JP2012041595A - サーメット - Google Patents

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Kazuhiro Hirose
和弘 広瀬
Hideki Moriguchi
秀樹 森口
Keiichi Tsuda
圭一 津田
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Abstract

【課題】耐欠損性に優れると共に、被削材の加工面の品位に優れた切削加工が可能な切削工具の材料に適したサーメット、及び被覆サーメット工具を提供する。
【解決手段】周期律表4,5,6族金属の炭窒化物などの化合物からなる硬質相が鉄族金属を主成分とする結合相により結合されてなるサーメットである。硬質相として、組成や形態が異なる4種の粒子を具えることでこのサーメットは、高い耐摩耗性を有しながら、耐欠損性及び耐溶着性にも優れ、かつ良好な加工面品位が得られる。第1硬質相1は、Ti(C,N)の単相粒子、第2硬質相2は、Ti(C,N)からなる芯部2aと、芯部2aの全体を覆う周辺部2bとを有する有芯粒子、第3硬質相3は、Ti,Wを含む複合炭窒化物固溶体から構成され、芯部3aのW濃度が周辺部3bよりも高い有芯粒子、第4硬質相4は、Ti,Wを含む複合炭窒化物固溶体からなる単相粒子である。
【選択図】図1

Description

本発明は、切削工具の構成材料に適したサーメット、及びこのサーメットを基材とする被覆サーメット工具に関する。特に、耐欠損性に優れると共に、被削材の加工面の品位に優れた切削加工が可能な切削工具が得られるサーメットに関するものである。
従来、切削工具の基材材料として、炭化チタン(TiC)や炭窒化チタン(Ti(C,N))を主たる硬質相とし、コバルト(Co),ニッケル(Ni)といった鉄族元素で結合したサーメットが利用されている。特許文献1では、単相構造の粒子と、芯部が周辺部に覆われた有芯構造の粒子とを硬質相とするサーメットを開示している。特許文献2,3では、芯部と、芯部を覆う周辺部とを有する有芯構造の粒子を硬質相とするサーメットを開示している。
特開平02-190438号公報 特開2004-292842号公報 特開2006-131975号公報
サーメットを基材とするサーメット工具は、炭化タングステン(WC)を主たる硬質相とする超硬合金からなる工具と比較して、一般に耐摩耗性に優れ、被削材の加工面(仕上げ面)が美麗であるものの、靱性が低く、耐欠損性に劣る。そのため、突発的な欠損が生じ易く、工具寿命が安定しない。近年、切削加工において被削材の加工面の品位を更に向上すると共に、サーメット工具の弱点である耐欠損性を向上して、工具寿命を安定化することが求められている。
硬質相が、周辺部を有していない単相構造の粒子から構成されている従来のサーメットでは、結合相との濡れ性が悪く、耐欠損性に劣る。
硬質相が有芯構造の粒子から構成されている従来のサーメットでは、芯部と周辺部との境界を通って亀裂が進展し易く、この亀裂により、耐欠損性の低下を招く。特に、芯部が微細であると、亀裂の進展を抑制することが困難であり、耐欠損性の向上が難しい。
そこで、本発明の目的の一つは、耐欠損性に優れると共に、加工面の品位に優れた切削加工が可能な切削工具の構成材料に適したサーメットを提供することにある。また、本発明の他の目的は、上記サーメットからなる基材を具える被覆サーメット工具を提供することにある。
本発明者らは、サーメット中に特定の範囲で硬質相が存在し、かつこの硬質相を構成する粒子として、組成や形態の異なる4種の粒子が存在する場合、高い耐摩耗性を有すると共に、耐欠損性及び耐溶着性の著しい向上が望めるとの知見を得た。また、耐溶着性などを向上することで、被削材の面品位をも向上することができる。本発明は、上記知見に基づき、硬質相の含有量、及び4種の硬質相を規定する。
本発明のサーメットは、周期律表4,5,6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物及びこれらの固溶体からなる群から選択される1種以上の化合物からなる硬質相が鉄族金属を主成分とする結合相により結合されてなるサーメットである。このサーメットは、上記硬質相を70質量%以上97質量%以下含有し、残部が実質的に結合相からなる。また、このサーメットは、上記硬質相として、以下の第1硬質相、第2硬質相、第3硬質相、及び第4硬質相を含有する。そして、サーメットの任意断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による組織写真において、上記硬質相の総面積に対して、60%以上90%以下の硬質相は、粒径が1μm超3μm以下の粗粒からなり、残部の硬質相は、粒径が1.0μm以下の微粒からなる。上記粗粒は、第1硬質相と第2硬質相の少なくとも一方、第3硬質相、及び第4硬質相で構成され、上記微粒は、実質的に第1硬質相及び第2硬質相から構成されている。
第1硬質相:炭窒化チタン(Ti(C,N))の単相のみからなる、又はTi(C,N)の周囲の一部がチタン(Ti)と、周期律表4,5,6族金属(但し、Tiを除く)から選択された1種以上の金属との複合炭窒化物固溶体で覆われている単相構造の硬質相である。
