JP2024055371A - 立方晶窒化硼素焼結体 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することで、工具寿命を延長することができる立方晶窒化硼素焼結体を提供する。【解決手段】立方晶窒化硼素と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、立方晶窒化硼素の含有割合は、焼結体の総量に対して30.0体積%以上70.0体積%以下であり、結合相の含有割合は、焼結体の総量に対して30.0体積%以上70.0体積%以下であり、結合相は、Al化合物及びZr化合物を含み、Al化合物は、α型Al2O3を含み、Zr化合物は、ZrB2及びZrOを含み、α型Al2O3の(110)面のX線回折ピーク強度をIal、ZrB2の(101)面のX線回折ピーク強度をIzb、ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度をIzoとしたとき、Izb/Ialが0.30を超え5.00以下であり、Izb/Izoが0.10以上1.00以下である、立方晶窒化硼素焼結体。【選択図】なし

Description

本発明は、立方晶窒化硼素焼結体に関する。
立方晶窒化硼素(以下「cBN」ともいう。)は、ダイヤモンドに次ぐ高い硬度と優れた熱伝導性を持つ。また、立方晶窒化硼素は、ダイヤモンドに比べて鉄との親和性が低いという特徴を持つ。そのため、立方晶窒化硼素と、金属やセラミックスの結合相とからなる立方晶窒化硼素焼結体は、切削工具や耐摩耗工具などに用いられている。
近年、加工能率を上げるため従来よりも切削条件が厳しくなる傾向があり、これまでより工具寿命を長くすることが求められている。特に、切削加工時に工具の刃先温度が高くなる加工、例えば普通鋳鉄の高速加工などにおいて、さらに耐摩耗性を向上させ、こうした要求に十分に応えられる技術が提案されている。
このような切削工具などに使われている立方晶窒化硼素焼結体の従来技術としては、立方晶窒化硼素とAlの酸化物とZrの酸化物とZrの硼化物とからなる焼結体がある。具体的には、例えば、特許文献1には、立方晶窒化硼素:約30~約70体積%と、Ti、Al、Zr、Y、Ce、Mg、Caの酸化物、炭化物、窒化物、硼化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種からなる結合相および不可避的不純物:残部とから構成され、α型AlとZrBとZrOとZrOとを含有し、α型Alの(110)面のX線回折強度をIa、ZrBの(101)面のX線回折強度をIzb、ZrOの(111)面のX線回折強度をIzoと表したとき、Iaに対するIzbの割合を示す(Izb/Ia)が0.13≦(Izb/Ia)≦0.30を満足し、Iaに対するIzoの割合を示す(Izo/Ia)が0.05≦(Izo/Ia)≦0.20を満足することを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体について開示されている。
国際公開第2011/059020号
近年は、「鋳鉄」の加工用工具に適用する立方晶窒化硼素焼結体ついて、より一層耐摩耗性及び耐欠損性に優れ、長い工具寿命を有することのできる立方晶窒化硼素焼結体が求められている。
本発明は、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができる立方晶窒化硼素焼結体を提供することを目的とする。
本発明者は、工具寿命の延長について研究を重ねたところ、特許文献1に対する相違点である、以下の本発明の特徴が、本発明で向上した性能に影響するという知見が得られた。すなわち、立方晶窒化硼素焼結体を特定の構成にすると、その耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが可能となり、その結果、工具寿命を延長することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]
立方晶窒化硼素と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、
前記立方晶窒化硼素の含有割合は、前記焼結体の総量に対して30.0体積%以上70.0体積%以下であり、
前記結合相の含有割合は、前記焼結体の総量に対して30.0体積%以上70.0体積%以下であり、
前記結合相は、Al化合物及びZr化合物を含み、
前記Al化合物は、α型Alを含み、
前記Zr化合物は、ZrB及びZrOを含み、
前記α型Alの(110)面のX線回折ピーク強度をIal、前記ZrBの(101)面のX線回折ピーク強度をIzb、前記ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度をIzoとしたとき、
zb/Ialが0.30を超え5.00以下であり、
zb/Izoが0.10以上1.00以下である、立方晶窒化硼素焼結体。
[2]
前記Zr化合物の含有割合は、前記焼結体の総量に対して10.0体積%以上25.0体積%以下である、[1]に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[3]
前記Zr化合物は、さらにZrOを含み、
前記ZrOは、立方晶ZrO及び/又は正方晶ZrOを含み、
前記立方晶ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度Izcと前記正方晶ZrOの(101)のX線回折ピーク強度Iztとの合計を(Izc+Izt)としたとき、
zo/(Izc+Izt)が0.50以上3.00以下である、[1]又は[2]に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[4]
