JP3765475B2 - Ti−Si合金系ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法 - Google Patents

Ti−Si合金系ターゲット材およびその製造方法ならびに皮膜コーティング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空蒸着用のターゲット材に関するものであり、特にはアークイオンプレーティング法によるコーティングの際の蒸発源として有効なTi−Si合金系ターゲット材およびその製造方法と、そのターゲット材による皮膜コーティング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
切削工具、金型ならびに摺動部品等の表面に耐摩耗性、耐酸化性の向上を目的として、例えばその窒化膜や炭窒化膜、酸窒化膜といったTi−Si系硬質皮膜の適用が検討されている。Ti−Si系硬質皮膜のコーティングには、蒸発源としてTi−Si合金系ターゲット材を使用し、前述のアークイオンプレーティング法にて成膜を行うことが最適である。
【0003】
イオンプレーティング法の1種であるアークイオンプレーティング法は、減圧した反応ガス雰囲気中において、皮膜の原料となるターゲット材をアーク放電にて瞬時に溶解、イオン化し、負に印可した被処理材に付着させ皮膜を形成する方法である。アークイオンプレーティング法は、電子銃等を用いたイオンプレーティング法に比べ、蒸発金属のイオン化率が高いため、密着力に優れた皮膜が得られることから、現在ではその適用量が増加している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
成膜に使用する際、アークイオンプレーティング用ターゲット材に要求される特性は、異常放電が発生しないこと、局部的な溶融が生じないこと、ドロップレットと呼ばれるマイクロパーティクルの発生量が少ないこと、強度および靭性不足により割れ等の破損が生じないことである。
【0005】
成膜中の異常放電は、ターゲット材上のアーク放電が度々失火する現象として認められるが、これにより成膜が断続的となるため、得られる皮膜の厚みが不均一になったり、皮膜の密度を部分的に低下させ、皮膜の性能は著しく劣化する。
【0006】
また、ターゲット材表面の局部溶融は、皮膜組成を不均一にさせるため、皮膜の性能は著しく劣化する。さらに、異常放電、局部溶融の不具合現象はターゲット材の寿命も極端に低下させる原因となる。そして、皮膜表面に形成するドロップレット量が増加することも、皮膜の性能を劣化させることとなる。
【0007】
前述したようにアークイオンプレーティング法では、アーク放電によりターゲット材表面は溶融するほど加熱されるため、ターゲット材には大きな熱応力が発生する。この時、強度や靭性の低いターゲット材の場合ではクラックが容易に生じるため、異常放電や局部溶融といった不具合が発生するだけでなく、場合によってはターゲット材が破損することがある。ターゲット材の破損は、最悪の場合、その裏側に位置する水冷カソード部をも破損させ、冷却水が装置内に流出するという大事故につながる。したがって、ターゲット材の強度、靭性はこのような熱応力に耐えることが要求される。
【0008】
上記不具合現象は、純Tiターゲット材使用時においては、ほとんど発生することがないものの、添加元素としてSiをターゲット材に含有させた場合、異常放電、局部溶融、ドロップレット量の増加といった不具合が頻繁に発生する。そのため、従来のTi−Si合金系ターゲット材は実験的に使用が可能であっても、工業製品としての量産には十分適用できなかった。
【0009】
本発明はこうした事情に着目してなされたものであって、ターゲット材としてドロップレット量、局部溶融の発生が少なく、安定した放電特性が得られ、かつ長寿命であるTi−Si合金系ターゲット材およびその製造方法を提供することを目的とする。そして、これら技術を利用することにより、例えば切削工具、金型ならびに摺動部品等の表面への最適なTi−Si系硬質皮膜のコーティング技術として、その有効な皮膜コーティング方法を確立するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、Ti−Si合金系ターゲット材における異常放電、局部溶融の原因について検討を行った結果、ターゲット材組織中に存在する未反応の純Si相を一定範囲内で存在させることが最も効果的であり、更にはターゲット材構成元素からなる金属間化合物相を一定範囲内で存在させることで、ドロップレット量も十分抑制でき、真空蒸着法、特にアークイオンプレーティング用のターゲット材として安定に使用可能となることを見いだし、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ターゲット材組織中に面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、30〜80%であるTi−Si合金系ターゲット材、具体例として、ターゲット材組織中に面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、30〜80%、残部実質的にターゲット材構成元素による固溶相のTi−Si合金系ターゲット材である。
