JP4438559B2 - 硬質被覆層が断続重切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Description
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でκ(カッパ−)型の結晶構造を有する酸化アルミニウム(以下、κ型Al2O3層という)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具は、硬質被覆層を構成する上部層のκ型Al2O3層がすぐれた高温強度を有することから、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削は勿論のこと、特に断続切削に用いた場合にすぐれた耐チッピング性を発揮することも知られている。
さらに、上記Al2O3層には、結晶構造が上記のκ型の他に、α型やθ型などがあり、前記κ型Al2O3層は前記α型Al2O3層に比して、相対的に高温硬さは低いが、高温強度が高い性質を持つことも知られている。
(a)従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する上部層としてのκ型Al2O3層は、例えば、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:3〜10%、CO2:3〜6%、HCl:1〜4%、H2S:0.1〜0.5%、H2:残り、
反応雰囲気温度:920〜1020℃、
反応雰囲気圧力:5〜10kPa、
の条件(通常条件という)で蒸着形成されるが、これを、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:3〜10%、CO2:0.5〜3%、HCl:1〜4%、CH3CN:0.01〜0.3%、H2S:0.1〜0.5%、H2:残り、
反応雰囲気温度:750〜900℃、
反応雰囲気圧力:5〜10kPa、
の条件、すなわち上記の通常条件に比して、反応ガス組成では、CO2を相対的に低く、かつ新たに例えばCH3CNなどの有機化合物を添加し、さらに雰囲気温度を相対的に低くした条件(反応ガス組成調整低温条件)で蒸着形成すると、この結果の反応ガス組成調整低温条件で形成したκ型Al2O3層は、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図1(a),(b)に概略説明図で示される通り、工具基体表面と平行な表面研磨面の測定範囲内に存在する斜方晶の結晶構造を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフを作成した場合、図2に例示される通り、シャープな最高ピークが傾斜角区分の0〜10度の範囲内に現れると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の80%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すこと。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
(a)下部層が、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、上記工具基体の表面と平行な表面研磨面の測定範囲内に存在する斜方晶の結晶構造を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の80%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すκ型Al2O3層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が断続重切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)下部層のTi化合物層
Ti化合物層は、κ型Al2O3層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体とκ型Al2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性を向上させる作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
上記の傾斜角度数分布グラフで、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークを示し、かつ前記0〜10度の傾斜角区分内の度数割合が80%以上であるκ型Al2O3層は、Al2O3自体のもつ高温硬さと耐熱性に加えて、一段とすぐれた高温硬さを有するので、強い機械的衝撃が繰り返し付加される断続重切削加工で、上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成するκ型Al2O3層に比して、一段とすぐれた耐チッピング性を発揮するが、その平均層厚が1μm未満では、所望のすぐれた耐摩耗性を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6%、HCl:2.8%、H2S:0.3%、CO2:0.5%、1.8%、および3%のうちのいずれかの配合量、CH3CN:0.01%、0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、および0.3%のうちのいずれかの配合量、H2:残り、
反応雰囲気温度:750℃、800℃、850℃、および900℃のうちのいずれかの温度、
反応雰囲気圧力:7kPa、
の条件で、表4に示される目標層厚のκ型Al2O3層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:6%、HCl:2.8%、H2S:0.3%、CO2:3%、4.5%、および6%のうちのいずれかの配合量、H2:残り、
反応雰囲気温度:920℃、950℃、980℃、および1020℃のうちのいずれかの温度、
反応雰囲気圧力:7kPa、
の条件で、表5に示される目標層厚のκ型Al2O3層を硬質被覆層の上部層として蒸着形成する以外は同一の条件で従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記のκ型Al2O3層の表面を上記工具基体の表面と平行な研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する斜方晶の結晶構造を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜核のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
なお、図2は、本発明被覆サーメット工具5のκ型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフ、図3は、従来被覆サーメット工具7のκ型Al2O3層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:220m/min、
切り込み:4mm、
送り:0.25mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Aという)での炭素鋼の乾式断続高切り込み切削試験(通常の切り込みは2mm)、
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:200m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.5mm/rev、
切削時間:5分、
の条件(切削条件Bという)での合金鋼の乾式断続高送り切削試験(通常の送りは0.25mm/rev)、さらに、
被削材:JIS・FC300の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:260m/min、
切り込み:5mm、
送り:0.3mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Cという)での鋳鉄の乾式断続高切り込み切削試験(通常の切り込みは2mm)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚を有し、かつ化学蒸着した状態でκ(カッパ−)型の結晶構造を有すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、工具基体表面と平行な表面研磨面の測定範囲内に存在する斜方晶の結晶構造を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(001)面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の80%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が断続重切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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