前記Zr化合物の平均粒径が50nm以上300nm以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体。
[5]
前記立方晶窒化硼素の平均粒径が0.5μm以上3.0μm以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の立方晶窒化硼素焼結体。
本発明によれば、優れた耐摩耗性及び耐欠損性を有することによって、工具寿命を延長することができる立方晶窒化硼素焼結体を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明は下記本実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
[立方晶窒化硼素焼結体]
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素(以下、「cBN」ともいう。)と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、立方晶窒化硼素の含有割合は、焼結体の総量に対して30.0体積%以上70.0体積%以下であり、結合相の含有割合は、焼結体の総量に対して30.0体積%以上70.0体積%以下であり、結合相は、Al元素を有する化合物(以下「Al化合物」という)及びZr元素を有する化合物(以下「Zr化合物」という)を含み、Al化合物は、α型Al(以下、単に「Al」ともいう)を含み、Zr化合物は、ZrB及びZrOを含み、α型Alの(110)面のX線回折ピーク強度をIal、ZrBの(101)面のX線回折ピーク強度をIzb、ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度をIzoとしたとき、Izb/Ialが0.30を超え5.00以下であり、Izb/Izoが0.10以上1.00以下である。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、上記の構成とすることにより、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させることが可能となり、その結果、工具寿命を延長することができる。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体が、工具の耐摩耗性及び耐欠損性を向上させ、工具寿命の長いものとする要因は、詳細には明らかではないが、本発明者はその要因を下記のように考えている。ただし、要因はこれに限定されない。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素の含有割合が30.0体積%以上であることにより、焼結体の強度が向上し、耐欠損性が向上する。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素の含有割合が70.0体積%以下であることにより、相対的に結合相の含有割合が高くなるため、耐熱性が向上し、反応摩耗が抑制される。
また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相の含有割合が、30.0体積%以上であることにより、耐熱性が向上し、反応摩耗が抑制される。一方、立方晶窒化硼素焼結体は、結合相の含有割合が70.0体積%以下であることにより、相対的にcBNの含有割合が高くなるため、焼結体の強度が向上し、耐欠損性が向上する。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izb/Ialが0.30を超えることにより、反応摩耗が抑制され、耐摩耗性及び耐チッピング性に優れる。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izb/Ialが5.00以下であることにより、結合相の高温下での硬さが向上し、耐摩耗性に優れる。また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izb/Izoが0.10以上であることにより、反応摩耗が抑制され、耐摩耗性及び耐チッピング性に優れる。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izb/Izoが1.00以下であることにより、粒子間の結合強度が高くなり、耐チッピング性及び耐欠損性が向上する。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、上述の効果が相俟った結果、耐摩耗性及び耐欠損性を向上させ、工具寿命を延長することができる。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、cBNと結合相とを含む。cBNの含有割合は、焼結体の総量に対して30.0体積%以上70.0体積%以下である。結合相の含有割合は、焼結体の総量に対して30.0体積%70.0体積%以下である。なお、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、cBNと結合相との合計の含有割合は100体積%となる。
[立方晶窒化硼素(cBN)]
