JP2005200668A - サーメットおよび被覆サーメット並びにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】近年、高速切削加工の要求が高まり、サーメットのさらなる切削性能の向上が求められるようになってきた。そこで高速切削領域での耐摩耗性、耐熱衝撃性に優れるサーメットを提供することを目的とする。
【解決手段】硬質相と結合相とからなるサーメットであって、該硬質相は第1硬質相と第2硬質相とで構成されており、該第1硬質相は芯部と芯部を取り囲む厚さ10〜100nmの周辺部とで構成され、該第2硬質相は周辺部のみで構成され、該サーメットの断面における該第1硬質相の芯部の断面積の合計が、該断面全体に対して5〜50面積%であるサーメットは、高速切削領域での耐摩耗性、耐熱衝撃性に優れる。
【解決手段】硬質相と結合相とからなるサーメットであって、該硬質相は第1硬質相と第2硬質相とで構成されており、該第1硬質相は芯部と芯部を取り囲む厚さ10〜100nmの周辺部とで構成され、該第2硬質相は周辺部のみで構成され、該サーメットの断面における該第1硬質相の芯部の断面積の合計が、該断面全体に対して5〜50面積%であるサーメットは、高速切削領域での耐摩耗性、耐熱衝撃性に優れる。
Description
サーメットおよび被覆サーメット並びにそれらの製造方法に関する。その中でも特に高速切削用の切削工具として好適な耐摩耗性、耐欠損性、耐熱衝撃性にすぐれたサーメットおよび被覆サーメット並びにそれらの製造方法に関する。
従来の技術として、芯部が炭窒化チタンからなり、芯部の粒径が3μm以上である粒子の芯部面積が全硬質相の3面積%以上、かつ芯部の粒径が2μm以上である粒子の芯部面積が全硬質相の10面積%以上であることを特徴とする有芯構造の硬質相を有するサーメットがある(例えば、特許文献1を参照。)。このサーメットは、耐摩耗性と耐熱衝撃性に極めて優れているものの、芯部が粗粒ゆえに耐欠損性が不足していた。
また、周期律表4a族金属の窒化物、炭窒化物からなる単相の芯部粒子と5a族およびWを芯部に多く含む周辺部粒子からなるサーメットがある(例えば、特許文献2を参照。)。このサーメットは、芯部の周りに周辺部を有しないため、サーメットの強度が低く、耐欠損性が低いという問題がある。
従来の有芯構造を有するサーメットは、従来の切削条件において耐摩耗性と耐熱衝撃性に優れている。しかしながら、近年、高速切削加工の要求が高まり、さらなる切削性能の向上が求められるようになってきた。そこで、本発明は高速切削領域での耐摩耗性、耐熱衝撃性に優れるサーメットおよび被覆サーメット並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、サーメットの高速切削領域での耐摩耗性、耐欠損性、耐熱衝撃性の改善をはかるべく研究を行った結果、実質的に炭窒化チタンからなる微粒の第1硬質相と複合炭窒化固溶体からなる粗粒の第2硬質相と実質的に鉄族金属からなる結合相とで構成されたサーメットが、高速切削加工の切削工具として用いた場合、従来のサーメットに比較して耐摩耗性、耐欠損性、耐熱衝撃性に優れることを見出した。そして、更なる切削速度の高速化を計るべく研究を続けた結果、サーメットの断面組織の観察面における第1硬質相の芯部の断面積の合計が観察面全体に対して5〜50面積%とすることで、極めて良好な性能を示すことを見出した。
本発明のサーメットは、周期律表4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物およびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも1種からなる硬質相:70〜97重量%と、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種を主成分とする結合相:残部とからなるサーメットであって、該硬質相は第1硬質相と第2硬質相とで構成されており、該第1硬質相は芯部と芯部を取り囲む厚さ10〜100nmの周辺部とで構成され、該第2硬質相は周辺部のみで構成され、該芯部は炭窒化チタンに含まれる窒素と炭素の合計に対する窒素の割合(N/(N+C))が原子比で0.4≦(N/(N+C))≦0.95である炭窒化チタンからなり、該周辺部はチタン以外の周期律表4a,5a,6a族金属の中から選ばれた少なくとも1種とチタンとの複合炭窒化物固溶体とからなり、該サーメットの断面における該第1硬質相の芯部の断面積の合計が、該断面全体に対して5〜50面積%であることを特徴とする。
