WO2017073514A1 - スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明のスパッタリングターゲットは、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相と、Cu11In化合物相と、が存在し、前記In単体相及び前記Cu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内とされ、前記Cu11In化合物相の平均粒径が150μm以下とされ、酸素量が500質量ppm以下とされ、理論密度比が85%以上とされている。

Description

スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法
 本発明は、In-Cu合金の薄膜を成膜する際に用いられるスパッタリングターゲット、及び、このスパッタリングターゲットの製造方法に関する。
 本願は、2015年10月26日に、日本に出願された特願2015-210173号、及びに2016年10月18日に、日本に出願された特願2016-204630号基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
 従来、化合物半導体からなる薄膜太陽電池として、Cu-In-Ga-Se系合金薄膜からなる光吸収層を備えたCIGS系太陽電池が広く提供されている。
ここで、Cu-In-Ga-Se系合金薄膜からなる光吸収層を形成する方法として、蒸着法により成膜する方法が知られている。蒸着法によって成膜された光吸収層を備えた太陽電池は、エネルギー交換効率が高いといった利点を有しているものの、成膜速度が遅く、生産効率が低いといった問題があった。
 そこで、Cu-In-Ga-Se系合金薄膜からなる光吸収層を形成する方法として、InとCuとGaを含む薄膜又はこれらの元素を含む薄膜の積層膜を形成し、この薄膜又は積層膜をSe雰囲気中で熱処理してセレン化する方法が提供されている。InとCuとGaを含む薄膜又はこれらの元素を含む薄膜の積層膜を形成する際には、各元素を含有したスパッタリングターゲットを用いたスパッタ法が適用される。
 ここで、特許文献1には、0.5~7.5at%のCuを含むインジウムターゲットが提案されている。
 特許文献2には、30~80原子%のCuを含むIn-Cu合金スパッタリングターゲットが提案されている。
 特許文献3には、銅及びインジウムを有するスパッタリングターゲットが提案されている。
特開2012-052190号公報 特開2012-079997号公報 特表2014-503687号公報
 ところで、特許文献1に記載されたインジウムターゲットにおいては、Cuの含有量が少なく、In単体相が多く存在している。インジウムは、非常に柔らかいことから、切削加工した際に、加工屑がターゲット表面に付着してしまう。このため、切削時に切削油を多量に供給したり、加工速度を遅くしたりする必要があった。
 しかしながら、切削油を多量に供給した場合には、切削油成分が不純物として成膜した膜に混入するおそれがあった。切削油を除去するために洗浄工程を追加した場合には、工程が増え、生産コストが増大してしまう。また、加工速度を遅くした場合には、生産効率が低下してしまうといった問題があった。
 また、特許文献1では、原料であるインジウム及び銅を溶解する温度が260~320℃と比較的低いため、Cuの一部が溶け残って異相となり、スパッタ時に異常放電が発生しやすくなる。このため、Cuの添加量を増加させることができなかった。
 また、特許文献2に示すように、Cuを30~80原子%を含有させた場合には、圧延加工が困難となるため、上述のIn-Cu合金スパッタリングターゲットは粉末焼結法によって製造される。ここで、スパッタ時の異常放電を抑制するためには、スパッタリングターゲットの結晶粒径を微細化する必要がある。しかしながら、焼結に用いる原料粉末を微細化した場合、ターゲット中の酸素量が上昇し、異常放電が発生しやすくなるといった問題があった。
 さらに、特許文献3においては、CuとInとともにGaを含有したものを対象としており、Cuの含有量も多い。このため、延性が不十分であり、加工時に割れ等が発生するおそれがあり、生産効率が非常に悪かった。
 この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、In-Cu合金からなり、加工性に優れるとともに、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することが可能なスパッタリングターゲット、及び、このスパッタリングターゲットの製造方法を提供することを目的とする。
 上記課題を解決するために、本発明の一態様であるスパッタリングターゲットは、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相と、Cu11In化合物相と、が存在し、前記In単体相及び前記Cu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内とされ、前記Cu11In化合物相の平均粒径が150μm以下とされ、酸素量が500質量ppm以下とされ、理論密度比が85%以上とされていることを特徴としている。
 上述の構成のスパッタリングターゲットによれば、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相と、In単体相よりも硬いCu11In化合物相と、が存在しているので、Cu11In化合物相が破壊の起点となり、切削加工性が大幅に向上する。
また、前記In単体相及び前記Cu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内とされているので、延性に優れたIn単体相と、破壊の起点となるCu11In化合物相と、がバランスよく存在しており、加工時の割れや欠けの発生を抑制できるとともに、切削加工性を確実に向上させることが可能となる。
