JP2004330314A - 被覆超硬合金工具 - Google Patents

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Tomohiro Takanashi
智裕 高梨
Yasuo Tsukimori
康雄 月森
Hideki Moriguchi
秀樹 森口
Minoru Ito
実 伊藤
Yoshio Okada
吉生 岡田
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Abstract

【課題】高強度で耐溶着性に優れる被覆超硬合金工具を提供する。
【解決手段】Co:8〜12重量%を含む結合相と、WC:65〜85重量%と周期律表IVa、Va、VIa族元素(Cr、Nbを除く)の炭化物、酸化物及びそれらの固溶体よりなる群から選択される1種類以上の化合物(WCを除く)とを含む硬質相とからなる基材表面に硬質被覆層を具える被覆超硬合金工具である。WCは、粒度0.3〜1.5μmの第一群と粒度3〜5μmの第二群とを含み、第一群と第二群との面積率が3〜5である。硬質相には、TiCを1〜4重量%、TaCを4〜12重量%含み、TaCとTiCの重量比が2〜8、平均粒度が2μm以下である。かつ、基材全体の飽和磁気量とCoの重量%との比:15以上19以下、抗折力:2.6GPa以上、硬質被覆層の表面粗さ:Raで0.5μm以下を満たす。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金型鋼(ダイス鋼)などのミーリング加工に最適な被覆超硬合金工具に関する。特に、高強度で、耐溶着性に優れる被覆超硬合金工具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、WC基超硬合金やサーメットからなる基材の表面に炭化チタン、窒化チタン、炭窒化チタン、酸化アルミニウムなどを蒸着させて被膜層を施すことで、耐欠損性や耐摩耗性を改善し、工具寿命を向上させることが行われている。
【0003】
また、WC結晶において、微粒子群と粗粒子群の2種類の結晶粒を混合させることで、強度と靭性とを改善させることが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−252579号公報
【特許文献2】
特開平6−220571号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように基材表面に被覆層を設けたり、基材の組織を変化させることで、従来は、強度や靭性、耐摩耗性などを改善させている。しかし、その耐摩耗性は、被削材に対して機械的に擦られることで発生する摩耗を抑制することを目的とするものである。一方、ダイス鋼などの切削工具と化学的な反応、即ち溶着を生じ易い被削材を切削する場合、単なる摩耗だけでなく、溶着摩耗が生じる。このような場合、耐摩耗性の向上には、溶着摩耗をも考慮することが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、強度に優れると共に、耐溶着性を改善して耐摩耗性を向上させることができる被覆超硬合金工具を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、被削材に対して溶着し易い元素や被削材と化学的に反応し易い元素を添加せず、溶着を効果的に抑制することができる元素Taと、溶着の抑制と硬度の向上に寄与する元素Tiとをバランスよく添加することで上記目的を達成する。
【0008】
即ち、本発明は、超硬合金からなる基材上に硬質被覆層を具える被覆超硬合金工具であって、以下の(A)〜(F)を満たす。
(A)基材は、1種類以上の鉄族金属を含む結合相と、WCと、周期律表IVa、Va、VIa族元素の炭化物、酸化物及びそれらの固溶体よりなる群から選択される1種類以上の化合物(但し、WCを除く)とを含む硬質相とからなる。特に、本発明では、周期律表IVa、Va、VIa族元素のうち、Cr及びNbを除く。
(B)結合相には、Coを8重量%以上12重量%以下含む。
(C)硬質相は、以下を満たす。
(1)WCを65重量%以上85重量%以下含む。
(2)WCは、粒度0.3μm以上1.5μm以下の第一群と、粒度3μm以上5μm以下の第二群とを含む。そして、前記第一群と第二群との面積率を3以上5以下とする。
(3)TiCを1重量%以上4重量%以下、TaCを4重量%以上12重量%以下含む。かつ、TaCとTiCの重量比を2以上8以下とする。
