JP2018181829A - リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リチウムイオン二次電池において優れたレート特性及びサイクル特性を発現し得る負極材料を得るべく、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。【解決手段】次の工程(I)〜(II):(I)特定の式で表され、かつ平均粒径が5nm〜500nmであるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に、糖類と酸化グラフェンとの混合物、糖類とポリエチレンオキシドとの混合物、及び非晶質球状カーボン(ACS)から選ばれる炭素源(Y)を添加して混合し、造粒体(Z)を得る工程、(II)得られた造粒体(Z)を焼成する工程を備えるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法に関する。
近年における電子機器の小型化や軽量化に伴い、高いエネルギー密度を有するリチウムイオン二次電池は、極めて有用な材料として益々注目を浴びている。さらにリチウムイオン二次電池の超薄型化や超軽量化を実現するため、外装材としてその多くがアルミラミネートフィルムを採用してはいるものの、充放電によって電極の体積の膨張及び収縮が繰り返されるにつれ、電池の縒れや電極間距離の拡大が生じて電池抵抗が増大しやすくなるため、電池特性の低下を招く結果に至ってしまう。
こうしたなか、Li2Na2Ti614等の空間群Fmmmに属する結晶構造を有するチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物は、充放電に伴う体積変化がほとんどなく、その結果電極の体積変化が極めて小さい点で、有用性の高い負極材料として期待される。例えば特許文献1では、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物相(Li(2+y)NaTi614)と酸化チタン相(TiO2)との混相であるリチウムイオン二次電池用負極活物質が開示されており、上記のような問題に対応するための試みがなされている。
ところで、一般にリチウムイオン二次電池を使用した場合、電解液/負極活物質界面において、負極活物質表面と電解液(LiPF6)の電気化学反応により、SEI(固体電解質相)と称されるリチウム、酸素、フッ素、又はリンを主成分とする被膜が形成される。こうしたSEIの存在により、電解液の分解が抑制されてリチウムイオンの挿入や脱離が円滑化され得るものの、SEIの厚みが増すにつれて負極活物質表面における抵抗が増大し、リチウムイオンの拡散が阻害されてしまうおそれもある。なかでもチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物は、その表面においてSEIが成長しやすいため、充放電を繰り返すにつれて導電パスが劣化し、それに伴ってサイクル特性が低下してしまう傾向にあることから、これを改善すべく種々の開発もなされている。
例えば、特許文献2には、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子の表面の少なくとも一部をスクロース等由来の炭素又はチタン酸リチウムで被覆する方法が開示されており、また非特許文献1には、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物の表面を銅/炭素複合相で被覆する方法が開示されており、いずれもサイクル特性の改善を試みている。
特開2016−171011号公報 特開2016−171071号公報
Journal of Power Sources 2591、2014年、p.177−182
しかしながら、上記特許文献1に記載されるような、固相法による合成工程と粉砕工程とを組合せた製造方法では、結晶性が高い状態のままチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物の微細化を充分に図るのは困難であり、また上記特許文献2又は非特許文献1に記載の方法であっても、微細化が不充分なチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物を用いている上、表面を被覆する適切な導電相についての検討もなされていない。このように、いずれの文献に記載の技術においても、リチウムイオン二次電池において優れたレート特性を確保するには、さらなる改善を要する状況である。
したがって、本発明の課題は、リチウムイオン二次電池において優れたレート特性及びサイクル特性を発現し得る負極材料を得るべく、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法を提供することにある。
そこで本発明者らは、種々検討したところ、特定の粒径を有するチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子とともに特定の炭素源を用いた製造方法により、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子の表面に炭素が担持してなる負極活物質を得ることができ、これを負極材料として用いることによって、高いレート特性とともに優れたサイクル特性をも発現するリチウムイオン二次電池が実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、下記式(1):
LiaNabcTide ・・・(1)
(式(1)中、MはK、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Si、P、S、Fe、Mn、Co、Ni、Zn、V、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Pb、Ga、Ge、Bi、Ta、Sn、Eu、La、Ce、Nd、W、Ru又はGdから選ばれる1種又は2種以上を示し、a、b、c、d及びeは、0<a≦4、0<b≦4、0≦c≦6、0<d≦6、13≦e≦15、a+b+c×(Mの価数)+4d=2eを満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が5nm〜500nmであるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面に炭素が担持してなるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であって、次の工程(I)〜(II):
(I)チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に、糖類と酸化グラフェンとの混合物、糖類とポリエチレンオキシドとの混合物、及び非晶質球状カーボン(ACS)から選ばれる炭素源(Y)を添加して混合し、造粒体(Z)を得る工程、
(II)得られた造粒体(Z)を焼成する工程
を備えるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法によれば、適切な粒径を有するチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)と特定の炭素源(Y)を併用するため、かかる粒子(X)の表面に炭素源(Y)由来の炭素を良好に担持させることができ、これをリチウムイオン二次電池用負極活物質として用いることによって、優れたレート特性及びサイクル特性を兼ね備えたリチウムイオン二次電池を実現することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の製造方法は、下記式(1):
LiaNabcTide ・・・(1)
(式(1)中、MはK、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Si、P、S、Fe、Mn、Co、Ni、Zn、V、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Pb、Ga、Ge、Bi、Ta、Sn、Eu、La、Ce、Nd、W、Ru又はGdから選ばれる1種又は2種以上を示し、a、b、c、d及びeは、0<a≦4、0<b≦4、0≦c≦6、0<d≦6、13≦e≦15、a+b+c×(Mの価数)+4d=2eを満たす数を示す。)
で表され、かつ平均粒径が5nm〜500nmであるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面に炭素が担持してなるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であって、次の工程(I)〜(II):
(I)チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に、糖類と酸化グラフェンとの混合物、糖類とポリエチレンオキシドとの混合物、及び非晶質球状カーボン(ACS)から選ばれる炭素源(Y)を添加して混合し、造粒体(Z)を得る工程、
(II)得られた造粒体(Z)を焼成する工程
を備える。
本発明の製造方法が備える工程(I)は、上記(1)で表され、かつ平均粒径が5nm〜500nmであるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に、糖類と酸化グラフェンとの混合物、糖類とポリエチレンオキシドとの混合物、及び非晶質球状カーボン(ACS)から選ばれる炭素源(Y)を添加して混合し、造粒体(Z)を得る工程である。
