本発明の熱収縮性フィルム(シュリンクフィルム)は、ポリスチレン系樹脂を主成分とし、且つ曲げ弾性率が1600MPa以上である樹脂組成物から形成された樹脂層を、少なくとも一方の表面に有する。なお、上記樹脂層同士の静摩擦係数は0.10〜0.40である。本明細書において、上記ポリスチレン系樹脂を主成分とし、曲げ弾性率が1600MPa以上である樹脂組成物から形成され、且つ層同士の静摩擦係数が0.10〜0.40である樹脂層を、「本発明の樹脂層」と称する場合がある。
[本発明の熱収縮性フィルム]
本発明の熱収縮性フィルムは、シュリンクラベルに用いた際には、支持体となり、ラベルの強度、剛性や収縮特性に主たる影響を及ぼす。本発明の熱収縮性フィルムは、本発明の樹脂層を少なくとも一方の表面に有する。本発明の熱収縮性フィルムは、単層構成であってもよいし、積層構成を有していてもよい。即ち、本発明の熱収縮性フィルムは、単層フィルムであってもよいし、要求物性、用途等に応じて、複数のフィルム層を積層した積層フィルムであってもよい。本発明の熱収縮性フィルムが単層構成である場合、本発明の熱収縮性フィルムは本発明の樹脂層の単層構成である。また、積層フィルムの場合、少なくとも一方の表面に位置する層が本発明の樹脂層である。積層フィルムの場合、本発明の樹脂層を同一又は異なって2以上有していてもよい。
(本発明の樹脂層)
本発明の樹脂層は、ポリスチレン系樹脂を主成分として含む。なお、熱収縮性フィルムを構成する層(例えば本発明の樹脂層)における主成分となる樹脂は、当該層を構成する樹脂のうち質量割合が最も高い樹脂である。本発明の樹脂層におけるポリスチレン系樹脂の含有割合は、本発明の樹脂層の総質量(100質量%)に対して、50質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。上記ポリスチレン系樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を必須の単量体(モノマー)成分として構成される重合体である。即ち、分子中(1分子中)に、スチレン系単量体に由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。
上記スチレン系単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン等が挙げられる。中でも、入手し易さ、材料価格等の観点から、スチレンが好ましい。なお、上記スチレン系単量体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スチレンの単独重合体である汎用ポリスチレン(GPPS)等のスチレン系単量体の単独重合体;二種以上のスチレン系単量体のみを単量体成分として構成される共重合体;スチレン−ジエン系共重合体;スチレン−重合性不飽和カルボン酸エステル系共重合体等の共重合体;ポリスチレンと合成ゴム(例えば、ポリブタジエンやポリイソプレン等)の混合物、合成ゴムにスチレンをグラフト重合させたポリスチレン等の耐衝撃性ポリスチレン(HIPS);スチレン系単量体を含む重合体(例えば、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体との共重合体)の連続相中にゴム状弾性体を分散させ、該ゴム状弾性体に上記共重合体をグラフト重合させたポリスチレン(グラフトタイプ耐衝撃性ポリスチレン「グラフトHIPS」という);スチレン系エラストマー等が挙げられる。なお、上記ポリスチレン系樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
本発明の樹脂層は、上記ポリスチレン系樹脂としてGPPSを含むことが好ましい。この場合、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率が高くなり、また、上記静摩擦係数が小さくなる傾向がある。
本発明の樹脂層中のGPPSの含有割合は、特に限定されないが、本発明の樹脂層の総質量(100質量%)に対して、0.3〜3質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜2質量%、さらに好ましくは1.1〜1.7質量%、特に好ましくは1.2〜1.4質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、長尺筒状シュリンクラベルの切断時に内面同士の接着がより起こりにくくなる。
また、本発明の樹脂層は、GPPSとともに、スチレン−ジエン系共重合体を含むことが好ましい。この場合、本発明の熱収縮性フィルム及びこれを用いたシュリンクラベルの収縮特性を優れるものとしつつ、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率が高くなり、また、上記静摩擦係数が小さくなる傾向がある。
上記スチレン−ジエン系共重合体は、スチレン系単量体及びジエン(特に、共役ジエン)を必須の単量体成分として構成される共重合体である。即ち、分子中(1分子中)に、スチレン系単量体に由来する構成単位、及びジエン(特に、共役ジエン)に由来する構成単位を少なくとも含む重合体である。
上記ジエンとしては、特に限定されないが、共役ジエンが好ましく、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、クロロプレン等が挙げられる。中でも、延伸特性、熱収縮性、層間強度の観点から、1,3−ブタジエンが特に好ましい。即ち、上記スチレン−ジエン系共重合体としては、スチレン−ブタジエン共重合体が好ましい。なお、上記ジエンは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記スチレン−ジエン系共重合体を構成する単量体成分は、さらに、上記スチレン系単量体及び上記ジエン以外の単量体成分を含んでいてもよい。上記スチレン系単量体及び上記ジエン以外の単量体成分としては、例えば、ビニル系モノマー、重合性不飽和カルボン酸エステル、重合性不飽和無水カルボン酸等が挙げられる。
上記スチレン−ジエン系共重合体の共重合の形態は、特に限定されないが、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。中でも、ブロック共重合体が好ましく、例えば、スチレンブロック(S)−ジエンブロック(D)型、S−D−S型、D−S−D型、S−D−S−D型等が挙げられる。
上記スチレン−ジエン系共重合体のブロック共重合体(スチレン−ジエンブロック共重合体)としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)等のスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBC)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)等のスチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン・イソプレン−スチレンブロック共重合体(SBIS)等のスチレン−ブタジエン−イソプレンブロック共重合体等が挙げられ、中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましい。