JP2018159127A - In−Cu焼結体スパッタリングターゲット及びIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

In−Cu焼結体スパッタリングターゲット及びIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】加工性に優れるとともに、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することが可能なIn−Cuスパッタリングターゲットを提供する。【解決手段】Inを10原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、理論密度比が97%以上であって、密度のばらつきが2%以内であることを特徴とするIn−Cu焼結体スパッタリングターゲット。【選択図】図1

Description

本発明は、In−Cu合金の薄膜を成膜する際に用いられるIn−Cu焼結体スパッタリングターゲット、及びこのIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法に関するものである。
従来、化合物半導体からなる薄膜太陽電池として、Cu−In−Ga−Se系合金薄膜からなる光吸収層を備えたCIGS系太陽電池が広く提供されている。
ここで、Cu−In−Ga−Se系合金薄膜からなる光吸収層を形成する方法として、蒸着法により成膜する方法が知られている。蒸着法によって成膜された光吸収層を備えた太陽電池は、エネルギー交換効率が高いといった利点を有しているものの、成膜速度が遅く、生産効率が低いといった問題があった。
そこで、Cu−In−Ga−Se系合金薄膜からなる光吸収層を形成する方法として、InとCuとGaを含む薄膜又はこれらの元素を含む薄膜の積層膜を形成し、この薄膜又は積層膜をSe雰囲気中で熱処理してセレン化する方法が提供されている。InとCuとGaを含む薄膜又はこれらの元素を含む薄膜の積層膜を形成する際には、各元素を含有したスパッタリングターゲットを用いたスパッタ法が適用される。
ここで、特許文献1には、0.5〜7.5at%のCuを含むインジウムターゲットが提案されている。特許文献1には、インジウムターゲットの製造方法として、0.5〜7.5at%のCuを含むインジウム合金を溶解鋳造する鋳造法が開示されている。
特許文献2には、30〜80原子%のCuを含むIn−Cu合金スパッタリングターゲットが提案されている。この特許文献2の実施例では、純InターゲットにCuチップをチップオンしたスパッタリングを行ってIn−Cu合金膜を成膜している。
特許文献3には、銅とインジウムを含むスパッタリングターゲットの表面に、銅とインジウムを含む第1の相を有する粉末を冷間静水圧プレスして、修復されたターゲットを形成する方法が開示されている。この特許文献3の実施例では、銅とインジウムとガリウムを含む粉末が用いられている。
特開2012−052190号公報 特開2012−079997号公報 特表2014−503687号公報
ところで、特許文献1に記載されたインジウムターゲットにおいては、Cuの含有量が少なく、In単体相が多く存在している。インジウムは、常温で非常に柔らかいことから、切削加工した際に、加工屑がターゲット表面に付着してしまう。このため、切削時に切削油を多量に供給したり、加工速度を遅くしたりする必要があった。
しかしながら、切削油を多量に供給した場合には、切削油成分が不純物として成膜した膜に混入するおそれがあった。切削油を除去するために洗浄工程を追加した場合には、工程が増え、生産コストが増大してしまう。また、加工速度を遅くした場合には、生産効率が低下してしまうといった問題があった。
また、In−Cuスパッタリングターゲットの製造方法として、特許文献1に記載されている鋳造法では、Cuの一部が溶け残って異相となり易く、得られるインジウムターゲットに組成の偏析が生じ、密度のばらつきが大きくなるおそれがある。In−Cuスパッタリングターゲットに組成の偏析が生じ、密度のばらつきが大きいと、スパッタ時に異常放電が発生し易くなり、また成膜されたIn−Cu合金薄膜の組成ずれが生じる原因となるおそれがある。
特許文献2に記載されている純InターゲットにCuチップをチップオンしたスパッタリングでは、純Inターゲットの部分とCuチップの部分とでは導電性や密度が異なる。このため、スパッタ時に異常放電が発生し易くなり、また成膜レートが不安定となるので、成膜されたIn−Cu合金薄膜の組成ずれや膜厚のばらつきが生じる原因となるおそれがある。
特許文献3に記載されているCuとInを含む第1の相を有する粉末は、その粉末の組成によっては粉末単独では焼結しにくく、ターゲットの密度のばらつきが大きくなる場合があった。密度のばらつきが大きくなると、スパッタ時に異常放電が発生しやすくなり、また成膜レートが不安定となるので、成膜されたIn−Cu合金薄膜の組成ずれや膜厚のばらつきが生じる原因となるおそれがある。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、加工性に優れるとともに、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することが可能なIn−Cuスパッタリングターゲット、及びこのIn−Cuスパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のIn−Cuスパッタリングターゲットは、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットであり、Inを10原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有し、理論密度比が97%以上であって、密度のばらつきが2%以内であることを特徴としている。
上述の構成のn−Cu焼結体スパッタリングターゲットによれば、比較的柔らかいInを10原子%以上含有するので、1mmを超える粗大なチッピング(欠け)の発生を抑制できるとともに、チッピング跡に起因する異常放電の発生を抑制することができ、またターゲットの密度が高くなる。一方、Inの含有量が90原子%以下とされているので、切削加工などの加工によって発生する加工屑の発生量が少なくなり、ターゲット表面に加工屑が付着しにくくなる。よって、加工性が優れたものとなる。
さらに、理論密度比が97%以上と高く、緻密で、空孔が少ないためスパッタ時の異常放電や割れの発生を抑制することができる。またさらに、密度のばらつきが2%以内と低く、組成の均一性が高いので、スパッタ時の異常放電の発生をより抑制することができるとともに、成膜レートが安定するので、成膜されたIn−Cu合金薄膜は組成や膜厚が均一となり易くなる。