 さらに、本発明の一態様であるスパッタリングターゲットにおいては、前記Cu11In化合物相の平均粒径が150μm以下とされているので、切削加工時におけるチッピングの発生を抑制できるとともに、チッピング跡に起因する異常放電の発生を抑制することができる。
 また、本発明の一態様であるスパッタリングターゲットにおいては、酸素量が500質量ppm以下とされ、理論密度比が85%以上とされているので、スパッタ時の異常放電の発生を抑制でき、安定して成膜を行うことが可能となる。
 ここで、本発明の一態様であるスパッタリングターゲットにおいては、前記In単体相の平均粒径が1mm以下とされていることが好ましい。
 この場合、In単体相の平均粒径が1mm以下と比較的微細とされているので、スパッタによってターゲット面が消費された場合でも、ターゲット面の凹凸が抑えられ、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することができる。
 また、本発明の一態様であるスパッタリングターゲットにおいては、さらにNa化合物としてNaF、NaCl、NaS、NaSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このNa化合物の平均粒径が10μm以下とされていることが好ましい。
 この場合、上述のNa化合物を含有しているので、アルカリ金属であるNaを含む薄膜を成膜することができる。また、Na化合物の平均粒径が10μm以下とされているので、スパッタ時の異常放電の発生を抑制できる。
 さらに、本発明の一態様であるスパッタリングターゲットにおいては、さらにK化合物としてKF、KCl、KS、KSeのうちの1種又は2種を含有し、このK化合物の平均粒径が10μm以下とされていることが好ましい。
 この場合、上述のK化合物を含有しているので、アルカリ金属であるKを含む薄膜を成膜することができる。また、K化合物の平均粒径が10μm以下とされているので、スパッタ時の異常放電の発生を抑制できる。
 ここで、Cu-In-Ga-Se系合金薄膜を光吸収層として有する太陽電池において、Cu-In-Ga-Se系合金薄膜にアルカリ金属を添加すると、変換効率が向上する。そこで、上述のように、アルカリ金属であるNaを含むNa化合物、あるいは、アルカリ金属であるKを含むK化合物を含むスパッタリングターゲットを用いて、Cu-In-Ga-Se系合金薄膜を形成することにより、変換効率に優れた太陽電池を製造することが可能となる。
 本発明の一態様であるスパッタリングターゲットの製造方法は、上述のスパッタリングターゲットの製造方法であって、噴射温度700℃以上900℃以下のガスアトマイズにより、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相と、Cu11In化合物相と、が存在し、前記In単体相及び前記Cu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内とされ、酸素濃度が500質量ppm以下であり、平均粒径が125μm以下とされたIn-Cu合金粉を準備するIn-Cu合金粉準備工程と、前記In-Cu合金粉を含む原料粉末を焼結する焼結工程と、を備えていることを特徴としている。
 この構成のスパッタリングターゲットの製造方法によれば、上述の組成を有し、In単体相と、Cu11In化合物相と、が存在し、前記In単体相及び前記Cu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内とされ、平均粒径が125μm以下とされたIn-Cu合金粉を用いているので、上述した本発明のスパッタリングターゲットを製造することができる。
 また、本発明の一態様であるスパッタリングターゲットの製造方法は、上述のスパッタリングターゲットの製造方法であって、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成となるように、Cu原料とIn原料とを秤量する原料配合工程と、前記Cu原料及びIn原料を1100℃以上に加熱して溶解して溶湯を形成する溶解工程と、前記溶湯を鋳型に注湯し、10℃/min以上の冷却速度で50℃以下にまで冷却する鋳造工程と、を備えていることを特徴としている。
 この構成のスパッタリングターゲットの製造方法によれば、Cu原料及びIn原料を1100℃以上に加熱する溶解工程を備えているので、Cu原料を完全溶解することができる。また、10℃/min以上の冷却速度で50℃以下にまで冷却する鋳造工程を備えているので、結晶組織が微細となり、Cu11In化合物相の平均粒径を150μm以下とすることが可能となる。また、In単体相及びCu11In化合物相をバランス良く形成することができ、上述した本発明のスパッタリングターゲットを製造することができる。
 本発明によれば、In-Cu合金からなり、加工性に優れるとともに、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することが可能なスパッタリングターゲット、及び、このスパッタリングターゲットの製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットの組織観察写真の一例である。図1(a)は反射電子組成像、図1(b)はCuの元素マッピング像、図1(c)はInの元素マッピング像である。 本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットのXRD結果の一例である。 本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法(溶解鋳造法)を示すフロー図である。 本発明の一実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法(粉末焼結法)を示すフロー図である。
