JP6098882B2 - 耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具 - Google Patents

耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP6098882B2
JP6098882B2 JP2013114719A JP2013114719A JP6098882B2 JP 6098882 B2 JP6098882 B2 JP 6098882B2 JP 2013114719 A JP2013114719 A JP 2013114719A JP 2013114719 A JP2013114719 A JP 2013114719A JP 6098882 B2 JP6098882 B2 JP 6098882B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
cbn
oxygen
sintered body
average
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2013114719A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014233767A (ja
Inventor
雅大 矢野
雅大 矢野
庸介 宮下
庸介 宮下
大橋 忠一
忠一 大橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2013114719A priority Critical patent/JP6098882B2/ja
Publication of JP2014233767A publication Critical patent/JP2014233767A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6098882B2 publication Critical patent/JP6098882B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Ceramic Products (AREA)
  • Cutting Tools, Boring Holders, And Turrets (AREA)

Description

本発明は、立方晶窒化硼素(以下、cBNで示す)を主成分として、これを超高圧、高温下にて焼結成形してなるcBN焼結体切削工具に関し、特に、合金鋼、軸受鋼等の焼入れ材からなる高硬度鋼の断続切削加工において、欠けや欠損の発生を抑制し得るとともに、すぐれた切削性能を長期の使用に亘って維持し得るcBN焼結体切削工具に関するものである。
従来、高硬度鋼の切削工具としては、cBN焼結体を工具基体としたcBN焼結体切削工具等が知られており、工具寿命の向上を目的として種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1、2には、cBN焼結体を超高圧焼結により作製するにあたり、硬質粒子であるcBN粒子の表面に被膜を形成して、cBN粒子を被膜で包囲することにより、cBN粒子間や結合相間、またはcBN粒子と結合相間に現れるポアが解消され、耐摩耗性や靭性が向上することが開示されている。
また、特許文献3には、cBN焼結体中に含まれるアルミニウム化合物の少なくとも1種をAlの酸窒化物にすることで、cBN焼結体上に被覆する耐熱膜の密着性が高められることが開示されている。
特開昭58−61253号公報 特開平10−218666号公報 特許第4933922号公報
特許文献1に開示された従来技術においては、結合強化金属としてのAlと、Alの酸化物および窒化物のうちの1種または2種を含有し、残りがcBNと不可避不純物からなる組成で、かつ結合強化金属がcBN粒子を0.1μm〜1μmの平均層厚で包囲した組織を有するcBN焼結体が示されているが、この焼結体では、焼入れ鋼を切削する場合など刃先の温度が1000℃以上に達する用途では、断続切削に使用すると刃先が欠損しやすくなり、工具寿命が短命であるという課題があった。
また、特許文献2に開示された従来技術においては、cBN粒子と結合相とを備えたcBN工具において、結合相を、cBN粒子を包囲する第1の結合相と、それ以外の第2の結合相とで構成し、第1の結合相は、前記cBN粒子に接触して包囲する第3の結合相と、前記第3の結合相を包囲する第4の結合相とで構成し、前記第3の結合相は、Ti、Zr、Hf、Alの少なくとも1種の窒化物、硼化物もしくはその固溶体の少なくともいずれかの形態で、また、前記第4の結合相は、Ti、TiAl、Zr、Hfの少なくとも1種の窒化物、炭化物、酸化物もしくはその固溶体の少なくともいずかの形態で構成し、さらに、前記第2の結合相は、前記第1の結合相で包囲された複数の前記粒子の間に粒成長抑制結合相を含み、前記粒成長抑制結合相は、Ti、Zr、Hfの少なくとも1種の硼化物もしくはその固溶体の少なくともいずれかの形態、または、Alの窒化物、硼化物もしくはその固溶体の少なくともいずれかの形態で構成したcBN焼結体が示されているが、この焼結体では、1層目とcBN粒子との付着強度が弱いため、高負荷の断続切削に使用すると、刃先が欠損しやすくなり、工具寿命が短命であるという課題があった。
さらに、特許文献3に開示された従来技術においては、平均粒径0.1μmから0.9μmのアルミニウム酸窒化物を結合相内に入れることで、工具表面に被覆する耐熱膜との密着力を向上できることが示されているが、アルミニウムの酸窒化物は結合相内に分散しているため、cBNと結合相との付着力向上に対する寄与が小さいという課題があった。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、高負荷な切削条件が要求される高硬度鋼の断続切削加工を行った場合においても、工具刃先の欠けや欠損が生じにくく、長期に亘って、すぐれた切削性能を維持するcBN焼結体切削工具を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため、cBN工具を構成するcBN焼結体の硬質相成分であるcBN粒子に着目し、鋭意研究したところ、次のような知見を得た。
(1)cBN粒子の周囲にAl金属が存在すると焼き入れ鋼を断続切削する場合などのように刃先の温度が1000℃以上に達する用途では欠損しやすくなる。その原因を究明すべく、欠損した刃先を走査型電子顕微鏡により丹念に断面観察したところ、cBN粒子の周囲に存在するAl金属が溶融することが、刃先の強度を低下させている原因であることを突き止めた。