ここで、本発明のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットにおいては、Inの含有量のばらつきが3%以内とされていることが好ましい。
この場合は、Inの含有量のばらつきが3%以内と少ないので、スパッタ時の異常放電の発生がさらに抑制されるとともに、成膜したIn−Cu合金薄膜の組成がより均一になり易くなる。
また、本発明のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットにおいては、In単体相と、CuIn化合物相とが存在し、前記In単体相は最大粒子径が1mm以下であることが好ましい。
この場合、In単体相の最大粒子径が1mm以下と比較的微細とされているので、スパッタによってスパッタ面が消費された場合でも、スパッタ面の凹凸が抑えられ、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することができる。
さらに、本発明のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットにおいては、さらにNa化合物としてNaF、NaCl、NaS、NaSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このNa化合物の最大粒子径が15μm以下とされていることが好ましい。
この場合、上述のNa化合物を含有しているので、アルカリ金属であるNaを含むIn−Cu合金薄膜を成膜することができる。また、Na化合物の最大粒子径が15μm以下とされているので、スパッタ時の異常放電の発生を抑制できる。
またさらに、本発明のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットにおいては、さらにK化合物としてKF、KCl、KS、KSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このK化合物の最大粒子径が15μm以下とされていることが好ましい。
この場合、上述のK化合物を含有しているので、アルカリ金属であるKを含むIn−Cu合金薄膜を成膜することができる。また、K化合物の最大粒子径が15μm以下とされているので、スパッタ時の異常放電の発生を抑制できる。
本発明のIn−Cuスパッタリングターゲットの製造方法は、上述のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法であって、Inを10原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、X線回折パターンにおけるIn単体相の(110)面に帰属されるピーク強度をI(In)、Cu単体相の(111)面に帰属されるピーク強度をI(Cu)、CuIn相の(−232)面に帰属されるピーク強度をI(CuIn)、CuIn相の(200)面に帰属されるピーク強度をI(CuIn)、Cu11In相の(313)面に帰属されるピーク強度をI(Cu11In)、Na化合物に起因する最大ピーク強度I(Na化合物)、K化合物相に起因する最大ピーク強度I(K化合物)とした場合に、下記の式(1)によって算出されるIn単体相の存在量が5%以上85%以下である原料粉を準備する原料粉準備工程と、
In単体相の存在量(%)=[I(In)/{I(CuIn)+I(CuIn)+I(Cu11In)+I(In)+I(Cu)+I(Na化合物)+I(K化合物)}]×100・・・(1)
前記原料粉を90℃以上140℃以下の温度で静水圧加圧して、焼結させる焼結工程と、を備えていることを特徴としている。
この構成のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法によれば、原料粉が、融点が低いIn単体相を含むので、焼結工程において、In単体相のInが比較的均一に原料粉全体に拡散しやすい。このInが原料粉全体に拡散することによって、緻密でかつ密度のばらつきが小さいIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットを得ることが可能となる。
本発明によれば、加工性に優れるとともに、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することが可能なIn−Cu焼結体スパッタリングターゲット、及びこのIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの元素分布図の一例である。 スパッタ面が矩形であるIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットにおけるIn含有量および密度の測定位置を示す説明図である。 スパッタ面が円形であるIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットにおけるIn含有量および密度の測定位置を示す説明図である。 本発明の一実施形態に係るIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法を示すフロー図である。
以下に、本発明の実施形態であるIn−Cu焼結体スパッタリングターゲット、及び、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法について、添付した図面を参照して説明する。
本実施形態に係るIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットは、Inを10原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有する。Inの含有量のばらつきは3%以内とされている。
さらに、理論密度比(上述の組成比から算出される理論密度に対する相対密度)が97%以上であって、密度のばらつきが2%以内とされている。
そして、本実施形態に係るIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットにおいては、In単体相とCuIn化合物相とが存在している。図1は、本発明の一実施形態に係るIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの元素分布図の一例であり、左図の白色の領域はCuIn化合物相、左図の黒色の領域はIn単体相を表している。図1に示すように、In単体相は、Inは検出されるが、Cuが検出されない領域を意味し、CuIn化合物相は、InとCuとが検出される領域を意味する。CuIn化合物相を構成するCuIn化合物は、CuIn、CuIn、Cu11In等である。
