JP6176535B2 - スパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、主成分としてCu、Gaを含有する化合物膜を形成するときに使用するスパッタリングターゲット及びその製造方法に関するものである。
従来、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットは、いわゆる、セレン(Se)化法により、Cu−In−Ga−Se四元系合金膜(CIGS膜)を光吸収層に用いた太陽電池を製造するために、必須な材料である。なお、セレン化法とは、例えば、Cu−Ga合金膜を約500nmの厚さにスパッタリングし、その膜上に、In膜を約500nmの厚さにスパッタリングして積層し、これらの膜を、500℃のHSeガス雰囲気中で加熱して、SeをCu−Ga合金膜とIn膜とに拡散させ、Cu−In−Ga−Se四元系の化合物膜を形成する方法である(例えば、特許文献1、2を参照)。
一方、Cu−In−Ga−Se四元系合金膜からなる光吸収層の発電効率を向上させるため、この光吸収層中に、ナトリウム(Na)を添加することが提案されている(例えば、特許文献2、非特許文献1を参照)。ここには、プリカーサー膜(Cu−In−Ga−Se四元系合金膜)中のNa含有量を0.1%程度とすることが一般的であると示している。
特許第3249408号公報 特開2009−283560号公報
A.Romeo, 「Development of Thin-film Cu(In,Ga)Se2 and CdTe Solar Cells」, Prog. Photovolt: Res. Appl. 2004; 12:93-111 (DOI: 10.1002/pip.527)
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
即ち、高密度で高Ga含有量のCu−Ga合金材料は、非常に硬く、かつ、延性が乏しいため、Cu−Ga合金材料からスパッタリングターゲットを製造するとき、切削での表面加工が困難であり、研削加工を使用せざるを得ないという不都合があった。このため、スパッタリングターゲット製造における加工速度が遅く、かつ、複雑形状の加工が非常に困難であった。また、Cu−Ga合金材料にNaを添加した場合においても、同様な課題があった。
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、機械加工性に優れ、主成分としてCu、Gaを含有する化合物膜の成膜が可能なスパッタリングターゲット及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、主成分としてCu、Gaを含有する化合物膜形成用のスパッタリングターゲットを製造するべく研究を行った。その結果、Cu−Ga合金に、Al、Zn及びSnから選ばれた1種以上の金属元素を少量添加すれば、Cu−Ga合金材料の機械加工性を改善可能であることを突き止めた。
したがって、本発明は、上記知見から得られたものであり、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
(1)本発明のスパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲット中の全金属元素に対し、Ga:15.0〜50.0原子%、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素の合計:0.1〜10.0原子%を含有し、さらに、Sb又はBi:0.01〜10.0原子%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなることを特徴とする。
(2)前記(1)のスパッタリングターゲットでは、理論密度比が95%以上、酸素含有量が800重量ppm以下であることを特徴とする。
(3)前記(1)又は(2)のスパッタリングターゲットでは、抗折強度が200MPa以上であることを特徴とする。
(4)前記(1)乃至(3)のいずれかのスパッタリングターゲットでは、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素を含有する金属相の平均粒径が、500μm以下であることを特徴とする。
(5)前記(1)乃至(4)のいずれかのスパッタリングターゲットでは、さらに、スパッタリングターゲット中の全金属元素に対し、Li、K及びNaから選ばれた1種以上の元素の合計:0.01〜10.0原子%を含有することを特徴とする。
(6)本発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、前記(1)乃至(4)のいずれかのスパッタリングターゲットを製造する方法であって、Cuと、Gaと、Al、Zn及びSnから選ばれた1種以上の金属元素と、さらに、Sb又はBiの金属元素とを1050℃以上において溶解、鋳造し、鋳塊を作製する工程を含むことを特徴とする。
(7)本発明のスパッタリングターゲットの製造方法は、前記(1)乃至(4)のいずれかのスパッタリングターゲットを製造する方法であって、Cuと、Gaと、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素と、さらに、Sb又はBiの金属元素とが、単体又はこれらのうち2種以上の元素を含む合金の粉末として含有する原料粉末を作製する工程と、前記原料粉末を真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気で焼結する工程と、を含むことを特徴とする。