 以下に、本発明の実施形態であるスパッタリングターゲット、及び、スパッタリングターゲットの製造方法について、添付した図面を参照して説明する。
 本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有する。さらに、酸素量が500質量ppm以下に制限されている。
 本実施形態に係るスパッタリングターゲットにおいては、理論密度比(上述の組成比から算出される理論密度に対する相対密度)が85%以上とされている。
 本実施形態に係るスパッタリングターゲットにおいては、図1及び図2に示すように、In単体相と、Cu11In化合物相が存在している。そして、図2に示すように、In単体相及びCu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)(以下、In単体相及びCu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)をIn単体相の存在比と表記することもある)が0.01以上3以下の範囲内とされている。
 ここで、Cu11In化合物相の平均粒径が150μm以下とされ、In単体相の平均粒径が1mm以下とされている。
 また、本実施形態においては、さらにNa化合物としてNaF、NaCl、NaS、NaSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このNa化合物の平均粒径が10μm以下とされていてもよい。
 また、さらにK化合物としてKF、KCl、KS、KSeのうちの1種又は2種を含有し、このK化合物の平均粒径が10μm以下とされていてもよい。
 以下に、本実施形態であるスパッタリングターゲットにおいて、Inの含有量、In単体相とCu11In化合物相のXRDピーク比、Cu11In化合物相の粒径、In単体相の粒径、酸素量、理論密度比、Na化合物およびK化合物について、上述のように規定した理由について説明する。
(In:45原子%以上90原子%以下)
 InにCuを添加することにより、Inよりも硬いCu11In化合物相が形成され、切削加工性を大幅に向上させることが可能となる。また、結晶粒径を微細化させることが可能となる。
 ここで、Inの含有量が45原子%未満であると、In単体相が少なくなり、ターゲットの密度を高くすることが困難となるおそれがある。一方、Inの含有量が90原子%を超えると、Cu11In化合物相が十分に形成されず、切削加工性を向上させることができないおそれがある。
 このような理由から、本実施形態においては、Inの含有量を45原子%以上90原子%以下の範囲内に設定している。
 なお、Inの含有量を70原子%以上とすることにより、圧延加工が可能となるため、スパッタリングターゲットの生産効率を大幅に向上させることができる。Inの含有量は、55原子%以上80原子%以下の範囲内に設定することが好ましく、60原子%以上70原子%以下の範囲内に設定することがより好ましいが、これに限定されることはない。
(In単体相及びCu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In):0.01以上3以下)
 上述のI(In)/I(Cu11In)が0.01未満の場合には、延性に優れたIn単体相の割合が少なく、加工時に割れや欠けが発生するおそれがある。一方、I(In)/I(Cu11In)が3を超える場合には、Cu11In化合物相の割合が少なくなり、切削加工性を十分に向上させることができなくなるおそれがある。
 このような理由から、本実施形態においては、In単体相及びCu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)を0.01以上3以下の範囲内に設定している。In単体相及びCu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)は、0.1以上2.5以下の範囲内に設定することが好ましく、0.5以上2以下の範囲内に設定することがより好ましいが、これに限定されることはない。
 本実施形態においては、I(Cu11In)を、Cu11In(DBカード01-065-4963)の(313)面に帰属されるピーク強度とする。
 また、I(In)を、In(DBカード01-074-6393)の(110)面に帰属されるピーク強度とする。なお、Inのメインピークは(101)であるが、Cu11Inの(310)のピークと重なることから、I(In)の算出には、(110)面を用いる。
(Cu11In化合物相の平均粒径:150μm以下)
 上述のように、Cu11In化合物相が存在することにより、切削加工性が向上する。ただし、このCu11In化合物相の平均粒径が150μmを超えて粗大になると、切削加工時にチッピングの原因となる。また、このチッピング跡に起因してスパッタ時に異常放電が発生するおそれがある。
 このような理由から、本実施形態においては、Cu11In化合物相の平均粒径を150μm以下に制限している。
 なお、チッピングの発生を確実に抑制するためには、Cu11In化合物相の平均粒径を100μm以下とすることが好ましい。また、Cu11In化合物相の平均粒径の下限には特に制限はないが、切削加工性を確実に向上させるためには、1μm以上とすることが好ましい。Cu11In化合物相の平均粒径は、30μm以下とすることがより好ましいが、これに限定されることはない。
(In単体相の平均粒径:1mm以下)
 上述のように、Cuを適量添加することにより、溶解鋳造法で製造した場合であっても、In単体相の粒径は微細化される。また、粉末焼結法で製造する場合には、粉末原料の粒径を1mm以下とすればよい。