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、立方晶窒化硼素の含有割合が30.0体積%以上であることにより、焼結体の強度が向上し、耐欠損性が向上する。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素の含有割合が70.0体積%以下であることにより、相対的に結合相の含有割合が高くなるため、耐熱性が向上し、反応摩耗が抑制される。同様の観点から、立方晶窒化硼素の含有割合は、36.0体積%以上65.2体積%以下であることが好ましく、40.8体積%以上61.9体積%以下であることがより好ましい。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、立方晶窒化硼素(cBN)の平均粒径は、0.5μm以上3.0μm以下であることが好ましい。立方晶窒化硼素焼結体は、cBNの平均粒径が0.5μm以上であることにより、cBN粒子の脱落が抑制される傾向にあり、また、cBNの平均粒径が3.0μm以下であることにより、cBN焼結体の耐欠損性が向上する傾向にある。同様の観点から、cBNの平均粒径は、0.5μm以上2.1μm以下であることがより好ましく、0.9μm以上1.5μm以下であることがより好ましい。
本実施形態において、cBNの平均粒径は、例えば、以下のようにして求めることができる。
立方晶窒化硼素焼結体の断面組織をSEMによって撮影する。撮影した組織写真を解析することでcBN粒子の面積を求め、この面積と等しい面積の円の直径をcBNの粒径として求める。
複数のcBN粒子の粒径の平均値を、cBNの平均粒径として求める。cBNの平均粒径は、立方晶窒化硼素焼結体の断面組織の画像から、市販の画像解析ソフトを用いて求めることができる。より具体的には、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
[結合相]
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相の含有割合が、30.0体積%以上であることにより、耐熱性が向上し、反応摩耗が抑制される。一方、立方晶窒化硼素焼結体は、結合相の含有割合が70.0体積%以下であることにより、相対的にcBNの含有割合が高くなるため、焼結体の強度が向上し、耐欠損性が向上する。同様の観点から、結合相の含有割合は、34.8体積%以上64.0体積%以下であることが好ましく、38.1体積%以上59.2体積%以下であることがより好ましい。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相が、Al化合物及びZr化合物を含む。
Zr化合物の含有割合は、焼結体の総量に対して10.0体積%以上25.0体積%以下であることが好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Zr化合物の含有割合が10.0体積%以上であると、結合相の強度が向上し、耐欠損性に優れる傾向にある。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Zr化合物の含有割合が25.0体積%以下であると、結合相の高温下での硬さが向上し、耐摩耗性に優れる傾向にある。同様の観点から、Zr化合物の含有割合は、焼結体の総量に対して、11.1体積%以上24.3体積%以下であることがより好ましく、14.4体積%以上20.6体積%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、Al化合物の含有割合は、20.5体積%以上49.2体積%以下であることが好ましく、20.5体積%以上45.1体積%以下であることがより好ましく、21.6体積%以上42.1体積%以下であることがさらに好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Al化合物の含有割合が前記範囲であると、立方晶窒化硼素焼結体の強度と、高温下での硬さとのバランスに優れ、耐欠損性及び耐摩耗性に優れる傾向にある。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Al化合物がα型Alを含む。α型Al以外のAl化合物としては、特に限定されないが、例えば、AlB、AlN、AlONが挙げられ、AlB、AlNが好ましい。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Zr化合物がZrB及びZrOを含む。ZrB及びZrO以外のZr化合物としては、特に限定されないが、例えば、ZrO、ZrC、ZrNが挙げられ、ZrOが好ましい。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、結合相には上述した各化合物を構成する元素以外の元素を含んでいてもよい。このような元素の具体例としては、特に限定されないが、例えば、Si、Ti、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Fe、Co、Ni、C、N、O挙げられる。上記の元素は、単体、合金、化合物として含まれ得る。このような結合相に含まれ得るその他の単体、合金、化合物としては、特に限定されないが、例えば、SiC、Si、TiC、TiN、TiB、NbC、NbN、TaC、TaN、Cr、CrN、CrN、MoC、WC、WCo21、CoC、VC、VN、TaC、HfC、Mo、Fe、Co、CoAl、Niなどが挙げられ、CrN、TiN、WC、VC、TaCが好ましい。これらの材料は、例えば、ボールミル用のシリンダーやボール、充填に用いる高融点金属カプセルなどに由来し、不可避的に含まれていてもよく、意図的に添加される場合もある。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、その他の化合物の含有割合は、0.0体積%以上10.0体積%以下であることが好ましく、0.0体積%以上5.0体積%以下であることがより好ましく、0.0体積%以上3.0体積%以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相において、α型Alの(110)面のX線回折ピーク強度をIal、ZrBの(101)面のX線回折ピーク強度をIzbとしたとき、Izb/Ialが0.30を超え5.00以下である。