(8)前記(5)のスパッタリングターゲットを製造する方法であって、Cuと、Gaと、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素と、さらに、Sb又はBiの金属元素とが、単体又はこれらのうち2種以上の元素を含む合金として含有する金属粉末と、NaF粉末、NaS粉末又はNaSe粉末とを混合して原料粉末を作製する工程と、前記原料粉末を真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気で焼結する工程と、を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
(9)前記(7)又は(8)のスパッタリングターゲットの製造方法では、前記原料粉末の平均粒径が、1μm以上、500μm以下であることを特徴とする。
以上の様に、本発明のスパッタリングターゲットは、ターゲット素材中の全金属元素に対し、Ga:15〜50原子%(at%)、且つ、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素の合計:0.1〜10原子%を含有し、さらに、Sb又はBi:0.01〜10.0原子%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる成分組成を有している。このスパッタリングターゲットでは、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素の合計:0.1〜10原子%を含有しているので、高い被切削性を有することができる。
なお、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素(以下、Al等添加元素という。)の添加量を、0.1〜10原子%の範囲内に設定した理由は、0.1原子%未満であると、機械加工性の向上効果が得られず、10原子%を超えると、スパッタリングターゲット自体が脆化し、切削加工時に割れや欠けが生じやすくなるためである。Al等添加元素の添加は、各元素をそれぞれ単独、即ち、1種のみを添加しても良く、また、これらの添加元素のうちの2種以上、複数種類の添加元素を同時に添加する場合も、それらの合計添加量が0.1〜10原子%の範囲内であれば、母体であるCu−Ga合金からなるスパッタリングターゲットが、高い被切削性を有することができる。
なお、Gaの含有量を15〜50原子%の範囲と規定した理由は、前記特許文献2に記載されているように、この範囲のGa含有量が、変換効率の高いCIGS光吸収層を形成するために、一般的なGa添加量だからである。また、この明細書において、金属元素とは、非金属元素を除く元素と定義される。ここで非金属元素とは、H、He、C、N、O、F、Ne、P、S、Cl、Ar、Se、Br、Kr、I、Xe、At、Rnである。
さらに、本発明に係るスパッタリングターゲットにおいて、理論密度比が95%以上、酸素含有量が800重量ppm以下とした。
即ち、このスパッタリングターゲットでは、Cu−Ga合金に、Al等添加元素が添加されるが、Alなどの添加元素は、CuやGaに比べ、格段に酸化されやすく、ターゲット素材中の酸素含有量が、800重量ppmを超える場合、Alの酸化物、Znの酸化物、Snの酸化物、Mgの酸化物などの介在物が多く形成される。これらの酸化物よる介在物は、ターゲット素地のCu−Ga合金粒子間の結合を弱くし、ターゲット素材の機械加工時における高速切削の際に、その切削表面に欠陥を形成し、切削面の平坦性や欠陥の発生率増加を引き起こすこととなる。
本発明のもう一つの特徴は、ターゲット密度が理論密度比95%以上であることである。ここでの理論密度とは、同組成を有するAl等添加元素含有のCu−Ga合金を真空溶解炉で1100℃以上にて溶解後、カーボン鋳型に鋳造し、冷却速度50℃/min以下の徐冷で作成したインゴットのポアなどがない健全部分の密度を指す。ターゲット素材が溶解鋳造法で作成される場合、鋳造方法や鋳造プロセスの選択によって鋳塊の密度が低下することがあり、また、ターゲット素材が焼結法で作成される場合は、焼結条件などで、得られたターゲット素材の理論密度比が95%以下になることがある。本発明の目的である機械加工性に優れ、主成分として、Cu、Gaを含有する化合物膜を成膜可能なスパッタリングターゲット及びその製造方法を提供するために、Al等添加元素を添加した本発明のターゲット素材について、ターゲット素材の理論密度比を95%以上にすることで、切削時にターゲット素材の低密度部分による欠陥を最低限に減少し、より優れた切削性を実現できる。さらに、ターゲット素材の理論密度比を95%以上にすることで、ターゲット素材中の外気と貫通する穴が激減するため、ターゲット素材に含まれる従来のCuやGaより酸化されやすいAl等添加元素の酸素との接触機会を減らし、これらの元素による酸化物介在物を大幅に減らすことができる。この酸化物介在物を低減することで、ターゲット素材が高速切削される際に、その切削表面における欠陥形成を防止し、切削面の平坦性が改善される。
また、本発明に係るスパッタリングターゲットにおいて、さらに、スパッタリングターゲットの抗折強度が200MPa以上であるとしている。
本発明者らは、Al等添加元素を添加したCu及びGaからなるスパッタリングターゲットにおいて、その抗折強度が、200MPa以上であると、スパッタリングターゲットの被切削性が改善されるという知見が得られた。即ち、抗折強度が、200MPa以上である本発明のスパッタリングターゲットであれば、ターゲット素材の機械加工の際に、より平坦度の高いターゲット表面が得られやすくなる。
また、本発明に係る上記スパッタリングターゲットにおいて、スパッタリングターゲット中のAl等添加元素を含有する金属相(以下、Al等含有相という)の平均粒径が500μm以下であることとした。
