JP5617723B2 - Cu−Ga合金スパッタリングターゲット - Google Patents

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Description

本発明は、CIGS(Cu−In−Ga−Se四元系合金)太陽電池の光吸収層の形成に使用されるCu−Ga合金スパッタリングターゲットに関するものである。
近年、クリーンエネルギーの一つとして、太陽光発電が注目されている。主に、結晶系Siの太陽電池が使用されているが、供給面やコストの問題から、変換効率の高いCIGS(Cu−In−Ga−Se四元系合金)系の太陽電池が注目されている。
CIGS太陽電池は、基本構造として、ソーダライムガラス基板の上に形成された裏面電極となるMo電極層と、このMo電極層の上に形成された光吸収層となるCIGS膜(Cu−In−Ga−Se膜、又はCu−In−Ga−S−Se膜)と、光吸収層の上に形成されたZnS、CdSなどからなるバッファ層と、このバッファ層の上に形成された透明電極とを備える。
Cu−In−Ga−Se四元系合金膜からなるCIGS光吸収層の形成方法としては、蒸着法が知られているが、より広い面積で均一な膜を得るためにスパッタリングにより作製された金属プリカーサ膜をセレン化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
スパッタ法は、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットとInターゲットを使用してスパッタすることにより、金属プリカーサ膜を作製し、これをSe又はS雰囲気中で熱処理してCIGS膜を形成する方法である。このスパッタ法により形成されたCIGS膜の品質は、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの品質に大きく依存するため、高品質なCu−Ga合金スパッタリングターゲットが望まれている。
特許3249408号公報 特開2000−73163号公報 特開2008−138232号公報 特開2005−60745号公報 特開2010−265544号公報
ところで、近年、太陽電池メーカーによるCIGS層組成の最適化が進み、Ga濃度30質量%以上の濃度のCu−Ga合金スパッタリングターゲットが求められている。
Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法としては、溶解法(例えば、特許文献2参照。)又は粉末冶金法(例えば、特許文献3乃至特許文献5参照。)による製造方法が知られている。
特許文献2では、溶解法によりCu−Ga合金スパッタリングターゲットを製造する方法が提案されているが、鋳造したGa濃度30質量%以上の合金は脆く、その後の加工でターゲットが割れてしまうという問題がある。
特許文献3では、Ga濃度30質量%以上で割れや欠損のないCu−Ga合金スパッタリングターゲットを粉末焼結法で製造する方法が提案されている。製造されたCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、高Ga含有合金粒を低Ga合金からなる粒界相で包囲した二相共存組織を有している。
しかしながら、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットは、金属相が複雑であると、均一なスパッタ膜を形成することができない。このことについて、特許文献4には、Cu−Ga合金と同様に、複雑な金属相を形成する希土類−遷移金属系の合金スパッタリングターゲットの金属組織(金属相)がスパッタ膜の均一性に影響することが記載されている。Cu−Ga合金スパッタリングターゲットは、大面積で均一な膜を形成できることが求められているため、金属相が複雑でないものが好ましい。
また、金属相を単純にすることができたとしても、Ga濃度が30質量%以上のCu−Ga合金スパッタリングターゲットでは、特許文献5の比較例6に記載されているように、Ga濃度35原子%(37質量%)でCuGa相(γ相)単相のCu−Ga合金スパッタリングターゲットはスパッタリング中に割れてしまうことが示されている。
更に、スパッタリング中に異常放電(アーク放電)が発生した場合には、スプラッシュが飛散して金属プリカーサ膜に付着したり、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットから小片が脱落して金属プリカーサ膜に付着して太陽電池特性の低下や歩留まりの低下が生じるという問題が発生する。このため、高品質なCu−Ga合金スパッタリングターゲットには、異常放電や粒子脱落が発生しないことも求められる。
本発明は、前記実情に鑑みて提案されたものであり、高Ga濃度のCu−Ga合金スパッタリングターゲットにおいて、スパッタ膜の均一性に優れ、ターゲット加工中及びスパッタリング中に割れ欠けがなく、スパッタリングにおいて異常放電やパーティクルの発生が抑制されたCu−Ga合金スパッタリングターゲットを提供する。
上述した目的を達成するため本発明に係るCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、Ga濃度が30質量%〜45質量%であり、平均結晶粒径が20μm以下、γ1相、γ2相、γ3相及びγ相からなる群の面積割合が95面積%以上、空孔率が1%以下、かつ三点曲げ強度が200MPa以上、かつX線回折ピークの半値幅の平均が0.13deg.以上であり、X線回折におけるγ1相、γ2相、γ3相及びγ相からなる群の(222)面、(321)面、(330)面、(332)面、(422)面、(510)面、(521)面、(600)面の下記式から求まる配向度指数K(hkl)が1.5以下であることを特徴とする。
(hkl)=(I(hkl)/ΣI(hkl))/(ID(hkl)/ΣID(hkl)
ただし、式中の
(hkl)は測定された前記群の(hkl)面の回折ピーク強度であり、
D(hkl)は標準データであるICDDカードデータ中の71−0458に示され
ているγ相の(hkl)面の回折ピーク強度であり、
ΣI(hkl)、ΣID(hkl)は、
ΣI(hkl)=I(222)+I(321)+I(330)+I(332)
+I(422)+I(510)+I(521)+I(600)
ΣID(hkl)=ID(222)+ID(321)+ID(330)
+ID(332)+ID(422)+ID(510)
+ID(521)+ID(600)
本発明では、Gaを30質量%〜45質量%含み、平均結晶粒径、γ相、γ相、γ相及びγ相からなる群の面積割合、空孔率かつ三点曲げ強度が所定の条件を満たすことによって、高Ga濃度であっても、割れ、スパッタリング中の異常放電及び膜にパーティクルが発生することが抑制され、組成が均一なスパッタ膜を形成することができる。
Cu−Ga系合金状態図である。 Cu−Ga合金のγ相のX線回折パターンを示す図である。 実施例1の焼結体の光学顕微鏡写真である。
以下に、本発明を適用したCu−Ga合金スパッタリングターゲットについて詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
<Cu−Ga合金スパッタリングターゲット>
先ず、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットについて説明する。なお、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットは、平面研削やボンディング等のターゲット仕上げ工程前のターゲット材の状態も含むものである。Cu−Ga合金スパッタリングターゲットは、後述するようにCu−Ga合金粉末を原料として粉末焼結法により製造することができる。
このCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、Ga濃度が30質量%〜45質量%であり、平均結晶粒径が20μm以下、γ相、γ相、γ相及びγ相からなる群(以下、γ相群ともいう。)の面積割合が95面積%以上、空孔率が1%以下、かつ三点曲げ強度が200MPa以上である。
Ga濃度は、30質量%〜45質量%である。Ga濃度が30質量%以上では、太陽電池用CIGS層組成の最適化がなされるが、45質量%以下であることが好ましい。Ga濃度が45質量%より大きい場合には、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの金属相にγ相、γ相、γ相及びγ相以外の異なる金属相の面積割合が増加して、スパッタ膜の均一性が不十分となってしまう。したがって、Ga濃度は、30質量%〜45質量%とする。
金属相は、γ相群の面積割合がCu−Ga合金スパッタリングターゲット全体の95面積%以上で、単純な金属相である。ここで、γ相、γ相、γ相及びγ相は、図1に示すCu−Ga系合金状態図に示される。これらの相は、Ga濃度が少しずつ異なるけれども、結晶構造は同一の空間群P43mに分類され、大変よく似ている。このような結晶構造のスパッタリングターゲットからターゲット材料が蒸発・放出されるので、スパッタ膜の組成や膜厚等、膜質の均一性が良好になる。γ相群の面積割合が95面積%より少ない場合には、異なる結晶構造の金属相の面積割合が増加してスパッタ膜の均一性が不十分になってしまう。
Cu−Ga合金の金属相には、γ相、γ相、γ相及びγ相の他に、Cu(α)相、β相、ζ相、θ相等がある。図1のCu−Ga系合金状態図から、各金属相のGa濃度を知ることができる。すなわち、Cu(α)相はGa濃度0〜22.2質量%、β相はGa濃度20.8質量%〜29.4質量%、ζ相はGa濃度22.1質量%〜24.2質量%、γ相は31.5質量%〜36.8質量%、γ相は31.8質量%〜39.6質量%、γ相はGa濃度36.0質量%〜39.9質量%、γ相はGa濃度39.7質量%〜45.0質量%、θ相はGa濃度66.7質量%〜68.7質量%である。どの金属相にも属さないGa濃度のCu−Ga合金は、Ga濃度の異なる複数の金属相の混合状態である。
γ相、γ相、γ相及びγ相のGa濃度は互いに重複しあっているので、Ga濃度だけでそれぞれの金属相を特定することは困難であるが、Ga濃度31.5質量%〜44.9質量%の金属相は、γ相、γ相、γ相及びγ相からなるγ相群だけであって、このGa濃度範囲にその他の金属相はない。このようなCu−Ga合金の特徴から、γ相、γ相、γ相及びγ相とこれらと異なる金属相とは、ターゲット研磨面のEPMA分析(Electron Probe Micro Analyzer)による二次電子像、反射電子像及び定量分析から区別することができる。さらにEPMA分析の画像解析処理を用いて、Ga濃度31.5質量%〜44.9質量%の金属相、すなわちγ相群の面積割合を求めることができる。また、EPMA分析で特定される金属相の色調を知っておけば、毎回EPMA分析を実施しなくても、ターゲット研磨面の光学顕微鏡観察とその画像処理からγ相群の面積割合を求めることができる。
金属相の特定は、EPMA分析、光学顕微鏡観察の他にX線回折を併用するとより明確となる。例えば、γ相群の金属相からなるターゲット表面をX線回折分析すると、図2に示した回折パターンが得られる。γ相群以外の金属相が存在している場合は別な回折ピークが混入する。X線回折の2θのどの角度にピークが出現するかは、金属相に依存する。したがって、X線回折ピークの出現パターンによって、ターゲットに含まれる金属相の種類がわかる。ただしγ相、γ相、γ相及びγ相は、それぞれの回折ピークを区別し難いのでγ相群として特定される。X線回折分析だけでは各金属相の面積割合はわからないので、前述のEPMA分析や光学顕微鏡観察から面積割合を算出する。
Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの断面組織は、平均結晶粒径が20μm以下の粒子により構成されている。平均結晶粒径が20μmより大きい場合には、ターゲットの機械強度が不足してスパッタ中にターゲット小片が脱落したり、スパッタ中の熱変化で割れやすくなってしまう。また、平均結晶粒径が20μmより大きい場合には、スパッタ中にArイオンの衝突を受けてターゲットが削られていく部分、いわゆるエロージョン部分の表面粗さが大きくなり、粗面の先端が高くなって脱落し、これがパーティクルとなってスパッタ膜に付着してしまう。平均結晶粒径の測定は、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットのスパッタされる面に平行な面を研磨し、偏光光学顕微鏡又はSEM(Scanning Electron Microscope)を用いて結晶粒が観察できる金属組織画像を使用する。そして、JIS H 0501「伸銅品結晶粒度試験法」に記載されている切断法に基づいて、金属組織画像の上に描いた線分によって切られる粒子数と、その切断長さから平均結晶粒径を求める。
空孔率は、1%以下である。空孔率が1%より大きい場合には、空孔がターゲット割れの起点になって割れやすくなってしまう。また、空孔率が1%より大きい場合には、スパッタリングの際に異常放電(アーク放電)が発生しやすくなってスプラッシュが飛散し、これがスパッタ膜に付着してしまう。空孔は、ターゲット研磨面のSEM、EPMA又は光学顕微鏡で観察することができる。空孔率は、これらを画像解析して求めることができる。
三点曲げ強度は、200MPa以上である。三点曲げ強度が200MPaより小さい場合には、ターゲット製造の平面研削工程やボンディング工程で割れや欠けが発生してしまう。また、200MPaより小さい場合には、スパッタ中の熱変化で割れたり、エロージョン部分に生じる粗面の先端が脱落してパーティクルが発生しやすくなる。三点曲げ強度は、JIS R1601(ファインセラミックス室温曲げ強さの試験方法)に記載の方法で求める。
以上のような構成からなるCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、Gaの濃度が30質量%〜45質量%と高いものであるが、平均結晶粒径が20μm以下、γ相群の面積割合が95面積%以上、空孔率が1%以下、かつ三点曲げ強度が200MPa以上であることによって、割れや欠損がなく、スパッタの際に異常放電やエロージョンが生じず、パーティクルがない均一な膜を形成することができる。
更に、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットのX線回折における半値幅、配向度指数について説明する。ただし、X線回折は、Cu−Kα1とKα2による回折ピークを分離してCu−Kα1線のみによる回折ピークとする。
図2に示すX線回折におけるγ相群の(222)面、(321)面、(330)面、(332)面、(422)面、(510)面、(521)面、(600)面の8つの回折ピークから求まる半値幅の平均は0.13deg.以上であることが好ましい。結晶粒が小さくなると半値幅が大きくなる。これは結晶粒の格子面の数が減少する結果、回折ピークからわずかに異なる角度θで散乱されたX線が、別な格子面からのX線によって打ち消され難くなるためである。結晶粒が小さくなると結晶粒界が増加し、金属組織が変形するときに生じる結晶転位が粒界で阻止されることによって強度が増加する。