【0012】
本発明のTi−Si合金系ターゲット材は、Si:10〜40原子%含み、残部実質的にTiでなることが好ましい。これらにより、本発明のターゲット材は、アークイオンプレーティング用に好ましく、切削工具、金型ならびに摺動部品のいずれかの表面コーティング用に使用することで、優れた耐摩耗性、耐酸化性を付与できる。
【0013】
本発明のTi−Si合金系ターゲット材の製造方法は、Si粉末とTi粉末を所定比率に混合した混合粉末を、減圧下にて1時間あたり100℃以下の昇温速度で900〜1100℃の温度まで昇温を行い、900〜1100℃の温度で1時間以上加熱処理し、ついでHIP(熱間静水圧プレス)法またはホットプレス法のいずれかを用いて圧密化することである。ここで混合粉末の比率は、Siを10〜40原子%、残部Tiの比率とすることが望ましい。
【0014】
そして、これら技術を利用することにより、例えば切削工具、金型ならびに摺動部品等の表面への最適なTi−Si系硬質皮膜のコーティング技術として、その有効な皮膜コーティング方法を確立した。すなわち、ターゲット材を用いた皮膜コーティング方法において、面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、30〜80%の組織であるTi−Si合金系ターゲット材を使用し、アークイオンプレーティング法によってコーティングすることを特徴とする皮膜コーティング方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の重要な特徴は、特にアークイオンプレーティング法に適用して優れた成膜特性とターゲット材の耐久性を発揮し、切削工具、金型ならびに摺動部品等に優れた耐摩耗性、耐酸化性を付与できるターゲット材として、Ti−Si合金系ターゲット材の組織中に存在する純Si相の面積率と金属間化合物相の面積率を規定した点である。
【0016】
最初に、本発明のTi−Si合金系ターゲット材の組織について説明する。
純Si相の面積率は、ターゲット表面における放電の安定性と、局部溶融の発生に大きく影響する。純Si相の面積率が5%を越えると使用中にアークが度々失火し放電が極端に不安定になる。加えて、純Si相が優先的に溶融するため、得られる皮膜の性能が低下するのみならず、ターゲット自体の寿命も極端に短くなる。このため、上記現象を抑制するために純Si相は面積率で5%以下に規定する。より好ましくは3%以下である。なお、本発明にいう純Si相とは、Tiと反応していないSi領域を意味するものである。
【0017】
本発明におけるターゲット材を構成する元素からなる金属間化合物相は、TiSi、TiSi、TiSi、TiSiといった金属間化合物の一種以上を主体とし、これらの金属間化合物の面積率がターゲット材組織中において30〜80%の場合、ドロップレットの発生量は著しく抑制される。
【0018】
これら金属間化合物相の面積率が、30%未満であると上記効果は得られなくなり、逆に80%を越えるとターゲット材の強度、靭性が不足し、使用中にクラックや割れが発生し、異常放電や局部溶融の発生原因となる。よってターゲット材構成元素からなる金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、面積率で30〜80%に規定する。上記金属間化合物相は、ターゲット材中に均一分散していることが好ましい。より好ましい範囲は、50〜70%である。
【0019】
なお、本発明のTi−Si合金系ターゲット材は、目的とする異常放電や局部溶融、そしてドロップレットの発生量やターゲット材自身の破損を抑制するにおいて、その組織中の純Si相と金属間化合物相を上記の面積率に規制すれば効果が発揮され、これら規制される以外の相については別段の規定を要するものではない。組織中の純Si相と金属間化合物相を規制する本発明の場合、残部はこれら相以外の、実質的にターゲット材構成元素による固溶相(合金相)で構成され、これは上記特性の低下を抑制するにおいても望ましい。
【0020】
次に、本発明のTi−Si合金系ターゲット材の組成について説明する。
Siは、例えばアークイオンプレーティングのような成膜方法によって得られるTi−Si系硬質皮膜の耐酸化性の向上、高硬度化に効果を示す元素であり、その添加量は10〜40原子%であることが好ましい。Si添加量が10原子%未満であると上記効果が得られず、逆に40原子%を越えて添加すると皮膜の密着力低下が生じる。そのためSi添加量は、10〜40原子%が好ましい。さらに好ましくは15〜30原子%である。