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izb/Ialが0.30を超えることにより、反応摩耗が抑制され、耐摩耗性及び耐チッピング性に優れる。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izb/Ialが5.0以下であることにより、結合相の高温下での硬さが向上し、耐摩耗性に優れる。同様の観点から、Izb/Ialは、0.40以上4.40以下であることがより好ましく、0.78以上3.52以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、結合相において、ZrBの(101)面のX線回折ピーク強度をIzb、ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度をIzoとしたとき、Izb/Izoが0.1以上1.0以下である。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izb/Izoが0.1以上であることにより、反応摩耗が抑制され、耐摩耗性及び耐チッピング性に優れる。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izb/Izoが1.0以下であることにより、粒子間の結合強度が高くなり、耐チッピング性及び耐欠損性が向上する。同様の観点から、Izb/Izoは、0.15以上0.89以下であることがより好ましく、0.20以上0.82以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Zr化合物がさらにZrOを含むことが好ましい。ZrOは、立方晶ZrO及び/又は正方晶ZrOを含むことが好ましい。すなわち、ZrOは、立方晶ZrOだけの状態、正方晶ZrOだけの状態、あるいは、立方晶ZrO及び正方晶ZrOが混在した状態のいずれかで存在することが好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Zr化合物が立方晶ZrO及び/又は正方晶ZrOを含むと、焼結体の靭性が向上し、耐欠損性に優れる傾向にある。
なお、本実施形態において、ZrOは、CeO、Y、MgO及びCaOなどが添加された部分安定化ZrO(PSZ)であってもよい。
また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Zr化合物が立方晶ZrO及び/又は正方晶ZrOを含む場合、立方晶ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度Izcと正方晶ZrOの(101)のX線回折ピーク強度Iztとの合計を(Izc+Izt)としたとき、Izo/(Izc+Izt)が0.50以上3.00以下であることが好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izo/(Izc+Izt)が0.50以上であると、焼結体の硬さが向上し、耐摩耗性に優れる傾向にある。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Izo/(Izc+Izt)が3.00以下であると、焼結体の靭性が向上し、耐欠損性に優れる傾向にある。同様の観点から、Izo/(Izc+Izt)は、0.50以上2.60以下であることがより好ましく、0.68以上2.05以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態において、各面のX線回折ピーク強度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
また、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Zr化合物の平均粒径が50nm以上300nm以下であることが好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Zr化合物の平均粒径が300nm以下であると、耐欠損性が向上する傾向にある。一方、本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、Zr化合物の平均粒径が50nm以上であると、製造が容易である。同様の観点から、Zr化合物の平均粒径は、62nm以上297nm以下であることがより好ましく、103nm以上272nm以下であることがさらに好ましい。
なお、本実施形態において、Zr化合物の平均粒径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体において、立方晶窒化硼素及び結合相の含有割合(体積%)は、走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した立方晶窒化硼素焼結体の組織写真から、市販の画像解析ソフトで解析して求めることができる。より具体的には、立方晶窒化硼素焼結体の任意の断面の鏡面研磨面を得る。次に、SEMを用いて、鏡面研磨して現れた立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面の反射電子像を観察する。この際、SEMを用いて、立方晶窒化硼素の粒子が100個以上400個以下含まれるように選択した倍率で拡大した立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面を反射電子像にて観察する。SEMに付属しているエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いることにより、黒色領域を立方晶窒化硼素と、灰色領域及び白色領域を結合相と特定することができる。その後、SEMを用いて立方晶窒化硼素の上記断面の組織写真を撮影する。市販の画像解析ソフトを用い、得られた組織写真から立方晶窒化硼素及び結合相の占有面積をそれぞれ求め、その占有面積から含有割合(体積%)を求める。
