JP2002212707A - Cr合金ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法 - Google Patents

Cr合金ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法

Info

Publication number
JP2002212707A
JP2002212707A JP2001346804A JP2001346804A JP2002212707A JP 2002212707 A JP2002212707 A JP 2002212707A JP 2001346804 A JP2001346804 A JP 2001346804A JP 2001346804 A JP2001346804 A JP 2001346804A JP 2002212707 A JP2002212707 A JP 2002212707A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
target material
phase
less
alloy target
alloy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001346804A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3765474B2 (ja
Inventor
Kenichi Inoue
謙一 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Proterial Ltd
Original Assignee
Hitachi Metals Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hitachi Metals Ltd filed Critical Hitachi Metals Ltd
Priority to JP2001346804A priority Critical patent/JP3765474B2/ja
Publication of JP2002212707A publication Critical patent/JP2002212707A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3765474B2 publication Critical patent/JP3765474B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)
  • Mounting, Exchange, And Manufacturing Of Dies (AREA)
  • Powder Metallurgy (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 局部溶融の発生が少なく、安定した放電特性
が得られ、かつ長寿命であるCr合金ターゲット材を提
供する。また、その製造方法、そして、これら技術を利
用することによる皮膜コーティング方法を提供する。 【解決手段】 ターゲット材組織中に面積率で純Si相
が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物
相が40%以下存在するCr合金ターゲット材、具体例
として、ターゲット材組織中に面積率で純Si相が5%
以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相が4
0%以下、残部実質的にターゲット材構成元素による固
溶相のCr合金ターゲット材である。Si:1〜40原
子%含み、残部実質的にCrであることが好ましい。B
を1〜7原子%添加することも有効である。本発明のタ
ーゲット材は、アークイオンプレーティング用に好まし
く、例えば摺動部品、切削工具、金型の表面コーティン
グ用に使用できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、真空蒸着用のター
ゲット材に関するものであり、特にはアークイオンプレ
ーティング法によるコーティングの際の蒸発源として有
効なCr合金ターゲット材およびその製造方法と、その
ターゲット材による皮膜コーティング方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】摺動部品、切削工具、金型等の表面に耐
摩耗性、耐焼付き性の向上を目的として、例えばその窒
化膜や炭窒化膜、酸窒化膜といったCr系硬質皮膜が適
用されている。Cr系硬質皮膜のコーティングには、蒸
発源としてCr系合金ターゲット材を使用し、前述のア
ークイオンプレーティング法を適用することが一般的で
ある。
【0003】イオンプレーティング法の1種であるアー
クイオンプレーティング法は、減圧した反応ガス雰囲気
中において、皮膜の原料となるターゲット材をアーク放
電にて瞬時に溶解、イオン化し、負に印可した被処理材
に付着させ皮膜を形成する方法である。アークイオンプ
レーティング法は、電子銃等を用いたイオンプレーティ
ング法に比べ、蒸発金属のイオン化率が高いため、密着
力に優れた皮膜が得られることから、現在ではその適用
量が増加している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】成膜に使用する際、ア
ークイオンプレーティング用ターゲット材に要求される
特性は、異常放電が発生しないこと、局部的な溶融が生
じないこと、強度および靭性不足により割れ等の破損が
生じないことである。
【0005】成膜中の異常放電は、ターゲット材上のア
ーク放電が度々失火する現象として認められるが、これ
