JP2005248265A - 被覆超硬合金部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】超硬合金基体の結合相と硬質相両者の耐熱・耐塑性変形性と耐摩耗性の両特性を高めることにより、優れた耐熱・耐塑性変形と耐摩耗性を有する被覆超硬合金部材を実現し、格段に工具寿命の長い被覆超硬合金工具を提供することである。
【解決手段】超硬合金部材内部が、鉄族金属の1種以上とMoとからなる結合相と、ZrとTa及び/又はNbの炭化物等を含有する硬質相、残WCと不可避不純物から成り、被覆層直下の部材表面に該硬質相が消失又は減少している硬質相貧化表面帯域が1〜100μmの深さ方向の厚さで形成され、隣接して深さ方向に1〜200μm厚さの硬質相富化中間帯域が存在し、該硬質相富化中間帯域内の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量を質量%でI、該超硬合金部材内部の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量をJとした時、両者の比率I/Jが、I/J>1であることを特徴とする被覆超硬合金部材である。
【選択図】なし

Description

本発明は、切削工具などに使用される被覆超硬合金部材に関する。
超硬合金製部材の表面に炭窒化チタンや酸化アルミニウムなどの皮膜を被覆した被覆超硬合金工具は、部材の靭性と皮膜の耐摩耗性とが兼備されているため、鋼、鋳物などの切削加工用高能率切削工具として広く用いられている。近年、切削加工の高効率化が進み、切削速度の高速化が進んでおり、特に、切削液を用いることなく高硬度材を高速で切削する場合は、刃先温度は1000℃近くにまで上昇することがある。このため、切削工具には耐熱性と高温での耐摩耗性が要求されている。一方、部品の軽量化に伴い、被削材の複雑形状化が進んでおり、切削工具には耐欠損性が要求されている。このように、耐摩耗性と耐欠損性という相反する特性を両立させるため、従来からいくつかの提案がなされている。その例として、最表面に鉄族金属の量が合金内部に比べて多い層(結合相富化層)を有する超硬合金材や、超硬合金の最表面にWCと結合金属のみからなる層(脱β層)を有するもの、或いは合金内部に比べて硬度が低下した領域(硬度低下層)を有するものを超硬合金材に用い、これに前記皮膜を形成することにより、耐摩耗性と耐欠損性の両者の向上を図ることが提案されている。これらの具体的な例として、以下の特許文献1、2が開示されている。
特許文献1は、被覆超硬合金部材の切刃稜線部を含めた部材最表面にWC及び鉄族金属のみからなる表層領域を有し、これに隣接して5a族金属成分がそれよりも内側の領域に比べて多く含まれている被覆超硬合金部材が提案されている。特許文献2は、部材表面に軟質表面帯域が存在し、更にこれに隣接して硬質中間帯域が存在する被覆工具が提案されている。しかしながら、上記特許文献1、2に開示されている従来技術では、部材表面の高靭性層とその直下の高硬度層により、部材の靭性と耐摩耗性とを確保しようとしているが、結合相の耐熱性や耐塑性変形性、耐摩耗性が考慮されておらず、また、硬質相の耐熱性も十分でなく、部材全体の耐塑性変形性と耐摩耗性が十分でないという欠点がある。
特許第3235259号公報 特許第3331916号公報
本発明が解決しようとする課題は、結合相と硬質相両者の耐熱・耐塑性変形性と耐摩耗性の両特性を高めることにより、優れた耐熱・耐塑性変形と耐摩耗性を有する被覆超硬合金部材を実現し、格段に工具寿命の長い被覆超硬合金工具を提供することである。