Al等含有相は、Cu及びGaからなる金属相に比べて柔らかく、低融点である。このようなAl等含有相を、比較的小さいサイズでターゲット中に分布させることにより、切削中に、切削ツールとターゲット素材表面とを有効に潤滑させる効果を実現できる。なお、Al等含有相の平均粒径が500μmを超えると、同等量のAl等添加元素を含有し同等酸素含有量を有する平均粒径が500μm以下のターゲット素材に比べ、ターゲット素材の組織中における比較的高融点、高硬度のCu及びGaからなる金属相と、低融点、低硬度のAl等含有相との切削性の違いが切削中に大きく現れ、ターゲットの表面粗さを増加させてしまう不都合がある。なお、上記したAl等含有相の平均粒径は、Al等含有相粒子の投影面積円相当径の平均と定義される。
本発明に係る上記スパッタリングターゲットにおいて、さらに、スパッタリングターゲット中の全金属元素に対し、Li、K及びNaから選ばれた1種以上の元素の合計:0.01〜10.0原子%を含有することとした。
即ち、Li、K及びNaの添加によれば、太陽電池の発電効率を向上することができる。これら添加元素の含有量が0.01原子%未満であると、添加による効果が得られず、10.0原子%を超えると、高温セレン化プロセスでCuGa膜の剥がれる現象が多発するため好ましくない。
本発明に係る上記スパッタリングターゲットにNaを添加する場合、NaF、NaS、NaSe、NaSeO又はNaSeOとすると、ターゲット中のNaの分布が均一になりやすく、かつ発電効率の向上に有効なNaを含有したCu−Ga合金膜を成膜することができる。なお、このNaを含有したCu−Ga合金膜におけるフッ素(F)、硫黄(S)の存在は、太陽電池の光吸収層の特性に特に影響を及ぼす程のものではない。一方、ターゲット中の酸素含有量を低減させるため、NaF、NaS、NaSeでの添加が、NaSeO、NaSeOでの添加より好ましい。同様に、Li、Kを添加する場合、フッ化カリウム(KF)、硫化カリウム(KS)、セレン化カリウム(KSe)、窒化カリウム(KN)、塩化カリウム(KCl)、セレン酸カリウム、フッ化リチウム(LiF)、硫化リチウム(LiS)、セレン化リチウム(LiSe)、窒化リチウム(LiN)、塩化リチウム(LiCl)、セレン酸リチウムなどの化合物として添加することが好ましい。
さらに、本発明に係る上記スパッタリングターゲットにおいて、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)の添加により、ターゲットの切削加工性を向上することもできる。これら添加元素の含有量は0.01〜10.0原子%が好ましい。
また、本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法においては、Cuと、Gaと、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素と、さらに、Sb又はBiの金属元素とを1050℃以上において溶解、鋳造し、鋳塊を作製する工程を含むこととした。
即ち、このスパッタリングターゲットの製造方法では、原料を1050℃以上で溶解することで、鋳塊組織中のAl等添加元素を、確実に、かつ、均一に分散させることができる。また、鋳造により作成することで、スパッタリングターゲットの酸素含有量を低減することができる。
本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法においては、Cuと、Gaと、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素と、さらに、Sb又はBiの金属元素とが、単体又はこれらのうち2種以上の元素を含む合金の粉末として含有する原料粉末を作製する工程と、前記原料粉末を真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気で焼結する工程と、を含むこととした。
また、本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法においては、Cuと、Gaと、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素と、さらに、Sb又はBiの金属元素とが、単体又はこれらのうち2種以上の元素を含む合金として含有する金属粉末と、所定量のNaF、KF、LiF、NaS、KS、LiS、NaSe、KSe、LiSe等のNa、K又はLi化合物粉末とを混合して原料粉末を作製する工程と、前記原料粉末を真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気で焼結する工程と、を含むこととした。
さらに、本発明に係るスパッタリングターゲットの製造方法においては、前記原料粉末の平均粒径が、1μm以上、500μm以下であることとした。
即ち、これらのスパッタリングターゲットの製造方法では、原料粉末の平均粒径を1〜500μmにすることで、得られたターゲット素材中のAl等添加元素による含有相のサイズを確実に500μm以下に制限することができ、ターゲット素材の切削加工性をより向上させることができる。さらに、原料粉末の平均粒径を1μm以上に設定することにより、原料粉末の過剰な微小化によるターゲット素材中の酸素含有量の上昇を防ぐことができ、ターゲット中の酸素含有量を800重量ppm以下に容易に制御できる。
本発明によれば、以下の効果を奏する。
即ち、本発明に係るスパッタリングターゲット及びその製造方法によれば、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素の合計:0.1〜10原子%を含有するので、高い被削性を有することができる。したがって、本発明のスパッタリングターゲットでは、機械加工における切削での表面加工が容易であり、スパッタリングターゲットの加工速度が早く、かつ、複雑形状の加工も容易となる。