工程(I)で用いるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)は、空間群Fmmmに属する結晶構造を有する、斜方晶の酸化物であり、具体的には、例えば、Li2Na2Ti614、Li1.94Na2Al0.02Ti614、Li1.94Na2Mg0.03Ti614が挙げられる。
上記チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の平均粒径は、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池を得る観点から、5nm〜500nmであって、好ましくは5nm〜450nmであり、より好ましくは5nm〜400nmである。ここで、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の平均粒径は、SEM又はTEMの電子顕微鏡による観察において、数十個のチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の粒子径(長軸の長さ)の測定値の平均値を意味する。
さらに、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に含まれるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物相の結晶子径は、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池を得る観点から、好ましくは5nm〜300nmであり、より好ましくは5nm〜250nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmであって、その結晶性も高いものである。ここで、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物相の結晶子径は、Cu−kα線による回折角2θの範囲が10°〜80°のX線回折プロファイルについて、シェラーの式を適用して求めた値を意味する。
また、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)のBET比表面積は、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池を得る観点、さらにチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面全域にわたり、後述する炭素源(Y)由来の炭素(y)を確実に担持させてサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池を得る観点から、好ましくは3m2/g〜40m2/gであり、より好ましくは5m2/g〜35m2/gであり、さらに好ましくは7m2/g〜30m2/gである。チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)のBET比表面積が40m2/gよりも大きくなると、負極の体積エネルギー密度が低下するおそれがある。
本発明の工程(I)において用いるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)は、微粒子化を図る観点から、ソルボサーマル法を用いて得るのが好ましく、具体的には、例えば以下の工程(x−1)〜(x−3):
(x−1)リチウム化合物、ナトリウム化合物、金属(M)化合物、チタン化合物、並びに有機溶媒及び/又は水を含む混合液Aを得る工程、
(x−2)得られた混合液Aを100℃以上のソルボサーマル反応に付した後、固液分離してチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体Bを得る工程、及び
(x−3)得られたチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体Bを500〜1200℃で焼成してチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)を得る工程
を備える製造方法により得るのが好ましい。
なお、工程(x−1)において混合液Aを得るにあたり、所定の化合物とともに混合する溶媒として、有機溶媒又は有機溶媒と水を用いる場合(いわゆる「狭義のソルボサーマル反応」と称される製造方法、混合物Aには有機溶媒が含まれる)と、有機溶媒を用いることなく水のみを用いる場合(いわゆる「水熱反応」と称される製造方法、混合物Aには有機溶媒が含まれない)とに大別されるが、ここではこれらを総じて「ソルボサーマル反応」と称される「ソルボサーマル法」という。
工程(x−1)では、リチウム化合物、ナトリウム化合物、金属(M)化合物、チタン化合物、並びに有機溶媒及び/又は水を含む混合液Aを得る。この混合液Aを得ることにより、反応生成物の化学組成の均質性を高めながら、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)内の夾雑相の生成を抑制することができ、リチウムイオン二次電池用負極活物質として有用性の高い微粒子のチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物を得ることが可能となる。
混合液Aに有機溶媒を含む場合、混合液Aに用いるリチウム化合物及びナトリウム化合物としては、水酸化物、塩化物、硫酸塩、及び有機酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、水酸化リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられ、工程(x−2)のソルボサーマル反応を効率的に進行させる観点から、酢酸リチウム及び酢酸ナトリウムがより好ましい。
混合液Aに有機溶媒を含む場合、混合液Aに用いるチタン化合物としては、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型)、チタン錯体(グリコール酸チタン錯体、クエン酸チタン錯体等)、チタンアルコキシド(チタンイソプロポキシド等)、チタン塩(酢酸チタン、硫酸チタン、硝酸チタン、硫酸チタニル等)、及びチタン塩化物(四塩化チタン等)等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、工程(x−2)のソルボサーマル反応を効率的に進行させる観点から、チタンアルコキシドが好ましい。
また、混合液Aには、リチウム化合物、ナトリウム化合物、及びチタン化合物以外の金属(M)化合物を含んでも良い。この金属(M)は、好ましくはK、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Si、P、S、Fe、Mn、Co、Ni、Zn、V、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Pb、Ga、Ge、Bi、Ta、Sn、Eu、La、Ce、Nd、W、Ru又はGdから選ばれる1種又は2種以上の金属を示し、より好ましくはMg、Cu、Al、Nbを示し、さらに好ましくはMg、Al、Nbを示す。
混合液Aに有機溶媒を含む場合、かかる金属(M)化合物としては、ハロゲン化物、硫酸塩、有機酸塩、水酸化物、硫化物、酸化物及びこれらの水和物等が挙げられ、工程(x−2)のソルボサーマル反応を効率的に進行させる観点から、硫酸塩及び有機酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
混合液Aに用いる有機溶媒としては、1〜3価のアルコールが好ましい。1価のアルコールとしては、具体的には、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられる。2価のアルコールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等が挙げられる。3価のアルコールとしては、具体的には、例えば、グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−アダマンタントリオール、1,3,5−シクロヘキサントリオール、1,2,3−シクロヘキサントリオールが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、工程(x−2)のソルボサーマル反応を効率的に進行させる観点から、エタノール及びプロパノールがより好ましい。
混合液Aに有機溶媒を含む場合、混合液Aに用いる水の量は、工程(x−2)のソルボサーマル反応を効率的に進行させる観点から、水:有機溶媒(質量比)が80:20〜0:100であり、好ましくは70:30〜0:100であり、より好ましくは60:40〜0:100である。
混合液Aに有機溶媒を含む場合、混合液Aは、上記リチウム化合物、ナトリウム化合物、金属(M)化合物、及びチタン化合物を有機溶媒に、又は有機溶媒と水の混合液に混合することにより調製する。かかる混合液Aにおけるリチウム化合物、ナトリウム化合物、金属(M)化合物、及びチタン化合物の合計含有量は、反応生成物の化学組成の均質性を高める観点から、混合液A中の溶媒100質量部に対し、好ましくは1質量部〜50質量部であり、より好ましくは5質量部〜30質量部であり、さらに好ましくは10質量部〜30質量部である。
