JP2008179853A - ホウ化物含有ターゲット材 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本願発明が解決しようとする課題は、アークイオンプレーティング法、マグネトロンスパッタ法に用いるターゲット材であって、ドロップレットの生成が抑制され、品質の高い皮膜を形成するのために好適なターゲット材を提供することである。
【解決手段】 本願発明は、Al元素及び/またはSi元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Si、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Al相及び又はSi相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材である。
【選択図】なし
【解決手段】 本願発明は、Al元素及び/またはSi元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Si、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Al相及び又はSi相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材である。
【選択図】なし
Description
本願発明は、切削工具や金属部品の表面に皮膜を形成させるためのホウ化物含有ターゲット材に関する。特に、アークイオンプレーティング(以下、AIPと記す。)法、マグネトロンスパッタ(以下、MSと記す。)の蒸発源としてのターゲット材に関する。
蒸発源にホウ化物を含有する合金ターゲット材に関する技術が、特許文献1から4に開示されている。
本願発明が解決しようとする課題は、AIP法、MS法に用いるターゲット材であって、ドロップレットの生成が抑制され、品質の高い皮膜を形成するのために好適なターゲット材を提供することである。
本願発明における第1の発明は、Al元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Si、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Al相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材である。
第2の発明は、Si元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Al、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Si相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材である。
第3の発明は、Al元素、Si元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Al相又はSi相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材である。上記の構成を採用することによって、AIP法、MS法で被覆をしたとき、ドロップレットの生成が抑制され、品質の高い皮膜を形成するのために好適なターゲット材を提供することができる。
また、本願発明のホウ化物含有ターゲット材において、該ホウ化物の平均粒径が200μm以内、該ターゲット材の密度が80%以上であることが好ましい。
第2の発明は、Si元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Al、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Si相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材である。
第3の発明は、Al元素、Si元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Al相又はSi相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材である。上記の構成を採用することによって、AIP法、MS法で被覆をしたとき、ドロップレットの生成が抑制され、品質の高い皮膜を形成するのために好適なターゲット材を提供することができる。
また、本願発明のホウ化物含有ターゲット材において、該ホウ化物の平均粒径が200μm以内、該ターゲット材の密度が80%以上であることが好ましい。
本願発明により、AIP法、MS法で用いるターゲット材であって、ドロップレットの生成が抑制された品質の高い皮膜を形成するのために好適なターゲット材を提供することができた。
本願発明のホウ化物含有ターゲット材は、B元素を含有する窒化物又は炭窒化物などの硬質皮膜を得るために用いられる。B元素を含有するターゲット材を用いてAIP法により硬質皮膜を被覆する場合、アーク放電の際、ターゲット表面上には電子を放出するアークスポットが形成される。このアークスポットは、1点又は同時に複数点が放電中に存在し、ターゲット表面上を高速かつ均一に移動することが理想的である。アークスポットの移動が滞留すると、その滞留部分に大きな溶解部が生じ、その溶解部分が基材表面に付着する。この付着した溶解液滴は、ドロップレット、パーティクル又はマクロパーティクルと呼ばれ、硬質皮膜の表面を荒らす原因になり、皮膜性能を劣化させる。