実施例に係るスパッタリングターゲットにおける、加工後のターゲット表面を示す写真である。 比較例に係るスパッタリングターゲットにおける、加工後のターゲット表面を示す写真である。 図1に示したスパッタリングターゲットに関する、電子線マイクロアナライザ(EPMA)による組成像(COMP像)、Cuの元素分布画像、Gaの元素分布画像及びSnの元素分布画像を示す写真である。 図1に示したスパッタリングターゲットのX線回折(XRD)結果を示すグラフである。
以下、本発明に係るスパッタリングターゲット及びその製造方法の実施形態について説明する。
本実施形態のスパッタリングターゲットは、スパッタリングターゲット中の全金属元素に対し、Ga:15〜50原子%を含有し、さらに、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素(Al等添加元素)を合計:0.1〜10原子%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる成分組成を有している。
また、本実施形態のスパッタリングターゲットは、理論密度比が95%以上、酸素含有量が800重量ppm以下である。さらに、その抗折強度が200MPa以上である。
また、スパッタリングターゲット中における、Al等添加元素を含有する金属相(Al等含有相)の平均粒径が500μm以下であることが好ましい。このAl等含有相には、Al等添加元素からなる単体、合金又は金属間化合物からなる金属相、及び、これらの元素とCu、Ga間との合金、金属間化合物からなる金属相が含まれる。
溶解鋳造法によるCu−Gaターゲット素材における金属相の粒径は、一般的に数mmから10数mmまでとなっている。また、粉末焼結法においても、使用する原料粒子の製造方法やサイズ、焼結条件によって、数百μmから数千μmになることが一般的である。このような金属組織に、Al等含有相を含有させることで、例えば、Al等含有相の粒子径が従来の溶解鋳造法や焼結法と同レベルであっても、切削性の改善が認められるが、本発明の研究によれば、ターゲット素材の組織中のAl等含有相の平均粒径を、500μm以下とすることにより、切削加工によるターゲット素材の表面へのダメージがより少なく、より平坦な加工面が得られる。平均粒径500μm以下のAl等含有相を有する金属組織となる鋳造ターゲット素材を得るには、急冷鋳造や鋳造後の熱間圧延などのプロセスにより実現できる。粉末焼結法においては、使用する原料中の原料粉末平均粒径を500μm以下に制限すること、焼結温度等の最適化することにより実現できる。
また、Al等含有相は、例えば、10mm×10mmの範囲において、電子線マイクロアナライザ(EPMA)によるCu、Ga、Al等添加元素に係る元素マッピング像(図3)により観察でき、その粒径(投影面積円相当径)を測定できる。
さらに、本実施形態のスパッタリングターゲットにおいて、そのターゲット中のGaは金属間化合物の形態、例えば、Cu−Ga金属間化合物の形態で含有されていることが好ましい。Gaの単体がそのターゲット中に存在すると、そのターゲットの抗折強度が200MPa以下に低下し、加工中の加工熱によって、Gaが液相として析出し、加工欠陥が発生しやすい。即ち、スパッタリングターゲット中に、Ga単体の存在がなくなることで、スパッタリングターゲットの切削性がより向上する。Ga単体の有無の判定及びCu−Ga合金の有無は、例えば、スパッタリングターゲットのX線回折(XRD)測定にて判定できる(図4)。
即ち、これらのスパッタリングターゲットの表面を研磨後(Ra:5μm以下)、XRD測定を行い、Ga単体に属するθ=15.24°(方位111)付近、22.77°(113)付近、23.27°(202)付近のピークにより、Ga単体の存在を判定できる。Cu−Ga合金の有無は、同様な方法にてXRD測定を行い、標準回折曲線のカードにて判定できる。
なお、本実施形態のスパッタリングターゲットに、Naを、NaF化合物、NaS化合物又はNaSe化合物として含有させても構わない。
上記各金属元素の組成評価は、スパッタリングターゲットを粉砕し、ICP法(高周波誘導結合プラズマ法)を用いて含有量を定量分析する。
また、本実施形態のスパッタリングターゲットは、太陽電池の変換効率の向上や、ターゲット素材の切削加工性の向上に有効なLi、K及びNa及びその化合物を含有されても構わない。尚、Li、K及びNaの含有量は、合計で0.01〜10原子%の範囲が好ましい。さらに、Sb、Biにも同様な効果が認められ、その含有量は合計で0.01〜10原子%の範囲が好ましい。
上記本実施形態のスパッタリングターゲットを作製するのに、溶解鋳造法と粉末法を採用できる。粉末法は、粉末原料を必要に応じて成形し焼成する方法、又は、成形しないで焼成する方法(以下、粉末焼結法という)、及び、粉末原料を半溶融状態で基材に高速噴射し、得られた成形体をそのままターゲット素材として使用する方法と、得られた成形体をさらに焼結してターゲット素材にする方法とがある。
溶解鋳造法では、少なくともCu、Ga及びAl等添加元素群の各元素を単体又はこれらのうち2種以上の元素を含む合金を1050℃以上に溶解し、酸素含有量が800重量ppm以下の鋳塊を作製する工程と、得られた鋳塊の結晶組織の最適化のために、必要に応じて急冷鋳造や圧延工程を採用し、スパッタリングターゲットを作製する。