第2硬質相:芯部と、この芯部の周囲の全体を覆う周辺部とを具える有芯構造の硬質相である。上記芯部がTi(C,N)から構成され、上記周辺部が、Tiと、周期律表4,5,6族金属(但し、Tiを除く)から選択された1種以上の金属との複合炭窒化物固溶体から構成されている。
第3硬質相:芯部と、この芯部の周囲の全体を覆う周辺部とを具える有芯構造の硬質相である。上記芯部及び上記周辺部は、同一の元素から構成されており、少なくともTi及びWを含む複合炭窒化物固溶体から構成されている。また、上記芯部のW濃度が上記周辺部のW濃度よりも大きい。
第4硬質相:Tiと、WもしくはWと周期律表4,5,6族金属(但し、TiとWを除く)から選択された1種以上の金属との複合炭窒化物固溶体からなる単相構造の硬質相である。
本発明サーメットは、硬質相を特定量含有すると共に、この硬質相として、上記第1硬質相、第2硬質相、第3硬質相、及び第4硬質相が共存していることで、第1硬質相〜第4硬質相のそれぞれが果たす機能を併せ持つことができる。具体的には、本発明サーメットは、高硬度な硬質相が存在することで耐摩耗性に優れると共に、結合相との濡れ性に優れる硬質相が存在することで、結合相との良好な濡れ性を維持したり、結合相が均一的に存在する組織としたりすることができ、この組織の均一化による耐摩耗性の向上や耐欠損性の向上を望むことができる。かつ、本発明サーメットは、熱特性に優れる硬質相が存在することで熱伝導性を向上することができ、熱的亀裂の抑制や耐溶着性の向上をも望める。このように本発明サーメットは、優れた耐摩耗性を有すると共に、耐欠損性及び耐溶着性の著しい向上を図ることができる。そのため、本発明サーメットにより構成される切削工具は、摩耗や欠損が生じ難いことから、工具寿命の安定化や延命化を図ることができる上に、溶着が生じ難いことで、美麗な加工面を得ることができ、被削材の加工面の品質向上を望める。以下、本発明をより詳細に説明する。
<サーメット>
《全体組成》
本発明サーメットは、70質量%以上97質量%以下の硬質相と、残部が結合相及び不可避的不純物により構成される。不可避的不純物は、原料に含有したり、製造工程で混入したりする、酸素やppmオーダーの金属元素が挙げられる。
《硬質相》
[組成]
硬質相は、周期律表4,5,6族金属から選ばれる少なくとも1種の金属元素と炭素(C)及び窒素(N)の少なくとも1種の元素との化合物、即ち、上記金属元素の炭化物、窒化物、炭窒化物及びこれらの固溶体から選択される少なくとも1種を含む。特に、本発明サーメットは、チタン炭窒化物(Ti(C,N))及びチタン(Ti)を含む炭窒化物固溶体を少なくとも含有するTi(C,N)基サーメットである。硬質相の含有量が97質量%を超えると、結合相が少な過ぎることから耐欠損性が著しく低下し、70質量%未満であると、結合相が多過ぎることから硬度が著しく低下し、耐摩耗性が劣化する。硬質相のより好ましい含有量は、80質量%以上90質量%以下である。
また、硬質相は、上述した第1硬質相、第2硬質相、第3硬質相、及び第4硬質相という組成や形態が異なる4種を含有する。具体的には、Ti(C,N)系の硬質相及びTiを含むその他の組成の硬質相、並びに単相構造の硬質相及び有芯構造の硬質相を含有する。上記4種の硬質相の存在状態は、走査型電子顕微鏡(SEM)による顕微鏡写真の濃淡により容易に判別できる。
(第1硬質相)
第1硬質相を構成する粒子は、実質的にTi(C,N)のみからなる単相構造の粒子、又はTi(C,N)の周囲の一部をTiと、Ti以外の周期律表4,5,6族金属から選択された1種以上の金属の複合炭窒化物固溶体で覆われた粒子、つまり、Ti(C,N)の周囲が上記複合炭窒化物固溶体により完全に覆われていない粒子である。第1硬質相は、後述する第3硬質相及び第4硬質相と比較してTiを多く含むことにより、硬度が高く、かつ被削材に汎用される鋼との反応性が低い。従って、サーメット中に第1硬質相が存在することで、特に、耐摩耗性及び耐溶着性の向上を達成することができる。
(第2硬質相)
第2硬質相を構成する粒子は、芯部が実質的にTi(C,N)からなり(原子割合で芯部全体の95%以上をTi(C,N)が占める)、この芯部の周囲の全体を覆う周辺部が、Tiと、Ti以外の周期律表4,5,6族金属から選択された少なくとも1種の金属との複合炭窒化物固溶体で構成される有芯構造の粒子である。周辺部の具体的な組成は、例えば、(Ti,W,Mo)(C,N),(Ti,W,Nb)(C,N),(Ti,W,Mo,Nb)(C,N),(Ti,W,Mo,Nb,Zr)(C,N)などが挙げられる。第2硬質相は、第1硬質相と異なり、芯部の周囲の全体に亘って結合相と良好な濡れ性を有する周辺部が存在することから、サーメット中の巣の発生を低減して組織の均質化を図ることで、硬度を安定化させることができる。また、上記組織の均質化により、耐欠損性といった靭性の更なる向上が望める。従って、サーメット中に第2硬質相が存在することで、特に、耐摩耗性及び耐欠損性の効果を安定させることができる。
(第3硬質相)