(4)WC以外の硬質相の平均粒度が2μm以下である。
(D)基材全体の飽和磁気量(4πσ)とCoの重量%との比が15以上19以下である。
(E)抗折力が2.6GPa以上である。
(F)硬質被覆層の表面粗さがRaで0.5μm以下である。
【0009】
本発明者らが検討した結果、従来、基材に添加されている化合物(金属の炭化物、窒化物、炭窒化物など)の中には、切削の際に悪影響を及ぼすものがあり、そのような添加物を含まない方が切削特性に優れることがわかった。特に、ダイス鋼などの化学的な反応が生じ易い被削材を切削する場合では、抗折力などの強度を低下させることなく、耐溶着性を向上させるには、Nbの化合物及びCrの化合物を添加しない方が好ましいとの知見を得た。そして、Nb、Crの化合物ではなく、Ta、Tiの化合物、特に、Taの炭化物及びTiの炭化物を適量添加すると、抗折力を低下させず、溶着摩耗の抑制に効果的であるとの知見を得た。
【0010】
Nbは、Taよりも化学的な安定性に劣り、上記ダイス鋼などを切削すると、被削材と化学反応を起こし、溶着摩耗が進行し易い。また、Nbは、Taと比較して抗折力の低下が生じ易く、工具の強度を低下させ易い。一方、ダイス鋼、特に合金工具鋼は、Crを含有している。そのため、工具基材にCrを含有していると、被削材と化学反応を生じ易いことに加えて、特に、工具基材にCrの炭化物を含有していると、合金中に巣(ポア)が発生し易く、抗折力が低下して基材の強度を低下させる。
【0011】
これに対し、Taは、化学的な安定性に富むと共に、抗折力の低下を生じにくい。特に、Taの炭化物は、溶着摩耗の抑制に効果がある。また、Tiは、被削材の鉄との化学反応性が低い。特に、Tiの炭化物は、高硬度で工具の高温硬度向上に効果がある。本発明は、上記知見に基づき規定するものである。以下、本発明をより詳しく説明する。
【0012】
本発明において基材は、WC基超硬合金とする。具体的には、WCを主に含む硬質相と、結合相と、不可避的不純物とからなるものとする。硬質相には、WC以外に、周期律表IVa、Va、VIa族元素の炭化物、酸化物及びそれらの固溶体よりなる群から選択される1種類以上の化合物(但し、WCを除く)を含むものとする。特に、本発明の特徴とするところは、上記元素のうちNb及びCrを除くこと、及びTiCとTaCとを含むことにある。
【0013】
Nbは、Taよりも溶着摩耗が生じ易く、抗折力が低下し易いことから、本発明では添加しない。また、Crは、被削材の種類によって化学的反応を起こし易いものがあり、巣の発生により抗折力が低下し易いことから、本発明では添加しない。従って、本発明においてNb、Crは、全く含まれないか、不可避的不純物のみとして含まれる。
【0014】
Taは、Nbと比較して化学的な安定性に優れて、抗折力を低下しにくく、その炭化物であるTaCは、溶着摩耗を効果的に抑制することができる。そこで、本発明では、硬質相としてTaCを含有する。しかし、TaCは、多過ぎると、抗折力の低下や耐熱亀裂性の低下を招き、少な過ぎると、耐溶着性の向上効果が得られにくい。そこで、TaCの含有量を4重量%以上12重量%以下とする。
【0015】
Tiは、上記のように鉄との化学反応性が低く、その炭化物であるTiCは、高温硬度向上に効果がある。そこで、本発明では、硬質相として上記TaCに加えて、TiCを含有する。しかし、TiCは、多過ぎると、抗折力の低下を招き、工具強度を低下させ、少な過ぎると、高温硬度の低下を招き、塑性変形を起こし易い。そこで、TiCの含有量を1重量%以上4重量%以下とする。
【0016】
そして、上記TaC及びTiCは、その重量比(TaCの重量%/TiCの重量%)が2以上8以下となるように含有させる。本発明者らが検討した結果、TaC、TiCを特定量(重量%)含有させると、耐溶着性に優れると共に、抗折力にも優れるが、最も性能のバランスに優れた配合は、上記重量比を満たす場合であることがわかった。そこで、本発明では、TaC、TiCの含有量及びその重量比を規定する。
【0017】
上記TaC、TiCを含むWC以外の硬質相は、WCと比較して強度が低いことから、平均粒度が大き過ぎると、大きな粒子を起点とした破壊が発生し易く、抗折力の低下を招く。そこで、本発明では、WC以外の硬質相の平均粒度を2μm以下とする。これらWC以外の硬質相を微粒にするには、例えば、原料として、粒度が小さいもの、具体的には平均粒度が1.0μm以下のものを用いることが挙げられる。その他、混合条件によっても硬質相の粒度を変化させることができる。具体的には、例えば、混合時間を変えることで粒度を変化させることができる。