本発明のサーメットは、周期律表4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物およびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも1種からなる硬質相と、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種を主成分とする結合相とで構成される。硬質相量がサーメット全体に対して70重量%未満では相対的に軟質な結合相量が増えるため耐摩耗性が低下し、逆に硬質相量が97重量%を超えると耐欠損性が低下するため、硬質相量をサーメット全体に対して70〜97重量%とし、残部を結合相とした。
本発明のサーメットの硬質相は、第1硬質相と第2硬質相とからなるが、第1硬質相を走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて詳細に観察すると、第1硬質相は炭窒化チタンの芯部とチタン以外の周期律表4a,5a,6a族金属の中から選ばれた少なくとも1種とチタンとの複合炭窒化物固溶体の周辺部からなる有芯構造を有する。芯部をなす炭窒化チタンとして具体的には、Ti(C,N)を挙げることができる。周辺部をなすチタン以外の周期律表4a,5a,6a族金属の中から選ばれた少なくとも1種とチタンとの複合炭窒化物固溶体として具体的には、(Ti,Mo)(C,N)、(Ti,Mo,W)(C,N)、(Ti,Ta,W,Mo)(C,N)、(Ti,Nb,W,Mo)(C,N)、(Ti,Ta,Nb,W,Mo)(C,N)、(Ti,W)(C,N)、(Ti,Ta,W)(C,N)、(Ti,Nb,W)(C,N)、(Ti,Ta,Nb,W)(C,N)などが挙げられる。なお、第1硬質相は、化学量論組成または非化学量論組成であり、具体的には、第1硬質相における金属元素の合計に対する非金属元素の合計の割合xは、原子比で0.7≦x≦1.05の範囲内にある。
窒素は鉄との反応性が低いため炭窒化チタンに含まれる窒素量を増加させると鉄系材料との耐摩耗性を改善させる。炭窒化チタンに含まれる窒素と炭素の合計に対する窒素の割合(N/(N+C))が原子比で0.4未満であれば、耐摩耗性の改善効果が少なく、逆に0.95を超えると焼結性の低下による強度低下が著しくなる。したがって0.4≦(N/(N+C))≦0.95とした。
しかし窒素を多く含む炭窒化チタンの芯部は液相との濡れ性が低いため、巣孔の発生によって強度の低下を引き起こす。そこで、第1硬質相の周辺部の厚さは10nm以上としたが、この周辺部は一方で耐摩耗性を低下させるため、100nm以下とした方がよい。したがって、第1硬質相の周辺部の厚さを10〜100nmとした。
第2硬質相は、チタン以外の周期律表4a,5a,6a族金属の中から選ばれた少なくとも1種とチタンとの複合炭窒化物固溶体からなる粒子である。具体的には(Ti,Mo)(C,N)、(Ti,Mo,W)(C,N)、(Ti,Ta,W,Mo)(C,N)、(Ti,Nb,W,Mo)(C,N)、(Ti,Ta,Nb,W,Mo)(C,N)、(Ti,W)(C,N)、(Ti,Ta,W)(C,N)、(Ti,Nb,W)(C,N)、(Ti,Ta,Nb,W)(C,N)などが挙げられる。しかし、第2硬質相を粗粒とするためには、5a族金属の中では、タンタルよりもニオブのほうが好ましい。これはニオブのほうがタンタルよりも粒成長を促進する効果が高いためである。なお、第2硬質相は、化学量論組成または非化学量論組成であり、具体的には、第2硬質相における金属元素の合計に対する非金属元素の合計の割合yは原子比で0.7≦y≦1.05の範囲内にある。
