JP7021528B2 - 超硬合金及びその製造方法、並びにそれを用いた切削工具 - Google Patents
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Description
(1)WC粒子と不可避不純物からなる硬質相が、10.0~14.0質量%のCoと、該Coに対する質量比で3.0~10.0%のCrおよびCを含有する不可避的不純物からなる結合相により結合されており、
後方散乱電子回折により得られた前記WC粒子の粒度分布における累積%が91%となるWC粒径D 91 から前記累積%が100%となるWC粒径D 100 までの累積値の平均が0.50~1.15未満μmであり、
前記WC粒子と前記結合相との界面近傍における結合相は、Co、W、Crに着目したとき、一般式:Co100-a-bWaCrb[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-a-b)、a及びbは、それぞれ85≦100-a-b≦93、6≦a≦10、及び1≦b≦5の条件を満たす。]により表される金属組成を有し、
前記結合相の中心では、Co、W、Crに着目したとき、一般式:Co100-x-yWxCry[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-x-y)、x及びyは、それぞれ86≦100-x-y≦94、4≦x≦8、及び2≦y≦6の条件を満たす。]により表される金属組成を有し、
前記界面近傍における結合相のW含有量(a)が前記結合相の中心のW含有量(x)よりも高いことを特徴とする超硬合金である。
(3)前記(1)または(2)の超硬合金に硬質皮膜を被覆してなる切削工具である。
(4)10.0~14.0質量%のCo粉末と、Coに対する質量比で3.0~10.0%のCrを含有するCr3C2粉末と、残部としてフィッシャー法による平均粒径が0.8~2.0μmのWC粉末とを準備する工程と、前記各粉末をCoの質量%+Crの質量%+WCの質量%+不可避的不純物の質量%=100質量%として混合する混合工程と、得られた混合粉末を造粒する造粒工程と、得られた造粒粉末を成形する成形工程と、得られた成形体を焼成する焼成工程とを有する超硬合金の製造にあたり、前記焼成工程において前記成形体を1380~1420℃で焼結後、1300~1350℃まで1.0~3.3℃/分の冷却速度で徐冷する徐冷工程、及び前記徐冷工程後に前記徐冷工程の終了温度1300~1350℃から60℃まで80~130℃/分の冷却速度で急冷する急冷工程を有することにより、当該超硬合金におけるWC粒子と前記Coを主体とする結合相との界面近傍における結合相のW含有量を、前記結合相の中心のW含有量よりも、高くしたことを特徴とする超硬合金の製造方法である。
また、本発明の一実施形態によれば、優れた耐チッピング性を有する切削工具が提供される。
さらに、本発明の一実施形態によれば、優れた耐チッピング性を有し、長寿命の超硬合金を実用的に製造することができる。
(a) 硬質相
硬質相は不可避的不純物を除き、WCからなる。
硬質相(WC粒子)を結合させる結合相は、不可避的不純物を除き、Co、Cr、Cからなる。ここで、Cは、Cr源としてCr3C2を用いたときにもたらされるものであるが、本発明においては、結合相のW分布を検討するに当たって、考慮しない。
本発明の超硬合金の組成は、「Coの質量%+Crの質量%+WCの質量%+不可避的不純物の質量%=100質量%」(Cr3C2のCは不可避的不純物の一成分として扱う)としたときに、10~14質量%のCoと、Coに対する質量比で3~10%のCrを含有する。Coの含有量が、10質量%未満では靱性が劣るため、突発欠損により工具寿命が低下し、14質量%超では抗折力の低下により耐チッピング性が低下する。Coの含有量は10.5~13.5質量%がさらに好ましい。また、Coに対するCrの質量比が3%未満では粒成長抑制効果が小さく、粗大なWC粒子により耐チッピング性が低下し、10%超では抗折力の低下に結び付く粗大な炭化物相が形成されるため、耐チッピング性に劣るといった不都合が生じてしまう。Coに対するCrの質量比は4~9%がさらに好ましい。本発明の超硬合金の組成は蛍光X線法により測定することができる。