 ここで、In単体相の平均粒径を1mm以下に制限することで、異常放電の発生を抑制することが可能となる。
 なお、異常放電の発生を確実に抑制するためには、In単体相の平均粒径を5μm以下とすることが好ましい。また、In単体相の平均粒径の下限には特に制限はないが、0.010μm以上とすることが好ましい。
(酸素量:500質量ppm以下)
 スパッタリングターゲット中の酸素量が500質量ppmを超えると、ターゲット組織中に存在する酸化物に起因して異常放電や、ノジュールが発生しやすくなる。このため、本実施形態では、スパッタリングターゲット中の酸素量を500質量ppm以下に制限している。なお、粉末焼結法において、粉末原料の粒径を微細化すると比表面積が増加し、原料粉末中の酸素量が多くなる傾向にあることから、スパッタリングターゲット中の酸素量を低減するには、後述するように粉末原料の作製条件を規定する必要がある。スパッタリングターゲット中の酸素量の下限には特に制限はないが、10質量ppm以上とすることが好ましい。スパッタリングターゲット中の酸素量は、300質量ppm以下であることが好ましく、150質量ppm以下であることがより好ましいが、これに限定されることはない。
(理論密度比:85%以上)
 スパッタリングターゲットの理論密度比が85%未満であると、空隙が多く存在することになり、スパッタ時に異常放電が発生しやすくなるおそれがある。そこで、本実施形態においては、理論密度比を85%以上に規定している。
 なお、理論密度は、Cu/In比によって変動する。そのため、本実施形態においては、当該Cu/In比の溶湯を溶製し、これを鋳造して徐冷(冷却速度5℃/min以下)することで得られた無欠陥の鋳塊(10cm×10cm×10cm)の密度を、「理論密度」とした。
(Na化合物及びK化合物:平均粒径10μm以下)
 スパッタリングターゲットに、Na化合物あるいはK化合物を含有させることにより、成膜されたIn膜中にアルカリ金属を含有させることができる。ここで、Cu-In-Ga-Se系合金薄膜を光吸収層として有する太陽電池においては、Cu-In-Ga-Se系合金薄膜にアルカリ金属を添加することにより、変換効率が大きく向上する。このため、本実施形態であるスパッタリングターゲットに、Na化合物あるいはK化合物を含有させてもよい。なお、Na化合物及びK化合物の含有量については、Na、K成分でそれぞれ0.1原子%以上10原子%以下の範囲内とすることが好ましい。0.1原子%未満の場合には添加による変換効率の向上効果が得られにくくなり、10原子%を超える場合にはNa化合物あるいはK化合物に起因する異常放電が多発し、スパッタが困難となるおそれがある。Na化合物及びK化合物の含有量は、Na、K成分でそれぞれ0.2原子%以上3原子%以下の範囲内とすることが好ましいが、これに限定されることはない。
 ここで、Na化合物あるいはK化合物の平均粒径が10μmを超えると、スパッタ時に異常放電が発生するおそれがある。このため、本実施形態では、Na化合物及びK化合物を含有させる場合には、これらの平均粒径を10μm以下に制限している。Na化合物あるいはK化合物の平均粒径の下限には特に制限はないが、1μm以上とすることが好ましい。Na化合物あるいはK化合物の平均粒径は、5μm以下であることが好ましいが、これに限定されることはない。
 次に、本実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法について説明する。本実施形態であるスパッタリングターゲットは、粉末焼結法によって製造することができる。また、Inの含有量が70原子%以下であれば、溶解鋳造法によって製造することも可能となる。
 以下に、溶解鋳造法、及び、粉末焼結法による製造方法について、図3及び図4のフロー図を参照して説明する。
<溶解鋳造法>
 まず、図3に示すように、Cu原料とIn原料とを準備し、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成となるように、Cu原料とIn原料とを秤量する(原料配合工程S11)。
 次に、秤量されたCu原料及びIn原料を、真空溶解炉等を用いて溶解する(溶解工程S12)。
 ここで、溶解温度を1100℃未満とした場合には、Cu原料が完全に溶解せず、ターゲット組織中のCu11In化合物相の粒径が大きくなり、異常放電が発生しやすくなる。このため、本実施形態では、溶解温度を1100℃以上に設定している。また、溶解は、真空中あるいは不活性ガス雰囲気にて行う。真空中で行う場合には、真空度を10Pa以下とすることが好ましい。不活性ガス雰囲気で行う場合には、真空置換を行い、このときの真空度を10Pa以下とすることが好ましい。このように真空度を規定することにより、鋳塊中の酸素量を低減させることが可能となる。溶解温度は、1100℃以上1300℃以下に設定することが好ましく、1150℃以上1200℃以下に設定することがより好ましいが、これに限定されることはない。
 次に、得られた溶湯を、鋳型に注湯して鋳造する(鋳造工程S13)。鋳造工程S13では、溶湯を10℃/min以上の冷却速度で50℃以下にまで冷却する。
 ここで、鋳造時の冷却速度が10℃/min未満の場合には、Cu11In化合物相が十分に分散されず、加工性が向上しないおそれがある。また、Cu11In化合物相が粗大化し、異常放電の原因となる。このため、本実施形態では、鋳造時の冷却速度を10℃/min以上に設定している。また、鋳込みの際に、引け巣の発生による密度の低下を防ぐため、鋳込み後に押し湯を行った。鋳造時の冷却速度は、10℃/min以上30℃/min以下に設定することが好ましく、15℃/min以上20℃/min以下に設定することがより好ましいが、これに限定されることはない。
 このように得られた鋳塊に対して、熱間圧延、旋盤加工、フライス加工等を行う(機械加工工程S14)。これにより、所定形状のスパッタリングターゲットを得る。
