JP4474646B2 - 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents

高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、特に鋼や鋳鉄などの高速断続切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下地密着層として、0.1〜2μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された炭化タングステン(以下、WCで示す)層、
(b)下部層として、3〜20μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)層、
(c)中間層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)のうちの1層以上からなり、かつ0.1〜3μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(d)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された酸化アルミニウム(以下、Al23で示す)層、
以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている。
特開平6−31503号公報 特開平6−173009号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを切削条件の最も厳しい高速断続切削、すなわち切刃部にきわめて短いピッチで繰り返し機械的衝撃の加わる高速断続切削に用いた場合、これを構成する硬質被覆層は下部層のTiCN層による高温強度、同上部層のAl23層による高温硬さおよび耐熱性を具備するものの、前記TiCN層による高温強度が不十分であるために、機械的衝撃に対して満足に対応することができず、この結果硬質被覆層にはチッピング(微小欠け)が発生し易くなることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層の耐チッピング性向上をはかるべく、これの下部層であるTiCN層に着目し、研究を行った結果、
(a)通常、上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の下地密着層を構成するWC層(以下、「従来WC層」という)は、通常の化学蒸着装置で、
反応ガス組成−体積%で、WF:0.5〜5%、ベンゼン(C)などの炭化水素:0.5〜10%、H:10〜35%、Ar:残り、
反応雰囲気温度:500〜900℃、
反応雰囲気圧力:5〜30kPa、
の条件で形成されるが、これを、同じく通常の化学蒸着装置で、
反応ガス組成−体積%で、WF:0.04〜0.4%、CHCN:0.04〜0.4%:、H:40〜80%、Ar:残り、
反応雰囲気温度:920〜1050℃、
反応雰囲気圧力:5〜30kPa、
の条件、すなわち、反応ガスの炭素源として、ベンゼン(C)などの炭化水素に代って、きわめて少量CHCN(アセトニトリル)を用いると共に、反応ガス中のWFの含有割合を著しく低くし、一方同Hの割合を相対的に高くし、かつ反応雰囲気温度を相対的に高くした条件で形成すると、この結果のWC層(以下、「改質WC層」という)は、透過型電子顕微鏡による縦断面組織観察で、図1に例示される通り[なお、図1は、実施例における本発明被覆サーメット工具12の硬質被覆層を構成する改質WC層の透過型電子顕微鏡(倍率:5万倍)による縦断面組織を示すものであり、図1の上方が表面側、下方が工具基体側となる]、縦方向羽毛状成長組織を示し、上記の従来WC層が通常の粒状組織を有するのに比して、著しく特徴のある組織をもつこと。
(b)上記の縦方向羽毛状成長組織を有する改質WC層を下地密着層として、これの上に通常の条件で下部層としてTiCN層を化学蒸着形成すると、この結果形成されたTiCN層(以下、「改質TiCN層」という)は、下地密着層として形成した前記改質WC層の履歴作用で、前記従来WC層を下地密着層として、これの上に同じく通常の条件で下部層として化学蒸着形成されたTiCN層(以下、「従来TiCN層」という)に比して、一段とすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐機械的衝撃性を具備するようになることから、硬質被覆層の上部層が前記Al23層、下部層が前記改質TiCN層からなる被覆サーメット工具は、特に激しい機械的衝撃を伴なう高速断続切削加工でも、前記硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること。
(c)上記の従来TiCN層と改質TiCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図2(a),(b)に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記従来TiCN層は、図4に例示される通り、{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、前記改質TiCN層は、図3に例示される通り、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すこと。
(c)上記の下部層としての改質TiCN層は、上記の通り、下地密着層として形成した上記縦方向羽毛状成長組織を有する改質WC層の上に化学蒸着することにより形成されるが、前記改質WC層の形成条件のうち、いずれかの条件が上記の条件範囲から外れても縦方向羽毛状成長組織を有する改質WC層の形成はできなくなり、この場合0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す、すなわちすぐれた高温強度を有する改質TiCN層の形成は不可能となること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下地密着層として、0.1〜2μmの平均層厚を有する化学蒸着形成されたWC層、
(b)下部層として、3〜20μmの平均層厚を有する化学蒸着形成されたTiCN層、
(c)中間層として、いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層以上からなり、かつ0.1〜3μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(d)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着形成されたAl層、
以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、
上記(a)の下地密着層としてのWC層を、透過型電子顕微鏡による縦断面組織観察で、縦方向羽毛状成長組織を有する改質WC層、
で構成し、かつ、上記(b)の下部層としてのTiCN層を、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層、
で構成してなる、高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層について、その平均層厚を上記の通りに限定した理由を以下に説明する。
(a)改質WC層(下地密着層)
上記改質WC層には、下地密着層として、工具基体および下部層である改質TiCN層のいずれにも強固に密着し、硬質被覆層の工具基体表面に対する密着性を向上させる作用を有するほか、上記の通り自身の有する縦方向羽毛状成長組織が、これに通常の条件で蒸着形成される下部層としてのTiCN層の性質に著しい履歴効果を及ぼし、この結果蒸着形成された前記TiCN層は改質されて一段とすぐれた高温強度を具備する、すなわち、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになる作用を有するが、その平均層厚が0.1μm未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方、その平均層厚が2μmを越えると、この部分が脆化層として作用する場合が生じるようになり、チッピング発生の原因となることから、その平均層厚を0.1〜2μmと定めた。
(b)改質TiCN層(下部層)
上記の通り、改質WC層を上記の蒸着条件で形成することにより縦方向羽毛状成長組織を具備せしめ、前記改質WC層のもつ縦方向羽毛状成長組織による履歴作用で、これに蒸着形成されるTiCN層は改質されて、0〜10度の傾斜角区分範囲内に測定傾斜角の最高ピークが現れ、かつ前記0〜10度の傾斜角区分内に存在する度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上となる傾斜角度数分布グラフを示すようになり、この結果として一段とすぐれた高温強度を具備するようになるが、その平均層厚が3μm未満では所望のすぐれた高温強度を硬質被覆層に具備せしめることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(c)Ti化合物層(中間層)
Ti化合物層は、主に下部層の改質TiCN層と上部層であるAl23層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が0.1μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が3μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速断続切削で、この部分が脆化層として作用する場合が生じるようになり、チッピング発生の原因となることから、その合計平均層厚を0.1〜3μmと定めた。
(d)Al23層(上部層)