本発明の超硬合金において、上記硬質相のWC粒子と上記結合相との界面近傍における結合相では、Co、W、Crの3成分のみに注目すると、一般式:Co100-a-bWaCrb[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-a-b)、a及びbは、それぞれ85≦100-a-b≦93、6≦a≦10、及び1≦b≦5の条件を満たす数字である。]により表される金属組成を有し、上記結合相の中心では、Co、W、Crの3成分のみに注目すると、一般式:Co100-x-yWxCry[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-x-y)、x及びyは、それぞれ86≦100-x-y≦94、4≦x≦8、及び2≦y≦6の条件を満たす数字である。]により表される金属組成を有する。さらに、上記界面近傍における結合相のW含有量(a)が上記結合相の中心におけるW含有量(x)よりも高い。このことにより優れた耐チッピング性を有する。a、b、x及びyが前記組成範囲外では耐チッピング性が向上しない。上記一般式においてa、bはそれぞれ87≦100-a-b≦91、7≦a≦9、及び2≦b≦4の条件を満たし、x及びyはそれぞれ88≦100-x-y≦92、5≦x≦7、及び3≦y≦5の関係を満たすことが好ましい。また、上記界面近傍における結合相のW含有量(a)が上記結合相の中心におけるW含有量(x)よりも1原子%以上高いことがより好ましい。
なお、本発明において、結合相の中心及び界面近傍とは次のものをいう。すなわち、後述する実施例において図3をもとに詳述するように、本発明の超硬合金では必ず存在する、結合相のうち当該結合相とWC粒子との重複領域を除いた結合相(図3で示す略三角形形状のもの)であって、WC粒子との界面に内接する最大の円(内接円、半径はr)とするとき、結合相の中心とはその円の中心をいう。また、界面近傍とは当該内接円の界面との接点から15nm離れた当該内接円内の点をいう。ここで、結合相とWC粒子との重複領域とは、EDS分析によるWCの定量値がWC粒子そのものとほぼ同じ値を示す結合相内の領域をいう。
本発明の超硬合金において、結合相内のW含有量(W濃度ともいう。)の分布について、結合相の中心から上記界面近傍における結合相の位置まで(実施例の説明で詳述するように、図3中の中心位置1から結合相の外殻部における位置2、3まで)、プラスのW濃度勾配を有することにより、切削工具が長寿命化する。ここで、W濃度勾配とは、「(位置2または3におけるW含有量-位置1におけるW含有量)/(位置2または3と位置1との距離)」の算術平均により定義されるものであって、プラスのW濃度勾配の値としては、0.01~0.10(原子%/nm)が好ましく、0.02~0.10(原子%/nm)がより好ましい。前記W濃度勾配が前記数値範囲を外れると本発明の有利な効果を得ることができない。
本発明の超硬合金は、後方散乱電子回折(EBSD分析)により得られたWC粒子の円相当径の粒度分布が、累積%が91%となるWC粒径をD91、及び前記累積%が100%となるWC粒径をD100としたとき、D91からD100までの累積%の平均(算術平均値で、最大平均WC粒径ともいう。)は0.50~1.15未満μmが好ましい。この範囲とする理由は、0.5μm未満では微細なWC粒子が破壊の起点となるため超硬合金の抗折力、耐欠損性が低下し、1.15μm以上では粗大なWC粒子となるため超硬合金の耐チッピング性が低下するためである。なお、本発明の超硬合金におけるWC粒子の円相当径の分布の一例として図5(b)に示すものがあり、これは超硬合金の縦16μm×横32μmの領域(例えば、図5(a)の四角形の枠内)でEBSD分析を行ったものである。