なお、これらのブロック共重合体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記スチレン−ブタジエンブロック共重合体としては、スチレン系単量体のみが重合したスチレンブロックとブタジエンのみが重合したブタジエンブロックとを有する共重合体であればよく、特に限定されないが、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBSBS)等のスチレンブロックを両末端に有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体;スチレン−ブタジエン共重合体(SB)、スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン共重合体(SBSB)等のスチレンブロック及びブタジエンブロックをそれぞれ末端に有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体;ブタジエン−スチレン−ブタジエン共重合体(BSB)、ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン共重合体(BSBSB)等のブタジエンブロックを両末端に有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体等が挙げられる。中でも、スチレンブロックを両末端に有するスチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましく、より好ましくはSBSである。なお、これらのスチレン−ブタジエンブロック共重合体は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記スチレン−ジエンブロック共重合体は、公知乃至慣用のブロック共重合体の製造方法により製造することができる。上記スチレン−ジエンブロック共重合体の製造方法としては、例えば、スチレン−ジエンブロック共重合体の分子量、分子量分布及び末端構造等を制御しやすい、リビング重合(リビングラジカル重合、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合等)が挙げられる。上記リビング重合は公知乃至慣用の方法により実施可能である。
本発明の樹脂層中のスチレン−ジエン系共重合体の含有割合は、特に限定されないが、本発明の樹脂層の総質量(100質量%)に対して、50〜99.7質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.5質量%、さらに好ましくは80〜99質量%、特に好ましくは90〜98質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、本発明の熱収縮性フィルム及びこれを用いたシュリンクラベルの収縮特性により優れる。
また、本発明の樹脂層は、GPPS及びスチレン−ジエン系共重合体とともに、HIPSを含むことが好ましい。この場合、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率を特定の範囲内に調整しやすくすることができる。
本発明の樹脂層中のHIPSの含有割合は、特に限定されないが、本発明の樹脂層の総質量(100質量%)に対して、0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。上記含有割合が上記範囲内であると、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率を特定の範囲内により調整しやすくすることができる。
本発明の樹脂層中に含まれる全てのポリスチレン系樹脂中のスチレン系単量体に由来する構成単位の含有割合は、特に限定されないが、本発明の樹脂層中のポリスチレン系樹脂の総質量(100質量%)に対して、50〜95質量%が好ましく、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは65〜85質量%、特に好ましくは70〜80質量%である。上記含有割合が50質量%以上であると、本発明の熱収縮性フィルムを適度に硬くし、シュリンクラベルの剛性を適度に高くし、シュリンクラベルを装着する際の収縮特性が良好となる傾向がある。上記含有割合が95質量%以下(特に、85質量%以下)であると、未延伸フィルムを高倍率で延伸する際にも破断しにくく、高い熱収縮性を有する熱収縮性フィルムが得やすくなる。また、適度な収縮応力と収縮特性を得ることができる傾向がある。
本発明の樹脂層は、特に限定されないが、ポリスチレン系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。ポリスチレン系樹脂以外の樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性エラストマー等の熱可塑性樹脂等が挙げられる。上記ポリスチレン系樹脂以外の樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
本発明の樹脂層は、滑剤を含むことが好ましい。本発明の樹脂層及びこれを形成する樹脂組成物が滑剤を含む場合、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率及び上記静摩擦係数を本発明で特定する範囲内とすることが容易となる。
上記滑剤としては、公知乃至慣用のコーティング層において用いられる滑剤が挙げられ、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン系ワックス等のポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、カルナウバワックス等の各種ワックス(ワックス類)や樹脂ビーズ等が挙げられる。その他、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の有機又は無機粒子が挙げられる。中でも、脂肪酸アミドが好ましい。上記滑剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記脂肪酸アミドとしては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、N−置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミド、芳香族系ビスアミド等が挙げられる。飽和脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸アミドとしては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。N−置換アミドとしては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。また、メチロールアミドとしては、メチロールステアリン酸アミド等が挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドとしては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等が挙げられる。脂肪酸エステルアミドとしては、ステアロアミドエチルステアレート等が挙げられる。芳香族系ビスアミドとしては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等が挙げられる。上記脂肪酸アミドは、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。中でも、側鎖の長さが適度であるため粉吹きを抑制しつつフィルム表面に滑り性を付与でき、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率及び上記静摩擦係数を本発明で特定する範囲内とすることが容易となる観点から、エルカ酸アミドとエチレンビスステアリン酸アミドの併用が好ましい。
本発明の樹脂層中の滑剤の含有割合は、特に限定されないが、本発明の樹脂層の総質量(100質量%)に対して、600〜5000質量ppmが好ましく、より好ましくは1000〜3000質量ppm、さらに好ましくは1500〜2500質量ppmである。上記含有割合が上記範囲内であると、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率及び上記静摩擦係数を本発明で特定する範囲内とすることがよりいっそう容易となる。