Al23層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、硬質被覆層の最表面層として黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明被覆サーメット工具は、機械的熱的衝撃がきわめて高い鋼や鋳鉄などの高速断続切削でも、硬質被覆層の下部層を構成する改質TiCN層が一段とすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、硬質被覆層にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を示すものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表3,4に示される条件で、かつ表6に示される組み合わせ並びに目標層厚で、硬質被覆層の下地密着層である改質WC層(a)〜(m)、および下部層としてのTiCN層を蒸着形成して、これを改質TiCN層とし、ついで同じく表4に示される条件にて、中間層としてのTi化合物と上部層のAl23層を同じく表6に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表7に示される通りの組み合わせ並びに目標層厚で、硬質被覆層の下地密着層である従来WC層(a)〜(m)および下部層であるTiCN層(従来TiCN層)を表4,5に示される条件で蒸着形成し、ついで同じく表4に示される条件で、中間層としてのTi化合物と上部層のAl23層を同じく表7に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成することにより従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆サーメット工具と従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する改質TiCN層および従来TiCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、傾斜角度数分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の改質TiCN層および従来TiCN層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
この結果得られた各種の改質TiCN層および従来TiCN層の傾斜角度数分布グラフにおいて、{112}面が最高ピークを示す傾斜角区分、並びに0〜10度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の傾斜角度数分布グラフ全体の傾斜角度数に占める割合をそれぞれ表6,7にそれぞれ示した。
上記の各種の傾斜角度数分布グラフにおいて、表6,7にそれぞれ示される通り、本発明被覆サーメット工具の改質TiCN層は、いずれも{112}面の測定傾斜角の分布が0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが現れ、かつ0〜10度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の割合が50%以上である傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、従来被覆サーメット工具の従来TiCN層は、いずれも{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在せず、0〜10度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の割合も30%以下である傾斜角度数分布グラフを示すものであった。
なお、図3は、本発明被覆サーメット工具12の改質TiCN層の傾斜角度数分布グラフ、図4は、従来被覆サーメット工具10の従来TiCN層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
さらに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13について、これの硬質被覆層の構成層である改質WC層および従来WC層の縦断面を透過型電子顕微鏡を用いて測定したところ、前記改質WC層はいずれも縦方向羽毛状成長組織を示し、一方前記従来WC層は通常の粒状組織を示すものであった。また、これらの硬質被覆層の構成層をそれぞれを電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、いずれの構成層もそれぞれ目標組成と実質的に同じ組成を有することが確認された。さらに、これらの被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の各種の被覆サーメット工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13について、
被削材:JIS・SCM415の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.25mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件A)での合金鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:380m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件B)での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
被削材:JIS・FCD500の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:400m/min、
切り込み:2.0mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件C)でのダクタイル鋳鉄の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表8に示した。
Figure 0004474646
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表6〜8に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、いずれも硬質被覆層の下部層が、下地密着層である改質WC層の履歴作用で、{112}面の傾斜角が0〜10度の範囲内の傾斜角区分で最高ピークを示すと共に、前記0〜10度の傾斜角区分範囲内に存在する度数の合計割合が50%以上を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層で構成され、機械的衝撃がきわめて高い鋼や鋳鉄の高速断続切削でも、前記改質TiCN層がすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、切刃部のチッピング発生が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の下部層が、{112}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在しない傾斜角度数分布グラフを示す従来TiCN層で構成された従来被覆サーメット工具1〜13においては、いずれも高速断続切削では硬質被覆層の耐機械的衝撃性が不十分であるために、切刃部にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、特に高温強度が要求される高速断続切削でもすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
本発明被覆サーメット工具12の硬質被覆層の下地密着層を構成する改質WC層の透過型電子顕微鏡(倍率:5万倍)による縦断面組織写真(縦方向羽毛状成長組織写真)である。 硬質被覆層を構成する各種TiCN層における結晶粒の{112}面の傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。 本発明被覆サーメット工具12の硬質被覆層の下部層を構成する改質TiCN層の{112}面の傾斜角度数分布グラフである。 従来被覆サーメット工具10の硬質被覆層の下部層を構成する従来TiCNの{112}面の傾斜角度数分布グラフである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下地密着層として、0.1〜2μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された炭化タングステン層、
    (b)下部層として、3〜20μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された炭窒化チタン層、
    (c)中間層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層以上からなり、かつ0.1〜3μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
    (d)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された酸化アルミニウム層、
    以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、
    上記(a)の下地密着層としての炭化タングステン層を、透過型電子顕微鏡による縦断面組織観察で、縦方向羽毛状成長組織を有する改質炭化タングステン層、
    で構成し、かつ、上記(b)の下部層としての炭窒化チタン層を、
    電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質炭窒化チタン層、
    で構成したことを特徴とする高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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