JP4474647B2 - 高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Description
(a)下地密着層として、0.1〜2μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された窒化チタン(以下、TiNで示す)層、
(b)下部層として、3〜20μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)層、
(c)中間層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)のうちの1層以上からなり、かつ0.1〜3μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(d)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)層、
以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられていることも知られている。
(a)上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層を通常の化学蒸着装置で形成するに際して、構成層である下地密着層のTiN層を通常の条件で形成した後で、これに、同じく通常の化学蒸着装置で、
反応ガス組成−体積%で、WF6:0.04〜0.4%、CH3CN:0.04〜0.4%:、H2:40〜80%、Ar:残り、
反応雰囲気温度:920〜1050℃、
反応雰囲気圧力:5〜30kPa、
の条件で、炭化タングステン(以下、WCで示す)層を0.1〜2μmの平均層厚で形成すると、この結果のWC層(以下、「改質WC層」という)は、透過型電子顕微鏡による縦断面組織観察で、図1に例示される通り[なお、図1は、実施例における本発明被覆サーメット工具4の硬質被覆層を構成する改質WC層の透過型電子顕微鏡(倍率:5万倍)による縦断面組織を示すものであり、図1の上方が表面側、下方が工具基体側となる]、縦方向羽毛状成長組織を有するものとなること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
(a)下地密着層として、0.1〜2μmの平均層厚を有する化学蒸着形成されたTiN層、
(b)下部層として、3〜20μmの平均層厚を有する化学蒸着形成されたTiCN層、
(c)中間層として、いずれも化学蒸着形成された、TiC層、TiN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層以上からなり、かつ0.1〜3μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(d)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着形成されたAl2O3層、
以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、
上記(a)の下地密着層と上記(b)の下部層との間に、0.1〜2μmの平均層厚を有し、かつ透過型電子顕微鏡による縦断面組織観察で、縦方向羽毛状成長組織を有する化学蒸着形成された改質WC層、
を改質層として介在させて、上記(b)の下部層としてのTiCN層を、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質TiCN層、
としてなる、高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)TiN層(下地密着層)
TiN層には、下地密着層として、工具基体および上記改質WC層のいずれにも強固に密着し、硬質被覆層の工具基体表面に対する密着性を向上させる作用を有するが、その平均層厚が0.1μm未満では所望の密着性向上効果が得られず、一方、密着性向上効果は平均層厚で2μmまでで充分であることから、その平均層厚を0.1〜2μmと定めた。
上記改質WC層には、下地密着層であるTiN層および下部層の改質TiCN層のいずれにも強固に密着し、硬質被覆層の工具基体表面に対する密着性を向上させると共に、上記の通り自身の有する縦方向羽毛状成長組織が、これに通常の条件で蒸着形成される下部層としてのTiCN層の性質に著しい履歴効果を及ぼし、この結果蒸着形成された前記TiCN層は改質されて一段とすぐれた高温強度を具備する、すなわち、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示すようになる作用を有するが、その平均層厚が0.1μm未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方、その平均層厚が2μmを越えると、この部分が脆化層として作用する場合が生じるようになり、チッピング発生の原因となることから、その平均層厚を0.1〜2μmと定めた。
上記の通り、改質WC層を上記の蒸着条件で形成することにより縦方向羽毛状成長組織を具備せしめ、前記改質WC層のもつ縦方向羽毛状成長組織による履歴作用で、これに蒸着形成されるTiCN層は改質されて、0〜10度の傾斜角区分範囲内に測定傾斜角の最高ピークが現れ、かつ前記0〜10度の傾斜角区分内に存在する度数の合計割合が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上となる傾斜角度数分布グラフを示すようになり、この結果として一段とすぐれた高温強度を具備するようになるが、その平均層厚が3μm未満では所望のすぐれた高温強度を硬質被覆層に具備せしめることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
Ti化合物層は、主に下部層の改質TiCN層と上部層であるAl2O3層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が0.1μm未満では所望の密着性向上効果が得られず、一方、密着性向上効果は合計平均層厚で3μmまでで充分であることから、その合計平均層厚を0.1〜3μmと定めた。
Al2O3層は、すぐれた高温硬さと耐熱性を有し、硬質被覆層の耐摩耗性向上に寄与するが、その平均層厚が1μm未満では、硬質被覆層に十分な耐摩耗性を発揮せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えて厚くなりすぎると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
すなわち、上記傾斜角度数分布グラフは、上記の改質TiCN層および従来TiCN層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、この測定結果に基づいて、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計することにより作成した。
なお、図3は、本発明被覆サーメット工具4の改質TiCN層の傾斜角度数分布グラフ、図4は、従来被覆サーメット工具2の従来TiCN層の傾斜角度数分布グラフをそれぞれ示すものである。
また、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13について、これらの硬質被覆層の構成層をそれぞれを電子線マイクロアナライザー(EPMA)およびオージェ分光分析装置を用いて観察(層の縦断面を観察)したところ、いずれの構成層もそれぞれ目標組成と実質的に同じ組成を有することが確認された。さらに、これらの被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(同じく縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
被削材:JIS・SCr420Hの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:420m/min、
切り込み:1.2mm、
送り:0.23mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件A)での合金鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:380m/min、
切り込み:1.2mm、
送り:0.22mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件B)での炭素鋼の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)、
被削材:JIS・FCD450の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:420m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.32mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件C)でのダクタイル鋳鉄の乾式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表7に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下地密着層として、0.1〜2μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された窒化チタン層、
(b)下部層として、3〜20μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された炭窒化チタン層、
(c)中間層として、いずれも化学蒸着形成されたTiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層以上からなり、かつ0.1〜3μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(d)上部層として、1〜15μmの平均層厚を有する化学蒸着形成された酸化アルミニウム層、
以上(a)〜(d)で構成された硬質被覆層を形成してなる表面被覆サーメット製切削工具において、
上記(a)の下地密着層と上記(b)の下部層との間に、0.1〜2μmの平均層厚を有し、かつ透過型電子顕微鏡による縦断面組織観察で、縦方向羽毛状成長組織を有する化学蒸着形成された改質炭化タングステン層、
を改質層として介在させて、前記(b)の下部層としての炭窒化チタン層を、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する立方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である{112}面の法線がなす傾斜角を測定し、前記測定傾斜角のうち、0〜45度の範囲内にある測定傾斜角を0.25度のピッチ毎に区分すると共に、各区分内に存在する度数を集計してなる傾斜角度数分布グラフにおいて、0〜10度の範囲内の傾斜角区分に最高ピークが存在すると共に、前記0〜10度の範囲内に存在する度数の合計が、傾斜角度数分布グラフにおける度数全体の50%以上の割合を占める傾斜角度数分布グラフを示す改質炭窒化チタン層、
としたことを特徴とする高速断続切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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