JP6843096B2 - 立方晶窒化硼素焼結体、及び、立方晶窒化硼素焼結体を有する工具 - Google Patents

立方晶窒化硼素焼結体、及び、立方晶窒化硼素焼結体を有する工具 Download PDF

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本発明は、立方晶窒化硼素焼結体、及び、立方晶窒化硼素焼結体を有する工具に関する。
立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素(cBN)と結合相を含む。一般的に、結合相の材料の一部には、Alが使用される。結合相の材料にAlが使用されるのは、Alが酸化することによって原料粉の表面に吸着している酸素が除去されるため、焼結反応を促進することができるためである。
従来のcBN焼結体は、結合相の材料として、Ti化合物およびAl化合物を含む材料を用いていた。そのため、従来のcBN焼結体の焼結過程では、Al、AlN、及びTiBが反応により生成していた。
例えば、特許文献1には、Tiの炭化物、窒化物、及び炭窒化物のうち1種または2種以上:20〜50容量%、炭化タングステン:0.1〜2容量%、窒化アルミニウム:3〜7容量%、硼化チタニウム:1〜5容量%、酸化アルミニウム:5〜10容量%、および立方晶窒化硼素:30〜65容量%からなる立方晶窒化硼素焼結体について記載されている。
特許文献2には、直径10nm〜100nmの微粒Alが結合相中に分散、生成しており、結合相の断面1μm×1μmの領域において、前記微粒Alが30個以上生成していることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体を有する切削工具について記載されている。
特開平8−040781号公報 特開2015−193072号公報
近年の切削加工は高能率化が求められており、高速化、高送り化および深切り込み化がより顕著となっている。また、近年の切削加工では、従来よりも工具の耐摩耗性を向上させることが求められている。
立方晶窒化硼素焼結体を工具として用いる際、熱伝導性に劣るAlや機械的強度に劣るAlNは、工具の耐摩耗性を低下させる原因となりやすい。特に、これらのAl化合物は、刃先温度が高くなる高速切削時の耐摩耗性に大きな影響を与える。
このような背景において、特許文献1に記載の立方晶窒化硼素焼結体を有する工具は、高速加工における耐摩耗性が十分ではないという問題がある。特許文献2に記載の立方晶窒化硼素焼結体を有する工具も、高速加工における耐摩耗性が十分ではないという問題がある。
本発明は、優れた耐摩耗性を有することによって、工具寿命を延長することができる立方晶窒化硼素焼結体及びそれを用いた工具を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決するため、立方晶窒化硼素焼結体の結合相中に分散しているAl化合物の粒径及び態様に着目して研究を行った。その結果、Al化合物の粒径が大きいほど、立方晶窒化硼素焼結体の耐摩耗性が低下する傾向があることを発見した。また、Al化合物が結合相中に高頻度に分散しているほど、立方晶窒化硼素焼結体の耐摩耗性が低下する傾向があることを発見した。
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]立方晶窒化硼素と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、
前記立方晶窒化硼素の含有量は、40体積%以上60体積%未満であり、
前記結合相の含有量は、40体積%を超え60体積%以下であり、
前記立方晶窒化硼素の平均粒径は、1.0μm以上3.0μm未満であり、
前記結合相は、Al化合物と、Ti化合物とを含み、
前記Ti化合物は、主にTiの窒化物からなり、
前記Al化合物の含有量は、1.0体積%以上7.0体積%未満であり、
前記Al化合物は、Alの酸化物、窒化物及び硼化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物からなり、
前記Al化合物の平均粒径は、0.1μm未満であり、
以下の(1)〜(6)の手順によって求められる平均接触数Nが1.0未満である、立方晶窒化硼素焼結体。
(1)前記立方晶窒化硼素焼結体の断面の反射電子像をSEMにより撮影する。
(2)上記(1)で得られた画像中に、5本の線分を等間隔に引く。これらの線分は互いに平行であり、かつ、画像を6等分する。
(3)上記(2)で引いた5本の線分上において、cBN粒子によって挟まれた区間の数を測定する。
(4)上記(2)で引いた5本の線分上において、cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数を測定する。