<粉末焼結法>
 まず、図4に示すように、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相と、Cu11In化合物相と、が存在し、前記In単体相及び前記Cu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内とされ、平均粒径が125μm以下とされたIn-Cu合金粉を準備する(In-Cu合金粉準備工程S21)。
 このIn-Cu合金粉準備工程S21においては、まず、Cu原料とIn原料を準備し、上述の組成となるように配合して溶解後、ガスアトマイズ法によって粉状化し、孔径125μmの篩を用いて分級することにより、上述のIn-Cu合金粉を得る。
 なお、得られたIn-Cu合金粉については、In単体相及びCu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内となっていることを確認する。
 ガスアトマイズの条件としては、Ar置換の際の到達真空度を10Pa以下、溶解時の温度を1100℃以上1200℃以下、噴射温度を700℃以上900℃以下、噴射ガス圧を15gf/cm以上40kgf/cm以下、ノズル径を0.5mm以上3mm以下とする。
 ここで、ガスアトマイズの噴射温度が700℃未満の場合、Cu11In化合物相の生成の割合が増加し、Inの生成量が低下するおそれがある。このため、Inの含有量が45~55原子%と比較的少ない場合には、特に注意が必要である。また、アトマイズ時にるつぼが閉塞しやすくなる。一方、噴射温度が900℃を超えると、得られた原料粉末のInの割合がIn-Cu状態図から得られる割合に比べて多くなり、Cu11In化合物相が不足し、切削加工性が向上しないおそれがある。また、アトマイズ時にチャンバー内に粉が付着し、粉の収率が低下するおそれがある。以上のことから、本実施形態では、ガスアトマイズの噴射温度700~900℃の範囲内に設定している。ガスアトマイズの噴射温度は、750~850℃の範囲内に設定することが好ましく、750~800℃の範囲内に設定することがより好ましいが、これに限定されることはない。
 また、Ar置換の際の到達真空度を10Pa以下とすることで、製造されたIn-Cu合金粉中の酸素量を500質量ppm以下にすることが可能となる。Ar置換の際の到達真空度は、0.1Pa以上5Pa以下にすることが好ましく、0.5Pa以上1Pa以下にすることがより好ましいが、これに限定されることはない。
 なお、得られた粉を125μm以下の篩で分級した。In-Cu合金粉の平均粒径は、5μm以上50μm以下にすることが好ましく、20μm以上30μm以下にすることがより好ましいが、これに限定されることはない。
 次に、得られたIn-Cu合金粉をモールド内に充填し、加圧焼結を行う(焼結工程S22)。この焼結工程S22においては、加熱温度をInの融点よりも10~40℃低い温度とし、圧力を200~1000kg/cm、保持時間を1~3時間とする。また、焼結時の雰囲気を10Pa以下の真空中あるいは、Ar等の不活性ガス中にすることで、原料粉の酸化を防ぎ、焼結体においても酸素濃度が500質量ppm以下に制御することが可能である。なお不活性ガス雰囲気にて行う場合は、不活性ガスを真空置換により導入した。このときの到達真空度は10Pa以下とした。さらに125μm以下に分級された原料粉を用いるので、焼結体においても、平均粒径が150μm以下の焼結体を得ることが可能になる。以上の条件により理論密度比が85%以上の焼結体を得ることが可能となる。
 このように得られた焼結体に対して、旋盤加工、フライス加工等を行う(機械加工工程S23)。これにより、所定形状のスパッタリングターゲットを得る。
 以上のような構成とされた本実施形態に係るスパッタリングターゲットによれば、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相よりも硬いCu11In化合物相を有しているので、切削加工時にCu11In化合物相が破壊の起点となり、切削加工性を大幅に向上させることが可能となる。
 また、本実施形態においては、In単体相及びCu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上とされているので、In単体相が十分に存在して延性が確保されることから、加工時における割れ等の発生を抑制することができる。また、I(In)/I(Cu11In)が3以下の範囲内とされているので、Cu11In化合物相が十分に存在し、切削加工性を確実に向上させることができる。
 さらに、本実施形態においては、Cu11In化合物相の平均粒径が150μm以下とされているので、切削加工時におけるチッピングの発生を抑制できるとともに、チッピング跡に起因する異常放電の発生を抑制することができる。
 また、本実施形態においては、酸素量が500質量ppm以下とされ、理論密度比が85%以上とされているので、スパッタ時の異常放電の発生を抑制でき、安定して成膜を行うことが可能となる。
 さらに、本実施形態においては、In単体相の平均粒径が1mm以下と比較的微細とされているので、スパッタの進行によってターゲット面が消費された場合でも、ターゲット面の凹凸が抑えられ、異常放電の発生を抑制することができる。
 また、本実施形態において、さらにNa化合物としてNaF、NaCl、NaS、NaSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このNa化合物の平均粒径が10μm以下とされている場合、あるいは、K化合物としてKF、KCl、KS、KSeのうちの1種又は2種を含有し、このK化合物の平均粒径が10μm以下とされている場合には、アルカリ金属を含むIn膜を成膜することができる。このIn膜を用いてCu-In-Ga-Se系合金薄膜を成膜することで、CIGS系太陽電池の変換効率を向上させることが可能となる。