第3硬質相を構成する粒子は、芯部及び周辺部とが同一の元素から構成された有芯構造の粒子であり、少なくともTi及びWを含む複合炭窒化物固溶体からなる。かつ、この粒子は、芯部のW濃度が周辺部のW濃度よりも大きい。具体的な組成は、例えば、(Ti,W)(C,N)、(Ti,W,Mo)(C,N)、(Ti,W,Nb)(C,N)、(Ti,W,Mo,Nb)(C,N)などが挙げられる。第3硬質相は、第1硬質相や第2硬質相と比較してWを多く含有することで、高い硬度を維持したまま、熱伝導率の向上が望めることから、熱的強度、耐熱亀裂性、耐欠損性、耐塑性変形性を向上することができる。
(第4硬質相)
第4硬質相を構成する粒子は、Tiと、WもしくはWと周期律表4,5,6族金属(但し、TiとWを除く)から選択された少なくとも1種の金属との複合炭窒化物固溶体で構成される単相構造の粒子である。この粒子は、第3硬質相と異なり、芯部と周辺部との明確な境界を有しておらず、粒子全体が一様な組成からなる。第4硬質相の具体的な組成は、例えば、(Ti,W)(C,N)、(Ti,W,Mo)(C,N)、(Ti,W,Nb)(C,N)、(Ti,W,Mo,Nb)(C,N)が挙げられる。第4硬質相中のW濃度は、第3硬質相と異なり、分布に大きな変化が見られず(Wの分布が見られず)、第4硬質相の全体に亘って均一的にWが存在する。そのため、サーメット中に第4硬質相が存在することで、硬度が若干低下するものの、硬度が一様になって硬質相内での亀裂進展が起こり難い上に、熱伝導率の向上が望めることから、耐熱亀裂性及び耐欠損性を向上することができる。
硬質相が実質的に第1硬質相及び第2硬質相のみで構成される場合、耐欠損性を向上することが難しい。硬質相が実質的に第1硬質相及び第3硬質相のみで構成される場合、結合相との濡れ性が悪くなるため、巣が発生し易くなり、耐欠損性が悪い。硬質相が実質的に第1硬質相及び第4硬質相のみで構成される場合も結合相との濡れ性が悪いことから巣が発生し易くなり、十分な硬度が得られなくなると共に耐欠損性が悪い。
硬質相が実質的に第2硬質相及び第3硬質相のみで構成される場合、従来からの問題である芯部と周辺部との境界を通る亀裂の進展を抑制することが困難であり、期待する耐欠損性が得られない。硬質相が実質的に第2硬質相及び第4硬質相のみで構成される場合、耐欠損性の向上が望めない。
硬質相が実質的に第1硬質相及び第2硬質相及び第3硬質相で構成され、第4硬質相を含有しない場合、Wを含有する第3硬質相の存在割合が相対的に増加する。Wが多く存在すると、切削中に被削材(特に鋼)と反応し易く、溶着が生じ易くなる。そのため、被削材の加工面の劣化を招く。つまり、上記第1硬質相、第2硬質相、及び第3硬質相に加えて、第4硬質相が存在することで、被削材の加工面の品位(光沢性)に優れると共に、この優れた品位を安定して保持することができる。
硬質相が実質的に第1硬質相及び第2硬質相及び第4硬質相で構成され、第3硬質相を含有しない場合、熱伝導率の向上は望めるものの、硬度の低下を引き起こし、亀裂が進展し易くなることから、欠損発生率が高くなる。つまり、上記第1硬質相、第2硬質相、及び第4硬質相に加えて、第3硬質相が存在することで、熱伝導率を更に向上して、熱的亀裂やこの亀裂の進展を低減して、耐欠損性を効果的に向上することができる。
硬質相が実質的に第2硬質相及び第3硬質相及び第4硬質相で構成され、第1硬質相を含有しない場合、第1硬質相が存在することで望める耐摩耗性及び耐溶着性の向上の効果が得られ難く、特に被削材の加工面の光沢性に劣る。
硬質相が実質的に第1硬質相及び第3硬質相及び第4硬質相で構成され、第2硬質相を含有しない場合、即ち、サーメット中の硬質相の主成分であるTi(C,N)系の硬質相が第1硬質相のみである場合、上述のように結合相との濡れ性が極端に悪くなって巣が発生し易いことから、機械的特性の劣化を招く。
本発明サーメットは、第1硬質相及び第2硬質相に加えて、特に、第3硬質相と第4硬質相とが同時に存在することにより、熱的強度を維持しつつ、鋼との反応を抑制させることが可能となる。そのため、本発明サーメットを基材とする切削工具は、熱的な塑性変形にする耐性の向上、及び耐熱亀裂性の向上、並びに耐溶着性の向上が望めることから、被削材の加工面の性状を向上することができると期待される。
[粒径]
硬質相は、粗大な粒子と微細な粒子、特に、粒径が1μm以下の微粒と、粒径が1μm超3μm以下の粗粒とが混在していることが好ましい。更に、硬質相の総面積に対して60%以上90%以下の硬質相が上記粗粒からなり、硬質相の残部が上記微粒からなることが好ましい。また、上記粗粒は、上記第1硬質相と第2硬質相の少なくとも一方、第3硬質相、及び第4硬質相で構成され、上記微粒は、実質的に第1硬質相及び第2硬質相から構成されていることが好ましい。
このような混粒組織では、粗大な粒子間につくられる隙間を埋めるように微細な粒子が存在することで、硬度の向上や破壊靱性の向上を図ることができる。粗大な粒子の粒径が1μm超、かつ微細な粒子の粒径が1μm以下であることで、粗大な粒子間に十分な隙間が設けられ、この隙間に微細な粒子が介在できるため、上述した硬度の向上や破壊靭性の向上の効果が得られる。また、粗大な粒子の粒径が3μm以下であることで、粒子間に存在する結合相が過剰にならず、大きな結合相プールが存在することによる硬度の低下や破壊靭性の劣化を低減できる。微細な粒子の粒径は特に0.1μm以上0.8μm以下が好ましい。
