JP2008155335A - 切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】
超硬合金の表面における組織状態を最適化し、優れた耐溶着性及び耐欠損性を有する超硬合金および切削工具を提供する。
【解決手段】
WC粒子と、Coおよび/またはNiの結合相とを含んでなる超硬合金を基体とし、該基体の上面にすくい面が、側面に逃げ面が、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜部に切れ刃が形成された切削工具であって、該超硬合金の表面における前記結合相成分が凝集した結合相凝集部が占める面積割合より、前記切れ刃において前記結合相凝集部が占める面積割合を小さくする。
【選択図】 図2(a)

Description

本発明は摺動部材、耐摩耗性部材等に使用される超硬合金を用いてなる切削工具に関する。
金属の切削加工用工具や摺動部材、耐摩耗部材等に広く用いられている超硬合金は、WC(炭化タングステン)粒子を、Co(コバルト)の結合金属で結合させたWC−Co合金、もしくはWC−Co合金に周期律表第4、5、6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のいわゆるβ相と呼ばれる硬質相を分散せしめた系がよく知られている。これらの超硬合金は、特に、炭素鋼や合金鋼、ステンレス鋼等の一般鋼を切削加工するための切削工具用材料として利用されている。
従来より、超硬合金表面から内部に向かって所定の深さ領域に結合相成分であるCoの含有量が高い結合相富化層を超硬合金表面の全体に形成することにより、基体表面に硬質被覆層を形成した場合に超硬合金の耐欠損性が向上することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献2では、超硬合金にZrおよびHfの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物より選ばれた一種以上を添加することにより、切れ刃稜線部表面の結合相富化層を切れ刃以外の表面よりも厚く形成することで、加工除去されることなく切れ刃稜線部表面に結合相富化層を残して、耐欠損性を向上させることが記載されている。
特開平2−221373号公報 特開平6−73560号公報
しかしながら、特許文献1の超硬合金では、耐欠損性が向上するものの、硬度が低下して表面における塑性変形が大きく、切削抵抗が増大して切刃の温度が上昇してしまい、次第に切刃部分全体に渡って存在する結合相富化層が被削材と反応してしまうという問題があった。
その結果、切刃部に被削材が溶着し、溶着した被削材が引き金となってチッピングや突発欠損が発生しやすく、合金表面における更なる耐溶着性の向上が求められていた。
同様に、特許文献2においても、刃先に結合相富化層があるために、耐欠損性は向上するが、刃先が軟化し、塑性変形しやすい。また、刃先に被削材が溶着しやすく、該被削材の溶着により耐摩耗性が低下してしまう。
本発明は、上記課題を解決するためのもので、切削工具の基体をなす超硬合金の表面における耐塑性変形性および耐溶着性を向上させることを目的とする。
本発明者は、上記課題について検討した結果、超硬合金の基体の表面における結合相成分の染み出しの状態、すなわち、超硬合金の基体の表面における結合相成分が凝集した結合相凝集部の存在する状態を最適化することによって、塑性変形が抑制され、かつ耐溶着性が向上することを知見した。
すなわち、本発明の切削工具は、超硬合金を基体とする切削工具において、超硬合金の表面における結合相凝集部の面積割合より、切れ刃において結合相凝集部が占める面積割合が小さいことを特徴とするものである。
このような構成とすることによって、すなわち、超硬合金の放熱性を確保しつつ、切れ刃においては耐塑性変形性が向上した表面状態とすることで、刃先の熱を工具全体に伝達し、刃先に熱がこもることなく放熱できるため、刃先が高温になることによる被削材の溶着に起因する異常摩耗や刃先の塑性変形を防止できることから、切削工具の耐摩耗性と耐欠損性が向上する。
また、前記結合相凝集部は点在していることが、硬度が低い部分を一点に集中させず、耐摩耗性の低下を防ぐと共に、切削によって発生する熱を十分に放出させることができる点で望ましい。