ターゲット材が単一金属、又は単一組織といった均質な場合、アークスポットは、ターゲット材表面上を均一に移動する傾向にあるため、問題は生じにくい。一方で、複数の元素から構成されている場合や複数の相を含む場合には、ターゲット材が不均質となり、アークスポットが高速で均一に移動し難く、硬質皮膜表面にドロップレット等を含みやすいという問題がある。例えばホットプレス方式を用いて、Ti−Al−B系、Ti−Si−B系、Cr−Al−B系、Cr−Si−B系などといったB元素を含む、高耐摩耗性、耐熱特性、高潤滑特性を有する硬質皮膜を実現できるターゲット材を製造する場合、そのプロセス中において、TiやCrなどとBが反応して化合物を形成する。例えばTi−Al−B系合金の場合、TiとBの化合物相、AlとBの化合物相などの組織が形成される。Bの化合物層がTi層との境界部に存在すると化合物相部分でアークスポットは滞留して1μm長さを超える様な巨大なドロップレットが生じる。このドロップレットが多量に発生してしまうと、形成される硬質皮膜の優れた機能を低下させる原因となる。更に、化合物相部では、アークスポットが滞留することによって増大する熱衝撃により、ターゲット材に割れが発生しやすくなり、異常放電などが発生しやすくなる。そのため、工具等への被覆の際に、装置への悪影響だけでなく、硬質皮膜被覆部材への影響も大きく現れる。
ターゲット材が単一金属、又は単一組織といった均質な場合、アークスポットは、ターゲット材表面上を均一に移動する傾向にあるため、問題は生じにくい。一方で、複数の元素から構成されている場合や複数の相を含む場合には、ターゲット材が不均質となり、アークスポットが高速で均一に移動し難く、硬質皮膜表面にドロップレット等を含みやすいという問題がある。例えばホットプレス方式を用いて、Ti−Al−B系、Ti−Si−B系、Cr−Al−B系、Cr−Si−B系などといったB元素を含む、高耐摩耗性、耐熱特性、高潤滑特性を有する硬質皮膜を実現できるターゲット材を製造する場合、そのプロセス中において、TiやCrなどとBが反応して化合物を形成する。例えばTi−Al−B系合金の場合、TiとBの化合物相、AlとBの化合物相などの組織が形成される。Bの化合物層がTi層との境界部に存在すると化合物相部分でアークスポットは滞留して1μm長さを超える様な巨大なドロップレットが生じる。このドロップレットが多量に発生してしまうと、形成される硬質皮膜の優れた機能を低下させる原因となる。更に、化合物相部では、アークスポットが滞留することによって増大する熱衝撃により、ターゲット材に割れが発生しやすくなり、異常放電などが発生しやすくなる。そのため、工具等への被覆の際に、装置への悪影響だけでなく、硬質皮膜被覆部材への影響も大きく現れる。
本願発明の第1の発明は、Al元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Si、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Al相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材である。更に、本願発明の第2の発明は、Si元素、M成分とM成分のホウ化物を、第3の発明は、Al元素、Si元素、M成分とM成分のホウ化物を必須成分とするホウ化物含有ターゲット材である。
硬質皮膜の高機能化として、優れた耐摩耗性、耐熱性を得るためには、例えば、B元素とAl元素、M成分の(B、Al、M)系窒化物などの硬質皮膜を得ることが必要である。又は、(B、Si、M)系窒化物などの硬質皮膜、(B、Al、Si、M)系窒化物などの硬質皮膜を得ることが必要である。そのためには、B、Al及び/又はSiとMから構成され、含有させるターゲット中のB元素は、M成分のホウ化物として含有させることが必要である。そして、本願発明の要件を満たすことにより、ターゲット材の機械的強度を劣化させず、ドロップレット発生量の極めて少ないターゲット材を実現できる。また、ドロップレットの生成が抑制された品質の高い皮膜を形成できるターゲット材を提供することができる。
2000℃を超える融点を有するB元素は、ターゲット材を構成する他の元素、例えばTiやCr、AlやSiと化合物を形成する反応を起こす。その化合物が金属元素との境界部に多く存在するような組織になるとターゲット材の機械的強度が著しく低下するだけでなく、反応に伴う発熱によりターゲット製造設備に大きな負荷をもたらす。更に、金属層と形成されるB化合物相の境界部分にアーク放電が集中する傾向があり、結果として得られた硬質皮膜にドロップレットが多く含まれることによる表面粗度の悪化や、硬質皮膜の組成が不均一になる欠点を有する。その結果、硬質皮膜被覆部材としたときの、耐摩耗性や耐欠損性に大きな影響を及ぼす。本願発明は、この問題を解決するために、種々条件を変えて作製したターゲット材中に含まれるB、AlとM成分、B、SiとM成分、B、Al、SiとM成分とそれらの化合物が、ターゲット材組織中に占める面積割合と放電性状、および得られる硬質皮膜の特性に関する検討を行った結果、以下の知見を得るに至った。即ち、B元素を含むターゲット材中に、B元素を予めホウ化物として含有させ、B元素が他の元素と反応した化合物層の形成を抑制させることが重要である。そのため、同じく含有させる比較的低融点であるAl相、Si相のなかにホウ化物を存在させるようにすると、B元素が他の元素と反応せず、ターゲット材の機械的強度も低下しないB含有ターゲット材を実現することができる。また、B元素の化合物化に伴う発熱が抑制され、製造設備への負荷が著しく低減される。本願発明のターゲット材を用いて被覆を行った場合、アーク放電の局所的な集中が著しく減少し、その結果、硬質皮膜に付着するドロップレット量を著しく減少させることができる。また、B元素化合物が偏析せず、ターゲット材中に均一に存在するようになるため、硬質皮膜の組成の均一化を実現できる。