また、上記場合における混合液A中の、リチウム化合物、ナトリウム化合物、金属(M)化合物、及びチタン化合物の混合割合は、リチウム及びナトリウムの合計量と、チタン及び金属(M)の合計量とのモル比((Li+Na):(Ti+M))は、好ましくは30:1〜1:1であり、より好ましくは25:1〜1:1であり、さらに好ましくは20:1〜2:1であり、かかる量となるように混合すればよい。これにより、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)内における夾雑相の生成を効果的に抑制しながら、有効に微細化を図ることができる。
この場合における、溶媒への、リチウム化合物、ナトリウム化合物、金属(M)化合物、及びチタン化合物の混合方法は、特に限定されるものではないが、初めにリチウム化合物及びナトリウム化合物を混合した後、金属(M)化合物及びチタン化合物を混合するのが好ましい、こうすることにより、工程(x−2)のソルボサーマル反応での反応生成物の化学組成の均質性を一層高めることができる。
上記混合液Aの製造は、溶媒を撹拌しながら行うのが好ましく、かかる撹拌速度は、好ましくは250rpm〜600rpmであり、より好ましくは300rpm〜550rpmであり、さらに好ましくは350rpm〜500rpmである。また、混合液Aを製造する際の温度は、好ましくは20℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜70℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃である。
こうして得られる混合液Aの25℃におけるpHは、工程(x−2)において、リチウム、ナトリウム、チタン及び金属(M)を均質に含むチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体を有効に得る観点から、12〜14であって、好ましくは12.5〜14であり、さらに好ましくは13〜14である。
一方、混合液Aに有機溶媒を含まない場合、工程(x−1)は、リチウム化合物とナトリウム化合物とを含有し、かつpHが12〜14である混合液a1、及びチタン化合物とチタン化合物以外の金属(M)化合物とを含む混合液a2を混合して、混合液Aを得るのが好ましい。こうすることで、反応生成物の化学組成の均質性を高めながら、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)内の夾雑相の生成を抑制することができ、リチウムイオン二次電池用負極活物質として有用性の高い微粒子のチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物を得ることができる。
混合液Aに有機溶媒を含まない場合、工程(x−1)において、混合液a1に用いるリチウム化合物及びナトリウム化合物としては、水酸化物、塩化物、硫酸塩、及び有機酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。より具体的には、例えば、水酸化リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも、混合液a1のpH調整を容易にする観点から、水酸化物が好ましく、水酸化リチウム及び水酸化ナトリウムがより好ましい。この工程(x−1)において用いるこれらリチウム化合物及びナトリウム化合物は、少なくとも一方が水酸化物であるのが好ましく、双方とも水酸化物であるのがより好ましい。
混合液a1は、上記リチウム化合物及びナトリウム化合物を水に混合することにより調製する。かかる混合液a1におけるリチウム化合物及びナトリウム化合物の合計含有量は、反応生成物の化学組成の均質性を高める観点から、混合液a1中の水100質量部に対し、好ましくは1質量部〜50質量部であり、より好ましくは5質量部〜30質量部であり、さらに好ましくは10質量部〜30質量部であり、混合液a1の25℃におけるpHは、12〜14であって、好ましくは12.5〜14であり、より好ましくは13〜14であり、さらに好ましくは13.5〜14である。
混合液a2に用いるチタン化合物としては、酸化チタン(アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型)、チタン錯体(グリコール酸チタン錯体、クエン酸チタン錯体等)、チタンアルコキシド(チタンイソプロポキシド等)、チタン塩(酢酸チタン、硫酸チタン、硝酸チタン、硫酸チタニル等)、及びチタン塩化物(四塩化チタン等)等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、工程(x−2)におけるソルボサーマル反応を効率的に進行させる観点から、塩化チタン、酢酸チタン、硫酸チタン及び硫酸チタニルから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
混合液a2に用いる金属(M)化合物におけるMは、好ましくはK、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Si、P、S、Fe、Mn、Co、Ni、Zn、V、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Pb、Ga、Ge、Bi、Ta、Sn、Eu、La、Ce、Nd、W、Ru又はGdから選ばれる1種又は2種以上の金属を示し、より好ましくはMg、Cu、Al、Nbを示し、さらに好ましくはMg、Al、Nbを示す。かかる金属(M)化合物としては、ハロゲン化物、硫酸塩、有機酸塩、水酸化物、硫化物、酸化物及びこれらの水和物等が挙げられ、工程(x−2)におけるソルボサーマル反応を効率的に進行させる観点から、硫酸塩及び有機酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
混合液a2は、上記チタン化合物、金属(M)化合物、及び水を混合することにより調製する。かかる混合液a2におけるチタン化合物、金属(M)化合物の合計含有量は、混合液a2中の水100質量部に対し、好ましくは10質量部〜50質量部であり、より好ましくは15質量部〜30質量部であり、さらに好ましくは20質量部〜30質量部である。
混合液Aに有機溶媒を含まない場合、工程(x−1)では、上記混合液a1と上記混合液a2を混合して、混合液Aとする。混合液a1と混合液a2の混合方法は、特に限定されるものではないが、混合液a1を撹拌しながら、混合液a1に混合液a2を滴下するのが好ましい。このように、リチウム化合物及びナトリウム化合物を含む混合液a1に、チタン化合物及び金属(M)化合物を含む混合液a2を滴下して少量ずつ加えることにより、反応生成物の化学組成の均質性を一層高めることができる。この際、混合液a1の混合液a2への滴下速度は、10質量部の混合液a1に対し、好ましくは0.1質量部/分〜0.4質量部/分であり、より好ましくは0.15質量部/分〜0.4質量部/分であり、さらに好ましくは0.2質量部/分〜0.35質量部/分である。
混合液a2を滴下する際の混合液a1の撹拌速度は、好ましくは250rpm〜600rpmであり、より好ましくは300rpm〜550rpmであり、さらに好ましくは350rpm〜500rpmである。
混合液a1と混合液a2を混合する際の混合液a1の温度は、好ましくは20℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜70℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃である。また混合液a2の温度は、好ましくは20℃〜80℃であり、より好ましくは20℃〜70℃であり、さらに好ましくは20℃〜60℃である。また、混合液a1と混合液a2を混合することにより得られる混合液Aの25℃におけるpHは、工程(x−2)におけるソルボサーマル反応を効率的に進行させる観点から、12〜14であって、好ましくは12.5〜14であり、さらに好ましくは13〜14である。
混合液Aを得るにあたり、混合する上記混合液a1と上記混合液a2との質量比(混合液a1:混合液a2)は、好ましくは20:1〜1:1であり、より好ましくは15:1〜1:1であり、さらに好ましくは10:1〜1:1である。
なお、混合液Aに有機溶媒を含まない場合の混合液A中の、リチウム化合物、ナトリウム化合物、チタン化合物、及び金属(M)化合物の混合割合は、前記混合液Aに有機溶媒を含む場合の混合液A中の混合割合と同じである。
続く工程(x−2)は、工程(x−1)で得られた混合液Aを100℃以上のソルボサーマル反応に付した後、固液分離してチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体Bを得る工程である。かかる工程(x−2)におけるソルボサーマル反応は、圧力容器等に混合液Aを充填した反応容器を格納して加圧下で行う。
なお、工程(x−1)で得られた混合液Aをかかる工程(x−2)に移行する前に撹拌する場合、かかる反応容器内で行えばよく、次いで圧力容器等に反応容器を格納すればよい。かかる撹拌は、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体Bを効率的に生成させる観点から、圧力容器等に格納された反応容器内において工程(x−2)におけるソルボサーマル反応が完了するまで継続するのが好ましい。この際における混合液Aの撹拌速度は、反応容器内壁面での混合液Aの流速に換算して、好ましくは15cm/秒以上であり、より好ましくは15cm/秒〜80cm/秒であり、さらに好ましくは15cm/秒〜70cm/秒である。撹拌方法としては、この撹拌速度が実現可能であれば特に限定されないが、例えば撹拌羽根を用いる方法、又は特開2014−118328号公報に記載のポンプを使用して合成容器中のスラリーを撹拌する方法等を好適に使用することができる。さらに、上記の撹拌方法を用いる際に、混合液Aの全体に均一なソルボサーマル反応を生じさせる観点から、反応容器内に邪魔板を設置したり、撹拌翼の回転方向やポンプの送液方向を間欠的に逆転したりさせることによって、混合液Aの流れに擾乱を生じさせるのが有効である。