さらに、前記超硬合金の表面における前記結合相凝集部が占める面積割合が10〜75面積%であるとともに、前記切れ刃において前記結合相凝集部が占める面積割合が10面積%未満であることが、切れ刃における塑性変形を確実に抑制することができるとともに、切れ刃近傍の伝熱経路が確保できるため、切れ刃の熱を工具表面全体に効率よく放熱できる点で望ましい。
また、前記すくい面の切れ刃近傍領域において前記結合相凝集部が占める面積割合が10〜65面積%であることが、切れ刃近傍の伝熱経路が確保できるため、切れ刃の熱を工具表面全体に効率よく放熱できる点で望ましい。
さらに、前記結合相凝集部は、前記切れ刃に存在しないことが、工具摩耗を安定的に進行させるとともに、硬度低下によって生じる刃先の塑性変形および摩耗の進行を抑制することができる点で望ましい。
また、前記切れ刃の断面形状がR形状を有してなるとともに、前記R形状の切れ刃におけるすくい面側幅および逃げ面側幅をそれぞれa、bとしたとき、aおよびbが0.01〜0.04mmであることが、切削抵抗を小さくでき、切削で発生する熱を抑え、切削熱による硬度低下や溶着に起因する異常摩耗を防止できる点で望ましい。
さらに、上記前記aおよびbは、a/bが0.9〜1.1の範囲にあることが、刃先にかかる応力がホーニング全体に均一にかかるようになり、切刃の欠損やチッピングを防ぐことができる点で望ましい。
また、前記基体の表面に被覆層を形成することが、工具の耐摩耗性を向上できる点で望ましい。
さらに、前記被覆層の総厚みが、0.5〜5μmであることが、工具の耐欠損性を損なうことなく、耐摩耗性を向上できる点で望ましい。
上記、本発明の切削工具はステンレス切削用として用いられることが耐溶着性についてより高い効果を発揮するため望ましい。
上記本発明の切削工具によれば、前記結合相成分が凝集した結合相凝集部が、前記切れ刃よりも前記すくい面の切れ刃近傍領域において、多く存在していることで、刃先の熱を工具全体に伝達し、刃先に熱がこもることなく放熱できるため、刃先が高温になることによる被削材の溶着に起因する異常摩耗や刃先の塑性変形を防止できることから、切削工具の耐摩耗性と耐欠損性が向上する。
本発明の切削工具について、図面に基づいて説明する。図1は本発明の切削工具の一例についての切れ刃を含む概略断面図である。また、図2(a)は本発明の切削工具1の基体2である超硬合金のすくい面3における走査型電子顕微鏡写真(200倍)であり、図2(b)は、切削工具1の切れ刃5の表面における走査型電子顕微鏡写真(200倍)である。
図1によれば、本発明の切削工具1は、超硬合金6からなる基体2の上面にすくい面3が、側面に逃げ面4が、すくい面3と逃げ面4との交差稜部に切れ刃5が形成されてなり、該切れ刃5を被切削物(不図示)に当てて切削加工するものである。
本発明によれば、切削工具1の基体2である超硬合金6は、WC粒子からなる硬質相7とCoおよび/またはNiの結合相8とを含んでなる。なお、超硬合金6には、所望により、周期率表第4、5および6族元素の炭化物、窒化物および炭窒化物を含有した、WC粒子以外からなる硬質相(β相)を形成しても良い。また、結合相8中にはCoおよび/またはNi以外に上記周期率表第4、5および6族元素が固溶されていてもよく、さらに炭素、窒素および酸素等の不可避不純物が含有されていても良い。
また、硬質相をなすWC粒子2の平均粒径は1μm以下であることが望ましい。これにより、超硬合金1の強度および耐摩耗性を高めることができる。なお、後述する超硬合金6表面の構成とすることで、従来、それぞれのWC粒子同士を結合する結合相8の厚みが薄くなり熱伝導が悪くなる傾向にあった、WC粒子の平均粒径が1μm以下のいわゆる微粒超硬合金においても、高い放熱性を有することができる。
ここで、本発明によれば、図2(a)および(b)に示すように、切削工具1の基体である超硬合金6の表面が、該超硬合金6の表面における結合相8成分が凝集した結合相凝集部9が占める面積割合より、切れ刃5において結合相凝集部9が占める面積割合が小さい表面構成とすることによって、切削工具1全体の放熱性を確保しつつ、かつ、切れ刃5においては、より高硬度として耐塑性変形性を向上させることができる。その結果、刃先が高温となることによって生じる被削材の溶着を抑制し、該溶着に起因する異常摩耗を抑制することができます。そのため、安定した摩耗を実現できるため、長寿命な切削工具となる。