本発明の超硬合金上に形成される切削工具の硬質皮膜として、例えば物理蒸着法又は化学蒸着法により、Ti、Al、Cr、B及びZrからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素と、C、N及びOからなる群から選ばれた少なくとも一種の元素とを必須とする単層又は多層の硬質皮膜が有用である。具体的には、例えばTiC、CrC、SiC、VC、ZrC、TiN、AlN、CrN、Si3N4、VN、ZrN、Ti(CN)、(TiSi)N、(TiB)N、TiZrN、TiAl(CN)、TiSi(CN)、TiCr(CN)、TiZr(CN)、Ti(CNO)、TiAl(CNO)、Ti(CO)、(TiCr)N、(TiAlCr)N、(AlCr)N、(AlCrSi)N、Al2O3及びTiB2等の単層又は積層の皮膜が挙げられる。硬質皮膜の膜厚は1~15μmが好ましい。
本発明の超硬合金は、原料粉末の配合工程、解砕・混合工程、造粒工程、成形工程、及び焼結・冷却工程を経て製造される。
配合に供される原料粉末は、10.0~14.0質量%のCo粉末、Coに対する質量比で3.0~10.0%のCrを含有するCr3C2粉末、残部は平均粒径(フィッシャー法:FSSS)0.8~2.0μmのWC粉末である。「Coの質量%+Crの質量%+WCの質量%+不可避的不純物の質量%=100質量%」として前記原料粉末を配合した。Co粉末の平均粒径(FSSS)は0.1~3.0μmが好ましく、Cr3C2粉末の平均粒径(FSSS)は0.1~4.0μmが好ましいが、この範囲を満足しなくてもよい。
上述の原料粉末を配合した後、解砕・混合工程を行う。解砕・混合工程は、特に制限されない。しかし、特に、原料粉末として、上記の(101)面のX線回折ピークが2つのピークを有し、かつシャープな粒度分布を持つWC粉末を用いた場合は、汎用のアトライタ又はボールミル等による生産性の高い条件で解砕・混合処理を行っても本発明の超硬合金を製造することが可能であり、実用的な製造法を得ることができる。
成形工程を経た本発明に係る成形体は、例えば、脱脂処理後、1~50Paの真空中で焼結温度1380~1420℃に0.5~5時間保持して焼結後、1300~1350℃まで1.0~3.3℃/分の冷却速度で徐冷する徐冷工程、及び前記徐冷工程後に前記徐冷工程の終了温度1300~1350℃から60℃まで80~130℃/分の冷却速度で急冷する急冷工程を経ることにより、本発明の超硬合金における結合相が上述の所定のW濃度分布を得ることができる。
また、上記徐冷工程の終了温度1300~1350℃から60℃までの急冷速度は80~130℃/分が好ましい。急冷速度が、80℃/分未満ではWC粒子が粗大化して耐チッピング性が低下し、130℃/分超では急激な温度変化に伴い、切削工具を構成したときの形状の変形が大きくなる。
本発明の超硬合金の結合相におけるWの分布が良好な耐チッピング性を与える理由は定かではないが、以下のように推定している。本発明の超硬合金は、Coを主体とする結合相とWC粒子(硬質相)との界面近傍の結合相のW含有量が、結合相の中心のW含有量より高い(プラスのW濃度勾配を有している。)。すなわち、従来の超硬合金に比べて、W含有量が高い前記界面近傍の結合相と隣接するWC粒子(前記界面近傍の結合相中のW含有量より高いW含有量を有する。)との間のW含有量の差(W濃度勾配)が小さい。このため前記界面及び前記界面近傍の強度が向上し、耐チッピング性が顕著に改善されると考えられる。また、前記界面近傍の結合相中のW含有量が高くなる理由は、焼結後1300~1350℃まで1.0~3.3℃/分の冷却速度で徐冷する徐冷工程において、前記結合相中に固溶するW、C元素が近接するWC粒子に向かって適度に拡散してW元素が前記結合相の外殻部に濃縮される結果、前記界面近傍の結合相中のW含有量が前記結合相の中心のW含有量より高いミクロ組織が形成され、その後前記徐冷工程の終了温度1300~1350℃から60℃まで80~130℃/分の冷却速度で急冷することにより前記ミクロ組織が室温まで維持されるためと考えられる。
(1) WC基超硬合金の形成