本発明は、超硬合金部材内部が、少なくとも鉄族金属の1種以上とMoとからなる結合相と、少なくともZrを含みこれとTa及び/又はNbの炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物の1種以上もしくはそれらの固溶体を含有する硬質相、残WCと不可避不純物とから成り、該超硬合金部材の表面に単層又は多重層の硬質皮膜が被覆されており、該被覆層直下の部材表面に硬質相が消失又は減少している硬質相貧化表面帯域が1〜100μmの深さ方向の厚さで形成され、該硬質相貧化表面帯域に隣接して深さ方向に1〜200μm厚さの硬質相富化中間帯域が存在し、該硬質相富化中間帯域内の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量を質量%でI、該超硬合金部材内部の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量をJとした時、両者の比率I/Jが、I/J>1であることを特徴とする被覆超硬合金部材である。上記の構成を採用することによって、結合相と硬質相両者の耐熱・耐塑性変形性と耐摩耗性の両特性が高まり、格段に優れた被覆超硬合金部材を実現できることを見いだし、本発明に想到した。
本発明の被覆超硬合金部材は、1.05≦I/J≦1.3であることにより、耐摩耗性と耐欠損性のバランスが優れ、優れた工具耐久特性が得られる。該超硬合金部材内部における結合相のMo含有量Pと、結合相を構成する鉄族金属含有量Qの比率P/Qが、0.001≦P/Q≦0.01であることにより、結合相の耐塑性変形と耐摩耗性が高まる。該超硬合金部材内部における硬質相を構成するW以外の金属成分含有量Jが、2≦J≦12であることにより、部材全体に高い耐摩耗性と耐欠損性が得られる。部材内部における(Ta+Nb)/Zrの原子比率が、0.2≦(Ta+Nb)/Zr≦2であることにより、部材全体に高い耐熱特性と耐欠損性とが得られる。該硬質相貧化表面帯域内の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量Kと、該Jとの比率K/Jが0.1≦K/J≦0.3であり、かつ、該硬質相貧化表面帯域内の結合相を構成する金属成分含有量Lと該超硬合金部材内部の結合相を構成する金属成分含有量Mとの比率L/Mが1.1≦L/M≦1.4であることにより、耐欠損性と耐摩耗性の両者がバランス良くなり好ましい。
本発明の被覆超硬合金部材を適用することによって、結合相と硬質相両者の耐熱・耐塑性変形性と耐摩耗性の両特性が格段に高まり、耐熱・耐塑性変形と耐摩耗性の両者が優れた被覆超硬合金部材が実現され、工具寿命が格段に長い被覆超硬合金工具が実現できる。
本発明は、超硬合金部材の内部が、少なくとも鉄族金属の1種以上とMoとからなる結合相と、少なくともZrを含みこれとTa及び/又はNbを含む炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物の少なくとも1種以上もしくはそれらの固溶体を含有する硬質相、残WCと不可避不純物とから成る超硬合金部材である。結合相が鉄族金属の1種又はそれ以上とMoとにより形成されていることにより、結合相の耐熱・耐塑性変形が高まる。また、硬質相が少なくともZrを含みこれと少なくともTa及び/又はNbのいずれかを含む炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物の1種以上もしくはそれらの固溶体を含有することにより、超硬合金部材全体の耐熱・耐塑性変形性と耐摩耗性の両特性が高まる。これと同時に、WC及び結合相を形成する鉄族金属とMoとにより実質的に構成されている硬質相貧化表面帯域にも優れた耐熱・耐塑性変形が得られるとともに、硬質相富化中間帯域にも優れた耐熱性が実現でき、超硬合金部材全体として耐熱・耐塑性変形性の優れる被覆超硬合金部材が実現できる。
ここで、結合相形成金属が少なくとも鉄族金属とMoとにより形成されていることは、例えば、超硬合金部材の断面を研磨した後、硬質相貧化表面帯域の断面を走査型電子顕微鏡(以下、SEMと記す。)−エネルギー分散型X線分析装置(以下、EDXと記す。)により観察し、面分析した時、WC結晶粒等の回りに鉄族金属とMoとがほぼ同じ分布状態で存在することからわかる。また、該超硬合金部材を微細に粉砕した粉をクエン酸アンモニウム50g/Lと塩化ナトリウム5g/Lの混合液を用いて電気分解することにより結合相成分を溶解させ、誘導結合高周波プラズマ分光分析(以下、ICP分析と記す。)した時、鉄族金属ととともにMoが検出されることからもわかる。硬質相が少なくともZrを含みこれとTa及び/又はNbを含む炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物の少なくとも1種以上もしくはそれらの固溶体を含有していることは、部材断面を研磨した後、SEM−EDXにより研磨面を分析したとき、Ta及び/又はNbがZrとほぼ同じ分布状態で存在していることからわかる。また、深さ方向の分解能を高め、研磨面の極表面のみを分析するためにオージェ電子分析装置を用いた時に、Ta及び/又はNbとZrとが同時に検出される硬質相が存在していることからも判別できる。