ここでいう結合相凝集部とは、超硬合金6内部にある結合相8を構成する成分が焼成時に表面へと移動してなる結合相成分量が超硬合金6の平均結合相成分量よりも多い(平均結合相成分量の1.3倍以上)部分のことである。
超硬合金6の表面における結合相凝集部9が占める面積割合を算出する方法は、超硬合金6の任意の表面を顕微鏡観察して、個々の結合相凝集部9をそれぞれ特定し、ルーゼックス法などを用いて個々の結合相凝集部9の面積を算出する。そして、観察視野領域全体に対する結合相凝集部9の総面積の割合を算出する。このとき、顕微鏡観察は金属顕微鏡、デジタル顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡のいずれかを用いることができ、結合相凝集部9の大きさによって適当なものを選択することができる。
具体的には、超硬合金6の表面に存在する結合相凝集部9のうち、少なくとも任意の10箇所(少なくとも、すくい面3および逃げ面4および切れ刃5の任意の3箇所については必ず選択することで、超硬合金6の表面における結合相凝集部9の面積割合として見積もることとする。)について上記測定方法を用いて測定し、それらの平均面積割合を算出することで得られる。
なお、切れ刃5における結合相凝集部9の占める面積割合を算出する方法も、切れ刃5の任意の10箇所について、上記測定方法と同様とすることができる。なお、切れ刃5が断面形状がR形状をなすようホーニング処理されてなる場合は、切れ刃5の断面形状において、切れ刃5のR形状を略円弧とみなして得られる該円弧の中心角の二等分線方向から観察して得られる視野領域において、上記測定方法で測定することで、切れ刃5における結合相凝集部9の面積割合を算出することができる。
ここで、本発明によれば、さらに、結合相凝集部4は点在することが望ましい。なお、本発明において、結合相凝集部4が点在するという状態は、結合相成分が表面全体にわたって、すなわち、結合相成分が全面に存在する状態ではなく、結合相凝集部9と、結合相凝集部9以外の硬質相7と結合相8との超硬合金部分(以下、通常表面部と称す。)が目視または顕微鏡観察によって混在していることが確認できる状態のことを示す。さらに、結合相凝集部9の放熱性を高めるためには、図2(a)に示すように、通常表面部11(白色)をマトリックスとして、結合相凝集部9が表面視で独立して分散するよう、点在した島状組織であることが望ましい。
またさらに、本発明によれば、図1に図示するように、切れ刃5の断面形状がR形状を有してなり、図2に示すように、超硬合金1の表面全体において、結合相8成分が凝集した結合相凝集部9を点在せしめ、かつ超硬合金6の表面における結合相凝集部が占める面積割合を、10〜75面積%とし、切れ刃表面における結合相凝集部の占める面積比率を10面積%未満の比較的少ない割合とすることによって、切削工具表面全体においては結合相凝集部9による超硬合金6表面の放熱性の向上による耐摩耗性の向上、および結合相凝集部9以外の面による耐塑性変形性の低下を抑えることができ、工具切れ刃においては結合相凝集部9が10面積%未満とすることで耐塑性変形性の低下を抑え、安定した摩耗を実現できるため、長寿命な切削工具1となる。
なお、ここでいう切れ刃5とは、図1に示すように切れ刃5の断面形状がR形状を有してなる場合、断面形状において、切れ刃5のR面とすくい面3との境界部分から切れ刃5のR面と逃げ面3との境界部分までの範囲のことをいう。
つまり、切削工具表面全体において、結合相凝集部9が存在せず、均一な組織からなる場合には、超硬合金6表面における放熱性が低く、切れ刃5の表面に局所的に発生した切削熱が切削工具表面全体に放熱されず切れ刃5が高温になってしまう。その結果、高温になった切れ刃5の組織が劣化したり、切れ刃5に被削材の溶着が生じてしまう。しかも、十分な靭性が得られず、突発欠損やチッピングが発生する。逆に、超硬合金1の表面に結合相富化層が形成される場合、すなわち、超硬合金1の表面全体に渡って結合相富化層が被覆され、超硬合金6の表面全体における結合相8の含有量が多い場合は、超硬合金1の表面における塑性変形が大きくなってしまい、膜剥離や異常摩耗、刃先の欠損などが発生しやすくなる。