ここで、In単体相の最大粒子径は1mm以下とされている。また、CuIn化合物相の最大粒子径は150μm以下とされている。
また、本実施形態においては、さらにNa化合物としてNaF、NaCl、NaS、NaSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このNa化合物の最大粒子径が15μm以下とされていてもよい。異常放電の抑制から、Na化合物の最大粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
また、さらにK化合物としてKF、KCl、KS、KSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このK化合物の最大粒子径が15μm以下とされていてもよい。異常放電の抑制から、K化合物の最大粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
以下に、本実施形態であるIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットにおいて、Inの含有量とそのばらつき、理論密度比、密度のばらつき、In単体相とCuIn化合物相の最大粒子径、Na化合物およびK化合物について、上述のように規定した理由について説明する。
(Inの含有量:10原子%以上90原子%以下)
InにCuを添加することにより、Inよりも硬いCuIn化合物相が形成され、切削加工性を大幅に向上させることが可能となる。また、結晶粒径を微細化させることが可能となる。
ここで、Inの含有量が10原子%未満であると、In単体相が少なくなり、ターゲットの高密度が困難となるおそれがある。また、ターゲットが硬くなりすぎて、切削加工時に粗大なチッピングが発生する原因となる。また、このチッピング跡に起因する異常放電が発生するおそれがある。
一方、Inの含有量が90原子%を超えると、CuIn化合物相が十分に形成されず、切削加工性を向上させることができないおそれがある。
このような理由から、本実施形態においては、Inの含有量を10原子%以上90原子%以下の範囲内に設定している。異常放電発生の抑制の理由から、Inの含有量は、好ましくは20原子%以上80原子%以下である。
(Inの含有量のばらつき:3%以内)
Inの含有量のばらつきを小さくすることによって、膜組成が均一なIn−Cu合金薄膜を成膜することができる。
ここで、Inの含有量のばらつきが3%を超えると、成膜されるIn−Cu合金薄膜の組成のばらつきが大きくなるおそれがある。
ここで、本実施形態においては、In含有量のばらつきは、例えば、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットのスパッタ面が図2に示すように、矩形の場合には、次のようにして測定する。スパッタ面の向かい合う角部を結ぶ対角線が交差する交点(1)と、各対角線上の角部から対角線の全長の10%以内の位置にある(2)、(3)、(4)、(5)の5点において、一辺の長さがスパッタ面の短辺の長さの5%となるように正方形状に切断して、立方体状のターゲット片を切り出す。切り出した立方体状のターゲット片を厚さ方向に3等分して、合計15個の薄型立方体状のターゲット片を得る。得られた薄型立方体状のターゲット片をそれぞれ分析試料として、In含有量をICP−AES法により測定する。測定したIn含有量の平均値を算出し、また測定したIn含有量の最大値と最小値をそれぞれ抽出する。In含有量のばらつきは、下記の式により求めた値とする。
In含有量のばらつき(%)={(In含有量の最大値−In含有量の最小値)/In含有量の平均値}×100
なお、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットのスパッタ面が図3に示すように、円形の場合には、分析試料として用いる薄型立方体状のターゲット片は次のようにして作製する。スパッタ面の中心(1)と、スパッタ面の中心を通過するとともに互いに直交する2本の直線上の外周部分から対角線の全長の10%以内の位置にある(2)、(3)、(4)、(5)の5点において、一辺の長さが、スパッタ面の直径の長さに対して5%となるように正方形状に切断して、立方体状のターゲット片を切り出す。切り出した立方体状のターゲット片を厚さ方向に3等分して、合計15個の薄型立方体状のターゲット片を得る。
(理論密度比:97%以上)
In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの理論密度比が97%未満であると、空孔が多く存在することになり、スパッタ時に異常放電や割れが発生しやすくなるおそれがある。そこのため、本実施形態においては、理論密度比を97%以上に規定している。理論密度比は、通常100%以下である。
ここで、本実施形態において、理論密度は、下記の式により求めた値である。
理論密度比(%)=(測定密度/理論密度)×100
なお、「測定密度」は、アルキメデス法を用いて測定する。
理論密度は、In、Cu、CuIn化合物の含有量比によって変動する。このため、本実施形態においては、InとCuの含有量比が、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットと同じ割合の溶湯を溶製し、これを鋳造して徐冷(冷却速度5℃/min以下)することで得られた無欠陥の鋳塊(10cm×10cm×10cm)の密度を測定し、その値を「理論密度」とする。無欠陥の鋳塊であるか否かの確認は目視で行う。
In−Cu焼結体スパッタリングターゲットがNa化合物、K化合物を含む場合は、これらの含有量によって、理論密度は変動する。このため、本実施形態においては、Na化合物、K化合物を含む場合は、InCu、Na化合物、K化合物のそれぞれの理論密度と含有量から理論密度を算出する。例えば、Na化合物としてNaF、K化合物としてKFを含むIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの理論密度は、下記の方法により算出できる。
まず、InCu(Na化合物とK化合物を除いたInとCuの含有量比のInCu)の理論密度を上記の方法で測定し、その値をDa(g/cm)とする。また、NaFの理論密度を2.79(g/cm)、KFの理論密度を2.48(g/cm)とする。そして、In−Cu焼結体スパッタリングターゲット中のInCuの含有量をWa(wt%)、NaFの含有量をWb(wt%)、KFの含有量をWc(wt%)とし理論密度Db(g/cm)を下記の計算式より算出する。
Db=100/{(Wa/Da)+(Wb/2.79)+(Wc/2.48)}
(密度のばらつき:2%以下)