X線回折ピークの半値幅の平均が0.13deg.以上では、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの金属組織を構成する結晶粒サイズが小さくなり、結晶粒界が増加することによって、機械強度が向上する。半値幅の平均が0.13deg.よりも小さい場合には、三点曲げ強度が200MPaよりも小さくなり、スパッタリングターゲットの割れ、欠けが発生してしまう。
図2に示すように、γ相群の(222)面、(321)面、(330)面、(332)面、(422)面、(510)面、(521)面、(600)面は、それぞれ2θが36、39、44、49、51、53、58及び64deg.近傍の位置に現れる。半値幅の平均は、各面の半値幅の合計をピーク数で除して算出することができる。
また、X線回折におけるγ相群の(222)面、(321)面、(330)面、(332)面、(422)面、(510)面、(521)面、(600)面の配向度指数K(hkl)は、1.5以下が好ましい。配向度指数K(hkl)は、下記の式により求まる。
(hkl)=(I(hkl)/ΣI(hkl))/(ID(hkl)/ΣID(hkl)
ここで、
(hkl)は測定されたγ相群の(hkl)面の回折ピーク強度であり、
D(hkl)は標準データであるICDDカードデータ中の71−0458に示されているγ相の(hkl)面の回折ピーク強度であり、
ΣI(hkl)、ΣID(hkl)は、
ΣI(hkl)=I(222)+I(321)+I(330)+I(332)
+I(422)+I(510)+I(521)+I(600)
ΣID(hkl)=ID(222)+ID(321)+ID(330)
+ID(332)+ID(422)+ID(510)
+ID(521)+ID(600)
である。
配向度指数は、値が1のときは結晶にまったく配向がないことを表し、値が大きくなると対象とする結晶面に配向が強くなることを表している。結晶の配向が強い場合には、スパッタリングターゲットからの蒸発・放出方向に偏析が生じて基板に有効に届かなくなって成膜速度の低下が生じる。また、結晶の配向が強い場合には、エロージョン形状が変化してターゲット消費量の増加も起こしやすい。Cu−Ga合金スパッタリングターゲットでは、配向度指数K(hkl)が1.5よりも大きいとこのような問題が発生する。
Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの酸素含有量は、0.2質量%以下であることが好ましい。酸素含有量が0.2質量%よりも多い場合には、異常放電(アーク放電)が発生しやすくなってスプラッシュが飛散し、これがスパッタ膜に付着してしまう。
以上のような構成からなるCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、Ga濃度が30質量%〜45質量%と高くても、平均結晶粒径、γ相群の面積割合、空孔率かつ三点曲げ強度が所定の条件を満たしていることによって、単純な合金相であり、ターゲット加工中及びスパッタ中に割れ欠けがなく、スパッタ中に異常放電となったり、膜にパーティクルが発生することを防止できる。
また、このCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、例えば異なる5〜10箇所のEPMA分析によるGa濃度分析値を求め、この分析値の最大と最小の差が3.0質量%以下となる。Cu−Ga合金スパッタリングターゲットは、Ga濃度の差が3.0質量%以下と小さく、Ga濃度のばらつきが小さいため、組成が均一な高品質なものである。したがって、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットを用いてスパッタした場合には、Ga濃度分析値の最大と最小の差が3.0質量%以下であるため、Ga濃度のばらつきが小さく、均一な組成のスパッタ膜を形成することができる。
<Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法>
以上のような構成のCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、以下に説明する撹拌工程から焼結工程を有する製造方法により製造することができる。
このCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法では、Cu粉末を、水素ガスを含む混合ガス雰囲気中で150℃〜300℃の温度で撹拌する撹拌工程と、この撹拌工程を施したCu粉末に、Gaを30質量%〜45質量%の割合で配合した混合粉末を、真空又は不活性雰囲気中で30℃〜300℃の温度で攪拌することにより、直接、Cu−Ga合金粉末を形成する合金粉末作製工程とにより得られたCu−Ga合金粉末を用いる。そして、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法は、真空又は不活性ガス雰囲気中で250℃〜836℃の温度で熱処理する熱処理工程を施したCu−Ga合金粉末を、真空又は不活性ガス雰囲気中で250℃〜836℃の温度と、5MPa〜30MPaのプレス圧力とでホットプレス法により焼結する焼結工程によってCu−Ga合金粉末を焼結し、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットを製造する。
Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法では、適切な雰囲気、低い温度による直接の合金粉形成、適切な熱処理及びターゲット焼結によって、少ない酸素含有量、小さな平均結晶粒径、大きなX線回折の半値幅(小さな結晶子)、単純な金属相、均一なターゲット組成、緻密な構造であって、結晶配向がなく、強い曲げ強度を有するCu−Ga合金スパッタリングターゲットを製造することができる。このようなCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、スパッタ中に割れることなく、均一で欠陥が極めて少ないスパッタ膜を形成できる。また、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットは、成膜速度が速く、ターゲットの消費も少ないので生産性が高い特徴を有する。
<1.Cu−Ga合金粉末の製造方法>
先ず、Cu−Ga合金粉末の製造方法について説明する。
(原料)
Cu−Ga合金粉末の原料としては、Cu粉末及びGaを用いる。
Cu粉末は、電解法により製造される電解Cu粉を使用することができる。電解Cu粉は、硫酸銅溶液等の電解液中で電気分解により陰極に海綿状又は樹枝状の形状のCuを析出させて製造される。
Cu粉末の純度は、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットから形成されるCIGS光吸収層の特性に影響を与えないように適宜選択される。Cu粉末中の酸素含有量が0.2質量%よりも多い場合には、後述する撹拌工程の処理が長時間になってしまうため、酸素含有量は0.2質量%以下であることが好ましい。また、Cu粉末中のFe、Ni、Crの含有量が3ppmよりも多い場合には、CIGS光吸収層の量子効率が低下してしまうため、Fe、Ni、Crは3ppm以下であることが好ましい。