(5)上記(1)〜(4)の手順を、前記立方晶窒化硼素焼結体における互いに十分に離れた3箇所以上で繰り返す。
(6)上記(4)において測定されたAl化合物の数の合計を、上記(3)において測定された区間の数の合計で除することによって、平均接触数Nを算出する。
[2]前記立方晶窒化硼素の含有量は、45体積%以上55体積%未満である、上記[1]に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[3]前記Al化合物は、Al及びAlNからなる、上記[1]または[2]に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[4]前記立方晶窒化硼素焼結体の上に形成された被覆層を備える、上記[1]から[3]のうちいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[5]前記被覆層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、OおよびBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる、上記[4]に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[6]前記被覆層が、単層構造、または、2層以上を含む積層構造を有する、上記[4]または[5]に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[7]前記被覆層全体の平均厚さが、1.0μm以上5.0μm以下である、上記[4]から[6]のうちいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[8]上記[1]から[7]のうちいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体を有する工具。
本発明によれば、優れた耐摩耗性を有することによって、工具寿命を延長することができる立方晶窒化硼素焼結体及びそれを用いた工具を提供することができる。
cBN焼結体のSEMによる反射電子像の模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素(cBN)と結合相とを含む。立方晶窒化硼素(cBN)の含有量は、40体積%以上60体積%未満であり、好ましくは、45体積%以上55体積%未満である。結合相の含有量は、40体積%を超え60体積%以下であり、好ましくは、45体積%を超え55体積%以下である。
cBNの含有量が40体積%未満の場合、結合相の割合が高くなるため、cBN焼結体の機械的強度が低下し、cBN焼結体を用いた工具の耐欠損性が低くなる。一方、cBNの含有量が60体積%以上の場合、鉄との耐反応性に劣るcBNの割合が高くなるため、cBN焼結体の耐摩耗性が低くなる。なお、cBNおよび結合相の含有量(体積%)は、cBN焼結体の任意の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影し、撮影したSEM写真を市販の画像解析ソフトで解析することで求めることができる。
cBN焼結体に含まれるcBNの平均粒径は、1.0μm以上3.0μm未満である。cBNの平均粒径が1.0μm未満であると、cBN焼結体の熱伝導率が低下することで切削熱が上昇するため、cBN焼結体の耐反応摩耗性が低下する。一方、cBNの平均粒径が3.0μm以上の場合、相対的に機械的強度に劣る結合相の厚みが大きくなるため、cBN焼結体の耐欠損性が低下する。cBNの平均粒径は、好ましくは、1.5μm以上2.5μm未満である。
cBNの平均粒径は、例えば、以下のように求めることができる。
cBN焼結体の断面組織をSEMによって撮影する。撮影した断面組織内のcBN粒子の面積を求め、この面積と等しい面積の円の直径をcBNの粒径として求める。複数のcBN粒子の粒径の平均値を、cBNの平均粒径として求める。cBNの平均粒径は、cBN焼結体の断面組織の画像から、市販の画像解析ソフトを用いて求めることができる。
本実施形態のcBN焼結体において、結合相は、Ti化合物と、Al化合物とを含む。
Ti化合物は、主にTiの窒化物(TiN)からなる。ここでいう「主に」とは、Ti化合物の全部または大部分がTiの窒化物であることを意味する。具体的には、Ti化合物の(200)面のX線回折におけるピーク位置(2θ)が42.4°以上42.8°以下の場合は、Ti化合物が主にTiの窒化物からなるといえる。Ti化合物の(200)面のX線回折において41.7°以上42.8°以下の範囲に複数のピークを確認することができる場合は、42.4°以上42.8°以下の範囲に最高のピークが存在する場合に、Ti化合物が主にTiの窒化物からなるといえる。
