JP6695566B2 - 非金属系材料を加工するための工具に用いる超硬合金 - Google Patents

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本発明は、非金属材料を加工するための工具に用いる超硬合金、特に、高硬度木材の切削用工具として用いた場合においても好適である、高硬度、高靱性であって、耐摩耗性に優れた超硬合金に関するものである。
従来、非金属系材料を加工するための工具、例えば、高硬度木材の切削工具に用いる超硬合金においては、Co含有量が5〜15mass%と高い材料では硬度が不足し、木材を加工する際に耐摩耗性が著しく低くなることが判明しており、これに対しCo含有量を低くして3〜5mass%程度としたところ、焼結性が悪化し、破壊靭性値が低下するという問題が生じていた。
そこで、例えば、特許文献1では、WC基超硬合金において、結合金属相としてのCoおよびNiの少なくとも一方を1wt%以上、CoおよびNiを合わせて3wt%以下の割合で含み、さらにCrおよびCr炭化物の少なくとも一方をCr量として0.5wt%以上、1.5wt%以下、必要に応じ、Ti、Ta、Nb、Mo、Vの炭化物、炭窒化物の少なくとも1種を含み、WCの平均粒径を0.2μm以上、0.5μm以下とし、粒径2μm以上のWC粒の含有量を合金の断面組織中の面積比で0.7%以下とし、硬度および抗折力がそれぞれHRA94.0以上および220kg/mm以上である、木質系硬質材料を加工するための工具に用いられるWC基超硬合金の提案がなされている。
そして、具体的な製造条件としては、焼結温度は、1350〜1450℃、好ましくは、1400〜1450℃程度とされ、焼結後または焼結と同時にHIP処理を行うことにより、一層の強度向上が実現できるとされている。
また、特許文献2では、非金属系材料であるガラスの切断用工具に用いられる超硬合金
として、金属相としてのCoを0.5〜4wt%、粒成長抑制剤としてのVC、NbC、TaC、Cr、MoC、ZrC、HfCの一種以上を0.1〜3wt%含有し、残部をWC及び不可避不純物とし、WCの平均粒径が0.2〜1.5μmであって、Hvが2100Kg/mm以上である、強度(MOR)と耐摩耗性をともに向上したWC基超硬合金の提案がなされている。
そして、具体的な製造方法としては、原料粉末を湿式混合、粉砕、乾燥後、成形体とし、真空下(0.1torr)、1350℃にて1時間保持後、Ar雰囲気下(1000atm)1250℃にて1時間保持し、その後、HIP処理による焼結により得られるとされている。
また、特許文献3では、用途が非金属系材料用に限定されたものではないが、切削に用いられる高強度高靱性高耐摩耗性のWC基超硬合金として、Coを0.1〜10重量%、Cr化合物、V化合物等を含み、WCの平均粒径が100〜1000nmであって、高靱性及び高抗折強度を有し、鋼製の超硬チップ等を用途とする断続切削に優れたWC基超硬合金の提案がなされている。
そして、具体的な製造方法としては、原料粉末を湿式混合粉砕、乾燥後、プレス成形体とし、900℃〜1600℃の温度範囲にて、アルゴンガスを炉内に導入し、3〜200気圧の範囲で加圧焼結を行い、焼結の駆動力を増加させることで密度がほぼ100%の超硬合金を得るというものである。
さらに、特許文献4では、熱伝導度の優れた高硬度、高靱性超硬合金の製造方法として、
粒子径が0.5μm以下のWC微粒子を用い、Co量を0.5〜3wt%に抑え、さらに、VC、Cr、TaC、HfC、ZrCから選ばれた粉末の少なくとも1種を0.2〜2.0wt%添加した超硬合金原料粉末を成形し、真空炉にて真空中(1×10〜1×10−5Torr)で1300〜1600℃、15〜90分保持し高温焼結を行い、引き続き同一炉にてそのまま温度を常温まで下げることなく、ArまたはNガスを圧力媒体として炉内ガス圧が、30〜500kg/cmとなるように導入し、15〜90分加圧保持した後、1200〜1600℃にて低圧HIP処理を行い、その後、常温にすることなく、再度真空中(1×10〜1×10−5Torr)で1300〜1600℃にて、再焼結を行うことが提案されている。