結合相は、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種を主成分とする。ここで、鉄族金属とは、コバルト、鉄、ニッケルをいう。結合相としては、鉄を主成分とした結合相よりもコバルトおよび/またはニッケルを主成分とした結合相が耐熱性、耐食性、および硬質相とのぬれ性が高いため好ましい。なお、結合相の鉄族金属に硬質相成分が0.1〜20重量%固溶する場合がある。この発明において結合相は、鉄族金属の中の少なくとも1種または鉄族金属の中の少なくとも1種に鉄族金属以外に硬質相成分が0.1〜20重量%固溶している合金である。
サーメットの断面組織の観察面における第1硬質相の炭窒化チタンの芯部の断面積の合計は、観察面全体に対して5面積%未満とすると耐摩耗性が減少し、50面積%を超えると強度低下によって耐欠損性が減少するため、5〜50面積%とした。その中でも10〜40面積%とするとさらに好ましく、20〜25面積%であるとさらに好ましい。このような耐摩耗性と耐欠損性を向上させる効果は、2種類以上の金属元素を含む複合固溶体粉末を原料とするよりも、Ti(C,N)、WC、TaC、NbC等で代表されるような1種類の金属元素を含む金属化合物粉末を原料とすることで得られやすい。
サーメットへのモリブデン添加は、焼結初期の炭窒化チタンの粒成長を抑制するため極めて有効である。モリブデンをサーメット全体に対して0.5重量%未満の添加では粒成長抑制効果が低く、3.5重量%を超えて添加すると耐摩耗性が低下するため、モリブデン量は、サーメット全体に対して0.5〜3.5重量%が好ましい。また、モリブデンの添加は、第1硬質相の周辺部の形成を容易にするため、サーメットの強度向上においても有効であり耐欠損性を向上させる。
周期律表5a族金属の中ではタンタル、ニオブが耐熱衝撃性の向上のためにサーメットに添加されるが、焼結初期の複合炭窒化物固溶体からなる第2硬質相の粒成長を促進するためにはタンタルよりもニオブの方が好ましい。第2硬質相を粒成長させることで強度が高くなり耐欠損性が向上する。したがって、サーメットに含まれるニオブに対するタンタルの割合(Ta/Nb)は原子比で0≦(Ta/Nb)≦1が好ましい。なお、5a族金属全体に占めるニオブの割合が原子比で0.3未満であると粒成長の促進効果が低くなる。したがって、周期律表5a族金属全体に占めるニオブの割合(Nb/5a族)は原子比で0.3≦(Nb/5a族)≦1が好ましい。ニオブ量はサーメット全体に対して1重量%未満の添加では粒成長促進効果が低く、25重量%を超えて添加すると強度が低下するため、1〜25重量%が好ましい。
第1硬質相の平均粒径aが、0.05μm未満であると耐摩耗性が低下し、1μmを超えると耐欠損性が低下する。したがって第1硬質相の平均粒径aは、0.05〜1μmが好ましい。
本発明の被覆サーメットは、本発明のサーメットの表面に硬質膜を被覆したものであり、硬質膜は周期律表4a,5a,6a族金属、アルミニウム、シリコンの炭化物、窒化物、酸化物、ホウ化物およびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも1種からなり、具体的にはTiN、TiC、Ti(C,N)、(Ti,Al)N、Al2O3などを挙げることができる。
本発明のサーメットおよび被覆サーメットは、耐摩耗性、耐欠損性、耐塑性変形性を生かして、切削工具として用いられると好ましく、その中でも鋼加工用切削工具として用いられるとさらに好ましい。
本発明のサーメットの製造方法は、(A)炭窒化チタンに含まれる窒素と炭素の合計に対する窒素の割合(N/(N+C))が原子比で0.4≦(N/(N+C))≦0.95である炭窒化チタンの粉末:35〜92重量%、炭窒化チタンを除く周期律表4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物およびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも1種の粉末:5〜50重量%、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種の粉末:3〜30重量%からなり合計で100重量%となる平均粒径0.5〜1μmの混合物を準備する混合工程と、(B)混合物を圧力13〜13000Paの一酸化炭素雰囲気にて1250〜1300℃の範囲の所定の第1保持温度で保持する第1保持工程と、(C)混合物を圧力13〜4000Paの窒素雰囲気にて1300〜1350℃の範囲の所定の第2保持温度で保持する第2保持工程と、(D)混合物を1400〜1600℃の範囲の所定の焼結温度にて保持する焼結工程と、(E)焼結工程を終えた混合物を常温に冷却する冷却工程と、を含むことを特徴とする。