B元素を含むターゲット材において、B化合物の形成を抑制させるためには、M成分のホウ化物をモル%で5%以上、30%以下含有させることによって実現できる。B元素は、純B金属の単独相として存在すると酸化されやすい。その結果、アーク放電が局所的に激しくなってしまう。一方、ホウ化物で含有させると酸化抵抗が増し、アークスポットの動きを均一化させることができる。その結果、巨大なドロップレットの発生が抑制される。ドロップレットを多く含まない硬質皮膜は、結晶の成長が分断されないため、高密度の皮膜を形成し、機械的強度が著しく優れる。更に、B元素化合物が、M成分と隣接せず、主にAl相やSi相の中に含まれることによって、機械的強度の低下する境界部分が低減される。そのため、ターゲット材を構成する元素、化合物間における接合強度が高まり、高い機械的強度を有するターゲット材を実現できる。このとき、M成分のホウ化物は、Al相やSi相に取り囲まれ、例えばAlとM成分のホウ化物との界面では、(Al、M)系のホウ化物、SiとM成分のホウ化物との界面では、(Si、M)系のホウ化物を形成し、界面の接合強度が高まる。M成分のホウ化物が、Al相及び/又はSi相中に含まれ、かつ界面で、M成分のホウ化物がAlやSiと反応し、(Al、M)系のホウ化物、(Si、M)系のホウ化物、(Al、Si、M)系のホウ化物を形成するように組織を制御しなければならない。M成分のホウ化物が5.0%未満の含有であると、Al相やSi相との境界部で化合物を形成しないため、ターゲット材の機械的強度が低下する欠点が現れる。また、30.0%を超えると、ターゲット材の焼結性が低下し、密度の高いターゲット材を実現することができず、ターゲット材の機械的強度が低下する。更に、Al相やSi相との境界部における反応が促進し、境界部が脆化する。その結果、ターゲット材におけるホウ素含有化合物の占有面積が増大し、この場所にアーク放電が集中して巨大なドロップレットが発生する欠点が現れる。従って、ターゲット材の機械的強度を高めた状態に制御するために、M成分のホウ化物とAl相及び/又はSi相界面における反応幅を1000nm以内にすることがより好適である。1000nmを超えるとターゲット材の機械的強度が著しく低下する。M成分が2種以上になる場合は、そのうちの1種のホウ化物としてターゲット中に含有させても効果が現れる。
透過電子顕微鏡(以下、TEMと記す。)や光学顕微鏡による観察によって、ターゲット材中でM成分のホウ化物が、Al相中に含まれる組織を有すること、Si相中に含まれる組織を有すること、Al相又はSi相中に含まれる組織を有することが確認できる。更に、M成分のホウ化物の外殻が、Al相及び/又はSi相を含む相として存在することや、Al及び/又はSiとの界面に形成される化合物相として存在することなどを観察することができる。
硬質皮膜の高機能化として、優れた耐摩耗性、耐熱性を得るためには、例えば、B元素とAl元素、M成分の(B、Al、M)系窒化物などの硬質皮膜を得ることが必要である。又は、(B、Si、M)系窒化物などの硬質皮膜、(B、Al、Si、M)系窒化物などの硬質皮膜を得ることが必要である。そのためには、B、Al及び/又はSiとMから構成され、含有させるターゲット中のB元素は、M成分のホウ化物として含有させることが必要である。そして、本願発明の要件を満たすことにより、ターゲット材の機械的強度を劣化させず、ドロップレット発生量の極めて少ないターゲット材を実現できる。また、ドロップレットの生成が抑制された品質の高い皮膜を形成できるターゲット材を提供することができる。
2000℃を超える融点を有するB元素は、ターゲット材を構成する他の元素、例えばTiやCr、AlやSiと化合物を形成する反応を起こす。その化合物が金属元素との境界部に多く存在するような組織になるとターゲット材の機械的強度が著しく低下するだけでなく、反応に伴う発熱によりターゲット製造設備に大きな負荷をもたらす。更に、金属層と形成されるB化合物相の境界部分にアーク放電が集中する傾向があり、結果として得られた硬質皮膜にドロップレットが多く含まれることによる表面粗度の悪化や、硬質皮膜の組成が不均一になる欠点を有する。その結果、硬質皮膜被覆部材としたときの、耐摩耗性や耐欠損性に大きな影響を及ぼす。本願発明は、この問題を解決するために、種々条件を変えて作製したターゲット材中に含まれるB、AlとM成分、B、SiとM成分、B、Al、SiとM成分とそれらの化合物が、ターゲット材組織中に占める面積割合と放電性状、および得られる硬質皮膜の特性に関する検討を行った結果、以下の知見を得るに至った。即ち、B元素を含むターゲット材中に、B元素を予めホウ化物として含有させ、B元素が他の元素と反応した化合物層の形成を抑制させることが重要である。そのため、同じく含有させる比較的低融点であるAl相、Si相のなかにホウ化物を存在させるようにすると、B元素が他の元素と反応せず、ターゲット材の機械的強度も低下しないB含有ターゲット材を実現することができる。また、B元素の化合物化に伴う発熱が抑制され、製造設備への負荷が著しく低減される。本願発明のターゲット材を用いて被覆を行った場合、アーク放電の局所的な集中が著しく減少し、その結果、硬質皮膜に付着するドロップレット量を著しく減少させることができる。また、B元素化合物が偏析せず、ターゲット材中に均一に存在するようになるため、硬質皮膜の組成の均一化を実現できる。