そして、かかる提案により、従来の高圧HIP処理では、Coがポア中に流出することに起因した靱性の低下を解消し、内部に存在するポアを消失させ、更にHIP後の再焼結により不均一組織を解消し抗折力、硬度の改善を図り、熱伝導度の優れた高硬度、高靱性超硬合金を得るというものである。
特許第3353522号公報 特開平8−127836号公報 特開平7−305136号公報 特公平7−6011号公報
特許文献1及び特許文献2に記載された非金属系材料を加工するための工具に用いる超硬合金においては、WC粒を細粒化しその平均粒径を規定し、CrやTi、Vなどの炭化物、炭窒化物を添加し、高硬度で抗折力に優れた、超硬合金を得ることにより、従来かかる超硬合金において課題となっていた、Co含有量によって生じる特性の劣化、特に、低Co材料においては抗折力が低下する点を解決した。
しかしながら、強断続切削などの厳しい条件下において用いられる超硬合金においては、更なる耐欠損性が求められるものの、特許文献1や特許文献2に記載された超硬合金では、
耐欠損性が安定して得られないという問題が生じていた。
また、特許文献3では、WC粒の細粒化と焼結時の駆動力を増加させることにより、高靱性、高抗折強度を有し、断続切削に優れた低Co含有のWC基超硬合金の提案がなされているが、例示されている用途は、鋼製の超硬チップ等の切削であり、木材を含む非金属系材料について適用した事例は記載されていない。
また、特許文献4では、WC粒の細粒化と低圧HIP処理に加え、その後の再焼結を行う事で、ポアの消滅と不均一組織の解消により、高靱性、高抗折強度を有する低Co含有のWC基超硬合金の提案がなされているものの、断続切削性や木材を含む非金属系材料についての適用については、何ら記載されていない。
そこで、本発明者らは強断続切削においてWCが粒内破壊を生じ、それが脱落する事で摩耗が促進されると考え、従来のように、10mass%以下の結合相成分の分散性および組織の均一化による靭性向上ではなく、成分の90mass%以上を占めるWC自体の靭性を向上することで耐欠損性及び耐摩耗性を飛躍的に向上できるという知見を得た。したがって、本発明は、上記した強断続切削などの厳しい条件下においても、高靭性、高耐摩耗性に優れ、非金属系材料を加工するための工具に用いる超硬合金を提供することを目的としてなされたものである。

本発明は、Crおよび/またはCrの炭化物、窒化物、炭窒化物、並びに、Vおよび/またはVの炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または2種以上を含み、結合金属相として、Coを含む、微粒WCを基とする、WC基超硬合金において、各成分組成範囲を適正に調整するとともに、微細化されたWC自体に適正な圧縮残留応力を付与することにより、高靭性、高耐摩耗性が備わり、高硬度木材の切削用工具として用いた場合において、長寿命化を達成し得ることを見出したものであり、特に断続切断を繰り返し行う丸鋸切削加工において有用なWC基合金を提供することにより、前記課題を解決したものである。
特に、残留圧縮応力の付与については、種々の製造条件を工夫し、特定の組織構造を見出すことにより達成したものである。
本発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 硬質相と結合相とからなり、結合相成分としてのCoを1〜5mass%含み、また、Crおよび/またはCrの炭化物、窒化物、炭窒化物、並びに、Vおよび/またはVの炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または2種以上を合計で0.1〜0.7mass%含み、残部がWCと不可避不純物とからなるWC基超硬合金において、
硬度および破壊靭性値がそれぞれ、Hv2000以上および4.0MPa・m1/2以上であり、
WCの平均粒径は0.1〜0.5μmであり、
また、前記超硬合金は、その表面に表層部を有し、該表層部のWCには、10〜30MPaの残留圧縮応力が付与されていることを特徴とするWC基超硬合金。
(2) (1)に記載されたWC基超硬合金において、