なお、Gaを15原子%以上含有し、Al等添加元素を0.1原子%以上含有したCu−Ga系合金の融点は、1000℃以下であるが、溶解温度を1050℃以上に設定する理由としては、溶解温度を1050℃未満にすると、Cu、Ga、Al等添加元素の溶湯の粘度が高く、溶解した各元素の均一な混合が非常に困難になるためである。即ち、得られたインゴット中のAl等含有相の微細化が困難になり、ターゲット素材の加工中に、割れ、欠けの発生率が高くなるため、溶解温度を1050℃以上に設定している。
さらに、ターゲット素材中の酸素含有量が800重量ppmを超えると、Al等添加元素の導入によって酸化物介在物が容易に生成され、これらの酸化物介在物がCu−Ga合金粒子間の結合を弱くし、ターゲット素材が高速切削される際に、切削表面の欠陥発生率が増加する。
溶解鋳造法によって作成されたターゲット素材中の酸素濃度を800重量ppm以下にするための方法は、特に、制限されない。例えば、真空溶解炉での溶解鋳造方法や、酸素が含まない雰囲気での溶解鋳造方法、大気中で脱酸効果のある黒鉛坩堝、黒鉛鋳型での溶解鋳造方法、大気中で溶湯表面をカーボン粒子等脱酸材料で覆う溶解鋳造方法、又は、アルカリ金属、例えば、リチウム金属、ナトリウム金属、カリウム金属を溶湯中に投入し脱酸する方法等が使用される。
粉末焼結法では、少なくともCu、Ga及びAl等添加元素の各元素を単体又は2種以上の元素を含む合金の粉末とした原料粉末を作製する工程と、原料粉末を真空、不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気中でホットプレス(HP)又は熱間静水圧プレス(HIP)により焼結する工程とが含まれている。また、別の焼結工程として、作製した原料粉末を加圧成形後、真空又は気圧0.01〜10kgf/cmの不活性ガス雰囲気又は還元性雰囲気中にて非加圧状態で焼結する工程を採用しても構わない。なお、上記原料粉末の平均粒子径が1〜500μmであることが好ましい。
なお、上記HP法やHIP法を用いた焼結では、HP温度(HPの保持温度)及びHIP温度(HIPの保持温度)は、150℃〜900℃の範囲内で行われることが好ましい。上記温度範囲に設定した理由は、150℃未満であると、焼結体の密度が低く、切削加工時にチッピングが発生しやすく、900℃を超えると、ホットプレス中にAl等添加元素含有Cu−Ga合金相の平均粒径が増大し、加工欠陥の原因になるためである。
原料粉末を加圧成形後、成形体を真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気にて焼結する方法を用いる焼結においては、焼結温度(焼結時の保持温度)は、150℃〜950℃の範囲内で行われることが好ましい。なお、焼結温度を上記範囲に設定した理由は、150℃未満であると、焼結体の密度が低く、切削加工時にチッピングが発生しやすく、950℃を超えると、Al等添加元素を含有するCu−Ga合金相の平均粒径が増大し、加工欠陥の原因になるためである
この焼結を行うための原料粉末の製造は、例えば、以下の(a)〜(c)のいずれかの方法で行う。
(a)所定量のCu、Ga及びAl等添加元素全量を溶解し、Cu、Ga、Al等添加元素からなる鋳塊を粉砕し、原料粉末とする。この溶解鋳造は、真空中、不活性ガス中又は大気中にて行われる。或いは、所定量のCu、Ga及びAl等添加元素全量をアトマイズ粉として製造し、原料粉末とする。なお、Naや、K、Liを添加する場合、鋳造中に金属Na、K、Liを添加するか、所定量のNaF、KF、LiF、NaS、KS、LiS、NaSe、KSe、LiSe等のNa、K又はLi化合物粉末を上記原料粉末に混合する。
(b)所定量のCu、Ga全量からなるCuGa鋳塊を粉砕し、Cu−Ga原料粉末とする。或いは、所定量のCu−Ga合金をアトマイズ粉として製造する。さらに、Al等添加元素の粉末をこのCu−Ga原料粉末と混合し、所定組成の原料粉末を作成する。なお、Naや、K、Liを添加する場合、鋳造中に金属Na、K、Liを添加するか、所定量のNaF、KF、LiF、NaS、KS、LiS、NaSe、KSe、LiSe等のNa、K又はLi化合物粉末を上記原料粉末に混合する。上記Al等添加元素の粉末には、Al等添加元素から選ばれた単体からなる粉末、又は、2種以上の元素からなる合金粉末を含む。
(c)所定量のCu、Ga及びAl等添加元素全量の一部を溶解し、Cu、Ga及びAl等添加元素からなる鋳塊を粉砕し、添加元素含むCu−Ga合金の原料粉末を作成する。或いは、所定量のCu、Ga及びAl等添加元素全量の一部をアトマイズ粉として、添加元素含むCu−Ga合金の原料粉末を作成する。さらに、Cu−Ga合金粉、Cu粉又はAl等添加元素とCu又はGaとの合金からなる粉末を、上記した添加元素含むCu−Ga合金の原料粉末に添加し、所定組成の混合粉末を作成する。なお、Naや、K、Liを添加する場合、鋳造中に金属Na、K、Liを添加するか、所定量のNaF、KF、LiF、NaS、KS、LiS、NaSe、KSe、LiSe等のNa、K又はLi化合物粉末を上記原料粉末に混合する。
次に、上記(a)〜(c)のいずれかの方法で作製した原料粉末を、HP(ホットプレス)やHIP(熱間静水圧プレス)、又は原料粉末を加圧成形後、成形体を焼結する等の方法で焼結する。なお、これらの焼結の際は、Cu−Ga合金又はCuの酸化防止のため、真空、不活性ガス雰囲気又は還元性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。HPやHIPの圧力がスパッタリングターゲット焼結体の密度に大きな影響を及ぼすので、HPにおける好ましい圧力は100〜1000kgf/cmとする。HIP時の好ましい圧力は500〜1500kgf/cmとする。また、加圧は、焼結昇温開始前から行われてもよいし、或いは、一定な温度に到達してから行われてもよい。
