JP2009149940A - 窒化物含有ターゲット - Google Patents

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【課題】本願発明の目的は、ターゲットの機械的強度を改善し、成膜中に発生するドロップレットの量を抑制したターゲットを提供することである。
【解決手段】周期律表4a、5a、6a族元素から選択される1種以上のM成分元素とホウ素を有するターゲットにおいて、該ターゲットのホウ素は窒化ホウ素として含有し、窒化ホウ素の含有量はモル%で、5%以上、30%以下であることを特徴とする窒化物含有ターゲットで、該窒化ホウ素の含有量はモル%で、5%以上、30%以下であることを特徴とする窒化物含有ターゲットである。
【選択図】なし

Description

本願発明は、物理蒸着用の窒化ホウ素を含有するターゲットに関するものであり、特にアークイオンプレーティング法(以下、AIP法と記す。)、マグネトロンスパッタリング法(以下、MS法と記す。)により硬質皮膜を被覆する蒸発源として使用される硬質皮膜形成用のターゲットに関するものである。
特許文献1はホウ素を含有した合金ターゲットを、特許文献2は窒化ホウ素からなるターゲットを使用した成膜技術が開示されている。また、ドロップレットの発生を低減する技術が、特許文献3〜5に開示されている。
特許3779951公報 特開平11−12717号公報 特開2004−99966号公報 特開2003−286566号公報 特開2003−286564号公報
本願発明の目的は、ターゲットの機械的強度を改善し、成膜中に発生するドロップレットの量を抑制したターゲットを提供することである。ホウ素を含有する皮膜を形成するために、AIP法、MS法で用いるターゲットであって、切削工具用の皮膜に用いた場合、皮膜内部に存在するドロップレット及び皮膜表面に存在するドロップレットの量を大幅に減少させることができ、切削加工中においてドロップレットを起点とした皮膜の剥離及びドロップレットの脱落による早期摩耗を抑制することである。
本願発明は、周期律表4a、5a、6a族元素から選択される1種以上のM成分元素とホウ素を有するターゲットにおいて、該ターゲットのホウ素は窒化ホウ素として含有していることを特徴とする窒化物含有ターゲットである。本願発明のターゲットは、上記の構成を採用することによって、ターゲットの機械的強度を改善し、成膜中に発生するドロップレットの量を抑制したターゲットを提供することができる。ホウ素を含有する皮膜を形成するために、AIP法、MS法で用いるターゲットであって、切削工具用の皮膜に用いた場合、皮膜内部に存在するドロップレット及び皮膜表面に存在するドロップレットの量を大幅に減少させることができ、切削加工中においてドロップレットを起点とした皮膜の剥離及びドロップレットの脱落による早期摩耗を抑制することができる。
また、本願発明の窒化物含有ターゲット材は、窒化ホウ素の含有量はモル%で、5%以上、30%以下であることが好ましい。更に、M成分元素の1部をAl、Si、Sから選択される1種以上の元素で置換したことが好ましい。
本願発明のターゲットは、抗折強度で評価される機械的強度を改善し、成膜中に発生するドロップレットの量を抑制したターゲットを提供することができた。ホウ素を含有する皮膜を形成するために、AIP法、MS法で用いるターゲットであって、切削工具用の皮膜に用いた場合、皮膜内部に存在するドロップレット及び皮膜表面に存在するドロップレットの量を大幅に減少させることができ、切削加工中においてドロップレットを起点とした皮膜の剥離及びドロップレットの脱落による早期摩耗を抑制することができた。
AIP法などで使用される蒸発源であるターゲットにおいて要求される第1の特性は、異常放電や局部的な溶融に起因して発生するドロップレット又はマイクロパーティクルと呼ばれる巨大粒子の発生量が少ないこと、第2の特性は、強度及び靭性不足により割れなどの破損が生じないことである。