(2)cBN粒子を包囲する被覆層をAl金属からAlNとすることで、1000℃以上において被覆層が溶融することを回避することができるが、さらにAlNを酸素含有AlNとすることにより、酸素を積極的に含ませていない通常のAlNに比べてcBN粒子との付着力が向上することを見出した。
(3)さらに、酸素含有AlNによってcBN粒子を直接被覆するのではなく、まず、第1層としてAlで包囲した後、第2層として酸素含有AlNで包囲すると第1層と第2層の熱膨張係数差によって、第2層の酸素含有AlNに圧縮応力が与えられ耐欠損性が一層向上することを見出した。
(4)また、cBN粒子を包囲する被覆層に部分的に切れ間を形成することによって、被覆層とcBN粒子との熱膨張特性の違いに起因する引張残留応力によるcBN粒子と被覆層の界面でのクラックの発生を抑制できることを見出した。
前述の知見に基づき本発明者らは、幾多の実験を重ねることによって、刃先に高負荷および高温が加わる高硬度鋼の断続切削に使用しても欠損しにくく切削寿命の長い工具を製造することに成功した。本発明におけるcBN粒子を包囲する2層の被覆層は、例えば、次のような方法で形成することができる。
(a)Al層成膜工程:
まず、ALD法(Atomic Layer Deposition:真空チャンバ内の基材に、原料化合物の分子を一層ごと反応させ、Arや窒素による原料化合物のパージを繰り返し行うことで成膜する方法で、CVD法の一種)を用い、炉内にcBN粒子を装入し、350℃程度に昇温し、Alの先駆体であるAl(CHガスおよび反応ガスとしてHOガスを用い、
(1)Ar+Al(CHガス流入工程、
(2)Arガスパージ工程、
(3)Ar+HOガス流入工程、
(4)Arガスパージ工程
前記(1)〜(4)を1サイクルとして、このサイクルを目標層厚になるまで繰り返し行い、例えば、1時間かけて成膜することにより、平均層厚10nmのAl層をcBN粒子表面に被覆形成する。
(b)AlN層成膜工程:
ついで、ALD法によりAl層の上にAlN層を成膜する。
具体的には、Al層によって被覆されたcBN粒子を炉内に装入した後、炉内を350℃に昇温し、原料ガスとしてAlClガス、NHガスを用い、
(5)Ar+AlClガス流入工程、
(6)Arガスパージ工程、
(7)Ar+NHガス流入工程、
(8)Arガスパージ工程
前記(5)〜(8)を1サイクルとして、このサイクルを目標層厚になるまで繰り返し行い、例えば、2時間かけて成膜することにより、平均層厚20nmのAlN層を得る。
(c)切れ間形成工程:
なお、Al層とAlN層との2層構造からなる被覆層が形成されたcBN粒子をボールミルにより、0.25〜3.0時間、混合攪拌することにより、被覆層に部分的な切れ間を形成し、切れ間部分においてcBN粒子表面が露出しているcBN粒子を作製することができる。
前記工程(a)と(b)で、まず、切れ間のないAl層とAlN層によって被覆されたcBN粒子を作製するのは、これに続く前記(c)の工程で、Al層とAlN層を合わせた平均層厚を所望の値に制御することができるようにし、かつ、cBN粒子の表面に沿って形成されているAl層とAlN層の切れ間の形成割合を、同様に、所望の値に制御することができるようにするという理由による。
(d)成形工程:
前記の工程(a)および工程(b)、あるいは(a)と(b)と(c)によって作製したAl層とAlN層との2層構造の薄膜で被覆されたcBN粒子を硬質相形成用原料粉末として用意するとともに、さらに、例えば、TiN粉末、Al粉末、TiAl粉末、Al粉末を結合相形成用原料粉末として用意し、これらの原料粉末を所定組成となるように配合し、所定サイズの成形体を作製して予備焼結体を作製する。
(e)焼結工程:
そして、この予備焼結体を、WC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、例えば、通常の焼結条件である圧力:5GPa、温度:1500℃、保持時間:30分間の条件で超高圧高温焼結し、cBN焼結体を作製する。前記超高圧高温焼結処理時に、cBN粒子表面に予め被覆されていたAl層とその上に形成したAlN層との2層構造からなる被覆層において、Al層からAlN層へ酸素原子が拡散することによって、酸素含有AlN層が形成される。
このとき、Al層の上に形成された酸素含有AlN層の層厚が薄いと、酸素含有AlN層を被覆する効果が低減し、耐欠損性が低下する。一方で、Al層の上に形成されたた酸素含有AlN層の層厚が厚いと、Al層と酸素含有AlN層の界面における応力差が大となるため、工具として使用した際に、Al層と酸素含有AlN層の界面にクラックが生じやすくなり、耐欠損性を低下させる。したがって、酸素含有AlN層の層厚を所定の範囲内に制御する。
このようにして作製されたcBN焼結体からcBN工具を作製したところ、このcBN工具は、刃先に高負荷および高温が加わる高硬度鋼の断続切削時においてもクラックが発生しにくく、耐チッピング性および耐欠損性にすぐれており、その結果、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する。
つまり、前記cBN工具においては、cBN粒子表面がAl層と酸素含有AlN層との2層構造からなる被覆層によって被覆されていることから、cBN粒子表面と、該粒子表面を被覆する酸素含有AlN層との熱膨張特性の違いに起因する界面でのクラックの発生が抑制され、このクラックを原因とするチッピング発生、欠損発生が防止される。
さらに、cBN粒子を包囲している被覆層に部分的に切れ間を形成することによって、結合相形成用原料とcBN粒子を包囲している被覆相との接触面積を増やすことができる。よって、結合相によるcBN粒子の保持量を強くし、cBN粒子の脱落による欠損の進行が抑制される。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 立方晶窒化硼素粒子と結合相とを含む焼結体を工具基体とする立方晶窒化硼素焼結体切削工具において、前記立方晶窒化硼素粒子が、Alからなる第1層と該第1層上に形成された酸素含有AlNからなる第2層により構成されている被覆層を有し、前記第1層の平均層厚が1nm〜25nm、第2層の平均層厚が10〜50nmであることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体切削工具。