本発明は、超硬合金部材の表面に単層又は多重層の硬質皮膜を被覆し、該被覆層直下の部材表面から深さ方向に厚さ1〜100μmの前記硬質相が消失又は減少している硬質相貧化表面帯域が存在し、該硬質相貧化表面帯域に隣接して更に深さ方向に厚さ1〜200μmの硬質相富化中間帯域が存在するとともに、該硬質相富化中間帯域内の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量Iと、該超硬合金部材内部の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量Jの、両者の比率I/JがI/J>1であることを特徴とする被覆超硬合金部材である。こうすることにより、硬質相富化中間帯域の耐摩耗性と耐熱・耐塑性変形性が高まり、更に優れた工具耐久特性を有する被覆超硬合金工具が得られる。I/Jが1以下になると硬質相富化中間帯域の耐摩耗性と耐熱・耐塑性変形性が著しく低下する。また、本発明の被覆超硬合金部材は1.05≦I/J≦1.3であることが好ましい。こうすることにより、更に優れた耐摩耗性と耐熱・耐塑性変形性が得られる。1.3を超えて大きくなると硬質相富化中間帯域と硬質相貧化表面帯域との界面付近に若干クラック出来やすくなり、工具耐久特性が低下する欠点が現れるようになる。
本発明の被覆超硬合金部材は、該超硬合金部材内部における結合相のMo含有量Pと、結合相を構成する鉄族金属含有量Qの、両者の比率P/Qが、0.001≦P/Q≦0.01であることが好ましい。これにより、結合相の耐塑性変形と耐摩耗性が更に高まり、更に優れた工具耐久特性を有する被覆超硬合金工具が得られる。P/Qが、0.001未満の時は結合相の耐塑性変形と耐摩耗性が低下し、0.01を超えて大きいと部材全体の抗折力が低下し、工具寿命が短くなる欠点が現れる。
本発明の被覆超硬合金部材は、超硬合金部材内部における硬質相を構成するW以外の金属成分含有量Jが2≦J≦12であることが好ましい。これにより、部材全体に高い耐塑性変形・耐摩耗性とともに高い耐欠損性も得られ、更に優れた工具耐久特性が得られる。Jが2未満では部材全体の耐摩耗性と耐塑性変形性が低下し、12を超えて大きいと耐欠損性が低下する欠点が現れる。ここにいう硬質相とは全ての硬質相をいい、少なくともZrを含みこれとTa及び/又はNbを含む炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物の少なくとも1種以上もしくはそれらの固溶体を含有する硬質相以外も含めた硬質相全てを言う。
本発明の被覆超硬合金部材は、部材内部における(Ta+Nb)/Zrの原子比率が、0.2≦(Ta+Nb)/Zr≦2であることが好ましい。こうすることにより、部材全体の耐熱特性と靭性とがバランス良くなることにより両特性が高まり、工具耐久特性のれた被覆超硬合金部材が得られる。(Ta+Nb)/Zrの原子比率が2を超えて大きくなると部材全体の耐塑性変形性が低下する欠点が現れ、0.2未満では耐欠損性が低下する欠点が現れる。
本発明の被覆超硬合金部材は、また、硬質相貧化表面帯域内と超硬合金部材内部の各硬質相を構成するW以外の金属成分含有量KとJの比K/Jが、0.1≦K/J≦0.3であり、かつ、硬質相貧化表面帯域内と超硬合金部材内部の各結合相を構成する金属成分含有量LとMとの比L/Mが、1.1≦L/M≦1.4であることが好ましい。こうすることにより、部材表面の耐欠損性と耐摩耗性の両者がバランス良くなることにより両特性が高まり、工具耐久特性の優れた被覆超硬合金部材が得られる。K/J値が、0.1未満では部材表面の耐摩耗性が低下し、0.3を超えて大きいと部材表面の靭性が低下する欠点が現れる。L/Mの値が、1.1未満であると部材表面の靭性が低下し、1.4を超えて大きいと部材表面の耐摩耗性が低下し、工具耐久特性が低下する欠点が現れる。