ソルボサーマル反応における混合液Aの温度(反応温度)は、100℃以上であればよく、好ましくは130℃〜250℃であり、より好ましくは140℃〜230℃である。この際の圧力及び反応時間は、反応温度が100℃以上の場合は0.3MPa以上で10分以上が好ましく、130℃〜250℃で反応を行う場合は0.3MPa〜2.0MPaで10分〜24時間が好ましく、140℃〜230℃で反応を行う場合は0.4MPa〜1.8MPaで10分〜16時間が好ましい。
また、ソルボサーマル反応における反応容器内の雰囲気は限定されるものではないが、雰囲気の作製の容易性の観点から、空気下又は水蒸気下が好ましい。
混合液Aを上記ソルボサーマル反応に付した後、固液分離してチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体B(固形分)を得る。固液分離に用いる装置としては、例えば、フィルタープレス機、遠心濾過機等が挙げられる。なかでも、効率的に固形分を得る観点から、フィルタープレス機を用いるのが好ましい。
次いで、回収された固形分は、硫酸ナトリウム等の副生成物及びアニオン成分等の不純物を効果的に除去する観点から、洗浄水によって洗浄するのが好ましい。かかる洗浄に用いる水の量は、回収された固形分の乾燥質量1質量部に対し、好ましくは5質量部〜50質量部であり、より好ましくは10質量部〜50質量部であり、さらに好ましくは15質量部〜50質量部である。かかる水の温度は、副生成物及び不純物を効果的に除去する観点から、好ましくは5℃〜70℃であり、より好ましくは20℃〜70℃である。
さらに、得られたチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体Bは、後述する工程(x−3)に移行する前に、乾燥して単離するのが好ましい。乾燥手段としては、噴霧乾燥、箱型乾燥、流動床乾燥、外熱式乾燥、凍結乾燥、真空乾燥等が挙げられるが、なかでも、得られるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体Bの粒子が必要以上に増大するのを有効に制御して微細化を図る観点から、噴霧乾燥又は凍結乾燥が好ましい。
乾燥後に得られるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体Bの平均粒径は、レーザー回折・散乱法に基づく粒度分布におけるD50値で、好ましくは5nm〜250nmであり、より好ましくは5nm〜200nmである。ここで、粒度分布測定におけD50値とは、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布により得られる値であり、D50値は累積50%での粒径(メジアン径)を意味する。
工程(x−3)は、工程(x−2)で得られたチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体Bを500℃〜1200℃で焼成してチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)を得る工程である。かかる工程を経ることにより、極めて微細な粒子であって、リチウムイオン二次電池の負極活物質として非常に有用なチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)を得ることができる。
工程(x−3)における焼成温度は、得られるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の結晶性を高めつつ、微細化された粒子を得る観点から、好ましくは500℃〜1200℃であり、より好ましくは500℃〜1000℃であり、さらに好ましくは500℃〜900℃である。また焼成時間は、同様の観点から、好ましくは30分間〜30時間であり、より好ましくは1時間〜24時間であり、さらに好ましくは1時間〜18時間である。
上記焼成における雰囲気は、特に限定されるものではなく、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下のいずれであってもよいが、簡便性の観点から、大気雰囲気が好ましい。かかる焼成に用いる装置としては、温度の調整が可能な物であれば特に限定されず、バッチ式、連続式、加熱方式(間接又は直接)のいずれの方式のものも使用することができ、例えば、外熱キルンやローラーハース等の焼成炉が挙げられる。
さらに、本発明の工程(I)において用いるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)は、固相法と粉砕の組合せによる次の工程(x'−1)〜(x'−4):
(x'−1)リチウム化合物、ナトリウム化合物、金属(M)化合物、チタン化合物、並びにエタノール及び/又は水を含むスラリーCを混合後、乾燥して混合物Dを得る工程、
(x'−2)得られた混合物Dを800℃〜1200℃の温度で6時間〜24時間焼成して大径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Eを得る工程、
(x'−3)得られた大径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Eを所定の粒径まで粉砕して小径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Fを得る工程、及び
(x'−4)得られた小径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Fを700℃〜900℃の温度で30分間〜3時間アニール処理してチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)を得る工程
を備える製造方法により得ることもできる。かかる製造方法であれば、上記の工程(x−1)〜(x−3)を備える製造方法において必要となる耐圧容器等の特別な設備を要することなく、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)を得ることができる。
工程(x'−1)では、所定のモル比となるようにリチウム化合物、ナトリウム化合物、金属(M)化合物、及びチタン化合物を含む混合物Dを得る。次工程の工程(x'−2)において、かかる混合物Dは焼成されて大径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Eとなるが、この次工程で得られる大径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Eを小径化するために、またスラリーCの混合の均一性を高めるために、スラリーCの混合はボールミル、振動ミル、又はビーズミル等の機械的粉砕を伴う方法で行うのが好ましい。
出発原料としては特に限定されるものではなく、工程(x−1)で用い得る各原料を有効に利用できる。ただし、それら出発原料の粒径が粗大であると、次工程(x'−2)での焼成において成分の熱拡散の均一性が劣り、長時間の焼成を要するため、各出発原料は、細粒であるほど好ましい。そのため、各出発原料の平均粒径は、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1μm以下である。
スラリーCの乾燥は、電気炉乾燥、温風乾燥等の常用の方法を用いればよい。
次の工程(x'−2)は、工程(x'−1)で得られた混合物D(粉末)を焼成して大径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Eを得る工程である。焼成によって、各出発原料中の金属成分が原料粒子界面を熱拡散して固相反応が進行するため、焼成温度は高温である程好ましいが、過剰な高温焼成は得られるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物が大径化してしまう観点から、好ましくは500℃〜1300℃であり、より好ましくは550℃〜1200℃であり、さらに好ましくは600℃〜1100℃である。また、焼成時間は、同様の観点から、好ましくは6時間〜24時間であり、より好ましくは8時間〜18時間であり、さらに好ましくは9時間〜14時間である。
上記焼成における雰囲気は、特に限定されるものではなく、大気雰囲気、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下のいずれであってもよいが、簡便性の観点から、大気雰囲気が好ましい。かかる焼成に用いる装置としては、温度の調整が可能な物であれば特に限定されず、バッチ式、連続式、加熱方式(間接又は直接)のいずれの方式のものも使用することができる。
続く工程(x'−3)は、工程(x'−2)で得られた大径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Eの平均粒径が5nm〜500nmの範囲内になるまで粉砕して、小径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Fを得る工程である。