 さらに、Na化合物及びK化合物の平均粒径が10μm以下に制限されているので、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することができる。
 また、溶解鋳造法を用いた本実施形態であるスパッタリングターゲットの製造方法によれば、1100℃以上に加熱する溶解工程S12を備えているので、Cu原料を完全溶解することができる。また、溶湯を10℃/min以上の冷却速度で50℃以下にまで冷却する鋳造工程S13を備えているので、結晶組織が微細となり、Cu11In化合物相の平均粒径を150μm以下とすることが可能となる。また、これら溶解工程S12及び鋳造工程S13により、In単体相及びCu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)を0.01以上3以下の範囲内とすることができる。
 さらに、粉末焼結法を用いた本実施形態であるスパッタリングターゲットの製造方法によれば、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相と、Cu11In化合物相と、が存在し、前記In単体相及び前記Cu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内とされ、平均粒径が125μm以下とされたIn-Cu合金粉を準備するIn-Cu合金粉準備工程S21を備えている。このIn-Cu合金粉準備工程S21においては、ガスアトマイズ法を適用しており、ガスアトマイズの噴射温度を700~900℃の範囲内に設定しているので、In単体相とCu11In化合物相をバランスよく含有したIn-Cu合金粉を得ることができる。
 そして、このIn-Cu合金粉をモールド内に充填し、加圧焼結する焼結工程S22を備えているので、上述の本実施形態であるスパッタリングターゲットを製造することができる。
 以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
 例えば、本実施形態では、In単体相の平均粒径を1mm以下としたものとして説明したが、これに限定されることはない。
 以下に、本発明に係るスパッタリングターゲット、及び、スパッタリングターゲットの製造方法の作用効果について評価した評価試験の結果について説明する。
<本発明例1~19及び比較例1~8>
 本発明例1~19及び比較例1~8に関する評価用のスパッタリングターゲットを粉末焼結法によって製造した。
 純度99.99mass%以上のCu金属塊と、純度99.99mass%以上のIn金属塊を用意した。これらの原料を、表1に示す配合比で全体重量が1200gとなるように秤量した。秤量した原料を、カーボン坩堝に充填して溶解した後、実施形態で記載した条件のガスアトマイズ法により、In-Cu合金粉を作製した。なお、比較例4以外のアトマイズ時のノズル径は1.5mmとした。
 得られたIn-Cu合金粉と、Cu粉と、必要に応じてアルカリ金属化合物粉を、表1に示す配合比でロッキングミキサーを用いて混合した。
 そして、この混合粉を、表2に示す条件で加圧焼結を行った。得られた焼結体を、旋盤とフライス盤とを用いて126mm×178mm×6mmtサイズのスパッタリングターゲットに加工した。
 比較例3、4、5、6、7では、上記の製造方法から以下の条件を変更した。比較例3では、アトマイズ時の噴射温度を680℃とした。比較例4では、アトマイズ時のノズル径を3mmにし、アトマイズ後の篩に1000μmの篩いを用いた。比較例5では、アトマイズ時の到達真空度を100Paとした。比較例6、7では、In-Cu合金粉準備工程において、平均粒径50μmのアルカリ金属化合物粉を原料として用い、ロッキングミキサーで85rpm、30分間、原料の混合を行った。
<本発明例20、21及び比較例9~11>
 本発明例20、21及び比較例9~11に関する評価用のスパッタリングターゲットを溶解鋳造法によって製造した。
 純度99.99mass%以上のCu金属塊と、純度99.99mass%以上のIn金属塊を用意した。表3に示す配合比で全体重量が3500gとなるように秤量した。
 秤量した原料を、カーボン坩堝に充填して、表3に示す雰囲気及び温度、保持時間で溶解した後、170mm×220mm×11mmtのモールドに鋳込むとともに、引け巣の生成を防ぐために適宜溶湯を足した。その後、表3に示す冷却速度で50℃まで冷却した。
 得られたインゴットを、旋盤とフライス盤とを用いて126mm×178mm×6mmtサイズのスパッタリングターゲットに加工した。
(In単体相存在比)
 まず、In-Cu合金粉及びスパッタリングターゲットのIn単体相及びCu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)を以下のようにして求めた。
 In-Cu合金粉については、得られたIn-Cu合金粉を加工せずにそのまま測定試料として用いた。スパッタリングターゲットについては、破片を採取し、SiC-Paper(grit 1000)にて湿式研磨し、乾燥後、測定試料とした。そして、以下の条件で測定した。
 装置:理学電気社製(RINT-Ultima/PC)
 管球:Cu
 管電圧:40kV
 管電流:40mA
 走査範囲(2θ):10°~80°
 スリットサイズ:発散(DS)2/3度、散乱(SS)2/3度、受光(RS)0.8mm
 測定ステップ幅:2θで0.02度
 スキャンスピード:毎分2度
 試料台回転スピード:30rpm
 以上の条件で取得した回折パターン(図2参照)におけるIn単体相の(110)面に帰属されるピーク強度とCu11In化合物相の(313)面に帰属されるピーク強度から、In単体相の存在比を下記の計算式で求めた。In-Cu合金粉の測定結果を表1に、スパッタリングターゲットの評価結果を表4、表5に示す。