本発明の被覆超硬合金部材は、硬質相中にZr、Ta、Nbの他に周期律表4a、5a、6a族金属から選択される成分や希土類成分が含有されていても良い。Tiを含有させることにより耐摩耗性が更に高まり、Moを含有させることにより強度が更に高まる。また、Yや希土類元素を含有させることにより耐熱性が更に高まり、Moを含有させることにより強度が更に高まる。また、Yや希土類元素を含有させることにより耐熱性が更に高まり、Crを含有させることにより化学安定性が更に高まる。本発明は、面積比で50%以上の硬質相がTa及び/又はNbとZrの炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物の少なくとも1種以上もしくはそれらの固溶体により形成されていることが好ましい。他の硬質相として、Zr或いはTaとNbの両者を含まない硬質相や、金属成分がZrやTa、Nb単独からなる硬質相等が存在していても良い。
本発明の被覆超硬合金部材は、結合相形成金属中にWやCr、希土類元素が含有されていることが好ましい。Wが含有されていると耐塑性変形性が高まり、Crや希土類元素が含有されていると硬度や耐熱性が高まり、優れた耐熱・耐塑性変形性と耐摩耗性を有する被覆超硬合金部材が実現できる。
本発明の被覆超硬合金部材の表面に被覆する皮膜としては周期律表4a、5a、6a族金属の炭素、窒素、酸素、硼素との化合物からなる皮膜や酸化アルミニウム膜等の単層や多層膜を用いることができる。これらの皮膜を本発明の被覆超硬合金部材に被覆することにより、表面の耐摩耗性や耐酸化性、摺動性等を高めることが出来る。本発明の被覆超硬合金部材の適用分野は切削工具に限らず、部材全体に耐塑性変形と耐熱特性を必要とし、かつ、その表面に耐摩耗性と靭性を必要とする部材全般に適用することができる。次に、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明するが、それら実施例により本発明が限定されるものではない。
原料粉末として以下のものを用いた。平均粒径が3.4μmの中粒WC粉末、同6.3μmの粗粒WC粉末、同2.5μmのTaC粉末、同2μmのNbC粉末。同2.5μmのZr(C、N)粉末(ZrC/ZrNの質量%比は50/50)。同2.5μmのZrC粉末、同1.5μmのMoC粉末及び平均粒径が1.2μmのCo粉末を用意し、これらの原料粉末を所定量に配合し、ボールミルで72時間湿式混合して乾燥し、所定形状の圧粉体にプレス成形し、下記の諸条件下で焼結した。このようにして作製した焼結体に仕上げ加工及びホーニング加工を施すことにより、いずれもISO規格CNMG120408のインサート形状をもった超硬合金部材を製造した。作製した焼結体の分析結果を表1にまとめて記した。
Figure 2005248265
表1において、本発明例6の配合組成は、Co:7質量%、MoC:0.05質量%、Zr(CN):2.8質量%、TaC:3.5質量%、NbC:0.2質量%、残WC及び不可避不純物である。焼結は、500〜1425℃までを真空雰囲気にし、1425℃における保持時間の最初の30分間を0.15kPaの窒素雰囲気に保ち、1425℃における保持時間の最後の30分間を再び真空に保った。これを基準にして、本発明例1〜10はZr、Ta、Nb間の比率を変えることなく、これらの全配合量とWCとの比を増減させる事によりJ値の異なる試料を作製した。本発明例11〜16は、配合粉のJ値とTa/Nb比を変えることなく、(Ta+Nb)/Zrの比率を変化させることにより作製した。本発明例17〜22は、本発明例6と同じ組成を用いるもののZr(CN)粉とZrC粉の配合比を変化させるとともに、1425℃での焼結時に最初の30分間の窒素雰囲気圧を0.05〜0.3kPaに調整することによりK/JとL/M値の異なる試料を作製した。本発明例23〜27は、窒素雰囲気の圧力と真空雰囲気での保持時間とを変化させることによりI/J値の異なる試料を作製した。本発明例28〜33は、Co量を固定して、MoC量のみを変化させることによりP/Q値の異なる試料を作製した。本発明例34と35とはそれぞれNbC又はTaC原料を添加することなく作製した。
