JP5088475B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Description

この発明は、大きな発熱を伴うとともに、切刃部に対して繰り返し断続的に大きな衝撃的負荷がかかる鋼や鋳鉄などの高送り断続切削加工で、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された、1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム(以下、Alで示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている。
また、上記の被覆工具において、下部層であるTi化合物層を構成するTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、例えば、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着し、縦長成長結晶組織をもつTiCN層(以下、l−TiCN層という)を形成することも知られている。
特開平6−31503号公報 特開平6−8010号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化、省エネ化、高効率化、低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と過酷な条件下で行われる傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを切刃部に大きな熱的・衝撃的負荷が繰り返し断続的にかかる高送り断続切削条件で用いた場合には、硬質被覆層を構成する下部層のTi化合物層の高温強度、耐熱性が不十分であるために、硬質被覆層にはチッピング(微小欠け)、熱塑性変形が発生し易くなり、その結果、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の被覆工具の硬質被覆層の耐チッピング性向上をはかるべく、これの下部層であるTi化合物層、特に、TiCNO層、に着目し、研究を行った結果、
(a)従来被覆工具の硬質被覆層を構成する下部層としてのTiCNO層(以下、従来TiCNO層という)は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:2〜10%、CO:1〜5%、CH:0.1〜5%、N:5〜30%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜25kPa、
の条件(通常条件という)で蒸着形成されるが、
この蒸着条件を変更し、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:2〜10%、CO:1〜5%、N:50〜60%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850〜900℃、
反応雰囲気圧力:10〜22kPa、
の条件、即ち、通常条件に比して、メタン無添加の高窒素ガス組成かつ低温の蒸着条件、で目標層厚(1〜8μm)になるまで蒸着形成すると、このような条件で蒸着形成されたTiCNO層(以下、改質TiCNO層という)は、高温強度が一段と向上し、切削加工時、断続的かつ繰り返しかかる機械的衝撃に起因するチッピング発生を防止することができ、さらに、耐熱性も向上し、切削時に発生する高熱によって切刃部が過熱されても耐熱塑性変形にすぐれ、偏摩耗の発生が抑制されるので、改質TiCNO層を硬質被覆層の構成層とする被覆工具は、高送り断続切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること。
(b)上記の改質TiCNO層について、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図2(a),(b)に概略説明図で例示される通り、縦断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記縦断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角(図2(a)には前記結晶面のうち(001)面の傾斜角が0度、(011)面の傾斜角が45度の場合、同(b)には(001)面の傾斜角が45度、(011)面の傾斜角が0度の場合を示しているが、これらの角度を含めて前記結晶粒個々のすべての傾斜角)を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にTi、炭素、窒素および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度を求めた場合に、前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が2度以上の場合を粒界であるとして設定し、その上で電界放出型査電子顕微鏡を用い、上記改質TiCNO層の縦断面研磨面を、例えば、層厚×幅30μmの範囲で測定し、粒界として識別される部分のうち前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が15度以上の粒界の長さ(μm。以下、GBLという)を求め、さらに、このGBLと改質TiCNO層の層厚(μm。以下、Tで示す)の比(即ち、GBL/T)を求めると、前記改質TiCNO層は、表5、6に示される通り、GBL/Tが320〜600という大きな値を示し、この高いGBL/Tの値は、成膜時の反応ガス組成、反応雰囲気温度、反応雰囲気圧力の組み合わせによって変化すること(なお、前記通常条件で蒸着形成された従来TiCNO層は、表7、8に示される通り、GBL/Tは小さな値である。)。
(c)上記の改質TiCNO層は、上記従来TiCNO層に比して一段と高い高温強度と耐熱性を有し、そして、これを硬質被覆層下部層の構成層として蒸着形成してなる被覆工具は、同上部層であるAl層が具備するすぐれた高温硬さおよび耐熱性と相俟って、特に切刃部に対して大きな熱的・衝撃的負荷がかかる高送り断続切削条件で用いた場合にも、従来TiCNO層を蒸着形成してなる従来被覆工具に比して、硬質被覆層が一段とすぐれた耐チッピング性および耐摩耗性を発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
「WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物層(TiC層)、窒化物層(TiN層)、炭窒化物層(TiCN層)、炭酸化物層(TiCO層)および炭窒酸化物層(TiCNO層)のうちの2層以上からなり、かつ2〜15μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された、1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層(Al層)、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具において、