また、上記粗粒の面積率が60%以上であることで、適度に粗粒が存在するため、亀裂の進展を抑制する効果が大きく、靭性を高められ、90%以下であることで、粗大な粒子間につくられる隙間に微細な粒子が十分に存在して、硬度の向上や亀裂の進展を抑制することができる。更に、微細な粒子が適度に存在することで、サーメットの最表面の面粗さを小さくすることができ、優れた切削性能が得られる。上記粗粒の面積率のより好ましい範囲は、70%以上85%以下である。更に、微細な粒子の総面積に対して、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくはほぼ全てが第1硬質相及び第2硬質相から構成されることで、高硬度で微細なTi(C,N)が十分に存在して、耐摩耗性を高められる。本発明で規定する粒径、面積、及び面積率の求め方は後述する。
硬質相の粒子の粒径及び面積率の調整は、例えば、原料粉末の大きさや添加量、製造条件(粉砕時間や焼結条件など)を調整することで行える。粉砕時間を長くすると、サーメット中の硬質相粒子が微細になる傾向にあり、焼結温度が高いと、サーメット中の硬質相粒子が粗大になる傾向にある。また、粉砕時間を長くして粉末を微細にしても、焼結温度を高くすると、粒子が成長して粗大な硬質相粒子が存在することもある。
硬質相の総面積に対して、粒径が1μm超3μm以下(粗粒)の第1硬質相の面積率をS1、粒径が1μm超3μm以下(粗粒)の第2硬質相の面積率をS2とするとき、(S1+S2)が0.1以上0.5以下を満たすことが好ましい。(S1+S2)が0.1以上であると、被削材と溶着し難く、被削材の表面に微小なムシレが発生することを低減して、被削材の加工面の性状を向上することができる上に、耐溶着性の向上により溶着による摩耗を低減して、工具の耐摩耗性を向上することができる。また、(S1+S2)が0.5以下であることで、高硬度化による靭性の低下を抑制し、欠けやチッピングを起こり難くすることができる。(S1+S2)のより好ましい範囲は、0.3以上0.5以下である。
また、粒径が1μm超3μm以下(粗粒)の第3硬質相の面積率をS3、及び粒径が1μm超3μm以下(粗粒)の第4硬質相の面積率をS4とするとき、S1/(S1+S2)が0.1以上0.4以下であり、かつS3/(S3+S4)が0.4以上0.9以下を満たすと、耐摩耗性と耐欠損性との両立が更に図れると共に、被削材の面光沢をより向上できる。このとき、S1/(S1+S2)のより好ましい範囲は、0.3以上0.4以下であり、S3/(S3+S4)のより好ましい範囲は、0.7以上0.9以下である。
粒径が1μm以下(微粒)の第1硬質相の面積をSS1、粒径が1μm以下(微粒)の第2硬質相の面積をSS2とするとき、SS1/(SS1+SS2)が0.5以上0.9以下であることが好ましい。SS1/(SS1+SS2)が0.5以上であると、微小な第1硬質相が第2硬質相よりも多く存在することで、耐摩耗性の著しい向上が望める。また、SS1/(SS1+SS2)が0.9以下であると、微細な硬質相のうち、第1硬質相の占める割合が過剰にならず、微細な第1硬質相が過剰に存在することによる濡れ性の低下、この濡れ性の低下に伴う微小な巣の発生により、硬度の劣化を引き起こす可能性が抑制できる。SS1/(SS1+SS2)のより好ましい範囲は、0.55以上0.7以下である。
サーメットの総面積(硬質相+結合相)に対して、第3硬質相の面積と第4硬質相の面積との合計の面積率が40%よりも大きいことが好ましい。この場合、熱特性が安定することから、耐熱亀裂性が向上し、引いては耐欠損性を向上することができる。特に、これら第3硬質相及び第4硬質相は、上述のように概ねが粗粒であることが好ましい。
本発明におけるサーメットの組織については、サーメットの製造過程での冷却雰囲気、圧力により、サーメットの最表面に10μm未満の異常相が観察される場合がある。この異常相の組織は、サーメットの内部の組織とは明らかに異なる。この異常相を除いた部分の組織においては、サーメットのどの任意の断面をとっても、その全体に亘って均質である。よって、本発明のサーメットは、サーメットのどの任意の断面をとっても、本発明で規定する各硬質相の粒径と面積比及びサーメットの総面積となっている。
組織における粒径と面積は、後述するサーメットの製造方法で得られた各焼結体を切断し、断面を平面研磨後、ラッピングし、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により5000倍に拡大して観察した組織写真により算出できる。その際、断面写真に示される各硬質相の一定方向から粒子を平面に投影したときの粒子の投影面積を二等分する線分の長さ(Martin径)を粒径とし、有芯構造の粒子は、周辺部を含んだ状態で粒径を求め、求めた粒径を基に面積を求めたが、画像処理における二値化処理により面積を測定することも可能である。
《結合相》
結合相は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)という鉄族金属から選ばれた少なくとも1種の金属を主成分とする。「主成分」とは、結合相が実質的に上記鉄族金属の中から選ばれた1種以上の金属のみで構成される場合、又は、上記鉄族金属の中から選ばれた1種以上の金属に上述した硬質相の構成元素を、結合相の総質量に対して0.1質量%以上20質量%以下固溶した合金、即ち、結合相の80質量%以上が鉄族金属から構成される場合とする。結合相が硬質相の構成元素を固溶している場合、固溶強化により、靭性を向上することができ、耐欠損性を高められる傾向にある。また、結合相は、Co及びNiの少なくとも一方が主成分(結合相の総質量の80質量%以上)であると、硬質相との濡れ性が高い上に耐食性に優れることから、切削工具の構成材料により好ましいサーメットになる。
