JP7209216B2 - 耐塑性変形性、耐チッピング性にすぐれたwc基超硬合金製切削工具および表面被覆wc基超硬合金製切削工具 - Google Patents

耐塑性変形性、耐チッピング性にすぐれたwc基超硬合金製切削工具および表面被覆wc基超硬合金製切削工具 Download PDF

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Description

本発明は、ステンレス鋼等の難削材の切削加工において、すぐれた耐塑性変形性を備え、すぐれた耐チッピング性を発揮するWC基超硬合金製切削工具(「WC基超硬工具」ともいう)および表面被覆WC基超硬合金製切削工具に関する。
WC基超硬合金は硬さが高く、また、靱性を備えることから、これを基体とするWC基超硬工具は、すぐれた耐摩耗性を発揮し、また、長期の使用にわたって長寿命を有する切削工具として知られている。
しかし、近年、被削材の種類、切削加工条件等に応じて、WC基超硬工具の切削性能、工具寿命をより一段と向上させるべく、各種の提案がなされている。
例えば、特許文献1では、炭化タングステンを主成分とする硬質相と、鉄族元素(コバルトを含み、コバルトの含有量は超硬合金中において8質量%以上であることが好ましい)を主成分とする結合相とを備える超硬合金において、炭化タングステンの粒子数をA、他の炭化タングステン粒子との接触点の点数が1点以下の炭化タングステン粒子の粒子数をBとするとき、B/A≦0.05を満たすようにすることで、超硬合金の耐塑性変形性を向上させ、その結果として、炭素鋼、ステンレス鋼の湿式連続切削加工において、WC基超硬工具の長寿命化を図ることが提案されている。
特許文献2では、Co量が10~13質量%、Co量に対するCr量の比が2~8%、TaCとNbCの少なくとも1種をTaCとNbCの総量が0.2~0.5質量%となる範囲で含有し、残部がWCから成り、硬さが88.6HRA~89.5HRAであるWC基超硬工具において、研磨面上の面積比におけるWC積算粒度80%径D80と積算粒度20%径D20の比D80/D20を2.0≦D80/D20≦4.0の範囲とし、また、D80を4.0~7.0μmの範囲とし、かつWC接着度cを0.36≦c≦0.43とすることにより、ステンレス鋼に代表される難削材の切削加工において、被削材の凝着を防止し耐欠損性を向上させることが提案されている。
特許文献3では、WC基超硬工具において、WC基超硬合金の成分組成を、WC-x質量%Co-y質量%Cr-z質量%VCで表したとき、6≦x≦14、0.4≦y≦0.8、0≦z≦0.6、(y+z)≦0.1xを満足し、また、WC基超硬合金のWC接着度Cを、C=1-V α・exp(0.391・L)で表したとき、この式におけるWC基超硬合金の結合相体積率の値Vは0.11≦V≦0.25、また、(WC粒子の粒度分布の標準偏差)/(平均WC粒度)の値Lは0.3≦L≦0.7の範囲内であって、さらに、係数αが0.3≦α≦0.55の値を満足するWC接着度Cを有するWC基超硬合金とすることにより、Al合金、炭素鋼等の切削加工において、硬さと剛性を低下させることなく靱性を向上させ、耐欠損性を高めたWC基超硬工具が提案されている。
特許文献4では、WC基超硬工具において、WC-WC接着界面長さをL1とし、WC-Co接着界面長さをL2とした時、
R>(0.82-0.086×D)×(10/V)
の式を満足させることにより、Ni基耐熱合金の切削加工において、WC基超硬工具の耐熱塑性変形性と靱性を向上させることが提案されている。
なお、R=(L1)/((L1)+(L2))
D:WC面積平均粒径(μm)であって、0.6≦D≦1.7の範囲である。
ここで、前記Dは、WCの面積率が50%となるときのWCの粒径をいう。
V:結合相体積(vol%)であって、9≦V≦14の範囲である。