(c)上記下部層を構成する少なくとも一つの層は、1〜8μmの平均層厚を有する炭窒酸化チタン層(改質TiCNO層)であり、さらに、該炭窒酸化チタン層(改質TiCNO層)について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記層の縦断面研磨面の幅30μmの測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記縦断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角から、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度を求め、また、前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が2度以上の場合を粒界であるとして設定した上で、電界放出型査電子顕微鏡を用い、層の縦断面研磨面における測定領域について、粒界として識別される部分のうち前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が15度以上の粒界の長さ(μm)を求め、この粒界の長さ(μm)と測定した炭窒酸化チタン層(改質TiCNO層)の層厚(μm)との比の値が320〜600を示す炭窒酸化チタン層(改質TiCNO層)である、
ことを特徴とする表面被覆切削工具(被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆工具の硬質被覆層の構成層について、上記の通りに数値限定した理由を以下に説明する。
(a)下部層(Ti化合物層)
少なくとも、改質TiCNO層と、TiC層、TiN層、TiCN層(l−TiCN層も含む)、TiCO層のいずれかからなるTi化合物層は、それ自体が高温強度を有し、これの存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体と上部層であるAl層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が2μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その合計平均層厚が15μmを越えると、特に高送り断続切削でチッピングを起し易くなることから、その合計平均層厚を2〜15μmと定めた。
(b)下部層の改質TiCNO層
通常条件に比してメタン無添加の高窒素ガス組成かつ低温の蒸着条件、
即ち、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:2〜10%、CO:1〜5%、N:50〜60%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850〜900℃、
反応雰囲気圧力:10〜22kPa、
の条件で化学蒸着することにより形成される改質TiCNO層は、格子点にTi、炭素、窒素および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するNaCl型面心立方晶の結晶構造を有しており、さらに、この改質TiCNO層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、縦断面研磨面の測定範囲内に存在する改質TiCNO層の結晶粒個々に電子線を照射して、前記縦断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角から、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度を求め、さらに、前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が2度以上の場合を粒界であるとして設定した上で、電界放出型査電子顕微鏡により、改質TiCNO層の縦断面研磨面を、測定領域、例えば、層厚×幅30μmの範囲、で測定し、粒界として識別される部分のうちで前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が15度以上の粒界(以下、大傾角粒界という)についてその粒界の長さGBL(μm)を求め、そして、GBL(μm)と、改質TiCNO層の層厚T(μm)との比を求めると、GBL/Tは320〜600という値を示し、そして、GBL/Tがこのように大きな値を示す改質TiCNO層は、一段とすぐれた高温強度を備えるようになるため、高送り断続切削加工により、切刃部に対して大きな熱的・衝撃的負荷が加わったとしても、硬質被覆層にチッピングが発生する危険性を大幅に低減することができる。
しかし、GBL/T値が600を超えるようになると、改質TiCNO層自体に脆化傾向がみられるようになり、一方、GBL/T値が320未満の小さな値(通常条件で蒸着形成した従来TiCNO層のGBL/T値は320未満である)になると、高温強度が不足し、耐チッピング性の改善を期待することはできないため、GBL/Tの値を320〜600と定めた。
なお、GBL/Tの値は、反応ガス組成、反応雰囲気温度によって影響され、例えば、改質TiCNO層の蒸着条件より、低窒素ガス組成かつ高温条件で蒸着形成された従来TiCNO層におけるGBL/Tの値は、100〜200程度の小さな値(表7、8参照)であって、高温強度の改善が図られていないため、高送り断続切削という厳しい切削条件では硬質被覆層にチッピングの発生が見られた(表9参照)。
また、前記改質TiCNO層は、従来TiCNO層に比して一段とすぐれた高温強度を有するようになるのであるが、その平均層厚が1μm未満では十分な高温強度向上効果を期待できず、一方、その平均層厚が8μmまでであれば十分な耐チッピング性を発揮できることから、その平均層厚を1〜8μmと定めた。
(c)上部層(Al層)
Al層からなる上部層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明の被覆工具は、大きな発熱を伴うとともに、切刃部に対して繰り返し断続的に大きな衝撃的負荷がかかる鋼や鋳鉄などの高送り断続切削加工に用いた場合でも、硬質被覆層の下部層の少なくとも一つの層を構成する改質TiCNO層が、一段とすぐれた高温強度を示すようになることから、硬質被覆層にチッピングの発生はなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、硬質被覆層の下部層としてTi化合物層(但し、改質TiCNO層を除く)を表3に示される条件で蒸着形成し、
ついで、改質TiCNO層を、
反応ガス組成:容量%で、TiCl:2〜10%の範囲内の所定量、CO:1〜5%の範囲内の所定量、N:50〜60%の範囲内の所定量、H2:残り、
反応雰囲気温度:850〜900℃の範囲内の所定温度、
反応雰囲気圧力:10〜22kPaの範囲内の所定圧力、
の表4に示される条件で、表5、6に示される組み合わせで、かつ同じく表5、6に示される目標層厚で蒸着形成し、その後同じく表3に示される条件にて、上部層としてのAl層を同じく表5、6に示される目標層厚で蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜20をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、硬質被覆層の下部層として、Ti化合物層(従来TiCNO層)を表3に示される条件で、表7、8に示される組み合わせおよび目標層厚で蒸着形成し、さらに上部層としてのAl層を、表3に示される条件で、かつ表7、8に示される目標層厚で蒸着形成することにより従来被覆工具1〜20をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆工具と従来被覆工具の硬質被覆層を構成する改質TiCNO層および従来TiCNO層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、上記各層の縦断面研磨面のGBL(μm)を測定し、そして、GBL(μm)と、TiCNO層の層厚(μm)の比を求めた。