により成膜が断続的となるため、得られる皮膜の厚みが
不均一になったり、皮膜の密度を部分的に低下させ、皮
膜の性能は著しく劣化する。
【0006】また、ターゲット材表面の局部溶融は、ド
ロップレットと呼ばれるマイクロパーティクル量の増加
や、皮膜組成を不均一にさせるため、同様に皮膜の性能
は著しく劣化する。また、異常放電と局部溶融は、ター
ゲット材の寿命を極端に低下させる原因にもなる。
【0007】さらに、前述したようにアークイオンプレ
ーティング法では、アーク放電によりターゲット材表面
は溶融するほど加熱されるため、ターゲット材には大き
な熱応力が発生する。この時、強度や靭性の低いターゲ
ット材の場合ではクラックが生じ、異常放電や局部溶融
といった不具合が発生するだけでなく、場合によっては
ターゲット材が破損することがある。ターゲット材の破
損は、最悪の場合、その裏側に位置する水冷カソード部
をも破損させ、冷却水が装置内に流出するという大事故
につながる。したがって、ターゲット材の強度、靭性は
このような熱応力に耐えることが可能な値が要求され
る。
【0008】上記不具合現象は、純Crターゲット材使
用時においては、ほとんど発生することがないものの、
添加元素としてSi等をターゲット材に含有させた場
合、異常放電や局部溶融といった不具合が頻繁に発生す
る。そのため、従来はSiを含むCr合金ターゲット材
は実験的に使用が可能であっても、工業製品としての量
産には適用できなかった。
【0009】本発明はこうした事情に着目してなされた
ものであって、Cr合金ターゲット材に関し、局部溶融
の発生が少なく、安定した放電特性が得られ、かつ長寿
命であるCr合金ターゲット材およびその製造方法を提
供することを目的とする。そして、これら技術を利用す
ることにより、例えば摺動部品、切削工具、金型等の表
面への最適なCr系硬質皮膜のコーティング技術とし
て、その有効な皮膜コーティング方法を確立するもので
ある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、Siを含む
Cr合金ターゲット材における異常放電、局部溶融の原
因について検討を行った結果、ターゲット材組織中に存
在する未反応の純Si相、ターゲット材構成元素からな
る金属間化合物相を一定範囲内で存在させることで、異
常放電、局部溶融が抑制でき、真空蒸着法、特にアーク
イオンプレーティング用のターゲット材として安定に使
用可能となることを見いだした。
【0011】すなわち、本発明は、ターゲット材組織中
に面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素
による金属間化合物相が40%以下存在するCr合金タ
ーゲット材、具体例として、ターゲット材組織中に面積
率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による
金属間化合物相が40%以下、残部実質的にターゲット
材構成元素による固溶相のCr合金ターゲット材であ
る。
【0012】本発明のCr合金ターゲット材は、Si:
1〜40原子%含み、残部実質的にCrであることが好
ましい。また、皮膜の必要特性に応じて、Bを1〜7原
子%添加することも有効である。これらにより、本発明
のターゲット材は、アークイオンプレーティング用に好
ましく、摺動部品、切削工具、金型のいずれかの表面コ
ーティング用に使用することで、優れた耐摩耗性、耐焼
付き性を付与できる。
【0013】本発明のCr合金ターゲット材の製造方法
は、Cr粉末とTi粉末を所定比率に混合した混合粉末
をHIP(熱間静水圧プレス)法またはホットプレス法
のいずれかを用いて900〜1300℃で圧密化するこ
とである。ここで、混合粉末の比率は、Siを1〜40
原子%、残部Crの比率とすることが望ましく、さら
に、B粉末を1〜7原子%添加することも有効である。
【0014】そして、これら技術を利用することによ
り、例えば摺動部品、切削工具、金型等の表面への最適
なCr系硬質皮膜のコーティング技術として、その有効
な皮膜コーティング方法を確立した。すなわち、ターゲ
ット材を用いた皮膜コーティング方法において、面積率
で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金
属間化合物相が40%以下の組織であるCr合金ターゲ
ット材を使用し、アークイオンプレーティング法によっ
てコーティングすることを特徴とする皮膜コーティング
方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の重要な特徴は、特にアー
クイオンプレーティング法に適用して優れた成膜特性と
ターゲット材の耐久性を発揮し、摺動部品、切削工具、
金型等に優れた耐摩耗性、耐焼付き性を付与できるター
ゲット材として、Cr合金ターゲット材の組織中に存在
する純Si相の面積率と金属間化合物相の面積率を規定
した点である。
【0016】最初に、本発明のCr合金ターゲット材の
組織について説明する。純Si相の面積率は、ターゲッ
ト表面における放電の安定性と、局部溶融の発生に大き
く影響する。純Si相の面積率が5%を越えると使用中
にアークが度々失火し放電が極端に不安定になる。加え
て、純Si相が優先的に溶融するため、得られる皮膜の
性能が低下するのみならず、ターゲット自体の寿命も極
端に短くなる。このため、上記現象を抑制するために純
Si相は面積率で5%以下に規定する。より好ましくは
3%以下である。なお、本発明にいう純Si相とは、C
rと反応していないSi領域を意味するものである。
【0017】ターゲット材を構成する元素からなる金属
間化合物相は、上記純Si相の減少にしたがって増加す
る。本発明のCr合金ターゲットにおいては、CrSi