Cu粉末の平均粒径は、5μm〜300μmであることが好ましい。Cu粉末の平均粒径が5μm以上である場合には、Cu粉末の飛散を防止する特別な取り扱いが不要となるとともに、Cu粉末のかさ容量の増加により合金粉末製造装置が大型化し、高額な装置が必要となることを防ぐことができる。また、Cu粉末の平均粒径が300μm以下である場合には、Gaが被覆しなければならないCu粉末の表面積(BET)が不足して、余剰となった未反応の液相のGaが残り易くなるのを防止することができる。これにより、Cu粉末の平均粒径が300μm以下である場合には、未反応の液相のGaの存在によりCu−Ga合金粉末の組成にばらつきが生じることを抑制できる。したがって、Cu粉末の平均粒径を5μm以上300μm以下とすることによって、Cu粉末の飛散防止の措置をとる必要がなく、合金粉末製造装置の大型化を防止でき、また未反応のGaの液相を少なくでき、Cu−Ga合金粉末の組成のばらつきを抑えることができる。
なお、Cu粉末の平均粒径は、Cu粉末の粒度分布をレーザー回折法で測定し、小径側から存在比率(体積基準)を積算して、その値が全粒径に渡った存在比率の積算値の半分になる粒径(D50)である。比表面積の値(以下BET値)は、BET法により求めることができる。
(撹拌工程)
Cu粉末は、表面が酸化すると、Gaとの反応が不十分となる。Cu粉末の表面が酸化してGaとの反応が不十分となった場合には、表面がGaによって合金化していない未反応のCu粉末が存在して、Cu−Ga合金粉末のGa濃度のばらつきが大きくなってしまう。ここで、Cu粉末に防錆剤処理を施した場合には、酸化の進行は抑制されるが、Ga濃度のばらつきは解消されない。Cu粉末とGaとの反応が不十分となる原因は、Cu粉末表面の酸化被膜や防錆剤被膜がGaとの接触を阻害しているからと考えられる。Cu粉末は、Gaと反応させる前に、表面の酸化被膜や防錆剤被膜を取り除くことで表面を活性化させ、反応性を向上させる必要がある。
そこで、撹拌工程では、Cu粉末を、水素ガスを含む混合ガス雰囲気中で150℃〜300℃の温度で撹拌する。この撹拌工程では、Cu粉末の表面から酸化被膜や防錆剤を除去する。Cu粉末は、この撹拌工程による処理により、表面の酸化被膜や防錆剤が除去され、Gaとの反応性が向上する。これにより、この撹拌工程を施した場合には、Gaと未反応のCu粉末が減少して、Cu−Ga合金粉末やCu−Ga合金スパッタリングターゲットのGa濃度のばらつきを効果的に抑制することができる。
撹拌工程は、水素ガスを含む混合ガス雰囲気中で行う。混合ガス中の水素ガス濃度は、0.1%〜5%とすることが好ましい。水素ガス濃度が0.1%よりも低い場合には、酸化被膜や防錆剤がCu粉末の表面に残留して、Gaとの反応性が不十分となり、Ga濃度のばらつきを効果的に改善することができない。水素ガス濃度が5%よりも高い場合には、酸化被膜や防錆剤の除去の効果は十分であるが、高価な水素ガスの使用量が増えてしまう。また、水素ガス濃度が高い場合には、着火・燃焼に対する高い安全性が要求されて設備が高額になってしまう。
混合ガスの残部は、窒素ガス又はアルゴンガスが好ましい。残部を窒素ガス又はアルゴンガスとした場合には、Cu粉末の表面活性化状態を維持できる。撹拌工程の雰囲気は、Cu粉末を撹拌装置に投入した後に混合ガスに置換してもよい。酸素が混入した場合には、酸化被膜や防錆剤除去が効果的に進まないので、ガス置換は圧力が100Pa以下になるまで真空排気した後に、混合ガスを導入することが好ましい。
撹拌工程の温度は、150℃〜300℃とする。150℃よりも低い場合には、酸化被膜や防錆剤がCu粉末の表面に残留してGaとの反応性が不十分となり、Ga濃度のばらつきを効果的に改善することができない。300℃よりも高い場合には、酸化被膜や防錆剤の除去の効果は十分であるが、表面が活性したCu粉末が凝集して固化してしまう。したがって、撹拌工程では、温度を150℃〜300℃とすることによって、Cu粉末の表面から酸化被膜や防錆剤を除去でき、Cu粉末のGaに対する反応性が劣らず、Ga濃度のばらつきを抑えることができ、Cu粉末が凝集することも防止できる。
温度の保持時間は、10分〜2時間とすることが好ましい。保持時間が10分よりも短い場合には、Cu粉末の表面に酸化被膜や防錆剤が残留してGaとの反応性が不十分となり、Ga濃度のばらつきを効果的に改善することができない。保持時間が2時間よりも長い場合には、Cu粉末とGaとの反応性を十分にでき、組成のばらつきが生じることの抑制効果は維持されるが、高価な水素ガスの使用量が増えてしまう。
撹拌工程は、Cu粉末を攪拌しながら行う。攪拌しない場合には、Cu粉末と混合ガスとの接触が不十分となり、Cu粉末の表面に酸化被膜や防錆剤が残留してしまうからである。
攪拌装置は、円筒、ダブルコーン、ツインシェル等の回転容器型の攪拌装置や、固定容器内を攪拌羽根や攪拌ブレード等の攪拌子が運動する攪拌装置を使用することができる。
(合金粉末作製工程)
次に、上述した撹拌工程によって表面が処理されたCu粉末に所定量のGaを加えてCu−Ga合金粉末を作製する合金粉末作製工程を行う。
次に、合金粉末作製工程では、撹拌工程を施したCu粉末に、Gaを30質量%〜45質量%の割合で配合した混合粉末を、真空又は不活性ガス雰囲気中で30℃〜300℃の温度で攪拌することにより、直接、Cu−Ga合金粉末を形成する。従来では、一旦CuとGaを高温にて溶解して合金化し、作製したCu−Ga合金インゴットを粉砕してCu−Ga合金粉末を得ていた。しかしながら、この合金粉末作製工程では、上記の条件の下で、Cu粉末とGaとを混合した混合粉末を30℃〜300℃の温度で撹拌することにより、Cu−Ga合金インゴットを作製して粉砕しなくても、原料の状態から直接Cu−Ga合金粉末を作製することができる。
具体的には、上述した割合で秤量したCu粉末とGa小片を、Gaの融点よりも高くCuの融点よりも低い温度、即ち30℃〜300℃の範囲で温度を制御し、Cu粉末の表面にCu−Ga二元系合金を形成する。
Cu−Ga合金化物は、次のような過程を経て形成されるものと考えられる。融点を超えて液体となったGaは、混合のせん断運動によって小さな液滴になりながらCu粉末間に均一に分散する。分散したGa液滴は、Cu粉末の周囲に付着し、Cu粉末とGa液滴が接触するとCu粉末にGaの拡散が始まり、Ga濃度が高まるとともにCu−Ga金属間化合物を生成しながら合金化反応が進行する。このとき、Cu−Ga合金化物の表面は、Ga濃度の高いCu−Ga金属間化合物層であって、中心部は純Cuとなる。
このCu粉末とGaとの混合は、均一な合金化反応(均質化反応)の進行に有効である。また、混合のせん断運動は、粉同士の固着による塊状物の生成も抑制していると思われる。塊状物が生成された場合には、後のホットプレス等の焼結工程において、焼結体中に空孔が形成されて、密度が不均一になってしまう。
Gaは、Cu粉末と同様に、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットから形成されるCIGS光吸収層の特性に影響を与えないように適宜選択される。Gaの純度は、Cu粉末と同様に、Fe、Ni、Crが3ppmよりも多いとCIGS光吸収層の量子効率が低下してしまうので、Fe、Ni、Crは3ppm以下であることが好ましい。Ga中の酸素含有量は、0.2質量%以下であることが好ましい。Ga中の酸素含有量が0.2質量%よりも多い場合には、スパッタリング中に異常放電が発生しやすくなる。
Gaは、融点が低い金属(融点:29.78℃)である。Cu粉末に投入するGaは、融解した液体Gaである場合、直ちに攪拌を開始できるので好ましい。Gaの形状には、制限はないが、小片であると秤量が容易である。小片は、Gaを室温近傍で溶解して鋳造し、鋳造物を砕いて得ることができる。
Cu粉末とGaは、質量比で70:30〜55:45の割合で配合する。合金粉末作製工程では、Gaが30質量%以上であることにより、Cu粉末の表面にGaを短時間で均一に被覆することができ、Gaが45質量%以下であることにより、短時間で被覆したGaを合金化することができる。この合金粉末作製工程で形成されるCu−Ga合金粉末は、Cu粉末の表面にCu−Ga合金層が存在する。