前記表層部は、垂直断面方向に、最表面から0.1〜1.0μmまでの領域である第1表層部と、該第1表層部から垂直断面方向に更に10μmの領域である第2表層部とからなり、
第1表層部のCo量(質量%)は15mass%以上であることを特徴とするWC基超硬合金。
(3) (2)に記載されたWC基超硬合金において、第2表層部における垂直断面方向のCo量(質量%)の最小値に対する最大値の比が、1.5〜20であることを特徴とするWC基超硬合金。
(4) (2)または(3)のいずれかに記載されたWC基超硬合金において、第2表層部より内部のHv(50kgf)に対する、第1表層部と第2表層部の境界面から第2表層部側0.7μm以内の部位におけるHv(50kgf)の比が、0.9〜0.99であることを特徴とするWC基超硬合金。
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載されたWC基超硬合金において、前記表層部の最表面におけるCoの面積率が40%以上であることを特徴とするWC基超硬合金。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載されたWC基超硬合金において、結合相成分のNiをCoの含有量(質量%)の10mass%以下で含有することを特徴とするWC基超硬合金。
(7) (1)〜(6)のいずれかに記載されたWC基超硬合金において、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf及びTaの炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または2種以上を結合相成分の10mass%以下で含有させることを特徴とするWC基超硬合金。
に特徴を有するものである。
まず、本発明に係るWC超硬合金について、その最表面部から内部組織に至る構造について概略説明する。
すなわち、本発明に係るWC超硬合金は、図1にも記載されているとおり、表層部と内部とからなり、該表層部は、Co量(質量%)が多く、最表面から垂直断面方向に0.1〜1.0μmの厚みを有する第1表層部と、第1表層部から垂直断面方向に更に10μmの厚みを有する第2表層部とからなっている。
以下では、本発明に係る超硬合金の成分組成やその濃度分布、及び、それらを規定する理由等について説明する。
Co:
Coは結合相を形成するものであり、その含有量が、1mass%未満では欠損が生じ易くなり、また、5mass%を超える場合には、耐摩耗性不足となり摩耗が進行することから、Coの含有量を1〜5mass%と規定した。(請求項1)
また、超硬合金の表面部には、最表面にCo量(質量%)の高い第1表層部が形成されており、垂直断面方向におけるCoの濃度分布と特性の関係についてみてみると、第2表層部において、Co量(質量%)の最も少ない部分に対する、Co量(質量%)の最も多い部分のCo量(質量%)の比が、1.5未満では、欠損を生じるおそれがあり、また、20を超えると初期摩耗が増大し、耐摩耗性が低下する可能性があるため、Co量(質量%)に組成勾配を設け、第2表層部における最大Co量(質量%)に対する最小Co量(質量%)の比を1.5〜20とすることが好ましく、1.5〜5の範囲とすることがより好ましく、1.5〜3の範囲とすることがさらにより好ましい。(請求項2、3)
ダイヤモンド砥石等による切刃部分の研削加工を行う場合、特に非金属加工用に使用される切刃は鋭利なエッジの形成が必要なため、切刃エッジ部にチッピングが発生し易いが、本発明の超硬合金では最表面部とその直下にCo量(質量%)の多い部分が存在するため、研削加工によるチッピングを抑制でき、切削加工時の切刃エッジ部の微小チッピングから生じる初期摩耗を抑制できる。前記Co量(質量%)は、15質量%以上であることが好ましい。(請求項2)
そして、これを、超硬合金の垂直断面方向における硬さ分布(Hv(50kgf))と特性の関係からみてみると、第2表層部より内部の硬さHv(50kgf)に対する、第1表層部と第2表層部の境界面から第2表層部側0.7μm以内の部位におけるHv(50kgf)の比が、0.99を超えると欠損が生じるおそれがあり、また、0.9未満では、初期摩耗が増大し、耐摩耗性が低下する可能性があるため、第2表層部より内部のHv(50kgf)に対する、第1表層部と第2表層部の境界面から第2表層部側0.7μm以内の部位におけるHv(50kgf)の比は、0.9〜0.99であることが好ましい。(請求項4)