第1の特性について述べる。AIP法によって硬質皮膜を被覆する場合、アーク放電で発生するアークスポットが、ターゲット表面上に電子を放出させる部位として形成される。アークスポットは、1点または、同時に複数点発生し、ターゲット表面上を高速かつ均一に移動させることが必要である。しかし、アークスポットの移動が滞留すると、その滞留部分に大きな溶解部が生じ、その溶解液滴が基材表面及び、皮膜表面に付着する。この付着した溶解液滴は、ドロップレット、パーティクル又はマクロパーティクルなどと呼ばれ、皮膜の表面を荒らす原因になる。例えば、被覆工具にドロップレットが多数付着すると、ドロップレットを起点とした皮膜の剥離及びドロップレットの脱落にともなう皮膜の早期摩耗などにより、工具の性能を劣化させる。ターゲットが単一金属、または単一組織といった均質な場合には、アークスポットは、ターゲット表面上を均一に移動する傾向にある。しかし、ターゲットが複数元素から構成され、その組織に複数の相を含む場合には、アークスポットが均一に移動し難く、皮膜表面及び皮膜内部にドロップレットを含み易い。
本願発明は、金属元素との窒化物、炭窒化物などの皮膜を形成するターゲットにおいて皮膜にホウ素を添加する必要があるときに、ホウ素元素単独ではなく、窒化ホウ素として含有することで、ターゲット中におけるM成分とホウ素との化合物の形成を抑制し、発生するドロップレットの量を低減することが出来た。窒化ホウ素の電気伝導率は5×10−5(Ω−1・m−1)であり、ターゲットを構成する元素とホウ素の化合物の電気伝導率と比較して低いため、アーク放電を行なった際、アークスポットの滞留が起こらず、アークスポットを素早く移動させることが可能となった。本願発明でいう窒化ホウ素とは、窒素とホウ素の化合物であれば良く、通常BNで表される化合物が望ましいが、必ずしも化学量論的にBNである必要はない。
一方、ホウ素を含むターゲットを製造する場合、ホウ素元素を単独で添加すると、その焼結等のプロセス中において、ホウ素元素が他のM成分元素と反応して化合物を形成してしまう。例えば、TiAlB系合金の場合、TiとBの化合物、AlとBの化合物などが形成される。形成されたホウ素化合物は、ターゲットを構成する他のM成分元素より、比較的電気伝導率が高い。例えば、Ti及びTiとBの化合物について電気伝導率を比較すると夫々、Tiは1.82×106(Ω−1・m−1)、TiとBの化合物は4.00×107(Ω−1・m−1)であり、TiとBの化合物の方が電気伝導率は高い。従って、アーク放電を行なった場合、Tiターゲットを構成する元素との境界部にTiとBの化合物が存在すると、TiとBの化合物部分は電気伝導率が高いためにアークスポットが滞留してしまう。その結果、皮膜には長さ1μmを超えるような巨大なドロップレットを含むようになる。この巨大なドロップレットを含有した皮膜は、ドロップレット部がマクロ的な欠陥となり、硬度、耐熱性また耐欠損性が低下した。さらに、ターゲット組織中の化合物相は一般的に熱膨張係数が高く、アークスポットが滞留することによって増大する熱衝撃により、ターゲットに割れが発生しやすいことも確認した。このように、ターゲット中におけるM成分元素とホウ素の化合物相は、工具などへの被覆の際に、皮膜被覆部材への悪影響だけでなく、装置への影響も大きく現れる。本願発明のターゲットを用いて被覆を行なった場合、アーク放電の局所的な集中が著しく減少し、その結果硬質皮膜に付着するドロップレット量を著しく減少させることができた。また、ホウ素化合物が偏析せず、ターゲット中に均一に存在するようになるため、皮膜の組成の均一化を実現できた。