特許文献5では、重量%で、Crまたは/およびCr化合物:0~4%(Cr換算で)、Vまたは/およびV化合物:0~4%(V換算で)、TaC:0~2%、TiC:0~2%、
Nまたは/およびN化合物:0~1%(N換算で)、Co:0.1~10%、WCおよび不可避不純物:残からなる組成を有し、かつ、0.06~30ナノメータのCo平均厚み(CFP)を有し、焼結に際し、昇温途中900度C~1600度Cの温度範囲の1部または全範囲において、気体を圧力媒体として3気圧~200気圧の圧力を負荷して高密度化を図った切削加工工具用WC-Co系超硬部品が提案されており、このWC-Co系超硬部品、望ましくは、WCの平均粒径が1μm以下、CFPが0.06~30nmの範囲の超微粒低Co超硬合金部品の靱性を高めることができるとされている。
ただし、CFPは、Co平均厚み(nm)であって、
CFP=0.58*A/(100-A)*R
から算出した値であり、A:Co(%),2R:WC平均粒径(nm)である。
特許第6256415号公報 特開2017-88999号公報 特開2017-148895号公報 特開2017-179433号公報 特開平7-305136号公報
前記特許文献1~5で提案されている従来のWC基超硬工具によれば、WC-WC粒子相互の接触点数、WCの粒度、WC接着度あるいは製造条件等をコントロールすることによって、WC基超硬工具の切削性能、工具特性の向上を図っている。
しかし、前記従来の工具では、ステンレス鋼のような難削材の切削加工においては、WC-WC粒子の界面での粒界すべりの発生、あるいは、結合相への応力集中による亀裂の発生等により、チッピング等の異常損傷の発生を十分に抑制することができず、そのため、工具寿命は短命であった。
本発明者らは、ステンレス鋼のような難削材の切削加工において、すぐれた耐塑性変形性と耐チッピング性を発揮するWC基超硬工具を提供すべく、WC基超硬合金の結合相の形態に着目し、鋭意研究を進めたところ、次のような知見を得た。
前記特許文献1~4に示されるWC基超硬工具においては、主として、WC粒子に着目した改善がなされ、また、前記特許文献5に示されるWC基超硬工具においては、主として、CFPに着目した改善がなされていたが、本発明者らは、従来の技術とは視点を変えて、結合相の形態に着目して研究を重ねたところ、WC基超硬合金の結合相のうちの微細結合相粒子について、その真円度を0.9~1.0の範囲内に定めた場合には、WC基超硬合金中の微細結合相粒子が、細長形状ではなく円形に近い形状であるため、WC―WC粒子間の接触長さが長くなることによって、WC-WC粒子の界面での粒界すべりの発生が低減されることで耐塑性変形性が向上し、切削加工時の刃先の変形発生が抑制されることを見出した。
また、WC基超硬合金中の微細結合相粒子は円形に近い形状となるために、切削加工時に作用する高負荷による応力集中が抑制されるとともに空隙の形成も抑制されることによって、変形、破壊の起点が減少し、チッピング、欠損等の異常損傷の発生が抑制されることを見出した。
つまり、WC基超硬合金の結合相のうちの微細結合相粒子について、その真円度を0.9~1.0の範囲内に定めたWC基超硬工具を、ステンレス鋼等の難削材の切削加工に供した場合には、耐塑性変形性の向上によって、刃先の変形が抑制され、また、変形、破壊の起点が減少することによって、チッピング、欠損等の異常損傷の発生が抑えられ、工具の長寿命化が図られることを見出したのである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)WC基超硬合金を基体とするWC基超硬合金製切削工具において、
前記WC基超硬合金の成分組成は、結合相形成成分としてのCoを6~14質量%とCrを0.1~1.4質量%含有し、残部はWC及び不可避不純物からなり、前記WC基超硬合金の断面について測定した結合相粒子の個数積算10%粒度における粒子面積をA10としたとき、A10以下の面積を有する微細結合相粒子の平均真円度が0.9~1.0の範囲内であることを特徴とするWC基超硬合金製切削工具。
