JP4756454B2 - 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents

厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Download PDF

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Description

この発明は、硬質被覆層の上部層、すなわち化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有する酸化アルミニウム層(以下、α型Al23層で示す)を、特に厚膜化した状態で、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いた場合にも、すぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.5〜15μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有するα型Al23層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている。
特開平6−31503号公報
近年の切削装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削工具に対する使用寿命の一層の延命化を図る目的で、特に硬質被覆層を構成する上部層、すなわちすぐれた高温硬さと耐熱性を有するα型Al23 層には一段の厚膜化が強く望まれているが、前記α型Al23 層の層厚を従来実用に供されている最大平均層厚である15μmを越えて厚膜化すると、Al23 結晶粒が急激に粗大化し、かつ層自体の緻密性が著しく低下し、この結果高温強度の低下が避けられなくなることから、かかる厚膜化α型Al23 層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成してなる被覆サーメット工具においては、前記厚膜化α型Al23 層が原因で、切刃部にチッピング(微少欠け)が発生し易くなり、この結果使用寿命のきわめて短いものとなることから、実用に供することができないのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する1〜15μmの平均層厚を有するα型Al23層に着目し、これの層厚を平均層厚で15μmを越えて厚膜化しても、前記厚膜化α型Al23層が原因のチッピングが切刃部に発生しない被覆サーメット工具を開発すべく研究を行った結果、
(a)上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層の下部層であるTi化合物層のうちのTiCN層(以下、従来TiCN層という)は、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:2〜10%、CHCN:0.5〜3%、N:10〜30%、H:残り、
反応雰囲気温度:800〜900℃、
反応雰囲気圧力:6〜20kPa、
の条件で形成されるが、上記従来TiCN層の形成に先だって、
反応ガス組成−体積%で、TiCl:0.2〜1%、CH:1〜5%、H:20〜40%、N:5〜15%、Ar:残り、
反応雰囲気温度:780〜850℃、
反応雰囲気圧力:4〜8kPa、
成膜時間:0.8〜1.7時間、
の条件で、望ましくは0.8〜1.2μmの平均層厚で種薄膜としてのTiCN薄膜(以下、TiCN種薄膜という)を形成し、このTiCN種薄膜の上に上記の従来TiCN層の形成条件と同じ条件でTiCN層を形成すると、形成時の前記TiCN層は、前記TiCN種薄膜の結晶配列に著しく影響を受け、これを十分に履歴した状態で成膜が行われるようになることから、この結果形成されたTiCN層(以下、「改質TiCN層」という)は、組織的に改質されて、上記の従来TiCN層に比して一段とすぐれた高温強度を有するようになること。
(b)上記の従来TiCN層と上記(a)の改質TiCN層について、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射し、電子後方散乱回折像装置を用い、所定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{013}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記従来TiCN層は、図3に例示される通り、{013}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、前記改質TiCN層は、図2に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、このシャープな最高ピークは、グラフ横軸の傾斜角区分に現れる高さが上記TiCN種薄膜形成時の反応雰囲気温度および反応雰囲気圧力によって変化し、グラフ横軸の傾斜角区分位置が同じく反応ガスのTiCl含有量によって変化すること。
(c)上記の改質TiCN層および従来TiCN層の表面に、それぞれ従来α型Al23層の形成条件と同じ条件、すなわち、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成−体積%で、AlCl:1〜5%、CO:0.5〜10%、HCl:0.3〜3%、HS:0.02〜0.4%、H:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件で、α型Al23層を平均層厚で15μmを越えた16〜27μmの層厚に形成すると、前記従来TiCN層の上に形成された厚膜化α型Al23層では、上記の通りAl23 結晶粒の粗大化が著しく、層自体の緻密性が著しく低下することから、高温強度の低下が避けられないのに対して、前記改質TiCN層上に形成された厚膜化α型Al23層では、形成時の前記α型Al23層は、前記改質TiCN層の結晶配列に著しく影響を受け、前記改質TiCN層のもつ結晶配列を履歴し、これを持続しながら成膜されるようになることから、この結果形成された厚膜化α型Al23層においては、平均層厚で16〜27μmの層厚に厚膜化したにもかかわらず、層厚方向に沿って、Al23結晶粒の粗大化が著しく抑制され、かつ層自体の緻密性も一様に保持されたものになるので、具備する高温強度は層厚が1〜15μmのα型Al23層のもつ高温強度と同等、寧ろそれ以上の高温強度を具備するようになり、この結果耐チッピング性の低下が著しく抑制されたものになること。
(d)上記の通り、上記TiCN種薄膜形成に際して、上記反応ガスにおけるTiClの含有量を0.2〜1%とすることにより、上記改質TiCN層の傾斜角度数分布グラフで、シャープな最高ピークが傾斜角区分の20〜24度または27〜30度の範囲内に現れ、かつ、反応雰囲気温度を780〜850℃、反応雰囲気圧力を4〜8kPaとすることにより、20〜30度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60〜81%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになるものであり、したがって、試験結果によれば、TiClの含有量が0.2%未満になると、上記改質TiCN層の傾斜角度数分布グラフで、最高ピークの傾斜角区分位置が30度を越えた位置に現れるようになり、一方その含有量が1%を越えると、逆に最高ピークの傾斜角区分位置が20度未満の位置になってしまうものであり、また、反応雰囲気温度および反応雰囲気圧力に関しては、温度が780℃〜850℃の範囲、圧力が4〜8kPaの範囲から外れると、前記改質TiCN層の傾斜角度数分布グラフにおける20〜30度の範囲内に存在する度数数割合が60%未満になってしまい、いずれの場合も改質TiCN層の前記厚膜化α型Al23層に及ぼす履歴作用が不十分となり、前記厚膜化α型Al23層に所望の耐チッピング性を確保することができないこと。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、およびTiCN層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.6〜2μmの合計平均層厚を有する密着性Ti化合物層、