また、Ti化合物は、Tiの炭化物(TiC)及びTiの炭窒化物(TiCN)を実質的に含まないことが好ましい。Ti化合物にTiの炭化物やTiの炭窒化物が含まれる場合、これらはTiの窒化物と比較して鉄系被削材との耐反応性に劣るため、cBN焼結体の耐摩耗性が低下する。
結合相に含まれるAl化合物の含有量は、cBN焼結体全体に対して、1.0体積%以上7.0体積%未満である。Al化合物の含有量が1.0体積%未満の場合、結合相中のAl含有量が低くなるため、焼結反応が不十分となり、cBN焼結体の耐欠損性が低くなる。一方、Al化合物の含有量が7.0体積%以上の場合、熱伝導率に劣るAlおよび機械的強度に劣るAlNが結合相中に過剰に存在するため、高速切削時の耐摩耗性が低くなる。Al化合物の含有量は、好ましくは、1.0体積%以上4.0体積%未満である。なお、Al化合物の含有量(体積%)は、cBN焼結体の任意の断面をSEMで撮影し、撮影したSEM写真を市販の画像解析ソフトで解析することで求めることができる。
結合相に含まれるAl化合物は、Alの酸化物、窒化物、及び硼化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物からなる。このようなAl化合物の例として、Al、AlN、硼化アルミニウムなどを挙げることができる。
本実施形態のcBN焼結体は、結合相に含まれるAl化合物の粒径が従来よりも小さいことを特徴とする。具体的には、結合相に含まれるAl化合物の平均粒径が0.1μm未満である。Al化合物の平均粒径が0.1μm以上の場合、熱伝導率に劣るAlおよび機械的強度に劣るAlNの粗大な相がcBN焼結体中に存在することとなり、高速切削時の耐摩耗性が低くなる。
Al化合物の平均粒径は、例えば、以下のように求めることができる。
cBN焼結体の断面組織をSEMによって撮影する。撮影した断面組織内のAl化合物の面積を求め、この面積と等しい面積の円の直径をAl化合物の粒径として求める。複数のAl化合物の粒径の平均値を、Al化合物の平均粒径として求める。Al化合物の平均粒径は、cBN焼結体の断面組織の画像から、市販の画像解析ソフトを用いて求めることができる。
また、本実施形態のcBN焼結体は、結合相中にAl化合物が低頻度に分散していることを特徴とする。具体的には、cBN焼結体の断面において、互いに隣接する2つのcBN粒子を結ぶ線分に接触するAl化合物の平均接触数Nが1.0未満である。
以下、「平均接触数N」の測定方法について具体的に説明する。
(1)まず、cBN焼結体の断面について、SEMにより、反射電子像を撮影する。
(2)上記(1)で得られた画像中に、5本の線分を等間隔に引く。これら線分は互いに平行であり、かつ、画像を6等分する。画像を6等分するように線分を引くのは、測定が恣意的にならないようにするためである。
(3)上記(2)で引いた5本の線分上において、cBN粒子によって挟まれた区間の数を測定する。具体的には、線分上に複数のcBN粒子が存在する場合、互いに隣接する2つのcBN粒子によって挟まれた区間の数を測定する。
(4)上記(2)で引いた5本の線分上において、cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数を測定する。具体的には、線分上に複数のcBN粒子が存在する場合、互いに隣接する2つのcBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数を測定する。
(5)上記(1)〜(4)の手順を、前記cBN焼結体における互いに十分に離れた3箇所以上で繰り返す。
(6)上記(4)において測定されたAl化合物の数の合計を、上記(3)において測定された区間の数の合計で除することによって、平均接触数Nを算出する。
上記(1)で撮影するSEMによる反射電子像の倍率は、1視野中のcBN粒子に挟まれた区間の数が10〜30となる程度であることが好ましい。
上記(2)及び(5)を実施することによって、測定毎に「平均接触数N」の値が大きく変動することを防止することが可能であり、再現性の高い測定を実施することができる。
上記(5)における「十分に離れた距離」とは、例えば、(1)において撮影された画像の長辺の10倍以上離れた距離を意味する。
図1は、cBN焼結体のSEMによる反射電子像の模式図である。図1に示すように、cBN焼結体は、cBN1と、結合相2を含む。結合相2は、Ti化合物3と、Al化合物4を含む。cBN粒子によって挟まれた区間5上には、Al化合物6が存在する。反射電子像中には、5本の線分L1〜L5が引かれている。5本の線分L1〜L5は、互いに平行であり、画像を6等分している。