【0021】
本発明のTi−Si合金系ターゲット材は、スパッタリングによる成膜に用いることができるが、例えば切削工具、金型ならびに摺動部品といった皮膜に用いる際には皮膜の密着性に優れるといった面からアークイオンプレーティング用途とすることが最も好ましいものである。
【0022】
本発明のTi−Si合金系ターゲット材を製造するにあたっては、まず、Ti粉末とSi粉末を所定量混合した混合粉末を、減圧下で1時間あたり100℃以下の昇温速度で900〜1100℃の温度まで昇温を行い、前記900〜1100℃の温度で1時間以上加熱処理を行なう。
【0023】
加熱処理を減圧下で行うのは、原料の酸化を出来るだけ防ぐためである。また、加熱処理において、1時間あたり100℃を越える昇温速度にすると、Ti粉末とSi粉末との反応が急速に進み、強烈な反応熱が発生し原料が溶融してしまうため、昇温速度は1時間あたり100℃以下が好適である。なお、ここでいう減圧下とは、例えば大気中における酸化雰囲気を低減させるための、大気からの減圧作業を指し、真空を含むものである。
【0024】
加熱温度は、900〜1100℃を外れると本発明のTi−Si合金系ターゲット材の組織が得られず、ターゲット材使用中の異常放電や局部溶融などの不具合が発生するため、この温度範囲が好適である。なお、加熱温度については、加熱時間中に900〜1100℃の範囲内であれば本発明を外れるものではない。
【0025】
加熱時間については、加熱温度が本発明の範囲内において低温側の場合では長時間必要であり、高温側であれば短時間で十分であるが、上述の加熱温度と同様の理由からいずれも1時間以上が好適である。好ましい加熱時間の上限は10時間以下である。
【0026】
圧密化の方法としては、HIP法またはホットプレス法のいずれか1種を用いることができる。この時、圧密化の温度、圧力等は特に限定されるものではないが、相対密度が98%以下となるような条件では、ターゲット材中にミクロポア等の欠陥が多数残存してしまい、ターゲット材使用中の異常放電や局部溶融等の不具合が発生するため好ましくない。
【0027】
そして、これら説明した本発明の技術を利用することにより、例えば切削工具、金型ならびに摺動部品等の表面への最適なTi−Si系硬質皮膜のコーティング技術として、その有効な皮膜コーティング方法を確立した。すなわち、ターゲット材を用いた皮膜コーティング方法において、面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、40%以下の組織であるTi−Si合金系ターゲット材を使用し、アークイオンプレーティング法によってコーティングする皮膜コーティング方法である。なお、本発明の皮膜コーティング方法であっても、その供するターゲット材、そしてその製造方法については、本発明の条件を適用できることは言うまでもない。
【0028】
本発明であれば、密着性および耐摩耗性、耐酸化性に優れた皮膜を達成できることから、それら必要とされる用途に広く適用することが可能である。例えばコンプレッサー用ベーン、ピストンリングといった摺動部品や、エンドミル、ホブ、ブローチといった切削工具、冷間鍛造、板金プレス、温熱間鍛造を用途とする金型等の工具類への表面皮膜に用いることで、その効果を十分に活用できる。また、被処理材についても、本発明の上記効果はその材質にこだわらず達成されるが、例えば被処理材に工具鋼や超硬合金、サーメットを適用すれば、本発明の皮膜の特性が生かされ、また、上記の用途にも適するものである。
【0029】
工具鋼の場合、例えばJIS G 4401(炭素工具鋼鋼材)やJIS G4403(高速度工具鋼鋼材)、JIS G 4404(合金工具鋼鋼材)にも規定されるような、質量%で3.0%以下のCを含む鋼を基に適宜Cr,Mo,W,V,Co等を選択含有せしめた材質であるが、その指定される用途も合わせ、摺動部品、切削工具、金型等に適用される材質を含むものである。特に高速度工具鋼鋼材といった、C:0.50〜1.80%,Cr:3.5〜5.5%を含む鋼に適宜Mo,W,V,Co等を選択含有せしめた材質は、超硬合金とともに、切削工具に好ましい。
【0030】
【実施例】
次に実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定を受けるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更が可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0031】
(実施例1)