B元素を含むターゲット材において、B化合物の形成を抑制させるためには、M成分のホウ化物をモル%で5%以上、30%以下含有させることによって実現できる。B元素は、純B金属の単独相として存在すると酸化されやすい。その結果、アーク放電が局所的に激しくなってしまう。一方、ホウ化物で含有させると酸化抵抗が増し、アークスポットの動きを均一化させることができる。その結果、巨大なドロップレットの発生が抑制される。ドロップレットを多く含まない硬質皮膜は、結晶の成長が分断されないため、高密度の皮膜を形成し、機械的強度が著しく優れる。更に、B元素化合物が、M成分と隣接せず、主にAl相やSi相の中に含まれることによって、機械的強度の低下する境界部分が低減される。そのため、ターゲット材を構成する元素、化合物間における接合強度が高まり、高い機械的強度を有するターゲット材を実現できる。このとき、M成分のホウ化物は、Al相やSi相に取り囲まれ、例えばAlとM成分のホウ化物との界面では、(Al、M)系のホウ化物、SiとM成分のホウ化物との界面では、(Si、M)系のホウ化物を形成し、界面の接合強度が高まる。M成分のホウ化物が、Al相及び/又はSi相中に含まれ、かつ界面で、M成分のホウ化物がAlやSiと反応し、(Al、M)系のホウ化物、(Si、M)系のホウ化物、(Al、Si、M)系のホウ化物を形成するように組織を制御しなければならない。M成分のホウ化物が5.0%未満の含有であると、Al相やSi相との境界部で化合物を形成しないため、ターゲット材の機械的強度が低下する欠点が現れる。また、30.0%を超えると、ターゲット材の焼結性が低下し、密度の高いターゲット材を実現することができず、ターゲット材の機械的強度が低下する。更に、Al相やSi相との境界部における反応が促進し、境界部が脆化する。その結果、ターゲット材におけるホウ素含有化合物の占有面積が増大し、この場所にアーク放電が集中して巨大なドロップレットが発生する欠点が現れる。従って、ターゲット材の機械的強度を高めた状態に制御するために、M成分のホウ化物とAl相及び/又はSi相界面における反応幅を1000nm以内にすることがより好適である。1000nmを超えるとターゲット材の機械的強度が著しく低下する。M成分が2種以上になる場合は、そのうちの1種のホウ化物としてターゲット中に含有させても効果が現れる。
透過電子顕微鏡(以下、TEMと記す。)や光学顕微鏡による観察によって、ターゲット材中でM成分のホウ化物が、Al相中に含まれる組織を有すること、Si相中に含まれる組織を有すること、Al相又はSi相中に含まれる組織を有することが確認できる。更に、M成分のホウ化物の外殻が、Al相及び/又はSi相を含む相として存在することや、Al及び/又はSiとの界面に形成される化合物相として存在することなどを観察することができる。
ターゲット材は、ホットプレス法などの粉末冶金法により、減圧中のArもしくはN2を含む雰囲気で500℃〜1100℃の範囲でゆっくりと昇温させて作製すれば実現できる。Alを多く含む場合、Alを他元素の結合材として作用させるため、500〜600℃の範囲の焼結条件で制御することが必要となる。Alが流動性を持つようになる500℃以上に制御しなければ、結合材として作用が実現できない。一方、Siを多く含む場合、1000〜1100℃の範囲の焼結条件で制御することが必要である。1100℃を超えると、Siは、M成分のホウ化物よりも、M成分との反応が激しくなり、ターゲット材を作製することが不可能となる。更に、ホウ化物がAl相及び/又はSi相中に含まれず、M成分に隣接するように存在する場所が多くなり、ターゲット材の機械的強度を著しく低下させる欠点が現れる。AlとSiを含む場合は、500〜600℃の範囲でAlを結合材として作用させることが好適である。本願発明のターゲット材は、Al、Siに結合材の役割を持たせるため、M成分ホウ化物は、Al相やSi相中に含まれるように焼結条件を制御する必要がある。そのため好ましくは、500℃〜1100℃の範囲で、800℃を超えた所から、150℃/時間程度の速度で、ゆっくりと昇温させることが好ましい。Ti−Al−B系、Cr−Al−B系やTi−B系のターゲット材については、粉末焼結法により製造されることが知られている。例えば、TiとBを含むターゲット材において、Bを純B金属として含有させた場合は、TiとBが激しく反応し、化合物を形成する。焼結中に溶融もしくは流動化した、TiとBが界面でTiとBの化合物を多く形成した組織を有するため、ターゲット材の機械的強度が低下する欠点がある。更に、化合物部分と金属部分の脆弱な境界部分にアークスポットが集中しやすくなり、ターゲット材表面での溶解が均一にならない。その結果、粗大なドロップレットが発生しやすい欠点を有する。また、界面の接合強度が脆弱なため、放電時の熱エネルギーによって、境界部にクラックが発生しやすくなる欠点が現れる。
本願発明ホウ化物含有ターゲット材において、M成分のホウ化物の平均粒径が200μm以内、密度が80%以上であることが好ましい。ホウ化物の平均粒径、密度を上記範囲とすることにより、ドロップレットの生成が抑制された品質の高い皮膜を形成できるターゲット材を提供することができる。M成分のホウ化物の平均粒径は、200μm以内であることが好ましく、より好適な範囲は、平均粒径が5μm以上、100μm以下とすることである。粒径が5μm未満の場合、粒子に含まれる不純物の量が増大し、ターゲット中にそのまま含有されてしまう。その結果、ターゲット材の機械的強度が劣化し、アーク放電などの衝撃により、割れが発生する欠点が現れる。また、100μmを超えた粒径の場合、ターゲット材表面に発生するアーク放電が、大きな粒子に集中しやすくなり、皮膜のドロップレットを増加させる欠点を有する。本願発明のターゲット材は、密度が80%以上であることが好ましい。密度が80%未満ではターゲット材中に空孔が多く、その部分に酸素が多く存在するようになり、アーク放電が停止してしまう欠点が現れるためである。例えば、密度を80%以上にするためには、焼結中のプレス圧力を60MPa以上負荷させれば実現できる。
