JP4692065B2 - 厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Description
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.5〜10μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有するα型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることは良く知られている。
(a)上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層であるα型Al2O3層は、一般に、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:1〜10%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:950〜1100℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPa、
の条件(以下、通常条件という)で形成されるが、α型Al2O3層の形成を、同じく通常の化学蒸着装置を用い、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:1〜10%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:20〜50kPa、
の低温高圧条件で行うと、その層厚を平均層厚で15μmを越えた16〜30μmに厚膜化して形成しても、この結果の厚膜化α型Al2O3層(以下、厚膜化改質α型Al2O3層という)においては、厚膜化したにもかかわらず、Al2O3結晶粒の粗大化が著しく抑制され、かつ層自体の緻密性が保持されたものになるので、高温強度の低下が防止されるようになること。
(b)上記の厚膜化改質α型Al2O3層、および上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層であるα型Al2O3層の形成条件と同じ条件(上記の通常条件)で16〜30μmの平均層厚で蒸着形成された厚膜化α型Al2O3層(以下、厚膜化通常α型Al2O3層という)について、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有するα型Al2O3結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、前記厚膜化通常α型Al2O3層は、図3に例示される通り、(0001)面の測定傾斜角の分布が45〜90度の範囲内で不偏的な傾斜角度数分布グラフを示すのに対して、前記厚膜化改質α型Al2O3層は、図2に例示される通り、傾斜角区分の特定位置にシャープな最高ピークが現れ、このシャープな最高ピークは、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を変化させることによりグラフ横軸の傾斜角区分に現れる位置が変わること。
(c)試験結果によれば、上記の厚膜化改質α型Al2O3層においては、上記反応雰囲気圧力を上記の通り20〜50kPaの範囲内で変化させると、上記シャープな最高ピークが傾斜角区分の70〜81度の範囲内に現れると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになり、したがって、傾斜角度数分布グラフで70〜81度の範囲内に傾斜角区分の最高ピークが現れ、かつ前記70〜81度の範囲内に存在する度数割合が45%以上の割合を占める厚膜化改質α型Al2O3層を硬質被覆層の上部層として、下部層のTi化合物層と共存した状態で蒸着形成してなる被覆サーメット工具は、上記の厚膜化通常α型Al2O3層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成した被覆サーメット工具に比して、特に切刃部にチッピングの発生なく、一段とすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.5〜10μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成した状態でα型の結晶構造を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、70〜81度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ16〜30μmの平均層厚を有する厚膜化改質α型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)Ti化合物層
Ti化合物層は、基本的には厚膜化改質α型Al2O3層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体と厚膜化改質α型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性を向上させる作用を有するが、その平均層厚が0.5μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が10μmを越えると、切削時の発生熱による熱塑性変形量が許容範囲を越えて大きくなり、この結果上部層である厚膜化改質α型Al2O3層に割れが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜10μmと定めた。
(b)厚膜化改質α型Al2O3層
上記の通り、厚膜化改質α型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフにおける測定傾斜角の最高ピーク位置は、化学蒸着装置における反応雰囲気圧力を変化させることによって変化するが、この場合試験結果によれば、前記反応雰囲気圧力を20〜50kPa範囲内で変化させると、最高ピークが70〜81度の範囲内の傾斜角区分に現れると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになるものであり、したがって、前記反応雰囲気圧力が20kPa未満でも、50kPaを越えても、測定傾斜角の最高ピーク位置は70〜81度の範囲から外れてしまい、このような場合には所望の高温強度を保持することが困難になるものである。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:5%、HCl:2%、H2S:0.15%、H2:残り、
反応雰囲気温度:850℃、
反応雰囲気圧力:20〜50kPaの範囲内の所定の圧力、
の低温高圧条件で表4に示される目標層厚の厚膜化改質α型Al2O3層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:2.2%、CO2:5%、HCl:2%、H2S:0.15%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1000℃、
反応雰囲気圧力:3〜13kPaの範囲内の所定の圧力、
の通常条件、すなわち同じ組成の反応ガスを用いるが、化学蒸着装置の反応雰囲気温度を相対的に高く、一方同反応雰囲気圧力は相対的に低くした条件で行う以外は同一の条件で、比較被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:270m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:20分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の乾式断続切削試験、
被削材:JIS・S50Cの丸棒、
切削速度:250m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:20分、
の条件(切削条件Bという)での炭素鋼の乾式連続切削試験、さらに、
被削材:JIS・FCD500の丸棒、
切削速度:250m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.25mm/rev、
切削時間:20分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式連続切削試験を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、酸化物、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ0.5〜10μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層として、化学蒸着形成された状態でα型の結晶構造を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、45〜90度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、70〜81度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記70〜81度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の45%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示し、かつ16〜30μmの平均層厚を有する厚膜化改質α型酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、厚膜化α型酸化アルミニウム層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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JP2004308008A (ja) * | 2003-04-01 | 2004-11-04 | Sandvik Ab | 切削工具及びその製造方法 |
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