JP7251347B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Description

本開示は、表面被覆切削工具に関する。
従来より、切削工具の長寿命化を目的として、種々の検討がなされている。例えば、特開2013-146778号公報(特許文献1)には、基材の表面に、Ti、Zr及びHfのいずれか一種の金属層からなる厚さ1~5μmの下地層と、該下地層の表面に、TiとAlの複合窒化物層からなる層厚1~20μmの表面層とが被覆形成されている複合部材が開示されている。
特開2013-146778号公報
しかしながら、特許文献1に記載の複合部材を含む表面被覆切削工具を用いて難削材(例えば、チタン、インコネル(登録商標)、SUS等)を加工した場合、複合窒化物層と被削材とが溶着し、結果として耐欠損性に改善の余地が生じる懸念がある。
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐欠損性を有しつつ、難削材を加工した場合においても優れた耐反応性及び耐摩耗性を有する、表面被覆切削工具を提供することにある。
本開示に係る表面被覆切削工具は、基材と、基材上に設けられた被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
上記被膜は、タングステンと炭素とからなるWC層と上記WC層の直上に設けられたチタンを含むTi層とを含み、
上記Ti層は、最表面層であり、
上記Ti層は、X線回折スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有し、
上記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、
上記最大ピークは、(101)面に由来する。
本開示によれば、優れた耐欠損性を有しつつ、難削材を加工した場合においても優れた耐反応性及び耐摩耗性を有する、表面被覆切削工具を提供することが可能になる。
図1は、表面被覆切削工具の一態様を例示する斜視図である。 図2は、本実施形態の一態様における表面被覆切削工具の模式断面図である。 図3は、本実施形態の他の態様における表面被覆切削工具の模式断面図である。 図4は、本実施形態の別の他の態様における表面被覆切削工具の模式断面図である。 図5は、本開示の一態様に係るTi層のX線回折スペクトルの一例を示す図である。
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
[1]本開示に係る表面被覆切削工具は、基材と、基材上に設けられた被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
上記被膜は、タングステンと炭素とからなるWC層と上記WC層の直上に設けられたチタンを含むTi層とを含み、
上記Ti層は、最表面層であり、
上記Ti層は、X線回折スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有し、
上記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、
上記最大ピークは、(101)面に由来する。
上記表面被覆切削工具は、上述のような構成を備えることによって、優れた靱性(すなわち、優れた耐欠損性)、耐反応性、及び耐摩耗性を有すると考えられる。
[2]上記WC層は、その厚さが0.5μm以上2.5μm以下であり、
上記Ti層は、その厚さが0.5μm以上1.5μm以下である。これにより、更に優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性を有する表面被覆切削工具となる。
[3]上記被膜は、上記基材と上記WC層との間に設けられた少なくとも一層の硬質被膜層を更に含み、
上記硬質被膜層は、上記WC層とは組成が異なる第一単位層を少なくとも含み、
上記第一単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる。これにより、更に優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性を有する表面被覆切削工具となる。
[4]上記第一単位層は、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる。これにより、更に優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性を有する表面被覆切削工具となる。
[5]上記硬質被膜層は、上記WC層及び上記第一単位層とは組成が異なる第二単位層を更に含み、
上記第二単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる。これにより、更に優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性を有する表面被覆切削工具となる。
[6]上記第二単位層は、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる。これにより、更に優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性を有する表面被覆切削工具となる。
[7]上記第一単位層及び上記第二単位層は、それぞれが交互に1層以上積層された多層構造を形成している。これにより、優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性に加えて、優れた耐亀裂進展性を有する表面被覆切削工具となる。
[8]上記基材は、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶窒化硼素焼結体及びダイヤモンド焼結体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む。これにより、高温における硬度と強度とに優れる表面被覆切削工具となる。