本願発明のターゲット材は、結合材として作用させるAl相やSi相の内部にM元素の窒化物もしくは炭窒化物を、モル%で5%以上、20%以下で含有させると、更にドロップレット発生を抑制できる。この理由は、ターゲット中に含有する窒素が、アーク放電によって蒸発する際に、アークスポットの動きを早めるからである。その結果、巨大なドロップレットの発生が抑制される。この場合、ターゲット材中の窒化物又は炭窒化物は、導電性を有することが好ましい。しかし、AlNやSi3N4、BNなど六方晶の材料を含有させると、ターゲット材の導電性が低下してアーク放電が停止する欠点が現れる。また、高密度を有するターゲットを得ることが困難となり、その結果、空孔が多く発生して、ターゲット材の機械的強度の著しい低下を招く欠点が現れる。M元素の窒化物もしくは炭窒化物を含有させる際、20%を超えると、ターゲット材の焼結性が著しく低下し、密度の高いターゲット材を実現することができず、ターゲット材の機械的強度が著しく低下する。更に、ターゲット材作製時に含有させる窒化物、炭窒化物の脱窒現象が発生しやすくなり、ターゲット材内部に空孔を形成させる。その空孔部には、酸素が多く取り込まれ、放電時に、局所放電や放電停止などの不安定要素、アーク放電による衝撃で、割れが発生する欠点が現れる。
本願発明のターゲット材における酸素含有量は、質量%で0.7%以下が好ましい。0.7%よりも多く含有すると、ターゲット材の機械的強度が著しく劣るだけでなく、放電時に発生する酸素イオンがターゲット材表面を酸化させるため、絶縁状態を形成する。その結果、放電が不安定になり、ターゲット材の異常溶解部を形成しやすくさせるためである。以下、本発明を実施例に基づいて、より詳細に説明する。
本願発明のターゲット材における酸素含有量は、質量%で0.7%以下が好ましい。0.7%よりも多く含有すると、ターゲット材の機械的強度が著しく劣るだけでなく、放電時に発生する酸素イオンがターゲット材表面を酸化させるため、絶縁状態を形成する。その結果、放電が不安定になり、ターゲット材の異常溶解部を形成しやすくさせるためである。以下、本発明を実施例に基づいて、より詳細に説明する。
(実施例1)
AIP装置に取り付けるターゲット材を粉末冶金法によって作製した。作製に当たっては、硬質皮膜を作製したときに、耐摩耗、耐熱特性、潤滑特性に優れた硬質皮膜を得るために、Al及び/又はSi、M成分の原料粉末、M成分のホウ化物の粉末を使用し、ボールミル等の密閉容器中、Ar雰囲気にて4時間混合した。Sを含有させる場合は、S単独の粉末を取り扱うことは難しいので、硫化物として混合を行った。粉末のみでの混合は混合性が悪く、ターゲット材としたときに組成の偏りや、それによる機械的強度の低下が懸念されるため、容器内に純度99.999%以上のAl2O3ボールを使用した。混合粉をグラファイト製の金型に所定量装入し、ホットプレス機を用いて焼結を行った。焼結時にAlやSiが溶解してしまうと、装置に様々な悪影響を及ぼすため、焼結温度は、Alが多く含まれる場合は、500〜600℃、Siが多く含まれる場合は、900〜1100℃に設定した。また、AlとSiを両者含む場合は、500〜600℃に設定した。減圧下での焼結ではあるが、焼結装置内に残留する微量酸素によるターゲット中への酸素取り込みの影響を避けるために、Ar又はN2雰囲気での焼結を行った。プレス荷重は50MPa〜200MPaの範囲で、所定のターゲット材が得られるよう適宜変更した。焼結時間は、1時間〜3時間の間で行った。焼結後完成したターゲット材は、AIP装置に取り付けられる様、研削や旋削加工を行い、形状を整えた。
AIP装置に取り付けるターゲット材を粉末冶金法によって作製した。作製に当たっては、硬質皮膜を作製したときに、耐摩耗、耐熱特性、潤滑特性に優れた硬質皮膜を得るために、Al及び/又はSi、M成分の原料粉末、M成分のホウ化物の粉末を使用し、ボールミル等の密閉容器中、Ar雰囲気にて4時間混合した。Sを含有させる場合は、S単独の粉末を取り扱うことは難しいので、硫化物として混合を行った。粉末のみでの混合は混合性が悪く、ターゲット材としたときに組成の偏りや、それによる機械的強度の低下が懸念されるため、容器内に純度99.999%以上のAl2O3ボールを使用した。混合粉をグラファイト製の金型に所定量装入し、ホットプレス機を用いて焼結を行った。焼結時にAlやSiが溶解してしまうと、装置に様々な悪影響を及ぼすため、焼結温度は、Alが多く含まれる場合は、500〜600℃、Siが多く含まれる場合は、900〜1100℃に設定した。また、AlとSiを両者含む場合は、500〜600℃に設定した。減圧下での焼結ではあるが、焼結装置内に残留する微量酸素によるターゲット中への酸素取り込みの影響を避けるために、Ar又はN2雰囲気での焼結を行った。プレス荷重は50MPa〜200MPaの範囲で、所定のターゲット材が得られるよう適宜変更した。焼結時間は、1時間〜3時間の間で行った。焼結後完成したターゲット材は、AIP装置に取り付けられる様、研削や旋削加工を行い、形状を整えた。
得られたターゲット材は、フッ酸系の腐食液を用いてターゲットの組織を観察し、含有するホウ化物の存在状態を確認した。また、M成分のホウ化物は、X線回折を行い、JCPDSファイルを用いて、定性的な確認も行った。X線回折の条件は、Cu−kα、2θ−θ法、管電圧50kV、管電流160mAとした。更に、M成分のホウ化物とAl、Si相の組織を確認するために、TEMで組織観察した。ターゲット材の強度を調べるために、所定の試験片形状に加工を行った後、3点曲げによる抗折試験を行った。