Ti粉末(平均粒径150μm)、Si粉末(平均粒径150μm)を用い、表1に示すターゲット材組成と同様の原子量比にそれぞれ調整しV型混合機により混合紛末を作製した後、それぞれをアルミナ坩堝に挿入し、表1記載の条件にて加熱時間4時間の真空熱処理を行った。この時、本発明の範囲から外れる一部の比較品(No.53)は、混合粉末間の反応熱によって完全に溶融してしまったため、ターゲット材の製造が不可能となり、この時点で実験を中止した。
【0032】
一方、真空熱処理中、溶融しなかったものについては、その後ボール式粉砕機によって平均粒径75μmの粉末に調整し、鋼製の容器に充填後、900℃、140MPaの条件にてHIP処理し圧密化した。
【0033】
得られた成形品より、機械加工によって組織評価用の15mm×15mm×厚み10mmのブロックサンプルと、放電特性および皮膜表面のドロップレット量を調査する目的でφ100mm×厚み14mm、底面はφ105×厚み2mmの固定用つばがついたターゲット材を削り出した。ターゲット材の組成を表1に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0003765475
【0035】
ブロックサンプルについては、X線マイクロアナライザーによりTi、Siの面分析を行い、純Si相ならびにターゲット材構成元素からなる、SiとTiの金属間化合物を主体とする金属間化合物相を特定し、画像解析によってそれらの面積率を算出した。なお、純Si相、金属間化合物相以外の部分は、ターゲット材構成元素による固溶相であった。ここで、本発明のターゲット材No.4を観察した光学顕微鏡組織写真を図1に示しておく。灰色の部分が金属間化合物相、白い部分が固溶相である。なお、純Si相は非常に微細で少量なため、この写真から観察することはできなかった。
【0036】
一方、ターゲット材はアークイオンプレーティング装置の水冷カソードへ装着し、実際に成膜を行い評価した。この時、被処理材としてSKH51(硬さ60HRC)を使用し、始めに1×10−3Paまで真空引きし、500℃に加熱、30分間保持した後、Ar雰囲気中1.0Paの圧力にし、被処理材のBias電圧:−400Vで30分間、Arイオンによる被処理材の表面の洗浄を行った後、N雰囲気中、圧力:3.0Pa、ターゲット材のアーク電流:100A、被処理材のBias電圧:−50Vにて90分の条件で窒化膜の成膜を行った。
【0037】
放電特性については、ターゲット材上でアーク放電が失火した回数を測定し、局部溶融については成膜終了後のターゲット材表面の状態より評価した。また得られた皮膜のドロップレット量については、走査型電子顕微鏡を用いて1000倍に拡大した1視野あたりの個数を求め、単位面積あたりに換算し評価した。なお対象としたドロップレットは、粒径1μm以上の大きさのものとした。ターゲット材組織、ターゲット材の使用状態、皮膜の評価結果を表2に示す。
【0038】
【表2】
Figure 0003765475
【0039】
表2より明らかなように、純Si相ならびに金属間化合物相の面積率が本発明の範囲を外れるターゲット材については、90分の成膜中に40回以上の異常放電が発生し、アーク放電が失火した。使用後のターゲット材表面を観察したところ、比較品であるターゲット材No.52については、純Si相が優先的に溶融したと思われる痘痕状の外観を示し、No.54、55は、ターゲット材表面で発生したクラックにアーク放電が集中し発生したと思われる局部溶融痕が認められた。このような異常放電を伴なって成膜した皮膜は、本発明のターゲット材より得られた皮膜と比較して、皮膜表面のドロップレット量が極端に多くなった。
【0040】
なお、HIP処理前に混合粉末の真空熱処理を実施しなかった比較品No.51については、HIP処理時にTi粉末とSi粉末が発熱反応をおこし鋼製容器が溶損してしまい、ターゲット材の製造が不可能となった。比較品No.53については、真空熱処理時の昇温速度が早かったため、混合粉末間の反応が急速に進行し、溶融してしまいターゲット材を製造するには至らなかった。
【0041】
(実施例2)
Ti粉末(平均粒径75μm)、Si粉末(平均粒径150μm)を用い、表3に示すターゲット組成と同様の原子量比にそれぞれ調整しV型混合機により混合紛末を作製した後、それぞれをアルミナ坩堝に挿入し、表3記載の条件にて加熱時間6時間の真空熱処理を行った。その後、ボール式粉砕機によって平均粒径45μmの粉末に調整し、プレス成形機にて予備成形体を成形し、これを1000℃、150MPaの条件でホットプレスを用い圧密化した。
【0042】
得られた成形品は実施例1と同様に、加工ならびに評価を行った。ターゲット材の組成を実施例1と同様に調べ、結果を表3に示す。また、ターゲット材組織、ターゲット材の使用状態、皮膜の評価結果を表4に示す。なお、ターゲット材の純Si相、金属間化合物相以外の部分は、ターゲット材構成元素による固溶相であった。