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す。)について説明する。ただし、本実施形態はこれに限定されるものではない。本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。さらに、本明細書において、例えば「TiN」等のように、構成元素の比が限定されていない化学式によって化合物が表された場合には、その化学式は従来公知のあらゆる組成比(元素比)を含むものとする。このとき化学式は、化学量論組成のみならず、非化学量論組成も含むものとする。例えば「TiN」の化学式には、化学量論組成「Ti」のみならず、例えば「Ti0.8」のような非化学量論組成も含まれる。このことは、「TiN」以外の化合物の記載、例えば「WC」についても同様である。
≪表面被覆切削工具≫
本開示に係る表面被覆切削工具は、
基材と、基材上に設けられた被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
上記被膜は、タングステンと炭素とからなるWC層と上記WC層の直上に設けられたチタンを含むTi層とを含み、
上記Ti層は、最表面層であり、
上記Ti層は、X線回折スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有し、
上記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、
上記最大ピークは、(101)面に由来する。
本実施形態の表面被覆切削工具(以下、単に「切削工具」という場合がある。)は、基材と、上記基材上に設けられた被膜とを備える。上記切削工具は、例えば、ドリル、エンドミル、ドリル用刃先交換型切削チップ、エンドミル用刃先交換型切削チップ、フライス加工用刃先交換型切削チップ、旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ等であり得る。
図1は、表面被覆切削工具の一態様を例示する斜視図である。このような形状の表面被覆切削工具は、例えば、刃先交換型切削チップとして用いられる。上記表面被覆切削工具100は、すくい面1と、逃げ面2と、すくい面1と逃げ面2とが交差する刃先稜線部3とを有する。すなわち、すくい面1と逃げ面2とは、刃先稜線部3を挟んで繋がる面である。刃先稜線部3は、表面被覆切削工具100の切刃先端部を構成する。このような表面被覆切削工具100の形状は、上記表面被覆切削工具の基材の形状と把握することもできる。すなわち、上記基材は、すくい面と、逃げ面と、すくい面及び逃げ面を繋ぐ刃先稜線部とを有する。
<基材>
本実施形態の基材は、この種の基材として従来公知のものであればいずれのものも使用することができる。例えば、上記基材は、超硬合金(例えば、炭化タングステン(WC)基超硬合金、WCの他にCoを含む超硬合金、WCの他にCr、Ti、Ta、Nb等の炭窒化物を添加した超硬合金等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム等)、立方晶窒化硼素焼結体(cBN焼結体)及びダイヤモンド焼結体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、超硬合金、サーメット及びcBN焼結体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
なお、基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素又はη相と呼ばれる異常相を含んでいても本実施形態の効果は示される。なお、本実施形態で用いる基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。例えば、超硬合金の場合はその表面に脱β層が形成されていたり、サーメットの場合には表面硬化層が形成されていてもよく、このように表面が改質されていても本実施形態の効果は示される。
表面被覆切削工具が、刃先交換型切削チップ(フライス加工用刃先交換型切削チップ等)である場合、基材は、チップブレーカーを有するものも、有さないものも含まれる。刃先の稜線部分の形状は、シャープエッジ(すくい面と逃げ面とが交差する稜)、ホーニング(シャープエッジに対してアールを付与したもの)、ネガランド(面取りをしたもの)、ホーニングとネガランドを組み合わせたものの中で、いずれのものも含まれる。
<被膜>
本実施形態に係る「被膜」は、タングステンと炭素とからなるWC層とWC層の直上に設けられたチタンを含むTi層とを含む。本実施形態に係る「被膜」は、上記基材上の少なくとも一部(例えば、切削加工時に被削材と接する部分や切り屑と接する部分)に設けられることで、切削工具における耐欠損性、耐摩耗性等の諸特性を向上させる作用を有するものである。上記被膜は、上記基材上の全面に設けられてもよい。なお、上記基材上の一部に上記被膜が設けられていない場合や、被膜の構成が部分的に異なる場合においても、本実施形態の範囲を逸脱するものではない。なお、被膜は、後述の硬質被膜層(第一単位層、第二単位層)等の他の層を更に含んでいてもよい。
上記被膜は、その厚さが1μm以上14μm以下であることが好ましく、1.2μm以上7μm以下であることがより好ましく、1.4μm以上4.1μm以下であることが更に好ましい。上記厚さが1μm未満である場合、耐摩耗性が低下する傾向がある。上記厚さが14μmを超えると、断続加工において被膜と基材との間に大きな応力が加わった際に被膜の剥離又は破壊が高頻度に発生する傾向にある。ここで、被膜の厚さとは、後述するWC層、Ti層、及び硬質被膜層等の被膜を構成する層それぞれの厚さの総和を意味する。