また、台金とのろう付け性の観点から、表面のCo量が多くても面積率が低ければろう付け性は向上せず、表面部におけるCoの面積率が40%未満である場合には、ろう付け性が悪化し、強断続切削などの厳しい条件下において、チップが台金から外れるおそれがあるため、超硬合金の表面部におけるCoの面積率は40%以上とすることが望ましい。そして、そのような面積率を有するCo層の厚みは、0.1μm未満では台金とのろう付け性が悪化し、チップが台金から外れるおそれがある一方、1.0μmを超えると逆に、第1表層部と第2表層部の境界面部分からチップが外れるおそれがある。また、切刃の耐溶着性が悪化するとともに、初期摩耗が増大し、耐摩耗性が低下するおそれがあり、コーティングを施した場合には、コーティング層の剥離が生じ易くなるため、層厚は最表面から0.1〜1.0μmとすることが好ましい。(請求項2、5)
Ni:
NiはCoとともに結合相形成元素であり、耐食性が求められる場合には、結合相の強度を考慮し、Co量(質量%)に対し10mass%以下の範囲で添加することができる。
(請求項6)
Crおよび/またはCrの炭化物、窒化物、炭窒化物、並びに、Vおよび/またはVの炭化物、窒化物、炭窒化物:
これらの金属及び化合物は、粒成長抑制効果を有し、耐摩耗性を向上させるが、0.1mass%未満では、粒成長抑制効果が小さく、また、過剰析出が生じなければ、性能の悪化は認められないものの、その1種または2種以上を合計で0.7mass%を超えて含有する場合には、CrやVの炭化物等の第3相の過剰析出により強度が低下し、欠損が発生するおそれがあるため、合計で0.1〜0.7mass%と規定した。また、耐食性の効果を発揮するため、Crおよび/またはCrの炭化物等の添加量は結合相形成成分のCoおよび/またはNi量に対して、5mass%以上とするのが望ましい。(請求項1)
Ti、Zr、Nb、Mo、Hf及びTaの炭化物、窒化物、炭窒化物:
これらの金属化合物の1種または2種以上を耐熱性成分として、結合相量の10mass%以下で含有させることができる。(請求項7)
WC:
WCは、硬質相の形成成分であり、結合相、及び、粒成長抑制剤として添加されるCr、V及びその炭化物、窒化物、炭窒化物、並びに、耐熱性成分として添加されるTi、Zr、Nb、Mo、Hf及びTaの炭化物、窒化物、炭窒化物以外の残部を構成するものである。
また、WC粒としては、平均粒径が0.5μmを超えるものは、硬度が低下し耐摩耗性が得られないため、平均粒径は0.5μm以下とし、他方、平均粒径が、0.1μm未満では、硬度は向上するものの、WC粒の脱落により摩耗が増大するため、WC粒の平均粒径は、0.1〜0.5μmと規定した。(請求項1)
焼結組織:
本発明に係る焼結組織は、低温での焼結処理、及び 従来より低温でのHIP処理により得られるものであって、従来低Co合金は気孔が生成してしまうため高温で焼結する、もしくは低温で焼結した場合には、その後のHIP処理を高温高圧とし、強圧下により気孔を消滅させ、強度向上を図っていた。それに対し、本発明では、低温で焼結し、その後のHIP処理も低温での特殊なHIP処理とすることにより、表面部だけでなく内部のWC粒に対しても、圧縮残留応力を付与し、WC粒内の破壊の抑制を図ったため、組織内部にA02〜A06、かつ、B02〜B06レベル(超硬工具協会規格CIS006C−2007)の気孔が存在した状態であっても、耐欠損性と耐摩耗性の優れた焼結組織としたものである
付与する残留応力は、10MPa未満であるときは、WC自体の靭性が低く耐欠損性と耐摩耗性の向上効果が少なく、他方、30MPaを超えると、圧縮応力であってもWC自体に過剰な応力が存在し、欠損を生じるため、WC粒の残留圧縮応力の範囲は、10〜30MPaと規定した。(請求項1)
なお、焼結組織において、CoとWの複合炭化物(η相)が析出した場合においても、過剰な析出がない限り、特性への影響を及ぼすものではない。