(2) 前記酸素含有AlN中の酸素含有量が1〜15原子%であることを特徴とする(1)に記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具。
(3) 前記被覆層の表面に部分的に切れ間が形成されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具。
(4) 前記立方晶窒化硼素粒子の断面において前記立方晶窒化硼素粒子の周囲長Hに対する前記被覆層に部分的に形成された切れ間の合計長hの割合を示す平均形成割合h/Hが、0.02≦h/H≦0.20であることを特徴とする(3)に記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具。
(5) 前記立方晶窒化硼素粒子の平均粒径が0.5〜8.0μmであることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具。」
を特徴とするものである。
本発明の構成について、さらに詳細に説明する。
cBN焼結体:
cBN焼結体は、通常、硬質相成分と結合相成分からなるが、本発明のcBN工具の工具基体であるcBN焼結体は、硬質相成分として、Alからなる第1層と該第1層上に形成された酸素含有AlNからなる第2層により構成されている被覆層によって被覆されているcBN粒子を含有しており、さらに被覆層の原料となる薄膜を被覆したcBN粉をボールミルによって混練したcBN粉をcBN焼結体原料として用いることによって、被覆層に部分的に切れ間を形成することもできる。
すなわち、cBN粒子表面が、Alからなる第1層とその上に形成された酸素含有AlNからなる第2層とから構成されている被覆層によって被覆されていることから、Alからなる第1層とその上に形成する酸素含有AlNからなる第2層の層厚を制御することにより、熱膨張特性の違いに起因する圧縮応力を酸素含有AlNに与えることができ、cBN粒子と被覆層との付着力が向上し、焼結工具として使用した際に生じるcBN粒子と被覆層の界面でのクラックの発生が抑制される。
cBNの平均粒径:
本発明で用いるcBN粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、0.5〜8.0μmの範囲であることが好ましい。
硬質なcBN粒子を焼結体内に含むことにより耐欠損性を高める効果に加えて、平均粒径が0.5μm〜8.0μmのcBN粒子を焼結体内に分散することにより、工具使用中に工具表面のcBN粒子が脱落して生じる刃先の凹凸形状を起点とするチッピングを抑制するだけでなく、工具使用中に刃先に加わる応力により生じるcBN粒子と結合相との界面から進展するクラック、あるいはcBN粒子が割れて進展するクラックの伝播を焼結体中に分散したcBN粒子により抑制することにより、すぐれた耐欠損性を有することができる。
したがって、本発明で用いるcBN粒子の平均粒径は、0.5〜8.0μmの範囲とすることが好ましい。
ここで、cBNの平均粒径は、作製したcBN焼結体の断面組織を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)にて観察し、二次電子像を得る。得られた画像内のcBN粒子の部分を画像処理にて抜き出し、画像解析によって各cBN粒子の最大長を求め、それを各cBN粒子の直径とし、この直径より計算し求めた各粒子の体積を基に縦軸を体積百分率[%]、横軸を直径[μm]としてグラフを描画させ、体積百分率が50%の値を取得した1画像におけるcBN粒子の平均粒径とし、少なくとも3画像を処理し求めた値の平均値をcBNの平均粒径[μm]とした。画像処理に用いる観察領域として、cBN粒子の平均粒径3μmの場合、15μm×15μm程度の視野領域が望ましい。
cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合:
cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合が50体積%未満では、焼結体中に硬質物質が少なく、工具として使用した場合に、耐欠損性が低下する。一方、80体積%を超えると、焼結体中にクラックの起点となる空隙が生成し、耐欠損性が低下する。そのため、本発明が奏する効果をより一層発揮するためには、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合は、50〜80体積%の範囲とすることが好ましい。
ここで、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合(体積%)は、cBN焼結体の断面組織をSEMによって観察し、得られた二次電子像内のcBN粒子の部分を画像処理によって抜き出し、画像解析によってcBN粒子が占める面積を算出し、少なくとも3画像を処理し求めた値の平均値をcBN粒子の含有割合(体積%)とした。画像処理に用いる観察領域として、cBN粒子の平均粒径3μmの場合、15μm×15μm程度の視野領域が望ましい。
Alからなる第1層の平均層厚:
cBN粒子表面に被覆形成される被覆層の第1層であるAl層の平均層厚は、1〜25nmとすることが必要である。
平均層厚が1nmより小さいと、酸素含有AlN層に加わる圧縮応力が低下し、耐欠損性が低下するため好ましくない。平均層厚が25nmを超える場合には、酸素含有AlN層に与える圧縮応力が大となり、工具として使用した際に、Al層と酸素含有AlN層の界面にクラックが生じやすくなり、耐欠損性を低下させるため、好ましくない。
したがって、cBN粒子表面に被覆層の第1層であるAl層の平均層厚は、1〜25nmとする。
酸素含有AlNからなる第2層の平均層厚:
cBN粒子表面に形成される被覆層の第2層である酸素含有AlNの平均層厚は、10〜50nmとすることが必要である。
第2層を構成する酸素含有AlNの平均層厚が10nm未満であると、耐欠損性を向上させるという本発明の効果が十分に奏されない。一方、酸素含有AlN層の平均層厚が50nmを超える場合には、第1層であるAl層と第2層である酸素含有AlN層との界面に生じる熱膨張特性差の違いに起因する応力が大となるため焼結工具として使用した際に、cBN粒子表面に形成される第1層であるAl層との界面にクラックが生じやすくなり、耐チッピング性、耐欠損性を低下させることになる。
したがって、cBN粒子表面に被覆層の第2層である酸素含有AlNの平均層厚は、10〜50nmとする。
被覆層に形成する部分的な切れ間:
cBN粒子表面に被覆するAl層と酸素含有AlNからなる2層構造の被覆層には、特に限定されるものではないが、部分的な切れ間が形成されていることが好ましい。ここで、本発明において「部分的な切れ間」とは、切れ間の平均形成割合で定義することができる。すなわち、前記切れ間では、cBN粒子表面がチタンの窒化物等の結合相と実質的に接しており、さらに言えば、cBN粒子の断面においてcBN粒子の周囲長Hに対する被覆層に部分的に形成された切れ間の合計長hの割合を示す切れ間の平均形成割合h/Hが、0.02〜0.20となるように切れ間を部分的に形成することが好ましい。
切れ間の平均形成割合が0.02未満であると、酸素含有AlN層に加わる圧縮応力には影響を及ぼさないが、結合相との付着力を高めるため接触面積を増やす役割の切れ間の量が少なく、切れ間を形成する効果が小さい。一方、切れ間の平均形成割合が0.20を超えると、切れ間の割合が大きくなりすぎて、cBN粒子表面に被覆層を形成することによる本来の効果が低下する。
したがって、cBN粒子表面の被覆層に形成する切れ間の平均形成割合は、0.02〜0.20とすることが好ましい。
酸素含有AlN中の平均酸素濃度:
本発明で用いる酸素含有AlN中の平均酸素濃度は、特に限定されるものではないが、1〜15原子%の範囲であることが好ましい。
焼結体中のcBN粒子を1層目にAl層、2層目に酸素含有AlNが被覆した組織にすることにより、Al層と酸素含有AlN層の熱膨張係数差によって、酸素含有AlN層に圧縮応力を与えることにより耐欠損性を高めることができるだけでなく、酸素含有AlN層中の酸素は、下層のAl層より超高圧高温焼結処理時に供給するため、Al層と酸素含有AlN層との付着強度を高めることができるため、工具使用中に刃先に加わる応力により生じるAl層と酸素含有AlN層との界面から進展するクラックを抑制することにより、すぐれた耐欠損性を有することができる。
なお、cBN焼結体あるいはcBN工具において、酸素含有AlN層中の平均酸素濃度は、後述するALD法によるcBN粒子作製時のcBN粒子表面に被覆するAl層の層厚と、該Al層表面に被覆するAlN層の層厚比で制御することができる。ただし、酸素含有AlN層の層厚に対してAl層の層厚を薄くし過ぎると超高圧高温焼結後のcBN粒子周囲が酸素含有AlN層の単層となり、本発明の構造とならない。また、酸素含有AlN層の平均酸素濃度が高くなるにつれて熱膨張係数はAlに近づくため、平均酸素濃度が高い酸素含有AlN層をcBN粒子周囲に配置する際には、酸素含有AlN層をAl層に比べて薄くすることで酸素含有AlN層に加わる圧縮応力を制御することができる。
したがって、本発明で用いる酸素含有AlN層中の平均酸素濃度は、1〜15原子%の範囲とすることが好ましい。
cBN粒子の平均粒径の測定方法:
cBN焼結体の断面組織をSEMにてcBN焼結体組織を観察し、二次電子像を得る。得られた画像内のcBN粒子の部分を画像処理にて抜き出し、画像解析より求めた各粒子の最大長を各cBN粒子の直径とし、この直径を基に各粒子の体積を計算した。体積は、理想球と仮定して体積の計算を行った(体積=(4×π×半径)/3)。
縦軸を体積百分率[%]、横軸を直径[μm]としてグラフを描画させ、体積百分率が50%の値をcBN粒子の平均粒径とした。
画像は、200個程度の粒子が1画像内で分かる倍率が望ましく、3画像を前記方法にて処理し求めた値の平均値からcBN粒子の平均粒径を算出する。
被覆層を構成している第1層および第2層の平均層厚の測定法:
cBN粒子表面の被覆層を構成している第1層および第2層の平均層厚は、例えば、以下のような測定法により算出することができる。
作製したcBN焼結体の断面を研磨後、集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)を用いて薄片加工し、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy:TEM)により被覆層を構成している第1層および第2層の平均層厚を求めるのに使用するため透過電子像を取得する。
薄片の厚さは、30nm〜130nmが好ましい。30nmより薄いとハンドリングが困難であるためであり、130nmより厚いと像の解析が困難になるため好ましくない。観察領域は、200nm×200nm程度であって、cBN粒子と結合相との界面、および被覆層の全体が観察できる倍率とする。
図1に平均層厚の測定に使用したTEM像の例として第1層と第2層の合計平均層厚が50nmの被覆層を有するcBN粒子の断面画像を示している。
前述の方法により取得した断片的かつ複数の断面画像において、TEMの機能を用いてAlとNとOとTiの元素マッピングを行い、AlとOが重なる部分の厚みを第1層の厚み、AlとNが重なる部分の厚みを第2層の厚みとした。各々において1画像中において少なくとも3ヶ所の厚みを測定し、さらに少なくとも他の場所の2画像についても同様に測定を行い、これら平均値から第1層および第2層の平均層厚を算出する。
切れ間の平均形成割合h/Hの測定:
本発明では、cBN粒子表面の第1層がAl層、第2層が酸素含有AlN層からなる被覆膜に形成した切れ間長hと、cBN粒子の表面の周囲長Hとの割合は、例えば、以下の様な測定法により算出することができる。
即ち、cBN焼結体を作製後、焼結体の断面を研磨し、さらに、図2に示すようにFIBで断面を加工し、走査型イオン顕微鏡(Scanning Ion Microscopy:SIM)により、奥行きの異なる複数の断面画像を取得する。
図2は、FIBで焼結体を断面加工する場合の例を示し、直方体形状の焼結体の正面の一部であって、縦および横の寸法がそれぞれ20μmの正方形の領域(観察領域)について、SIM観察像を取得する。
FIB加工は、奥行き方向で200nmごとに行い、その都度前記観察領域のSIM像を取得する。これは、奥行き方向で粒子全体が前記複数の断面画像に収まっているcBN粒子のデータを、後の分析に必要とされる充分数、取得するためである。断面加工する長さ(奥行き)は、(使用したcBN粒子の平均粒径+1μm)以上とする。
上述の手順で得られた断片的かつ複数の断面画像において、1つのcBN粒子の全容が分かるcBN粒子に注目する。ここで、1つのcBN粒子の全容が分かるとは、前記観察領域中に、そのcBN粒子全体像が含まれ、かつ奥行き方向で粒子全体が前記複数の断面画像に収まっていることを意味する。そのcBN粒子について、cBN粒子の表面の周囲長Hと、切れ間の合計長さhを測定し、切れ間の形成割合h/Hを求める。さらに、少なくとも10個以上のcBN粒子について、同じく切れ間の形成割合h/Hを測定し、これらの平均値から、切れ間の平均形成割合h/Hの値を算出することができる。但し、cBN粒子表面に被覆膜がない場合は除く。