本発明のサーメットの製造方法を詳しく説明すると、具体的には、混合工程において、炭窒化チタンに含まれる窒素と炭素の合計に対する窒素の割合(N/(N+C))が0.4≦(N/(N+C))≦0.95である市販の平均粒径0.5〜1μmの炭窒化チタン粉末:35〜92重量%、炭窒化チタン粉末を除く周期律表4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物およびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも1種の粉末:5〜50重量%、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種の粉末:3〜30重量%で合計が100重量%となるように配合し、一括してステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に装入し80〜120時間の混合・粉砕して、平均粒径0.5〜1μmの混合物を得る。
混合物の平均粒径を0.5〜1μmとしたが、これは、炭窒化チタンの比表面積が大きいほど鉄系金属からなる結合相に溶解しやすくなることを利用して第1硬質相を微細化するためである。
第1昇温工程において、混合物を圧力13Pa以下の真空または圧力13〜4000Paの窒素雰囲気にて室温から1250〜1300℃の範囲の所定の第1保持温度まで昇温する。このとき、混合物を圧力13Pa以下の真空にて室温から1200℃まで昇温し、圧力13〜4000Paの窒素雰囲気にて1200℃から1250〜1300℃の範囲の所定の第1保持温度まで0.5〜1.0℃/minの昇温速度で昇温すると、複合炭窒化物固溶体からなる第2硬質相が粒成長し、第1硬質相の周辺部の成長が抑制されるため好ましい。
第1保持工程において、混合物を圧力13〜13000Paの一酸化炭素雰囲気にて1250〜1300℃の範囲の所定の第1保持温度で0.5〜2時間保持する。これは、第1硬質相の粒径が減少するのを抑制するためである。
第2昇温工程において、1250〜1300℃の範囲の所定の第1保持温度から混合物を圧力13〜4000Paの窒素雰囲気にて1300〜1350℃の範囲の所定の第2保持温度まで昇温する。
第2保持工程において、混合物を圧力13〜4000Paの窒素雰囲気にて1300〜1350℃の範囲の所定の第2保持温度で0.5〜2時間保持する。これは、第2硬質相を粒成長させることによって、第1硬質相の周辺部の成長を抑制するためである。
第3昇温工程において、混合物を圧力13〜4000Paの窒素雰囲気にて1300〜1350℃の範囲の所定の第2保持温度から1400〜1600℃の範囲の所定の焼結温度まで昇温する。
焼結工程において、混合物を圧力13〜4000Paの窒素雰囲気にて1400〜1600℃の範囲の所定の焼結温度で0.5〜2時間保持して焼結する。焼結工程を終えた後、混合物を常温に冷却する冷却工程を経ることにより、本発明のサーメットを製造することができる。なお、混合物に含まれる窒素含有量によって、保持工程および焼結工程の保持温度、窒素圧力、保持時間を調節する。
上記の製造方法で得られた本発明のサーメットの表面に従来のPVD法、CVD法を用いて硬質膜を被覆することで本発明の被覆サーメットが得られる。
図1は、本発明サーメットの断面組織の概念図である。黒色部分が芯部、斑点部分が周辺部、白色部分が結合相を示す。図2は、有芯構造を有する従来のサーメットの断面組織の概念図である。図3は、周期律表4a族金属の窒化物、炭窒化物からなる単相の芯部粒子と周辺部粒子からなる従来のサーメットの断面組織の概念図である。本発明のサーメットは、従来の有芯構造を有するサーメットに比較して第1硬質相の芯部を取り囲む周辺部の厚さが薄く、第1硬質相の粒径に比較して第2硬質相の粒径が粗大になっている。