合金粉末作製工程は、真空又は不活性ガス雰囲気中で行う。合金粉末作製工程では、真空又は不活性ガス雰囲気中で合金化することによって、Cu−Ga合金粉末に酸素が含まれることを抑制できる。
真空又は不活性ガス雰囲気中の酸素分圧は、20Pa以下であることが好ましい。20Paより高い場合には、形成したCu−Ga合金粉末の酸素含有量が増加し、作製したスパッタリングターゲットの酸素含有量も増加して、大きな投入電力でスパッタすると異常放電を発生してしまう。不活性ガス雰囲気は、窒素ガス又はアルゴンガスが好ましい。
合金化する際の温度は、30℃〜300℃である。30℃よりも低い場合には、Cu粉末とGaの反応性が不十分となり、未反応のCu粉末が残り、Cu−Ga合金粉末のGa濃度がばらついてしまう。300℃よりも高い場合には、Cu粉末の表面が合金化するが、温度が高くなるとCu−Ga合金粉末同士が凝集しはじめてしまう。この凝集は、攪拌によるせん断運動で解くことができるため、300℃より高温でCu−Ga合金粉末を形成することはできるが、攪拌装置の熱劣化が激しく、装置部品の交換の頻度を高めるためコスト高になってしまう。したがって、温度は、30℃〜300℃とすることによって、凝集することなく、Cu粉末とGaとを十分に反応させることができる。
温度の保持時間は、30分〜4時間が好ましい。保持時間が30分よりも短い場合には、Cu粉末とGaの反応性が不十分となり、未反応のCu粉末が残り、Cu−Ga合金粉末のGa濃度がばらついてしまう。保持時間が4時間より長い場合には、真空又は不活性ガス雰囲気であってもCu−Ga合金粉末の酸素含有量が増加してしまう。したがって、温度の保持時間は、30分〜4時間とすることによって、Cu粉末とGaとを十分に反応させ、Cu−Ga合金粉末の酸素含有量の増加を抑制できる。
攪拌は、Cu粉末とGaとの接触頻度を上げて反応を進める効果と同時に、凝集を抑制して直接にCu−Ga合金粉末を形成することに有効である。
攪拌装置は、撹拌工程と同様の円筒、ダブルコーン、ツインシェル等の回転容器型の攪拌装置や、固定容器内を攪拌羽根や攪拌ブレード等の攪拌子が運動する攪拌装置を使用することができる。上述した撹拌工程を施したCu粉末は、大気に触れると直ちに表面が酸化してGaとの反応性が低下してしまう。このため、合金粉末作製工程は、撹拌工程を行う同一の攪拌装置内で撹拌工程に続けて合金化を行うことによって、大気と遮断したままで行うことができるので好ましい。
撹拌工程及び合金粉末作製工程に使用する攪拌装置の容器及び攪拌子の材質は、耐熱性、耐磨耗性、Fe、Ni、Cr等の金属不純物の混入抑制等の観点から、窒化チタン(TiN)、窒化クロム(CrN)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)(Diamond like Carbon)をコーティングしたステンレス材が好ましい。
以上のように、Cu−Ga合金粉末の製造方法では、Cu粉末に対して撹拌工程を施すことによって、Cu粉末の表面のGaとの反応性が高くなり、Cu粉末の表面にGa濃度が高く均一なCu−Ga金属間化合物層を形成することができる。得られたCu−Ga合金粉末は、Cu−Ga金属間化合物層におけるGaの濃度のばらつきが抑えられ、ばらつきは3.0質量%以内となる。
<2.Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法>
次に、上述した撹拌工程及び合金粉末作製工程により得られたCu−Ga合金粉末を用いてCu−Ga合金スパッタリングターゲットを製造する製造方法について説明する。
(熱処理工程)
熱処理工程は、上述した合金粉末作製工程により得られたCu−Ga合金粉末を、真空又は不活性ガス雰囲気中で250℃〜836℃の温度で熱処理する。
このことについて図1に示すCu−Ga系合金の状態図を用いて説明する。状態図において、液相線で示す温度以上の領域は液相のみが存在する液相領域であり、固相線で示す温度以下の領域は固相のみが存在する固相領域であり、これらの線の間の温度領域は液相と固相の共存領域である。
粉末表面にGaが多く存在する熱処理前のCu−Ga合金粉末は、固相領域に位置している。このCu−Ga合金粉末に熱処理を施した際には、粉末自体が固相領域に位置した状態で合金化が完了する場合と、一時的に液相と固相の共存領域に位置するも最終的に固相領域に位置して合金化が完了する場合があるものと考えられる。
即ち、前者の場合は、粉末表面に多く存在するGaが粉末内部に拡散してCuとの合金化が進行するものと考えられる。
後者の場合は、Gaの粉末内部への拡散が遅く、粉末の表面部分が液相となり、液相と固相の共存領域に位置するものと考えられる。このときに出現した液相は周囲のCu−Ga合金粉末と接触を繰り返すことで合金化が進行し、最終的には固相領域に位置するものと考えられる。従って、後者の場合にホットプレス装置で加圧していると、発生した液相が流動してプレス型の隙間から押し出されてしまうこととなる。
そこで、熱処理工程では、ホットプレスによる焼結を行う前に、Cu−Ga合金粉末を熱処理する。Cu−Ga合金粉末は、この熱処理により、Cu粒子表面に存在する低融点のCu−Ga合金層が熔け始めると同時に、Cu粒子表面のCu−Ga合金層中のGaと粒子内部のCuとが相互拡散して、Cu粒子の表面のGa濃度が低下し、液相の出現温度を高くすることができる。これにより、後に行う焼結工程では、ホットプレスによる焼結中にGaの液相が発生することなく焼結が進行してスパッタリングターゲットを作製することができる。
熱処理の温度は、250℃〜836℃である。250℃よりも低い場合には、Cu粒子表面の合金層中のGaと粒子内部のCuとの相互拡散が十分に進まず高Ga濃度の合金層が残存して、ホットプレスによる焼結中にGa液相が出現してCu−Ga合金粉末の漏れが発生してしまう。836℃よりも高い場合には、多量の液相が発生してCu−Ga合金粉末と分離してしまう。
熱処理の温度は、合金粉末作製工程におけるGaの配合割合によって調整することが好ましい。熱処理中に少量の液相が発生して凝集体が形成された場合には、その凝集は弱いので後の焼結工程の焼結に影響はないが、高い温度で熱処理を行って多量の液相が出現した場合には、液相が集まってCu−Ga合金粉末と分離してしまい組成のばらつきが大きくなってしまう。このような液相の分離は、合金粉末作製工程におけるGaの配合割合に応じて熱処理温度を制御することにより効果的に抑制することができる。
具体的に、合金粉末作製工程におけるGaの配合割合をX質量%とし、熱処理温度について説明する。Gaの配合割合(X質量%)と熱処理温度(T℃)との関係は図1に示す状態図で表される。状態図の固相線を越えた温度では、液相が出現する。したがって、熱処理の温度は、250℃以上、固相線以下の温度とすることが好ましい。熱処理工程において、熱処理温度を250℃以上、固相線以下の温度とすることによって、液相が発生することなく、Cu粒子表面の合金層中のGaと粒子内部のCuとを相互拡散させることができる。
固相線をGaの配合割合(X)と熱処理温度(T)とからなる近似式で表すと次のようになる。Xが25.0質量%〜29.34質量%の範囲では、T=−0.102・X−4.16・X+1045.4となる。Xが29.34質量%〜31.5質量%の範囲では、T=836となる。Xが31.5質量%〜39.0質量%の範囲では、T=−4.8169・X+292.85・X−3609.4となる。Xが39.0質量%〜45質量%の範囲では、T=−3.6111・X+264.17・X−4325となる。