第2の特性について述べる。ターゲットにホウ素を含有させるときに、本願発明のターゲットは窒化ホウ素として含有させることによって、抗折強度で評価される機械的強度を改善し、ターゲット作製時に割れやすいという問題を解消した。この理由は、窒化ホウ素として含有することで、ホウ素が単独で存在する割合が減少し、ホウ素と他のターゲットを構成するM成分元素との化合物の形成が抑制され、抗折力が増加したものと考えられる。即ち、ターゲットが周期律表の4a、5a、6a族から選択される1種以上の元素とホウ素を含有する場合、ホウ素は、ターゲットを構成する他のM成分元素、例えば、Ti、Cr等と反応を起こし、機械強度的に脆い化合物を形成しやすい。しかし、本願発明のターゲットは、窒化ホウ素として含有しているので、ホウ素が他のターゲット構成元素と反応して化合物が形成するのを抑制できる。これは、ホウ素及び窒化ホウ素の融点は夫々、2000℃、3000℃であり、ホウ素が単体で存在するよりも、融点が高い窒化ホウ素の化合物として存在する方が、ターゲットを構成するM成分元素との反応が起こり難いためである。
本願発明のターゲットの窒化ホウ素含有量はモル%で、5%以上、30%以下であることが好ましい。窒化ホウ素の含有量が5%未満の場合、アークスポットの移動速度を速める効果を得ることが出来ず、ドロップレット量を低減できない。また、ターゲットの機械的強度の劣化を防ぎ、ターゲット中へ混入する酸素量も減らす効果も少ない。一方、30%を超える場合、ターゲットの焼結性が低下し、密度の高いターゲットを得ることが出来ず、ターゲットの機械的強度が低下する。その結果、放電時に局所放電や放電停止などの不安定性要素が増大するだけでなく、アーク放電による衝撃でターゲットに割れが発生する欠点がある。
本願発明のターゲットにおいて、M成分元素の1部をAl、Si、Sから選択される1種以上の元素で置換する場合においても、ターゲットに窒化ホウ素として含有させることで、ホウ素が他のターゲット構成元素と反応して化合物相が形成するのを制御できる。これはターゲット中に窒化ホウ素を添加させることで、ホウ素が他のターゲット構成元素と反応して化合物相が形成するのを抑制できるからである。本願発明のターゲットを用いて被覆を行なった場合、アーク放電の局所的な集中が著しく減少し、皮膜に付着するドロップレット量を著しく減少させることができる。
本願発明のターゲットに窒化ホウ素を含有させることで、ターゲットに混入する酸素量を抑制することが出来る。ターゲットの酸素量は、質量%で0.7%以下が好ましい。その結果、AIP法、MS法で、被覆を行なったとき、ターゲットの機械的強度が改善され、発生するドロップレット量を制御することができ、品質の高い皮膜を形成するのために好適なターゲットを提供することができる。しかし、0.7質量%を超えて多く含有すると、ターゲットの機械的強度が劣るだけでなく、放電時に発生する酸素イオンがターゲット表面を酸化させるため、電気的な絶縁材を形成する。その結果、放電が不安定になり、ターゲットの異常溶解部が形成しやすくなる。
また、本願発明のターゲットを用いることで、皮膜の酸素量を1質量%以下に抑制することができ、皮膜中の欠陥などを減少させ、耐摩耗性や耐欠損性の低下を招くこと無く、品質の高い皮膜を得ることができる。一方、ホウ素を単独で含有した場合、ホウ素が酸化しやすいため、ターゲット中に酸素が混入しやすい。ターゲットに酸素が多く混入すると、皮膜にも酸素が多量に混入してしまう。その結果、皮膜中に欠陥などを多く含むようになり、皮膜の剥離などが生じやすくなる。本願発明のターゲットの酸素量は、ホウ素を単独で含有した場合と比較して、略半分以下に抑制することができる。
本願発明のターゲットにおける窒化ホウ素の粒子は、平均粒径で5μm以上、100μm以下が好ましい。平均粒径が5μm未満の場合、粒子に含まれる不純物の量が増大する。この不純物はターゲットの機械的強度を劣化させ、アーク放電などの衝撃により、割れが発生する欠点となる。また、平均粒径が100μmを超えると、ターゲット中において、ターゲット構成元素の部分的な成分の偏りが生じるなど、ターゲット組織の分散状態が悪くなり、高品質な皮膜が得られない。用いる窒化ホウ素の粒子の形状としては、平板状もしくは粒子状のものがあるがどちらを用いても良い。