、CrSi、CrSiといった比較的脆い金属間化
合物が主体となり、これらの形成量が極端に増加する
と、特にアークイオンプレーティング用のターゲット材
としては使用できなくなる。仮に、純Si相が本発明の
規定範囲内であっても、上記金属間化合物を主体とする
相の面積率が40%を越えると、ターゲット材の強度、
靭性が極端に不足し、使用中にクラックや割れが発生
し、放電を不安定にする原因となる。そのため、ターゲ
ット材構成元素からなる金属間化合物相は、面積率で4
0%以下と規定した。より好ましくは、30%以下であ
る。
【0018】なお、本発明のCr合金ターゲット材は、
目的とする異常放電や局部溶融、そしてターゲット材自
身の破損を抑制するにおいて、その組織中の純Si相と
金属間化合物相を上記の面積率に規制すれば効果が発揮
され、これら規制される以外の相については別段の規定
を要するものではない。組織中の純Si相と金属間化合
物相を規制する本発明の場合、残部はこれら相以外の、
実質的にターゲット材構成元素による固溶相(合金相)
で構成され、これは上記特性の低下を抑制するにおいて
も望ましい。
【0019】次に、本発明のCr合金ターゲット材の組
成について説明する。Siは、例えばアークイオンプレ
ーティングのような成膜方法によって得られる硬質皮膜
の耐酸化性の向上、高硬度化に効果を示す元素である。
その添加量は1〜40原子%であることが好ましい。1
%未満では上記効果が顕著に得られず、40原子%を越
えて添加すると皮膜の密着力が劣化してしまう。そのた
めSi添加量は1〜40原子%が好ましい。さらに好ま
しくは2〜30原子%である。
【0020】Bは、例えばアークイオンプレーティング
のような成膜方法によって得られる硬質皮膜の耐焼付き
性を向上させるため、必要に応じて添加が可能である。
この効果を得るには、1%以上の添加が必要であるが、
7%を超えて添加するとCrとBからなる比較的脆い金
属間化合物が多量に形成されターゲット材の靭性が劣化
する。そのためBの添加量は1〜7原子%の添加が好ま
しく、更に好ましくは3〜6原子%である。
【0021】本発明のCr合金系ターゲット材は、スパ
ッタリングに代表されるような真空蒸着法による成膜に
用いることができるが、例えば摺動部品、切削工具、金
型といった工具皮膜に用いる際には皮膜の密着性に優れ
るといった面からアークイオンプレーティング用とする
ことが最も好ましいものである。
【0022】本発明のCr合金ターゲット材を製造する
にあたっては、Cr粉末とSi粉末、場合によってはB
粉末を所定量に混合した混合粉末を用いてHIP法また
はホットプレス法のいずれかを用いて900〜1300
℃で圧密化することによって製造することができる。
【0023】この時、圧密化温度が900℃未満では、
圧密化が十分でないため、ターゲット中にミクロポア等
の欠陥が多数残存してしまうことや、各元素間の反応が
不十分のため、純Si相が面積率で5%を越えて残存し
てしまうことから,ターゲット材使用中に異常放電や局
部溶融等の不具合が発生する。逆に1300℃を超えて
圧密化すると、ターゲット材を構成する元素からなる金
属間化合物相が、面積率で40%を越えてしまい、ター
ゲット材が極端に脆くなり使用に耐えることができな
い。そのためHIP法あるいはホットプレス法による圧
密化の温度は900〜1300℃と限定する。
【0024】そして、これら説明した本発明の技術を利
用することにより、例えば摺動部品、切削工具、金型等
の表面への最適なCr系硬質皮膜のコーティング技術と
して、その有効な皮膜コーティング方法を確立した。す
なわち、ターゲット材を用いた皮膜コーティング方法に
おいて、面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構
成元素による金属間化合物相が40%以下の組織である
Cr合金ターゲット材を使用し、アークイオンプレーテ
ィング法によってコーティングする皮膜コーティング方
法である。なお、本発明の皮膜コーティング方法であっ
ても、その供するターゲット材、そしてその製造方法に
ついては、本発明の条件を適用できることは言うまでも
ない。
【0025】本発明であれば、密着性および耐摩耗性、
耐焼付き性に優れた皮膜を達成できることから、それら
必要とされる用途に広く適用することが可能である。例
えばコンプレッサー用ベーン、ピストンリングといった
摺動部品や、エンドミル、ホブ、ブローチといった切削
工具、冷間鍛造、板金プレス、温熱間鍛造を用途とする
金型等の工具類への表面皮膜に用いることで、その効果
を十分に活用できる。また、被処理材についても、本発
明の上記効果はその材質にこだわらず達成されるが、例
えば被処理材に工具鋼や超硬合金、サーメットを適用す
れば、本発明の皮膜の特性が生かされ、また、上記の用
途にも適するものである。
【0026】工具鋼の場合、例えばJIS G 440
1(炭素工具鋼鋼材)やJIS G4403(高速度工
具鋼鋼材)、JIS G 4404(合金工具鋼鋼材)
にも規定されるような、質量%で3.0%以下のCを含
む鋼を基に適宜Cr,Mo,W,V,Co等を選択含有
せしめた材質であるが、その指定される用途も合わせ、
摺動部品、切削工具、金型等に適用される材質を含むも
のである。特に高速度工具鋼鋼材といった、C:0.5
0〜1.80%,Cr:3.5〜5.5%を含む鋼に適
宜Mo,W,V,Co等を選択含有せしめた材質は、超
硬合金とともに、切削工具に好ましい。
【0027】
【実施例】次に実施例に基づき詳細に説明するが、本発
明は下記実施例によって限定を受けるものではなく、本
発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更が可能であ