上記の近似式で計算される温度等から熱処理温度を例示すると以下のようになる。
合金粉末作製工程におけるGaの配合割合が35質量%である場合、熱処理工程の熱処理温度は、250℃〜740℃となる。合金粉末作製工程におけるGaの配合割合が40質量%の場合は、熱処理工程の熱処理温度は、250℃〜464℃となる。
なお、合金粉末作製工程におけるGaの配合割合が30質量%である場合、熱処理工程の熱処理温度は、図1に示す状態図から250℃〜836℃となる。合金粉末作製工程におけるGaの配合割合が45質量%の場合、熱処理工程の熱処理温度は、図1に示す状態図から250℃〜254℃となる。
熱処理温度の保持時間は、30分〜4時間とすることが好ましい。保持時間が30分よりも短い場合には、CuとGaの相互拡散が不十分となり、次の焼結工程のホットプレスで液相が出現しプレス型からCu−Ga合金粉末が押し出されてしまう。保持時間が4時間よりも長い場合には、酸素分圧20Pa以下の真空又は不活性ガス雰囲気中であっても、Cu−Ga合金粉末の酸素含有量が増加し、作製したスパッタリングターゲットの酸素含有量も増加して、大きな投入電力でスパッタすると異常放電が発生してしまう。
熱処理は、真空又は不活性ガス雰囲気中で行う。真空又は不活性雰囲気中の酸素分圧は、20Pa以下であることが好ましい。20Paより高い場合では、熱処理したCu−Ga合金粉末の酸素含有量が増加し、作製したスパッタリングターゲットの酸素含有量も増加して、大きな投入電力でスパッタすると異常放電が発生してしまう。不活性雰囲気は、窒素ガス又はアルゴンガスとすることが好ましい。
この熱処理工程は、後述する焼結工程と同一のホットプレス装置内で行うことが好ましい。焼結工程と同一のホットプレス装置内で熱処理を行った場合には、熱処理装置を別に設ける必要がなく、熱処理後の冷却時間やCu−Ga合金粉末の取り出し工程も不要にできる。これにより、熱処理工程と焼結工程を同一のホットプレス装置で行った場合には、別の熱処理装置を用いて熱処理を行った場合に比べて、冷却時間が不要であるため、スパッタリングターゲットの作製時間を短縮でき、Cu−Ga合金粉末を取り出す必要がないため、収率が低くなることを防止できる。
熱処理工程を焼結工程と同一のホットプレス装置内で行う際には、プレス圧力はCu−Ga合金粉末に対して無負荷とするか、又は0.1MPa以下の圧力とすることが好ましい。0.1MPa以下の圧力というのは、ホットプレス装置の上パンチの自重による圧力に相当し、無負荷又は0.1MPa以下の圧力というのは実質的にCu−Ga合金粉末に圧力がかかっていない状態である。このような状態にすることで、液相が出現したとしても、Cu−Ga合金粉末がホットプレス装置のプレス型から漏れ出ることを防止できる。
(焼結工程)
次に、前記熱処理工程で熱処理したCu−Ga合金粉末を、真空又は不活性ガス雰囲気中で250℃〜836℃の温度と、5MPa〜30MPaのプレス圧力とでホットプレス法により焼結する。
ホットプレスの雰囲気は、真空又は不活性ガス雰囲気中とすることで、焼結体の酸素含有量の増加を抑制できる。真空又は不活性ガス雰囲気中の酸素分圧は、20Pa以下が好ましい。20Paより大きい場合では、形成したCu−Ga合金焼結体の酸素含有量が増加し、作製したスパッタリングターゲットの酸素含有量も増加して、大きな投入電力でスパッタすると異常放電が発生してしまう。不活性ガス雰囲気は、窒素ガス又はアルゴンガスが好ましい。
ホットプレスの温度は、250℃〜836℃とする。温度が250℃よりも低い場合には、Cu−Ga合金粉末の焼結が不十分で、空孔の多い焼結体となってしまう。空孔の多い焼結体をスパッタリングターゲットにしてスパッタした場合には、異常放電やスプラッシュが発生してしまう。温度が830℃よりも高い場合には、液相が出現し、焼結体を作製することができなくなってしまう。したがって、ホットプレスの温度は、250℃〜836℃とすることによって、液漏れが生じず、空孔の少ない焼結体を作製することができる。
ホットプレスのプレス圧力は、5MPa〜30MPaとする。プレス圧力が5MPaよりも低い場合には、Cu−Ga合金粉末の焼結が不十分で空孔の多い焼結体となってしまう。プレス圧力を高くした場合には、焼結体は空孔が減少して密度が上昇するが、30MPaより高くしても密度はほとんど上昇しなくなってしまう。30MPaよりも高いプレス圧力でプレスしようとした場合には、プレス型を特別な材質に変更したり、大きな電力が必要になってくるので、プレス圧力は30MPa以下で十分である。
焼結工程では、熱処理工程で用いたホットプレス装置からCu−Ga合金粉末を取り出さず、熱処理工程に引き続いて同一のホットプレス装置で加圧焼結を行い、ホットプレスの温度を熱処理工程の熱処理温度と同じにすることが好ましい。同一のホットプレス装置で熱処理及び焼結を行うようにした場合には、熱処理工程のための熱処理装置を別に用意する必要がなく、熱処理後の冷却時間が不要である。焼結工程では、ホットプレス温度を熱処理と同じ温度にすることで、熱処理に引き続いてプレス圧力を掛けるので容易に焼結を行うことができる。また、焼結工程では、同一のホットプレス装置内で熱処理も焼結も行うことによって、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの組成が変化したり、収率が低くなることを防止できる。
(仕上げ工程)
仕上げ工程は、焼結工程によって得られたCu−Ga合金の焼結体の表面を研削により平面に仕上げ、Cu製のバッキングプレートにボンディングすることにより、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットを得る。
以上のようなCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法では、Ga濃度が30質量%〜45質量%と高く、平均結晶粒径が20μm以下、γ相群の面積割合が95面積%以上、空孔率が1%以下、かつ三点曲げ強度が200MPa以上であるCu−Ga合金スパッタリングターゲットを製造中に割れ欠けがなく製造でき、得られたCu−Ga合金スパッタリングターゲットはスパッタリング中に割れたり、欠けたりせず、異常放電やパーティクルの発生も防止できている。
また、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法では、スパッタリングターゲットの原料となるCu−Ga合金粉末を作製する際に、Cu粉末を、水素ガスを含む混合ガス雰囲気中において150℃〜300℃の温度で撹拌することによって、Cu粉末の表面のGaとの反応性が高まり、Cu粉末とGaとの反応が十分に行われるようになる。これにより、得られたCu−Ga合金粉末は、Cu粉末の表面に、Ga濃度が高くGa濃度のばらつきが3.0質量%以内に抑制された均一なCu−Ga金属間化合物層が形成される。
Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法では、このGa濃度のばらつきが抑制されたCu−Ga合金粉末を真空又は不活性ガス雰囲気中で250℃〜836℃の温度で熱処理することによって、Cu粒子表面のCu−Ga金属間化合物層中のGaと粒子内部のCuとが相互拡散して、Cu粒子の表面のGa濃度が低下し、焼結中にGaの液相が発生することを抑制できる。
このようにCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法では、Ga濃度のばらつきが抑制されたCu−Ga合金粉末を原料に用い、このCu−Ga合金粉末に対して焼結前に熱処理を行うことによって、焼結工程においてホットプレスによる焼結中にGaの液相が発生することなく焼結が進行し、Ga濃度のばらつきが抑制されたスパッタリングターゲットを作製することができる。このCu−Ga合金スパッタリングターゲットの製造方法により得られたCu−Ga合金スパッタリングターゲットは、Gaの濃度のばらつきが3.0質量%以内の組成が均一な高品質のものとなる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
[撹拌工程]
先ず、第1の工程として撹拌工程では、防錆剤処理された電解Cu粉末(平均粒径100μm、BET0.088m/g、Fe、Cr、Niそれぞれ1ppm未満、酸素:0.16質量%、炭素0.011質量%)650gを、TiNコーティング容器及び攪拌子を備えた二軸遊星型5L混合撹拌装置(小平製作所製5XDmv−rr型)に投入した。容器内を真空度100Pa以下(酸素分圧20Pa以下)まで真空排気した後に、水素と窒素の混合ガス(水素ガス濃度1%)で置換し、攪拌しながら250℃、30分間保持した後、150℃まで冷却した。
[合金粉末作製工程]
次に、第2の工程として合金作製工程では、容器内を真空度50Pa以下(酸素分圧10Pa以下)まで真空排気した後、Arガスに置換した。Ga(Fe、Cr、Niそれぞれ1ppm未満、酸素0.01質量%未満、炭素0.001質量%未満)を50℃に加温した液体Gaを、Cu粉末の入っている容器内に350g(Ga配合割合35質量%)投入した。攪拌しながら150℃、1時間保持した。室温まで冷却して取り出したCu−Ga合金粉末を顕微鏡観察したところ、Cu粉末表面は合金化して灰白色になっており、Cu−Ga合金で被覆されていない未反応のCu粉末は認められなかった。合金粉末1gのサンプルを3点採取してICP分析(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)によりGa濃度を調べたところ、最小34.4質量%、最大35.8質量%であって、最大と最小の差は1.4質量%と小さかった。
[熱処理工程]
次に、第3工程として熱処理工程では、Cu−Ga合金粉末100gをホットプレス用の内径50mm黒鉛型にセットし、ホットプレス装置(大亜真空株式会社製)に取り付けた。装置内を50Pa以下(酸素分圧10Pa以下)まで真空排気しながら、プレス圧力は無負荷の状態で加熱し、温度750℃、1時間保持の条件で熱処理した。
[焼結工程]
引き続いて第4工程として焼結工程では、温度750℃のままプレス圧力30MPaを加圧し1時間保持の条件でホットプレスを実施し、直径50mm、厚み6mmの焼結体(ターゲット材)を取り出した。実施例1では、焼結体を製造するにあたって、割れは発生しなかった。
[評価]
同様の方法で焼結体を複数作製し、これらの焼結体を光学顕微鏡観察、EPMA分析、X線回折測定、三点曲げ強度測定、酸素含有量分析及びスパッタ成膜に使用した。
(半値幅)
焼結体のスパッタ面に相当する直径(φ)50mmの面を、X線回折装置(スペクリスト社製、X‘PertPRO/MPD)を用いて測定した。その結果、2θが36、39、44、49、51、53、58及び64deg.近傍の位置に回折ピークがあり、それぞれγ相群の(222)面、(321)面、(330)面、(332)面、(422)面、(510)面、(521)面、(600)面と特定された。γ相群の8つの面の回折ピークの半値幅は、表1に示すようになった。これら8つの面の回折ピークの半値幅の平均は0.26deg.と大きかった。ここで、半値幅は、Cu−Kα1とKα2のピーク分離を行ってCu−Kα1線のみによる回折ピークを抽出して求めた。
(配向度指数)
X線回折におけるγ相群の(222)面、(321)面、(330)面、(332)面、(422)面、(510)面、(521)面、(600)面の配向度指数は、表2に示すようになった。すべての面において、配向度指数が1.5以下であり、1に近いものとなったので結晶の配向性は少ないとわかった。また、γ相群と異なる金属相の回折ピークは認められなかった。
(空孔率)
焼結体のスパッタ面に相当する直径(φ)50mmの面を研磨した。この研磨面を光学顕微鏡観察したところ、図3に示すように、色調が一様であり、単純なひとつの金属相からなることがわかる。また空孔がほとんどなく緻密であることがわかる。空孔率は、研磨面を200倍で撮影した異なる5つ視野の画像から画像解析ソフトImageJを用いて空孔部分を抽出して面積割合を求めた。その結果、空孔率は0.007%と極めて少なかった。
(平均結晶粒径)
結晶粒が観察できるよう偏光観察に切り替えたところ、小さな結晶粒組織であった。200倍で撮影した異なる5つ視野の偏光顕微鏡画像に、線分を引き、線分を横切る結晶粒の数を求め、線分長さをこの粒子数で除して平均結晶粒径を求めた。その結果、平均結晶粒径は13μmであった。
(面積割合)
EPMA分析装置(日本電子(株)社製JXA−8100)により二次電子像、反射電子像および定量分析から、この焼結体のスパッタ面に相当する研磨面のγ相群を特定し、画像から面積割合を求めた。面積割合は、99.9面積%であり、単純な金属相から構成されているとわかった。
(スパッタリングターゲットの均一性)
EPMA分析によりスパッタ面に相当する研磨面の異なる6箇所のGa濃度を分析した。この結果、最小34.5質量%、最大35.4質量%であって最大と最小の差0.9質量%と小さく、組成が均一なターゲットであった。
(酸素含有量)
焼結体の酸素含有量を不活性ガス融解−赤外線吸収法により分析した結果、酸素含有量は0.04質量%と少なかった。
(三点曲げ強度)
焼結体から30mm×4mm×3mmの試験片を5個切り出し、JIS R1601(ファインセラミックス室温曲げ強さの試験方法)に記載の方法に則って三点曲げ試験を行い、5試料の三点曲げ強度の平均値を算出したところ、271MPaであった。
以上の結果を表3、表4に示す。
[スパッタ膜の作製]
次に、焼結体を平面研削してCu製バッキングプレートに接合してCu−Ga合金スパッタリングターゲットを作製した。これをスパッタ装置(アルバック製SH450)に取り付け、1.0×10−4Pa以下まで真空排気した後、Arガス(純度:99.99%)を導入して、Arガス圧0.5Pa、DC100Wの条件でスパッタし、スパッタ膜を成膜した。マイクロアークモニター(ランドマークテクノロジー社製)を用いて1分間平均の異常放電を計数した結果、平均値は0回/分であり、異常放電のない良好なターゲットであるとわかった。また、スパッタ中にCu−Ga合金スパッタリングターゲットが割れることはなかった。
(パーティクル)
このCu−Ga合金スパッタリングターゲットを用いて、直径3インチのSiウエハー基板に成膜したスパッタ膜を光学顕微鏡観察して、スプラッシュやパーティクルが付着した膜欠陥の数を求めた結果、0.0個/cmであり、膜欠陥がなかった。
(成膜速度)
ソーダライムガラス基板に成膜したスパッタ膜の膜厚と成膜時間から求めた成膜速度は10.2nm/minであった。
(膜の均一性)
スパッタ膜の組成について、スパッタ面に相当する研磨面の異なる5箇所のEPMA分析をした結果、最小34.7質量%、最大35.2質量%であって、最大と最小の差は0.5質量%と極めて小さく均一な膜とわかった。
(成膜時間・消費率)
スパッタ積算時間10時間の時点でオプティカルプロファイラー(Zygo社製NewView6200)を用いてターゲットのエロージョン最深部の表面粗さを測定した結果、平均粗さRaは0.89μmであった。スパッタ積算時間10時間までにターゲットが減少した重量とスパッタ前のターゲット重量の比から求めたターゲット消費率は17%であった。
以上の結果を表4、表5、表6に示す。
