該端部と開口部分を挟んで対向するもう一つのフランジ部1bの端部と机との最大距離を定規で測定することによって評価する。
上記カールの度合いを示す距離は、望ましくは5.0mm以下であり、より望ましくは4.0mm以下であり、最も好ましくは3.0mmである。
なお本開示で、カールの度合いを示す距離は、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。
(底材とヒートシール層との間の動摩擦係数)
本実施形態のPTP包装体用蓋材8は、底材1とヒートシール層3との間の動摩擦係数が、0.8μD未満であることが好ましく、0.1〜0.6μDがより好ましく、0.15〜0.5μDが更に好ましい。0.8μD未満であることにより、PTP包装体のヒートシール時に蓋材に皺なくヒートシールをすることができる。
なお本開示で、PTP包装体用蓋材8における動摩擦係数は、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。
(PTP包装体の製造方法)
本実施形態のPTP包装体10は、底材1の表面と蓋材8のヒートシール層3の表面とを重ね合わせて、ヒートシールすることにより製造することができる。
ヒートシール温度は、例えば、100〜200℃が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、100〜150℃が好ましい。また、ヒートシール時間は、例えば、0.05〜0.4秒が挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.05〜0.2秒が好ましい。また、ヒートシール圧力は、例えば、0.2〜0.6MPaが挙げられ、内容物2の焼け跡がつきにくくなる観点から、0.3〜0.5MPaが好ましい。
本実施形態におけるPTP包装体10の成形に用いる成形機としては、例えば、蓋材8と底材1をヒートシールロールとシール下ロールで挟み込んでヒートシールを行うロールシール成形機や、上下に平板の加熱金型を有し蓋材8と底材1を金型で挟み込み成形するフラットシール成形機が挙げられる。
本実施形態では、中でも、生産効率が高く、汎用性に優れたロールシール成形機を用いて、PTP包装体10を成形する方法を用いることが望ましい。
PTP包装体10に用いるロールシール成形機には、蓋材8側から加熱を行う加熱シールロールと、それと対となる下シールロールとが配置されており、ここで、加熱シールロールの表面は、彫刻等が施されていない、平滑表面であることが望ましい。この平滑な表面を持つ加熱シールロールを用いることで、蓋材8表面にロールの模様が転写されず、表面の凹凸が抑制された平滑な蓋材8表面を有するPTP包装体10を製造することが可能となる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明
はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
(1)蓋材フィルム
(i)PS系フィルム1:スチレン−メタクリル酸−メチルメタクリル酸エステル共重合体(メチルメタクリル酸エステル含量5質量%、メタクリル酸含量10質量%、ビカット軟化点=123℃)を90質量%、及び、ハイインパクトポリスチレン(DIC社製、耐衝撃ポリスチレン GH8300−5、ビカット軟化点=95℃)を樹脂成分の合計100質量%に対して10質量%配合し、インフレーション法によって延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して、作製した、ビカット軟化点=120℃、厚さ25μm、突刺し強さ4.8Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(ii)PS系フィルム2:汎用ポリスチレン(PSJ社製、汎用ポリスチレン G9504、ビカット軟化点=103℃)をインフレーション法によって延伸し、その後、フィルムの両面に50mN/mのコロナ処理を施して、作製した、ビカット軟化点=103℃、厚さ25μm、突刺し強さ4.2Nの熱可塑性樹脂からなるフィルム。
(2)接着性樹脂
(i)HS剤1:アクリル系樹脂、ガラス転移温度:−20℃)
(ii)HS剤2:アクリル系樹脂、ガラス転移温度:−5℃)
(iii)HS剤3:アクリル系樹脂、ガラス転移温度:−30℃)
(3)有機フィラー
(i)PEW1:ポリエチレンワックス(BYK社製、AQUAMAT208)
(ii)PEW2:ポリエチレンワックス(SHAMROCK社製、Neptune968)
(iii)PEW3:ポリエチレンワックス(SHAMROCK社製、Hydrocer257)
(iv)シリカ:非晶シリカ(富士シリシア社製、サイリシア710)
(v)金属石鹸:ステアリン酸カルシウム(日新化学社製、DEF960−2)
(4)AB粒子
(i)PMMA1:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径r1:20μm)