(b)上記(a)の密着性Ti化合物層上に直接、1〜10μmの平均層厚で化学蒸着形成されたTiCN層
(c)上記(b)のTiCN層上に直接、16〜27μmの平均層厚で化学蒸着形成され、かつ化学蒸着形成された状態でα型の結晶構造を有する厚膜化α型Al23層、
以上(a)〜(c)からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具において、
上記(b)のTiCN層を
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射し、電子後方散乱回折像装置を用い、所定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{013}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、20〜24度または27〜30度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、20〜30度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60〜81%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層、
で構成してなる、厚膜化α型Al23層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層について、上記の通りに数値限定した理由を以下に説明する。
(a)密着性Ti化合物層
密着性Ti化合物層は、工具基体および改質TiCN層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が0.6μm未満では、所望のすぐれた密着性を確保することができない場合が生じ、一方前記密着性は2μmまでの合計平均層厚で充分であることから、その合計平均層厚を0.6〜2μmと定めた。
(b)改質TiCN層
上記の通り、上記TiCN種薄膜形成に際して、上記反応ガスにおけるTiClの含有量を0.2〜1%とすることにより、傾斜角度数分布グラフで、シャープな最高ピークが傾斜角区分の20〜24度または27〜30度の範囲内に現れ、かつ、反応雰囲気温度を780〜850℃、反応雰囲気圧力を4〜8kPaとすることにより、20〜30度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60〜81%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層が形成されるようになり、この結果として改質TiCN層はすぐれた高温強度を具備するようになるほか、これの上に形成される厚膜化α型Al23層の組織に影響を及ぼし、Al23結晶粒の粗大化を著しく抑制し、かつ層自体の緻密性を厚膜化しても層厚方向に沿って一様に保持せしめる作用があるが、その平均層厚が1μm未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方その平均層厚が10μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、これが前記厚膜化α型Al23層のチッピング発生の原因となることから、その平均層厚を1〜10μmと定めた。
(c)厚膜化α型Al23
上記の通り改質TiCN層の介在によって、これの組織的履歴を受け、結晶粒の粗大化が抑制され、かつ、組織的緻密性が保持された厚膜化α型Al23層の形成が可能となり、この結果1〜15μmの平均層厚を有するα型Al23層が具備する高温強度と同等以上の高温強度を具備し、耐チッピング性の低下が抑制されるようになる外、Al23層自身のもつすぐれた高温硬さと耐熱性によって、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が16μm未満では厚膜化の要求に十分満足に対応することができず、一方その平均層厚が27μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなる傾向が現れるようになることから、その平均層厚を16〜27μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、硬質被覆層の最表面層として必要に応じて蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明の被覆サーメット工具は、硬質被覆層としての改質TiCN層がすぐれた高温強度を有し、かつ、これの上に形成される厚膜化α型Al23層に組織的影響を及ぼし、この結果前記厚膜化α型Al23層は前記改質TiCN層の履歴を受けて、1〜15μmの平均層厚を有するα型Al23層が具備する高温強度と同等、あるいはこれ以上の高温強度を具備するようになることから、平均層厚で16〜27μmの層厚に厚膜化したにもかかわらず、チッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになるものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で30時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.06mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体B〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで30時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜eを形成した。
つぎに、これらの工具基体B〜Fおよび工具基体a〜eの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、表3および表4に示される条件にて、硬質被覆層として密着性Ti化合物層および改質TiCN層を、表5に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成し、ついで同じく表3に示される条件にて、同厚膜化α型Al23層を同じく表5に示される組み合わせで、かつ目標層厚で蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜10をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表6に示される通り、本発明被覆サーメット工具1〜10の硬質被覆層を構成する改質TiCN層に代って、表3に示される条件で従来TiCN層を形成する以外は同一の条件で比較被覆サーメット工具1〜10をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆サーメット工具と比較被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する改質TiCN層および従来TiCN層について、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、傾斜角度数分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の改質TiCN層および従来TiCN層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{013}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