実施例1で得られたターゲット材をAIP装置に取り付け、成膜を行った。基体には、ミーリング用、旋削用形状の工具を始め、耐摩耗性が要求される部品を選定した。被覆処理温度は600℃、反応圧力を5Paとし、バイアス電圧を−50V、アーク電流値を150Aに設定して、基体表面に膜厚3μmの被覆を行った。硬質皮膜に付着したドロップレット量を比較するために、工具表面を電解放射走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−4200、以下FE−SEMと記す。)を用いて表面観察を行った。倍率は、3k倍、縦横10μmの視野に含まれるドロップレットのうち、粒径が0.5μm以上のものの総量を計測した。上記の評価結果を表1に示す。
表1の本発明例1〜4、比較例25、26は、ターゲット材中に含有するホウ化物量の影響を見るために作製した。本発明例1〜4と組成の異なり、ターゲット材に含有するホウ化物量の影響を見るために、本発明例5〜7、比較例27を作製した。また、組成の異なるターゲット材の影響を見るために、本発明例8〜16を作製した。ターゲット材に含有するホウ化物の平均粒径が及ぼす影響を見るために、本発明例17〜19を作製した。本発明例20はM元素の窒化物を、本発明例21はM元素の炭窒化物を含有させた。比較例28はM成分のホウ化物ではなく、AlB2を含有させた。本発明例22〜24は、ターゲット材の密度の影響を見るために作成した。
表1に示すように、本願発明のターゲット材は、高い抗折強度を有し優れていた。本発明例中で最も高い抗折強度を示した本発明例1、2は、従来例29に対し、1.5倍以上優れていた。同じ組成系の本発明例4も、1.4倍以上優れていた。異なる組成系の本発明例5〜7は、従来例30に対して抗折強度が優れていた。同様に、ホウ化物を含有した本発明例8〜16は、従来例より優れていた。これは、ターゲット材にB元素がホウ化物として含有され、それがAl相やSi相に取り囲まれるように存在して、ターゲットを構成する元素、並びに化合物間の接合強度が高まったためである。ターゲット材に含有するホウ化物量は、5%以上、30%以下のときに、抗折強度が高まり、優れる結果となった。一方、比較例25、27のように、5%未満のときは、ターゲット材の機械的強度、抗折強度は高まらず効果は得られなかった。比較例26のように30%を超える場合は、ターゲット材の抗折強度が著しく低下し劣った。
表1に示すように、本願発明のターゲット材は、高い抗折強度を有し優れていた。本発明例中で最も高い抗折強度を示した本発明例1、2は、従来例29に対し、1.5倍以上優れていた。同じ組成系の本発明例4も、1.4倍以上優れていた。異なる組成系の本発明例5〜7は、従来例30に対して抗折強度が優れていた。同様に、ホウ化物を含有した本発明例8〜16は、従来例より優れていた。これは、ターゲット材にB元素がホウ化物として含有され、それがAl相やSi相に取り囲まれるように存在して、ターゲットを構成する元素、並びに化合物間の接合強度が高まったためである。ターゲット材に含有するホウ化物量は、5%以上、30%以下のときに、抗折強度が高まり、優れる結果となった。一方、比較例25、27のように、5%未満のときは、ターゲット材の機械的強度、抗折強度は高まらず効果は得られなかった。比較例26のように30%を超える場合は、ターゲット材の抗折強度が著しく低下し劣った。
本発明例1〜4、比較例25、26で得られたターゲット材表面について鏡面研磨を施し、その後、フッ酸系の腐食液で腐食させ、光学顕微鏡を用いて組織を1k倍で確認した。その結果、TiB2相が確認された。本発明例2のTiB2粒子の組織を、TEM(日立製作所製、加速電圧20kV)を用いて観察し、TiB2粒子とAl単独相との境界部を詳細に確認したところ、TiB2粒子の内側にAl成分が相互拡散し、900nm幅の相を形成していることが確認された。
得られたターゲット材をAIP式装置に設置し、全て同一成膜条件を用いて、成膜を行った。表1より、本願発明のターゲット材を用いて得られた硬質皮膜は、その表面に付着するドロップレット数は、従来のターゲット材を用いた場合よりも少なく、優れていた。従来例29のTi−Al−Bターゲットから得られる硬質皮膜のドロップレット数量は182個であるのに対し、本発明例1〜4のTiB2を含有させたターゲット材から得られた硬質皮膜では、最も少ない量で25個、最も多い量で57個であり、60%以上低減した。この傾向は、TiB2を含有させたターゲット材だけでなく、他のホウ化物を含有させた場合も同様に優れていた。比較例28のように、AlB2を含有させたターゲット材では、放電が安定せずアーク放電が停止してしまった。AlB2を含有させた場合、高密度になかったことが原因であると考えられる。
皮膜表面のドロップレット数量は、ホウ化物の含有量に依存する。本発明例1から4、比較例25、26から明らかのように、本発明例の5%から30%のときに、ドロップレット数量は少なくなり優れていた。また、ホウ化物の含有量が30%までは、含有量が多い程ドロップレット数量は低下した。TiB2を4%含有するターゲット材から得られた比較例25は166個、CrB2を4%含有するターゲット材から得られた比較例27は189個であった。ターゲット材組成の異なる本発明例5〜7、比較例27の硬質皮膜表面も同様な傾向であった。しかし、ホウ化物の含有量が、30%を超えると、ターゲット材の抗折強度が著しく低下するだけでなく、放電することが出来なくなった。従って、30%を超えるものは、使用できないことが確認された。更に、本発明例8〜16に示した様に、Ti、Cr系だけでなく、周期律表の4a、5a、6a族元素、Sを含有するターゲット材も優れていた。