また、比較の目的で、本発明例と同じ原料粉末を用い、本発明例と同じ製造工程でプレス成形体を形成し、同じ焼成条件で焼結することにより、上記と同一形状のインサート形状を持つ比較例36〜39を作製した。比較例36はZrを用いる効果を比較する目的で作製したものでありZrが含有されていない。比較例37はTa或いはNbを用いる効果を比較する目的で作製したものであり、硬質相成分としてTaとNbのいずれもが含有されていない。比較例38は、結合相成分としてMoが含有されている効果を比較する目的で、結合相成分としてMoを含有していない。硬質相貧化表面帯域と硬質相富化中間帯域の効果を比較する目的で、本発明例6と同じ組成に配合し、同じ製造工程でプレスした成形体を作製し、焼結条件を、500〜1150℃までは真空とし、1150〜1425℃に到達して1425℃に保持している間は、1.3kPaの窒素雰囲気に保って焼結した比較例39を作製した。
上記のようにして作製した本発明例1〜35、比較例36〜39の超硬合金部材をISO規格CNMG120408形状に加工した後、化学蒸着装置内にセットし、HキヤリヤーガスとTiClガスとNガスとを原料ガスに用いて0.5μm厚さのTiN膜を900℃で形成した後、その表面にHキャリヤーガスとTiClガス、Nガス、CHCNガスを原料ガスに用いて厚さ6μmのTi(CN)膜を890℃で形成した。そして、1000℃でHキヤリヤーガスとTiClガス、CHガスとを原料ガスに用いてTiC膜を15分間成膜し、そのまま連続して本構成ガスにCOガスとCOガスとを追加し15分間成膜することによりTi(CO)膜を形成した。更に、連続してHキャリヤーガス、AlClガス、COガスを原料ガスに用いて厚さ4μmのα型Al膜を1020℃で形成し、HキヤリヤーガスとTiClガスとNガスとを原料ガスに用いて0.5μm厚さのTiN膜を1010℃で形成し、その後室温まで冷却することにより本発明例1〜35と比較例36〜39の被覆超硬合金工具を作製した。
本発明例1〜35、比較例36〜39の断面を研磨し、光学顕微鏡で硬質相の分布状況を観察し、SEM(日立製作所製、S−4200)−EDX(堀場製作所製S−792X1)で分析した結果、本発明例1〜35は部材の結合相がCoとMoとからなっており、硬質相はZr、Ta及び/又はNb、Wが検出された。更に硬質相の50%以上がZrとともにTa及び/又はNbを含有していること、また、部材表面は主にWとCo及びMoとからなっており、硬質相が消失又は減少した硬質相貧化表面帯域が深さ方向に1〜100μmの厚さ存在し、これに更に深さ方向に隣接して、I/J>1である硬質相富化中間帯域が1〜200μmの厚さ存在していることが確認された。本発明例の超硬合金部材の研磨面をSEMで観察したとき、WC粒子は灰色に、硬質相はWC粒子よりも黒い粒子として観察され、結合相はこれらの粒子間を埋める形で観察された。また、微小部X線分析装置(島津製作所製EPM−810。以下、EPMAと記す。)で20kV、20nA、直径1μmの電子線を用いて、本発明例6の超硬合金部材内部の研磨面を測定した。測定方法は、研磨面上の任意の領域において16μmの距離を800ポイントに分け、各ポイント当たり0.5秒間計測してCo、Mo、Zr、Taの分布状況を測定した。その結果、CoとMoとが同一パターンで偏在しており、両者が共存して結合相を形成していること、ZrとTaとがともに同じパターンで偏在しており、両者が硬質相内に共存していることがわかった。これに対して、比較例36〜38は硬質相貧化表面帯域と硬質相富化中間帯域とが存在しているものの、比較例36は部材中にZrが検出されず、比較例37はTaとNb両者のいずれもが検出されず、比較例38は結合相中にMoが検出されなかった。また、比較例39は硬質相貧化表面帯域と硬質相富化中間帯域とが形成されていなかった。