<実施例2>
実施例2では、電解Cu粉700g、Ga300g、第3工程の熱処理工程及び第4工程の焼結工程を830℃、とした以外は実施例1と同様にしてCu−Ga合金焼結体を作製した。作製したCu−Ga合金焼結体をX線回折分析したところ、γ相群の回折ピークの他に、β相と思われる別な金属相の小さな回折ピークも混入していた。γ相群の半値幅は、表1に示すようになり、配向度指数は表2に示すようになった。また、Cu−Ga合金焼結体について、実施例1と同様に光学顕微鏡観察、EPMA分析、X線回折測定、三点曲げ強度測定、酸素含有量分析を行った結果を表3、表4に示す。
次に、実施例1と同様にCu−Ga合金焼結体を用いてCu−Ga合金スパッタリングターゲットを作製してスパッタした結果を表4、表5、表6に示す。
<実施例3>
実施例3では、電解Cu粉600g、Ga400g、第3工程の熱処理工程及び第4工程の焼結工程を400℃、とした以外は実施例1と同様にしてCu−Ga合金焼結体を作製した。Cu−Ga合金焼結体について、実施例1と同様に光学顕微鏡観察、EPMA分析、X線回折測定、三点曲げ強度測定、酸素含有量分析を行った結果を表3、表4に示す。次に実施例1と同様にCu−Ga合金焼結体を用いてCu−Ga合金スパッタリングターゲットを作製してスパッタした結果を表4、表5、表6に示す。
<参考例1>
参考例1では、電気銅650g、Ga片350gを黒鉛るつぼに入れ、真空溶解炉(大亜真空製)にセットした。炉内を9.0×10−3Pa以下まで真空に引いた後に、27kPaとなるようにArガスを導入した。この状態で高周波電源を用いて黒鉛るつぼを加熱し、電気銅及びGaを溶解して、黒鉛鋳型に注いで鋳造した。この鋳造塊をArガス雰囲気中、ジョークラッシャーで粉砕してCu−Ga合金粉末を作製した。
次に、Cu−Ga合金粉末100gをホットプレス用の内径50mm黒鉛型にセットし、ホットプレス装置(大亜真空株式会社製)に取り付けた。装置内を50Pa以下(酸素分圧10Pa以下)まで真空排気しながら、プレス圧力30MPa、温度750℃、1時間保持の条件でホットプレスして、直径50mm、厚み6mmの焼結体(ターゲット材)を取り出した。
作製したCu−Ga合金焼結体の半値幅は、表1に示すようになり、配向度指数は表2に示すようになった。
焼結体を実施例1と同様に光学顕微鏡観察、EPMA分析、X線回折測定、三点曲げ強度測定、酸素含有量分析を行った結果を表3、表4に示す。実施例1と同様にスパッタリングターゲットを作製してスパッタした結果を表4、表5、表6に示す。
<参考例2>
比較例2では、電気銅570g、Ga片430g、ホットプレス温度250℃とした以外は参考例1と同様にして焼結体及びスパッタリングターゲットを作製した。
焼結体を実施例1と同様に光学顕微鏡観察、EPMA分析、X線回折測定、三点曲げ強度測定、酸素含有量分析を行った結果を表3、表4に示す。実施例1と同様にスパッタリングターゲットを作製してスパッタした結果を表4、表5、表6に示す。
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以上、表3に示す結果から、実施例1〜3のスパッタリングターゲットは、空孔率が1%以下、平均結晶粒径が20μ以下、γ相群の面積割合が95.0面積%以上であることから緻密であり、微細な平均結晶粒径と単純な金属相を有し、三点曲げ強度が200MPa以上と強いことがわかる。
また、表1、2から、実施例1〜3のスパッタリングターゲットは、半値幅の平均が0.13deg.以上と幅広いX線回折による半値幅を持ち、配向度指数が1.5以下であり、結晶配向がほとんどないことがわかる。表4から、酸素含有量が0.2%以下と少なく、またGa濃度の差が3.0質量%以下と小さいことからスパッタリングターゲット内の組成が均一であることがわかる。表4、表5から、実施例1〜3のスパッタリングターゲットを用いてスパッタすれば、スパッタリングターゲットが割れることなく、均一なスパッタ膜を形成できるとわかる。また、表5から、実施例1〜3のスパッタリングターゲットは、空孔率が1%以下であることから異常放電が発生せず、また平均結晶粒径が20μm以下であり、三点曲げ強度が200MPa以上であることから、エロージョン粗さが小さく平滑となり、膜欠陥の少ないスパッタ膜を形成できることがわかる。更に、表6から、実施例1〜3のスパッタリングターゲットは、γ相群の8面の配向度指数が1.5以下であることから、成膜速度が速く、ターゲットの消費も少なく、生産性が高いことがわかる。
一方、参考例1では、平均結晶粒径が20μmよりも大きく、三点曲げ強度が200MPaよりも小さいことから、スパッタの際に割れが発生し、エロージョン粗さが大きくスパッタリングターゲットの表面が平滑ではなく、膜にパーティクルが発生した。
参考例2では、平均結晶粒径が20μmよりも大きく、三点曲げ強度が200MPaよりも小さいことから、スパッタの際に割れが発生した。また、参考例2では、γ相群の面積割合が95面積%よりも少ないことから、膜の均一性が得られなかった。更に、参考例2では、空孔率が1%よりも大きいため、割れが発生し、異常放電も発生した。
上述した実施例及びに参考例から、Cu−Ga合金スパッタリングターゲットの空孔率を1%以下、平均結晶粒径が20μ以下、γ相群の面積割合が95面積%以上、空孔率が1%以下、かつ三点曲げ強度が200MPa以上であることによって、Ga濃度が30質量%〜45質量%と高くても、割れ、スパッタリング中の異常放電が発生せず、また膜にパーティクルが発生せず、組成が均一なスパッタ膜を形成することができる。

Claims (3)

  1. Ga濃度が30質量%〜45質量%のCu−Ga合金スパッタリングターゲットであって、
    平均結晶粒径が20μm以下、γ相、γ相、γ相及びγ相からなる群の面積割合が95面積%以上、空孔率が1%以下、かつ三点曲げ強度が200MPa以上、かつX線回折ピークの半値幅の平均が0.13deg.以上であり、
    X線回折におけるγ相、γ相、γ相及びγ相からなる群の(222)面、(321)面、(330)面、(332)面、(422)面、(510)面、(521)面、(600)面の下記式から求まる配向度指数K(hkl)が1.5以下であることを特徴とする請求項1記載のCu−Ga合金スパッタリングターゲット。
    (hkl)=(I(hkl)/ΣI(hkl))/(ID(hkl)/ΣID(hkl)
    ただし、式中の
    (hkl)は測定された前記群の(hkl)面の回折ピーク強度であり、
    D(hkl)は標準データであるICDDカードデータ中の71−0458に示され
    ているγ相の(hkl)面の回折ピーク強度であり、
    ΣI(hkl)、ΣID(hkl)は、
    ΣI(hkl)=I(222)+I(321)+I(330)+I(332)
    +I(422)+I(510)+I(521)+I(600)
    ΣID(hkl)=ID(222)+ID(321)+ID(330)
    +ID(332)+ID(422)+ID(510)
    +ID(521)+ID(600)
    である。
  2. 酸素含有量が0.2質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のCu−Ga合金スパッタリングターゲット。
  3. Ga濃度のばらつきが3.0質量%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のCu−Ga合金スパッタリングターゲット。
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