(2)前記WC基超硬合金は、TaC、NbC、TiC及びZrCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を合計量で4質量%以下、さらに含有することを特徴とする(1)に記載のWC基超硬合金製切削工具。
(3)(1)または(2)に記載のWC基超硬合金製切削工具の少なくとも切れ刃には、硬質被覆層が形成されていることを特徴とする表面被覆WC基超硬合金製切削工具。」
を特徴とするものである。
なお、前記(1)、(2)におけるCr、TaC、NbC、TiC、ZrCの含有量は、WC基超硬合金の断面について測定したCr量、Ta量、Nb量、Ti量、Zr量を、いずれも炭化物換算した数値である。
本発明のWC基超硬工具および表面被覆WC基超硬合金製切削工具は、その基体を構成するWC基超硬合金の成分であるCo、Cr、あるいはさらに、TaC、NbC、TiC、ZrCが特定の組成範囲を有し、また、WC基超硬合金における結合相粒子の個数積算10%粒度における粒子面積をA10としたとき、A10以下の面積を有する微細結合相粒子の平均真円度が0.9~1.0の範囲であることから、WC基超硬合金中には細長い形状の微細結合相粒子の存在は少なく、その多くは円形状に近い形状を有する微細結合相粒子であるため、WC-WC粒子同士の接触界面が長くなるために、ステンレス鋼等の難削材の切削加工において、切削加工時の高負荷が作用した場合でも、WC粒子間の粒界すべりの発生が抑制されて耐塑性変形性が向上し、刃先の変形が抑制され切削工具の長寿命化が図られる。
さらに、微細結合相粒子への応力集中が緩和されるため、結合相が起点となる破壊の発生が減少し、チッピング等の異常損傷の発生が抑制される。
切れ刃の逃げ面塑性変形量の測定模式図を示す。なお、上図(すくい面)は平面図、下図(逃げ面)は側面図である。切れ刃の逃げ面塑性変形量は、切削前の変形していない切れ刃稜線を基準とし、切削によって切れ刃稜線が押し込まれて変形した量を切削後に測定する。具体的な測定法は、工具の主切れ刃側逃げ面について、切れ刃から十分離れた位置で主切れ刃側逃げ面とすくい面が交差する稜線上に線分を引き、同線分を切れ刃部方向に延伸し、延伸した線分と切れ刃部稜線間の距離(延伸した線分の垂直方向)が最も離れている部分を測定し、これを切れ刃の逃げ面塑性変形量として求める。
以下、本発明について詳細に説明する。
Co:
Coは、WC基超硬合金の主たる結合相形成成分として含有させるが、Co含有量が6質量%未満では十分な靱性を保持することはできず、一方、Co含有量が14質量%を超えると急激に軟化し、切削工具として必要とされる所望の硬さが得られず、変形および摩耗進行が顕著になることから、WC基超硬合金中のCo含有量を6~14質量%と定めた。
Cr
Crは、主たる結合相を形成するCo中にCrが固溶し、硬質相を形成するWC相の成長を抑制して、WC相の粒径を微細化させ、WC基超硬合金を微粒・均粒組織とし、靱性を高める。しかし、この作用は、Cr含有量が、0.1質量%未満では不充分であり、一方、その含有量がCoの含有量に対し10%を超えると、CrとWの複合炭化物を析出し、靱性が低下し、また、欠損発生の起点となる。
本発明においてはCo含有量上限が14質量%であるため、Crの上限はCo含有量上限の10%である1.4質量%である。
したがって、WC基超硬合金中のCr含有量は、0.1~1.4質量%と定めた。
TaC、NbC、TiC、ZrC:
本発明のWC基超硬合金は、その成分として、さらに、TaC、NbC、TiC及びZrCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を合計量で4質量%以下、さらに含有することができる。
Ta、Nb、Ti、Zrはいずれも、主たる結合相を形成するCo中に固溶して硬さを高める効果を有するが、それらを炭化物換算した合計含有量が4質量%を超えると、炭化物析出により靱性を低下させ、欠損発生の起点となる。