本発明の樹脂層は、ポリスチレン系樹脂等の樹脂及び滑剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、着色剤、ピニング剤(アルカリ土類金属)、軟化剤、相溶化剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。また、本発明の樹脂層は、フィルム製造時のフィルム片を再ペレット化された回収原料を含有していてもよい。なお、回収原料とは、製品化の前後やフィルムエッジ等の非製品部分、中間製品から製品フィルムを採取した際の残余部分や規格外品等のフィルム屑、ポリマー屑からなるリサイクル原料である。ただし、回収原料は本発明の熱収縮性フィルムの製造より生じたもの(いわゆる自己回収品)が好ましい。
本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物は、曲げ弾性率が1600MPa以上(例えば、1600〜2100MPa)であり、好ましくは1620MPa以上(例えば、1620〜1700MPa)、より好ましくは1640MPa以上である。上記曲げ弾性率は、JIS K7171に準拠して測定することができる。また、樹脂層が、二種以上の樹脂組成物の混合物から形成される場合、上記二種以上の樹脂組成物それぞれについて、上記のようにして測定された曲げ弾性率から、上記二種以上の樹脂組成物の含有割合を乗じて得た数値を合計して得た数値を、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率としてもよい。より具体的には、例えば、樹脂層が、上記曲げ弾性率がX(MPa)である樹脂組成物(RC1)と、上記曲げ弾性率がY(MPa)である樹脂組成物(RC2)のみから構成される樹脂混合物から形成されており、上記樹脂混合物(RC1とRC2の樹脂混合物)100質量%中のRC1の含有割合がW1(質量%)、RC2の含有割合がW2(質量%)である場合には、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率は、一般的に、以下のように計算することができる。
樹脂組成物の曲げ弾性率(MPa)=(X×W1+Y×W2)/100
本発明の樹脂層同士の静摩擦係数は、0.10〜0.40であり、好ましくは0.11〜0.35、より好ましくは0.12〜0.30である。上記静摩擦係数は、本発明の熱収縮性フィルムを試験片とし、JIS K7125に準拠して測定することができる。
本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率が1600MPa以上であり、且つ本発明の樹脂層同士の静摩擦係数が0.40以下であることにより、本発明の熱収縮性フィルムを用いたシュリンクラベルの筒状体は、切断時に内面同士が接着しにくい。また、上記静摩擦係数が0.10以上であることにより、本発明の熱収縮性フィルムは、上記接着が起こりにくいことに加え、印刷時のフィルムの蛇行を抑制することができる。
本発明の樹脂層同士の動摩擦係数は、特に限定されないが、熱収縮性フィルムへの印刷適性に優れる観点から、0.10〜0.45が好ましく、より好ましくは0.11〜0.40、より好ましくは0.12〜0.35である。上記動摩擦係数は、本発明の熱収縮性フィルムを試験片とし、JIS K7125に準拠して測定することができる。
本発明の熱収縮性フィルムは、少なくとも一方の表面(特に、両表面)に本発明の樹脂層を有する積層フィルムであることが好ましい。本発明の熱収縮性フィルムが積層フィルムである場合の積層数(即ち樹脂層の総数)は、2以上であり、好ましくは3である。したがって、本発明の熱収縮性フィルムは、2つの本発明の樹脂層と、当該2つの本発明の樹脂層の間に挟まれた中心層の構成([本発明の樹脂層/中心層/本発明の樹脂層])であることが特に好ましい。なお、上記両表面の本発明の樹脂層は、同一の層であってもよいし、例えば組成や厚み等が互いに異なる本発明の樹脂層であってもよいが、生産性の観点から、同一であることが好ましい。
(中心層)
上記中心層は、熱可塑性樹脂を主成分とする層(質量割合で最も多く含む層)であることが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記中心層は、中でも、本発明の樹脂層との接着性に優れ、熱収縮後の仕上がりが良好となるの観点から、ポリスチレン系樹脂を主成分とする層(質量割合で最も多く含む層)であることが特に好ましい。中心層におけるポリスチレン系樹脂としては、上述の本発明の樹脂層に含まれるポリスチレン系樹脂として例示及び説明されたものが挙げられ、中でも、スチレン−ジエン系共重合体が好ましく、より好ましくはスチレン−ブタジエン共重合体、さらに好ましくはスチレン−ブタジエンブロック共重合体、特に好ましくはSBSである。また、ポリスチレン系樹脂は、スチレン−ジエン系共重合体に加え、GPPS及びHIPSを含んでいてもよい。
上記中心層中のポリスチレン系樹脂の含有割合は、特に限定されないが、中心層の総質量(100質量%)に対して、50質量%以上(例えば50〜100質量%)が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。上記含有割合が上記範囲内であると、本発明の熱収縮性フィルム及びこれを用いたシュリンクラベルの収縮特性により優れる。
上記中心層中のスチレン−ジエン系共重合体(HIPSを含む場合はスチレン−ジエン系共重合体とHIPSの合計)の含有割合は、特に限定されないが、中心層の総質量(100質量%)に対して、70質量%以上(例えば70〜100質量%)が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。上記含有割合が70質量%以上であると、本発明の熱収縮性フィルム及びこれを用いたシュリンクラベルの収縮特性により優れる。
上記中心層中に含まれる全てのポリスチレン系樹脂中のスチレン系単量体に由来する構成単位の含有割合は、特に限定されないが、中心層中のポリスチレン系樹脂の総質量(100質量%)に対して、50〜95質量%が好ましく、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは65〜85質量%、特に好ましくは70〜80質量%である。上記含有割合が50質量%以上であると、本発明の熱収縮性フィルムを適度に硬くし、シュリンクラベルの剛性を適度に高くし、シュリンクラベルを装着する際の収縮特性が良好となる傾向がある。上記含有割合が95質量%以下(特に、85質量%以下)であると、未延伸フィルムを高倍率で延伸する際にも破断しにくく、高い熱収縮性を有する熱収縮性フィルムが得やすくなる。また、適度な収縮応力と収縮特性を得ることができる傾向がある。
上記中心層は、滑剤を含んでいてもよい。上記滑剤としては、上述の本発明の樹脂層が含んでいてもよい滑剤として例示及び説明されたものが挙げられる。上記中心層が滑剤を含有する場合の上記中心層中の滑剤の含有割合は、特に限定されないが、中心層の総質量(100質量%)に対して、50〜3000質量ppmが好ましく、より好ましくは100〜2000質量ppm、さらに好ましくは200〜1500質量ppmである。上記含有割合が上記範囲内であると、中心層から本発明の樹脂層への滑剤の染み出しにより本発明の樹脂層の物性に影響を与えると推測され、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率及び上記静摩擦係数を本発明で特定する範囲内とすることがよりいっそう容易となる。