大径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Eの粉砕には、ビーズミルを用いた湿式粉砕法又は媒体流動乾燥法が好適に使用することができる。
かかる媒体流動乾燥法とは、用いる装置に備えられたセラミック(アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素など)等の1〜5mm径のボール媒体に熱風を送り込み、かかる熱風により加熱状態及び流動化状態となったボール媒体によって、大径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Eを含むスラリーを乾燥する方法である。かかる方法であれば、ボール媒体の表面で上記スラリーの薄い液膜が形成され、これをボール媒体及び熱風により乾燥させてボール媒体表面から剥離させつつ、流動するボール媒体との衝突によって圧縮力及びせん断力を作用させることができるため、粒径の過度な肥大化が抑制された小径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Fを得ることができる。
このような媒体流動乾燥を容易に行うことができる装置として、具体的には、例えば、ゼルビス(ホソカワミクロン社製)、スラリードライヤー(大川原製作所社製)、媒体流動乾燥機(奈良機械製作所社製)を好適に用いることができる。
この工程(x'−3)における粉砕は、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物の結晶性を可能な限り損なわないように短時間で行う必要がある。そのために、粉砕装置の出口にサイクロンセパレータ等の微粒分級機を付設して、粉砕装置との閉回路システムを構成することにより、所望の平均粒径を有するチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子を短時間に得ることが可能になる。かかる微粒分級機として、具体的には、例えば、ドナセレック(アイシンナノテクノロジーズ社製)を好適に用いることができる。
工程(x'−4)は、工程(x'−3)で得られた小径チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物Fにアニール処理を実施して、結晶性を高めるための工程である。アニール処理の処理温度は、600℃〜900℃とするのが好ましい。この温度でアニールすることにより、粒子の粗大化の進行を防ぎながら、アニールによる結晶性の向上を達成することができる。アニール時間は、30分間〜3時間程度が好ましい。
なお、工程(x'−2)で得られるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物が、所望の平均粒径である場合、当然ながら工程(x'−3)及び工程(x'−4)を省略することができる。
本発明が備える工程(I)において用いる炭素源(Y)は、上記チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に添加されるものであり、糖類(Y1)と酸化グラフェン(略称:GO)(Y2)との混合物、糖類(Y1)とポリエチレンオキシド(略称:PEO)(Y3)との混合物、及び非晶質球状カーボン(略称:ACS)(Y4)から選ばれる炭素源である。かかる炭素源(Y)は、後述する工程(II)において焼成されることにより炭化されて炭素となって、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面に炭素源(Y)由来の炭素(y)として担持されることとなる。かかる炭素源(Y)由来の炭素(y)は、微小かつ優れた電子伝導性を有する炭素であり、本発明の製造方法を介することにより、炭素(y)が微小なチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面全域を確実に被覆することとなり、粒子(X)表面での副反応を効果的に抑制するとともに、リチウムイオン二次電池における電池容量を有効に確保することができる。
糖類(Y1)とは、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、デキストリン、フルクトースが好ましい。かかる糖類(Y1)が炭化されることにより、糖類(Y1)由来の炭素(y1)となる。
酸化グラフェン(Y2)とは、グラフェンの酸化物であり、そのもの自体は導電性を有さない。しかしながら、酸化グラフェン(Y2)を還元することによって得られるグラフェン(y2)は、ハニカム格子状に炭素原子がSP2結合した単層構造を有し、導電性に優れた材料である。また、グラフェン(y2)が疎水性であるのに対し、酸化グラフェン(Y2)は表面官能基を有するために親水性であるので、湿式混合等での取扱い性に優れる。そのため、本発明の製造方法において、かかる酸化グラフェン(Y2)を上記糖類(Y1)と容易に併用することができ、糖類(Y1)と酸化グラフェン(Y2)との混合物を有用性の高い炭素源(Y)として用いることができる。
酸化グラフェン(Y2)は、層状、膜状、又は塊状等の形状を呈し得るが、本発明で用いる酸化グラフェン(Y2)は、微粒子であるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面に効率よく担持されて、かかる表面を充分に被覆する観点から、膜状の形状を呈するものが好ましい。
酸化グラフェン(Y2)由来の炭素(y2)であるグラフェンは、微粒子であるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面に担持されつつ、かかる表面を良好に被覆する上で、その形状が平板状であるために、かかるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)よりも小さな大きさから、複数のチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)を覆うことが可能な大きさまでの広範囲な大きさを有する必要がある。したがって、酸化グラフェン(Y2)の層方向における平均差し渡し径は、好ましくは3nm〜20μmであり、より好ましくは5nm〜10μmであり、さらに好ましくは10nm〜7μmである。かかる平均差し渡し径が短すぎると、微粒子であるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面に均一に担持することができなくなるおそれがある。また平均差し渡し径が長すぎると、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)からのリチウムの移動を阻害してしまうおそれがある。
なお、酸化グラフェン(Y2)の層方向における平均差し渡し径とは、グラフェン層方向に垂直な位置から電子顕微鏡観察したときに、最大差し渡し径と最小差し渡し径の平均値であって、10個前後の酸化グラフェン(Y2)を測定して求められる平均値を意味する。
酸化グラフェン(Y2)は、硝酸ナトリウムを含む濃硫酸中で過マンガン酸カリウムによって天然グラファイト等の原料黒鉛を酸化する方法であるハマーズ(Hummers)法や、ブロディー(Brodie)法、スタウデンマイヤー(Staudenmaier)法等によりグラフェン又はマルチグラフェンを酸化するか、さらには酸化グラファイトを分離して得ることができる。
なかでも汎用的な製造方法であるHummers法は、単結晶グラファイト粉末に、過マンガン酸カリウムの硫酸溶液、過酸化水素水等を加えて酸化反応させて酸化グラファイトを含む分散液を作製する方法である。かかる酸化グラファイトは、グラファイトの炭素の酸化により、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、又はヒドロキシル基等の官能基を有するため、複数のグラフェンの層間距離をグラファイトよりも長くすることが可能となる。次に、酸化グラファイトを含む分散液に超音波振動を加え、層間距離が長い酸化グラファイトを劈開し、酸化グラフェン(Y2)を分離するとともに、酸化グラフェン(Y2)を含む分散液を作製することができる。なお、酸化グラフェン(Y2)を得るにあたり、Hummers法以外の作製方法を適宜用いてもよい。
そして、得られた酸化グラフェン(Y2)を含む分散液から溶媒を除去することにより、酸化グラフェン(Y2)を得ることができる。また、かかる酸化グラフェン(Y2)を得るには、トップダウン法と呼ばれる、グラフェン層間(劈開)を広げて単層を剥離させた後、加工して微細化する方法を用いてもよく、酸化グラフェン(Y2)として、市販の酸化グラフェン分散液を用いてもよい。
このようにして得られる酸化グラフェン(Y2)は、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、又はヒドロキシル基等を有することから、極性を有する溶液中においては、官能基中の酸素原子がマイナスに帯電して、酸化グラフェン(Y2)同士が凝集しにくくなるため、優れた分散性をもたらすこととなる。