In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの密度のばらつきを小さくすることによって、スパッタ時の異常放電の発生がより抑制され、またスパッタ時の成膜レートが安定する。
密度のばらつきが大きくなりすぎると、スパッタ時に異常放電が発生し易くなり、またスパッタ時の成膜レートが不安定となり、成膜されたIn−Cu合金薄膜は組成や膜厚が不均一となるおそれがある。このため、本実施形態においては、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの密度のばらつきを2%以下と設定している。異常放電発生の抑制の理由から、密度のばらつきは、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下である。
ここで、本実施形態において、密度のばらつきは、例えば、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットのスパッタ面が図2に示すように、矩形の場合には、次のように測定する。スパッタ面の向かい合う角部を結ぶ対角線が交差する交点(1)と、各対角線上の角部から対角線の全長の10%以内の位置にある(2)、(3)、(4)、(5)の5点から、上記Inの含有量のばらつきの測定の場合と同様に、立方体状のターゲット片を切り出し、切り出した立方体状のターゲット片を厚さ方向に3等分して、合計15個の薄型立方体状のターゲット片を得る。得られた薄型立方体状のターゲット片をそれぞれ分析試料として、密度を、アルキメデス法を用いて測定する。測定した密度の平均値を算出し、また測定した密度の最大値と最小値をそれぞれ抽出する。密度のばらつきは、下記の式により求めた値とする。
密度のばらつき(%)={(密度の最大値−密度の最小値)/密度の平均値}×100
なお、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットのスパッタ面が図3に示すように、円形の場合には、上記Inの含有量のばらつきの測定の場合と同様に、スパッタ面の中心(1)と、スパッタ面の中心を通過するとともに互いに直交する2本の直線上の外周部分から対角線の全長の10%以内の位置にある(2)、(3)、(4)、(5)の5点から、立方体状のターゲット片を切り出し、切り出した立方体状のターゲット片を厚さ方向に3等分して、合計15個の薄型立方体状のターゲット片を得る。
(In単体相の最大粒子径:1mm以下)
本実施形態のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットにおいて、In単体相はCuIn化合物相とCuIn化合物相との間に存在し、両者を接合する作用を有する。In単体相が存在することによって、ターゲットの密度が高くなる。
このIn単体相の最大粒子径が1mmを超えて粗大になると、スパッタ時に異常放電が発生するおそれがある。このため、本実施形態においては、In単体相の最大粒子径を1mm以下と設定している。
なお、異常放電の発生を確実に抑制するためには、In単体相の最大粒子径を0.5mm以下とすることが好ましい。また、In単体相の最大粒子径の下限には特に制限はないが、0.010mm以上とすることが好ましい。
(CuIn化合物相の最大粒子径:150μm以下)
CuIn化合物相は、In単体相よりも硬い。このためCuIn化合物相が存在することにより、切削加工性が向上することになる。
このCuIn化合物相の最大粒子径が150μmを超えて粗大になると、切削加工時に粗大なチッピングが発生する原因となる。また、このチッピング跡に起因する異常放電が発生するおそれがある。このような理由から、本実施形態においては、CuIn化合物相の最大粒子径を150μm以下と設定している。
なお、チッピングの発生を確実に抑制するためには、CuIn化合物相の最大粒子径を100μm以下とすることが好ましく、50μm以下とするとさらに好ましい。また、CuIn化合物相の最大粒子径の下限には特に制限はないが、切削加工性を確実に向上させるためには、1μm以上とすることが好ましい。
(Na化合物及びK化合物:最大粒子径15μm以下)
スパッタリングターゲットに、Na化合物あるいはK化合物を含有させることにより、成膜されたIn膜中にアルカリ金属を含有させることができる。ここで、Cu−In−Ga−Se系合金薄膜を光吸収層として有する太陽電池においては、Cu−In−Ga−Se系合金薄膜にアルカリ金属を添加することにより、変換効率が大きく向上することになる。このため、本実施形態であるスパッタリングターゲットに、Na化合物あるいはK化合物を含有させてもよい。なお、Na化合物及びK化合物の含有量については、全ての金属元素の含有量としてそれぞれNa及びKの含有量が0.1原子%以上10原子%の範囲内とすることが好ましく、0.1原子%以上5原子%の範囲内とすることがさらに好ましい。0.1原子%未満の場合には添加による変換効率の向上効果が得られにくくなり、10原子%を超える場合にはNa化合物あるいはK化合物に起因する異常放電が多発し、スパッタが困難となるおそれがある。
ここで、Na化合物あるいはK化合物の最大粒子径が15μmを超えると、スパッタ時に異常放電が発生するおそれがある。このため、本実施形態では、Na化合物及びK化合物を含有させる場合には、これらの最大粒子径を15μm以下に制限している。
次に、本実施形態に係るIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法について、図4のフロー図を参照して説明する。本実施形態のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法は、原料粉準備工程S11、焼結工程S12、機械加工工程S13を備える。
(原料粉準備工程S11)
原料粉準備工程S11では、Inを10原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相の存在量が5%以上85%以下である原料粉を準備する。
In単体相の存在量は、X線回折パターンにおけるIn単体相の(110)面に帰属されるピーク強度をI(In)、Cu単体相の(111)面に帰属されるピーク強度をI(Cu)、CuIn相の(−232)面に帰属されるピーク強度をI(CuIn)、CuIn相の(200)面に帰属されるピーク強度をI(CuIn)、Cu11In相の(313)面に帰属されるピーク強度をI(Cu11In)、Na化合物に起因する最大ピーク強度I(Na化合物)、K化合物相に起因する最大ピーク強度I(K化合物)とした場合に、下記の式(1)によって算出される値である。
In単体相の存在量(%)=[I(In)/{I(CuIn)+I(CuIn)+I(Cu11In)+I(In)+I(Cu)+I(Na化合物)+I(K化合物)}]×100・・・(1)