【0018】
WCの含有量は、65重量%以上85重量%以下とする。65重量%未満であると、工具硬度を低下させる。85重量%超とすると、工具の強度を低下させる。
【0019】
また、本発明では、WC結晶を単一粒度でなく、微粒子群と粗粒子群との2つの粒度の結晶粒を混在させて、強度と靭性との双方を向上させる。具体的には、粒度0.3μm以上1.5μm以下の第一群(微粒子群)と粒度3μm以上5μm以下の第二群(粗粒子群)とを含むものとする。なお、WC結晶の粒度を上記二つの群のみに画一的に製造することは、非常に困難であるため、全WC結晶の80%以上、好ましくは90%以上が上記いずれかの群に含まれればよい。微粒子の第一群は、基材の強度と硬度を高めるのに有効である。特に、微粒のWCは、欠陥寸法が小さくなることから抗折力を大きくすると共に、微粒であることから結合相の平均自由行程が大きいため熱伝導率が大きくなることから、耐熱衝撃性に優れる。また、粗粒子の第二群は、破壊靭性を大きくすると共に、疲労亀裂の進展を防止するのに有効である。このような二つの粒度のWC結晶を混在させる方法としては、例えば、粒度の異なるWC粉末、即ち、粗粒のWC粉末及び微粒のWC粉末の二つの粒度の原料粉末を用いることで実現することができる。
【0020】
上記粗粒子の第二群が多過ぎると、硬度が低下する。また、微粒子の第一群が多過ぎると、破壊靭性値の低下を招き、強度が低下する。そのため、本発明では、第一群と第二群との比率:第一群/第二群を3以上5以下に規定する。上記の比率は、面積率とする。この面積率は次のように求める。まず、焼結体の任意の断面を鏡面研磨し、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡にて1500倍で5視野写真撮影し、その写真を用いて第一群と第二群のグループ分けを行う。グループ分けの基準となる粒度は、多角形のWC粒子の場合は対角線の最大長さ、三角形の場合は最大辺の長さとした。このようにグループ分けした組織写真を画像処理装置にかけ、第一群と第二群の面積率を求めた。第一群と第二群との比率は、例えば、上記異なる粒度のWC粉末の配合割合(重量%)を調整することにより変化させることができる。
【0021】
本発明において結合相は、1種類以上の鉄族金属を含むものとする。本発明では、特に、少なくともCoを含む。Coのみとしてもよい。Coは、多過ぎると、高温硬度の低下による摩耗の進行を招く。また、少な過ぎると、抗折力(TRS)の低下から強度の低下を招く。そこで、本発明では、Coの含有量を8重量%以上12重量%以下とする。Coに加えて、その他の鉄族金属:NiやFeを含む場合は、上記Coの一部をNiやFeに置換するとよい。
【0022】
本発明では、上記のように合金組成と粒度とを適切に規定することで、優れた抗折力が得られる。具体的には、2.6GPa以上とすることができる。しかし、焼結条件よっては、具体的には焼結温度を高めにすると、抗折力が小さくなる傾向にある。従って、焼結温度は、1500℃未満、特に、1400℃程度とすることが好ましい。
【0023】
また、本発明では、超硬合金の特性を評価する指標として、超硬合金自体の飽和磁気量(飽和磁化)4πσと結合相のCo含有量との比率、つまり4πσ(Gauss・cm/g)/Co(重量%)で表される値を規定する。具体的には、上記比率を15以上19以下とする。この比率が15未満であると超硬合金中に脆化層であるη層(CoC,CoC,NiC,NiC,FeC,FeCなど、炭素量の少ない複炭化物)が析出し易く、19超では、高温硬度が低下して耐摩耗性の低下を招く。また、合金中に遊離炭素が析出することにより抗折力の低下を招く。飽和磁気量は、超硬合金内に含まれる炭素量とCo量に大きな関係を有する。例えば、炭素量が少ないと、硬質相がCo中に固溶して見かけ上Coが減少するため、合金の飽和磁気量が低下するといった関係がある。従って、原料に用いる炭化物のC量や、合金の特性を整えるために用いるC量を適宜調整することで、飽和磁気量を変化させることができ、Coの重量%との比を調整することが可能である。
【0024】
更に、本発明では、基材表面に硬質被覆層、特に表面粗さがRaで0.5μm以下の平滑な被覆層を具えることで、切削性能をより良好なものとする。このような硬質被覆層は、Al、Si、Crより選ばれる1種以上の元素とチタンとの窒化化合物、窒化チタン、及び炭窒化チタンよりなる群から選ばれる1種以上の膜を具えることが好ましい。これらチタン化合物膜は、高硬度であり、耐摩耗性に優れるため好ましい。従って、硬質被覆層をこれらチタン化合物膜のみで形成してもよい。