より具体的に、切れ間の平均形成割合h/Hの測定・算出手順を述べると、以下のとおりである。
N = 測定するcBN粒子総数
n = 測定するcBN粒子の識別番号 ≦ N
M = cBN粒子nにおいて測定に使用する総取得画像数
m = cBN粒子nにおいて測定に使用する取得画像の識別番号 ≦ M
H = cBN粒子の周囲長
h = 被覆膜の切れ間長
と定義した場合、
(a)まず、ある1つのcBN粒子nにおける1断面画像において長さ情報を測定する。
例えば、総取得画像数が13枚、cBN粒子の識別番号=1とする粒子が1画像目から8画像目で全容が分かり、4画像目において長さ情報を測定する場合(n=1、M=8、m=4)、
cBN粒子の周囲長 = Hmn = H41
被覆膜の切れ間長 = hmn = h41
となる。
(b)次いで、ある1つのcBN粒子nにおける切れ間の形成割合を算出する。
例えば、総取得画像数が13枚、cBN粒子の識別番号=1とする粒子が1画像目から8画像目で全容が分かり、これらから切れ間の割合を算出する場合(n=1、M=8、m=1〜8)、
cBN粒子の表面の全周平均長さH
= [(H1n+H2n+・・・+Hmn)/M]
であるから、
= [(H11+H21+・・・+ H81)/8]
となる。
また、切れ間の合計平均長さh
= [(h1n+h2n+・・・+hmn)/M]
であるから、
= [(h11+h21+・・・+h81)/8]
となる。
よって、切れ間の形成割合h/Hは、
/H = h/H
となる。
(c)次いで、切れ間の平均形成割合を算出する。
例えば、cBN粒子を15個測定する場合(N=15、n=1〜15)、
切れ間の平均形成割合[h/H]
=[((h/H)+(h/H)+・・・+(h/H))/N]
である。
したがって、切れ間の平均形成割合[h/H]は、
[h/H]
=[((h/H)+(h/H)+・・・+(h15/H15))/15]
から求めることができる。
酸素含有AlN層中の平均酸素濃度の測定:
cBN粒子表面を被覆する酸素含有AlN層中の平均酸素濃度は、cBN焼結体を作製した後、その断面を研磨後、FIBを用いて薄片加工し、TEMにより、透過電子像を取得する。ついで、同断面画像内におけるcBN粒子から酸素含有AlN層にかけた領域のAl、Ti、O、Nの4元素について元素ライン分析を行い、この4元素の分析結果を基にした各元素の原子%を算出することによって、cBN粒子周囲の酸素含有AlN層中の平均酸素濃度Yを求めることができる。
ライン分析の際の位置の細かさは観察精度の観点から、1.0nm程度で行うことが好ましい。加工する薄片の厚さは、30nm〜130nmが好ましい。30nmより薄いとハンドリングが困難であるためであり、130nmより厚いと像の解析が困難になるため好ましくない。平均酸素濃度Yを求める際、酸素含有AlN層の層厚を利用することから、観察倍率は、cBN界面と酸素含有AlN層の層全体が分かる倍率とし、倍率×80k程度が好ましい。透過電子像は、厚み方向に含まれる情報を投影する事から、研磨面に対してcBN界面が垂直になっている部位を観察することが好ましい。
例えば、図3のように酸素含有AlN層中の平均酸素濃度の測定に使用した酸素原子%と位置の関係のグラフの例として、あらかじめTEM像からcBN粒子上に第1層の平均層厚が25nm、第2層の平均層厚が30nmの被覆層があることを確認した部分の酸素原子%と位置の関係のグラフを示す。図3からTEM像の膜厚に対応する酸素含有AlN層部分より酸素濃度の平均値を求め、少なくとも3ヶ所について測定し、それらの平均値よりcBN粒子周囲の酸素含有AlN層中の平均酸素濃度を算出する。
第1層にAl層と第2層にAlN層を被覆したcBN粒子を硬質相形成用原料粉末とし、また、チタンの窒化物等の粉末を結合相形成用原料粉末とし、両原料粉末を所定配合組成になるように配合し、通常の超高圧高温条件下で焼結することにより、cBN焼結体を作製する。
なお、cBN焼結体中の他の構成成分としては、cBN焼結体に通常含有される成分、即ち、周期律表4a、5a、6a族元素の窒化物、炭化物、ほう化物、酸化物ならびにこれらの固溶体からなる群の中から選択された少なくとも一種以上が含有されることを何ら妨げるものではない。
本発明は、cBN粒子と結合相とを含む焼結体を工具基体とするcBN工具において、cBN粒子が、Alからなる所定の層厚の第1層と該第1層上に形成された酸素含有AlNからなる所定の層厚の第2層により構成されている被覆層を有していることにより、高負荷な切削時においてもクラックの発生しにくく耐欠損性の高い、高靭性な焼結体とすることができる。
さらに、被覆層の第2層である酸素含有AlN中の酸素含有量が1〜15原子%であることにより、酸素含有AlNに加わる残留応力の効果ならびに被覆層の第1層と第2層との付着力向上効果が得られるため、その結果、一層すぐれた耐欠損性を奏する。
さらに、被覆層の表面に部分的に切れ間を形成することにより、結合相形成用原料とcBN粒子を包囲している被覆相との接触面積を増やすことができる。よって、結合相によるcBN粒子の保持量を強くし、cBN粒子の脱落による欠損の進行が抑制されるため、高負荷な切削時においても一層、耐欠損性の高い、高靭性な焼結体とすることができる。
第1層のAl層と第2層の酸素含有AlN層の平均層厚の測定に用いた合計平均層厚50nmの被覆層を有するcBN粒子の断面画像を示す。なお、図中のAlN(O)層は、酸素含有AlN層を意味している。 FIBによる断面加工と、SIMによる断面画像取得の概略説明図を示す。 酸素含有AlN層中の平均酸素濃度の測定に用いたcBN粒子上に合計平均層厚55nmの被覆層部分の酸素原子%と位置の関係のグラフを示す。なお、図中のAlN(O)層は、酸素含有AlN層を意味している。
以下に、本発明のcBN工具を実施例に基づいて具体的に説明する。
原料粉末としてのcBN粒子の作製:
平均粒径0.5〜8.0μmのcBN粒子を基材とし、これに、ALD法(Atomic Layer Deposition:真空チャンバ内の基材に、原料化合物の分子を一層ごと反応させ、Arや窒素による原料化合物のパージを繰り返し行うことで成膜する方法で、CVD法の一種)を用い、薄層のAl層を被覆形成した。より具体的にいえば、炉内に、平均粒径0.5〜8.0μmのcBN粒子を装入し、炉内を350℃に昇温し、成膜用ガスとして、Alの先駆体であるAl(CHガス、および、反応ガスとしてHOガスを用い、