なお、Na化合物に起因する最大ピーク強度I(Na化合物)は、Na化合物がNaFの場合はNaF相の(100)面、NaClの場合はNaCl相の(110)面、NaSの場合はNaS相の(220)面、NaSeの場合はNaSe相の(111)面にそれぞれ帰属されるピーク強度である。また、K化合物相に起因する最大ピーク強度I(K化合物)は、K化合物がKFの場合はKF相の(200)面、KClの場合はKCl相の(110)面、KSの場合はKS相の(220)面、KSeの場合はKSe相の(220)面にそれぞれ帰属されるピーク強度である。
原料粉は、以下の粉末(1)もしくは(2)のいずれかであることが好ましい。
(1)Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相の存在量が5%以上85%以下であるIn−Cu合金粉末(In単体相含有In−Cu合金粉末)
(2)In単体相含有In−Cu合金粉末またはIn粉末のうち少なくとも一方と、Inの含有量が45原子%未満で、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有し、In単体相が存在しないか、あるいは存在しているとしてもその存在量が5%未満であるIn−Cu合金粉末(In単体相不含有In−Cu合金粉末)またはCu粉末のうち少なくとも一方とを、Inを10原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成となるように含む粉末混合物
上記(1)のIn単体相含有In−Cu合金粉末は、例えば、ガスアトマイズ法によって製造することができる。具体的には、Cu原料とIn原料を準備し、上述の組成となるように配合して溶解後、ガスアトマイズ法によって粉状化し、孔径1000μmの篩を用いて分級することによって製造することができる。Cu原料およびIn原料は、純度が99.99質量%以上であることが好ましい。なお、得られたIn単体相含有合金粉末については、In単体相およびCuIn化合物相が存在することを確認する。Cu原料としては、Cu金属塊およびCu粉を使用できる。また、In原料としては、In金属塊およびIn粉を使用できる。
ガスアトマイズの条件としては、Ar置換の際の到達真空度を10Pa以下、溶解時の温度を1100℃以上1200℃以下、噴射温度を700℃以上900℃以下、噴射ガス圧を1.5MPa以上3.9MPa以下、ノズル径を0.5mm以上3mm以下と設定する。ここで、ガスアトマイズの噴射温度が700℃未満の場合、CuIn化合物相の生成の割合が増加し、Inの生成量が低下するおそれがある。このため、Inの含有量が45〜55原子%と比較的少ない場合には、特に注意が必要である。また、アトマイズ時にるつぼが閉塞しやすくなる。一方、噴射温度が900℃を超えると、得られる原料粉のInの割合がIn−Cu状態図から得られる割合に比べて多くなり、CuIn化合物相が不足し、切削加工性が向上しないおそれがある。また、アトマイズ時にチャンバー内に粉が付着し、粉の収率が低下するおそれがある。以上のことから、本実施形態では、ガスアトマイズの噴射温度を700℃以上900℃以下の範囲内に設定している。ガスアトマイズの噴射温度は、750℃以上850℃以下の範囲内に設定することが好ましく、750℃以上800℃以下の範囲内に設定することがより好ましいが、これに限定されることはない。また、Ar置換の際の到達真空度を10Pa以下とすることで、製造されたIn−Cu合金粉中の酸素量を500質量ppm以下にすることが可能となる。Ar置換の際の到達真空度は、0.1Pa以上5Pa以下にすることが好ましく、0.5Pa以上1Pa以下にすることがより好ましいが、これに限定されることはない。
上記(2)の粉末混合物の原料として用いるIn単体相不含有In−Cu合金粉末は、具体的には、Cu原料とIn原料を準備し、上述の組成となるように配合して溶解後、ガスアトマイズ法によって粉状化し、孔径1000μmの篩を用いて分級することによって製造することができる。なお、得られたIn単体相不含有合金粉末については、In単体相が存在しないか、あるいは存在しているとしてもその存在量が5%未満であることを確認する。In単体相が存在しないか、あるいはその存在量が5%未満であることは、In単体相不含有合金粉末のX線回折パターンを測定することによって確認することができる。すなわち、X線回折パターンにおいて、In単体相のピークが検出されないか、上記(1)の式で算出されるIn単体相の存在量が5%未満であることを確認する。ここで、In単体相のピークが検出されないとは、In単体相の(110)面に帰属されるピークが検出されないことを意味する。
ガスアトマイズの条件は、上述のIn単体相含有In−Cu合金粉末を製造する場合の条件と同じである。
上記(2)の粉末混合物の原料として用いるCu粉末およびIn粉末は、純度が99.99質量%以上であることが好ましい。Cu粉末およびIn粉末は、孔径1000μmの篩を用いて分級することが好ましい。
上記(2)の粉末混合物は、In単体相含有In−Cu合金粉末またはIn粉末のうち少なくとも一方と、In単体相不含有In−Cu合金粉末またはCu粉末のうち少なくとも一方とを、Inを10原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成となるように混合することによって調製する。混合方法としては、ボールミルおよびロッキングミキサーなどの金属粉末の混合に用いられる通常の混合装置を用いることができる。
(焼結工程)
焼結工程S12では、上記原料粉準備工程S11にて準備した原料粉を、90℃以上140℃以下の温度で静水圧加圧を行って、焼結体を形成する。
ここで、焼結体を形成する方法として、ホットプレス(一軸加圧)やHIP(熱間等方圧加圧)を利用することも考えられる。しかし、ホットプレスでは、プレス時の圧力分布の幅が大きく、この圧力分布の幅が、得られる焼結体の密度のばらつきとして反映され、特にスパッタ面の面積が600cm以上の大型の焼結体(In−Cu焼結体スパッタリングターゲット)では密度のばらつきが大きくなるおそれがある。また、密度のばらつきを抑えるため、200MPaの高圧力を付与することが考えられるが、例えば、ターゲットの面積が600cm以上の大型の焼結体を製造する場合には、約1200tonプレス機が必要となり、装置が大掛かりになり、工業的に不利になる。
一方、HIPでは、通常のオイル等の媒体がガス化することで加熱と加圧を同時に行っているため、比較的低温での温度制御が困難である。これに対して、Inは、軟化点が90℃で融点が156.4℃と比較的低温である。このため、HIPでは温度のむらによって、Inが溶出したり、Inが偏在することによって、得られる焼結体の密度のばらつきが大きくなるおそれがある。