結合相にNi及びCoの双方を含有する場合、特に、結合相中のNiとCoとの存在質量比(Coの質量に対するNiの質量の比)をNi/Coとするとき、Ni/Coが0.7以上1.5以下であることが好ましい。Ni/Coが0.7以上1.5以下を満たすことで、濡れ性の低下を低減して高い靭性を維持できると共に、硬度の低下を低減して、高い強度を維持することができる。特に好ましいNi/Coは、0.8以上1.2以下である。Ni/Coの調整は、例えば原料に用いるCo粉末やNi粉末の添加量を調整することで行える。
[その他の含有元素]
本発明サーメットは、モリブデン(Mo)を含有することで更に濡れ性が向上し、耐欠損性が安定する。Moを含有する場合、Moは芯部の周囲の全体を覆う周辺部と結合相中に固溶し、存在することでTiCNと結合相との濡れ性を向上させる。本発明サーメットにおいては、第2硬質相の周辺部、第3硬質相の芯部と周辺部ならびに第4硬質相と結合相中に存在する。Moの含有量は、0.01質量%以上2.0質量%以下が好ましい。Moの含有量が0.01質量%以上であると、上述のようにサーメット全体として濡れ性を向上して、硬度や靭性を向上でき、2.0質量%以下とすることで、第1硬質相が形成され難くなって相対的に第2硬質相,第3硬質相が多くなることを抑制できる。そのため、従来からの課題である硬質相の芯部と周辺部との境界を通る亀裂の進展を抑制して、期待する耐欠損性を得ることができる。Moのより好ましい含有量は、0.5質量%以上1.5質量%以下である。Moを含有していなくてもよい。
<サーメット工具>
《基材》
上記構成を具える本発明サーメットは、上述のように4種の硬質相を具えることで、耐摩耗性だけでなく、耐欠損性及び耐溶着性にも優れ、良好な仕上げ面が望まれる切削工具(サーメット工具)の基材材料に好適に利用することができる。
《硬質膜》
上記基材は、その表面の少なくとも一部に被覆された硬質膜を具えてもよい。硬質膜は、少なくとも刃先及びその近傍に具えることが好ましく、基材表面の全面に亘って具えていてもよい。硬質膜は、1層でも多層でもよく、合計厚さは1〜20μmが好ましい。硬質膜の形成方法は、熱CVD法といった化学蒸着法(CVD法)、アークイオンプレーティング法といった物理蒸着法(PVD法)のいずれも利用できる。
硬質膜の組成は、周期律表4,5,6族の金属,アルミニウム(Al),及びシリコン(Si)からなる群から選択される1種以上の元素と、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)及び硼素(B)からなる群から選択される1種以上の元素との化合物、即ち、上記金属などの元素の炭化物、窒化物、酸化物、硼化物、及びこれらの固溶体からなる化合物、立方晶窒化ホウ素(cBN)、ダイヤモンド、及びダイヤモンドライクカーボン(DLC)からなる群から選択される1種以上が挙げられる。具体的な膜質は、Ti(C,N),Al2O3,(Ti,Al)N,TiN,TiC,(Al,Cr)Nなどが挙げられる。
<サーメットの製造方法>
サーメットは、一般に、原料の準備→原料の粉砕及び混合→成形→焼結という工程で製造される。本発明サーメットは、後述する原料粉末を用い、粉砕及び混合時間や焼結条件を調整することで、製造することができる。
《原料の準備》
原料には、周期律表4,5,6族金属から選ばれる少なくとも1種の金属と、炭素(C)及び窒素(N)の少なくとも1種の元素との化合物からなる化合物粉末と、結合相を構成する粉末、代表的には鉄族金属粉末とを用いる。これらの粉末として、微細な粉末と比較的粗大な粉末とを用いることで、上述のような粗粒と微粒とが混合された硬質相を有するサーメットが得られ易い。粉末の大きさは、硬質相の粒子の大きさを考慮して適宜選択するとよい。
第1硬質相及び第2硬質相を生成するためには、例えば、Ti(C,N)粉末を用いる。Ti(C,N)粉末は、従来、スポンジTiを出発材料として生成されたものがあるが、特に、TiO2を出発材料として生成されたTi(C,N)粉末を用いると、微粒の第1硬質相を形成し易い傾向にある。また、上述のようにMoを含有する化合物粉末を合わせて用いると、第2硬質相を形成し易い傾向にある。第3硬質相を生成するためには、Wを含む粉末、例えば、WC粉末を用いる。第4硬質相を生成するためには、Tiと、WもしくはWと周期律表4,5,6族金属(但し、TiとWを除く)から選択された少なくとも1種の金属とを含有した化合物粉末、例えば、(Ti,W)(C,N)粉末を用いる。このような化合物粉末を用いることで、第4硬質相の粒子、即ち、Tiと、WもしくはWと周期律表4,5,6族金属(但し、TiとWを除く)から選択された少なくとも1種の金属とが均一的に固溶した単相構造の粒子が得られ易い。
《粉砕及び混合》