上記被膜の厚さは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、基材の表面の法線方向に平行な断面サンプルにおける任意の3点を測定し、測定された3点の厚さの平均値をとることで求めることが可能である。WC層、Ti層、及び硬質被膜層(第一単位層、第二単位層)それぞれの厚さを測定する場合も同様である。透過型電子顕微鏡としては、例えば、日本電子株式会社製の球面収差補正装置、JEM-2100F(商品名)が挙げられる。
(WC層)
上記被膜は、WCで示される化合物からなるWC層を含む。本実施形態に係る「WC層」は、タングステン(W)と炭素(C)とからなる層である。ここで、「WC」には、例えば「WC」及び「WC」のような化学量論組成も含まれるし、「WC1-X」のような非化学量論組成も含まれる。上記WC層は、本実施形態に係る表面被覆切削工具が奏する効果を損なわない範囲において、不可避不純物が含まれていてもよい。上記不可避不純物の含有割合は、WC層の全質量に対して0質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。後述する「Ti層」及び「硬質被膜層」についても同様に、本実施形態に係る表面被覆切削工具が奏する効果を損なわない範囲において、不可避不純物が含まれていてもよい。
WCがWC1-xで示される化合物である場合、xの値はWC1-x層において基材の表面の法線方向に平行な断面サンプルを得て、この断面サンプルに現われた結晶粒に対して走査型電子顕微鏡(SEM)又はTEMに付帯のエネルギー分散型X線分析(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)装置を用いて分析することにより、求めることが可能である。具体的には、上記断面サンプルのWC1-x層における任意の3点それぞれを測定して上記xの値を求め、求められた3点の値の平均値を上記断面サンプルのWC1-x層におけるxとする。ここで当該「任意の3点」は、WC1-x層中の任意の30nm×30nmの領域を3か所選択するものとする。上記EDX装置としては、例えば、日本電子株式会社製のシリコンドリフト検出器、JED-2200(商品名)が挙げられる。
表面被覆切削工具がWC層を含むことにより、上記WC層の直上に設けられているTi層と相まって、優れた靱性(すなわち、優れた耐欠損性)、耐反応性、及び耐摩耗性を有する表面被覆切削工具となる。上記WC層は、その厚さが0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましく、0.6μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.7μm以上1.4μm以下であることが更に好ましい。WC層の厚さが0.5μm未満の場合、耐摩耗性が低下する傾向にある。WC層の厚さが2.5μmを超える場合、微細なチッピングが発生しやすくなる傾向にある。
図2は、本実施形態の一態様における表面被覆切削工具の模式断面図である。図2に示すように、上記WC層11は、上記基材10に接していてもよい。言い換えると、上記WC層11は、上記基材10の直上に設けられていてもよい。
(Ti層)
図2に示すように、上記被膜50は、チタンを含むTi層12を含む。Ti層12は、金属チタンからなってもよい。Ti層12は、上記WC層11の直上に設けられている。上記Ti層12は、最表面層(最外層)である。上記Ti層は、例えば図5(本開示の一態様に係るTi層のX線回折スペクトルの一例を示す図)に示されるように、X線回折測定(XRD測定)を行うことにより得られたX線回折(XRD)スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有する。上記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、上記最大ピークは、(101)面に由来する。すなわち、上記Ti層のX線回折スペクトルが金属チタン由来のピークを有する事が示されている。本実施形態において「金属チタン由来のピーク」には、金属チタン由来のピークから多少シフトしているピークも含まれるものとする。上記Ti層のX線回折スペクトルは、例えば、株式会社リガク製の「SmartLab」(商品名)、パナリティカル製の「X’pert」(商品名)で測定することが可能である。ここで「最大ピークの半価幅」とは、上記最大ピークの半分の強度における、ピークの幅である。本実施形態では、上記Ti層における任意の3点それぞれをXRD測定し、最大ピークを示した位置の確認及び最大ピークの半価幅の算出を行う。任意の3点における平均値を、最大ピークを示した位置及び最大ピークの半価幅とする。
従来の知見では、最表面層がTi層である切削工具を用いて難削材の切削を行った場合、難削材と当該Ti層とが溶着し、耐欠損性が著しく劣るものと考えられていた。そのため、切削工具において最表面層をTi層とすることは、従来の技術常識に反するものである。詳細なメカニズムは不明であり、上記Ti層のX線回折スペクトルの結果から直接的に導き出せる訳ではないが、WC層の直上にTi層を設けることで、WC層からTi層内にWC層を構成する元素が拡散して格子歪みが導入されるか、あるいは極めて微細な合金又はセラミックがTi層内に分散すると推定される。これにより、切削工具において最表面層がTi層であっても、優れた加工を行えるようになったと本発明者らは推測している。
Ti層のXRDスペクトルにおいて、最大ピークが(101)面に由来しない場合、結果として、Ti層は耐摩耗性及び耐反応性が低下する傾向を有すると考えられる。そのため、優れた耐欠損性を有しつつ、難削材を加工した場合においても優れた耐反応性及び耐摩耗性を有する、表面被覆切削工具を提供することが困難になると考えられる。
Ti層のXRDスペクトルにおいて、最大ピークが(101)面に由来するものの、2θ=40.18゜未満の位置に確認される場合、Ti層の耐摩耗性が低下する傾向にある。Ti層のXRDスペクトルにおいて、最大ピークが(101)面に由来するものの、最大ピークが2θ=40.22゜を超える位置に確認される場合、Ti層の耐反応性が低下する傾向にある。