表1-1に示す焼結体組成を与えるCo粉末(平均粒径(FSSS)1.20μm)、Cr3C2粉末(平均粒径(FSSS)1.00μm)、WC粉末(平均粒径(FSSS)1.10μm)の各原料粉末、及び該各原料粉末の総量(100質量%)に対して2質量%のパラフィンワックスをアトライターに投入し、エチルアルコール(水分含有量10%未満)を助剤として、湿式混合した。湿式混合後、スプレードライヤにて造粒・乾燥を行い、得られた造粒粉末により成形体を成形した。得られた成形体を焼結炉にセットして室温から100℃/時間の加熱速度にて1400℃まで昇温し、1400℃において30分間保持して焼結した後、1.7℃/分の冷却速度にて1350℃まで徐冷し、続いて1350℃から60℃まで92℃/分の冷却速度にて急冷し、本発明の超硬合金を製作した。
図1に、上記本発明の超硬合金(焼結体)を切断し、集束イオンビーム(FIB)により加工し、鏡面研磨した試料の断面(焼結肌の表面下400μmの深さ)を電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM、ZEISS製XVision200TB)により撮影した写真を示す。図1において、白色部はWC粒子を主成分とする硬質相、灰色部はCoを主体とする結合相である。
図3において、近接する3つのWC粒子S、T、Uに囲まれた略三角形状の結合相と前記WC粒子S、T、Uとの間の3つの界面(P、Q、R)を「←」でそれぞれ示す。前記結合相と右側の界面Pとの間にのみ、略台形状の「結合相とWC粒子との重複領域」が存在した。ここで、「結合相とWC粒子との重複領域」とは、EDS分析によるWCの定量値がWC粒子そのものとほぼ同じ値を示す結合相領域をいう。一方、図3において、前記結合相と上側及び左側の界面Q、Rとの間には「結合相とWC粒子との重複領域」はない。このため、前記重複領域を除外した略三角形状の結合相の領域において、界面Q、R及び重複領域の境界面に内接する円(点線で示す。)を描いてEDS分析範囲とした。ここで、前記円の中心位置1を中心部、及び前記円の界面との接点から前記円の中心に向かって半径方向へ15nm離れた前記結合相内の外殻部における位置を外殻部における位置2、3とする。「結合相とWC粒子との重複領域」を除外した略三角形状の結合相は、本発明の超硬合金では必ず存在するため、この略三角形状の結合相をもとにWの濃度分布濃度勾配を測定する。測定は、FE-TEM(JEM-2010F)に搭載のエネルギー分散型X線分光器(EDS、NORAN社製UTW型Si(Li)半導体検出器、ビーム径:約1 nm)を用いて、前記結合相の中心部として中心位置1、外殻部として界面Q近傍(前記円の界面との接点から15nm)における結合相の位置2、及び界面R近傍における結合相の位置3において、金属元素(Co、W、Cr)について各位置ごとに3回ずつEDS分析を行い、得られた測定値を算術平均し、分析値とした。測定結果を表1-3に示す。また、後述するように、結合相と隣接するWC粒内におけるWの含有量を測定すべく、当該WC粒子中に位置6、7を、それぞれ、前記内接円と前記界面との接点において、該内接円の半径の延長方向へ界面から57nm離れた位置とする。なお、本来は、外殻部の測定位置は2または3の何れか一方であればよいが、本発明では濃度分布がプラスになっていることを確認的に示すために、外殻部の測定位置は2点で測定している。
図1で示された断面を有する、本発明の超硬合金のの鏡面研磨した断面(図5(a)の四角枠内の縦16μm×横32μmの領域)において、電子プローブマイクロ分析装置EPMA(日本電子株式会社製JXA-8500F)に搭載された後方散乱電子回折検出器(株式会社TSLソリューションズ製、OIM:EBSD法)により、WC粒子の粒度分布を測定し、前記粒度分布における累積%が91%となるWC粒径(D91)、及び前記累積%が100%となるWC粒径(D100)、及びD91からD100までの累積%の算術平均(最大平均WC粒径)を求めた。測定結果を表1-3、図5(b)に示す。