また、本実施形態において、同様に、Al化合物、Zr化合物及びその他の材料の含有割合(体積%)も以下のとおり求めることができる。具体的には、まず、各材料の含有割合を求める前提として、立方晶窒化硼素焼結体が立方晶窒化硼素、Al化合物、Zr化合物及びその他の材料を含むことを特定する。このためには、上記の反射電子像及びEDSを用いた分析だけでは不十分な場合がある。ここで、XRD測定の結果と組み合わせて解析することで、立方晶窒化硼素焼結体が含む材料を特定することができる。この情報を元に、さらに、反射電子像と、EDSを用いた元素マッピングとの結果より、反射電子像上における各領域を立方晶窒化硼素、Al化合物、Zr化合物及びその他の材料と特定することができ、画像解析を行うことで含有割合(体積%)を求めることができる。
ここで、立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面は、立方晶窒化硼素焼結体の表面又は任意の断面を鏡面研磨して得られた立方晶窒化硼素焼結体の断面である。立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面を得る方法としては、例えばダイヤモンドペーストを用いて研磨する方法を挙げることができる。
結合相の組成は、市販のX線回折装置を用いて同定することもできる。例えば、株式会社リガク製のX線回折装置(型式「SmartLab」)を用いて、Cu-Kα線を用いた2θ/θ集中光学系のX線回折測定をすると、結合相の組成を同定することができる。ここで、測定条件としては、例えば、後述する実施例に記載の条件であると好ましい。また、2θの測定範囲を広くして分析すると、より多くのピークを検出できる傾向にあり、焼結体に含まれる材料の特定を一層確実にさせることができる。このような観点から、例えば、2θ=20~140°の範囲で測定するとよい。
なお、本実施形態において、立方晶窒化硼素及び結合相の含有割合、並びに結合相の組成は、後述の実施例に記載の方法により測定することもできる。具体的には、結合相の組成は、X線解析装置による測定の結果と、EDSを用いた元素マッピング結果とを解析することにより特定することができる。
[立方晶窒化硼素焼結体の製造方法]
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、例えば、以下の方法により製造することができる。
原料粉末として、例えば、cBN粉末、Al粉末、Al粉末、ZrO粉末等を準備する。ここで、原料のcBN粉末の平均粒径を適宜調整することにより、得られる立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの平均粒径を上記特定の範囲に制御することができる。
また、得られる立方晶窒化硼素焼結体におけるZr化合物の平均粒径を小さくする方法としては、特に限定されないが、例えば、原料粉末の配合割合に占める結合相材料(cBN以外の材料)のうち、Zr化合物の原料となるZrOの配合割合を低くする方法、後述する焼結工程における焼結時の温度を低くする方法、原料粉末の配合割合に占めるAl粉末の配合割合、あるいはAl粉末及びAl粉末の合計に対するAl粉末の配合割合を高くする方法、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの含有割合(体積%)を高くする方法、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの平均粒径を小さくする方法が挙げられる。これらの中でも特に焼結時の温度及びcBNの含有割合(体積%)がZr化合物の平均粒径に大きく影響すると推察される。
また、各原料粉末の割合を適宜調整することにより、得られる立方晶窒化硼素焼結体におけるcBN及び結合相の含有割合を所望の範囲に制御することができる。
次に、準備した原料粉末を、アルミナ製ボールとヘキサン溶媒とパラフィンとともにボールミル用のシリンダーに入れて混合する(混合工程)。混合後、原料粉末を、Zr製の高融点金属カプセル(以下、単に「カプセル」ともいう)内に充填する(充填工程)。充填後、原料粉末の表面に吸着している水分及び有機成分を除去するため、カプセルを開放したまま真空熱処理を行う(乾燥工程)。真空熱処理後に、カプセルを密封し、カプセルに充填されている原料粉末を高温、高圧下で焼結させる(焼結工程)。カプセル内に充填を行う際には、その底面に超硬合金からなる基材を入れてもよい。焼結工程の条件は、例えば、圧力:7.7~8.5GPa、温度:1600~1700℃、時間:10~60分である。
本実施形態に用いる結合相において、上述のIzb/Ialを大きくする方法としては、特に限定されないが、例えば、上述した立方晶窒化硼素焼結体の製造方法において、原料粉末の配合割合に占める結合相材料(cBN以外の材料)のうち、Zr化合物の原料となるZrO粉末の配合割合を高くする方法、焼結工程の焼結時の温度を高くする方法、原料粉末の配合割合に占めるAl粉末及びAl粉末の合計に対するAl粉末の配合割合を高くする方法、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの含有割合(体積%)を高くする方法、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの平均粒径を小さくする方法が挙げられる。これらの中でも特にZrO粉末の配合割合、焼結時の温度、cBNの含有割合(体積%)及びcBNの平均粒径がIzb/Ialに大きく影響すると推察される。