次に、上記溶解鋳造法又は焼結法で得られたAl等添加元素含有のCu−Gaターゲット素材(又は、Al等添加元素及びNa、Li、K含有のCu−Gaターゲット素材)は、機械加工性に優れているので、切削工法を用いて、このターゲット素材を所定形状に加工して、スパッタリングターゲットを作製することができる。そして、この製作されたスパッタリングターゲットは、Inを用いて、Cu又はCu合金からなるバッキングプレートにボンディングされ、スパッタリングに供される。
なお、加工済みのスパッタリングターゲットの酸化、吸湿を防止するため、スパッタリングターゲット全体を真空パック又は不活性ガス置換したパックにて保管することが好ましい。
この作製した本実施形態のスパッタリングターゲットを用いたスパッタリングは、直流(DC)マグネトロンスパッタ法にて、Arガス中で行われる。このときの直流スパッタリングでは、パルス電圧を付加するパルス重畳電源を用いてもよいし、パルスなしのDC電源でもよい。
この本実施形態のスパッタリングターゲットでは、Al等添加元素の合計:0.1〜10原子%を含有しているので、高い密度比であっても、高い切削性を有する。特に、スパッタリングターゲットの理論密度比を95%以上にし、同時に、酸素含有量が800重量ppm以下に調整することで、Al等添加元素の酸化物介在物を低減することができるため、より切削性を向上させることができる。
また、スパッタリングターゲットの抗折強度が200MPa以上にすることで、切削加工中において、チッピング、欠けを生ずることなく、スパッタリングに適した加工表面を実現することができる。スパッタリングターゲットの抗折強度が200MPa以上にするために、溶解鋳造法を用いて製造する場合には、鋳造欠陥の低減、金属組織の微細化、焼結法を用いて製造する場合には、焼結温度等の焼結条件による焼結欠陥の低減、焼結密度の適正化、焼結組織の微細化が有効な実現方法である。また、溶解鋳造法、焼結法に問わず、Al等単体としての抗折強度の低い添加元素のターゲット中での合金化や均一化を図ることでも、抗折強度200MPa以上を実現することができる。
さらに、スパッタリングターゲット中のAl等添加元素含有相の平均粒径が500μm以下であることが、スパッタリングターゲットの被切削性に影響を与え、機械加工の際に、チッピングや欠け等の発生がより低減される。
また、Li、KやNaが、LiF化合物、KF化合物、NaF化合物、LiS化合物、KS化合物、NaS化合物又はLiSe、KSe、NaSe、LiSeO、K2SeO、NaSeO、LiSeO,KSeO、NaSeO等化合物として含有されるスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法によると、発電効率の向上に有効なNa、Li、Kを含有したCu−Ga膜を成膜することができる。なお、このLi、KやNaを含有したCu−Ga膜におけるフッ素(F)、硫黄(S)は、太陽電池の光吸収層の特性に特に影響を及ぼす程の濃度とはならない。
次に、本発明に係るスパッタリングターゲット及びその製造方法を、上記実施形態に基づき実際に作製した実施例により、評価した結果について、下記の表1乃至表6を参照しながら説明する。
〔原料粉末又は鋳塊の作製〕
表1には、本実施形態による実施例1〜30における原料粉末の成分組成(at%)が示され、表2には、これらの実施例と比較するために、比較例1〜20における原料粉末の成分組成(at%)が示されている。
先ず、実施例2、3、5〜8、10、12、13、19〜26、29、30、比較例1〜6、10、12、14〜18の原料粉末としては、表1又は表2の組成になるように、Cu、Ga及び各指定金属元素をアトマイズ装置に装入し、1050〜1150℃に昇温し、金属が全部溶湯になっていることを確認した後、アトマイズを行い、得られた粉末を、目の開き250μmの篩を通して、アトマイズ粉末を作製した。
さらに、実施例10は、上記得られたアトマイズ粉末をAr雰囲気で乾式ボールミルを施し、平均粒径を0.9μmにした。実施例19は、Cu−50at%Ga合金及びとAl−Zn合金をそれぞれアトマイズし、さらにアトマイズ粉に平均粒径2μm純度99.99%の純Cu粉末(以下、同様)及び平均粒径3μm純度99%のNaF粉末(以下、同様)を添加し、表1の組成の原料粉末を乾式ボールミルにて混合した。
実施例5は、Cu−50at%Gaインゴットによるアトマイズ粉末と実施例19に用いた同様な純Cu粉末と、平均粒径3μm純度99.99%の純Zn粉末(以下、同様)とを乾式ボールミルして原料粉末を混合した。
実施例12は、Cu−Gaアトマイズ粉末と添加元素Al、Biそれぞれの粉末と混合して原料粉末を作成した。用いた純Al粉の平均粒径は125μm、純Bi粉末は、平均粒径308μm、純度99.9%である。
実施例20は、Cu、Ga、Snをアトマイズし、さらにNaF粉末をボールミルにより加え、原料粉末を用意した。
実施例21はCu−Gaアトマイズ粉末に純Zn粉末、NaF粉末に加え、乾式ボールミルにて混合し原料粉末を調整した。
実施例22は、Cu−Gaアトマイズ粉末と、純度99.99%平均粒径234μmのAl−Sn粉末、NaF粉末と乾式混合し、表1の原料粉末を作成した。
実施例24は、Cu−Gaアトマイズ粉末と、純度99.99%平均粒径158μmのAl−Zn粉末と、純度99.99%平均粒径260μmのSb粉末と、純度99%平均粒径9μmのNaS粉末(以下、同様)とを混合して、原料粉末とした。
実施例26は、Cu−Gaアトマイズ粉末と、純Al粉末、純Zn粉末、平均粒径2μm純度99.9%の純Sn粉末(以下、同様)、平均粒径10μm純度98%のNaSe粉末とをロッキングミキサーを用いて混合し原料粉末とした。
実施例29はCu−Gaアトマイズ粉末に純Zn粉末、KF粉末に加え、乾式ボールミルにて混合し原料粉末を調整した。