ターゲット材に含有するホウ化物の平均粒径の影響について調査を行ったところ、200μmを超え、密度が80%の本発明例19は、抗折強度が若干低下した。明確な原因は不明であるが、ターゲット材の酸素含有量が多量であったためと考えられる。ホウ化物の平均粒径は、200μm以下のときに、抗折強度の高く、ドロップレット発生の低減できるターゲットを実現できる。
本発明例20、21のように、ホウ化物に加えて窒化物や炭窒化物を含有したターゲットは、ドロップレット発生が少なく、大きな効果が確認された。これは、窒化物を含有することによって、アークスポットの運動速度が、更に速まったためと考えられる。
次にターゲット材の密度の影響について述べた。密度が80%の本発明例19、24は、安定したアーク放電が得られる限界であった。比較例28は77%であり、放電が出来なかった。密度が低くなると、ターゲット材に含有される酸素量が増加するため、アーク放電が安定しなかった。密度が80%未満の場合、アーク放電が安定せず停止した。このように、ターゲット材の密度を高めることは、安定したアーク放電を得るために大切である。
得られたターゲット材をAIP式装置に設置し、全て同一成膜条件を用いて、成膜を行った。表1より、本願発明のターゲット材を用いて得られた硬質皮膜は、その表面に付着するドロップレット数は、従来のターゲット材を用いた場合よりも少なく、優れていた。従来例29のTi−Al−Bターゲットから得られる硬質皮膜のドロップレット数量は182個であるのに対し、本発明例1〜4のTiB2を含有させたターゲット材から得られた硬質皮膜では、最も少ない量で25個、最も多い量で57個であり、60%以上低減した。この傾向は、TiB2を含有させたターゲット材だけでなく、他のホウ化物を含有させた場合も同様に優れていた。比較例28のように、AlB2を含有させたターゲット材では、放電が安定せずアーク放電が停止してしまった。AlB2を含有させた場合、高密度になかったことが原因であると考えられる。
皮膜表面のドロップレット数量は、ホウ化物の含有量に依存する。本発明例1から4、比較例25、26から明らかのように、本発明例の5%から30%のときに、ドロップレット数量は少なくなり優れていた。また、ホウ化物の含有量が30%までは、含有量が多い程ドロップレット数量は低下した。TiB2を4%含有するターゲット材から得られた比較例25は166個、CrB2を4%含有するターゲット材から得られた比較例27は189個であった。ターゲット材組成の異なる本発明例5〜7、比較例27の硬質皮膜表面も同様な傾向であった。しかし、ホウ化物の含有量が、30%を超えると、ターゲット材の抗折強度が著しく低下するだけでなく、放電することが出来なくなった。従って、30%を超えるものは、使用できないことが確認された。更に、本発明例8〜16に示した様に、Ti、Cr系だけでなく、周期律表の4a、5a、6a族元素、Sを含有するターゲット材も優れていた。
ターゲット材に含有するホウ化物の平均粒径の影響について調査を行ったところ、200μmを超え、密度が80%の本発明例19は、抗折強度が若干低下した。明確な原因は不明であるが、ターゲット材の酸素含有量が多量であったためと考えられる。ホウ化物の平均粒径は、200μm以下のときに、抗折強度の高く、ドロップレット発生の低減できるターゲットを実現できる。
本発明例20、21のように、ホウ化物に加えて窒化物や炭窒化物を含有したターゲットは、ドロップレット発生が少なく、大きな効果が確認された。これは、窒化物を含有することによって、アークスポットの運動速度が、更に速まったためと考えられる。
次にターゲット材の密度の影響について述べた。密度が80%の本発明例19、24は、安定したアーク放電が得られる限界であった。比較例28は77%であり、放電が出来なかった。密度が低くなると、ターゲット材に含有される酸素量が増加するため、アーク放電が安定しなかった。密度が80%未満の場合、アーク放電が安定せず停止した。このように、ターゲット材の密度を高めることは、安定したアーク放電を得るために大切である。
(実施例2)
実施例1で作製したミーリング用インサートについて、以下の条件で切削評価を行い、硬質皮膜の耐摩耗性の優劣を確認した。評価方法は、切削長さ1m時に発生する硬質皮膜の剥離や破壊の有無を、光学顕微鏡を用いて、切刃逃げ面部を50倍に拡大して観察した。その後切削を継続し、10μm以上の微小チッピングを含む、欠損が発生した時点を工具寿命とし、その時点までの切削加工距離(m)を比較することによって性能を評価した。
(切削試験の条件)
工具 :特殊正面フライス
インサート形状 :SDE53タイプ特殊形状
切削方法 :センターカット方式
被削材形状 :幅125mm×長さ300mm
被削材 :SKD11、プレス金型用鋼、硬さ、HRC29
軸方向切込み量 :1.0mm
切削速度 :130m/min
1刃あたりの送り量 :1.3mm/刃
切削油 :なし
実施例1で作製したミーリング用インサートについて、以下の条件で切削評価を行い、硬質皮膜の耐摩耗性の優劣を確認した。評価方法は、切削長さ1m時に発生する硬質皮膜の剥離や破壊の有無を、光学顕微鏡を用いて、切刃逃げ面部を50倍に拡大して観察した。その後切削を継続し、10μm以上の微小チッピングを含む、欠損が発生した時点を工具寿命とし、その時点までの切削加工距離(m)を比較することによって性能を評価した。
(切削試験の条件)
