JP7251347B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
上記被膜は、タングステンと炭素とからなるWC層と上記WC層の直上に設けられたチタンを含むTi層とを含み、
上記Ti層は、最表面層であり、
上記Ti層は、X線回折スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有し、
上記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、
上記最大ピークは、(101)面に由来する。
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示に係る表面被覆切削工具は、基材と、基材上に設けられた被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
上記被膜は、タングステンと炭素とからなるWC層と上記WC層の直上に設けられたチタンを含むTi層とを含み、
上記Ti層は、最表面層であり、
上記Ti層は、X線回折スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有し、
上記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、
上記最大ピークは、(101)面に由来する。
上記Ti層は、その厚さが0.5μm以上1.5μm以下である。これにより、更に優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性を有する表面被覆切削工具となる。
上記硬質被膜層は、上記WC層とは組成が異なる第一単位層を少なくとも含み、
上記第一単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる。これにより、更に優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性を有する表面被覆切削工具となる。
上記第二単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる。これにより、更に優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性を有する表面被覆切削工具となる。
以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。さらに、本明細書において、例えば「TiN」等のように、構成元素の比が限定されていない化学式によって化合物が表された場合には、その化学式は従来公知のあらゆる組成比(元素比)を含むものとする。このとき化学式は、化学量論組成のみならず、非化学量論組成も含むものとする。例えば「TiN」の化学式には、化学量論組成「Ti1N1」のみならず、例えば「Ti1N0.8」のような非化学量論組成も含まれる。このことは、「TiN」以外の化合物の記載、例えば「WC」についても同様である。
本開示に係る表面被覆切削工具は、
基材と、基材上に設けられた被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
上記被膜は、タングステンと炭素とからなるWC層と上記WC層の直上に設けられたチタンを含むTi層とを含み、
上記Ti層は、最表面層であり、
上記Ti層は、X線回折スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有し、
上記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、
上記最大ピークは、(101)面に由来する。
本実施形態の基材は、この種の基材として従来公知のものであればいずれのものも使用することができる。例えば、上記基材は、超硬合金(例えば、炭化タングステン(WC)基超硬合金、WCの他にCoを含む超硬合金、WCの他にCr、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加した超硬合金等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等)、立方晶窒化硼素焼結体(cBN焼結体)及びダイヤモンド焼結体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、超硬合金、サーメット及びcBN焼結体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
本実施形態に係る「被膜」は、タングステンと炭素とからなるWC層とWC層の直上に設けられたチタンを含むTi層とを含む。本実施形態に係る「被膜」は、上記基材上の少なくとも一部(例えば、切削加工時に被削材と接する部分や切り屑と接する部分)に設けられることで、切削工具における耐欠損性、耐摩耗性等の諸特性を向上させる作用を有するものである。上記被膜は、上記基材上の全面に設けられてもよい。なお、上記基材上の一部に上記被膜が設けられていない場合や、被膜の構成が部分的に異なる場合においても、本実施形態の範囲を逸脱するものではない。なお、被膜は、後述の硬質被膜層(第一単位層、第二単位層)等の他の層を更に含んでいてもよい。
上記被膜は、WCで示される化合物からなるWC層を含む。本実施形態に係る「WC層」は、タングステン(W)と炭素(C)とからなる層である。ここで、「WC」には、例えば「WC」及び「W2C」のような化学量論組成も含まれるし、「WC1-X」のような非化学量論組成も含まれる。上記WC層は、本実施形態に係る表面被覆切削工具が奏する効果を損なわない範囲において、不可避不純物が含まれていてもよい。上記不可避不純物の含有割合は、WC層の全質量に対して0質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。後述する「Ti層」及び「硬質被膜層」についても同様に、本実施形態に係る表面被覆切削工具が奏する効果を損なわない範囲において、不可避不純物が含まれていてもよい。