り、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0028】(実施例1)Cr粉末(平均粒径75μ
m)、Si粉末(平均粒径150μm)およびB粉末
(平均粒径5μm)を用い、表1に示すターゲット材組
成と同様の原子量比にそれぞれ調整しV型混合機により
混合紛を作製した後、鋼製の容器に充填しこれを表1記
載の条件にてHIP処理し圧密化した。
【0029】得られた成形品より機械加工によって、組
織評価用の15mm×15mm×厚み10mmのブロッ
クサンプルと、放電特性および皮膜の密着力を調査する
目的でφ100mm×厚み14mm、底面はφ105×
厚み2mmの固定用つばがついたターゲット材を削り出
した。ターゲット材の組成を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】ブロックサンプルについては、X線マイク
ロアナライザーによりCr、Si、Bの面分析を行い、
純Si相ならびにターゲット材構成元素からなる金属間
化合物相を特定し、画像解析によってそれらの面積率を
算出した。なお、純Si相、金属間化合物相以外の部分
は、ターゲット材構成元素による固溶相であった。ここ
で、本発明のターゲット材No.4を観察した光学顕微
鏡組織写真を図1に示しておく。灰色の部分が金属間化
合物相、白い部分が固溶相である。なお、純Si相は非
常に微細で少量なため、この写真から観察することはで
きなかった。
【0032】一方、ターゲット材はアークイオンプレー
ティング装置の水冷カソードへ装着し、実際に成膜を行
い評価した。この時、被処理材としてSKH51(硬さ
60HRC)を使用し、始めに1×10−3Paまで真
空引きし、500℃に加熱、30分間保持した後、Ar
雰囲気中1.0Paの圧力にし、被処理材のBias電
圧:−400Vで30分間、Arイオンによる被処理材
の表面の洗浄を行った後、N雰囲気中、圧力:3.0
Pa、ターゲット材のアーク電流:100A、被処理材
のBias電圧:−100Vにて70分の条件で窒化膜
の成膜を行った。
【0033】放電特性については、ターゲット材上でア
ーク放電が失火した回数を測定し、局部溶融については
成膜終了後のターゲット材表面の状態より評価した。ま
た得られた皮膜の密着力については、引っ掻き試験機を
用いて皮膜の剥離が生じた荷重で評価を行った。ターゲ
ット材組織、ターゲット材の使用状態、皮膜の評価結果
を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】表2より明らかなように、純Si相ならび
に金属間化合物相の面積率が本発明の範囲を外れるター
ゲット材については、70分の成膜中に40回以上の異
常放電が発生し、アーク放電が失火した。なお、ターゲ
ット材No.55については、成膜中にアーク放電が全
く安定しないため使用不可能と判断し、実験を中止し
た。
【0036】使用後のターゲット材表面を観察したとこ
ろ、比較品であるターゲット材No.51、52につい
ては、純Si相が優先的に溶融したと思われる痘痕状の
外観を示し、No.53、54は、ターゲット材表面で
発生したクラックにアーク放電が集中し発生したと思わ
れる局部溶融痕が認められた。このような異常放電を伴
なって成膜した皮膜は、本発明のターゲット材より得ら
れた皮膜と比較して密着力が大幅に低下し、いずれもス
クラッチ強度で50N以下の値となった。一方、本発明
のターゲット材では、いずれも比較のターゲット材に比
べて異常放電ならびに局部溶融が大幅に抑制され、得ら
れた皮膜のスクラッチ強度も著しく優れる結果となっ
た。
【0037】(実施例2)Cr粉末(平均粒径45μ
m)、Si粉末(平均粒径75μm)およびB粉末(平
均粒径5μm)を表3に示すターゲット材組成と同様の
原子量比にそれぞれ調整し、V型混合機にて混合紛を作
製後、プレス成形機にて予備成形体を成形し、これを表
3中に示す温度にてホットプレスを用いて圧密化した。
この時のプレス圧力は、いずれも150MPa一定とし
た。
【0038】得られた成形品は実施例1と同様に、加工
ならびに評価を行った。ターゲット材の組成を同様に測
定したものを表3に示す。ターゲット材組織、ターゲッ
ト材の使用状態、皮膜の評価結果を表4に示す。なお、
ターゲット材の純Si相、金属間化合物相以外の部分
は、ターゲット材構成元素による固溶相であった。
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】表4に示すごとく、純Si相ならび金属間
化合物相の面積率が本発明の範囲にあるターゲット材N
o.11〜14は、ターゲット材の使用状態、皮膜のス
クラッチ強度ともに良好な結果が得られた。
【0042】
【発明の効果】本発明のCr合金ターゲット材は、異常
放電や局部溶融等の問題の主要因となるターゲット材組
織中の純Si相ならびに金属間化合物相の面積率を特定
値以下に規定したことによって、アークイオンプレーテ
ィングにおいても安定した成膜が可能となり、得られる
皮膜特性についてもバラツキが少なくなるため、安定し
た性能が得られるようになる。また、異常放電、局部溶
融等の問題が解消したことによって、ターゲット材の寿
命も大幅に改善される。これにより、例えば摺動部品、
切削工具、金型等への表面皮膜のコーティングに最適な
ターゲット材として、供給が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のCr合金ターゲット材の一実施例を示
す光学顕微鏡ミクロ組織写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22C 27/06 C22C 27/06 C23C 14/34 C23C 14/34 A // B23B 27/14 B23B 27/14 A