(1)Ar+Al(CHガス流入工程、
(2)Arガスパージ工程、
(3)Ar+HOガス流入工程、
(4)Arガスパージ工程
前記(1)〜(4)を1サイクルとして、このサイクルを目標層厚になるまで繰り返し行い、所定の層厚のAl層をcBN粒子表面に被覆形成する。
AlN層成膜工程:
ついで、ALD法によりAl層の上にAlN層を成膜する。
具体的には、Al層によって被覆されたcBN粒子を炉内に装入した後、炉内を350℃に昇温し、原料ガスとしてAlClガス、NHガスを用い、
(5)Ar+AlClガス流入工程、
(6)Arガスパージ工程、
(7)Ar+NHガス流入工程、
(8)Arガスパージ工程
前記(5)〜(8)を1サイクルとして、このサイクルを目標層厚になるまで繰り返し行い、Al層の上に所定の層厚のAlN層を得る。
切れ間形成工程:
なお、Al層とAlN層との2層構造からなる被覆層が形成されたcBN粒子と超硬合金製ボール(直径1mm)とを、cBN粒子と超硬合金製ボールの割合が、重量比で1:10〜20となるように配合し、超硬合金製容器内へ装入し、有機溶剤を加え、ボールミルの回転数50rpm、攪拌時間0.25〜3.0時間の条件において混合攪拌することにより、被覆層に所定の平均形成割合の部分的な切れ間を形成し、切れ間部分においてcBN粒子表面が露出しているcBN粒子を作製することができる。
成形工程:
前述の工程によって作製したAl層とAlN層との2層構造の薄膜で被覆されたcBN粒子(切れ間無、および、平均形成割合0.02乃至0.20の切れ間有)を硬質相形成用原料粉末として用意するとともに、いずれも0.3〜0.9μmの範囲内の平均粒径を有するTiN粉末、TiC粉末、Al粉末、TiAl粉末、Al粉末、WC粉末を結合相形成用原料粉末として用意し、これら原料粉末の中から選ばれたいくつかの原料粉末とcBN粒子粉末の合量を100体積%としたときのcBN粒子粉末の含有割合が60体積%となるように配合し、湿式混合し、乾燥した後、油圧プレスにて成形圧1MPaで直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法にプレス成形し、ついでこの成形体を、圧力:1Pa以下の真空雰囲気中、1000℃で30分間保持して熱処理し、揮発成分および粉末表面への吸着成分を除去して予備焼結体とし、この予備焼結体を別途用意したCo:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:5GPa、温度:1500℃、保持時間:30分間の条件で超高圧高温焼結し、cBN焼結体円板を作製する。この超高圧高温焼結処理時に、cBN粒子表面に予め被覆されていたAl層とその上に形成したAlN層との2層構造からなる被覆層において、Al層からAlN層へ酸素原子が拡散することによって、酸素含有AlN層が形成される。
加工工程:
このcBN焼結体円板をワイヤー放電加工機で所定寸法に切断し、Co:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびISO規格CNGA120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ag:残りからなる組成を有するAg系ろう材を用いてろう付けし、上下面および外周研磨、ホーニング処理を施すことによりISO規格CNGA120408のインサート形状をもった本発明cBN工具1〜20を製造した。
その結果を表1に示す。なお、表のAlN(O)層は、酸素含有AlN層を意味している。
比較のため、原料粉末として、AlN層を被覆したcBN粉末、あるいは超高圧高温焼結後に酸素含有AlN層単層となるようAl層上にAlN層を被覆したcBN粉末、あるいは本発明で規定した範囲外の平均層厚のAl層および/またはAlN層を被覆したcBN粒子粉末、あるいは本発明で規定した範囲外の平均粒径のcBN粒子にAl層とAlN層との2層構造を被覆したcBN粉末を用意した。また、いずれも0.3〜0.9μmの範囲内の平均粒径を有するTiN粉末、TiC粉末、Al粉末、TiAl粉末、Al粉末、WC粉末を結合相形成用原料粉末として用意し、これら原料粉末の中から選ばれたいくつかの原料粉末とcBN粒子粉末の合量を100体積%としたときのcBN粒子粉末の含有割合が60体積%となるように配合した後、本発明の場合と同様な処理操作(乾燥、成形、熱処理、予備焼結、焼結等)を行うことにより、比較品cBN工具21〜35を製造した。
その結果を表2に示す。なお、表のAlN(O)層は、酸素含有AlN層を意味している。
なお、表1および表2中の焼結体の結合相組成は、cBN焼結体のXRD(X−ray Diffraction)により決定した。
本発明cBN工具1〜20および比較品cBN工具21〜35について、
被削材:浸炭焼き入れ鋼SCM415(HRC=58〜62)の軸方向に8本の溝入りφ100mm丸棒、
切削速度:150m/min.、
切り込み:0.2mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削油:乾式
という切削条件で、最大切削長を1200mとし、切削長100m毎に刃先のチッピング、欠損の有無を確認した。
表3および表4に、前記切削加工試験の結果を示す。
表1〜4に示される結果から、本発明cBN工具1〜20は、cBN粒子が、Alからなる所定の層厚の第1層と該第1層上に形成された酸素含有AlNからなる所定の層厚の第2層により構成されている被覆層を有していることにより、高負荷・高温が加わる切削時においてもクラックの発生しにくく耐欠損性の高い、高靭性な焼結体とすることができるため、断続的・衝撃的負荷が作用する高硬度鋼の断続切削加工に用いた場合でも、チッピング、欠損の発生は抑制される。その結果、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する。
これに対して、比較品cBN工具21〜35は、cBN粒子表面に本発明で規定したような被覆層を有していないため、耐チッピング性、耐欠損性に劣り、いずれも高硬度鋼の断続切削加工に用いた場合には、比較的短時間で寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明のcBN工具は、耐チッピング性、耐欠損性にすぐれることから、高硬度鋼の断続切削以外の切削条件でも適用可能であり、切削加工装置の高性能化ならびに切削加工の省力化および省エネ化、低コスト化に十分満足に対応できる。