すなわち、上記の改質TiCNO層および従来TiCNO層の縦断面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記縦断面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、所定測定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記縦断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度を求め、さらに、前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が2度以上の場合を粒界であるとして設定した上で、電界放出型走査電子顕微鏡により、改質TiCNO層の縦断面研磨面の測定領域(層厚×幅30μmの範囲の領域)を走査し、該測定領域内で、粒界として識別される部分のうちで前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が15度以上の粒界についてその粒界の長さGBL(μm)を求めた。そして、GBL(μm)と、改質TiCNO層の層厚T(μm)との比の値(改質TiCNO層の単位層厚当たりの粒界の長さに相当)を求めた。
この結果得られた各種の改質TiCNO層および従来TiCNO層についてのGBL,T,GBL/Tの値を、それぞれ表5〜8に示した。
表5〜8にそれぞれ示される通り、本発明被覆工具の改質TiCNO層は、いずれもGBL/Tの値が320〜600の範囲内の数値であるのに対して、従来被覆工具の従来TiCNO層は、いずれもGBL/Tの値が320未満であった。
さらに、上記の本発明被覆工具1〜20および従来被覆工具1〜20について、これの硬質被覆層の構成層を電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者および後者とも目標組成と実質的に同じ組成を有するTi化合物層とAl層からなることが確認された。
また、これらの被覆工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の各種の被覆工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆工具1〜20および従来被覆工具1〜20について、
被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 250 m/min、
切り込み: 2.0 mm、
送り: 0.55 mm/rev、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件A)での合金鋼の乾式高送り断続切削試験(通常の送りは、0.25mm/rev)、
被削材:JIS・FCD700の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 200 m/min、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.60 mm/rev、
切削時間: 8 分、
の条件(切削条件B)でのダクタイル鋳鉄の乾式高送り断続切削試験(通常の送りは、0.30mm/rev)、
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 300 m/min、
切り込み: 2.5 mm、
送り: 0.55 mm/rev、
切削時間: 11 分、
の条件(切削条件C)での炭素鋼の乾式高送り断続切削試験(通常の送りは、0.25mm/rev)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表9に示した。
Figure 0005088475
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表5〜9に示される結果から、本発明被覆工具1〜20は、いずれも硬質被覆層の下部層のうちの少なくとも一つの層が、GBL/T=320〜600である改質TiCNO層で構成されていることから、切刃部に対して繰り返し断続的に大きな衝撃的負荷がかかる高送り断続切削でも、前記改質TiCNO層が一段とすぐれた高温強度を備え、すぐれた耐チッピング性を発揮し、硬質被覆層のチッピング発生が著しく抑制されると同時にすぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の下部層のうちのTiCNO層が、GBL/T値が320未満、あるいは、600超の従来TiCNO層で構成された従来被覆工具1〜20においては、硬質被覆層の高温強度、耐熱性が不十分であるために、高送り断続切削加工では硬質被覆層にチッピングが発生し、あるいは、耐摩耗性が低く、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、各種鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削は勿論のこと、切刃部に対して繰り返し断続的に大きな衝撃的負荷がかかる高送り断続切削加工でも硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
硬質被覆層の下部層を構成するTiCNO層が有するNaCl型面心立方晶の結晶構造を示す模式図である。 硬質被覆層の下部層を構成するTiCNO層における結晶粒の(001)面および(011)面の傾斜角の測定態様を示す概略説明図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの2層以上からなり、かつ2〜15μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)上部層が、化学蒸着形成された、1〜15μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
    以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる表面被覆切削工具において、
    (c)上記下部層を構成する少なくとも一つの層は、1〜8μmの平均層厚を有する炭窒酸化チタン層であり、かつ、該炭窒酸化チタン層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記層の縦断面研磨面の幅30μmの測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記縦断面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面および(011)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定傾斜角から、それぞれ隣接する結晶粒相互間の界面における(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度を求め、また、前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が2度以上の場合を粒界であるとして設定した上で、電界放出型査電子顕微鏡を用い、層の縦断面研磨面における測定領域について、粒界として識別される部分のうち前記(001)面の法線同士、および(011)面の法線同士の交わる角度が15度以上の粒界の長さ(μm)を求め、この粒界の長さ(μm)と測定した炭窒酸化チタン層の層厚(μm)との比の値が320〜600を示す炭窒酸化チタン層である、
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
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