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Siを含むCr合金ターゲット材におい
    て、ターゲット材組織中に面積率で純Si相が5%以
    下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相が40
    %以下であることを特徴とするCr合金ターゲット材。
  2. 【請求項2】 Siを含むCr合金ターゲット材におい
    て、ターゲット材組織中に面積率で純Si相が5%以
    下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相が40
    %以下、残部実質的にターゲット材構成元素による固溶
    相であることを特徴とするCr合金ターゲット材。
  3. 【請求項3】 Si:1〜40原子%、残部実質的にC
    rであることを特徴とする請求項1または2に記載のC
    r合金ターゲット材。
  4. 【請求項4】 Bを1〜7原子%を含むことを特徴とす
    る請求項1ないし3のいずれかに記載のCr合金ターゲ
    ット材。
  5. 【請求項5】 ターゲット材はアークイオンプレーティ
    ング用であることを特徴とする請求項1ないし4のいず
    れかに記載のCr合金ターゲット材。
  6. 【請求項6】 ターゲット材は摺動部品、切削工具、金
    型のいずれかの表面コーティング用であることを特徴と
    する請求項1ないし5のいずれかに記載のCr合金ター
    ゲット材。
  7. 【請求項7】 ターゲット材組織中に面積率で純Si相
    が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物
    相が40%以下であるCr合金ターゲット材の製造方法
    であって、Cr粉末とSi粉末を所定比率に混合した混
    合粉末をHIP法またはホットプレス法のいずれかを用
    いて900〜1300℃で圧密化することを特徴とする
    Cr合金ターゲット材の製造方法。
  8. 【請求項8】 ターゲット材組織中に面積率で純Si相
    が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物
    相が40%以下、残部実質的にターゲット材構成元素に
    よる固溶相であるCr合金ターゲット材の製造方法であ
    って、Cr粉末とSi粉末を所定比率に混合した混合粉
    末をHIP法またはホットプレス法のいずれかを用いて
    900〜1300℃で圧密化することを特徴とするCr
    合金ターゲット材の製造方法。
  9. 【請求項9】 Siを1〜40原子%、残部Crの比率
    で混合した混合粉末を使用することを特徴とする請求項
    7または8に記載のCr合金ターゲット材の製造方法。
  10. 【請求項10】 混合粉末にB粉末を1〜7原子%の比
    率で添加することを特徴とする請求項7ないし9のいず
    れかに記載のCr合金ターゲット材の製造方法。
  11. 【請求項11】 ターゲット材はアークイオンプレーテ
    ィング用であることを特徴とする請求項7ないし10の
    いずれかに記載のCr合金ターゲット材の製造方法。
  12. 【請求項12】 ターゲット材は摺動部品、切削工具、
    金型のいずれかの表面コーティング用であることを特徴
    とする請求項7ないし11のいずれかに記載のCr合金
    ターゲット材の製造方法。
  13. 【請求項13】 ターゲット材を用いた皮膜コーティン
    グ方法において、面積率で純Si相が5%以下、ターゲ
    ット材構成元素による金属間化合物相が40%以下の組
    織であるCr合金ターゲット材を使用し、アークイオン
    プレーティング法によってコーティングすることを特徴
    とする皮膜コーティング方法。
JP2001346804A 2000-11-16 2001-11-13 Cr合金ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法 Expired - Lifetime JP3765474B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001346804A JP3765474B2 (ja) 2000-11-16 2001-11-13 Cr合金ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000-350217 2000-11-16
JP2000350217 2000-11-16
JP2001346804A JP3765474B2 (ja) 2000-11-16 2001-11-13 Cr合金ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002212707A true JP2002212707A (ja) 2002-07-31
JP3765474B2 JP3765474B2 (ja) 2006-04-12