本発明例1〜35、比較例36〜39との差異を評価するため、連続切削時の寿命を以下の切削条件1で評価した。各切削時間における摩耗量を倍率50倍の工具顕微鏡で観察し、平均逃げ面摩耗量が0.4mm、クレーター摩耗が0.05mmのどちらかに達した時間を連続切削寿命時間と判断した。
(切削条件1)
被削材:S53C
切削速度:320m/分
送り:0.20mm/rev
切り込み:2.0mm
切削油:使用せず(乾式切削)
また、本発明例1〜35、比較例36〜39各5個を以下の切削条件2で断続切削し、欠損に至るまでの断続切削可能回数を評価した。刃先先端の欠け状況は倍率50倍の実体顕微鏡で観察した。
(切削条件2)
被削材:S53C、4溝入材(HS38)
切削条件:280m/min
送り:0.20mm/rev
切り込み:1.5mm
切削液:使用せず(乾式切削)
上記の条件で切削評価した結果を表1に併記する。
表1より、J値が同じ5.7質量%である本発明例6、34、35と比較例36、37とを比較する。硬質相にZrが含有されていない比較例36と硬質相にTaとNbのいずれもが含有されていない比較例37とは、それぞれの連続切削寿命が15、19分であり、断続切削寿命が3130、1900回であるのに対して、硬質相がZrと、Ta及び/又はNbとからなっている本発明例6、34、35の連続切削寿命は42、44、41分であり、断続切削寿命は3130、3140、3040回である。この結果、本発明例は比較例36に比べて断続切削寿命が同等であり連続切削寿命が2.6倍以上長く、比較例37に対しては連続切削寿命と断続切削寿命もとそれぞれ2.1倍以上と1.6倍長く、本発明例の工具寿命が格段に優れている。
J値が同じ12.6質量%である本発明例10と比較例38とを比較すると、比較例38は、硬質相中にZr及びTaとNbが含有されているものの、結合相中にMoが含有されておらず、連続切削寿命が23分、断続切削寿命が1040回と短いのに対して、本発明例10は連続切削寿命が46分と2倍長く、断続切削寿命も1570回と1.5倍長く格段に優れている。J値が同じ6.5質量%である本発明例6及び23〜27と、比較例39とを比較する。これらは、組成及び部材内部の硬質相の構成が同じであるにも拘わらず、比較例39は硬質相貧化表面帯域と硬質相富化中間帯域の両者が形成されておらず、I/J値が1であるのに対して、本発明例6及び23〜27は硬質相貧化表面帯域と硬質相富化中間帯域の両者が形成されており、I/J値が1を超えて大きい。そして、比較例39の工具寿命は、連続切削寿命が26分、断続切削寿命が90回であるのに対して、I/J>1である本発明例6及び23〜27は、連続切削寿命が31分以上、断続切削寿命が2190回以上と格段に優れていることがわかる。以上の結果から、結合相が鉄族金属とMoとから成り、Zrとともに少なくともTaとNbのいずれかが含有されている硬質相を有し、しかも硬質相が消失又は減少した硬質相貧化表面帯域が深さ方向に1〜100μmの厚さで存在し、これに隣接して、深さ方向に1〜200μmの厚さの硬質相富化中間帯域とが形成されており、かつ、I/J>1である本発明例が格段に優れた工具耐久特性を有していることがわかる。
本発明例23と24とを比較すると、I/Jが1.05である本発明例24は、I/Jが1.02である本発明例23に対して断続切削寿命は同等であるが連続切削寿命が1.3倍優れている。また、本発明例26と27を比較すると、I/Jが1.3である本発明例26は、I/Jが1.4である本発明例27に対して連続切削寿命は同等であるが断続切削寿命が1.3倍優れている。従って本発明例は、1.05≦I/J≦1.3であることが好ましい。
本発明例29は、部材内部におけるP/Qが0.001であるのに対し、本発明例28はP/Qが0.0005である。本発明例29は本発明例28に比べて断続切削寿命と連続切削寿命の両者がともに1.3倍以上優れている。また、本発明例32はP/Qが0.01であるのに対し、本発明例33は、P/Qが0.012である。本発明例32は、本発明例33に比べて同じ連続切削寿命でありながら断続切削寿命が1.3倍以上優れている。従って、本発明例の中でも0.001≦P/Q≦0.01であることが好ましい。