本願発明のターゲットの密度は、アルキメデス法で測定した場合、80%以上であることが好ましい。密度が80%未満では、ターゲット中に空孔が多く存在し、その部分に酸素が多く含むようになり、アーク放電が停止してしまう欠点を有するためである。例えば、密度を80%以上にするためには、焼結中のプレス圧力を60MPa以上にすれば実現できる。
本願発明のターゲットを使用して得られる皮膜は、硬度、密度、靭性等の機械的強度が高まるため、耐欠損性、耐摩耗性が要求される用途への皮膜の被覆に用いることが効果的である。本願発明のターゲットを使用して得られる皮膜は、ドリル、エンドミルまたは微小部品のように、使用したい部分にドロップレットの付着が好まれないような用途に特に好適である。以下、本願発明を実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
本願発明のターゲットの製造方法について述べる。周期律表の4a、5a、6a族から選択される1種以上の元素の原料粉末、窒化ホウ素の粉末、必要に応じて、Al、Si、Sから選択される1種以上の原料粉末を、目的組成になるように秤量を行なった。Tiの粉末は粒度が10〜50μmの粉末、Al粉末は粒度が10〜30μmの粉末、窒化ホウ素は粒度が10〜50μmの粉末を用いた。それら粉末をステンレスポットなどの密閉容器に入れ、アルゴン雰囲気にてボールミルなどを用いて数時間混合を行なう。得られた混合粉末をホットプレス法などの粉末冶金法により、減圧中のアルゴンもしくは、窒素を含む雰囲気で500℃〜1100℃の範囲で徐々に昇温させて、本願発明のターゲットの作製を行なった。Sを含有させる場合は、S単独の粉末を取り扱うことは難しいので、粒度が1〜20μmの二硫化タングステン粉末等、硫化物の粉末を使用した。粉末の混合性を考慮し、組成の偏りや、機械的強度の低下を回避する為、99.999%以上のアルミナボールを使用した。混合した粉末をグラファイト製の金型に所定量装入し、ホットプレス機を用いて焼結を行った。ターゲットにAlを含有する場合、Alを他元素の結合材として作用させるため、500〜600℃の範囲の焼結条件で制御することが必要となる。Alが流動性を持つようになる500℃以上に制御しなければ、結合材としての作用が実現できず、600℃を超えるとAlが溶解してしまう場合があり、焼結装置に悪影響を及ぼしてしまう。また、Siを含有する場合は1000〜1100℃の範囲の焼結条件で制御することが必要である。1100℃を超えるとSiは、ターゲットを構成する他の元素との反応が激しくなりターゲットを作製することが困難になる。AlとSi両方を含む場合は、500〜600℃の範囲でAlを結合材として作用させることが好適である。本願発明のターゲットは、粉末冶金法によるホットプレス法だけでなく、HIP法でも作製可能である。HIP法を適用する場合は、アルゴンもしくは、窒素を含む雰囲気で、100MPa〜300MPaの範囲で加圧を行なうことが好ましい。焼結時間は、ターゲットの種類に合わせて、1〜3時間の間で行った。焼結後完成したターゲットは、抗折力試験片とAIP装置に適した形状に加工を行った。抗折力試験片は、ターゲットの強度を調べるために3点曲げによる抗折強度(MPa)の測定を行った。
得られたターゲットはAIP装置に取り付け、ミーリング用インサートに被覆を行った。被覆処理温度は600℃、反応圧力を5Paとし、バイアス電圧を−50V、アーク電流値を150Aに設定した。インサートの基体表面に膜厚3mmの被覆を行った。皮膜表面に付着したドロップレット量を比較するために、皮膜の表面を走査型電子顕微鏡(以下、SEMと記す。)を用いて倍率3k倍で観察を行った。図1にTiAlB系ターゲットに窒化ホウ素を30%含有した本発明例24のターゲットから得られた皮膜の表面状態のSEM写真を示す。この撮影したSEM写真から、粒径が0.5mm以上のドロップレットを測定対象にして画像処理を行い、粒度分布測定ソフトウェア(Image−Pro Plus)を用い、1視野辺りのドロップレット量を計測し、皮膜表面の1mm四方中に含まれるドロップレット量を換算した。表1・表2にターゲット組成、密度、抗折力及び皮膜のドロップレット量を示す。なお、ドロップレット量の表記は100個未満の数値を四捨五入した。