 (In単体相の存在比)=I(In)/I(Cu11In
 ここで、I(In)は、In(DBカード01-074-6393)の(110)面に帰属されるピーク強度を示し、I(Cu11In)は、In(DBカード03-065-4963)の(313)面に帰属されるピーク強度を示す。
(酸素含有量)
 In-Cu合金粉及びスパッタリングターゲットの酸素含有量を、JIS Z 2613「金属材料の酸素定量方法通則」に記載された赤外線吸収法に準拠し、LECO社製TC600を用いて測定した。In-Cu合金粉の測定結果を表1に、スパッタリングターゲットの評価結果を表4、表5に示す。
(スパッタリングターゲットの組成)
 得られたスパッタリングターゲットの破片を酸で前処理した後、ICP発光分光分析装置(Agilent Technologies社製 725-ES)によってIn,Na,Kの組成分析を行った。Cu及びその他の成分については、残部として記載した。評価結果を表4、表5に示す。
(In単体相、Cu11In化合物相、アルカリ金属化合物の平均粒径)
 得られたスパッタリングターゲットの加工表面に対してクロスセッションポリッシャ加工(CP加工)を行い、プローブマイクロアナライザ(EPMA)装置(日本電子株式会社製)を用いて、1000倍でCu,Inの元素マッピング像(図1参照)をそれぞれ5枚撮影し、CuとInの元素マッピング像から、Cu,Inが共通して存在している領域をCu11In化合物相、Inのみが存在している領域をIn単体相と定義した。なお、サンプルの加工は、研磨加工でもよいが、研磨材のダイヤモンドやSiC等がIn単体相に食い込んでしまうおそれがあることから好ましくない。
 Cuの元素マッピング像の5枚の写真を縦方向に横切る線分を引き、線分の中でIn単体相とCu11In化合物相が存在している長さと個数をそれぞれ測定し、下記の計算式にしたがって粒径を算出した。
 (In単体相の粒径)=(In単体相の長さの合計値/In単体相の個数)
 (Cu11In化合物相の粒径)=(Cu11In化合物相の長さの合計値/Cu11In化合物相の個数)
 同様の操作を横方向に対しても行い、得られた値の平均をその写真におけるIn単体相及びCu11In化合物相の粒径とした。また、アルカリ金属化合物の粒径についても、上述と同様の方法により、算出した。評価結果を表4、表5に示す。
(理論密度比)
 スパッタリングターゲットの理論密度比を、以下のようにして算出した。
 得られたスパッタリングターゲットに対応する組成比のCu-In金属を1200℃で溶解し、これを鋳造して徐冷(冷却速度5℃/min以下)することで得られた無欠陥の鋳塊(10cm×10cm×10cm)の密度を、「理論密度」とした。本実施例では、理論密度を以下のように設定した。
・Inの含有量が95原子%より多く100原子%以下のとき7.31kg/m
・Inの含有量が90原子%より多く95原子%以下のとき7.43kg/m
・Inの含有量が85原子%より多く90原子%以下のとき7.55kg/m
・Inの含有量が80原子%より多く85原子%以下のとき7.66kg/m
・Inの含有量が75原子%より多く80原子%以下のとき7.78kg/m
・Inの含有量が70原子%より多く75原子%以下のとき7.90kg/m
・Inの含有量が65原子%より多く70原子%以下のとき8.02kg/m
・Inの含有量が60原子%より多く65原子%以下のとき8.14kg/m
・Inの含有量が55原子%より多く60原子%以下のとき8.26kg/m
・Inの含有量が50原子%より多く55原子%以下のとき8.37kg/m
・Inの含有量が45原子%より多く50原子%以下のとき8.49kg/m
・Inの含有量が45原子%のとき8.61kg/m
 この理論密度と、得られたスパッタリングターゲットの測定密度と、を用いて、理論密度比を算出した。評価結果を表4、表5に示す。
  理論密度比(%)=(測定密度)/(理論密度)×100
(加工性:切り屑の付着)
 スパッタリングターゲットに旋盤加工を行い、加工時の切り屑の付着の有無を目視観察した。なお、加工条件は以下のとおりとした。評価結果を表6、表7に示す。
 工具:超硬インサート(三菱マテリアル株式会社製TNMG160404-MJVP05RT)
 送り:0.7~1mm/rpm
 回転数:70~100rpm
 1回の切込量:1~2mm
 切削環境:乾式
(加工性:チッピングサイズ)
 上記の加工で得られたスパッタリングターゲットの端部のチッピングの有無を確認した。チッピングが発生した場合には、スパッタリングターゲットの端面から欠けた部分の最大距離をデジタルノギスで測定した。このとき、チッピングが面している面のうち、欠けた部分が最も大きい面に対して測定を行った。評価結果を表6、表7に示す。
(加工性:表面粗さ)
 上述と同様の条件で旋盤加工を行い、加工後の表面のツールマークに対して直交方向の線分にて、Mitutoyo社製サーフテストSV-3000H4を用いて表面粗さRaの測定を行った。測定は、1サンプルに対して、スパッタリングターゲットの端部から15mm以内の領域の4箇所で行い、その平均値をそのサンプルの表面粗さ(算術平均粗さ)Raとした。評価結果を表6、表7に示す。
(異常放電)
 得られたスパッタリングターゲットを用いて、次のような条件でスパッタによる成膜を行った。DCマグネトロンスパッタ装置により、スパッタガスとしてArガスを用いて、流量50sccm,圧力0.67Paとし、投入電力として、2W/cm(低出力)及び6W/cm(高出力)の2条件の電力にて、それぞれ30分間のスパッタを行い、DC電源装置(京三製作所社製HPK06Z-SW6)に備えられているアークカウント機能により、異常放電の回数をカウントした。評価結果を表6、表7に示す。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 Inの含有量を100原子%とした比較例1及び比較例10においては、In単体相の平均粒径が1mmを超えていた。また、切り屑の付着が観察され、切削加工に時間を要した。さらに、スパッタ評価を行うことができなかった。