図2に示すように、上記被膜50は、チタンを含むTi層12を含む。Ti層12は、金属チタンからなってもよい。Ti層12は、上記WC層11の直上に設けられている。上記Ti層12は、最表面層(最外層)である。上記Ti層は、例えば図5(本開示の一態様に係るTi層のX線回折スペクトルの一例を示す図)に示されるように、X線回折測定(XRD測定)を行うことにより得られたX線回折(XRD)スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有する。上記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、上記最大ピークは、(101)面に由来する。すなわち、上記Ti層のX線回折スペクトルが金属チタン由来のピークを有する事が示されている。本実施形態において「金属チタン由来のピーク」には、金属チタン由来のピークから多少シフトしているピークも含まれるものとする。上記Ti層のX線回折スペクトルは、例えば、株式会社リガク製の「SmartLab」(商品名)、パナリティカル製の「X’pert」(商品名)で測定することが可能である。ここで「最大ピークの半価幅」とは、上記最大ピークの半分の強度における、ピークの幅である。本実施形態では、上記Ti層における任意の3点それぞれをXRD測定し、最大ピークを示した位置の確認及び最大ピークの半価幅の算出を行う。任意の3点における平均値を、最大ピークを示した位置及び最大ピークの半価幅とする。
上記被膜50は、上記基材10と上記WC層11との間に設けられた少なくとも一層の硬質被膜層13を更に含むことが好ましい(図3参照)。例えば、硬質被膜層は、一層であってもよいし、二層であってもよいし、三層以上設けられてもよい。上記硬質被膜層は、上記WC層とは組成が異なる第一単位層を少なくとも含むことが好ましく、上記WC層及び上記第一単位層とは組成が異なる第二単位層を更に含むことがより好ましい。ここで「上記基材と上記WC層との間に設けられた」とは、上記WC層の下側(基材側)に硬質被膜層が設けられていればよく、上記硬質被膜層と上記WC層とは必ずしも接触していることを要しない。言い換えると、上記硬質被膜層とWC層との間に他の層が設けられていてもよい。上記硬質被膜層は、WC層の直下に設けられることが好ましい。また、硬質被膜層は基材と必ずしも接触していることを要しない。言い換えると、上記硬質被膜層と基材との間に他の層が設けられていてもよい。
上記第一単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなることが好ましく、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなることがより好ましい。周期表4族元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等が挙げられる。周期表5族元素としては、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等が挙げられる。周期表6族元素としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等が挙げられる。
上記第二単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなることが好ましく、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素又は、上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなることがより好ましい。
本実施形態に係る表面被覆切削工具の製造方法は、基材準備工程、WC層被覆工程、及びTi層被覆工程を少なくとも含む。本実施形態に係る表面被覆切削工具の製造方法はこれらの工程を含む限り、その他の工程を含んでもよい。以下、各工程について説明する。
基材準備工程では、上記基材を準備する。上記基材としては、上述したようにこの種の基材として従来公知のものであればいずれのものも使用することができる。基材は、製造してもよいし、市販品を購入してもよい。基材を製造する場合、従来公知の方法を用いて製造してもよい。例えば、上記基材が超硬合金からなる場合、所定の配合組成(質量%)からなる原料粉末を市販のアトライターを用いて均一に混合して、続いてこの混合粉末を所定の形状(例えば、SEET13T3AGSN、CNMG120408等)に加圧成形した後に、所定の焼結炉において1300~1500℃以下で、1~2時間焼結することにより、超硬合金からなる上記基材を得ることができる。市販品を購入する場合、市販品としては、例えば、住友電工ハードメタル株式会社製のEH520(商品名)が挙げられる。
WC層被覆工程では、上記基材の表面の少なくとも一部をWC層で被覆する。ここで、「基材の表面の少なくとも一部」には、切削加工時に被削材と接する部分及び切り屑と接する部分が含まれる。
本実施形態に係る表面被覆切削工具の製造方法は、上記WC層被覆工程の後にTi層被覆工程を更に含む。Ti層の形成方法は、特に制限なく、従来の方法を用いることが可能である。具体的には、例えば、上述したPVD法によってTi層を形成することが挙げられる。同一の装置を用いて、上記WC層被覆工程とTi層被覆工程とを連続して行ってもよい。
本実施形態に係る製造方法では、上述した工程の他にも、上記基材と上記WC層との間に硬質被膜層を形成する硬質被膜層被覆工程を適宜行ってもよい。上述の硬質被膜層は、従来の方法によって形成されてもよい。具体的には、例えば、上述したPVD法によって硬質被膜層を形成することが挙げられる。
(基材準備工程)
まず、基材準備工程として、JIS規格K30超硬合金(形状:JIS規格AXMT170530)及びJIS規格K20超硬合金(形状:JIS規格CNMG120408)を基材としてそれぞれ準備した。次に、上記各基材をアークイオンプレーティング装置(株式会社神戸製鋼所製、商品名:AIP)の所定の位置にセットした。