以上のような理由から、本実施形態では、90℃以上140℃以下の温度で静水圧加圧する方法を採用している。本実施形態では90℃以上140℃以下と比較的低い温度で加熱しているので、Inが比較的均一に焼結体の内部に浸透し、緻密でかつ密度のばらつきが小さい焼結体を得ることが可能となる。静水圧加圧による加圧の圧力は、好ましくは100MPa以上250MPa以下の範囲にあり、特に好ましくは150MPa以上200MPa以下の範囲である。
(機械加工工程)
機械加工工程S13では、上記焼結工程S12で得られた焼結体に対して、旋盤加工、フライス加工等を行う。これにより、所定形状のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットを得る。
以上のような構成とされた本実施形態に係るIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットによれば、比較的柔らかいInを10原子%以上含有するので、粗大なチッピング(欠け)の発生を抑制できるとともに、チッピング跡に起因する異常放電の発生を抑制することができる。また、Inの含有量が90原子%以下とされているので、切削加工などの加工時に発生する加工屑の発生量が少なくなり、加工後のターゲット表面に加工屑が付着しにくくなる。よって、加工性が優れたものとなる。
また、理論密度比が97%以上と高く、緻密であるため、スパッタ時および加工時での割れや欠けの発生を抑制できるとともに、加工性を確実に向上させることが可能となる。さらに、密度のばらつきが2%以内と低く、組成の均一性が高いので、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することができる。
また、本実施形態においては、Inの含有量のばらつきが3%以内と少ないので、スパッタ時の異常放電の発生がさらに抑制されるとともに、成膜したIn−Cu合金薄膜の組成が均一になり易くなる。
さらに、本実施形態においては、In単体相とCuIn化合物相とが存在し、前記In単体相の最大粒子径が1mm以下と比較的微細とされているので、スパッタによってスパッタ面が消費された場合でも、スパッタ面の凹凸が抑えられ、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することができる。また、CuIn化合物相は、In単体相よりも硬いので、CuIn化合物相が存在することにより、切削加工性が向上することになる。さらにCuIn化合物相の最大粒子径が150μm以下とされているので、チッピング跡に起因する異常放電の発生を抑制することができる。
またさらに、本実施形態において、さらにNa化合物としてNaF、NaCl、NaS、NaSeのうちの1種又は2種以上を含有する場合、あるいはさらにK化合物としてKF、KCl、KS、KSeのうちの1種又は2種以上を含有する場合には、アルカリ金属を含むIn膜を成膜することができる。このIn膜を用いてCu−In−Ga−Se系合金薄膜を成膜することで、CIGS系太陽電池の変換効率を向上させることが可能となる。
さらに、Na化合物及びK化合物の最大粒子径が15μm以下に制限されているので、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することができる。
また、本実施形態のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法によれば、原料粉がIn単体相もしくはIn粉末を含むので、焼結工程S12において、In単体相もしくはIn粉末のInが、比較的均一に原料粉全体に拡散しやすい。このInが原料粉全体に拡散することによって、緻密でかつ密度のばらつきが小さいIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットを得ることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットは、In単体相を含むものとして説明したが、これに限定されることはない。例えば、原料粉に含まれているIn単体相あるいはIn粉末の全量を、原料粉を焼結させてIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットとする際に、Cuと反応させてCuIn化合物としてもよい。また、CuIn化合物相の最大粒子径は、150μmを超えていてもよい。
さらに、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法については、本実施形態に限定されることはなく、他の製造方法によって製造されたものであってもよい。
[本発明例1〜10、比較例1〜10]
(1)原料粉準備工程
表1に示すように、In−Cu合金粉末(本発明例1〜4、6〜10、比較例1〜6、8〜10)、In粉末(本発明例5、比較例7)、Cu粉末(本発明例4、5、比較例7、8)、Na化合物粉末(本発明例8、比較例4)、K化合物粉末(本発明例9、比較例5)を用意した。In粉末は、純度99.99質量%以上である。Cu粉末は、純度99.99質量%以上である。
In−Cu合金粉末は、次のようにして製造した。
純度99.99質量%以上のCu金属塊と、純度99.99質量%以上のIn金属塊を、InとCuの含有量が表1に示す組成となるように秤量した。秤量した原料を、カーボン坩堝に充填して溶解した後、噴射温度800℃、噴射ガス圧2.5MPa、ノズル径1.5mmの条件にてガスアトマイズ法により、In−Cu合金粉末を作製した。作製したIn−Cu合金粉末のIn単体相の存在量を、下記のようにして測定した。その結果を表1に示す。
(In単体相の存在量)
In−Cu合金粉末のX線回折パターンを以下の条件で測定した。
装置:理学電気社製(RINT−Ultima/PC)
管球:Cu
管電圧:40kV
管電流:40mA
走査範囲(2θ):10°〜80°
スリットサイズ:発散(DS)2/3度、散乱(SS)2/3度、受光(RS)0.8mm
測定ステップ幅:2θで0.02度
スキャンスピード:毎分2度
試料台回転スピード:30rpm
以上の条件で測定したX線回折パターンにおけるIn単体相の(110)面に帰属されるピーク強度I(In)と、Cu単体相の(111)面に帰属されるピーク強度I(Cu)と、CuIn相の(−232)面に帰属されるピーク強度I(CuIn)と、CuIn相の(200)面に帰属されるピーク強度I(CuIn)と、Cu11In相の(313)面に帰属されるピーク強度I(Cu11In)をそれぞれ計測し、In単体相の存在量(%)を前記の式(1)にて算出した。
本発明例1、2、3、6、7、10および比較例1、2、3、6、9、10は、In−Cu合金粉末を原料粉とした。