表1に示す本発明例1〜10のターゲットの表面について組織を観察した結果、窒化ホウ素がターゲット構成元素中に存在していた。Ti系のターゲットに窒化ホウ素を含有させた本発明例1〜5の組織観察を行った所、ターゲット構成元素の粒界付近に窒化ホウ素が分散した相を形成し、窒化ホウ素の粒子として、ほぼ平均的に分布していることが確認された。本発明例6〜10のCr系のターゲットに、窒化ホウ素を添加させたものについても同様な現象が確認された。即ち、本願発明の窒化ホウ素を含有したターゲットは、ホウ素がTi、Crなど他のM成分元素との化合物を形成せず、窒化ホウ素の状態で比較的均一に分散することが分かった。Al、Si、Sの1種以上を含むターゲットである本発明例21〜65においても組織を観察した。その結果、窒化ホウ素が比較的均一に分散していた。ターゲット中に単独でホウ素が存在する場合でも、窒化ホウ素を添加することで、ホウ素がターゲット中に単独で存在する割合が減少するため、ホウ素とターゲットを構成する他の元素との化合物の形成が制御されることが分かった。
表1には、抗折力測定の結果を示した。本発明例1〜5と従来例11〜15のように、ターゲット中に含有するホウ素の含有量が同じ組成系で比較した場合、ターゲットへの窒化ホウ素の含有量が5〜30%のものについては高い抗折力を示した。窒化ホウ素を2%含有した本発明例1や、35%含有した本発明例5は、本発明例の中でも、むしろ抗折力が低下した。この傾向は、本発明例6〜10のCr系ターゲットや、本発明例21〜65のAl、Si、Sの1種以上と窒化ホウ素を含有したターゲットについても、同様な現象が確認された。窒化ホウ素として含有することでホウ素が単独で存在する割合が減少し、ホウ素と他のM成分元素との化合物の形成が抑制され、高い抗折力が得られた。ターゲット中に含有させる窒化ホウ素量は、5%以上、30%以下が好適である。
表2には、被覆した硬質皮膜表面にあるドロップレット数の測定の結果を示した。本発明例は、従来例のターゲットより硬質皮膜のドロップレット数よりも著しく減少した。特に、ターゲット中の窒化ホウ素含有量が多くなるほど、ドロップレット数が減少する傾向を示した。これは、窒化ホウ素を含有することで、アークスポットの集中しやすいホウ素とM成分元素との化合物形成が抑制され、ドロップレットの発生が低減したからである。例えば、Ti系ターゲットの本発明例1〜5と従来例11から15のように、ターゲット中に存在するホウ素の含有量が同じ組成系で比較した場合、本発明例の方がドロップレットは減少した。この傾向は、本発明例6〜10のCr系ターゲットや、本発明例21〜65のAl、Si、Sの1種以上と窒化ホウ素を含有したターゲットについても、同様な現象が確認された。
(実施例2)
実施例1で作製したターゲットを使用して被覆したミーリング用インサートを、下記の試験条件で切削評価を行い、皮膜の耐摩耗性を評価した。評価方法は、切削長さ1m時に発生する硬質皮膜の剥離や破壊の有無を、光学顕微鏡を用いて観察した。また切刃逃げ面部を50倍に拡大して観察し逃げ面摩耗幅を測定した。更に切削を継続し、300μm以上のチッピング含む欠損が発生した時点を工具寿命とし、その時点までの切削距離(m)によって性能を評価した。表1、表2に評価結果を示した。
(試験条件)
工具 :特殊正面フライス
インサート形状:SDE53タイプ特殊形状
切削方法 :センターカット方式
被削材形状 :幅125mm×長さ300mm