上記WC粉末の(101)面のX線回折ピークを測定するため、X線回折装置(PANalytical社製のEMPYREAN)を使用し、以下の条件でCuKα1線(波長λ:0.15405 nm)を上記WC粉末に照射した。得られたX線回折パターンから、2θが47.7~48.9°の範囲を抜粋したものを図5中の実線で示す。
管電圧:45 kV
管電流:40 mA
入射角:ω:3°
2θ:30~60°
上記超硬合金を図6に示すミーリング用インサート(三菱日立ツール株式会社社製:APMT120508R-RS)30に対応する素材形状に加工後、その上に物理蒸着法により、総膜厚1.5μmのTiAlWN皮膜とAlCrN皮膜との積層皮膜を被覆したミーリング用インサート30を形成した。
実施例2~4及び比較例1、2は、表1-1で示される各原料粉末を用いた。実施例2及び3では、それぞれ表1-2に示すように、徐冷終了温度を1320℃(実施例2)及び1300℃(実施例3)とした以外は実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作した。実施例4では、図4中破線で示す(101)面の1つのX線回折ピークを有するWC粉末(平均粒径(FSSS)1.10μm)を使用した以外、実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作した。比較例1では徐冷終了温度を1370℃とし、及び比較例2では徐冷終了温度を1280℃とした以外、それぞれ実施例1と同様にした。
注:(1) (101)面のX線回折ピークが2つのピークからなるWC粉末を使用。
(2) (101)面のX線回折ピークが1つのピークからなるWC粉末を使用。
(3) フィッシャー法により測定。
(4) 不可避的不純物も含んでいる。
上記実施例1~4及び比較例1~2、それぞれのミーリング用インサート30を合計4個ずつ、図7に示す刃先交換式回転工具(三菱日立ツール株式会社製:AMEB1250RS-32-4NT)70の工具本体71の先端部72側に止めねじ73で装着し、以下のミーリング条件で被削材を切削加工して工具寿命を評価した。切削加工の進行に伴う前記刃先交換式回転工具70の逃げ面摩耗幅を、倍率100倍の光学顕微鏡で観察することにより測定した。工具寿命は、前記逃げ面の最大摩耗幅が0.300 mmを超えたときの総切削時間(分)とした。結果を表1-5に示す。
加工方法:肩削り加工
被削材組成:Ti-6Al-4V
使用インサート:APMT120508R-RS(ミーリング用)
切削速度:40 m/分
回転数:255 rpm
一刃当たりの送り:0.13 mm/刃
送り速度:33 mm/分
軸方向の切り込み量:10 mm
径方向の切り込み量:37 mm
切削方法:湿式切削
同図と表1-6によれば、位置6及び7において、比較例1と実施例1のW濃度は実質的に同じとみることができるにもかかわらず、位置4と2及び位置5と3のそれぞれのW濃度の差をもとめてみると、実施例1は比較例1に対して、いずれの位置においてもW濃度差も小さくなっていることがわかる。すなわち、W含有量の差(W濃度勾配)が小さいため、界面及び前記界面近傍の強度が向上し、耐チッピング性が顕著に改善される、という上記推定は、この表1-6のWの濃度分布によって裏付けられているといえ、この推定は一応妥当なものであろう。
実施例5及び6では、それぞれ、表2-2の焼結体組成になるように各原料粉末を混合し、表2-1に示すように、焼結温度1400℃から徐冷終了温度1350℃までの徐冷速度を3.3℃/分(実施例5)及び1.0℃/分(実施例6)とした以外は実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作した。比較例3では徐冷工程の冷却速度を4.4℃/分とした以外、使用したWC粉末の性状及び原料粉末の配合組成を含めて実施例1と同様にした。また、前述と同様の切削加工条件による工具寿命を求めた。
実施例7及び8では、それぞれ、表3-2の焼結体組成になるように原料粉末を混合し、表3-1に示すように、徐冷終了温度1350℃から60℃までの急冷速度を129℃/分(実施例7)及び83℃/分(実施例8)とした以外は、使用したWC粉末の性状及び原料粉末の配合組成を含めて実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作し、前述と同様の切削加工条件による工具寿命を求めた。