上記中心層は、熱可塑性樹脂等の樹脂及び滑剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲内で、上述の本発明の樹脂層が含んでいてもよい添加剤として例示及び説明されたものを含んでいてもよい。これらの成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。また、上記中心層は、フィルム製造時のフィルム片を再ペレット化された回収原料を含有していてもよい。ただし、回収原料は本発明の熱収縮性フィルムの製造より生じたもの(いわゆる自己回収品)が好ましい。
上記中心層は、特に限定されないが、上記中心層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率が1700〜2400MPaであることが好ましく、より好ましくは1800〜1900MPa、さらに好ましくは1850〜1875MPaである。上記曲げ弾性率が上記範囲内であると、長尺筒状シュリンクラベルの切断時に内面同士の接着がより起こりにくくなる。また、本発明の熱収縮性フィルムの腰がより適度となり、熱収縮後の仕上がりがより良好となる。さらに、印刷加工時のフィルム切れがより起こりにくくなる。上記中心層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率は、上述の本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率と同様にして求めることができる。なお、上記中心層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率は、本発明の樹脂層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率よりも大きいことが好ましい。
本発明の熱収縮性フィルムは、シュリンク特性(熱収縮性)を発揮する観点から、少なくとも一方向に配向したフィルム(例えば、一方向に配向したフィルムや、一方向及び一方向と異なる方向に配向したフィルム)であることが好ましい。熱収縮性フィルムが積層フィルムの場合には、積層フィルム中の少なくとも1層のフィルム層が配向していることが好ましく、全てのフィルム層が少なくとも一方向に配向したフィルムであることが好ましい。全てのフィルム層が無配向の場合には、十分なシュリンク特性を発揮できない場合がある。熱収縮性フィルムとしては、特に一方向に配向したフィルム(1軸配向フィルム)又は一方向及び一方向と直交する方向に配向したフィルム(2軸配向フィルム)が用いられることが多く、中でも、1軸配向フィルム(一方向に主に延伸され、当該一方向と直交する方向にわずかに延伸された、実質的に一方向に延伸されたフィルムを含む)が一般的に用いられる。
上記少なくとも一方向に配向したフィルムは、未延伸フィルムを、少なくとも一方向に延伸することで得られる。例えば、上記少なくとも一方向に配向したフィルムが1軸配向フィルムである場合は未延伸フィルムを一方向に延伸することで得られ、2軸配向フィルムである場合は未延伸フィルムを一方向及び当該一方向と直交する方向に延伸することで得られる。なお、本発明の熱収縮性フィルムを用いたシュリンクラベルは、本発明の熱収縮性フィルムの配向方向に主に熱収縮できる。
本発明の熱収縮性フィルムは、溶融製膜または溶液製膜等の慣用の方法によって作製することができる。積層構成の熱収縮性フィルムを作製する場合、積層の方法としては、慣用の方法、例えば、共押出法、ドライラミネート法等を用いることが可能である。熱収縮性フィルムに配向を施す方法としては、例えば、長手方向(フィルムの製造ライン方向。縦方向又はMD方向とも称する)及び幅方向(長手方向と直交する方向。横方向又はTD方向とも称する)の2方向への延伸、長手方向又は幅方向の一方向への延伸等を用いることができる。延伸方式は、例えば、ロール方式、テンター方式、チューブ方式等を用いることができる。例えば、幅方向に実質的に一方向に延伸されたフィルムの延伸処理は、70〜100℃程度の温度で、必要に応じて長手方向に例えば1.01〜1.5倍、好ましくは1.05〜1.3倍程度延伸した後、幅方向に3〜8倍、好ましくは4〜7倍程度延伸することにより行うことができる。
本発明の熱収縮性フィルムの、主収縮方向の、90℃、10秒における熱収縮率(「熱収縮率(90℃、10秒)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、30〜90%が好ましく、より好ましくは40〜85%である。本発明の熱収縮性フィルムの、主収縮方向と直交する方向の熱収縮率(90℃、10秒)は、特に限定されないが、−3〜15%が好ましく、より好ましくは−1〜10%である。なお、上記「主収縮方向」とは最も熱収縮率が大きい方向であり、一般的には主に延伸処理された方向であり、例えば、幅方向に実質的に一方向に延伸されたフィルムの場合には幅方向である。
本発明の熱収縮性フィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理、プライマー処理、帯電防止コーティング処理等の慣用の表面処理が施されていてもよい。
本発明の熱収縮性フィルムが透明である場合には、上記熱収縮性フィルムのヘイズ(ヘーズ)値[JIS K 7136準拠、厚み40μm換算、単位:%]は、特に限定されないが、10%以下が好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。ヘイズ値が10%を超える場合には、熱収縮性フィルムの内側(シュリンクラベルを容器に装着したときに容器側になる面側)に印刷を施し、熱収縮性フィルムを通して印刷を見せるシュリンクラベル(裏印刷シュリンクラベル)用途においては、製品とした際に、印刷が曇り、装飾性が低下することがある。ただし、ヘイズ値が10%を超える場合であっても、熱収縮性フィルムを通して印刷を見せる上記用途以外の用途(表印刷シュリンクラベル)においては不透明であってもよく、十分に使用可能である。また、不透明の熱収縮性フィルムとしては、特に限定されないが、例えば、乳白フィルム、金属蒸着フィルム等を用いることができる。
本発明の熱収縮性フィルムの厚みは、特に限定されないが、10〜100μmが好ましく、より好ましくは12〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmである。
本発明の熱収縮性フィルムが[本発明の樹脂層/中心層/本発明の樹脂層]の3層構成である場合、少なくとも一方の本発明の樹脂層の厚み(筒状ラベルとしたときの内側となる方の1層あたりの厚み)は、1〜20μmが好ましく、より好ましくは3〜15μmである。
[シュリンクラベル]
本発明の熱収縮性フィルムは、シュリンクラベルのラベル基材として好ましく用いられる。なお、本明細書において、本発明の熱収縮性フィルムを有するシュリンクラベルを「本発明のシュリンクラベル」と称する場合がある。
本発明のシュリンクラベルは、本発明の熱収縮性フィルム以外の層として、印刷層、不織布や発泡シート等の他のフィルム層、接着剤層(感圧性接着剤層、感熱性接着剤層等)、保護層、アンカーコート層、プライマーコート層、コーティング層、帯電防止層、アルミニウム蒸着層等を有していてもよい。
(印刷層)