表面被膜の形成:
本発明に係る超硬合金の表面には、表面被膜を形成することができる。
本発明に係る超硬合金の表面にも残留圧縮応力が付与されているため、例えば、皮膜に圧縮応力が付与されるPVD法では、一層の耐欠損性およびそれに起因する耐摩耗性の向上効果が発揮され、また、皮膜に引張応力が付与されるCVD法の中でも、コーティング温度の低いMT−CVD法では、耐欠損性およびそれに起因する耐摩耗性の向上がみられる。
WC基超硬合金の作製方法:
以下に、本発明に係るWC基超硬合金の製造方法の一例を示す。なお、本発明の製造方法は、以下の製造方法に限定されるものではない。
まず、所定粒径の粉末を所定の配合組成となるように配合し原料粉末を作製し、
(イ)これを、室温から1300〜1400℃まで真空雰囲気中にて0.5〜5℃/分の速度で昇温し、
(ロ)該温度範囲(1300〜1400℃)にて、真空雰囲気中で60〜180分保持し、室温までAr雰囲気で冷却する。
(ハ)ついで、室温から所定のHIP処理温度(1300〜1400℃)までを、2〜10℃/分の速度で昇温し、
(ニ)該HIP処理温度(1300〜1400℃)にて、0.5〜10MPaのAr雰囲気中で60〜240分保持し、
(ホ)ついで、上記HIP処理温度(1300〜1400℃)から1000℃までを1〜
3℃/minの冷却速度に制御して炉冷する。1000℃までの炉冷は、Co量(質量%)
の高い第1表層部およびCoの濃度勾配を有する第2表層部を形成するために必要であり、
以降の冷却は任意の冷却方法で構わない。
上記(イ)〜(ホ)の工程によって、本発明に係るWC基超硬合金を作製することができる。
そして、このようにして作製した本発明に係るWC基超硬合金は、硬質相は平均粒径が0.1〜0.5μmのWCであり、その残留応力が、10〜30MPaの圧縮応力を有することにより、高硬度(Hv2000以上)、高靭性(4.0MPa・m1/2以上)に優れた特性を有するものであって、長期間にわたる切断加工において優れた耐欠損性と耐摩耗性を発揮し、切削工具の長寿命化を図ることができる。
なお、残留圧縮応力を付与する手段は、HIP処理以外の手段でもよいが、メディア等が直接超硬合金に接触する場合、例えば、ブラスト処理によって圧縮残留応力が付与される場合には、処理された超硬素材のエッジ部に欠けが発生し、非金属切削に必要な鋭利な切刃を形成することはできず、また表面近傍しか効果が得られないため、目的とする耐欠損性と耐摩耗性向上の効果は達成できない。また、研削によっても圧縮残留応力は付与されるが、従来の低Co材種では、特に欠けが発生し、ブラスト処理と同様、その効果は表面近傍に留まり、目的とする耐欠損性と耐摩耗性向上の効果は達成できない。
したがって、チッピングが発生しない圧力や砥石の番手を調整し処理することとなるが、それでは目的とするWC自体の靭性向上による耐欠損性および耐摩耗性の向上効果は達成できない。
本発明に係る超硬合金では、WC自体の靭性の向上のみならず、従来の超硬合金に比べ、表面部に第1表層部を形成させているため、ブラスト処理を施した場合もろう付け強度は問題とはならず、更なる耐欠損性と耐摩耗性の向上が見込まれる。
本発明は、Crおよび/またはCrの炭化物、窒化物、炭窒化物、並びに、Vおよび/またはVの炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または2種以上を含み、結合金属相として、Coを含む、微粒WCを基とする、WC基超硬合金において、各成分組成範囲を調整するとともに、焼結条件及びHIP処理条件を調整し、微細化されたWC自体に適正な圧縮残留応力を付与し、高靭性、高耐摩耗性が備わった組織を得ることにより、長寿命化を達成したものであり、特に強断続切断を繰り返し行う非金属系材料の加工用工具において有用なWC基合金を提供するものである。
本発明のWC基超硬合金の断面についての位置関係を示す模式図を示す。 本発明例5のWC基超硬合金を丸鋸に用いた際のすくい面の表面組織を観察した走査型電子顕微鏡像(倍率200倍)を示す。
つぎに、本発明のWC基超硬合金について、実施例を用いてより具体的に説明する。