実施例30はCu−Gaアトマイズ粉末に純Zn粉末、純Mg粉末、NaF粉末に加え、乾式ボールミルにて混合し原料粉末を調整した。
比較例5は、Cu−Gaアトマイズ粉末とSn粉とを、V型混合機を用いて均一に混合し、原料粉末とした。
比較例16は、Cu、Ga、Al、Zn、Sn、Sb各元素をアトマイズし、得られたアトマイズ粉末をNaS粉末とボールミルにて混合した。
比較例18は、Cu、Ga、Zn、Biによるアトマイズ粉末とNaSe粉末を混合し原料粉末を用意した。
また、実施例1、9、27、28、比較例7〜9、11、19、20では、表1又は表2の組成になるように、各添加元素を真空溶解炉に装入し、指定された溶解温度に到達して、金属が全部溶解したことを確認してから、10分間保持したのち、鋳造を行った。なお、溶解、鋳造は、真空中で行ってもよいが、不活性雰囲気中で行ってもよい。不活性雰囲気で行う場合は、雰囲気気圧が大気圧より低いことが好ましい。
実施例1、27、28の鋳造は小さい金属鋳造組織を得るため、水冷された鋳型を用いた。実施例9及び比較例7〜9、11、19、20では、水冷鋳型を採用せず、黒鉛製鋳型に鋳造後、真空溶解炉中で放置し自然冷却を行った。実施例4、11では、上記同様、真空鋳造を行ったが、得られた鋳塊をさらに不活性雰囲気で乾式粉砕し、粉末焼結の原料とされた。
実施例11、14、15〜18、比較例13では、大気鋳造を行った。大気鋳造は、表1に示した組成全量を大気炉に仕込み、指定された溶解鋳造温度に達し、さらに10分間保持したのち、黒鉛鋳型に鋳込み、自然冷却した。実施例11、14では、得られたインゴットを乾式粉砕し、粉末焼結の原料とした。
〔スパッタリングターゲットの作製、評価〕
上記の実施例1、9、15〜18、27、28、比較例7〜9、11、13、19、20では、鋳造された鋳造塊に熱間圧延を施した。圧延温度は、800℃であり、圧延後に、750℃で1時間の焼きなましを行った。実施例1、15〜18、27、28の圧下率は、50%であり、実施例9での圧下率は、10%であった。
上記の実施例7、13、比較例2では、原料粉末を金属金型に充填し、1000kgf/cmの圧力で成形した後、0.3〜1.2大気圧の純水素雰囲気で焼成を行った。
また、上記の実施例2〜8、10〜14、19〜26、29、30、比較例1、3〜6、10、12、14〜18では、加圧焼成法(HP、HIP)を用いてターゲット素材が作成された。ここでは、原料粉末を黒鉛型に充填し、表3又は表4に指定された圧力と温度で行った。さらに、比較例6及び17では、鉄製型に原料粉末を充填し、焼結を行った。ホットプレスにおける昇温と、冷却速度とは、ともに、1〜12℃/minである、
以上の方法で得られた素材を、直径80mm、厚さ6mmのスパッタリングターゲットに作製した。得られたスパッタリングターゲットの寸法密度を算出し、理論密度比として計算した結果が、表3及び表4に示されている。
なお、理論密度の計算は、スパッタリングターゲット中のCu、Ga、Al等添加元素、Bi、Sb、Li等の金属相を溶解し、徐冷で得られた無欠陥の鋳塊密度を該当組成の理論密度とし、これとスパッタリングターゲットの密度の比(ターゲット密度/理論密度×100%)を理論密度比とする。なお、NaF、NaS又はNaSeを添加した場合、これらの化合物相の添加量を用いて、その体積割合を計算する。焼結体中の金属相の理論密度とNa化合物の理論密度とを計算し、ターゲット寸法密度との比で理論密度比を計算した。
スパッタリングターゲットの加工性及び切削効果の評価として、加工中の割れ発生の有無、欠け(加工による2mm以上の目視欠陥)の発生の有無、チッピング(加工による2mm以下の目視欠陥)の有無及び面粗さ(Ra:算術平均粗さ、Rz:十点平均粗さ)をそれぞれ測定して評価した。その結果が、表5及び表6に示されている。
スパッタリングターゲット中の各金属元素の含有量は、そのターゲットより採取した分析用ブロックをICP法にて分析した。酸素含有量は、同分析用ブロックを用いて、二酸化炭素吸収法により分析した。
スパッタリングターゲットの抗折強度は、ターゲット素材をJIS R1601規格に基づいて三点曲げ強度を測定した。
スパッタリングターゲットの組織観察は、焼結したスパッタリングターゲットの破片を樹脂で埋め、平坦な面になるように湿式研磨後、EPMA(電子線マイクロアナライザ:JEOL製 JXA−8500F)にて各元素の面分布(マッピング)測定にて行った。観察条件は、加速電圧15kV、照射電流50nA、スキャンタイプ:片方向、ピクセル(X,Y)240,180、スポットサイズ(X,Y)0.1μm、0.1μm、測定時間10msとした。また、観察倍率を100倍とし、10×5mmの範囲を数回に分けて元素分布(マッピング)を測定した。得られたマッピング画像より、Al等添加元素単体及びその金属間化合物の少なくとも一方が存在する組織の平均粒径を確認した。以上の結果が、表5及び表6に示されている。
また、加工性及び切削効果の評価方法は、先ず、森精機製作所製の旋盤:MS850Gを用いて、実施例又は比較例のターゲット素材を乾式加工した。サイズは、直径:80mm、厚さ:6mmとした。また、加工時の回転速度は、140rpmであり、切削工具の切り込み量は、0.3mm、送り速度は、0.097mm/revとした。使用した加工用バイド(三菱マテリアル製)は形状型番:STFER1616H16、インサート形状型番:TEGX160302L、材種はHTi10とした。そして、各素材の表面から1.0mm厚みを切削した後の焼結体表面を評価した。即ち、この加工された焼結体の中心部より20mm離れた箇所で、表面粗さ測定と表面の加工欠け、チッピング有無の確認とを行った。なお、表面粗さの測定装置は、ミツトヨ製surftest SV−3000を使用し、評価長さは、4mmとした。また、チッピング有無の判定は、低倍率光学顕微鏡にて22cmの範囲を写真撮影し、内接円相当径0.3mm以上のチッピングの有無にて判断した。