上記印刷層としては、特に限定されず、例えば、シュリンクラベルにおいて用いられる公知乃至慣用の印刷層等が挙げられる。上記印刷層としては、溶剤乾燥型の印刷インキによって形成される溶剤乾燥型の印刷層、活性エネルギー線硬化型の印刷インキによって形成される活性エネルギー線硬化型の印刷層等が挙げられる。また、上記印刷層としては、例えば、商品名、イラスト、取り扱い注意事項等の図やデザイン等の意匠印刷層(カラー印刷層等)、白等の単一色で形成された背面印刷層、フィルムや印刷層を保護するために設けられる保護印刷層、フィルムと印刷層の密着性を高めるために設けられるプライマー印刷層等が挙げられる。上記印刷層は、特に限定されないが、本発明の熱収縮性フィルムの片面側のみに設けられていてもよいし、本発明の熱収縮性フィルムの両面側に設けられていてもよい。また、上記印刷層は、本発明の熱収縮性フィルムの表面(印刷層が設けられる側の表面)の全面に設けられていてもよいし、一部に設けられていてもよい。さらに、上記印刷層は、特に限定されないが、単層であってもよいし、複層であってもよい。また、上記印刷層は、周知乃至慣用の印刷方法により設けることができる。中でも、上記印刷層は、グラビア印刷法又はフレキソ印刷法によって設けられることが好ましい。
上記印刷層は、特に限定されないが、バインダー樹脂を必須成分として含むことが好ましい。さらに、必要に応じて、青、赤、黄、黒、白等の着色顔料や滑剤、分散剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。上記バインダー樹脂等は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記バインダー樹脂としては、特に限定されず、例えば、公知乃至慣用の印刷層、印刷インキにおいてバインダー樹脂として用いられる樹脂を用いることができる。上記バインダー樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂(ニトロセルロース系樹脂を含む)、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合系樹脂等が挙げられる。上記着色顔料としては、特に限定されず、例えば、公知乃至慣用の印刷層、印刷インキにおいて用いられる着色顔料を用いることができる。上記着色顔料は、例えば、酸化チタン(二酸化チタン)等の白顔料、銅フタロシアニンブルー等の藍顔料、カーボンブラック、アルミフレーク、雲母(マイカ)、その他着色顔料等を用途に合わせて選択、使用できる。また、上記着色顔料として、その他にも、光沢調整等の目的で、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アクリルビーズ等の体質顔料も使用できる。
上記溶剤乾燥型の印刷層は、例えば、上記バインダー樹脂、溶剤、必要に応じて、上記着色顔料及びその他添加剤等を混合することにより製造された印刷インキを、印刷機を用いて塗布した後、溶剤を揮発させて設けられる。一方、上記活性エネルギー線硬化型の印刷層は、例えば、上記バインダー樹脂を構成する単量体成分、必要に応じて、上記着色顔料、溶剤、及びその他添加剤等を混合することにより製造された印刷インキを、印刷機を用いて塗布した後、必要に応じて乾燥し、活性エネルギー線(例えば、紫外線)照射により上記単量体成分を重合し硬化させて設けられる。
上記印刷層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.3〜5μmである。
本発明のシュリンクラベルの厚み(総厚み)は、特に限定されないが、10〜110μmが好ましく、より好ましくは15〜90μm、さらに好ましくは20〜80μmである。
本発明のシュリンクラベルは、表印刷シュリンクラベルであってもよいし、裏印刷シュリンクラベルであってもよいし、両面印刷シュリンクラベルであってもよい。中でも、本発明のシュリンクラベルは裏印刷シュリンクラベルであることが好ましい。なお、本明細書において、表印刷ラベルとは、熱収縮性フィルムを通さず印刷を見せるラベルであり、ラベルを見る際に、熱収縮性フィルムよりも手前に意匠印刷層があるラベルをいう。また、裏印刷ラベルとは、熱収縮性フィルムを通して印刷を見せるラベルであり、ラベルを見る際に、熱収縮性フィルムよりも奥側に意匠印刷層があるラベルをいう。また、両面印刷ラベルとは、熱収縮性フィルムの両面側に意匠印刷層を有するラベルをいう。
本発明のシュリンクラベルは、1つの被着体に対応する(1つの被着体に装着する)シュリンクラベル(個別のシュリンクラベル)であってもよいし、上記個別のシュリンクラベルが長尺方向(長手方向)に複数個連なった長尺状のシュリンクラベル(ラベル長尺体)であってもよい。本発明のシュリンクラベルがラベル長尺体である場合、上記ラベル長尺体は、本発明の熱収縮性フィルムと、本発明の熱収縮性フィルムの少なくとも一方の面に設けられた印刷層とを有することが好ましい。
本発明のシュリンクラベル(ラベル長尺体を含む。以下同じ。)は、本発明のシュリンクラベルを筒状ラベルとして用いる場合に本発明の樹脂層が内側となるように本発明の熱収縮性フィルムを有することが好ましい。また、この場合、本発明のシュリンクラベルは、本発明の樹脂層が表面(筒状シュリンクラベルとした際に内側となる表面)に露出した部分を有することが好ましい。これにより、本発明のシュリンクラベルを筒状シュリンクラベルとして用いた場合には切断時の内面同士の接着を起こりにくくすることができる。
本発明のシュリンクラベルがラベル長尺体である場合、本発明の樹脂層上(特に、筒状とした際に本発明の熱収縮性フィルムの内側となる本発明の樹脂層上)には、切断予定領域に上記印刷層を有しないことが好ましい。本発明の樹脂層上の切断予定領域に印刷層を有しない場合、筒状シュリンクラベルとした後に切断する際には、カッターにより筒状シュリンクラベルが押し潰されて切断予定領域の内面同士が接触するが、切断予定領域では筒状シュリンクラベルの内面同士、即ち本発明の樹脂層同士が接触するため、後述する理由から、内面同士の接着が起こりにくい。
図1は、本発明のシュリンクラベルの一実施形態である長尺状のシュリンクラベル(ラベル長尺体)の一例を示す概略図である。図1に記載のラベル長尺体1は、1つの被着体に対応する(1つの被着体に装着する)1つのシュリンクラベル(個別のシュリンクラベル)1aが長尺方向(長手方向)に複数個連なったものである。切断予定部12は、長尺筒状シュリンクラベルとした後にカッターにより切断される部分である。切断予定領域11は切断予定部12を含む周辺の領域であり、当該領域には印刷層13が設けられていない。また、長尺筒状シュリンクラベルとする際にシール部となる部分14にも印刷層13は設けられていない。ラベル長尺体11では、切断予定領域11及びシール部となる部分14以外の全面に印刷層13が設けられている。
本発明のシュリンクラベルは、通常、長尺状の本発明の熱収縮性フィルムの少なくとも一方の表面に、上記印刷インキを連続的に塗布され、乾燥や硬化によって固化して印刷層が形成されて、長尺状のシュリンクラベル(ラベル長尺体)として製造される。本発明の熱収縮性フィルムの少なくとも一方の面に印刷層を有するシュリンクラベルは、本発明の熱収縮性フィルムの少なくとも一方の面上に、印刷インキを塗布し、乾燥や硬化によって固化させることにより形成することができる。上記印刷インキを塗布する方法としては、公知慣用の方法を用いることができ、中でも、グラビア印刷、フレキソ印刷、デジタル印刷が好ましい。また、塗布された印刷インキを加熱等により、乾燥又は乾燥固化する際には、印刷装置上で加熱が可能な、一般的な加熱装置を好ましく用いることができる。安全性の観点から、好ましくは、熱風ヒーター等を用いることができる。例えば、意匠印刷層は、一般的に、上記印刷インキの塗布は、色ごとに、複数回行われ、複層である印刷層が形成される。
上記印刷インキが溶剤乾燥型の印刷インキである場合、上記印刷インキは、例えば、バインダー樹脂、溶媒及びその他添加剤(着色顔料等)等を、必要に応じて、混合することにより製造される。混合は、公知慣用の混合方法により行うことができ、特に限定されないが、例えば、ペイントシェイカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ポニーミキサー、ディゾルバー、タンクミキサー、ホモミキサー、ホモディスパー等のミキサーや、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ラインミル等のミル、ニーダー等の混合装置が用いられる。混合の際の混合時間(滞留時間)は、特に限定されないが、10〜120分が好ましい。得られた印刷インキは、必要に応じて、濾過してから用いてもよい。上記各成分(バインダー樹脂、溶媒、その他の添加剤)は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