本実施形態に用いる結合相において、上述のIzb/Izoを小さくする方法としては、特に限定されないが、例えば、上述した立方晶窒化硼素焼結体の製造方法において、焼結工程の焼結時の温度を高くする方法、原料粉末の配合割合に占めるAl粉末の配合割合、あるいはAl粉末及びAl粉末の合計に対するAl粉末の配合割合を高くする方法、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの含有割合(体積%)を低くする方法、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの平均粒径を小さくする方法が挙げられる。これらの中でも特にAl粉末の配合割合及びcBNの含有割合(体積%)がIzb/Izoに大きく影響すると推察される。
本実施形態に用いる結合相において、上述のIzo/(Izc+Izt)を大きくする方法としては、特に限定されないが、例えば、上述した立方晶窒化硼素焼結体の製造方法において、原料粉末の配合割合に占める結合相材料(cBN以外の材料)のうち、Zr化合物の原料となるZrO粉末の配合割合を低くする方法、焼結工程の焼結時の温度を高くする方法、原料粉末の配合割合に占めるAl粉末の配合割合、あるいはAl粉末及びAl粉末の合計に対するAl粉末の配合割合を高くする方法、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの含有割合(体積%)を高くする方法、立方晶窒化硼素焼結体におけるcBNの平均粒径を小さくする方法が挙げられる。これらの中でも特に焼結時の温度、Al粉末の配合割合及びcBNの含有割合(体積%)がIzo/(Izc+Izt)に大きく影響すると推察される。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体は、その表面に被覆層を備えた被覆立方晶窒化硼素焼結体として用いてもよい。立方晶窒化硼素焼結体の表面に被覆層が形成されることによって、耐摩耗性がさらに向上する。被覆層は、特に限定されないが、例えば、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素と、C、N、O及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とを含んでいてもよい。また、被覆層は、単層構造、又は、2層以上を含む積層構造を有してもよい。被覆層がこのような構造を有する場合、本実施形態の被覆立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性が一層向上する傾向にある。
被覆層を形成する化合物の例として、特に限定されないが、例えば、TiN、TiC、TiCN、TiAlN、TiSiN、及び、AlCrNなどを挙げることができる。中でも、TiCN、TiAlN、及び、AlCrNが好ましい。被覆層は、組成が異なる複数の層を積層した構造を有してもよい。
被覆層を構成する各層の厚さ及び被覆層全体の厚さは、被覆立方晶窒化硼素焼結体の断面組織から光学顕微鏡、SEM、透過型電子顕微鏡(TEM)などを用いて測定することができる。なお、被覆立方晶窒化硼素焼結体における各層の平均厚さ及び被覆層全体の平均厚さは、金属蒸発源に対向する面の刃先から当該面の中心部に向かって50μmの位置の近傍において、3箇所以上の断面から、各層の厚さ及び被覆層全体の厚さを測定して、その平均値を計算することで求めることができる。
また、被覆層を構成する各層の組成は、被覆立方晶窒化硼素焼結体の断面組織から、EDSや波長分散型X線分析装置(WDS)などを用いて測定することができる。
被覆層の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、化学蒸着法や、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、スパッタ法及びイオンミキシング法などの物理蒸着法が挙げられる。その中でも、アークイオンプレーティング法は、被覆層と立方晶窒化硼素焼結体との密着性に一層優れるので、好ましい。
本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体又は被覆立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性及び耐欠損性に優れるため、切削工具や耐摩耗工具として使用されると好ましく、その中でも切削工具として使用されると好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体又は被覆立方晶窒化硼素焼結体は、鋳鉄用切削工具として使用されるとさらに好ましい。本実施形態の立方晶窒化硼素焼結体又は被覆立方晶窒化硼素焼結体を切削工具や耐摩耗工具として用いた場合、従来よりも工具寿命を延長することができる。
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
[原料粉末の準備]
立方晶窒化硼素焼結体の原料として、表1に示す平均粒径(μm)の原料粉末を準備した。なお、原料粉末のうち、ZrOは、ZrO全体に対して3mol%のYが添加された、平均粒径40nmの部分安定化ジルコニアの一次粒子が凝集した、平均粒径が0.6μmの二次粒子の粉末を用いた。また、原料粉末の平均粒径は、米国材料試験協会(ASTM)規格B330に記載のフィッシャー法(Fisher Sub-Sizer、FSSS)により測定した。
[混合工程]
各原料粉末を、表2に示す配合割合(体積%)となるように、アルミナ製ボールとヘキサン溶媒とパラフィンとともにボールミル用のシリンダーに入れて混合した。なお、表2において「-」は、記載されている欄に対応する原料を含んでいないことを示す。
[充填工程及び乾燥工程]