炭素源(Y)として、糖類(Y1)と酸化グラフェン(Y2)との混合物を用いた場合、糖類(Y1)由来の炭素(y1)と酸化グラフェン(Y2)由来のグラフェン(y2)が混在することとなり、平板状等を呈するグラフェン(y2)とチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)との間隙を炭素(y1)が埋めるように担持しながら、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面全域において導電性に優れる炭素(y1)及び炭素(y2)が担持され、かかる表面全域を有効に被覆することとなる。そのため、得られるリチウムイオン二次電池用負極活物質は、良好なレート特性及びサイクル特性を発現する有用な負極材料となる。
かかる混合物において、糖類(Y1)由来の炭素(y1)の量は、酸化グラフェン(Y2)由来のグラフェン(y2)の量よりも多いほうが好ましく、糖類(Y1)由来の炭素(y1)とグラフェン(y2)の質量比(y1:y2)は、糖類(Y1)の添加量の炭素原子換算量と酸化グラフェン(Y2)の添加量の炭素原子換算量との質量比に相当し、好ましくは95:5〜51:49であり、より好ましくは95:5〜70:30である。
ポリエチレンオキシド(Y3)とは、エチレングリコールが重合してなる高分子である。ポリエチレンオキシドは多数のエーテル結合を有するため、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面と親和性が高く、ポリエチレンオキシド(Y3)由来の炭素(y3)は、線状を呈しつつ粒子(X)において堅固に担持されることにより、得られるリチウムイオン二次電池用負極活物質に優れた電子伝導性を付与することができる。
炭素源(Y)として、糖類(Y1)とポリエチレンオキシド(Y3)との混合物を用いた場合、糖類(Y1)由来の炭素(y1)とポリエチレンオキシド(Y3)由来の炭素(y3)が混在することとなり、線状を呈する炭素(y3)のみではチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面を被覆しきれない部位を炭素(y1)が補うように担持されて、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面全域を効率的に被覆することとなる。そのため、得られるリチウムイオン二次電池用負極活物質は、良好なレート特性及びサイクル特性をともに発現する有用な負極材料となる。
かかる混合物において、糖類(Y1)由来の炭素(y1)の量は、ポリエチレンオキシド(Y3)由来の炭素(y3)の量よりも多いほうが好ましく、得られるリチウムイオン二次電池用負極活物質中における糖類(Y1)由来の炭素(y1)とポリエチレンオキシド(Y3)由来の炭素(y3)の質量比(y1:y3)は、糖類(Y1)の添加量の炭素原子換算量とポリエチレンオキシド(Y3)の添加量の炭素原子換算量との質量比に相当し、好ましくは95:5〜51:49であり、より好ましくは95:5〜70:30である。
非晶質球状カーボン(Y4)とは、水とグルコース等の水溶性炭素材料の混合溶液を水熱反応させ、得られた反応後の混合液を噴霧乾燥することで得られる微小な非晶質炭素の集合体であって、焼成することによって炭素が結晶化し、優れた導電性を有する炭素(y4)となる。かかる炭素(y4)であれば、そのもの単独で微小なチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面全域にわたり、良好に担持されて充分に被覆することできるため、本発明における炭素源(Y)として、非晶質球状カーボン(Y4)のみを単独で用いることができる。
非晶質球状カーボン(Y4)の平均粒径は、好ましくは1nm〜5nmである。
非晶質球状カーボン(Y4)は、例えばCARBON,50(2012年,p2155−2161)に記載のフルクトース等を水熱反応して得る方法、いわゆる水熱法を用いた方法や、特開2016−166102号公報に記載の、有孔板を電極間に配置したプラズマCVD装置に炭素を含む気体原料を流すことを特徴とするプラズマCVD法により、得ることができる。なかでも、簡便性の観点、及び得られた非晶質球状カーボン(Y4)を溶媒とともにそのまま次工程にて用いることもできる観点から、水熱法を用いた方法により非晶質球状カーボン(Y4)を得るのが好ましい。
水熱法を用いた方法により非晶質球状カーボン(Y4)を得るには、グルコースやフルクトース等の水溶性炭素材料を溶媒に溶解させて5質量%〜15質量%の含有量に調製し、得られた溶液を130℃〜190℃の温度で3時間〜60時間、耐圧容器内で反応させる。非晶質球状カーボン(Y4)を単体として確保する場合、水熱反応後のスラリーを固液分離し、得られた固相(非晶質球状カーボン)を水又はエタノールで洗浄して乾燥すればよい。この際用いる水溶性炭素材料は、25℃の水100g中に、炭素原子換算量で0.4g以上、好ましくは1.0g以上溶解する糖類である。かかる糖類としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類;マルトース、スクロース、セロビオース等の二糖類;デンプン、デキストリン等の多糖類が挙げられる。なかでも、非晶質球状カーボン(Y4)の微細化を図る観点から、単糖類が好ましく、グルコース、フルクトースがより好ましい。また、上記溶液に用いる溶媒として、水のみを用いるほか、水とポリオールとを併用してもよい。
工程(I)では、上記チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に、糖類(Y1)と酸化グラフェン(Y2)との混合物、糖類(Y1)とポリエチレンオキシド(Y3)との混合物、或いは非晶質球状カーボン(Y4)のいずれかを炭素源(Y)として用いてこれを添加し、混合する。なお、非晶質球状カーボン(Y4)を用いる場合、水熱反応後に得られた非晶質球状カーボン(Y4)と溶媒を含有するスラリーをそのまま用い、かかるスラリーをチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に添加してもよい。
チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)と炭素源(Y)の混合割合は、次工程(II)で焼成されて得られる炭素(y)の量が、リチウムイオン二次電池用負極活物質100質量%中に、好ましくは0.5質量%〜10質量%、より好ましくは1質量%〜7質量%の含有量となる割合であればよく、具体的には、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)100質量部に対し、好ましくは0.7質量部〜25質量部であり、より好ましくは0.7質量部〜20質量部である。
チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)と炭素源(Y)とを添加及び混合する際、水を添加してもよい。水を添加することによって、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)と炭素源(Y)を一層均一になるよう混合することができる。
かかる水の添加量は、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)100質量部に対し、好ましくは100質量部〜1000質量部であり、より好ましくは100質量部〜800質量部である。
添加及び混合することにより得られた混合物から造粒体(Z)を得るには、混合物を乾燥するか、混合物を乾燥しながら引き続き混合すればよい。なお、混合物中に存在する固体粒子は非常に微小であるため、混合時間は、好ましくは30分以上であり、より好ましくは1時間以上であり、さらに好ましくは3時間以上である。また、例えば媒体量を少量にしたポットミルを使用する方法等のように、混合物に過剰な剪断力や圧縮力が付加されない方法を用いて混合するのが好ましい。混合物の乾燥方法としては、温風乾燥、噴霧乾燥又は凍結乾燥を用いるのが好ましい。
得られる造粒体(Z)の平均粒径は、好ましくは100nm〜50μmであり、より好ましくは100nm〜30μmである。
本発明が備える工程(II)は、工程(I)により得られた造粒体(Z)を焼成する工程である。焼成は、還元雰囲気又は不活性雰囲気中で行うのが好ましい。かかる焼成により、上記炭素源(Y)由来の炭素(y)が、上記チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面に堅固に担持されるとともに、かかる複合酸化物粒子(X)の表面全域を被覆する炭素として存在することとなり、得られるリチウムイオン二次電池用負極活物質における導電性を有効に高めることができるとともに、サイクル特性の低下の原因となるSEIの形成を抑制することができる。
焼成温度は、炭素源(Y)をより有効に炭化させる観点から、好ましくは500℃〜1000℃であり、より好ましくは550℃〜850℃であり、さらに好ましくは600℃〜750℃である。また、焼成時間は、好ましくは10分〜24時間、より好ましくは30分〜12時間とするのがよい。
さらに、本発明のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法では、工程(I)の造粒体(Z)を得る工程と工程(II)において、噴霧熱分解法を用いることができる。かかる噴霧熱分解法とは、超音波式の噴霧装置、又は流体ノズルによる噴霧装置等を用い、装置に備えられた炉内に原料スラリーを噴霧することにより液滴を形成させ、さらにこれを蒸発乾固及び焼成することによって焼成物(リチウムイオン二次電池用負極活物質)を形成させる処理である。なかでも、液滴の粒径を適宜調整して所望の平均粒径を有する粒子を形成させる観点から、2流体ノズルや4流体ノズル等の流体ノズルによる噴霧装置を用いるのが好ましい。ここで流体ノズルによる噴霧装置を用いた噴霧熱分解の方式には、空気と原料液体とをノズル内部で混合する内部混合方式と、ノズル外部で空気と原料液体を混合する外部混合方式とがあり、いずれも採用することができる。