これらの評価結果から、Al等添加元素が添加されていない又は本発明のAl等添加元素含有量より少ない比較例1〜5、7、12〜14、16、18及び本発明のAl等添加元素含有量より多い比較例6、8〜11、15、17のいずれにおいても、加工後面粗さRaが1.0μm以上、Rzが10μm以上、と大きいのに対し、Al等添加元素を有効な含有量で添加している本発明の実施例1〜30では、いずれも加工中チッピングが無く、面粗さRaが1.0μm以下、Rzが9.9μm以下と小さく、優れた被切削性が得られている。また、全ての実施例が良好な加工を施すことができたのに対し、本発明のAl等添加元素が含有しない比較例2、その含有量がより少ない比較例3、7、18、及び本発明の含有量より多い比較例8、17では、加工中に割れが発生し、目的とするスパッタリングターゲットに加工ができなかった。なお、比較例19、20では、圧延の段階で割れ発生したため、評価することができなかった。
一例として、Cu−30%Ga−3%Zn−3%Na−3%F(原子%)とした本発明の実施例23を図1に、Cu−30%Ga−3%Na−3%F(原子%)とした本発明の比較例2との加工後におけるターゲット表面の写真を図2に示す。
また、組織観察結果について、本発明の実施例7を一例として、Cu−30%Ga−3%Sn(原子%)としたスパッタリングターゲットのEPMAによる元素分布マッピング画像を図3に示す。このEPMAの画像は、いずれも元画像がカラー像であるが、グレースケールによる白黒画像に変換して記載しており、明度が高い程、含有量が高い傾向を示している。
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態及び上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。



Claims (9)

  1. スパッタリングターゲット中の全金属元素に対し、Ga:15.0〜50.0原子%、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素の合計:0.1〜10.0原子%を含有し、さらに、Sb又はBi:0.01〜10.0原子%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  2. 理論密度比が95%以上、酸素含有量が800重量ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
  3. 抗折強度が200MPa以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
  4. Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素を含有する金属相の平均粒径が、500μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  5. さらに、スパッタリングターゲット中の全金属元素に対し、Li、K及びNaから選ばれた1種以上の元素の合計:0.01〜10.0原子%を含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  6. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを製造する方法であって、
    Cuと、Gaと、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素と、さらに、Sb又はBiの金属元素とを1050℃以上において溶解、鋳造し、鋳塊を作製する工程を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  7. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットを作製する方法であって、
    Cuと、Gaと、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素と、さらに、Sb又はBiの金属元素とが、単体又はこれらのうち2種以上の元素を含む合金の粉末として含有する原料粉末を作製する工程と、
    前記原料粉末を真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気で焼結する工程と、を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  8. 請求項5に記載のスパッタリングターゲットを作製する方法であって、
    Cuと、Gaと、Al、Zn、Sn、Ag及びMgから選ばれた1種以上の金属元素と、さらに、Sb又はBiの金属元素とが、単体又はこれらのうち2種以上の元素を含む合金として含有する金属粉末と、NaF粉末、NaS粉末又はNaSe粉末とを混合して原料粉末を作製する工程と、
    前記原料粉末を真空、不活性雰囲気又は還元性雰囲気で焼結する工程と、を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  9. 前記原料粉末の平均粒径が、1〜500μmであることを特徴とする請求項7又は8に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。



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