この結果得られた各種の改質TiCN層および従来TiCNの傾斜角度数分布グラフにおいて、{013}面が最高ピークを示す傾斜角区分、並びに20〜30度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の傾斜角度数分布グラフ全体の傾斜角度数に占める割合をそれぞれ表5,6にそれぞれ示した。
上記の各種の傾斜角度数分布グラフにおいて、表5,6にそれぞれ示される通り、本発明被覆サーメット工具の改質TiCN層は、いずれも{013}面の測定傾斜角の分布が20〜24度または27〜30度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが現れ、かつ20〜30度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の割合が60〜81%である傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、比較被覆サーメット工具の従来TiCN層は、いずれも{013}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在せず、20〜30度の範囲内の傾斜角区分内に存在する傾斜角度数の割合も30%以下である傾斜角度数分布グラフを示すものであった。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具の改質TiCN層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、比較被覆サーメット工具の従来TiCN層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
さらに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜10および比較被覆サーメット工具1〜10について、これの硬質被覆層の構成層を電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、前者および後者とも目標組成と実質的に同じ組成を有する密着性Ti化合物層とα型Al23層からなることが確認された。また、これらの被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の各種の被覆サーメット工具をいずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆サーメット工具1〜10および従来被覆サーメット工具1〜10について、
被削材:JIS・SNCM220の丸棒、
切削速度:270m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.35mm/rev、
切削時間:28分、
の条件(切削条件A)での合金鋼の乾式連続切削試験、
被削材:JIS・S15Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:300m/min、
切り込み:2.5mm、
送り:0.25mm/rev、
切削時間:22分、
の条件(切削条件B)での炭素鋼の乾式断続切削試験、
被削材:JIS・FCD400の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:280m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:22分、
の条件(切削条件C)でのダクタイル鋳鉄の乾式断続切削試験を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表7に示した。
Figure 0004756454
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表5〜7に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜10は、いずれも硬質被覆層のうちの1層が、{013}面の傾斜角が20〜24度または27〜30度の範囲内の傾斜角区分で最高ピークを示すと共に、20〜30度の傾斜角区分範囲内に存在する度数の合計割合が60〜81%を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層で構成され、これの上に蒸着形成される厚膜化α型Al23層は前記改質TiCN層の履歴を強力に受け、組織的に影響されて、16〜27μmの厚膜であるにもかかわらず、1〜15μmの平均層厚を有するα型Al23層が具備する高温強度と同等、あるいはこれ以上の高温強度を具備することから、切刃部のチッピング発生が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するのに対して、硬質被覆層が、{013}面の測定傾斜角の分布が0〜45度の範囲内で不偏的で、最高ピークが存在しない傾斜角度数分布グラフを示す従来TiCN層の上に厚膜化α型Al23層を蒸着形成してなる比較被覆サーメット工具1〜10においては、いずれも前記厚膜化α型Al23層の高温強度不足が原因で、切刃部にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、これの硬質被覆層を構成するα型Al23層の層厚を平均層厚で16〜27μmに厚くしても、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工で、すぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮し、使用寿命の延命化を可能とするものであるから、切削加工のFA化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
硬質被覆層を構成する各種TiCN層における結晶粒の{013}面の傾斜角の測定範囲を示す概略説明図である。 本発明被覆サーメット工具3の硬質被覆層を構成する改質TiCN層の{013}面の傾斜角度数分布グラフである。 比較被覆サーメット工具3の硬質被覆層を構成する従来TiCN層の{013}面の傾斜角度数分布グラフである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物層、窒化物層、および炭窒化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.6〜2μmの合計平均層厚を有する密着性Ti化合物層、
    (b)上記(a)の密着性Ti化合物層上に直接、1〜10μmの平均層厚で化学蒸着形成された炭窒化チタン層
    (c)上記(b)の炭窒化チタン層上に直接、16〜27μmの平均層厚で化学蒸着形成され、かつ化学蒸着形成された状態でα型の結晶構造を有する厚膜化α型酸化アルミニウム層、
    以上(a)〜(c)からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、
    上記(b)の炭窒化チタン層を
    電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射し、電子後方散乱回折像装置を用い、所定領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{013}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、20〜24度または27〜30度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、20〜30度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の60〜81%の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質炭窒化チタン層、
    で構成したことを特徴とする厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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