したがって、WC基超硬合金中の成分としてTaC、NbC、TiC及びZrCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を含有させる場合には、その合計含有量は、4質量%以下とすることが望ましい。
なお、前記したCr、TaC、NbC、TiC、ZrCの含有量は、WC基超硬合金についてEPMAによって測定したCr量、Ta量、Nb量、Ti量、Zr量を、いずれも炭化物換算した数値である。
微細結合相粒子の平均真円度(Circularity):
本発明でいうWC基超硬合金の微細結合相粒子の平均真円度、即ち、特許請求の範囲の請求項1に記載される「微細結合相粒子の平均真円度」、とは、WC基超硬合金の断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した観察によって特定した個々の微細結合相粒子の真円度を求め、求めた真円度を平均した値であるとして定義する
ここで、微細結合相粒子とは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率3000~4000倍でWC基超硬合金の断面を観察して、結合相(Coを主成分とする相)のコントラストが他の相のコントラストから明確に分離可能なSEM像を取得し、これを画像処理して個々の結合相粒子の面積と個数を求め、結合相粒子の面積を横軸とし、また、結合相粒子の個数を縦軸とし、結合相面積の小さい粒子から個数を積み上げた累積分布を作成し、個数積算10%における粒子面積をA10とした場合に、A10以下の面積を有する結合相粒子を微細結合相粒子いう。
そして、微細結合相粒子の真円度については、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率3000~4000倍でWC基超硬合金の断面を観察してSEM像を取得し、該SEM像における微細結合相粒子を特定して抽出し、画像解析ソフトImageJを用いて測定することにより、個々の微細結合相粒子の真円度を求めることができる。
より具体的に説明すれば、次のとおり。
WC基超硬合金の断面の1つの観察視野においてn個の微細結合相粒子が特定された場合、個々の微細結合相粒子に番号1からnを付与し、番号1~nの微細結合相粒子の面積をそれぞれA~Aとし、また、番号1~nの微細結合相粒子の周長をL~Lとした時、番号mの微細結合相粒子の真円度Cは、
=4π×A/L
で定義される。
そして、m=1~nとしてC~Cの値を求め、さらに、これらC~Cの平均値C1~nを求め、このC1~nが前記1つの観察視野における微細結合相粒子の真円度となる。
そして、複数の観察視野(例えば、10ヶ所の観察視野)で、それぞれの観察視野における微細結合相粒子の真円度を求め、これらを平均した値を、本発明でいうWC基超硬合金の断面の微細結合相粒子の平均真円度、即ち、特許請求の範囲の請求項1に記載される「微細結合相粒子の平均真円度」、であると定義する。
真円度の定義からも明らかなように、真円度あるいは平均真円度の値が1に近いほど、WC基超硬合金の微細結合相粒子の形状は真円に近づき、一方、この値が0に近づくにつれ、微細結合相粒子の形状は円ではなく細長形状になっていくので、真円度あるいは平均真円度の値は、WC基超硬合金中における微細結合相粒子の形状の指標であるといえる。
本発明においては、微細結合相粒子の平均真円度を0.9~1.0の範囲内としているが、これは次の理由による。
WC基超硬合金中における微細結合相粒子の平均真円度が0.9未満では、細長形状の微細結合相粒子が多くなることによりWC-WC粒子同士の接触界面長さが短くなるとともに、細長形状の微細結合相粒子の先端部に応力集中を生じやすく、微細結合相粒子先端部には空隙を生じ、WC-WC粒子間の粒界すべりを生じやすくなり、耐塑性変形性が十分でなくなる。さらに、微細結合相粒子先端部に形成された空隙は、WC基超硬工具の変形、破壊の起点となるため、靱性、耐チッピング性、耐欠損性等が低下する。