Family

ID=26604119

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001346804A Expired - Lifetime JP3765474B2 (ja) 2000-11-16 2001-11-13 Cr合金ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3765474B2 (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008156682A (ja) * 2006-12-22 2008-07-10 Hitachi Tool Engineering Ltd 窒化物含有ターゲット材
JP2008163413A (ja) * 2006-12-28 2008-07-17 Hitachi Tool Engineering Ltd 窒化物含有ターゲット材
JP2008179853A (ja) * 2007-01-24 2008-08-07 Hitachi Tool Engineering Ltd ホウ化物含有ターゲット材
JP2008214757A (ja) * 2008-04-21 2008-09-18 Toshiba Corp 硬質被膜およびそれを用いた硬質被膜部材
JP2009197334A (ja) * 2009-05-07 2009-09-03 Toshiba Corp スパッタリングターゲットの製造方法、それを用いた硬質被膜の形成方法および硬質被膜被覆部材
JP4593686B1 (ja) * 2010-02-26 2010-12-08 昭和電工株式会社 鍛造加工用金型及びその製造方法並びに鍛造加工方法
CN111058004A (zh) * 2020-01-02 2020-04-24 宁波江丰电子材料股份有限公司 一种铬硅合金溅射靶材及其制备方法
CN115305447A (zh) * 2022-07-21 2022-11-08 厦门建霖健康家居股份有限公司 一种塑料基材上镀光亮铬的方法