本発明例4、5、8、9および比較例4、5、7、8は、用意した粉末を、全体量を100質量%としたときの配合割合が、表1の投入割合となるように秤量し、秤量した各粉末を混合し、得られた粉末混合物を原料粉とした。粉末の混合は、ボールミルを用いた。
原料粉の組成とIn単体相の存在量を表1に示す。なお、原料粉の組成は、用意した粉末の組成と配合割合から算出した。原料粉のIn単体相の存在量は、原料粉のX線回折パターンから算出した。
(2)焼結工程
上記(1)原料粉準備工程で調製した原料粉を、モールドに充填して、表2に示す焼結条件にて加熱して、焼結させた。
(3)機械加工工程
上記(2)焼結工程で得られた焼結体を、旋盤とフライス盤とを用いて126mm×178mm×6mmtサイズのIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットに加工した。
(In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの組成)
得られたIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの破片を酸で前処理した後、ICP−AES法によりIn、Na、Kの組成分析を行った。Cu及びその他の成分については、残部として記載した。測定結果は表1の原料粉とほぼ同じであった為、表1の原料粉の組成比と同じ数値を表3に記載した。
(密度)
図2に示すように、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットのスパッタ面の向かい合う角部を結ぶ対角線が交差する交点(1)と、各対角線上の角部から対角線の全長の10%以内の位置にある(2)、(3)、(4)、(5)の5点において、一辺の長さが6.3mm(=126mm×5%)の正方形状に切断して、立方体状のターゲット片を切り出した。切り出した立方体状のターゲット片を厚さ方向に3等分して、合計15個の薄型立方体状のターゲット片(6.3mm×6.3mm×2mmt)を得た。得られた薄型立方体状のターゲット片をそれぞれ分析試料として、サイズと重量を測定し、測定密度を算出した。測定密度の平均値を表3に示す。
また、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造に用いた原料粉と同じ組成の粉末を加熱して、溶湯を溶製した。次いで溶製した溶湯を鋳造し、徐冷(冷却速度5℃/min以下)して鋳塊(10cm×10cm×10cm)を得た。得られた鋳塊のサイズと重量を測定して、密度を算出し、この値を理論密度とした。なお、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットがNaF、KFを含む場合は、InCu、NaF、KFのそれぞれの理論密度と含有量から次のようにして理論密度を算出した。なお、InCu、NaF、KFの含有量は、原料の配合割合から算出した。
まず、InCu(NaFとKFを除いたInとCuの含有量比のInCu)の理論密度を上記の方法で測定し、その値をDa(g/cm)とした。NaFの理論密度を2.79(g/cm)、KFの理論密度を2.48(g/cm)とした。そして、In−Cu焼結体スパッタリングターゲット中のInCuの含有量をWa(wt%)、NaFの含有量をWb(wt%)、KFの含有量をWc(wt%)とし、理論密度Db(g/cm)を下記の計算式より算出した。
Db=100/{(Wa/Da)+(Wb/2.79)+(Wc/2.48)}
その結果を表3に示す。
上記の測定密度の平均値と理論密度とを用いて、下記の式より理論密度比を算出した。その結果を表3に示す。
理論密度比(%)={(測定密度(平均値))/理論密度}×100
さらに、測定密度の最大値と最小値とを抽出し、下記の式より密度のばらつきを算出した。その結果を表3に示す。
密度のばらつき(%)={(密度の最大値−密度の最小値)/密度の平均値}×100
(In含有量のばらつき)
上記の密度の測定で得られた薄型立方体状のターゲット片を分析試料としてそれぞれ酸で前処理した後、ICP−AES法によりInの含有量を測定した。次いで、測定したIn含有量の最大値と最小値をそれぞれ抽出し、また全てのIn含有量の平均値を算出した。そして、In含有量のばらつきを、下記の式により算出した。その結果を表3に示す。
In含有量のばらつき(%)={(In含有量の最大値−In含有量の最小値)/In含有量の平均値}×100
(In単体相、CuIn化合物相、Na化合物、K化合物の最大粒子径)
In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの加工表面に対してクロスセッションポリッシャ加工(CP加工)を行い、プローブマイクロアナライザ(EPMA)装置(日本電子株式会社製)を用いて、1000倍でCu、Inの元素マッピング像(図1参照)をそれぞれ5枚撮影し、CuとInの元素マッピング像から、Inのみが存在している領域をIn単体相と定義した。In単体相の内接円の直径を測定し、これをIn単体相の粒子径とした。さらにこれらの操作を任意の5箇所について実施し、その中で最も大きいものを、得られた焼結体のIn単体相の最大粒子径とした。
また、CuIn化合物相、Na化合物とK化合物についても、上述と同様の方法により、最大粒子径を測定した。その結果を表3に示す。
(異常放電回数)
得られたIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットを用いて、次のような条件でスパッタによる成膜を行った。DCマグネトロンスパッタ装置により、スパッタガスとしてArガスを用いて、流量50sccm、圧力0.67Paとし、投入電力として、6W/cmの電力にて、それぞれ1時間のスパッタを行い、DC電源装置(京三製作所社製HPK06Z−SW6)に備えられているアークカウント機能により、異常放電の回数をカウントした。その結果を表4に示す。
(スパッタ掘り込み試験時のターゲットのIn組成ずれ(バルク/表面))
XRFを用いて、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの表面のIn組成比率[a(原子%)]を測定する。次に、以下のような条件でスパッタを行う。
DCマグネトロンスパッタ装置により、スパッタガスとしてArガスを用いて、流量50sccm、圧力0.67Paとし、投入電力として、6W/cmの電力にてスパッタを行う。エロージョン箇所が3mmの深さになるまでスパッタを行った後、エロージョン箇所(バルク)のIn組成比率[b(原子%)]をXRFにて測定する。
そして、下記の式より、スパッタ掘り込み試験時のターゲットのIn組成ずれ(バルク/表面)を算出した。その結果を表4に示す。
In組成ずれ(%)={(a−b)の絶対値/a}×100