微細結合相粒子の平均真円度が1.0(あるいは1.0に近い値)の場合は、微細結合相粒子の形状が円形あるいはほぼ円形ということであり、WC-WC粒子同士の接触界面が長くなるために、耐塑性変形性が向上するとともに、チッピング、欠損に対する耐異常損傷性も向上する。
したがって、本発明においては、微粒結合相粒子の平均真円度は0.9~1.0の範囲内とする。そして、これによって、ステンレス鋼等の難削材の湿式連続切削加工において、耐塑性変形性が向上することで、刃先の変形が抑制され、また、WC-WC粒子間の空隙形成を抑制するとともに、結合相への応力集中を緩和することで、チッピング、欠損等の耐異常損傷性を高め、切削工具の長寿命化を図ることができる。
本発明のWC基超硬工具は、例えば、以下の工程によって作製することができる。
まず、粗粒WC粉末、微粒WC粉末、Co粉末、Cr粉末からなる原料粉末、あるいは、必要に応じて、さらに、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末、ZrC粉末のうちの1種以上の粉末を含有する原料粉末を、所定の組成になるように配合・混合して、混合粉末を作製する。
ついで、前記混合粉末を成形して圧粉成形体を作製し、この圧粉成形体を、加熱温度:1000℃以上1100℃以下の温度において、等温保持時間:30~300分、加熱雰囲気:アルゴンガス雰囲気、雰囲気圧力:0.5~0.7MPaの条件で等温保持する固相再配列工程を行い、ついで、加熱温度:1300℃以上1500℃以下、かつ、加熱保持時間:30~120分、真空雰囲気の条件で焼結して、WC基超硬合金を作製する。
固相再配列工程における等温保持温度は、結合相の液相生成温度より100℃以上低温であり、結合相の塑性流動が活発でない。この温度範囲でガス圧力により固相収縮を促進することによりWC粒子の再配列が顕著となり、等温保持工程後はWC粒子間に平均真円度が0.9~1.0に近いCoを主成分とする結合相粒子が残存する。
ついで、前記WC基超硬合金を、機械加工、研削加工し、所望サイズ・形状のWC基超硬工具を作製することができる。
前記の工程で作製されたWC基超硬工具においては、WC基超硬合金の微細結合相粒子の平均真円度が0.9~1.0の範囲となり、細長形状ではなくほぼ円形状に近い微細結合相粒子が形成されるとともに、WC-WC粒子の接触界面長さが長くなる。
その結果、WC-WC粒子界面での粒界すべりが抑制されるため、耐塑性変形性が向上し、さらに、結合相への応力集中が緩和されるため、結合相が起点となる破壊、例えば、結合相とWC粒子間に形成された空隙が起点となる破壊、が減少し、靱性が向上する。
さらに、前記WC基超硬合金製切削工具の少なくとも切れ刃に、Ti-Al系、Al-Cr系等の炭化物、窒化物、炭窒化物あるいはAl等の硬質皮膜を、PVD、CVD等の成膜法により被覆形成することにより、表面被覆WC基超硬合金製切削工具を作製することができる。
なお、表面被覆WC基超硬合金製切削工具の作製にあたり、硬質皮膜の種類、成膜法は、当業者に既によく知られている膜種、成膜手法を採用すればよく、特に、制限するものではない。
本発明のWC基超硬工具および表面被覆WC基超硬工具について、実施例により具体的に説明する。
(a)まず、焼結用の粉末として、表1に示す平均粒径(d50)4.0~8.0μmの粗粒WC粉末、同じく表1に示す平均粒径(d50)0.5~2.0μmの微粒WC粉末、Co粉末、Cr粉末、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末、ZrC粉末を用意する。
これらの粉末を、表1に示す配合組成となるように配合して、焼結用粉末を作製した。
表1には、各種粉末の配合組成(質量%)を示す。