実施例9及び10では、それぞれ、表4-2の焼結体組成になるように原料粉末を混合し、表4-1に示すように、焼結温度を1380℃(実施例9)及び1420℃(実施例10)とした以外は、使用したWC粉末の性状及び原料粉末の配合組成を含めて実施例1と同様にして本発明の超硬合金及び切削工具(ミーリング用インサート)を製作し、前述と同様の切削加工条件による工具寿命を求めた。
2、3:WC粒子(硬質相)と結合相との界面近傍における結合相部(結合相の外殻部)内の位置
4、5:WC粒子(硬質相)と結合相との界面近傍におけるWC粒子(硬質相)内の位置
6、7:WC粒子(硬質相)内部の位置
30:ミーリング用インサート
70:刃先交換式回転工具
71:工具本体
72:先端部
73:止めねじ
P,Q,R:WC粒子(硬質相)と結合相との界面
S,T,U:WC粒子(硬質相)
Claims (5)
- WC粒子と不可避不純物からなる硬質相が、10.0~14.0質量%のCoと、該Coに対する質量比で3.0~10.0%のCrおよびCを含有する不可避的不純物からなる結合相により結合されてなる超硬合金であって、
後方散乱電子回折により得られた前記WC粒子の粒度分布における累積%が91%となるWC粒径D 91 から前記累積%が100%となるWC粒径D 100 までの累積値の平均が0.50~1.15未満μmであり、
前記WC粒子と前記結合相との界面近傍における結合相では、Co、W、Crに着目したとき、一般式:Co100-a-bWaCrb[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-a-b)、a及びbは、それぞれ85≦100-a-b≦93、6≦a≦10、及び1≦b≦5の条件を満たす数字である。]により表される金属組成を有し、
前記結合相の中心では、Co、W、Crに着目したとき、一般式:Co100-x-yWxCry[ただし、Co、W及びCrの含有量(原子%)を表す(100-x-y)、x及びyは、それぞれ86≦100-x-y≦94、4≦x≦8、及び2≦y≦6の条件を満たす数字である。]により表される金属組成を有し、
前記界面近傍における結合相のW含有量(a)が前記結合相の中心のW含有量(x)よりも高いことを特徴とする超硬合金。 - 請求項1に記載の超硬合金において、前記界面近傍における結合相のW含有量(a)が前記結合相の中心のW含有量(x)よりも1原子%以上高いことを特徴とする超硬合金。
- 請求項1または2に記載の超硬合金に硬質皮膜を被覆したことを特徴とする切削工具。
- 10.0~14.0質量%のCo粉末と、Coに対する質量比で3.0~10.0%のCrを含有するCr3C2粉末と、フィッシャー法による平均粒径が0.8~2.0μmのWC粉末とを含む粉末を準備する工程と、
前記各粉末をCoの質量%+Crの質量%+WCの質量%+不可避的不純物の質量%=100質量%として混合する混合工程と、
得られた混合粉末を造粒する造粒工程と、
得られた造粒粉末を成形する成形工程と、
得られた成形体を焼成する焼成工程とを有する超硬合金の製造方法において、
前記焼成工程において前記成形体を1380~1420℃で焼結後、1300~1350℃まで1.0~3.3℃/分の冷却速度で徐冷する徐冷工程、及び前記徐冷工程後に前記徐冷工程の終了温度1300~1350℃から60℃まで80~130℃/分の冷却速度で急冷する急冷工程を有することにより、当該超硬合金におけるWC粒子と前記Coを主体とする結合相との界面近傍における結合相のW含有量を、前記結合相の中心のW含有量よりも、高くしたことを特徴とする超硬合金の製造方法。 - 請求項4に記載の超硬合金の製造方法において、前記WC粉末の(101)面のX線回折ピークが2つのピークを有することを特徴とする超硬合金の製造方法。
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