Cited By (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008156682A (ja) * 2006-12-22 2008-07-10 Hitachi Tool Engineering Ltd 窒化物含有ターゲット材
JP2008163413A (ja) * 2006-12-28 2008-07-17 Hitachi Tool Engineering Ltd 窒化物含有ターゲット材
JP2008179853A (ja) * 2007-01-24 2008-08-07 Hitachi Tool Engineering Ltd ホウ化物含有ターゲット材
JP2008214757A (ja) * 2008-04-21 2008-09-18 Toshiba Corp 硬質被膜およびそれを用いた硬質被膜部材
JP2009197334A (ja) * 2009-05-07 2009-09-03 Toshiba Corp スパッタリングターゲットの製造方法、それを用いた硬質被膜の形成方法および硬質被膜被覆部材
JP4593686B1 (ja) * 2010-02-26 2010-12-08 昭和電工株式会社 鍛造加工用金型及びその製造方法並びに鍛造加工方法
JP2011177716A (ja) * 2010-02-26 2011-09-15 Showa Denko Kk 鍛造加工用金型及びその製造方法並びに鍛造加工方法
CN111058004A (zh) * 2020-01-02 2020-04-24 宁波江丰电子材料股份有限公司 一种铬硅合金溅射靶材及其制备方法
CN115305447A (zh) * 2022-07-21 2022-11-08 厦门建霖健康家居股份有限公司 一种塑料基材上镀光亮铬的方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP3765474B2 (ja) 2006-04-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4062583B2 (ja) 切削工具用硬質皮膜およびその製造方法並びに硬質皮膜形成用ターゲット
JP5060714B2 (ja) 耐摩耗性および耐酸化性に優れた硬質皮膜、並びに該硬質皮膜形成用ターゲット
JP5234926B2 (ja) 硬質皮膜および硬質皮膜形成用ターゲット
JP5454678B2 (ja) サーメットおよび被覆サーメット
JP5695720B2 (ja) 耐摩耗性と耐酸化性に優れた硬質皮膜
WO2012053237A1 (ja) 耐熱合金の切削加工で優れた耐欠損性を発揮するwc基超硬合金製切削工具および表面被覆wc基超硬合金製切削工具
JP2011190529A (ja) 硬質皮膜被覆部材、および、冶工具、並びに、ターゲット
JP3765474B2 (ja) Cr合金ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法
JP6059640B2 (ja) 硬質皮膜および硬質皮膜形成用ターゲット
JP4253169B2 (ja) 耐摩耗性に優れた硬質皮膜とその製造方法、および切削工具並びに硬質皮膜形成用ターゲット
JP2011235410A (ja) 耐熱合金の切削加工で優れた耐欠損性を発揮するwc基超硬合金製切削工具および表面被覆wc基超硬合金製切削工具
WO2015133256A1 (ja) 硬質皮膜およびその形成方法、ならびに鋼板熱間成型用金型
JP4515692B2 (ja) スパッタリングターゲット
JP5995091B2 (ja) 付着強度と耐チッピング性にすぐれた表面被覆切削工具
JP3546967B2 (ja) 被覆硬質合金
JP3765475B2 (ja) Ti−Si合金系ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法
JP2000297364A (ja) AlTi系合金スパッタリングターゲット及び耐摩耗性AlTi系合金硬質皮膜並びに同皮膜の形成方法
JP2005177952A (ja) 複合硬質皮膜被覆工具及びその製造方法
JP4869282B2 (ja) 硬質被膜およびそれを用いた硬質被膜部材
JP2008056957A (ja) 窒化物含有ターゲット材
JP7396018B2 (ja) 硬質皮膜形成用のターゲットおよび硬質皮膜
JP2003301264A (ja) 切削工具の表面皮膜形成用Ti−Al合金系ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法
JP2019118995A (ja) 表面被覆切削工具
JP5053961B2 (ja) スパッタリングターゲット
JP2005186166A (ja) 硬質皮膜被覆工具及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20051109

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20051118

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20051206

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060106

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060119

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 3765474

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100203

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110203

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120203

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130203

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140203

Year of fee payment: 8

EXPY Cancellation because of completion of term