なお、Co粉末、Cr粉末、TaC粉末、NbC粉末、TiC粉末、ZrC粉末の平均粒径(d50)は、いずれも、1.0~3.0μmの範囲内である。
(b)表1に示す配合組成に配合した焼結用粉末を、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形して圧粉成形体を作製した。
(c)ついで、これらの圧粉成形体を、表2に示す条件、即ち、0.5~0.7MPaのアルゴン雰囲気中、1000~1100℃の保持温度範囲まで加熱し(この温度範囲は、固相反応は起こるが結合相の液相生成温度以下である)、該保持温度で30~300分保持するという条件で固相再配列工程を行った。
(d)ついで、炉内を10-1Pa以下の真空雰囲気とし、表3に示す条件、即ち、加熱温度:1300℃以上1500℃以下、かつ、加熱保持時間:30~120分、10-1Pa以下の真空雰囲気の条件で焼結して、WC基超硬合金を作製した。
(e)ついで、前記WC基超硬合金を、機械加工、研削加工し、CNMG120408-GMのインサート形状の表4に示すWC基超硬工具1~12(以下、本発明工具1~12とう)を作製した。
比較のために、比較例のWC基超硬工具1~9(以下、比較例工具1~9という)を製造した。
その製造手順は、本発明工具1~12の製造工程において、前記工程(c)を省略したもの、もしくは、不適切な条件にて前記工程(c)を行ったものである。
つまり、表1に示す配合組成に配合した焼結用粉末を、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力でプレス成形して圧粉成形体を作製し、表3に示す条件、即ち、加熱温度:1300℃以上1500℃以下、かつ、加熱保持時間:30~120分、真空雰囲気の条件で焼結して、WC基超硬合金を作製し、これを機械加工、研削加工し、CNMG120408-GMのインサート形状の表5に示す比較例工具1~9を作製した。
なお、比較例工具9については、表2に示す条件にて固相再配列工程を行った後、表3に示す条件で焼結して、WC基超硬合金を作製した。
本発明工具1~12及び比較例工具1~9のWC基超硬合金の断面について、EPMAにより、その成分であるCo、Cr、Ta、Nb、Ti、Zrの含有量を10点測定し、その平均値を各成分の含有量とした。
なお、Cr、Ta、Nb、Ti、Zrは、それぞれの炭化物に換算して含有量を算出した。
表4、表5に、それぞれの平均含有量を示す。
つぎに、本発明工具1~12及び比較例工具1~9のWC基超硬合金の断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、倍率3000~4000倍でWC基超硬合金の断面を観察して、画像サイズ120×96mm、pixel数1280×1024pixelでSEM像を取得し、これを画像処理し、一つの観察視野内の個々の結合相粒子の面積と個数を求め、結合相粒子の面積を横軸とし、また、結合相粒子の個数を縦軸とする結合相粒子の累積分布を作成し、個数積算10%における粒子面積をA10とし、A10以下の面積を有する微細結合相粒子について、画像解析ソフトImageJを用いて個々の微細結合相粒子の真円度を測定し、前記一つの観察視野における個々の微細結合相粒子の真円度の平均値を求めた。
なお、前記観察倍率とpixel数の関係から、3000倍観察では最小結合相面積は977nmであり、4000倍観察では549nmである。また、観察視野倍率は視野内に150~400個の結合相粒子が含まれるように倍率を選定した。本発明においては、WC粒子によって分断された個々の結合相を各々一つの結晶粒と見なしている。
そして、10箇所の観察視野で求めたそれぞれの真円度の平均値をさらに平均することにより、WC基超硬合金の断面における微細結合相粒子の平均真円度を算出した。
表4、表5に、A10の値と平均真円度の値を示す。
Figure 0007209216000001
Figure 0007209216000002