【0025】
また、上記硬質被覆層は、厚みを1μm以上10μm以下とすることが好ましい。厚みが1μm未満では、耐摩耗性の向上効果が得られにくい。逆に、厚みが10μm超では、膜自体が脆くなり、切削加工中の負荷により膜が破壊され、結果として膜の剥離を促進する恐れがある。硬質被覆層の表面粗さを上記所定の範囲に制御する方法として、例えば、バフ、ブラシ、バレルや弾性砥石などによる研磨処理を施すことが挙げられる。この他、マイクロブラスト、イオンビーム照射による表面改質も適用できる。
【0026】
硬質被膜層の形成には、公知の化学的蒸着法(CVD)や物理的蒸着法(PVD)を利用することができる。PVDにて成膜する際は、使用する原料ガスや成膜中の真空度、金属ターゲットに加える電流、ターゲットと基材との電圧差を調整することでも、表面粗さをRaで0.5μm以下にすることができる。
【0027】
硬質被覆層をPVDにて成膜すると、膜中の残留応力として、圧縮応力が加わる。残留圧縮応力が低い場合、基材との密着性を向上させることができるが、膜の亀裂の進行に対して抑制効果が少なく、結果として、工具強度を低下させ易くなる。逆に、残留圧縮応力が高くなるにつれて、亀裂の進行の抑制効果を向上させることができるが、高過ぎると、膜が圧縮破壊を起こして、結果として、膜剥離を促進することになる。従って、硬質被覆層のうち基材側に設ける膜は、基材との密着性を考慮して、圧縮応力を小さくし、被覆層の表層側に向かうに従って、膜の亀裂の進行抑制効果を考慮して、圧縮応力を大きくしていくことが好ましい。即ち、膜中で圧縮応力を変化させる、具体的には、基材表面から被覆層表面に向かって連続的に、又は段階的に圧縮応力を増加させることが好ましい。圧縮応力は、例えば、成膜の際、金属ターゲットと基材との電圧差を制御することにより、変化させることができる。具体的には、電圧差を大きくすると、圧縮応力を大きく、電圧差を小さくすると、圧縮応力を小さくさせることができる。
【0028】
このような本発明工具は、ダイス鋼などのミーリング加工に用いることが最適である。具体的には、エンドミル用刃先交換型チップや、フライス加工用刃先交換型チップに用いるとよい。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)
原料粉末として、平均粒度が異なる二種類のWC粉末、平均粒度1.0μmのWC粉末(原料A)、平均粒度4.0μmのWC粉末(原料B)を準備した。TaC粉末及びTiC粉末は、平均粒度1.0μmのもの、Co粉末は、平均粒度1.5μmのものを準備した。また、比較のために、平均粒度3μmのTaC粉末及びTiC粉末、平均粒度1.0μmのNbC粉末及びCr粉末をそれぞれ準備した。
【0030】
これら原料粉末を表1、2に示す組成に配合し、ボールミルを用いて10時間湿式混合した後、スプレードライヤーによって乾燥、造粒を行った。そして、得られた粉末を金型に充填して1000kg/cmの圧力でプレスし、真空中で所定温度に1時間保持して焼結を行い、ISO型番SDKN1203の形状の焼結体を得た。
【0031】
【表1】
Figure 2004330314
【0032】
【表2】
Figure 2004330314
【0033】
得られた焼結体について、抗折力(GPa)、WC以外の硬質相の平均粒度(μm)を測定した。この平均粒度は、透過電子顕微鏡で焼結体断面を観察し、多角形の粒子の場合は対角線の最大長さ、三角形の場合は最大辺の長さを粒度として求めた。また、得られた焼結体の断面を鏡面研磨し、その断面におけるWC結晶の粒度を測定した。そして、粒度が0.3μm以上1.5μm以下の粒子を第一群とし、粒度が3μm以上5μm以下の粒子を第二群とし、第一群及び第二群の面積をそれぞれ求め、これらの面積率:第一群の面積(mm)/第二群の面積(mm)を求めた。この面積率は次のように求めた。まず、焼結体の任意の断面を鏡面研磨し、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡にて1500倍で5視野写真撮影し、その写真を用いて第一群と第二群のグループ分けを行う。グループ分けの基準となる粒度は、多角形のWC粒子の場合は対角線の最大長さ、三角形の場合は最大辺の長さとした。このようにグループ分けした組織写真を画像処理装置にかけ、第一群と第二群の面積率を求めた。更に、得られた焼結体の飽和磁気量(Gauss・cm/g)を測定し、Coの重量%に対する比を求めた。これらの結果も合わせて表1、2に示す。