噴霧熱分解する際における炉内の温度は、上記炭素源(Y)由来の炭素(y)をチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面に堅固に担持させ、さらにチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物及び炭素(y)の結晶性を良好に高める観点から、好ましくは600℃〜1200℃であり、より好ましくは650℃〜1100℃であり、さらに好ましくは700℃〜1000℃である。
また、炉内の雰囲気は、還元雰囲気又は不活性雰囲気であるのが好ましい。
本発明の製造方法により得られるリチウムイオン二次電池用負極活物質において、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に担持してなる炭素(y)の担持量は、リチウムイオン二次電池用負極活物質100質量%中に、好ましくは0.5質量%〜10質量%であり、より好ましくは1質量%〜7質量%である。
得られるリチウムイオン二次電池用負極活物質のBET比表面積は、レート特性及びサイクル特性の双方に優れたリチウムイオン二次電池を得る観点から、好ましくは3m2/g〜40m2/gであり、より好ましくは5m2/g〜35m2/gであり、さらに好ましくは7m2/g〜30m2/gである。
得られるリチウムイオン二次電池用負極活物質の平均粒径は、レート特性に優れたリチウムイオン二次電池を得る観点から、好ましくは5nm〜500nmであり、より好ましくは5nm〜450nmであり、さらに好ましくは5nm〜400nmである。ここで、リチウムイオン二次電池用負極活物質の平均粒径は、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の平均粒径と同様の方法により求められる値を意味する。
こうして本発明により得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質を用いてリチウムイオン二次電池を製造する方法としては、特に限定されず、公知の方法を使用できる。例えば、かかるリチウムイオン二次電池用負極活物質を結着剤や溶剤等の添加剤とともに混合して塗工液を得る。この際、必要に応じて、さらに導電助剤を添加して混合してもよい。かかる結着剤としては、特に限定されず、公知の剤をいずれも使用できる。具体的には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー等が挙げられる。また、かかる導電助剤としては、特に限定されず、公知の剤を使用できる。具体的には、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、繊維状炭素等が挙げられる。次いで、かかる塗工液をアルミ箔、銅箔等の負極集電体上に塗布し、乾燥させて負極とする。
本発明により得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質は、リチウムイオン二次電池の負極として非常に優れたレート特性及びサイクル特性を発揮する点で有用である。かかる負極を適用できるリチウムイオン二次電池としては、正極と負極と電解液とセパレータ、又は正極と負極と固体電解質を必須構成とするものであれば特に限定されない。
ここで、正極については、リチウムイオンを充電時には放出し、かつ放電時には吸蔵することができれば、その材料構成は特に限定されるものではなく、公知の材料構成のものを用いることができる。例えば、原料を水熱反応させることにより得られる各種ポリアニオン型正極活物質からなる正極を好適に用いることができる。
電解液は、有機溶媒に支持塩を溶解させたものである。有機溶媒は、通常リチウムイオン二次電池の電解液に用いられる有機溶媒であれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。
支持塩は、その種類が特に限定されるものではないが、LiPF6、LiBF4、LiClO4及びLiAsF6から選ばれる無機塩、該無機塩の誘導体、LiSO3CF3、LiC(SO3CF32及びLiN(SO3CF32、LiN(SO2252及びLiN(SO2CF3)(SO249)から選ばれる有機塩、並びに該有機塩の誘導体の少なくとも1種であることが好ましい。
セパレータは、正極及び負極を電気的に絶縁し、電解液を保持する役割を果たすものである。たとえば、多孔性合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔膜を用いればよい。
固体電解質は、正極及び負極を電気的に絶縁し、高いリチウムイオン電導性を示すものである。たとえば、La0.51Li0.34TiO2.94、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO43、Li7La3Zr212、50Li4SiO4・50Li3BO3、Li2.9PO3.30.46、Li3.6Si0.60.44、Li1.07Al0.69Ti1.46(PO43、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO43、Li10GeP212、Li3.25Ge0.250.754、30Li2S・26B23・44LiI、63Li2S・36SiS2・1Li3PO4、57Li2S・38SiS2・5Li4SiO4、70Li2S・30P25、50Li2S・50GeS2、Li7311、Li3.250.954を用いればよい。
上記の構成を有するリチウムイオン二次電池の形状としては、特に制限を受けるものではなく、コイン型、円筒型,角型等種々の形状や、ラミネート外装体に封入した不定形状であってもよい。
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[製造例1:ソルボサーマル法によるLi2Na2Ti614(LNTO1)の製造]
エタノール100mLにCH3COOLi・2H2O 2.04g(20mmol)、CH3COONa 1.64g(20mmol)及び[(CH32CHO]4Ti 17.05g(60mmol)を混合して混合液A1を得た。得られた混合液A1をオートクレーブに投入し、200℃、1.3MPaでの水熱反応を12時間行った。生成した固形分を吸引ろ過し、次いで得られた固形分を、固形分1質量部に対して12質量部の水で洗浄した。洗浄後の固形分を−50℃で12時間凍結乾燥して、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体B1を得た。
得られたチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物前駆体B1を空気雰囲気下600℃で10時間焼成して、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(LNTO1)を得た。得られたチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(LNTO1)の平均粒径は40nm、BET比表面積は38m2/gであった。また、得られたチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(LNTO1)を構成するチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物は、Li2Na2Ti614単相であり、かかるLi2Na2Ti614の結晶子径は40nmであった。
[製造例2:固相法によるLi2Na2Ti614(LNTO2)の製造]
エタノール30mLにCH3COOLi・2H2O 2.04g(20mmol)、CH3COONa 1.64g(20mmol)及びTiO2 4.79g(60mmol)を、遊星ボールミル(P−5、フリッチュ社製)を用いて25℃で15時間混合した後、乾燥して混合物C2を得た。得られた混合物C2を空気雰囲気下900℃で10時間焼成して、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(LNTO2)を得た。得られたチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(LNTO2)の平均粒径は500nm、BET比表面積は5m2/gであった。また、得られたチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(LNTO2)を構成するチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物は、Li2Na2Ti614単相であり、かかるLi2Na2Ti614の結晶子径は300nmであった。
[製造例3:非晶質球状カーボン(ACS)の製造]
水27.5mL及びグルコース2.82gを混合して溶液D3を得た。次いで、得られた溶液D3をオートクレーブに投入し、150℃で6時間水熱反応を行って、非晶質球状カーボン(ACS)を含むスラリーE3を得た。なお、水熱反応でのオートクレーブ内の圧力は0.8MPaであり、スラリーE3を乾燥して得られた非晶質球状カーボン(ACS)の平均粒径は3nmであった。
[実施例1]