Figure 0007209216000003
Figure 0007209216000004
Figure 0007209216000005
上記本発明工具1~12、比較例工具1~9について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、以下の湿式連続切削加工試験を行った。
被削材:JIS・SUS304(HB170)の丸棒、
切削速度:110m/min、
切り込み:2.0mm、
送り:0.5mm/rev、
切削時間:4分、
湿式水溶性切削油使用。
上記湿式連続切削加工試験後の、切れ刃の逃げ面塑性変形量を測定するとともに、切れ刃の損耗状態を観察した。なお、切れ刃の逃げ面塑性変形量は、工具の主切れ刃側逃げ面について、切れ刃から十分離れた位置で主切れ刃側逃げ面とすくい面が交差する稜線上に線分を引き、同線分を切れ刃部方向に延伸し、延伸した線分と切れ刃部稜線間の距離(延伸した線分の垂直方向)が最も離れている部分を測定し、切れ刃の逃げ面塑性変形量とした。また、逃げ面塑性変形量が0.04mm以上であった時、損耗状態を刃先変形とした。
図1に、逃げ面塑性変形量の測定模式図を示す。
表6に、この測定結果を示す。
Figure 0007209216000006
また、前記本発明工具1~4、比較例工具1~4の切れ刃表面に、表7に示す平均層厚の硬質被覆層をPVD法あるいはCVD法で被覆形成し、本発明表面被覆WC基超硬合金製切削工具(以下、「本発明被覆工具」という)1~4、比較例表面被覆WC基超硬合金製切削工具(以下、「比較例被覆工具」という)1~4を作製した。
上記の各被覆工具について、以下に示す、湿式連続切削加工試験を実施し、切れ刃の逃げ面塑性変形量を測定するとともに、切れ刃の損耗状態を観察した。
切削条件:
被削材:JIS・SUS304(HB170)の丸棒、
切削速度:190m/min、
切り込み:2.0mm、
送り:0.5mm/rev、
切削時間:4分、
湿式水溶性切削油使用。
表8に、切削試験の結果を示す。
Figure 0007209216000007
Figure 0007209216000008
表6及び表8に示される試験結果によれば、本発明工具および本発明被覆工具は、寿命に影響を及ぼす重度のチッピングを発生することなく、すぐれた耐塑性変形性を発揮することが分かる。
これに対して、比較例工具および比較例被覆工具は、所定の切削時間において工具の塑性変形が甚大であり、所定の被削材寸法を満足することが困難であることがわかる。
以上のとおり、本発明工具および本発明被覆工具は、ステンレス鋼等の難削材の切削加工に供した場合、すぐれた耐塑性変形性とともに、すぐれた耐チッピング性を有するが、他の被削材、切削条件に適用した場合にも、長期の使用にわたってすぐれた切削性能を発揮し、工具の長寿命化が図られることが期待される。

Claims (3)

  1. WC基超硬合金を基体とするWC基超硬合金製切削工具において、
    前記WC基超硬合金の成分組成は、結合相形成成分としてのCoを6~14質量%とCrを0.1~1.4質量%含有し、残部はWC及び不可避不純物からなり、前記WC基超硬合金の断面について測定した結合相粒子の個数積算10%粒度における粒子面積をA10としたとき、A10以下の面積を有する微細結合相粒子の平均真円度が0.9~1.0の範囲内であることを特徴とするWC基超硬合金製切削工具。
  2. 前記WC基超硬合金は、TaC、NbC、TiC及びZrCのうちから選ばれる少なくとも1種以上を合計量で4質量%以下、さらに含有することを特徴とする請求項1に記載のWC基超硬合金製切削工具。
  3. 請求項1または2に記載のWC基超硬合金製切削工具の少なくとも切れ刃には、硬質被覆層が形成されていることを特徴とする表面被覆WC基超硬合金製切削工具。

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