(ii)PMMA2:ポリメチルメタクリレート架橋重合体ビーズ(積水化成品工業製、テクポリマーMBXシリーズ、平均粒子径r1:30μm)
(5)底材
PVC:硬質塩化ビニル単層シート(住友ベークライト製スミライトVSSシリーズ(厚さ250μm)、熱変形温度A法及びB法とも約60〜70℃)。深さ:4mm、開口部分の直径:10mm、底面部分の直径:8mmのサイズの凹部を有し、深さ方向に直交する方向に延びる平均幅10mmのフランジ部を有する底材に成形した。開口部分は互いに直交する縦列及び横列に並べられ、開口部分の中心間距離は、縦について17mm、横について20mmとした。
実施例及び比較例において使用した材料の性質の分析方法は、以下の通りである。
[有機フィラー及びAB粒子の粒子径]
有機フィラーの粒子径(r3)は、JIS Z8825に準拠してレーザー回折・散乱法により、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALDシリーズ、セイシン企業製LMS−2000e)を用いて、個々の粒子を球状粒子に換算して求めた平均粒子径(体積変換して得られた粒度分布より算出したd(50)の値)を、有機フィラーの粒子径とした。
ヒートシール前のAB粒子の粒子径(r1)は、JIS Z8825に準拠してレーザー回折・散乱法により、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALDシリーズ、セイシン企業製LMS−2000e)を用いて、個々の粒子を球状粒子に換算して求めた平均粒子径(体積変換して得られた粒度分布より算出したd(50)の値)を、ヒートシール前のAB粒子の粒子径とした。
PTP包装体のフィラー粒子径(r2)は、ミクロトームを用いて作製したヒートシール後のPTP包装体の薄片化後の切断面顕微鏡観察により、フィラーの少なくとも一部が底材のフランジ部に食い込んだ投錨構造を示している部分を3か所測定した平均値とした。
[ヒートシール層の厚み]
ヒートシール層のフィラーを含まない部分の厚み(S)は、ミクロトームを用いて作製したヒートシール前の蓋材の薄片化後の切断面顕微鏡観察により、フィラーの無い部分を3か所スケール測定した平均値とし、表1に示した。
[蓋材のグロス値]
蓋材のグロス値は、JIS Z8741−1997に準拠し、ヒートシール層側から測定し、蒸着面に対して45°の入射角で測定n数=3で平均光沢度を測定し、グロス値とした。
[底材とヒートシール層との間の動摩擦係数]
底材とヒートシール層との間の動摩擦係数(μD)は、ASTM D 1894−95に準拠し測定を実施した。移動試験片に蓋材フィルムを、固定試験片に底材として用いたPVCシートを使用し、蓋材のヒートシール面と底材表面との動摩擦係数を測定した。試験条件として、試験速度150mm/min、移動距離130mm、スライダーの重量113gを使用した。
<評価項目>
実施例及び比較例で作成した蓋材及びこれを用いたPTP包装体について、以下の項目の評価を行った。
(1)PTP包装体の低温ヒートシール性
底材の凹部(ポケット)のサイズは、前述の通りであり、内容物である錠剤は、円柱状形状を備え、サイズは、錠径8.6mm、錠高3.8mmであった。
ヒートシールの条件は、温度100℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分(120ショット/分、シール時間0.1秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度ともに、PVCは130℃、作業室環境23℃、50%RHとした。
作製したPTP包装体について、減圧リーク試験(PTP包装体100ポケットを水中に入れて、−67kPaで5分間保持し、PTPポケット中に水の漏れがないかを確認する)を行って、ヒートシール強度を確認した。
また、作製したPTP包装体について、耐ピール試験を行い、速い剥離速度における蓋材破れの伝搬に対する抵抗性(耐ピール性)を確認した。具体的には、底材のポケットの開口部分を覆う蓋材の円形部分(以下、「円形部分C」と称する。)のうち、当該ポケットの開口部分の円心と当該ポケットと横方向に隣接するポケットの開口部分の円心とを結んだ直線(以下、「直線E」と称する。)に対して蓋材面上で直交する弦を有し、前述の隣接するポケットの側とは反対側に位置する半円部分(以下、「半円部分C1」と称する。)について、半円部分C1の円弧に沿って蓋材にカッターで切り込みを入れ、半円部分C1をピンセットで挟んだ。切り込みを入れていない残りの半円部分(以下、「半円部分C2」と称する。)も含めた円形部分Cを剥離するように、ピンセットで挟んだ半円部分C1を直線E方向(横方向)に100mm/秒の速度で引張り、蓋材を剥離した。蓋材が剥離した部分について、半円部分C2の円弧と直線Eとの交点から、剥離した部分の直線E方向の先端までの距離(蓋材破れが伝搬した距離)を測定し、この距離が短いほど、低温ヒートシール性が高いとして、下記基準に基づいて耐ピール性を評価した。
<減圧リーク試験の判定基準>
○:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が0個である。
△:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が1〜2個である。
×:減圧リーク試験の結果、100ポケット中、水が漏れたポケット数が3個以上である。
<耐ピール試験の判定基準>
○:耐ピール試験の結果、蓋材破れが伝搬した距離が3mm以下である。
△:耐ピール試験の結果、蓋材破れが伝搬した距離が3mmを超え10mm以下である。
×:耐ピール試験の結果、蓋材破れが伝搬した距離が10mmを超える。即ち、隣の錠剤ポケットまで破れが伝搬しているため、実用上不適と判断される。
(2)PTP包装体のカール性
作製したPTP包装体を、ヒートシールから1日後に、平らな机の上に置いた。そして、PTP包装体の短辺のフランジ部の一端部を指で押さえたときに浮き上がった当該短辺と開口部分を挟んで対向するもう一つの短辺のフランジ部の端部と机との最大距離を定規で測定することにより、PTP包装体のカール性を評価した(n数=5)。
<判定基準>
○:机との距離が3mm未満であり、ほとんどカールしていない。
△:机との距離が3〜5mmであり、ややカールしている。
×:机との距離が5mm超であり、カールしている。
(3)ハレーション評価
PTP蓋材のヒートシール面を上にして、結晶セルロースを打錠し作成した錠径8.6mm、錠高3.8mmの円形の白色錠剤を蓋材の上に乗せ、30cmの高さより光源を照射しながら、デジタルカメラ(FUJIFILM社製、XP70)で錠剤が中心となるように撮影した。
得られた画像を2値化し、ハレーションの程度を評価した。
<判定基準>
◎:2値化により、錠剤を白、錠剤以外をすべて黒に置き換えられる。
○:2値化により、一部ノイズが入るが錠剤を白、錠剤以外を黒に置き換えられる。
×:2値化により、白に置き換えられるハレーション部分が錠剤のサイズを超える。
(4)PTP包装体の皺(フランジ部分の折り込みシワ)
作製したPTP包装体の外観を、フランジ部分のヒートシール時の折り込みシワの有無により評価した。
<判定基準>
◎:フランジ部分に折り込みシワが全く無い。
○:フランジ部分に3mm未満の折り込みシワがわずかに発生するが、使用上問題は無い。
△:フランジ部分に3mm以上10mm未満の折り込みシワがわずかに発生するが、使用上問題は無い。
×:フランジ部分に10mm以上の折り込みシワが発生する。
[総合判定]
また、総合判定の評価基準は以下の通りである。
<判定基準>
◎:すべての項目で◎もしくは○の評価である。
○:1〜2項目で△の評価があるが、その他は◎もしくは○の評価である。
△:3項目以上で△の評価があるが、その他は◎もしくは○の評価である。
×:×の項目が1項目以上ある。
[実施例1]
PS系フィルム1(スチレン−メチルメタクリレート−メタクリル酸共重合体及びハイインパクトポリスチレンからなるフィルム)の片面に、線数=230線/インチ、版深度=20μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの黒色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、印刷を実施した面と反対の面に、真空蒸着法によりアルミニウムの蒸着層を設けた。更に、蒸着層の上に線数=230線/インチ、版深度=20μmの版を用いたグラビア印刷機にて、文字サイズ=7ポイントの赤色ゴシック体のアルファベット文字を印刷し、その上に、線数=80線/インチ、版深度=130μmの版を用いて、ヒートシール剤(HS剤1)を塗工した。
ヒートシール剤は、塗工前に、不揮発分が40質量%、粘度が100mPa・s〜1000mPa・sとなるように水で希釈し、HS剤1中の固形分100質量部に対して有機フィラーのPEW1(粒子径r3=10μm)が5質量部、AB粒子のPMMA1(ヒートシール前のAB粒子の粒子径r1=20μm)が5質量部となるよう混合した。
塗工後は、100℃に設定した熱風式乾燥機の中を5秒間乾燥して、蓋材を得た。
底材に厚さ250μmのポリ塩化ビニル(PVC)を用いて、PTP成形機(CKD社製、FBP−M1)により、凹部を成形した底材に錠剤を充填し、ヒートシールにより底材とPTP包装体用蓋材とを接着して、PTP包装体を得た。その際に用いた加熱ロールは、表面にダイス等の彫刻による凹凸が無い鏡面ロールを使用した。
ヒートシール条件は、温度100℃、シール圧力0.4MPa、充填速度5m/分(120ショット/分、シール時間0.1秒相当)を標準条件として実施した。また、その他の条件は、底材成形温度及びスリット温度とも130℃、作業室環境23℃、50%RHとした。
評価結果を表1に示す。
なお、切断面顕微鏡観察によるスケール測定値である、ヒートシール後のAB粒子の粒子径r2は、JIS Z8825に準拠したレーザー散乱法によるヒートシール前のAB粒子の平均粒子径r1(=20μm)と同じ20μmであった。
[実施例2〜12]
実施例2〜12は、表1に示すように原料、配合量等を変更したこと以外は実施例1と同様にして蓋材を作製し、PTP包装体を得た。詳細な条件及び評価結果を表1に示す。