本発明のサーメットは、従来のサーメットと比較して耐摩耗性、耐欠損性に優れる。特に本発明のサーメットは高速切削における耐摩耗性、耐欠損性、耐熱衝撃性に優れる。
試料A1〜A10は、平均粒径0.5〜1μmのTi(C,N)(重量比でTiC/TiN=40/60〜50/50)、WC、NbC、TaC、Mo2C、Co、Niの各原料粉末を使用し、それぞれ表1に示した配合組成に調整してステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に装入し100時間の粉砕・混合を行なった。試料B1〜B10は、平均粒径2〜3μmのTi(C,N)(重量比でTiC/TiN=40/60〜50/50)、WC、NbC、TaC、Mo2C、Co、Niの各原料粉末を使用し、それぞれ表1に示した配合組成に調整してステンレス製ポットにアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に装入し、30時間の粉砕・混合を行なった。乾燥後、得られたそれぞれの混合粉末を、JIS−B4120に記載のSPMN120308形状用金型でもって196MPaの圧力でプレス成形した。
得られた試料A1〜A10の粉末成形体を焼結炉内に保持した。粉末成形体を圧力13Pa以下の真空中にて室温から1250℃まで第1昇温工程として昇温した後、第1保持温度1250℃で一酸化炭素ガス中にて1時間保持した。次いで圧力13〜4000Paの窒素気流中で1250℃から1350℃まで第2昇温工程として昇温した後、第2保持温度1350℃で圧力1330Paの窒素雰囲気にて1時間保持した。第3昇温工程として1350℃から1500℃まで圧力133Paの窒素雰囲気にて昇温した後、焼結温度1500℃で圧力133Paの窒素雰囲気にて1時間保持して焼結を行った。焼結後常温に冷却して試料A1〜A10を得た。試料B1〜B10の粉末成形体は、従来から行われているように1350℃まで圧力13Pa以下の真空中にて昇温し、1350℃から1500℃までを1333Paの窒素雰囲気にて昇温した後、焼結温度1500℃で圧力1330Paの窒素雰囲気にて1時間保持して焼結を行った。焼結後常温に冷却して試料B1〜B10を得た。
得られた各試料について、試料表面から1mmの深さまで研削にて除去した後、研削面を1.5μmのダイヤモンドペーストで鏡面研摩し、鏡面研磨面を走査型電子顕微鏡にて観察し、画像処理解析装置等を用いることで、第1硬質相の平均粒径および周辺部の厚さ、第1硬質相の炭窒化チタン芯部の断面積の合計を測定した。観察が困難な場合には、酸を用いて観察面をエッチングして測定したり、透過型電子顕微鏡を用いて測定した。こうして測定した値は表2に記載した。炭窒化チタンに含まれる炭素量、窒素量は、炭窒化チタン粒子の10粒子をオージェ電子分光法にてそれぞれ測定し、原子比で(N/(N+C))比を求めた。各試料の鏡面研磨面において蛍光X線分析を行い、Mo量、Nb量、Ta量を測定した。これらの結果は表2に記載した。
測定したMo量、Nb量、Ta量から原子比における(Ta/Nb)比、(Nb/5a族)比を計算し、表3に記載した。また、得られた各試料の上下面を#230のダイヤモンド砥石にて研削加工し、さらに切れ刃稜線部に0.15×−30°のチャンファーホーニング処理を施して切削試験用試料に加工した。A1,A2の切削試験用試料を用いて、通常のPVD法で膜厚3μmのTiAlN膜を被覆し、それぞれA11,A12を得た。こうして得られた切削試験用試料について切削試験1を行い逃げ面摩耗量を測定し、切削試験2を行い欠損数を測定した。これらの結果について表3に併記した。
切削試験1(耐摩耗性試験)
被削材:S45C
切削速度:300m/min
切り込み:1.0mm
送り:0.3mm/rev.
切削油:使用せず(乾式切削)
切削時間:20min
被削材:S45C
切削速度:300m/min
切り込み:1.0mm
送り:0.3mm/rev.