 また、Inの含有量が95原子%と本発明の範囲よりも多い比較例2についても、比較例1と同様の結果となった。
 比較例3においては、In-Cu合金粉を製造する際のアトマイズ温度を680℃をとしており、In単体相の存在比が本発明の範囲よりも低くなった。この比較例3においては、加圧焼結時のバインダーの役割を果たすInの存在比が低いために、理論密度比が低くなり、チッピングが認められた。また、異常放電の発生回数も多かった。
 Cu11In化合物相の平均粒径が本発明の範囲よりも大きい比較例4においては、比較的大きなチッピングが認められ、表面粗さRaも比較的大きくなった。また、低電力条件でも異常放電の発生回数が多かった。
 比較例5においては、アトマイズ時の到達真空度が低いために酸素濃度が高くなり、酸素濃度が本発明の範囲よりも多くなったため、理論密度比が小さく、チッピングが認められた。また、高電力条件での異常放電回数が多くなった。
 アルカリ金属化合物の平均粒径が大きい比較例6、7においては、スパッタ時の異常放電回数が多く、高電力条件ではスパッタを継続することができなかった。
 Inの含有量が40原子%と本発明の範囲よりも少なく、粉末焼結法によって製造された比較例8においては、In単体相が形成されず、大きなチッピングが認められ、スパッタ中に割れが発生した。このため、異常放電回数については評価できなかった。
 Inの含有量が40原子%と本発明の範囲よりも少なく、溶解鋳造法によって製造された比較例9においては、加工中に割れが発生した。
 鋳造時の冷却速度が本発明の範囲よりも遅い比較例11においては、Cu11In化合物相の平均粒径が非常に大きくなり、加工中に割れが発生した。
 これに対して、粉末焼結法で製造された本発明例1-19、溶解鋳造法で製造された本発明例20、21においては、切り屑の付着、チッピングの発生も認められず、表面粗さも十分小さくなっており、切削加工性に優れていた。また、スパッタ時の異常放電回数も少なく、安定してスパッタ成膜が可能であることが確認された。
 本発明によれば、In-Cu合金からなり、加工性に優れるとともに、スパッタ時の異常放電の発生を抑制することが可能なスパッタリングターゲット、及び、このスパッタリングターゲットの製造方法を提供することが可能である。
S11 原料配合工程
S12 溶解工程
S13 鋳造工程
S21 In-Cu合金粉準備工程
S22 焼結工程

Claims (6)

  1.  Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、
     In単体相と、Cu11In化合物相と、が存在し、前記In単体相及び前記Cu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内とされ、
     前記Cu11In化合物相の平均粒径が150μm以下とされ、酸素量が500質量ppm以下とされ、理論密度比が85%以上とされていることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  2.  前記In単体相の平均粒径が1mm以下とされていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
  3.  さらにNa化合物としてNaF、NaCl、NaS、NaSeのうちの1種又は2種以上を含有し、このNa化合物の平均粒径が10μm以下とされていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスパッタリングターゲット。
  4.  さらにK化合物としてKF、KCl、KS、KSeのうちの1種又は2種を含有し、このK化合物の平均粒径が10μm以下とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  5.  請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法であって、
     噴射温度700℃以上900℃以下のガスアトマイズにより、Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成を有し、In単体相と、Cu11In化合物相と、が存在し、前記In単体相及び前記Cu11In化合物相のXRDのピーク比I(In)/I(Cu11In)が0.01以上3以下の範囲内とされ、酸素濃度が500質量ppm以下であり、平均粒径が125μm以下とされたIn-Cu合金粉を準備するIn-Cu合金粉準備工程と、
     前記In-Cu合金粉を含む原料粉末を焼結する焼結工程と、
     を備えていることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  6.  請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法であって、
     Inを45原子%以上90原子%以下の範囲で含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる組成となるように、Cu原料とIn原料とを秤量する原料配合工程と、
     前記Cu原料及びIn原料を1100℃以上に加熱して溶解して溶湯を形成する溶解工程と、
     前記溶湯を鋳型に注湯し、10℃/min以上の冷却速度で50℃以下にまで冷却する鋳造工程と、
     を備えていることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
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