[比較例1〜5]
比較例1〜5は、表1に示すように原料、配合量等を変更したこと以外は実施例1と同様にして蓋材を作製し、PTP包装体を得た。詳細な条件及び評価結果を表1に示す。
Figure 2018188181
本発明のPTP包装体用蓋材は、錠剤、カプセル等の医薬品やキャンディーやチョコレート等の食品の包装に好適に使用できる。
1 底材
1a 底材の凹部
1b 底材のフランジ部
2 内容物(錠剤)
3 ヒートシール層
3a AB粒子
3b 接着性樹脂
3c 有機フィラー
4A 蓋材フィルム
5 印刷部分
6 表面保護層
7 蒸着層
8 蓋材
9 内容物と蓋材のクリアランス
10 包装体
L1 蓋材フィルムの厚み(フランジ部)
L2 底材の厚み(フランジ部)
S ヒートシール層の厚み(フランジ部)
r1 蓋材のAB粒子の粒子径(フィルム厚み方向のAB粒子の粒子径、ヒートシール前の粒子径相当)
r2 PTP包装体のAB粒子の粒子径(フィルム厚み方向のAB粒子の粒子径、ヒートシール後の粒子径相当)
r3 有機フィラーの粒子径(フィルム厚み方向の有機フィラーの粒子径)
F1 表面
F2 表面

Claims (8)

  1. ヒートシール剤からなるヒートシール層、及び蓋材フィルムを有するプレススルーパック包装体用蓋材において、
    前記ヒートシール剤は、ガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるアクリル系樹脂、及びガラス転移温度が−70℃以上30℃未満であるポリエステル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種を主体とした接着性樹脂と、フィラーとを含み、
    前記ヒートシール層のうち前記フィラーを含まない部分の厚みが3〜20μmであり、
    前記フィラーが、ポリオレフィンワックス、及び変性ポリオレフィンワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種の粉体を主体としてなる有機フィラーを含み、
    前記有機フィラーの含有量は、前記接着性樹脂100質量部に対して5質量部超30質量部以下である
    ことを特徴とする、プレススルーパック包装体用蓋材。
  2. 前記接着性樹脂が、アクリル系樹脂を主体とした樹脂からなり、
    前記アクリル系樹脂が、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル、及びアクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のカルボキシル基又はカルボン酸エステル基をもつエチレン性不飽和単量体と、エチレン、スチレン、及びα−メチルスチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種の他の単量体とを含む単量体成分を共重合して得られる共重合体である、
    請求項1に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
  3. 前記有機フィラーの粒子径が、前記ヒートシール層のうち前記フィラーを含まない部分の厚みの0.02倍以上1.0倍未満である、請求項1又は2に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
  4. 前記フィラーが、アンチブロッキング粒子をさらに含み、
    前記アンチブロッキング粒子の粒子径が、前記ヒートシール層のうち前記フィラーを含まない部分の厚みの1.0倍以上である、
    請求項1又は2に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
  5. 前記蓋材フィルムが、スチレン系樹脂を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプレススルーパック包装体用蓋材。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の蓋材と、内容物を収容する凹部、及び前記プレススルーパック包装体用蓋材のヒートシール層と貼り合わされるフランジ部を有する底材と、を互いに貼り合わせてなるプレススルーパック包装体。
  7. 前記底材と前記ヒートシール層との間の動摩擦係数(μD)が0.8未満である、
    請求項6に記載のプレススルーパック包装体。
  8. 前記底材を構成する樹脂がポリ塩化ビニル系樹脂を含む、請求項7に記載のプレススルーパック包装体。
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JP2016216063A (ja) * 2015-05-15 2016-12-22 旭化成株式会社 プレススルーパック包装用蓋材及びプレススルーパック包装体

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