粉砕時間を長くすると、粉末を微細にすることができ、サーメット中に微細な硬質相粒子を生成し易い傾向にある。但し、粉砕時間が長過ぎると、再凝集したり、微細になり過ぎて核となる化合物が形成され難くなったりする恐れがある。好ましい粉砕及び混合時間は、12時間以上36時間以下である。
《焼結》
焼結温度を高くし過ぎると、硬質相を構成する粒子が成長して、サーメット中に粗大な粒子が多く存在し易くなったり、特に第4硬質相の粒子を生成し難くなったりする恐れがある。そのため、焼結温度は、1400℃以上1600℃以下が好ましい。また、焼結工程において、焼結温度を所定の時間保持して加熱した成形体を冷却する際、真空、又はアルゴン(Ar)といった不活性ガス雰囲気で冷却することが好ましい。不活性ガス雰囲気の場合、特に、665Pa以上6650Pa以下の比較的低圧とすることが好ましい。また、冷却速度を速くする、具体的には10℃/min以上とすると、第4硬質相を生成し易い傾向にある。
本発明被覆サーメット工具は、耐摩耗性及び耐欠損性に優れる上に、被削材の加工面の品位に優れる切削加工が可能である。本発明サーメットは、このような工具の構成材料に好適に利用することができる。
図1は、本発明サーメット中に存在する4種の硬質相を模式的に示す説明図である。
<試験例>
サーメットからなる切削工具を作製し、サーメットの組成、組織、及び切削工具の切削性能を調べた。
切削工具は、以下のように作製した。まず、原料粉末として、以下のものを用意した。
(1) 平均粒径0.7μmのTi(C,N)粉末
このTi(C,N)粉末は、TiO2を出発原料として生成された粉末であり、C/N比が1/1である。
(2) 平均粒径0.8μmのTi(C,N)粉末、及び平均粒径3.0μmのTi(C,N)粉末
これらのTi(C,N)粉末はいずれも、スポンジTiを出発原料として生成された粉末であり、C/N比が1/1である。表1では、これらのTi(C,N)粉末を「s-TiCN」と記載する。
(3) 平均粒径2.8μmの(Ti,W)(C,N)粉末
この(Ti,W)(C,N)粉末は、Ti(C,N)粉末に予めWを固溶させた粉末であり、C/N比が1/1である。
(4) 平均粒径0.5〜3.0μmのWC粉末,NbC粉末,TaC粉末,Mo2C粉末,Ni粉末,Co粉末
これらの粉末は、いずれも市販の粉末である。
用意した上記原料粉末を表1に示す配合割合(質量%)となるように秤量・配合し、粉末No.1〜13を用意した。
Figure 2012041595
用意した各粉末をアセトン溶媒と超硬合金製ボールと共に、ステンレス製のポットに装入し、粉砕及び混合(湿式)を行った。表2に各試料の作製に用いた原料粉末No.、粉砕・混合時間(時間)を示す。粉砕及び混合後、乾燥して得られた混合粉末にパラフィンを少量添加した後、金型を用いて98MPaの圧力でプレス成型して、CNMG120408形状の成形体を作製した。
Figure 2012041595
得られた各成形体をそれぞれ450℃に加熱してパラフィンを除去した後、真空中で室温から1250℃まで昇温し、表3に示す条件でその後の焼結(冷却工程も含む)を行い、焼結体を得た。
Figure 2012041595
得られた各焼結体のそれぞれについて任意の断面をとり、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により5000倍に拡大して観察した。その結果、各焼結体の観察視野にはそれぞれ、黒色の粒子、黒色の粒子の周囲の一部が灰色の領域に覆われている粒子(以下、これら二つの粒子を合わせて黒単粒子と呼ぶ)、黒色の粒子の周囲の全体が灰色の領域に覆われている粒子(以下、この粒子を黒芯二重粒子と呼ぶ)、白色の粒子の周囲の全体が灰色の領域で覆われている粒子(以下、この粒子を白芯二重粒子と呼ぶ)、及び灰色の粒子(以下、この粒子を灰色粒子と呼ぶ)の少なくとも1種の粒子が確認された。試料No.1〜20の焼結体では、図1に示すように黒単粒子(第1硬質相1)、黒芯二重粒子(第2硬質相2)、白芯二重粒子(第3硬質相3)、及び灰色粒子(第4硬質相4)の4種類の粒子が観察された。第1硬質相1は、黒色の粒子のみからなるものと、黒色の粒子の一部が灰色の領域(周辺部1b)で覆われているものがあり、第2硬質相2は、芯部2aが黒色、周辺部2bが灰色、第3硬質相3は、芯部3aが白色、周辺部3bが灰色に見える。粒子間には、結合相10が存在する。一方、試料No.100〜105の焼結体では、黒単粒子、黒芯二重粒子、白芯二重粒子、及び灰色粒子のうち少なくとも一つが観察されなかった。
上記各粒子の組成をTEM-EDX分析により調べたところ、黒単粒子は、Ti(C,N)、黒芯二重粒子の芯部がTi(C,N)、芯部を覆う周辺部がTiとW,Nb,Ta及びMoの1種以上の金属とを含む複合炭窒化物固溶体、白芯二重粒子は、TiとWとNb,Ta及びMoの1種以上の金属とを含む複合炭窒化物固溶体であって、芯部のW濃度がこの芯部を覆う周辺部よりも高いもの、灰色粒子は、TiとWとNb,Ta及びMoの1種以上の金属とを含む複合炭窒化物固溶体により構成されていた。また、灰色粒子は、芯部と周辺部との明確な境界が見られなかった。なお、硬質相の成分分析は、TEM-EDX分析の他、EPMA,蛍光X線,ICP-AESなどを用いて行うことができる。