【0034】
基材No.20は、焼結温度を1550℃、基材No.21は、焼結温度を1480℃、基材No.22は、焼結温度を1400℃、それ以外の基材は、焼結温度を1450℃とした。また、基材No.28、29は、平均粒度3μmのTaC粉末及びTiC粉末を用い、No.28は、予備混合としてTaC、TiCの粉末をボールミルで5時間、No.29は、1時間混合した後に他の原料と配合した。基材No.27は、平均粒度1μmのTaC粉末及びTiC粉末を用い、予備混合としてボールミルで5時間混合した後に他の原料と配合した。基材No.30〜33は、合金の特性を整えるために用いるC量を変化させた。具体的には、基材No.30、31は、上記C量を少なめにし、No.32、33は、上記C量を多めにした。
【0035】
得られた焼結体のエッジ部分に、幅0.2mm、角度25°のチャンファーホーニングを施して、基材を得た。得られた各基材の表面に、公知のアークイオンプレーティング法により、硬質被覆層(TiN、厚さ4μm)を施し、硬質被覆層を具える工具を得た(試料No.1〜34)。なお、試料No.1〜33の硬質被覆層は、成膜後、マイクロブラストにより表面を平滑にし、試料No.34の硬質被覆層には平滑化処理を施さなかった。
【0036】
得られた試料No.1〜34について、以下の条件で平面フライス加工を30分間行い、チップの損傷状態、摩耗量(mm)を調べてみた。加工途中でチップの切れ刃の摩耗量が0.3mmを超えたものは、その時点で加工を止め、そのときのチップの損傷状態、摩耗量(mm)を調べた。その結果を表3、4に示す。
【0037】
<切削条件>
被削材:合金工具鋼 SKD11(焼き入れ処理なしのブロック材)
使用カッター:FPG4160R
切削速度:150m/min
1刃当たりの送り速度:0.2mm/刃
軸方向の切り込み:1.5mm
切削油:なし(乾式)
【0038】
【表3】
Figure 2004330314
【0039】
【表4】
Figure 2004330314
【0040】
表3の結果から、試料No.1〜17は、いずれも正常摩耗であり、30分間加工後の摩耗量が0.3mm未満と少なく、耐摩耗性に優れていることがわかる。このように耐摩耗性に優れていたのは、溶着が少ない、或いはほとんどなく、耐溶着性にも優れていたためであると考えられる。
【0041】
これに対し、NbやCrを含有している試料No.18、19は、溶着が多く、30分間の加工ができなかった。しかも、短時間の加工で溶着が生じて摩耗量が多くなったり、溶着による欠損が生じた。
【0042】
また、NbやCrを含有させていなくても、TaC、TiCの含有量が適切でない試料No.22〜25、TaC(重量%)とTiC(重量%)との比(TaC/TiC比)が適切でない試料No.20、21、Coの含有量が適切でない試料No.26、27、抗折力が適切でない試料No.28、WCの第一群と第二群との比(WCの比)が適切でない試料No.29、30、WC以外の硬質相の平均粒度が適切でない試料No.31、基材全体の飽和磁気量(4πσ)とCoの重量%との比(4πσ/Coの重量%比)が適切でない試料No.32、33、硬質被覆層を平滑にしていない試料No.34は、表4に示すように切削途中で溶着による欠損やチッピングが生じたり、30分間加工ができたものでも、膜剥離や溶着摩耗の進行により摩耗量が大きくなった。
【0043】
(実施例2)
上記実施例1で用いた基材と同様の基材を用い、硬質被覆層の膜種と膜厚を変化させた試料を作製し、実施例1と同様の条件で平面フライス加工を30分間行い、チップの損傷状態、摩耗量(mm)を調べてみた。その結果を表5に示す。なお、表5に示す膜は、基材に近い順に記載している。即ち、左側に記載されているほど基材側に成膜されていることを示す。このことは、後述する実施例3でも同様とする。
【0044】
【表5】
Figure 2004330314
【0045】
表5に示すように、Al、Si、Crより選ばれる1種以上の元素とチタンとの窒化化合物(本例では、Ti(Al,Si,Cr)N)、窒化チタン、及び炭窒化チタンよりなる群から選ばれる1種以上の膜を適切な厚さで具えている試料No.2−1〜2−5は、摩耗量が少なく、優れた切削性能を具えることがわかる。
【0046】