混合された原料粉末を、Ta製の高融点金属カプセル(以下、単に「カプセル」とも記す)内に充填した。充填された原料粉末の表面に吸着している水分及び有機成分を除去するため、カプセルを開放したまま真空熱処理を行った。真空熱処理後に、カプセルを密封した。
[焼結工程]
その後、カプセルに充填されている原料粉末を高温、高圧下で焼結させた。当該焼結の条件を、表3に示す。焼結時間は30分とした。
[測定及び分析]
焼結工程によって得られた立方晶窒化硼素焼結体について、立方晶窒化硼素及び結合相の含有割合(体積%)を、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した立方晶窒化硼素焼結体の組織写真から、市販の画像解析ソフトで解析して求めた。より具体的には、立方晶窒化硼素焼結体の任意の断面の鏡面研磨面を得た。次に、SEMを用いて、鏡面研磨して現れた立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面の反射電子像を観察した。この際、SEMを用いて、立方晶窒化硼素の粒子が100個以上400個以下含まれるように選択した倍率で拡大した立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面を反射電子像にて観察した。SEMに付属しているエネルギー分散型X線分析装置(EDS)を用いることにより、黒色領域を立方晶窒化硼素と、灰色領域及び白色領域を結合相と特定した。その後、SEMを用いて立方晶窒化硼素の上記鏡面研磨面の組織写真を撮影した。市販の画像解析ソフトを用い、得られた組織写真から立方晶窒化硼素及び結合相の占有面積をそれぞれ求め、その占有面積から含有割合(体積%)を求めた。結果を表5に示す。
ここで、立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面は、立方晶窒化硼素焼結体の表面又は任意の断面を鏡面研磨して得られた立方晶窒化硼素焼結体の断面であった。立方晶窒化硼素焼結体の鏡面研磨面(以下、「断面」ともいう。)を得る方法は、ダイヤモンドペーストを用いて研磨する方法とした。
また、同様に、Al化合物、Zr化合物及びその他の材料の含有割合(体積%)も以下のとおり求めた。具体的には、まず、各材料の含有割合を求める前提として、立方晶窒化硼素焼結体が立方晶窒化硼素、Al化合物、Zr化合物及びその他の材料を含むことを特定した。このために、上記の反射電子像及びEDSを用いた分析と、XRD測定の結果と組み合わせて解析することで、立方晶窒化硼素焼結体が含む材料を特定した。この情報を元に、さらに、反射電子像と、EDSを用いた元素マッピングとの結果より、反射電子像上における各領域を立方晶窒化硼素、Al化合物、Zr化合物及びその他の材料と特定し、画像解析を行うことで含有割合(体積%)を求めた。結果を表5に示す。
また、上記SEMで撮影した立方晶窒化硼素焼結体の組織写真について、市販の画像解析ソフトを用いた画像解析により、cBN粒子の面積を求め、この面積と等しい面積の円の直径をcBN粒子の粒径とした。次いで、下記式の関係を満たすcBN粒子の粒径の値D50を求め、cBNの平均粒径とした。結果を表4に示す。
(D50以下の粒径を有するcBN粒子が占める面積の合計)/(全てのcBN粒子が占める面積)=0.5
また、Zr化合物の平均粒径もcBNの平均粒径と同様に求めることができる。具体的には、上記SEMで撮影した立方晶窒化硼素焼結体の組織写真について、市販の画像解析ソフトを用いた画像解析により、Zr化合物粒子の面積を求め、この面積と等しい面積の円の直径をZr化合物粒子の粒径とした。次いで、下記式の関係を満たすZr化合物粒子の粒径の値D50を求め、Zr化合物の平均粒径とした。結果を表4に示す。
(D50以下の粒径を有するZr化合物粒子が占める面積の合計)/(全てのZr化合物粒子が占める面積)=0.5
なお、Zr化合物の平均粒径は、上記のとおり立方晶窒化硼素焼結体を鏡面研磨した後に、熱食刻した試料を上記のとおりSEMで観察し、観察範囲内のZr化合物の各粒径を測定した。また、当該熱食刻は、以下の条件で熱処理を行うことで実施した。
雰囲気:1Pa以下の真空
昇温速度:10℃/分
温度:1200℃
保持時間:30分
上記熱処理後に250kPaのアルゴン雰囲気下で室温まで冷却した。
さらに、結合相の組成は、株式会社リガク製のX線回折装置(型式「SmartLab」)を用いて同定した。具体的には、Cu-Kα線を用いた2θ/θ集中光学系のX線回折測定を、下記条件で測定して得られた結果と、EDSを用いた元素マッピング結果とを解析することにより結合相の組成を同定した。
<測定条件>
・出力:45kV、200mA
・入射側ソーラースリット:5°
・発散縦スリット:2/3°
・発散縦制限スリット:5mm
・散乱スリット:2/3°
・受光側ソーラースリット:5°
・受光スリット:0.3mm
・サンプリング幅:0.02°
・スキャンスピード:1°/min
・2θ測定範囲:30~90°
また、上記X線回折測定と同時に得られたα型Alの(110)面のX線回折ピーク強度(Ial)、ZrBの(101)面のX線回折ピーク強度(Izb)、ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度(Izo)、立方晶ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度(Izc)と正方晶ZrOの(101)のX線回折ピーク強度(Izt)との合計(Izc+Izt)から、Izb/Ial、Izb/Izo及びIzo/(Izc+Izt)を各々算出した。各結晶面のX線回折ピークは、それぞれ以下のPowder Diffraction File(以下「PDF」とも記す)カードNo.の情報を元に特定した。上記で得られた値をまとめて表6に示す。なお、表6において「-」は、X線回折測定において、明瞭なZrOに由来するピークが検出されず、Izoが「0」であることを示す。