上記溶媒としては、グラビア印刷やフレキソ印刷等に使用される印刷インキに通常用いられる水や有機溶剤等を用いることができる。上記有機溶剤としては、例えば、酢酸エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル)等のエステル;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル等が挙げられる。上記溶媒は、印刷インキを本発明の熱収縮性フィルムに塗布した後、乾燥により除去することができる。なお、上記溶媒には、「分散媒」の意味も含む。
上記印刷インキが活性エネルギー線硬化型の印刷インキである場合、上記印刷インキは、バインダー樹脂を構成する単量体成分、溶媒、及びその他添加剤(着色顔料等)等を、必要に応じて、混合することにより製造される。混合は、公知慣用の混合方法により行うことができ、特に限定されないが、例えば、上述の溶剤乾燥型の印刷インキの混合装置として例示及び説明された混合装置等が使用できる。混合の際の混合時間(滞留時間)は、特に限定されないが、10〜120分が好ましい。得られた印刷インキは、必要に応じて、濾過してから用いてもよい。上記各成分(単量体成分、溶媒、その他の添加剤)は、それぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
本発明のシュリンクラベルは、例えば、ラベル両端を溶剤や接着剤でシールし筒状にして容器に装着されるタイプの筒状シュリンクラベルや、ラベルの一端を容器に貼り付け、ラベルを巻き回した後、他端を一端に重ね合わせて筒状にする巻き付け方式のシュリンクラベル(いわゆるROSOラベル)として用いることができる。本発明のシュリンクラベルは、上記の中でも、筒状シュリンクラベルに特に好ましく用いられる。即ち、本発明のシュリンクラベルは、筒状シュリンクラベルであることが好ましい。以下、本発明のシュリンクラベルを用いた筒状シュリンクラベルを、「本発明の筒状シュリンクラベル」と称する場合がある。
本発明の筒状シュリンクラベルは、特に限定されないが、例えば、下記の通りにして得られる。所定の幅にスリットされた上記ラベル長尺体を、熱収縮可能な方向(即ち、熱収縮性フィルムの熱収縮方向)が周方向となるように、他端部が一端部の外側になるように重ね合わせて筒状に形成し、当該重ね合わせた部分を所定幅で帯状にシールして両端部を接合して、長尺筒状のラベル連続体(長尺筒状シュリンクラベル)を得ることができる。この長尺筒状シュリンクラベルを周方向に切断することで、高さ方向に所定の長さを有する、1つの被着体に対応する(1つの被着体に装着する)1つの筒状シュリンクラベル(個別の筒状シュリンクラベル)を得ることができる。なお、本発明の筒状シュリンクラベルには、上記長尺筒状シュリンクラベル及び上記個別の筒状シュリンクラベルの両方が含まれる。
本発明の筒状シュリンクラベルは、本発明の樹脂層が内側となるように本発明の熱収縮性フィルムを有することが好ましい。また、本発明の筒状シュリンクラベルは、本発明の熱収縮性フィルムと、本発明の熱収縮性フィルムの少なくとも一方の面に設けられた印刷層とを有することが好ましい。そして、本発明の筒状シュリンクラベルは、筒(筒状ラベル)の内面に本発明の樹脂層の露出部を有することが好ましい。本発明の筒状シュリンクラベルが上記長尺筒状シュリンクラベルである場合は内面の切断予定領域が上記露出部(即ち、上記印刷層を有しない領域)であることが好ましく、上記個別の筒状シュリンクラベルの場合は内面の上下端部領域が上記露出部(即ち、上記印刷層を有しない領域)であることが好ましい。
図2は、本発明のシュリンクラベルの一実施形態である長尺筒状のラベル連続体(長尺筒状シュリンクラベル)の一例を示す概略図である。図2に記載の長尺筒状シュリンクラベル2は、図1におけるラベル長尺体1が、当該ラベル長尺体の幅方向の一端部の外側に他端部を重ね合わせて筒状とし、他端部の内面と一端部の外面とを溶剤又は接着剤で接合しシール部24が形成された筒状体に相当し、1つの被着体に対応する(1つの被着体に装着する)1つの筒状シュリンクラベル(個別の筒状シュリンクラベル)2aが長尺方向(長手方向)に複数個連なったものである。切断予定部22は、図1における切断予定部12に相当し、個別の筒状シュリンクラベルを得る際にカッターにより切断される部分である。切断予定領域21は図1における切断予定領域11に相当し、切断予定部22を含む周辺の領域である。長尺筒状シュリンクラベル2は、本発明の熱収縮性フィルムを、本発明の樹脂層が内側となるように有している。長尺筒状シュリンクラベル2の内側において、切断予定領域21には印刷層23が設けられておらず、当該領域と図1におけるシール部となる部分14に相当する領域とを除いて全面に印刷層23が設けられている。このため、長尺筒状シュリンクラベル2の内面は、切断予定領域21において、本発明の樹脂層が露出した部分(露出部)を有する。なお、長尺筒状シュリンクラベル2は、例えば、筒状形成時又は後に扁平状に押しつぶされ、巻き取られて巻回体として保管される。
図3は、本発明のシュリンクラベルの一実施形態である筒状シュリンクラベル(個別の筒状シュリンクラベル)の一例を示す概略図である。図3に記載の筒状シュリンクラベル3は、図2における長尺筒状シュリンクラベル2が、切断予定部22でカッター等により幅方向に切断されたものに相当する。筒状シュリンクラベル3は、本発明の熱収縮性フィルムの主収縮方向が筒状シュリンクラベルの周方向Dとなるように筒状にされており、当該方向に熱収縮可能である。筒状シュリンクラベル3は、本発明の熱収縮性フィルムを、本発明の樹脂層が内側となるように有している。筒状シュリンクラベル3の内側において、上端部31及び下端部32には印刷層23が設けられておらず、当該上端部31と下端部32とシール部34(具体的には、図1におけるシール部となる部分14に相当する領域)とを除いて全面に印刷層33が設けられている。このため、筒状シュリンクラベル3の内面は、上下端部領域において、本発明の樹脂層が露出した部分(露出部)を有する。
図4は、図3におけるIV−IV’断面、即ち、筒状シュリンクラベル3のシール部34付近の要部拡大図(断面上面図)の一例である。図4において、シール部では、シュリンクラベルの両端部が溶剤又は接着剤44で接合されている。具体的には、筒状シュリンクラベルは、本発明の熱収縮性フィルム41の一方の面(筒状体の内側の面)の他端部46の端から所定幅の領域を除いた領域内に意匠印刷層42が形成され、その意匠印刷層42を覆うように、本発明の熱収縮性フィルム41の一方の面の他端部46の端から所定幅の領域を除いた領域の略全域に背面印刷層43が形成されている。このため、筒状シュリンクラベル3には、他端部46の端から所定幅の領域は、背面印刷層43及び意匠印刷層42が形成されておらず、本発明の熱収縮性フィルム41(特に、本発明の樹脂層)が露出し、フィルム露出面が形成され、シール部は、筒状シュリンクラベル3の他端部46の内面側に形成されたフィルム露出面と、一端部45の外面(フィルム露出面)とを、溶剤又は接着剤44によって接合されている。即ち、シール部では、本発明の熱収縮性フィルム41同士が溶剤又は接着剤44で接合されていることが好ましい。なお、上記両端部のうち、接合されない部分は、背面印刷層、意匠印刷層等の印刷層等を有していても接着性に影響はないため、印刷層を有していてもよい。