WC層被覆工程として、アークイオンプレーティング法により上記基材の上にWC層を形成した。具体的には以下の方法で行った。まずWCターゲット(組成がWCであってC量が5.9質量%である焼結ターゲット又は溶成ターゲット)をアークイオンプレーティング装置のアーク式蒸発源にセットした。次に、基材温度を450℃及び該装置内のガス圧を1.3Paに設定した。上記ガスとしては、アルゴンガスを導入した。そして、基材(負)バイアス電圧を30V且つDC又はパルスDC(周波数30kHz)に維持したまま、カソード電極に120Aのアーク電流を供給した。アーク電流の供給でアーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりWC層を形成した。ここで、WC層の形成初期(膜厚が0.2μm以下の範囲)では、基材温度を450℃とし、且つ低周波数30kHzのバイアスと高周波数300kHzのバイアスとを0.5分間隔で交互に印加した。
WC層被覆工程を行った後に以下の手順にて、WC層の直上にTi層を形成した。なお、Tiからなるターゲット(Tiターゲット)は、前述のWC層被覆工程を行う前に上記アークイオンプレーティング装置のアーク式蒸発源にセットした。次に、基材温度を420℃及び該装置内のガス圧を1.0Paに設定した。上記ガスとしては、アルゴンガスを導入した。そして、基材(負)バイアス電圧を30VDCに維持したまま、カソード電極に150Aのアーク電流を供給した。アーク電流の供給でアーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりTi層をWC層の直上に形成した。WC層成膜終了時から、Ti層成膜開始までの時間は、17秒とされた。以上により、実施例1の表面被覆切削工具が製造された。以上のようにして、タングステンと炭素とからなる厚さ1.1μmのWC層と、上記WC層の直上に設けられたチタンを含む厚さ1.2μmのTi層とを含む被膜を有する、基材が異なる2種の表面被覆切削工具が準備された。
実施例1と同様に、基材準備工程及びWC層被覆工程が行われた。その後、Ti層被覆工程の基材温度を350~500℃の範囲内で変動させ、該装置内のガス圧を0.1~2.0Paの範囲内で変動させた。ガスとしては、アルゴンガスを導入した。そして、基材(負)バイアス電圧を0~100V且つDC又はパルスDC(周波数10~300kHz)に維持したまま、カソード電極にアーク電流を80~180Aの範囲で変動させて供給した。アーク電流の供給でアーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりTi層をWC層の直上に形成した。DCの際は、バイアス電圧を高くすることによりTi層の膜硬度は高くなり、パルスDCの際は、周波数を高くし、かつバイアス電圧を低くすることにより、Ti層の膜硬度は高くなる。WC層成膜終了時から、Ti層成膜開始時までの時間は、30秒以内とされた。以上により、実施例2~実施例20に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いてそれぞれ2種準備された。なお、基材温度を350~500℃の範囲内で高くすれば(101)面に由来するピークの半価幅が大きくなるという傾向を有し、低くすれば当該半価幅が小さくなるという傾向を有する。ガス圧を0.1~2.0Paの範囲内で高くすれば(101)面に由来するピークにおける2θが大きくなるという傾向を有し、低くすれば当該2θが小さくなるという傾向を有する。
WC層被覆工程を行う前に以下の手順にて、基材の直上に硬質被膜層を形成した。まず表1に記載の硬質被膜層の組成の欄における金属組成を含むターゲット(焼結ターゲット又は溶成ターゲット)をアークイオンプレーティング装置のアーク式蒸発源にセットした。次に、基材温度を350~500℃の範囲で変動させ、該装置内のガス圧を0.8~5.0Paの範囲で変動させた。反応ガスとしては、アルゴンガスを導入した。その後、カソード電極にアーク電流を80~150Aの範囲で変動させて供給した。アーク電流の供給でアーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによって、表1に記載の厚さまで硬質被膜層を形成した。なお、実施例22及び実施例24に係る交互積層構造の硬質被膜層を形成する場合は、表1において左側に記載されているものから順に第一単位層、第二単位層として目的の厚さになるまで繰り返して積層した。その後、表1に記載の厚みを有するWC層及びTi層の形成が、実施例2~実施例20と同様の手順で行われることにより、実施例21~実施例24に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いてそれぞれ2種準備された。
表1に示すように、基材の直上に従来公知の方法を用いて硬質被膜層としてTiN層が設けられ、TiN層の直上にTi層が設けられた。また、当該Ti層はXRDスペクトルにおける最大強度を示す面が(002)面であった。これにより、表1に示す比較例1に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いて2種準備された。
基材温度を250℃とすること以外は、実施例7と同様の方法により、比較例2に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いて2種準備された。比較例2において、WC層の直上に設けられたTi層は、XRDスペクトルにおける最大強度を示す面が(002)面であった(表1)。
表1に示すように、Ti層の直上に従来公知の方法を用いてTiN層を形成したこと以外は、実施例7と同様の方法により、比較例3に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いて2種準備された。
表1に示すように、装置内のガス圧を2.5Paとすること以外は、実施例7と同様の方法により、比較例4に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いて2種準備された。比較例4において、WC層の直上に設けられたTi層は、XRDスペクトルにおける最大ピーク位置(2θ)が40.230°であり、半価幅が0.120°であった。
(XRD測定)
XRD測定用装置(パナリティカル製、商品名:X’pert)を用いて、以下の条件で上述のTi層における任意の3点を測定した。最大ピークを示した測定面は、表1の「最大ピークを示した測定面」に示され、最大ピークを示した位置は、表1の「最大ピーク位置」に示され、最大ピークの半価幅は、表1の「半価幅」の欄に示さている。なお、上記Ti層が最表面でない場合(比較例3)は、機械研磨等で上記Ti層を露出させてからXRD測定を行った。