【0043】
【表3】
Figure 0003765475
【0044】
【表4】
Figure 0003765475
【0045】
表4に示すごとく、純Si相ならび金属間化合物相の面積率が本発明の範囲にあるターゲット材No.11〜14は、ターゲット材の使用状態、皮膜表面のドロップレット量ともに、比較品ターゲット材No.61〜63に比べ大幅に良好な結果が得られた。
【0046】
【発明の効果】
本発明のTi−Si合金系ターゲット材は、異常放電や局部溶融等の問題の主要因となるターゲット材組織中の純Si相ならびに金属間化合物相の面積率を特定値に規定したことによって、アークイオンプレーティングにおいても安定した成膜が可能となり、得られる皮膜の特性についても安定した性能が得られるようになる。また、異常放電、局部溶融等の問題が解消したことによって、ターゲット材の寿命も大幅に改善される。これにより、例えば切削工具、金型ならびに摺動部品等への表面皮膜のコーティングに最適なターゲット材として、供給が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のTi−Si合金系ターゲット材の一実施例を示す光学顕微鏡ミクロ組織写真である。

Claims (11)

  1. ターゲット材組織中に面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、30〜80%であることを特徴とするTi−Si合金系ターゲット材。
  2. ターゲット材組織中に面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、30〜80%、残部実質的にターゲット材構成元素による固溶相であることを特徴とするTi−Si合金系ターゲット材。
  3. Si:10〜40原子%、残部実質的にTiであることを特徴とする請求項1または2に記載のTi−Si合金系ターゲット材。
  4. ターゲット材はアークイオンプレーティング用であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のTi−Si合金系ターゲット材。
  5. ターゲット材は切削工具、金型ならびに摺動部品のいずれかの表面コーティング用であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のTi−Si合金系ターゲット材。
  6. ターゲット材組織中に面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、30〜80%であるTi−Si合金系ターゲット材の製造方法であって、Si粉末とTi粉末を所定比率に混合した混合粉末を、減圧下にて1時間あたり100℃以下の昇温速度で900〜1100℃の温度まで昇温を行い、900〜1100℃の温度で1時間以上加熱処理し、ついでHIP法またはホットプレス法のいずれかを用いて圧密化することを特徴とするTi−Si合金系ターゲット材の製造方法。
  7. ターゲット材組織中に面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、30〜80%、残部実質的にターゲット材構成元素による固溶相であるTi−Si合金系ターゲット材の製造方法であって、Si粉末とTi粉末を所定比率に混合した混合粉末を、減圧下にて1時間あたり100℃以下の昇温速度で900〜1100℃の温度まで昇温を行い、900〜1100℃の温度で1時間以上加熱処理し、ついでHIP法またはホットプレス法のいずれかを用いて圧密化することを特徴とするTi−Si合金系ターゲット材の製造方法。
  8. Siを10〜40原子%、残部Tiの比率で混合した混合粉末を使用することを特徴とする請求項6または7に記載のTi−Si合金系ターゲット材の製造方法。
  9. ターゲット材はアークイオンプレーティング用であることを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載のTi−Si合金系ターゲット材の製造方法。
  10. ターゲット材は切削工具、金型ならびに摺動部品のいずれかの表面コーティング用であることを特徴とする請求項6ないし9のいずれかに記載のTi−Si合金系ターゲット材の製造方法。
  11. ターゲット材を用いた皮膜コーティング方法において、面積率で純Si相が5%以下、ターゲット材構成元素による金属間化合物相は、SiとTiの金属間化合物を主体とし、30〜80%の組織であるTi−Si合金系ターゲット材を使用し、アークイオンプレーティング法によってコーティングすることを特徴とする皮膜コーティング方法。
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