なお、図4における筒状シュリンクラベル3では、一端部45は、その端が他端部46の背面印刷層43と重なる位置まで延びてきており、一端部45と他端部46の背面印刷層43同士が本発明の熱収縮性フィルム41を介して重なる領域が形成されている。このため、厚み方向に背面印刷層43が存在しない領域は存在しない。本発明の筒状シュリンクラベルは、図4に示すような、一端部の端と他端部側の背面印刷層と重なる(厚み方向に重なる、即ち面広がり方向において重なる)構造であってもよいし、一端部の端が他端部のフィルム露出面と重なる領域まで延び、一端部の端が他端部側の背面印刷層と重なる位置まで延びてきていない、一端部の端と他端部側の背面印刷層とが重ならない構造であってもよい。
上記シール部の幅は、特に限定されないが、0.2〜10mmが好ましく、より好ましくは0.3〜5mm、さらに好ましくは0.4〜2mmである。
上記長尺筒状シュリンクラベルの切断には、ギロチンカッターやロータリーカッター等種々のカッターを用いることができる。上記長尺筒状シュリンクラベルの切断に使用される装置としては、例えば、固定刃及び固定刃に対して進退移動可能な可動刃を備えるギロチンカッターや、図5に示すようなロータリーカッター等が挙げられる。なお、上記長尺筒状シュリンクラベルは、ラベラー(ラベル装着機)において容器等に装着される前に切断されるのが一般的である。
図5(長尺筒状シュリンクラベル2が長手方向に巻き取られた巻回体の幅方向一方側から見た図)に示すロータリーカッター51は、固定刃52と可動刃である回転刃53を備える。ロータリーカッター51は、例えばラベラーの上流側に配置される。長尺筒状シュリンクラベル2は、扁平状に折り畳まれてロール状に巻き取られた状態で巻回体としてラベラーに供給され、繰り出しローラー54等により固定刃52と回転刃53との間に通される。ロータリーカッター51では、回転刃53が長尺筒状シュリンクラベル2を下流側へ繰り出すように回転しており、回転刃53の刃先が固定刃52と近接するときに2つの刃に挟まれた長尺筒状シュリンクラベル2が押し切られるように切断される。
なお、筒状シュリンクラベルは上記のようにして長尺筒状シュリンクラベルが切断されて製造されるが、シュリンクラベルによっては、当該切断時においてラベルの内面同士が接着(接合)する、所謂カット融着が発生する場合がある。特にギロチンカッターや図5に示すロータリーカッター51を用いた場合には、例えば切断時の摩擦熱や押圧の影響等により、筒状シュリンクラベルの上流側の開口部にカット融着が発生しやすい。しかしながら、本発明のシュリンクラベルは、本発明の樹脂層を表面に有する本発明の熱収縮性フィルムを有することによりカット適性が比較的優れ、カット融着が発生しにくい。また、仮にカット融着が発生したとしても融着の程度が小さく、容易に引き離すことができる。このため、本発明のシュリンクラベルは、カット融着しにくいカッターを搭載したラベラーだけで無く、比較的カット融着しやすいカッターを搭載したラベラーにも使用でき、汎用性に優れる。
本発明の筒状シュリンクラベルは、ラベル切除用にミシン目を有していてもよい。筒状シュリンクラベルにミシン目を設ける場合は、所定の長さ及びピッチのミシン目を縦方向(周方向と直交する方向)に形成する。ミシン目は慣用の方法(例えば、周囲に切断部と非切断部とが繰り返し形成された円板状の刃物を押し当てる方法やレーザーを用いる方法等)により施すことができる。ミシン目を施す工程は、印刷層を設けた後や、筒状に加工する工程の前後等、適宜選択できる。
本発明の熱収縮性フィルムは、ポリスチレン系樹脂を主成分とし、且つ曲げ弾性率が特定値以上である樹脂組成物から形成された樹脂層を少なくとも一方の表面に有し、上記樹脂層同士の静摩擦係数が特定範囲内であることにより、ポリスチレン系樹脂を主成分とする樹脂層を表面に有しながら、切断時に内面同士が接着しにくい長尺筒状ラベルを得ることが可能なシュリンクラベルが得られる。切断時に内面同士(特に、熱収縮性フィルム同士)の接着が発生するメカニズムは、以下のように推測される。長尺筒状シュリンクラベルの切断時、長尺筒状シュリンクラベルの外面にカッターの刃が入るが、この際に長尺筒状シュリンクラベルの外面が塑性変形を始め、その塑性変形の応力が長尺筒状シュリンクラベルの外面から内面に向かって伝播する。そして、内面同士の接触時に、当該接触箇所に上記応力が伝播する。また、切断時に上記接触箇所においてカッターの刃と熱収縮性フィルムとの摩擦あるいはカッターの可動刃と固定刃との摩擦等により、上記接触箇所にて熱が発生する。このようにして発生した塑性変形による応力と摩擦熱が上記接触箇所にかかることにより、熱収縮性フィルムの内面同士が接着する。
これに対し、本発明の熱収縮性フィルムを用いたシュリンクラベルは、切断時、長尺筒状シュリンクラベルの内面である本発明の樹脂層同士が接触する。そして、本発明の樹脂層同士の静摩擦係数が特定の範囲内であることにより、本発明の樹脂層同士が滑りやすく、塑性変形により発生した応力が熱収縮性フィルムの移動に用いられ、上記応力が拡散するため、上記接触部分に集中しにくい。また、本発明の樹脂層は曲げ弾性率が特定値以上である樹脂組成物から形成されたものであることにより、切断時の塑性変形が起こりにくく、応力が発生しにくい。これらに起因するものと推測され、本発明の熱収縮性フィルムは、ポリスチレン系樹脂を主成分とする樹脂層を表面に有しながら、切断時に内面同士が接着しにくい長尺筒状ラベルを得ることができるという効果を奏する。
[ラベル付き容器]
本発明のシュリンクラベルは、特に限定されないが、容器に装着して、ラベル付き容器として用いられる。なお、本発明のシュリンクラベルは、容器以外の被着体に用いられてもよい。例えば、本発明のシュリンクラベル(特に、筒状シュリンクラベル)を容器の周りに、本発明のシュリンクラベルが筒状となるように配置し、熱収縮させることによって容器に装着することにより、ラベル付き容器(本発明のシュリンクラベルを有するラベル付き容器)が得られる。上記容器には、例えば、PETボトル等のソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳瓶、調味料等の食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレー等の化学製品の容器、トイレタリー用の容器、カップ麺容器等が含まれる。上記容器の形状としては、特に限定されないが、例えば、円筒状、角形等のボトルタイプや、カップタイプ等の様々な形状が挙げられる。また、上記容器の材質としては、特に限定されないが、例えば、PET等のプラスチック、ガラス、金属等が挙げられる。なお、本発明のシュリンクラベルが装着された容器を、「本発明のラベル付き容器」と称する場合がある。
上記ラベル付き容器は、例えば、筒状シュリンクラベル(個別の筒状シュリンクラベル)を、所定の容器に外嵌した後、加熱処理によって筒状シュリンクラベルを熱収縮させ、容器に追従密着させること(シュリンク加工)によって作製できる。上記加熱処理の方法としては、例えば、熱風トンネルやスチームトンネルを通過させる方法、赤外線等の輻射熱で加熱する方法等が挙げられる。特に、80〜100℃のスチームで処理する(スチーム及び湯気が充満した加熱トンネルを通過させる)方法が好ましい。また、101〜140℃のドライスチームを用いることもできる。上記加熱処理は、特に限定されないが、熱収縮性フィルムの温度が85〜100℃(特に、90〜97℃)となる温度範囲で実施することが好ましい。また、加熱処理の処理時間は、生産性、経済性の観点から、4〜20秒が好ましい。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、表1に、実施例及び比較例で作製した熱収縮性フィルムにおける表面層の原料組成及び評価結果等を示した。
実施例1
(熱収縮性フィルム)