また、同様の基材表面にTiN:0.5μm、ZrCN:5μmを成膜した試料No.2−10、同様の基材表面にTiC:0.5μm、TiCN:3μm、Al:2μm、TiN:0.5μmを成膜した試料No.2−11を作製した。硬質被覆層の成膜は、公知のCVDにて行い、被覆層表面は、マイクロブラストによる平滑化を行い、表面粗さをRaで0.2μmとした。これら試料No.2−10、2−11を用いて、上記と同様の平面フライス加工を30分間行ったところ、いずれも正常摩耗で、摩耗量がそれぞれ0.20mm、0.17mmであった。
【0047】
(実施例3)
上記実施例1で用いた基材と同様の基材を用い、イオンプレーティング法により硬質被覆層を形成した。試料No.3−1、3−2では、成膜中に金属ターゲットと基材との電圧差を変化させることにより、圧縮応力の大きさを変化させた。具体的には、中間層(本例ではTiCN膜)を成膜する際のターゲットと基材との電圧差を基準として、基材側の膜(本例ではTiN膜)を成膜する際の電圧差を小さく、最外層の膜(本例ではTi(Al,Si,Cr)N)膜)を成膜する際の電圧差を大きくした。試料No.3−3〜3−5は、成膜中のターゲットと基材との電圧差を一定とした。そして、形成した硬質被覆層について、膜中の応力状態をX線回折法により測定した。その結果を表6に示す。表6において圧縮応力の値は、マイナス(−)の符号を付しており、数字の大きい値ほど圧縮応力が高いことを示している。
【0048】
これらの試料No.3−1〜3−5を用いて、実施例1と同様の条件で平面フライス加工を30分間行い、チップの損傷状態、摩耗量(mm)を調べてみた。その結果を表6に示す。
【0049】
【表6】
Figure 2004330314
【0050】
表6に示すように、硬質被覆層の膜中の圧縮応力を基材表面から被覆層表面に向かって連続的に圧縮応力を増加させた試料No.3−1及び3−2は、正常摩耗で摩耗量が少なく、優れた切削性能を具えることがわかる。
【0051】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明工具によれば、Cr及びNbを含有させず、TaC及びTiCを特定量含有させることで、耐摩耗性に優れると共に、強度を低下させることなく、耐溶着性を向上させることができるという優れた効果を奏し得る。従って、本発明工具は、溶着が生じ易い被削材などのミーリング加工に用いても、溶着が生じにくく、優れた切削性能を具える。

Claims (4)

  1. 超硬合金からなる基材上に硬質被覆層を具える被覆超硬合金工具において、
    前記基材は、
    1種類以上の鉄族金属を含む結合相と、
    WCと、周期律表IVa、Va、VIa族元素(但し、Cr及びNbを除く)の炭化物、酸化物及びそれらの固溶体よりなる群から選択される1種類以上の化合物(但し、WCを除く)とを含む硬質相とからなり、
    前記結合相には、Coを8重量%以上12重量%以下含み、
    前記硬質相は、
    WCを65重量%以上85重量%以下含み、
    WCは、粒度0.3μm以上1.5μm以下の第一群と粒度3μm以上5μm以下の第二群とを含み、前記第一群と第二群との面積率が3以上5以下であり、
    TiCを1重量%以上4重量%以下、TaCを4重量%以上12重量%以下含み、かつTaCとTiCの重量比が2以上8以下であり、
    WC以外の硬質相の平均粒度が2μm以下であり、
    基材全体の飽和磁気量(4πσ)とCoの重量%との比が15以上19以下であり、
    抗折力が2.6GPa以上であり、
    前記硬質被覆層の表面粗さがRaで0.5μm以下であることを特徴とする被覆超硬合金工具。
  2. 硬質被覆層は、Al、Si、Crより選ばれる1種以上の元素とチタンとの窒化化合物、窒化チタン、及び炭窒化チタンよりなる群から選ばれる1種以上の膜を具え、硬質被覆層の厚みが1μm以上10μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の被覆超硬合金工具。
  3. 硬質被覆層は、基材表面から被覆層表面に向かって連続的に、又は段階的に圧縮応力が増加していることを特徴とする請求項1に記載の被覆超硬合金工具。
  4. 被覆超硬合金工具は、エンドミル用刃先交換型チップ、フライス加工用刃先交換型チップのいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の被覆超硬合金工具。
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