Claims (5)

  1. 立方晶窒化硼素粒子と結合相とを含む焼結体を工具基体とする立方晶窒化硼素焼結体切削工具において、前記立方晶窒化硼素粒子が、Alからなる第1層と該第1層上に形成された酸素含有AlNからなる第2層により構成されている被覆層を有し、前記第1層の平均層厚が1nm〜25nm、第2層の平均層厚が10〜50nmであることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体切削工具。
  2. 前記酸素含有AlN中の酸素含有量が1〜15原子%であることを特徴とする請求項1に記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具。
  3. 前記被覆層の表面に部分的に切れ間が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具。
  4. 前記立方晶窒化硼素粒子の断面において前記立方晶窒化硼素粒子の周囲長Hに対する前記被覆層に部分的に形成された切れ間の合計長hの割合を示す平均形成割合h/Hが、0.02≦h/H≦0.20であることを特徴とする請求項3に記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具。
  5. 前記立方晶窒化硼素粒子の平均粒径が0.5〜8.0μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具。
JP2013114719A 2013-05-30 2013-05-30 耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具 Active JP6098882B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013114719A JP6098882B2 (ja) 2013-05-30 2013-05-30 耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013114719A JP6098882B2 (ja) 2013-05-30 2013-05-30 耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014233767A JP2014233767A (ja) 2014-12-15
JP6098882B2 true JP6098882B2 (ja) 2017-03-22