製造例1で得られたLNTO1を2g採取し、これに酸化ナノグラフェン分散水溶液(濃度:1g/L、酸化グラフェンの平均粒径:90nm、イーエムジャパン社製)50mL(酸化グラフェン:0.05g、リチウムイオン二次電池用負極活物質中での炭素原子換算量:1質量%)、フルクトース(和光純薬工業社製)0.2g(リチウムイオン二次電池用負極活物質中での炭素原子換算量:4質量%)、及び水3mLを添加して乳鉢で混合した後、温風乾燥して造粒体1を得た。次いで、得られた造粒体1を窒素雰囲気下700℃で1時間焼成して、リチウムイオン二次電池用負極活物質Aを得た。得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質Aの平均粒径は40nm、BET比表面積は28m2/gであった。
[実施例2]
酸化ナノグラフェン分散水溶液50mLの代わりに、ポリエチレンオキシド(和光純薬工業社製)0.05g(リチウムイオン二次電池用負極活物質中での炭素原子換算量:1質量%)を用いた以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極活物質Bを得た。得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質Bの平均粒径は40nm、BET比表面積は28m2/gであった。
[実施例3]
酸化ナノグラフェン分散水溶液50mLとフルクトース0.2gの代わりに、製造例3で得られたスラリーE3を2.78g(リチウムイオン二次電池用負極活物質中での炭素原子換算量:5質量%)採取して用いた以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極活物質Cを得た。得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質Cの平均粒径は40nm、BET比表面積は30m2/gであった。
[実施例4]
LNTO1の代わりにLNTO2を用いた以外、実施例1と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極活物質Dを得た。得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質Dの平均粒径は500nm、BET比表面積は8m2/gであった。
[実施例5]
LNTO1の代わりにLNTO2を用いた以外、実施例2と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極活物質Eを得た。得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質Eの平均粒径は500nm、BET比表面積は8m2/gであった。
[実施例6]
LNTO1の代わりにLNTO2を用いた以外、実施例3と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極活物質Fを得た。得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質Fの平均粒径は500nm、BET比表面積は9m2/gであった。
[比較例1]
酸化ナノグラフェン分散水溶液50mLとフルクトース0.2gの代わりに、グルコース(和光純薬工業社製)(リチウムイオン二次電池用負極活物質中での炭素原子換算量:5質量%)を用いた以外、実施例4と同様にして、リチウムイオン二次電池用負極活物質Gを得た。得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質Gの平均粒径は500nm、BET比表面積は11m2/gであった。
全ての実施例及び比較例で得られたリチウムイオン二次電池用負極活物質を用い、リチウムイオン二次電池の負極を作製した。
具体的には、リチウムイオン二次電池用負極活物質(L)、アセチレンブラック(導電剤、G)及びポリフッ化ビニリデン(粘結剤、H)を、L:G:H(質量比)=80:10:10で混合し、これにN−メチル−2−ピロリドンを加えて充分混練し、負極スラリーを調製した。
得られた負極スラリーを、厚さ10μmの銅箔からなる集電体に塗工機を用いて塗布し、80℃で12時間の真空乾燥を行った。その後、80℃に加熱したロールプレスでプレスし、φ14mmの円盤状に打ち抜いて負極とした。
次いで、上記の負極を用いてコイン型リチウムイオン二次電池を構築した。正極には、リチウム箔を用いた。電解液には、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート(体積比)=3:7の割合で混合した混合溶媒に、LIPF6を1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。セパレータには、ポリプロピレンを用いた。
これらの電池部品を、露点が−50℃以下の雰囲気下で常法により組み込み収容し、コイン型リチウムイオン二次電池(CR−2032)を製造した。
製造したリチウムイオン二次電池を用いて定電流密度での充放電試験を行い、放電容量を測定した。なお、以下の全ての試験は、温度を45℃として行った。
充放電試験の充電条件は、電流密度90mA/g、電圧3.0Vの定電流充電とし、放電条件は電流密度90mA/g、終止電圧1.0Vの定電流放電とした場合と、充電条件を上記同様にして、放電時の電流密度を281mA/gとした場合の2通りとした。
得られた2種類の放電容量について、下記式(2)により放電容量の比を求めた。
結果を表1に示す。
放電容量の比(%)
=(281mA/gの放電容量)/(90mA/gの放電容量)×100・・(2)
また、放電時の電流密度90mA/gとした充放電試験については、同じ充放電条件での100サイクル繰り返し試験を行い、下記式(3)により容量保持率(%)を求めた。
結果を表1に示す。
容量保持率(%)
=(100サイクル後の放電容量)/(1サイクル後の放電容量)×100・・(3)
Figure 2018181829
上記結果より、本発明の製造方法により得られた高いレート特性を示す実施例のリチウムイオン二次電池用負極活物質は、比較例のリチウムイオン二次電池用負極活物質に比して、優れたサイクル特性をも示すことがわかる。

Claims (7)

  1. 下記式(1):
    LiaNabcTide ・・・(1)
    (式(1)中、MはK、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Sc、Si、P、S、Fe、Mn、Co、Ni、Zn、V、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Pb、Ga、Ge、Bi、Ta、Sn、Eu、La、Ce、Nd、W、Ru又はGdから選ばれる1種又は2種以上を示し、a、b、c、d及びeは、0<a≦4、0<b≦4、0≦c≦6、0<d≦6、13≦e≦15、a+b+c×(Mの価数)+4d=2eを満たす数を示す。)
    で表され、かつ平均粒径が5nm〜500nmであるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)の表面に炭素が担持してなるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法であって、次の工程(I)〜(II):
    (I)チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)に、糖類と酸化グラフェンとの混合物、糖類とポリエチレンオキシドとの混合物、及び非晶質球状カーボン(ACS)から選ばれる炭素源(Y)を添加して混合し、造粒体(Z)を得る工程、
    (II)得られた造粒体(Z)を焼成する工程
    を備えるリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
  2. 工程(I)において、チタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)100質量部に対し、炭素源(Y)を0.7質量部〜25質量部の割合で添加して混合する請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
  3. 工程(I)において得られる造粒体(Z)の平均粒径が、100nm〜50μmである請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
  4. 工程(II)での焼成を、不活性ガス雰囲気下又は還元条件下で行う請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
  5. 工程(II)の焼成において、焼成温度が500℃〜1000℃であり、かつ焼成時間が10分〜24時間である請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
  6. 工程(I)で用いるチタン酸ナトリウムリチウム複合酸化物粒子(X)が、ソルボサーマル法を用いて得られるものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
  7. リチウムイオン二次電池用負極活物質のBET比表面積が、3m2/g〜40m2/gである請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極活物質の製造方法。
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