(スパッタ膜のIn組成ずれ)
DCマグネトロンスパッタ装置により、スパッタガスとしてArガスを用いて、流量50sccm、圧力0.67Paとし、投入電力として、6W/cmの電力にて未使用のターゲットのスパッタを行い、500nm成膜する。得られたスパッタ膜中の銅とインジウムの含有量を、ICP発光分光分析法を用いて測定し、スパッタ膜のIn組成比率[c(原子%)]を測定する。次に、上記のような条件でスパッタを行う。エロージョン箇所が3mmの深さになるまでスパッタを行った後、再度500nm成膜を行い、スパッタ膜のIn組成比率[d(原子%)]をICP発光分光分析法にて測定する。
そして、下記の式より、スパッタ膜のIn組成ずれを算出した。その結果を表4に示す。
In組成ずれ(%)={(c−d)の絶対値/c}×100
(スパッタ時のターゲットの割れ)
上記の異常放電回数の測定終了後、ターゲットの外観を観察し、目視で割れの有無を評価した。その結果を表4に示す。
(加工性:加工屑の付着)
In−Cu焼結体スパッタリングターゲットに旋盤加工を行い、加工後の加工屑の付着の有無を目視観察した。その結果を表4に示す。なお、加工条件は以下の通りとした。
工具:超硬インサート(三菱マテリアル株式会社製TNMG160404−MJ VP05RT)
送り:0.7〜1mm/rpm
1回の切り込み量:1〜2mm
切削環境:乾式
(加工性:チッピングの発生)
上記の加工後のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットについて、チッピングの有無を目視で確認した。チッピングが発生した場合には、In−Cu焼結体スパッタリングターゲットの端面から欠けた部分の最大距離をデジタルノギスで測定した。このとき、チッピングが面している面のうち、欠けた部分が最も大きい面に対して測定を行った。その結果を表4に示す。
理論密度比が本発明の範囲よりも低い比較例1、2、3、8、9においては、異常放電回数が多くなった。理論密度比は本発明の範囲にあるが、密度のばらつきが本発明の範囲を超える比較例10においても異常放電回数が多くなった。
また、Inの含有量が本発明の範囲を超える比較例6は、旋盤加工時に加工屑の付着が観察され、切削加工に時間を要した。なお、比較例6は、加工屑が付着したため、異常放電回数およびスパッタ掘り込み試験時のターゲットのIn組成ずれは測定しなかった。一方、In含有量が本発明の範囲よりも少ない比較例7については、理論密度比が小さくなり、旋盤加工時に粗大なチッピングが発生した。なお、比較例7は、粗大なチッピングが発生したため、異常放電回数およびスパッタ掘り込み試験時のターゲットのIn組成ずれは測定しなかった。
Na化合物の最大粒子径が大きい比較例4においては、スパッタ時の異常放電回数が多く、高電力条件ではスパッタを継続することができなかった。また、K化合物の最大粒子径が大きい比較例5についても比較例4と同様の結果となった。
これに対して、In含有量、理論密度比および密度のばらつきが本発明の範囲にある本発明例1〜10においては、旋盤加工時に加工屑の付着や粗大なチッピングの発生が認められず、加工性に優れていた。また、スパッタ時の異常放電回数も少なく、安定してスパッタ成膜が可能であることが確認された。なお、CuIn化合物相の最大粒子径が150μmを超える本発明例10では、0.5mmの微細なチッピングが発生しているが、スパッタ時の異常放電回数は4回と少ないことから、この微細なチッピングの発生は実用上問題ないレベルであると考えられる。さらに、Na化合物、K化合物の最大粒子径が本発明の範囲にある本発明例8、9においては、Na化合物、K化合物を含有しながらも異常放電の回数が少なくなった。

Claims (6)

  1. Inを10原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、
    理論密度比が97%以上であって、密度のばらつきが2%以内であることを特徴とするIn−Cu焼結体スパッタリングターゲット。
  2. Inの含有量のばらつきが3%以内である請求項1に記載のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲット。
  3. In単体相と、CuIn化合物相とが存在し、前記In単体相は最大粒子径が1mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲット。
  4. さらにNa化合物としてNaF、NaCl、NaS、NaSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このNa化合物の最大粒子径が15μm以下とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲット。
  5. さらにK化合物としてKF、KCl、KS、KSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このK化合物の最大粒子径が15μm以下とされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲット。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載のIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法であって、
    Inを10原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、X線回折パターンにおけるIn単体相の(110)面に帰属されるピーク強度をI(In)、Cu単体相の(111)面に帰属されるピーク強度をI(Cu)、CuIn相の(−232)面に帰属されるピーク強度をI(CuIn)、CuIn相の(200)面に帰属されるピーク強度をI(CuIn)、Cu11In相の(313)面に帰属されるピーク強度をI(Cu11In)、Na化合物に起因する最大ピーク強度I(Na化合物)、K化合物相に起因する最大ピーク強度I(K化合物)とした場合に、下記の式(1)によって算出されるIn単体相の存在量が5%以上85%以下である原料粉を準備する原料粉準備工程と、
    In単体相の存在量(%)=[I(In)/{I(CuIn)+I(CuIn)+I(Cu11In)+I(In)+I(Cu)+I(Na化合物)+I(K化合物)}]×100・・・(1)
    前記原料粉を90℃以上140℃以下の温度で静水圧加圧して、焼結させる焼結工程と、
    を備えていることを特徴とするIn−Cu焼結体スパッタリングターゲットの製造方法。
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