原料粉末として、所定の平均粒径を有する、細粒WC粉末、Co粉末、Ni粉末、Cr粉末、V粉末、及び、Cr、V、Ti、Zr、Nb、Mo、Hf、Taの化合物粉末(炭化物粉末、窒化物粉末、炭窒化物粉末)を用意し(表1の試料番号1〜12)、これらの原料粉末を所定組成に配合し、ボールミルにて湿式混合し、乾燥後、10kgf/mmの圧力にてプレス成形し圧粉体を製造した。この圧粉体に対し、表2に示される条件にて、焼結及びHIPを行うことによって、表4に示す本発明例超硬合金1〜12を製造した。
また、比較の目的で、表1に示される本発明範囲を外れる配合組成の圧粉体(表1の試料番号13〜15)に対して、表2に示される条件にて、焼結及びHIPを行うことにより、表4に示す比較例超硬合金発明1〜3を製造した。
また、同様に比較の目的で、表1に示される本発明範囲の配合組成の試料(表1の試料番号8、12)について、表3に示される条件(本発明範囲外の条件)にて、焼結及びHIPを行うことにより、表4に示す比較例超硬合金発明4〜5を製造した。
次に、上記で得られた本発明例超硬合金1〜12、及び、比較例超硬合金発明1〜5について、表4に示される各特性値の測定、及び、工具として用いた際の摩耗量を測定したので、以下にて、各測定方法及び測定値の算出方法を示し、得られた結果については、表4に示す。
<WCの平均粒径、硬度、及び、破壊靱性値>
それぞれの試料の断面組織を走査型電子顕微鏡(倍率:10000倍)にて観察するとともに、硬質相を構成するWCの平均粒径については、リニアインターセプト法(Liner Intercept)の計算式により算出した。
また、WC基超硬合金の硬度は、その垂直断面において厚さ方向に均等に、3点にてマイクロビッカース硬度計(Hv(50kgf))を用いて硬度測定を行い、その平均値として算出した。
さらに、破壊靭性値については、JIS R1607の圧子圧入法により測定し、3か所の平均値として算出した。
<残留応力値>
残留応力値は、X線回折法(XRD)を用い測定を行った。具体的には、Cu-Kα線を用いて2θ≧100°に観測されるピーク(WCは145°)をX線残留応力測定法(2θ−sin2ψ法)によりWCにかかる残留応力を算出した。尚、この計算にはヤング率:700GPa、ポアソン比:0.19を用いた。
<Co濃度比 (最大値)/(最小値)>
超硬合金の第2表層部における垂直断面でのCo濃度比、すなわち、Co量(質量%)の最小値に対する最大値の比は、第2表層部の全領域について、表面側から0.5μm毎にエネルギー分散型X線分析(SEM−EDS)を用いてCo量(mass%)を各2点測定し、その平均値を算出した後、各測定箇所の前記平均値の最小値に対する最大値の比より求めた。
<硬度比 (表層部)/(内部)>
第2表層部より内部のHv(50kgf)に対する、第1表層部と第2表層部の境界面から第2表層部側0.7μm以内の部位におけるHv(50kgf)の硬度比については、それぞれの領域において、各3点にてマイクロビッカース硬度計(Hv(50kgf))を用いて硬度測定を行い、その平均値を算出し、内部の硬度の平均値に対する、第1表層部と第2表層部の境界面から第2表層部側0.7μm以内の部位における硬度の平均値の比により求めた。
<最表面部(第1表層部)のCo面積率>
超硬合金最表面部を、走査型電子顕微鏡(倍率:200倍)にて撮影し、200倍視野に対し、Coが占める面積とその他の部分の面積を画像処理ソフト(WinROOF)により算出し、5視野の平均を取って最表面部Co面積率とした。(図2を参照。)
<最表面部(第1表層部)のCo量(質量%)>
前記走査型電子顕微鏡(倍率:200倍)による測定により、Coにて占められているとされた前記超硬合金の最表面部に対し、エネルギー分散型X線分析(SEM−EDS)を用いて3点の点分析を行い、その平均を取って最表面部のCo量(質量%)とした。
<有孔度の測定>
超硬合金規格CIS006C−2007により測定を行った。
<摩耗量(mm)測定試験>
前記の方法により各性値を評価した超硬合金を、Φ300mmの台金にろう付けし、側面刃先を研磨した後、刃厚3mm、刃数85(表4、試料17種×各5刃)の丸鋸とした。厚さ20mmのパーチクルボードを被削材とし、回転数4000rpm、送り10m/minの条件で切断試験を行い、刃先逃げ面の摩耗量を計測した。