XRD法の測定条件
走査軸 :2θ-θ
X線源 :Cu-Kα線(1.541862Å)
検出器 :0次元検出器(シンチレーションカウンタ)
管電圧 :45kV
管電流 :40mA
入射光学系 :ミラーの利用
受光光学系 :アナライザ結晶(PW3098/27)の利用
ステップ :0.03°
積算時間 :2秒
スキャン範囲(2θ) :10°~120°
WC層、Ti層、硬質被膜層(第一単位層、第二単位層)、及び被膜の厚さは、以下のようにして求めた。まず透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製、商品名:JEM-2100F)を用いて、基材の表面の法線方向に平行な断面サンプルにおける任意の3点を測定した。その後、測定された3点の厚さの平均値をとることで求めた。結果は、下記表1の「層厚」の欄に示されている。表1中、「WC層」及び「硬質被膜層」における「-」との表記は、該当する層が被膜中に存在しないことを示す。また、実施例22における「AlCrN(11nm)/TiAlSiN(9nm)/TiSiN(13nm)/TiAlSiN(9nm)多層構造」の表記は、硬質被膜層が、厚さ11nmのTiAlSiN層(第一単位層)、厚さ9nmのTiAlSiN層(第二単位層)、厚さ13nmのTiSiN層(第一単位層)、及び厚さ9nmのTiAlSiN層(第二単位層)を上下交互積層した多層構造(合計厚み0.7μm)により形成されていることを示している。実施例24も同様である。
上述のようにして作製した試料(実施例1~24、比較例1~4)の切削工具を用いて、評価試験1(正面フライス加工試験)及び評価試験2(旋削加工試験)を実施した。表面被覆切削工具の基材として、評価試験1には、材質がK30超硬合金(JIS)であり、形状がAXMT170530(JIS)である基材(フライス加工用刃先交換型切削チップ)を用いた。評価試験2には、材質がK20超硬合金(JIS)であり、形状がCNMG120408(JIS)である基材(旋削加工用刃先交換型切削チップ)を用いた。各試験の切削条件を以下に示す。評価試験1は、切削時間が長いほど耐欠損性及び耐反応性に優れる切削工具として評価することができる。評価試験2は、切削時間が長いほど耐摩耗性に優れる切削工具として評価することができる。評価試験の結果は、表2に示されている。
被削材(材質) :Ti-6Al-4V
速度 :50m/分
送り :0.1mm/刃
軸方向への切込み(ap):10mm
径方向への切込み(ae):10mm
切削環境 :WET
評価法 :切削工具が欠損するまでの切削時間
被削材(材質) :インコネル718
速度 :50m/分
送り :0.15mm/rev
切り込み :0.5mm
切削環境 :WET
評価法 :逃げ面摩耗量0.2mm又は欠損までの切削時間
2 逃げ面
3 刃先稜線部
10 基材
11 WC層
12 Ti層
13 硬質被膜層
50 被膜
100 表面被覆切削工具
131 第一単位層
132 第二単位層。
Claims (8)
- 基材と、前記基材上に設けられた被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
前記被膜は、タングステンと炭素とからなるWC層と前記WC層の直上に設けられた金属チタンのみからなるTi層とを含み、
前記Ti層は、最表面層であり、
前記Ti層は、X線回折スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有し、
前記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、
前記最大ピークは、(101)面に由来する、
表面被覆切削工具。 - 前記WC層は、その厚さが0.5μm以上2.5μm以下であり、
前記Ti層は、その厚さが0.5μm以上1.5μm以下である、
請求項1に記載の表面被覆切削工具。 - 前記被膜は、前記基材と前記WC層との間に設けられた少なくとも一層の硬質被膜層を更に含み、
前記硬質被膜層は、前記WC層とは組成が異なる第一単位層を少なくとも含み、
前記第一単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は前記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる、
請求項1又は請求項2に記載の表面被覆切削工具。 - 前記第一単位層は、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は前記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる、請求項3に記載の表面被覆切削工具。
- 前記硬質被膜層は、前記WC層及び前記第一単位層とは組成が異なる第二単位層を更に含み、
前記第二単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は前記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる、請求項3又は請求項4に記載の表面被覆切削工具。 - 前記第二単位層は、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は前記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる、請求項5に記載の表面被覆切削工具。
- 前記第一単位層及び前記第二単位層は、それぞれが交互に1層以上積層された多層構造を形成している、請求項5又は請求項6に記載の表面被覆切削工具。
- 前記基材は、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶窒化硼素焼結体、及びダイヤモンド焼結体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
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