したがって、本発明の切削工具は、結合相凝集部9の面積割合が超硬合金6表面の10面積%より多く存在することで、放熱性を確保して耐溶着性を向上させ、溶着に起因して生じるチッピングや欠損の発生を抑制することができる。また、結合相凝集部9の面積割合が超硬合金1表面の70面積%以下とすることで、金属の占める割合が多くなり、超硬合金1の表面における硬度が下がり耐塑性変形性が劣化することを抑制することができる。
さらに、本発明の切削工具は、上記のように工具表面全体における結合相凝集部の割合を最適化するとともに、切れ刃においては、結合相凝集部の面積割合を10面積%未満とすることで、切れ刃において結合相凝集部が塑性変形し、異常摩耗が進行することを抑制することができる。その結果、チッピングなどを抑制することができるため、長寿命な工具とすることができる。
また、すくい面の切れ刃近傍領域において結合相凝集部9が占める面積割合が10〜65面積%であることが、切れ刃近傍の伝熱経路が確保できるため、切れ刃の熱を工具表面全体に効率よく放熱できる点で望ましい。すなわち、すくい面3の中でも、切削時に被削材との摩擦によって非常に高温となるため、切削工具1の放熱性に大きな影響を及ぼすすくい面の切れ刃近傍領域において、結合相凝集部9が占める面積割合を10〜65面積%と多くすることで、切れ刃5で発生した熱を切れ刃近傍領域からすくい面3へと効率よく伝達することができる。なお、ここでいう「すくい面の切れ刃近傍領域」とは、切れ刃5に隣接するすくい面領域のことであり、切削工具のサイズに応じて異なるが、本実施形態においては、切れ刃5とすくい面3との境界部分よりすくい面側に0.2mm幅の範囲Aの領域のことである。
さらに、ここで工具表面全体における結合相凝集部の割合が上記数値範囲として、放熱性を確保した状態においては、特に、結合相凝集部9は、切れ刃5に存在しないことが、より一層、切れ刃の硬度を高めて刃先の塑性変形を抑制することができるため、安定した工具摩耗とすることができるため望ましい。なお、ここでいう「切れ刃5に結合相凝集部9が存在しない」ものとしては、切れ刃における結合相凝集部9が1面積%以下の誤差を有したものも含む。
また、切れ刃が断面形状がR形状を有してなるとともに、R形状の切れ刃におけるすくい面側幅および逃げ面側幅をそれぞれa、bとしたとき、aおよびbが0.01〜0.04mmであることが、十分な刃先の強度を保つと共に切削抵抗を小さくでき、切削で発生する熱を抑え、切削熱による硬度低下や溶着に起因する異常摩耗を防止できる点で望ましい。
なお、ここでいうR形状の切れ刃5におけるすくい面側幅aおよび逃げ面側幅bとは、それぞれ、図1に示すように、すくい面3の仮想延長線と逃げ面4の仮想延長線との交点からすくい面3と切れ刃5との境界部分までの寸法および前記交点から逃げ面4と切れ刃5との境界部分までの寸法のことである。
さらに、上記前記aおよびbは、a/bが0.9〜1.1の範囲にあること、つまり、切れ刃5のR形状を真円に近い円弧状とすることにより、切削時にかかる応力を、切れ刃5のR形状全体に均一とすることができ、切れ刃のチッピングや欠損を防ぐことができる点で望ましい。
また、基体2の表面に被覆層10を形成することが、工具の耐摩耗性を向上できる点で望ましい。
またさらに、前記被覆層10の総厚みが、0.5〜5μmであることが、工具の耐欠損性を損なうことなく、耐摩耗性を向上できる点で望ましい。
超硬合金6を切削工具1と用いる際には、切削加工の際に、切削工具に溶着しやすいステンレスの切削に用いる場合に優れた工具寿命を発揮出来る。
なお、結合相凝集部9において、金属元素の総量に対して、CoおよびNiの総含有量が15〜70質量%であることが、超硬合金1の表面における靭性を高めかつ塑性変形性を向上できる点で望ましい。CoおよびNiの総含有量の望ましい範囲は20〜60質量%である。
また、結合相凝集部9の平均直径が10〜300μmであることが、熱伝導性がよくて放熱性に寄与する経路を確実に確保して、放熱性を高め、かつ、耐摩耗性の低下を低減させることができる点で望ましい。さらに、結合相凝集部9の平均粒径の望ましい範囲は、50〜250μmである。