・立方晶ZrO(111):Izc
PDFカード番号71-6425
・正方晶ZrO(101):Izt
PDFカード番号68-0200
・ZrO(111):Izo
PDFカード番号20-0684
・ZrB(101):Izb
PDFカード番号34-0423
・α型Al(110):Ial
PDFカード番号46-1212
なお、ZrOの回折ピーク強度は、立方晶ZrO(111)の回折ピークと正方晶ZrO(101)の回折ピークは重複するため、IzcとIztとの合計(Izc+Izt)を用いた。
[切削工具の作製]
得られた立方晶窒化硼素焼結体を、レーザー加工機を用いてISO規格SPGW120412で定められたインサート形状とISO規格CNGA120408で定められたインサート形状の工具形状に合わせて切り出した。切り出した立方晶窒化硼素焼結体を、超硬合金からなる台金にろう付けにより接合した。ろう付けした工具にホーニング加工を施して、切削工具を得た。
[切削試験1]連続加工
得られた切削工具を用いて、下記の条件で切削試験1を行った。
・被削材:FC230、
・被削材形状:円筒状(外径90mm、内径80mm、長さ100mm)、
・切削速度:800m/分、
・送り:0.40mm/rev、
・切り込み深さ:0.25mm、
・クーラント:水溶性、
・インサート:cBN焼結体を刃先に用いたISO規格SPGW120412、
・評価項目:工具の逃げ面摩耗幅が0.3mmを超えるまでの加工時間を工具寿命とし、工具寿命までの加工時間を測定した。また、工具寿命に至ったときの損傷形態をそれぞれSEMで観察した。損傷形態が「チッピング」であるのは、加工を継続できる程度の欠けであったことを意味する。
[切削試験2]断続加工
得られた切削工具を用いて、下記の条件で切削試験2を行った。
・被削材:FC200、
・被削材形状:外周面に、1本の溝が入っている丸棒(120mm、長さ400mm)、
・切削速度:600m/分、
・送り:0.15mm/rev、
・切り込み深さ:0.20mm、
・クーラント:水溶性、
・インサート:cBN焼結体を刃先に用いたISO規格CNGA120408、
・評価項目:工具の刃先が欠損に至ったときを工具寿命とし、工具寿命までの衝撃回数を測定した。
切削試験1の工具寿命に至るまでの加工時間について、20分以上を「A」、15分以上20分未満を「B」、15分未満を「C」として評価した。また、切削試験2の工具寿命に至るまでの回数について、1000回以上を「A」、750回以上1000回未満を「B」、750回未満を「C」として評価した。これらの評価では、「A」が最も優れており、次に「B」が優れており、「C」が最も劣っていることを意味する。切削試験1の加工時間の評価が、「A」又は「B」であり、切削試験2の回数の評価が「A」又は「B」であることは、切削性能に優れることを意味する。
表7に示す結果より、発明品の加工時間の評価及び加工回数の評価は、いずれも「A」又は「B」であり、耐摩耗性及び耐欠損性の両方が優れることが分かった。一方、比較品の加工時間の評価及び加工回数の評価は、いずれかあるいは両方が「C」であり、発明品に比べて耐摩耗性及び/又は耐欠損性が劣ることが分かった。
以上の結果より、発明品は、耐摩耗性及び耐欠損性の両方が優れる結果、工具寿命が長いことが分かった。
本発明の立方晶窒化硼素焼結体は、耐摩耗性及び耐欠損性に優れることにより、従来よりも工具寿命を延長できるので、その点で産業上の利用可能性が高い。

Claims (5)

  1. 立方晶窒化硼素と結合相とを含む立方晶窒化硼素焼結体であって、
    前記立方晶窒化硼素の含有割合は、前記焼結体の総量に対して30.0体積%以上70.0体積%以下であり、
    前記結合相の含有割合は、前記焼結体の総量に対して30.0体積%以上70.0体積%以下であり、
    前記結合相は、Al化合物及びZr化合物を含み、
    前記Al化合物は、α型Alを含み、
    前記Zr化合物は、ZrB及びZrOを含み、
    前記α型Alの(110)面のX線回折ピーク強度をIal、前記ZrBの(101)面のX線回折ピーク強度をIzb、前記ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度をIzoとしたとき、
    zb/Ialが0.30を超え5.00以下であり、
    zb/Izoが0.10以上1.00以下である、立方晶窒化硼素焼結体。
  2. 前記Zr化合物の含有割合は、前記焼結体の総量に対して10.0体積%以上25.0体積%以下である、請求項1に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
  3. 前記Zr化合物は、さらにZrOを含み、
    前記ZrOは、立方晶ZrO及び/又は正方晶ZrOを含み、
    前記立方晶ZrOの(111)面のX線回折ピーク強度Izcと前記正方晶ZrOの(101)のX線回折ピーク強度Iztとの合計を(Izc+Izt)としたとき、
    zo/(Izc+Izt)が0.50以上3.00以下である、請求項1又は2に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
  4. 前記Zr化合物の平均粒径が50nm以上300nm以下である、請求項1又は2に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
  5. 前記立方晶窒化硼素の平均粒径が0.5μm以上3.0μm以下である、請求項1又は2に記載の立方晶窒化硼素焼結体。
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