上記粒子間には、結合相が存在しており、TEM-EDX分析により調べたところ結合相は、実質的にCo及びNiにより構成されていた。試料の中には、硬質相の構成元素が結合相に数質量%程度固溶されているものが存在した。また、分析した結果、焼結体中のCoの含有量は、原料のCo粉末の添加量とほぼ同じであり、焼結体中のNiの含有量は、原料のNi粉末の添加量と比較して0.2〜0.3%程度減少する傾向にあった。このことから、各試料(焼結体)中の硬質相の含有量は、原料に用いたCo粉末及びNi粉末の添加量を除いた量(86質量%程度)にほぼ等しいと言える。更に、結合相中に存在するNiとCoとの存在質量比Ni/Coを求めた。その結果を表2に示す。また、ICP分析により、各試料(焼結体)のMoの含有量(質量%)を調べた。その結果も表2に示す。
上記各試料(焼結体)の断面を切断し、表面から50μm,150μm,500μmの部位で3視野の断面をSEMの断面観察像(5000倍)で観察し、各試料の観察視野に存在する全ての粒子について粒径を求めた。粒径は、Martin径(一定方向から粒子を平面に投影したときの粒子の投影面積を二等分する線分の長さ)とした。具体的には、焼結体の断面を観察した顕微鏡写真を利用し、当該顕微鏡写真に存在する粒子の面積を二等分する線分の長さを粒径とした。有芯構造の粒子は、周辺部を含んだ状態で粒径を求めた。その結果、いずれの試料も、粒径が3μm超である粒子がほとんど観察されず、硬質相は、実質的に粒径が3μm以下である粒子により構成されていた。
得られた粒径(上述のMartin径)を利用して、各粒子の面積をそれぞれ求めた。また、第1硬質相、第2硬質相、第3硬質相、及び第4硬質相のそれぞれについて、粒径が1μm超3μm以下である粒子の合計面積(以下、これらの合計面積をそれぞれ、粗粒面積(1),粗粒面積(2),粗粒面積(3),粗粒面積(4)と呼ぶ)、第1硬質相について粒径が1μm以下である粒子の合計面積(以下、この合計面積を微粒面積(1)と呼ぶ)、第2硬質相について粒径が1μm以下である粒子の合計面積(以下、この合計面積を微粒面積(2)と呼ぶ)をそれぞれ求めた。粗粒面積(1),粗粒面積(2),粗粒面積(3),粗粒面積(4),微粒面積(1),及び微粒面積(2)の合計を硬質相の総面積とし、硬質相の総面積に対する粗粒面積(1)〜(4)の合計割合、即ち粗粒面積率「粗粒/硬質相全体」(%)を表4に示す。また、硬質相の総面積に対する粗粒面積(1),粗粒面積(2),粗粒面積(3),粗粒面積(4),微粒面積(1),及び微粒面積(2)のそれぞれの面積率(%)を表4に示す。硬質相の総面積に対する粗粒面積(1)の面積率をS1、粗粒面積(2)の面積率をS2,粗粒面積(3)の面積率をS3,粗粒面積(4)の面積率をS4とし、このときの(S1+S2)、S1/(S1+S2)、S3/(S3+S4)を求めた。その結果を表4に示す。更に、微粒面積(1)をSS1、微粒面積(2)をSS2とするとき:SS1/(SS1+SS2)、サーメット全体(硬質相+結合相)の面積(ここでは観察像の視野面積)に対する第3硬質相の面積と第4硬質相の面積の合計面積の面積率:(第3+第4)/(サーメット全体)を求めた。その結果も表4に示す。なお、第3硬質相や第4硬質相が存在した試料のいずれも、第3硬質相の粒子や第4硬質相の粒子の粒径が概ね1μm超であり、粒径が1μm以下である第3硬質相の粒子や第4硬質相の粒子がほとんど観察されなかった。
Figure 2012041595
得られた各焼結体の表面にそれぞれ平面研磨処理及び刃先処理を施して、CNMG120408形状のブレーカ付き切削チップ(切削工具)を作製した。得られた各切削チップを用いてそれぞれ、以下の表5に示す条件で切削試験(いずれも旋削加工)を行い、耐摩耗性、耐欠損性、加工面の面粗さを調べた。その結果を表6に示す。面粗さRaは、JIS B 0601(2001)に準じて測定した。
Figure 2012041595
Figure 2012041595
表6に示すように、第1硬質相、第2硬質相、第3硬質相、及び第4硬質相の全てが存在する試料No.1〜20は、上記4種のうちのいずれかが存在しない試料No.100〜105と比較して、耐摩耗性に優れる上に、耐欠損性にも優れることが分かる。かつ、これらの試料No.1〜20は、被削材の加工面の面粗さRaが小さく、加工面の面品位が高いことが分かる。
試料No.1〜20のうち、特に、粗粒粒子の面積率が60%以上90%以下を満たすと、硬度の向上や破壊靱性の向上により、耐摩耗性や耐欠損性に更に優れる傾向にあることが分かる。また、試料No.1〜20のうち、特に、(S1+S2)が0.1以上0.5以下を満たす試料や、S1/(S1+S2)が0.1以上0.4以下かつS3/(S3+S4)が0.4以上0.9以下を満たす試料は、表面粗さRaが更に小さくなる傾向にあり、面品位に優れることが分かる。試料No.1〜20のうち、特に、SS1/(SS1+SS2)が0.5以上0.9以下を満たす試料は、耐摩耗性により優れる傾向にあることが分かる。また、試料No.1〜20のうち、特に、(第3+第4)/(サーメット全体)が40%超である試料は、靭性に優れることが分かる。
試料No.1〜20の切削チップの表面に、アークイオンプレーティング法により(Ti,Al)N膜(厚さ4μm)を形成した被覆チップを形成し、表5に示す試験条件で耐摩耗性試験を行った。その結果、いずれの試料も、硬質膜が無い場合と比較して、耐摩耗性により優れていた。