本発明例3は、J値が2であるのに対し、本発明例2はJ値が1.5であり、本発明例3は本発明例2に比べて同じ断続切削寿命でありながら連続切削寿命が1.3倍優れている。本発明例9はJ値が12であるのに対し、本発明例10はJ値が12.6である。本発明例9は本発明例10に比べてほぼ同じ連続切削寿命でありながら断続切削寿命が1.3倍優れている。従って、本発明例の中でも、2≦J≦12であることが好ましい。
本発明例11と12とを比較すると、本発明例12は(Ta+Nb)/Zrの原子比率が2であるのに対し、本発明例11は2.3であり、両者共同等の断続切削寿命でありながら、本発明例12の連続切削寿命は本発明例11よりも1.3倍以上優れている。本発明例15と16とを比較すると、本発明例15は(Ta+Nb)/Zrの原子比率が0.2であるのに対し、本発明例16は0.1であり、両者共ほぼ同じ連続切削寿命でありながら、本発明例15の方が本発明例16よりも断続切削寿命が1.3倍優れている。従って、本発明例の中でも(Ta+Nb)/Zrの原子比率が0.2〜2であることが好ましい。
本発明例17と18を比較すると、本発明例18はK/Jが0.1、L/Mが1.4であるのに対し、本発明例17はK/Jが0.05、L/Mが1.5であり、両者共同じ断続切削寿命でありながら、本発明例18の方は本発明例17よりも連続切削寿命が1.3倍優れている。また、本発明例21と22を比較すると、本発明例21はK/Jが0.3、L/Mが1.1であるのに対し、本発明例22はK/Jが0.35、L/Mが1.1であり、両者共ほぼ同じ連続切削寿命でありながら、本発明例21の方は本発明例22よりも断続切削寿命が1.3倍優れている。従って、本発明例の中でも0.1≦K/J≦0.3、1.1≦L/M≦1.4であることが好ましい。

Claims (5)

  1. 超硬合金部材内部が、少なくとも鉄族金属の1種以上とMoとからなる結合相と、少なくともZrを含みこれとTa及び/又はNbの炭化物、窒化物、炭窒化物、酸化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物の1種以上もしくはそれらの固溶体を含有する硬質相、残WCと不可避不純物とから成り、該超硬合金部材の表面に単層又は多重層の硬質皮膜が被覆されており、該被覆層直下の該部材表面に硬質相が消失又は減少している硬質相貧化表面帯域が1〜100μmの深さ方向の厚さで形成され、該硬質相貧化表面帯域に隣接して深さ方向に1〜200μm厚さの硬質相富化中間帯域が存在し、該硬質相富化中間帯域内の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量を質量%でI、該超硬合金部材内部の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量をJとした時、両者の比率I/Jが、I/J>1であることを特徴とする被覆超硬合金部材。
  2. 請求項1記載の被覆超硬合金部材において、該超硬合金部材内部における結合相のMo含有量を質量%でP、結合相を構成する鉄族金属含有量をQとした時、比率P/Qが、0.001≦P/Q≦0.01であることを特徴とする被覆超硬合金部材。
  3. 請求項1又は2記載の被覆超硬合金部材において、該J値が2≦J≦12であることを特徴とする被覆超硬合金部材。
  4. 請求項1乃至3いずれかに記載の被覆超硬合金部材において、該部材内部における(Ta+Nb)/Zrの原子比率が、0.2≦(Ta+Nb)/Zr≦2であることを特徴とする被覆超硬合金部材。
  5. 請求項1乃至4いずれかに記載の被覆超硬合金部材において、該硬質相貧化表面帯域内の硬質相を構成するW以外の金属成分含有量を質量%でKとし、該Jとの両者の比率K/Jが、0.1≦K/J≦0.3であり、該硬質相貧化表面帯域内の結合相を構成する金属成分含有量を質量%でLとし、該超硬合金部材内部の結合相を構成する金属成分含有量をMとした時、両者の比率L/Mが、1.1≦L/M≦1.4であることを特徴とする被覆超硬合金部材。
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