ここで、結合相凝集部9の平均直径を算出する方法は、超硬合金6の表面を顕微鏡観察して個々の結合相凝集部9をそれぞれ特定し、ルーゼックス法などを用いて個々の結合相凝集部9の面積およびそれらの平均面積を算出する。そして、この平均面積を円に換算したときの円の直径を指す。また、顕微鏡観察は金属顕微鏡、デジタル顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡のいずれかを用いることができ、結合相凝集部9の大きさによって適当なものを選択することができる。
具体的には、超硬合金6の表面に存在する結合相凝集部9のうち、少なくとも任意の10個について上記測定方法を用いて測定し、平均面積を算出することができる。
さらに、超硬合金1の表面から5μmまでの深さ領域に結合相凝集部9が存在することが、超硬合金6の表面で発生した熱を確実に放熱できるとともに、超硬合金1表面における被加工物での耐塑性変形性を高めることができる点で望ましい。
一方、超硬合金6の内部における結合相8の含有量は6〜15質量%であることが、超硬合金1の焼結不良の発生を防止させることができるとともに、超硬合金1の耐摩耗性の確保および塑性変形を抑えることができるため望ましい。
ここで、超硬合金6の表面における結合相8の成分量を測定する際には、X線マイクロアナライザー(Electron Probe Micro-Analysis:EPMA)、オージェ電子分光分析(Auger Electron Spectroscopy:AES)等の表面分析法にて測定することができる。
また、本発明における超硬合金6の内部とは、超硬合金6の表面から300μm以上の深さ領域を指す。
また、超硬合金1中にクロム(Cr)及び/またはバナジウム(V)を含有することが、WC粒子が焼結中に粒成長することを抑制し、硬度の低下を抑え、耐摩耗性の低下を防ぐことができるため望ましい。特に、CrおよびVの望ましい範囲はそれぞれ0.01〜3質量%であり、CrおよびVの合計含有量が0.1〜6質量%である。また、上記Crは、超硬合金6の焼結性を高めることができるとともに結合相8の腐食を抑えて耐チッピング性を高める効果もある。
(製造方法)
上述した超硬合金6を製造するには、まず、例えば平均粒径1.0μm以下のタングステンカーバイド(WC)粉末を79〜95質量%、平均粒径0.3〜1.0μmの炭化バナジウム(VC)粉末を0〜3質量%、平均粒径0.3〜2.0μmの炭化クロム(Cr3C2)粉末を0〜3質量%、平均粒径0.2〜0.6μmの金属コバルト(Co)を5〜15質量%、平均粒径0.1〜0.5μmの炭化チタン(TiC)を0〜10質量%、平均粒径0.2〜0.6μmの炭化タンタル(TaC)を0〜10質量%、さらには所望により、金属タングステン(W)粉末、あるいはカーボンブラック(C)を混合する。なお、上述した炭化クロムなど添加物は所望により除いてもよい。
次に、上記混合に際して、メタノール等の有機溶媒をスラリーの固形分比率が60〜80質量%となるように添加するとともに、適切な分散剤を添加し、ボールミルや振動ミル等の粉砕装置で10〜20時間の粉砕時間で粉砕することにより、混合粉末の均一化を図った後、混合粉末にパラフィン等の有機バインダーを添加して成形用の混合粉末を得る。
そして、本発明によれば、上記混合粉末を用いて、プレス成形、鋳込成形、押出成形、冷間静水圧プレス成形等の公知の成形方法によって所定形状に成形した後、0.01〜0.6MPaのアルゴンガス中、昇温速度が10〜15℃/分にて、1350〜1450℃、望ましくは、1390〜1410℃で、0.2〜2時間焼成した後、55〜65℃/分の速度で800℃以下の温度まで冷却することにより本発明の超硬合金6を作製することができる。