工具 :特殊正面フライス
インサート形状 :SDE53タイプ特殊形状
切削方法 :センターカット方式
被削材形状 :幅125mm×長さ300mm
被削材 :SKD11、プレス金型用鋼、硬さ、HRC29
軸方向切込み量 :1.0mm
切削速度 :130m/min
1刃あたりの送り量 :1.3mm/刃
切削油 :なし
表1に示したように、ドロップレット数量は切削における工具寿命に影響を及ぼすことがわかる。即ち、ホウ化物をターゲット材中に含有させて得られる硬質皮膜の切削性能は、優れていた。本発明例1〜4の工具寿命は、夫々、40.8m、43.1m、44.7m、44.8mとなったが、従来例29の(TiAlB)Nの工具寿命は、23.4mであった。硬質皮膜を構成する元素は同じであっても、ターゲット材の形態が異なることによって、工具寿命は大きな影響を受けた。本発明例1〜4、比較例25、26を比較すると、TiB2含有量が5%以上であって、TiB2量が増えるに従って工具寿命が優れた。最も工具寿命が優れた本発明例4は、従来例29の工具寿命に比して、1.9倍であった。一方、TiB2含有量が5%未満のときは、工具寿命は従来例とほぼ同等であった。
切削距離1m時の刃先の損傷状態を確認した結果、本発明例の逃げ面最大摩耗幅VBmaxが0.044mmであったのに対し、従来例29は、0.106mmと大きかった。両者とも剥離は認められず、正常摩耗を呈しており、夫々最終的には、逃げ面最大摩耗幅が0.300mmを超えた所で欠損した。この結果は、ドロップレットが少なくなることにより、得られた硬質皮膜の硬度、密度、靭性などの機械的強度が高まり、その結果、優れた工具寿命を示したためである。
本願発明のターゲット材を使用した場合、硬質皮膜の機械的強度が高まるため、耐欠損性、耐摩耗性が要求される用途への被覆に用いることが効果的である。例えば、6μmを超える様な厚膜が必要な用途に使用すれば、ドロップレットの少ない、高密度な硬質皮膜の形成が可能となる。更に、ドリル、エンドミルや微小部品のように、使用したい部分にドロップレットの付着が好まれない用途には好適である。本願発明のターゲット材は、粉末冶金法にて作製可能であり、ホットプレス法だけでなく、HIP法でも作製可能である。HIP法を適用する場合は、ArもしくはN2を含む雰囲気で、100MPa〜300MPaの範囲で加圧を行えば可能である。
切削距離1m時の刃先の損傷状態を確認した結果、本発明例の逃げ面最大摩耗幅VBmaxが0.044mmであったのに対し、従来例29は、0.106mmと大きかった。両者とも剥離は認められず、正常摩耗を呈しており、夫々最終的には、逃げ面最大摩耗幅が0.300mmを超えた所で欠損した。この結果は、ドロップレットが少なくなることにより、得られた硬質皮膜の硬度、密度、靭性などの機械的強度が高まり、その結果、優れた工具寿命を示したためである。
本願発明のターゲット材を使用した場合、硬質皮膜の機械的強度が高まるため、耐欠損性、耐摩耗性が要求される用途への被覆に用いることが効果的である。例えば、6μmを超える様な厚膜が必要な用途に使用すれば、ドロップレットの少ない、高密度な硬質皮膜の形成が可能となる。更に、ドリル、エンドミルや微小部品のように、使用したい部分にドロップレットの付着が好まれない用途には好適である。本願発明のターゲット材は、粉末冶金法にて作製可能であり、ホットプレス法だけでなく、HIP法でも作製可能である。HIP法を適用する場合は、ArもしくはN2を含む雰囲気で、100MPa〜300MPaの範囲で加圧を行えば可能である。
Claims (4)
- Al元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Si、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Al相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材。
- Si元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Al、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Si相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材。
- Al元素、Si元素と、M成分、但し、M成分は周期律表4a、5a、6a族金属元素、Sから選択される1種以上の元素を有するターゲット材において、該ターゲット材は、M成分のホウ化物を、モル%で5%以上、30%以下含有し、該Mホウ化物が、Al相又はSi相中に含まれる組織を有することを特徴とするホウ化物含有ターゲット材。
- 請求項1から3のいずれかに記載のホウ化物含有ターゲット材において、該ホウ化物の平均粒径が200μm以内、該ターゲット材の密度が80%以上であることを特徴とするホウ化物含有ターゲット材。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016037639A (ja) * | 2014-08-07 | 2016-03-22 | 国立大学法人豊橋技術科学大学 | 他元素含有蒸発源、dlc膜形成方法及びdlc膜形成装置 |
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- 2007-01-24 JP JP2007013488A patent/JP2008179853A/ja active Pending
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