表面層用原料として、SBSを100質量%、エルカ酸アミドを780質量ppm、及びエチレンビスステアリン酸アミドを350質量ppm含む樹脂組成物A(曲げ弾性率:1580MPa)75質量%と、SBSを85質量%、GPPSを5質量%、HIPSを10質量%、エルカ酸アミドを4860質量ppm、及びエチレンビスステアリン酸アミドを680質量ppm含む樹脂組成物B(曲げ弾性率:1880MPa)25質量%とを用いた。
中心層用原料として、SBSを80質量%、HIPSを20質量%、エルカ酸アミドを780質量ppm、及びエチレンビスステアリン酸アミドを350質量ppm含む樹脂組成物C(曲げ弾性率:2180MPa)24.7質量%と、スチレン−ブタジエン共重合体を100質量%、エルカ酸アミドを390質量ppm、及びエチレンビスステアリン酸アミドを180質量ppm含む樹脂組成物D(曲げ弾性率:1860MPa)47.5質量%と、上記樹脂組成物A25.5質量%と、上記樹脂組成物B2.3質量%とを用いた。
220℃に加熱した押出機aに上記表面層用原料、220℃に加熱した押出機bに上記中心層用原料を投入した。上記2台の押出機を用いて、溶融押出を行った。溶融した表面層用原料及び溶融した中心層用原料を、合流方式が2種3層型のフィードブロックを用いて、表面層用原料/中心層用原料/表面層用原料の2種3層構成の積層体を作製し、Tダイより押出した後、25℃に冷却したキャスティングドラム上で急冷して、積層未延伸フィルムを得た。
次に、上記積層未延伸フィルムを、幅方向に85℃で5倍テンター延伸することにより、幅方向に主に延伸され、当該方向に熱収縮性を有する延伸フィルム(熱収縮性フィルム)の長尺体を得た。なお、上記熱収縮性フィルムは、[表面層/中心層/表面層]の3層構成となっている。得られた熱収縮性フィルムにおける、原料である各樹脂組成物の曲げ弾性率から計算された表面層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率、及び表面層同士の静摩擦係数は、表1に示した通りである。
(筒状シュリンクラベル)
上記で得られた熱収縮性フィルムの長尺体をシュリンクラベルの長尺体(ラベル長尺体)とし、上記ラベル長尺体を、スリットして所定幅とした後、幅方向が周方向となるように一端部と他端部とを重ね合わせて筒状にし、当該一端部と他端部の熱収縮性フィルム面同士を溶剤でシールし、シュリンクラベルの筒状長尺体(長尺筒状シュリンクラベル)を得た。なお、得られた長尺筒状シュリンクラベルにおいて、内面は上記表面層が全面に露出している。
実施例2
(熱収縮性フィルム)
表面層用原料として、上記樹脂組成物A70質量%と、上記樹脂組成物B30質量%とを用いたこと、及び、中心層用原料として、SBSを35質量%、HIPSを60質量%、アクリル系樹脂を5質量%含む樹脂組成物E(曲げ弾性率:1700MPa)29.8質量%と、SBSを100質量%含む樹脂組成物F(曲げ弾性率:2090MPa)42.5質量%と、上記樹脂組成物A23.2質量%と、上記樹脂組成物B4.5質量%とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、延伸フィルム(熱収縮性フィルム)の長尺体を得た。
(筒状シュリンクラベル)
上記で得られた熱収縮性フィルムの長尺体を用いて、実施例1と同様にして長尺筒状シュリンクラベルを作製した。
実施例3
(熱収縮性フィルム)
表面層用原料として、上記樹脂組成物A80質量%と、上記樹脂組成物B20質量%とを用いたこと、及び、中心層用原料として、上記樹脂組成物E25.5質量%と、上記樹脂組成物F46.8質量%と、上記樹脂組成物A24.7質量%と、上記樹脂組成物B3.0質量%とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、延伸フィルム(熱収縮性フィルム)の長尺体を得た。
(筒状シュリンクラベル)
上記で得られた熱収縮性フィルムの長尺体を用いて、実施例1と同様にして長尺筒状シュリンクラベルを作製した。
比較例1
(熱収縮性フィルム)
表面層用原料として、上記樹脂組成物A80質量%と、SBSを90質量%、HIPSを10質量%、エルカ酸アミドを780質量ppm、及びエチレンビスステアリン酸アミドを350質量ppm含む樹脂組成物G(曲げ弾性率:1640MPa)20質量%とを用いたこと、及び、中心層用原料として、上記樹脂組成物E34.0質量%と、上記樹脂組成物F51.0質量%と、上記樹脂組成物A12.0質量%と、上記樹脂組成物G3.0質量%とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、延伸フィルム(熱収縮性フィルム)の長尺体を得た。
(筒状シュリンクラベル)
上記で得られた熱収縮性フィルムの長尺体を用いて、実施例1と同様にして長尺筒状シュリンクラベルを作製した。
比較例2
(熱収縮性フィルム)
中心層用原料として、上記樹脂組成物C67.0質量%と、上記樹脂組成物D18.0質量%と、上記樹脂組成物A12.0質量%と、上記樹脂組成物G3.0質量%とを用いたこと以外は、比較例1と同様にして、延伸フィルム(熱収縮性フィルム)の長尺体を得た。
(筒状シュリンクラベル)
上記で得られた熱収縮性フィルムの長尺体を用いて、比較例1と同様にして長尺筒状シュリンクラベルを作製した。
(評価)
実施例及び比較例で得られた熱収縮性フィルム及び長尺筒状シュリンクラベルについて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示した。
(1)摩擦係数
実施例及び比較例で得られた熱収縮性フィルムを、JIS K7125に準拠して、その表面層同士における静摩擦係数及び動摩擦係数を測定した。
測定機器、測定条件、手順等は、下記の通りである。
測定機器:「Friction Tester TR−2」(東洋精機(株)製)
錘:200g±2g(=1.96Nの法線力FPが生じる)、63mm×63mmの底面を有し、当該底面に同寸法のフェルトが貼られたものを用いた。
サンプル:65mm×160mmにカットした熱収縮性フィルム片(未収縮品)
摩擦相手:110mm×300mmにカットした熱収縮性フィルム片(未収縮品)
手順:表面層が外側を向くようにサンプルを錘に巻装し、サンプル付き錘を得た。当該サンプル付き錘は、錘の底面がサンプルに覆われ、サンプルの表面層が錘の底面全体にわたって存在し測定面(63×63mm)を形成している。上記摩擦相手の熱収縮性フィルム片が表面層を上に向けた状態で固定された平滑なテーブル上に、サンプル付き錘の測定面が摩擦相手の表面層と接触するようにサンプル付き錘を載置して測定を開始した。そして、最初に得られた最大応力を静摩擦力とし、この値から静摩擦係数を計算した。また、滑り運動中に働く摩擦力を動摩擦力とし、この値から動摩擦係数を計算した。
測定距離:60mm
速度:100mm/min
(2)カット適性
実施例及び比較例で得られた長尺筒状シュリンクラベルを、図5に示すロータリー式のカット機にて幅方向に切断した際のカット面の接着度合を確認した。そして、カット適性を以下の基準で評価した。
カット適性が良好(○):カット後の切断面において、ラベル内面同士の接着がない。
カット適性が可(△):カット後の切断面において、一部ラベル内面同士の接着が見られるが、拡開可能。
カット適性が不良(×):カット後の切断面において、全体にラベル内面同士の接着が見られ、拡開できなかった。
表1から明らかなとおり、本発明の熱収縮性フィルムを用いた場合(実施例1〜3)は、長尺筒状シュリンクラベルの切断後において、ラベル内面同士の接着は確認できなかったか、又は一部接着しているものもあったが拡開可能であった。一方、表面層を形成する樹脂組成物の曲げ弾性率が小さく表面層同士の静摩擦係数が大きい場合(比較例1及び2)は、長尺筒状シュリンクラベルの切断後において、内面同士が接着し、筒状に開くこと(拡開)ができなかった。