線分L1において、cBN粒子によって挟まれた区間の数は、4である。cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数は、1である。
線分L2において、cBN粒子によって挟まれた区間の数は、3である。cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数は、1である。
線分L3において、cBN粒子によって挟まれた区間の数は、2である。cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数は、1である。
線分L4において、cBN粒子によって挟まれた区間の数は、3である。cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数は、0である。
線分L5において、cBN粒子によって挟まれた区間の数は、0である。cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数は、0である。
線分L1〜L5において、cBN粒子によって挟まれた区間の数の合計は、12である。cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数の合計は、3である。後者を前者で除することによって、平均接触数Nを算出することができる。すなわち、平均接触数N=3/12=0.25となる。
なお、1つのSEMによる反射電子像から平均接触数Nを算出する例を示したが、実際には、立方晶窒化硼素焼結体における互いに十分に離れた3箇所以上で同様の測定を繰り返す。すなわち、立方晶窒化硼素焼結体における互いに十分に離れた3箇所以上で、SEMによる反射電子像を撮影する。撮影された複数の画像のそれぞれにおいて、cBN粒子によって挟まれた区間の数と、cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数を測定する。そして、cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数の合計を、cBN粒子によって挟まれた区間の数の合計で除することによって、平均接触数Nを算出する。
上述したように、本実施形態のcBN焼結体は、平均接触数Nが1.0未満であることを特徴とする。平均接触数Nが1.0以上の場合、熱伝導率に劣るAlおよび機械的強度に劣るAlNが結合相中に高頻度に分散していることとなり、高速切削時の耐摩耗性が低くなる。平均接触数Nは、好ましくは、0.7未満である。
本実施形態のcBN焼結体は、不純物を不可避的に含有してもよい。不純物の例としては、原料粉末に含まれるリチウムなどが挙げられる。通常、不可避的不純物の含有量は、cBN焼結体全体に対して1質量%以下である。したがって、不可避的不純物が、cBN焼結体の特性値に影響を及ぼすことはほとんどない。
cBN焼結体の表面に、被覆層が形成されてもよい。被覆層が形成されることによって、cBN焼結体の耐摩耗性がさらに向上する。被覆層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、OおよびBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含むことが好ましい。また、被覆層は、単層構造、又は、2層以上を含む積層構造を有してもよい。被覆層がこのような構造を有する場合、cBN焼結体の耐摩耗性が向上する。
被覆層を形成する化合物の例として、TiN、TiC、TiCN、TiAlN、TiSiN、及び、CrAlNなどを挙げることができる。被覆層は、組成が異なる複数の層を交互に積層した構造を有してもよい。この場合、各層の平均の厚みは、例えば5nm以上500nm以下である。
被覆層全体の平均厚さは、1.0μm以上5.0μm以下であることが好ましい。被覆層全体の平均厚さが1.0μm未満である場合、耐摩耗性が低下する傾向がある。被覆層全体の平均厚さが5.0μmを超える場合、耐欠損性が低下する傾向がある。
本実施形態のcBN焼結体は、耐摩耗性及び耐欠損性に優れるため、切削工具や耐摩耗工具として使用されると好ましく、その中でも切削工具として使用されると好ましい。本実施形態のcBN焼結体は、焼結金属用切削工具や鋳鉄用切削工具として使用されるとさらに好ましい。本実施形態のcBN焼結体を切削工具や耐摩耗工具として用いた場合、従来よりも工具寿命を延長することができる。
本実施形態のcBN焼結体は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