表4に示すとおり、本発明例WC基超硬合金1〜12は、硬質相を構成するWCの平均粒径がいずれも0.1〜0.5μmと微細組織構造を有し、さらに、硬度及び破壊靭性値について測定を行ったところ、いずれもHv2000以上の高硬度、破壊靭性値4.0MPa・m1/2以上の高靭性を有するものであり、切断加工用工具として用いた際も摩耗量が少なく、優れた特性を有するものであった。
これに対し、本発明範囲の成分組成を満足しない、比較例WC基超硬合金1〜3は、硬度、破壊靱性値を満足することができず、そのため、欠けの発生が見られるものや、欠けが発生しなくとも摩耗量の増大が著しいものであった。
また、本発明範囲の成分組成は満足するものの、一定の製造条件を満たさない、例えば、焼結温度、或いは、HIP温度が1400℃を大きく超えるものについては、比較例WC基超硬合金4、5の結果にみられるように、残留応力値が低く、チッピングが生じたり、また、硬度が低く、摩耗量が多くなるなど、満足の得られるものではなかった。


本発明に係るWC基超硬合金は、強断続切削などの厳しい条件下においても、高靭性、高耐摩耗性に優れるため、非金属系材料の加工用工具を含む切断加工用工具として用いることができ、極めて有用である。

Claims (7)

  1. 硬質相と結合相とからなり、結合相成分としてのCoを1〜5mass%含み、また、Crおよび/またはCrの炭化物、窒化物、炭窒化物、並びに、Vおよび/またはVの炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または2種以上を合計で0.1〜0.7mass%含み、残部がWCと不可避不純物とからなるWC基超硬合金において、
    硬度および破壊靭性値がそれぞれ、Hv2000以上および4.0MPa・m1/2以上であり、
    WCの平均粒径は0.1〜0.5μmであり、
    また、前記超硬合金は、その表面に表層部を有し、該表層部のWCには、10〜30MPaの残留圧縮応力が付与されていることを特徴とするWC基超硬合金。
  2. 請求項1に記載されたWC基超硬合金において、
    前記表層部は、垂直断面方向に、最表面から0.1〜1.0μmまでの領域である第1表層部と、該第1表層部から垂直断面方向に更に10μmの領域である第2表層部とからなり、
    第1表層部のCo量(質量%)は15mass%以上であることを特徴とするWC基超硬合金。
  3. 請求項2に記載されたWC基超硬合金において、
    第2表層部における垂直断面方向のCo量(質量%)の最小値に対する最大値の比が、1.5〜20であることを特徴とするWC基超硬合金。
  4. 請求項2または請求項3のいずれかに記載されたWC基超硬合金において、
    第2表層部より内部のHv(50kgf)に対する、第1表層部と第2表層部の境界面から第2表層部側0.7μm以内の部位におけるHv(50kgf)の比が、0.9〜0.99であることを特徴とするWC基超硬合金。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載されたWC基超硬合金において、
    前記表層部の最表面におけるCoの面積率が40%以上であることを特徴とするWC基超硬合金。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載されたWC基超硬合金において、
    結合相成分のNiをCoの含有量(質量%)の10mass%以下で含有することを特徴とするWC基超硬合金。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載されたWC基超硬合金において、
    Ti、Zr、Nb、Mo、Hf及びTaの炭化物、窒化物、炭窒化物の1種または2種以上を結合相成分の10mass%以下で含有させることを特徴とするWC基超硬合金。
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