被削材 :熱間ダイス鋼SKD11、HRC29
軸方向切込み量:1.0mm
切削速度 :130m/min
1刃あたりの送り量:0.5mm/刃
切削油:なし
表1、表2に示すように、ターゲットの窒化ホウ素含有量は、工具寿命に影響を及ぼした。本発明例1〜5の工具寿命は従来例11〜15よりも優れた工具寿命を示した。例えば、本発明例1と従来例11とを比較すると、窒化ホウ素を2%含有した本発明例1であっても、切削寿命は優れた。この傾向は、本発明例6〜10のCr系ターゲットや、本発明例21〜65のAl、Si、Sの1種以上と窒化ホウ素を含有したターゲットについても、同様な現象が確認された。皮膜の構成元素は同じであっても、被覆に使用するターゲットの組織形態が異なることによって、工具寿命は変化するものの、本願発明の窒化ホウ素を含有するターゲットを使用して得られた皮膜の方が優れた切削寿命を示した。ターゲットに窒化ホウ素を含有した本発明例の中で、工具寿命が最も優れたTiAlB系ターゲットの本発明例24は、従来例66に比較して、約2倍優れた。切削距離1m時の刃先の損傷状態を確認した結果、本発明例21〜25の逃げ面最大摩耗幅は、夫々0.141mm、0.101mm、0.091mm、0.081mm、0.098mであったのに対し、従来例66は、0.162mmと大きかった。また、本発明例21〜25は、何れも皮膜剥離は認められず、正常摩耗をしていたが、従来例66は、皮膜剥離が観察された。最終的には、逃げ面最大摩耗幅が0.3mmを超えた所で欠損した。これらの傾向は、本発明例26〜65についても同様な傾向であった。この結果より、ドロップレットが減少することにより、皮膜の硬度、密度、靭性等の機械的強度が高まり、極めて優れた工具寿命を示した。
本願発明のターゲットのように、窒化ホウ素として含有した場合、皮膜に混入する酸素量も低減できる効果がある。この理由は、ターゲットを製造する場合、ホウ素を純ホウ素として含有させると酸化されやすいため、ターゲット中に質量%で、1.0%以上の酸素が混入するからである。本願発明の1例としてTiAlB系ターゲットにおいて、窒化ホウ素を含有した場合、従来例としてホウ素を単独で含有した場合について、ターゲット中に混入した酸素量を波長分散型X線分光器(日本電子製JXA−8500F、以下、EPMAと記す)にて、定量分析を行なった結果を、表3に示す。
ターゲットにホウ素を単独で含有した場合は、1.3%ターゲット中に酸素が混入していたが、本発明例の酸素量は、従来例のものと比較して減少した。特に窒化ホウ素の含有量が35%の本発明例25は0.68%であり、従来例66に比較して約50%減少した。一方、窒化ホウ素の含有量が35%の本発明例25は、酸素量が0.68%であり、窒化ホウ素の含有量が30%の本発明例24と比較して、むしろ増加していた。これは、窒化ホウ素をターゲット中に30%より多く含有すると、ターゲットの焼結性が低下し、密度が低くなるため、多くの酸素が混入したためである。ターゲット中に酸素が多量に含まれると、得られる皮膜においても酸素が多く含まれてしまい、耐摩耗性や耐欠損性の低下を招く。
図1は本発明例24のターゲットから得られた皮膜表面のSEM写真を示す。

Claims (3)

  1. 周期律表4a、5a、6a族元素から選択される1種以上のM成分元素とホウ素を有するターゲットにおいて、該ターゲットのホウ素は窒化ホウ素として含有していることを特徴とする窒化物含有ターゲット。
  2. 請求項1記載の窒化物含有ターゲット材において、該窒化ホウ素の含有量はモル%で、5%以上、30%以下であることを特徴とする窒化物含有ターゲット。
  3. 請求項1又は2記載の窒化物含有ターゲット材において、該M成分元素の1部をAl、Si、Sから選択される1種以上の元素で置換したことを特徴とする窒化物含有ターゲット。
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