原料粉末として、cBN粉末と、Al粉末と、Ti化合物粉末とを準備する。準備した原料粉末を、超硬合金製ボールと溶媒とパラフィンとともにボールミル用シリンダーに入れて混合する。混合した原料粉末をZr製の高融点金属カプセル内に充填し、粉末の表面に吸着している水分及び酸素を除去するため、カプセルを開放したまま真空熱処理を行う。次に、カプセルを密封し、カプセルに充填されている原料粉末を高圧で焼結させる。高圧焼結の条件は、例えば、圧力:4.0〜6.0GPa、温度:1200〜1500℃、焼結時間:60分以下である。
また、本実施形態のcBN焼結体をレーザーカット加工機などにより所定の形状に加工して、cBN焼結体を備えた切削工具または耐摩耗工具を製造することができる。
また、本実施形態のcBN焼結体の表面に、従来から知られているCVD法またはPVD法によって被覆層を形成することにより、被覆層を備えたcBN焼結体を製造することができる。
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
[原料粉末の調製]
立方晶窒化硼素(cBN)粉末、TiN粉末、TiC粉末、TiCN粉末、及びAl粉末を、以下の表1に示す比率で混合した。cBN粉末及びAl粉末の平均粒径は、表1に示す通りである。TiN、TiC、及びTiCN粉末の平均粒径は、1.0μmである。なお、原料粉末の平均粒径は、米国材料試験協会(ASTM)規格B330に記載のフィッシャー法(Fisher Sub-Sieve Sizer(FSSS))により測定されたものである。
[原料粉末の混合]
原料粉末を、超硬合金製ボールとヘキサン溶媒とパラフィンとともにボールミル用のシリンダーに入れてさらに混合した。ボールミルで混合した原料粉末を、Zr製の高融点金属カプセル内に充填し、粉末の表面に吸着している水分及び酸素を除去するため、カプセルを開放したまま真空熱処理を行った。
[高圧焼結]
その後、カプセルを密封し、カプセルに充填されている原料粉末を高圧で焼結させた。高圧焼結の条件を、以下の表2に示す。
[SEM画像による分析]
高圧焼結によって得られたcBN焼結体の組成を分析した。具体的には、cBN焼結体の断面組織の反射電子像をSEMによって3,000〜30,000倍程度で撮影し、撮影した写真の画像解析により得られる面積比から、cBN、Ti化合物およびAl化合物の含有率(体積%)を求めた。また、撮影した写真の画像解析により、cBN粒子の平均粒径、及び、結合相に含まれるAl化合物の平均粒径を測定した。さらに、上記(1)〜(6)で説明した手順に従い、2つのcBN粒子を結ぶ線分に接触するAl化合物の平均接触数Nを測定した。これらの測定結果を、以下の表3に示す。
[X線回折(XRD)による分析]
高圧焼結によって得られたcBN焼結体に含まれるTi化合部の種類をXRDによって同定した。具体的には、XRDによるTi化合物の(200)面のピーク位置が41.7°以上42.1°未満の場合は、Ti化合物はTiCであると見なした。ピーク位置が42.1°以上42.3°以下の場合は、Ti化合物はTiCNであると見なした。ピーク位置が42.4°以上42.8°以下の場合は、Ti化合物はTiNであると見なした。XRDによるTi化合物の同定結果を、以下の表4に示す。
実施例1〜5及び比較例1〜9で得られたcBN焼結体を、ISO規格CNGA120408で定められたインサート形状の切削工具に加工した。得られた切削工具を用いて、下記の耐摩耗性試験を行った。その結果を表5に示す。
[耐摩耗性試験]
被削材:SCM415焼入れ鋼、
被削材形状:丸棒、φ80mm×200mm、
加工方法:外径旋削、
切削速度:200m/min、
送り:0.15mm/rev、
切り込み深さ:0.15mm、
クーラント:使用、
評価項目:切削工具が欠損、または逃げ面の摩耗幅が0.15mmに至ったときを工具寿命とし、工具寿命までの加工時間を測定した。
表5に示す結果から分かる通り、実施例1〜5のcBN焼結体は、比較例1〜9のcBN焼結体よりも耐摩耗性に優れており、工具寿命が長かった。
次に、実施例2〜5のいずれかで得られたcBN焼結体の表面に、イオンボンバードメント処理を施した後、アークイオンプレーティング法により、被覆層を形成した。それぞれの処理条件は、以下の通りである。また、被覆層の組成及び平均厚さは、以下の表6に示す通りである。
[イオンボンバードメント処理の条件]
基材の温度:500℃
圧力:2.7PaのArガス雰囲気
電圧:−400V
電流:40A
時間:30分
[被覆層形成条件]
基材の温度:500℃
圧力:3.0Paの窒素(N)ガス雰囲気(窒化物層)、または3.0Paの窒素(N)ガスとアセチレンガス(C)ガスとの混合ガス雰囲気(炭窒化物層)