なお、上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。例えば、原料粉末の組成や平均粒径、硬質相の各粒子の存在状態、硬質膜の組成や厚さを適宜変更することができる。
本発明サーメットは、切削工具の素材に好適に利用することができる。本発明被覆サーメット工具は、旋削加工、フライス切削加工、特に、鋼の切削に好適に利用することができる。
1 第1硬質相 1b 周辺部 2 第2硬質相 2a,3a 芯部 2b,3b 周辺部
3 第3硬質相 4 第4硬質相 10 結合相

Claims (8)

  1. 周期律表4,5,6族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物及びこれらの固溶体からなる群から選択される1種以上の化合物からなる硬質相が鉄族金属を主成分とする結合相により結合されてなるサーメットであって、
    前記硬質相を70質量%以上97質量%以下含有し、残部が実質的に結合相からなり、
    前記硬質相は、以下の第1硬質相、第2硬質相、第3硬質相、第4硬質相を含有し、
    サーメットの任意断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による組織写真において、前記硬質相の総面積に対して、60%以上90%以下の硬質相は、粒径が1μm超3μm以下の粗粒からなり、残部の硬質相は、粒径が1.0μm以下の微粒からなり、
    前記粗粒は、前記第1硬質相と前記第2硬質相の少なくとも一方、前記第3硬質相、及び前記第4硬質相で構成され、
    前記微粒は、実質的に前記第1硬質相及び前記第2硬質相から構成されていることを特徴とするサーメット。
    第1硬質相:炭窒化チタンの単相のみからなる、又は炭窒化チタンの周囲の一部がチタンと、周期律表4,5,6族金属(但し、チタンを除く)から選択された1種以上の金属との複合炭窒化物固溶体で覆われている単相構造の硬質相
    第2硬質相:芯部と、この芯部の周囲の全体を覆う周辺部とを具える有芯構造の硬質相であり、前記芯部が炭窒化チタンから構成され、前記周辺部が、チタンと、周期律表4,5,6族金属(但し、チタンを除く)から選択された1種以上の金属との複合炭窒化物固溶体から構成されている硬質相
    第3硬質相:芯部と、この芯部の周囲の全体を覆う周辺部とを具える有芯構造の硬質相であり、前記芯部及び前記周辺部は、同一の元素から構成されており、少なくともチタン及びタングステンを含む複合炭窒化物固溶体から構成され、前記芯部のタングステン濃度が前記周辺部のタングステン濃度よりも大きい硬質相
    第4硬質相:チタンと、タングステンもしくはタングステンと周期律表4,5,6族金属(但し、チタンとタングステンを除く)から選択された1種以上の金属との複合炭窒化物固溶体からなる単相構造の硬質相
  2. 前記硬質相の総面積に対して、前記粗粒の第1硬質相の面積率をS1、前記粗粒の第2硬質相の面積率をS2とするとき、(S1+S2)が0.1以上0.5以下であることを特徴とする請求項1に記載のサーメット。
  3. 前記硬質相の総面積に対して、前記粗粒の第1硬質相の面積率をS1、前記粗粒の第2硬質相の面積率をS2、前記粗粒の第3硬質相の面積率をS3、及び前記粗粒の第4硬質相の面積率をS4とするとき、S1/(S1+S2)が0.1以上0.4以下であり、かつS3/(S3+S4)が0.4以上0.9以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のサーメット。
  4. 前記粒径が1.0μm以下である第1硬質相の面積をSS1、前記粒径が1.0μm以下である第2硬質相の面積をSS2とするとき、SS1/(SS1+SS2)が0.5以上0.9以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のサーメット。
  5. 前記サーメットの総面積に対して、第3硬質相の面積と第4硬質相の面積との合計の面積率が40%超であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のサーメット。
  6. 前記サーメットは、結合相にニッケル(Ni)とコバルト(Co)とを含有しており、
    前記結合相中のNiとCoとの存在質量比をNi/Coとするとき、Ni/Coが0.7以上1.5以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のサーメット。
  7. 前記サーメットは、モリブデンを0.01質量%以上2.0質量%以下含有していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のサーメット。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のサーメットからなる基材と、この基材の表面の少なくとも一部に被覆された硬質膜とを具えることを特徴とする被覆サーメット工具。
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