ここで、上記焼成条件のうち、昇温速度は量産をおこなうための最適な範囲であり、この範囲を外れると焼成炉内の温度差が著しく、結合相凝集部が安定して作製できない。焼成温度が1350℃より低いと合金を緻密化させることができず硬度低下を招き、逆に焼成温度が1450℃を超えると、WC粒子が粒成長して硬度、強度ともに低下する。また、この焼成温度が上記範囲から外れる場合、または焼成時のガス雰囲気が0.01MPaよりも低いか、または0.6MPaを超える場合には、いずれも結合相凝集部が生成されず、超硬合金表面における放熱性が低下してしまう。また、焼成時の雰囲気をN2ガス雰囲気にすると、結合相凝集部が生成しない。さらに、冷却速度が55℃/分より遅いと結合相凝集部が生成せず、冷却速度が65℃/分より速いと結合相凝集部の面積割合が大きくなりすぎる。
その後、ブレーカー形状や厚み寸法を研削加工により加工する。さらに刃先R部をブラシまたはブラスト加工により加工するが、刃先R部から0.05mm以上0.5mm未満の部分の結合相凝集部を除去しないように加工方法を工夫する必要がある。一例としては、刃先R部のみが露出するような治具を作成し、露出部のみをブラシまたはブラスト等により加工する方法がある。または、ブラシ加工にて、ブラシが刃先R加工部に所定量切り込むように、NC制御する方法がある。ブラシ加工の際は研削傷が残らないよう荒加工と仕上げ加工でブラシを変えるほうが望ましい。具体的には荒加工として♯200〜600のダイヤモンド砥粒を含有したブラシを使用し、仕上げ加工として、♯800〜♯1500のSiC砥粒を含有したブラシを使用する。
その後、表面に硬質被覆層を物理蒸着法や化学蒸着法といった一般的な成膜方法にて成膜して、表面被覆切削工具を作製した。
平均粒径が0.6μmの炭化タングステン粉末、平均粒径が0.4μmのコバルト粉末、平均粒径が1μmの炭化クロム粉末、平均粒径が0.5μmの炭化バナジウム粉末、平均粒径が0.5μmの炭化タンタル粉末、平均粒径が0.4μmの炭化チタン粉末を表1の配合比で混合し、バインダーとしてパラフィンを加えてメタノールを溶媒として作製したスラリーをボールミルにて粉砕し、スプレードライヤーにて造粒し、混合粉末を作製した。
作製した混合粉末をプレス成形にてCNMG120408の形状に成形し、表1の条件にて焼成を行って焼結体を作製した。
次に、作製した焼結体の刃先を表1の条件にて刃先処理を行った。
得られた超硬合金の切れ刃のR形状との境界部分からすくい面内部に向かって0.2mmまでの範囲について、走査型電子顕微鏡により図2に示すような200倍の2次電子像を観察し、6mm×5mmの任意領域について、結合相凝集部の面積を測定し、存在比率(結合相凝集部を測定した視野領域における結合相凝集部の面積割合)を算出した。同様の方法で、すくい面切れ刃近傍領域の任意の10箇所について面積割合を算出し、その平均値を求め、該値を、範囲Aの凝集部存在割合として、表2に示す。
また、切れ刃5における結合相凝集部9の面積割合ついても、前述した切れ刃領域の任意の10箇所において、上記と同様の測定方法で面積割合を算出し、それらの平均値を、切刃部の凝集部存在割合として、表2に示す。
さらに、超硬合金の表面における結合相凝集部が占める面積割合についても、前述したように、少なくともすくい面3の任意1箇所および逃げ面4の任意1箇所および切れ刃5の任意1箇所を含む任意10箇所において、上記同様の測定方法で面積割合を算出し、それらの平均値を、全表面の凝集部存在割合として、表2に示す。
その後、作製された焼結体を表1の条件で刃先処理を行い、試料No.1〜15の切削硬工具を作製した。さらに、試料No.5以外の切削工具については、表1に記載の硬質被覆層をアークイオンプレーティングにて成膜して表面被覆切削工具とした。
上記のようにして作製した切削工具を下記の条件にて切削試験を行った。結果は表2に示した。
Figure 2008155335
<条件>
耐摩耗性試験
切削方法:連続切削
被削材 :SUS304丸棒
切削速度:130m/min
送り :0.2mm/rev
切込み :1.5mm
切削状態:湿式
以上の条件にて切削を行い、切削時間 20分後の逃げ面摩耗量を測定した。
耐欠損性試験
切削方法:断続切削
被削材 :SUS304溝付き丸棒 (外周部に5mm幅の溝が4本入っている丸棒)
切削速度:100m/min
送り :0.25mm/rev
切込み :1mm
切削状態:湿式
以上の条件にて切削を行い、刃先が欠損するまでに刃先に加わった衝撃回数を測定した。
Figure 2008155335