電圧:−60V
電流:120A
表面に被覆層が形成された実施例6〜25のcBN焼結体を用いて、上記で説明した耐摩耗性試験を行った。その結果を以下の表7に示す。
表7に示す結果から分かる通り、その表面に被覆層が形成されたcBN焼結体(実施例6〜25)は、被覆層が形成されていないcBN焼結体(実施例2〜5)よりも耐摩耗性に優れており、工具寿命が長かった。
1 cBN
2 結合相
3 Ti化合物
4 Al化合物
5 cBN粒子に挟まれた区間
6 線分上のAl化合物
L1〜L5 線分

Claims (8)

  1. 立方晶窒化硼素と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、
    前記立方晶窒化硼素の含有量は、40体積%以上60体積%未満であり、
    前記結合相の含有量は、40体積%を超え60体積%以下であり、
    前記立方晶窒化硼素の平均粒径は、1.0μm以上3.0μm未満であり、
    前記結合相は、Al化合物と、Ti化合物とを含み、
    前記Ti化合物は、主にTiの窒化物からなり、
    前記Al化合物の含有量は、1.0体積%以上7.0体積%未満であり、
    前記Al化合物は、Alの酸化物、窒化物及び硼化物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物からなり、
    前記Al化合物の平均粒径は、0.1μm未満であり、
    以下の(1)〜(6)の手順によって求められる平均接触数Nが1.0未満である、立方晶窒化硼素焼結体。
    (1)前記立方晶窒化硼素焼結体の断面の反射電子像を、下記(3)で測定される1視野中のcBN粒子によって挟まれた区間の数が10〜30となる3000〜30000倍の倍率で、SEMにより撮影する。
    (2)上記(1)で得られた画像中に、5本の線分を等間隔に引く。これらの線分は互いに平行であり、かつ、画像を6等分する。
    (3)上記(2)で引いた5本の線分上において、cBN粒子によって挟まれた区間の数を測定する。
    (4)上記(2)で引いた5本の線分上において、cBN粒子によって挟まれた区間に接触するAl化合物の数を測定する。
    (5)上記(1)〜(4)の手順を、前記立方晶窒化硼素焼結体における互いに十分に離れた3箇所以上で繰り返す。
    (6)上記(4)において測定されたAl化合物の数の合計を、上記(3)において測定された区間の数の合計で除することによって、平均接触数Nを算出する。
  2. 前記立方晶窒化硼素の含有量は、45体積%以上55体積%未満である、請求項1に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
  3. 前記Al化合物は、Al及びAlNからなる、請求項1または請求項2に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
  4. 前記立方晶窒化硼素焼結体の上に形成された被覆層を備える、請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
  5. 前記被覆層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、AlおよびSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、OおよびBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる、請求項4に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
  6. 前記被覆層が、単層構造、または、2層以上を含む積層構造を有する、請求項4または請求項5に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
  7. 前記被覆層全体の平均厚さが、1.0μm以上5.0μm以下である、請求項4から請求項6のうちいずれか1項に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
  8. 請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の立方晶窒化硼素焼結体を有する工具。
JP2018136071A 2018-07-19 2018-07-19 立方晶窒化硼素焼結体、及び、立方晶窒化硼素焼結体を有する工具 Active JP6843096B2 (ja)

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