切削油:使用せず(乾式切削)
切削時間:20min
切削試験2(耐欠損性試験)
被削材:SCM440
切削速度:150m/min
切り込み:2.0mm
送り:0.40mm/rev.
切削油:使用せず(乾式切削)
試験回数は各サンプル10回
被削材:SCM440
切削速度:150m/min
切り込み:2.0mm
送り:0.40mm/rev.
切削油:使用せず(乾式切削)
試験回数は各サンプル10回
上記の結果から明らかなように第1硬質相の周辺部厚さを10〜100nmとし、芯部の断面積を断面積全体に対して5〜50面積%とした本発明品は高い耐欠損性と高い耐摩耗性を兼ね備えることが分かる。本発明品に硬質膜を被覆すると、さらに耐摩耗性を向上させることができる。
1…第1硬質相
2…第2硬質相
3…結合相
2…第2硬質相
3…結合相
Claims (11)
- 周期律表4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物およびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも1種からなる硬質相:70〜97重量%と、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種を主成分とする結合相:残部とからなるサーメットであって、該硬質相は第1硬質相と第2硬質相とで構成されており、該第1硬質相は芯部と芯部を取り囲む厚さ10〜100nmの周辺部とで構成され、該第2硬質相は周辺部のみで構成され、該芯部は炭窒化チタンに含まれる窒素と炭素の合計に対する窒素の割合(N/(N+C))が原子比で0.4≦(N/(N+C))≦0.95である炭窒化チタンからなり、該周辺部はチタン以外の周期律表4a,5a,6a族金属の中から選ばれた少なくとも1種とチタンとの複合炭窒化物固溶体とからなり、該サーメットの断面における該第1硬質相の芯部の断面積の合計が、該断面全体に対して5〜50面積%であるサーメット。
- 前記第1硬質相の平均粒径aが0.05〜1μmである請求項1に記載のサーメット。
- 前記サーメットに含まれるモリブデン量が0.5〜3.5重量%である請求項1または2に記載のサーメット。
- 前記サーメットに含まれるニオブ量が1〜25重量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載のサーメット。
- 前記サーメットに含まれるニオブに対するタンタルの割合(Ta/Nb)が原子比で0≦(Ta/Nb)≦1である請求項1〜4のいずれか1項に記載のサーメット。
- 前記サーメットに含まれる5a族金属全体に占めるニオブの割合(Nb/5a族)が原子比で0.3≦(Nb/5a族)≦1である請求項1〜5のいずれか1項に記載のサーメット。
- 前記サーメットは鋼加工用切削工具として用いられる請求項1〜6のいずれか1項に記載のサーメット。
- 前記サーメットの表面に硬質膜を被覆した請求項1〜6のいずれか1項に記載の被覆サーメット。
- 前記被覆サーメットは鋼加工用切削工具として用いられる請求項8に記載の被覆サーメット。
- サーメットの製造方法において、(A)炭窒化チタンに含まれる窒素と炭素の合計に対する窒素の割合(N/(N+C))が原子比で0.4≦(N/(N+C))≦0.95である炭窒化チタンの粉末:35〜92重量%、炭窒化チタンを除く周期律表4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物およびこれらの固溶体の中から選ばれた少なくとも1種の粉末:5〜50重量%、鉄族金属の中から選ばれた少なくとも1種の粉末:3〜30重量%からなり合計で100重量%となる平均粒径0.5〜1μmの混合物を準備する混合工程と、(B)混合物を圧力13〜13000Paの一酸化炭素雰囲気にて1250〜1300℃の範囲の所定の第1保持温度で保持する第1保持工程と、(C)混合物を圧力13〜4000Paの窒素雰囲気にて1300〜1350℃の範囲の所定の第2保持温度で保持する第2保持工程と、(D)混合物を1400〜1600℃の範囲の所定の焼結温度にて保持する焼結工程と、(E)焼結工程を終えた混合物を常温に冷却する冷却工程と、を含むことを特徴とするサーメットの製造方法。
- 請求項10に記載の方法で得られたサーメットの表面に硬質膜を被覆する被覆サーメットの製造方法。
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