Family

ID=52136864

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013114719A Active JP6098882B2 (ja) 2013-05-30 2013-05-30 耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6098882B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111057925A (zh) * 2019-12-31 2020-04-24 富耐克超硬材料股份有限公司 聚晶金刚石立方氮化硼复合片及其制备方法

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7015979B2 (ja) 2018-03-14 2022-02-04 三菱マテリアル株式会社 cBN焼結体および切削工具
KR102318672B1 (ko) * 2019-10-29 2021-11-01 (주)에디코 입방정 질화붕소 입자 및 그 제조방법

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6033893B2 (ja) * 1981-10-06 1985-08-06 三菱マテリアル株式会社 切削および耐摩耗工具用高靭性窒化硼素基超高圧焼結材料
JPH05186272A (ja) * 1992-01-09 1993-07-27 Toshiba Tungaloy Co Ltd 複合高密度相窒化ホウ素焼結体
JP3146803B2 (ja) * 1993-11-04 2001-03-19 三菱マテリアル株式会社 耐摩耗性に優れた立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料の製造方法
JP5126702B1 (ja) * 2011-09-12 2013-01-23 三菱マテリアル株式会社 立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN111057925A (zh) * 2019-12-31 2020-04-24 富耐克超硬材料股份有限公司 聚晶金刚石立方氮化硼复合片及其制备方法
CN111057925B (zh) * 2019-12-31 2021-08-20 富耐克超硬材料股份有限公司 聚晶金刚石立方氮化硼复合片及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014233767A (ja) 2014-12-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5305056B1 (ja) 立方晶窒化ほう素基焼結体製切削工具
TWI457445B (zh) Metal cermet
JP6634647B2 (ja) 耐チッピング性、耐摩耗性にすぐれた表面被覆切削工具
JP6703757B2 (ja) サーメット、及び切削工具
JP6343888B2 (ja) 耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具
JP5126702B1 (ja) 立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具
JP6637664B2 (ja) 立方晶窒化硼素焼結体切削工具
JP6290872B2 (ja) cBN材料の製造方法
EP2980046A1 (en) Method for manufacturing cubic boron nitride sintered body, and cubic boron nitride sintered body
JP5988164B2 (ja) 立方晶窒化ほう素基焼結材料製切削工具
JP5716577B2 (ja) 硬質材料とその製造方法、並びに切削工具
JP6575858B2 (ja) 耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具
JP5892423B2 (ja) 靭性にすぐれたcBN焼結体切削工具
JP2010234519A (ja) サーメットおよび被覆サーメット
JP5594568B2 (ja) 立方晶窒化ホウ素基超高圧焼結材料製切削工具及び表面被覆立方晶窒化ほう素基超高圧焼結材料製切削工具
JP6928218B2 (ja) 表面被覆立方晶窒化ホウ素焼結体工具
JP6098882B2 (ja) 耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具
CN104942555B (zh) 立方晶氮化硼基超高压烧结材料制切削工具
EP3309267B1 (en) Cemented carbide and coated cemented carbide
JP6843096B2 (ja) 立方晶窒化硼素焼結体、及び、立方晶窒化硼素焼結体を有する工具
JP2012041595A (ja) サーメット
CN105693253B (zh) 耐缺损性优异的立方晶氮化硼烧结体切削工具
JP7336062B2 (ja) 立方晶窒化硼素焼結体及び被覆立方晶窒化硼素焼結体
EP4140967A1 (en) Cubic boron nitride sintered body and coated cubic boron nitride sintered body
JP2024138951A (ja) cBN焼結体

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160331

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170119

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170126

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170208

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6098882

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150