表1、2の結果より、試料No.13では、超硬合金表面における結合相凝集部が存在していないため、切削温度が高温になり、被削材が切刃に溶着して、耐欠損性評価試験における加工時間が短く、かつ耐摩耗性評価試験における摩耗幅が大きいものであった。
また、工具表面において、切れ刃における結合相凝集部が占める割合が、すくい面中央付近における結合相凝集部が占める割合よりも大きい試料No.14および15では、切れ刃に塑性変形が発生し、膜剥離やチッピングが発生して耐摩耗性、耐欠損性が低下し、早期に工具寿命に達してしまった。
これに対して、本発明に従い、原料混合粉末の混合、粉砕条件、焼成条件を所定の範囲に制御し、適切な刃先加工を行い、結合相凝集部における島状部分の面積割合を切刃部、範囲A、全表面にわたり所定の範囲に調整した試料No.1〜12では、放熱性が良くなるので切刃が高温になりにくく、耐溶着性に優れるものであった。また、これらは切削試験にて摩耗幅0.20mm以下、欠損までの衝撃回数が2000回以上の優れた耐摩耗性、耐欠損性を示すものであった。
切削工具の一例についての切れ刃を含む概略断面図である。 超硬合金の表面のうちすくい面3における走査型電子顕微鏡写真(200倍)である。 超硬合金の表面のうち切れ刃5における走査型電子顕微鏡写真(200倍)である。
符号の説明
1:切削工具
2:基体
3:すくい面
A:すくい面の切れ刃近傍領域
4:逃げ面
5:切れ刃
6:超硬合金
7:WC粒子からなる硬質相
8:Coおよび/またはNiを含む結合相
9:結合相凝集部
10:硬質被覆層
11:結合相凝集部以外のWC粒子と結合相との超硬合金部分(通常表面部)

Claims (10)

  1. WC粒子と、Coおよび/またはNiの結合相とを含んでなる超硬合金を基体とし、該基体の上面にすくい面が、側面に逃げ面が、前記すくい面と前記逃げ面との交差稜部に切れ刃が形成された切削工具であって、該超硬合金の表面における前記結合相成分が凝集した結合相凝集部が占める面積割合より、前記切れ刃において前記結合相凝集部が占める面積割合が小さいことを特徴とする切削工具。
  2. 前記結合相凝集部は、点在していることを特徴とする請求項1記載の切削工具。
  3. 前記超硬合金の表面における前記結合相凝集部が占める面積割合が10〜75面積%であるとともに、前記切れ刃において前記結合相凝集部が占める面積割合は、10面積%未満であることを特徴とする請求項1または2記載の切削工具。
  4. 前記すくい面の切れ刃近傍領域において前記結合相凝集部が占める面積割合が10〜65面積%であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載の切削工具。
  5. 前記結合相凝集部は、前記切れ刃に存在しないことを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の切削工具。
  6. 前記切れ刃の断面形状がR形状を有してなるとともに、前記R形状の切れ刃におけるすくい面側幅および逃げ面側幅をそれぞれa、bとしたとき、aおよびbが0.01〜0.04mmであることを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の切削工具。
  7. 前記aおよびbは、a/bが0.9〜1.1の範囲にあることを特徴とする請求項6記載の切削工具。
  8. 前記基体の表面に被覆層を形成してなることを特徴とする請求項1乃至7いずれか記載の切削工具。
  9. 前記被覆層の総厚みが、0.5〜5μmであることを特徴とする請求項8記載の切削工具。
  10. ステンレス切削用に用いられることを特徴とする請求項1乃至9いずれか記載の切削工具。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2018181036A1 (ja) * 2017-03-29 2018-10-04 京セラ株式会社 切削インサート及びこれを備えた切削工具
AT16111U1 (de) * 2017-11-15 2019-01-15 Ceratizit Luxembourg S A R L Schneidwerkzeug

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