上記最大ピークは、2θ=40.185~40.215゜の位置に存在することが好ましく、2θ=40.2~40.21゜の位置に存在することが更に好ましい。上記最大ピークが上記範囲内に確認されることは、Ti層において格子歪みが導入されていることを意味している。そのため、Ti層に優れた耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性が付与されるものと考えられる。
Ti層のXRDスペクトルにおいて、最大ピークが(101)面に由来するものの、最大ピークの半価幅が0.1゜未満である場合、Ti層の耐摩耗性が低下する傾向にある。最大ピークが(101)面に由来するものの、最大ピークの半価幅が0.118°を超える場合、Ti層の耐反応性が低下する傾向にある。
上記最大ピークの半価幅は、0.105~0.116゜であることが好ましく0.11~0.113゜であることが更に好ましい。
上記Ti層は、その厚さが0.5μm以上1.5μm以下であることが好ましく、0.7μm以上1.2μm以下であることが更に好ましい。上記厚さが0.5μm未満である場合、耐反応性が低下する傾向にある。上記厚さが1.5μmを超える場合、耐摩耗性及び耐欠損性が低下する傾向にある。
(硬質被膜層)
上記被膜50は、上記基材10と上記WC層11との間に設けられた少なくとも一層の硬質被膜層13を更に含むことが好ましい(図3参照)。例えば、硬質被膜層は、一層であってもよいし、二層であってもよいし、三層以上設けられてもよい。上記硬質被膜層は、上記WC層とは組成が異なる第一単位層を少なくとも含むことが好ましく、上記WC層及び上記第一単位層とは組成が異なる第二単位層を更に含むことがより好ましい。ここで「上記基材と上記WC層との間に設けられた」とは、上記WC層の下側(基材側)に硬質被膜層が設けられていればよく、上記硬質被膜層と上記WC層とは必ずしも接触していることを要しない。言い換えると、上記硬質被膜層とWC層との間に他の層が設けられていてもよい。上記硬質被膜層は、WC層の直下に設けられることが好ましい。また、硬質被膜層は基材と必ずしも接触していることを要しない。言い換えると、上記硬質被膜層と基材との間に他の層が設けられていてもよい。
(第一単位層)
上記第一単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなることが好ましく、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなることがより好ましい。周期表4族元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等が挙げられる。周期表5族元素としては、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等が挙げられる。周期表6族元素としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等が挙げられる。
上記第一単位層を構成する化合物としては、例えば、TiWN、TiN、ZrC、TiCNO、TiAlSiN、TiSiN、TiAlN、AlCrN、TiCrSiN、TiAlCrSiN、AlCrN、AlCrO、AlCrSiN、TiZrN、TiAlMoN、TiAlNbN、AlCrTaN、AlTiVN、TiB、TiCrHfN、CrSiWN、TiAlCN、TiSiCN、AlZrON、AlCrCN、AlHfN、CrSiBON、TiAlWN、AlCrMoCN、TiAlBN、TiAlCrSiBCNO、ZrN及びZrCN等が挙げられる。
上記硬質被膜層が上記第一単位層のみからなる場合、上記第一単位層(すなわち、上記硬質被膜層)は、その厚さが0.002μm以上10μm以下であることが好ましく、0.005μm以上1.5μm以下であることがより好ましい。
(第二単位層)
上記第二単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなることが好ましく、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素又は、上記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなることがより好ましい。
上記第二単位層を構成する化合物としては、上記第一単位層を構成する化合物と同様の化合物を使用できる。
さらに、上記第一単位層及び上記第二単位層は、それぞれが交互に1層以上積層された多層構造を形成していることが好ましい。すなわち、図4に示すように、硬質被膜層13は、第一単位層131及び第二単位層132からなる多層構造を含むことが好ましい。ここで上記多層構造は、上記第一単位層又は上記第二単位層のいずれの層から積層を開始してもよい。すなわち、上記多層構造における基材側の界面は、上記第一単位層又は上記第二単位層のどちらで構成されていてもよい。また、上記多層構造における上記WC側の界面についても、上記第一単位層又は上記第二単位層のどちらで構成されていてもよい。多層構造を形成することにより、亀裂進展を抑制できる(すなわち、耐亀裂進展性に優れる)という効果がある。
上記硬質被膜層が上記多層構造を含む場合、上記硬質被膜層は、その厚さが0.002μm以上10μm以下であることが好ましく、0.005μm以上1.5μm以下であることがより好ましい。
第一単位層及び第二単位層が上記多層構造を形成する場合、積層周期は1nm以上100nm以下であることが好ましい。積層周期が1nm未満の場合、混合層が形成され、積層構造を形成することが困難となる傾向にある。積層周期が100nmを超える場合、積層界面による亀裂進展抑制効果に改善の余地が生じる傾向にある。
また、当該多層構造の積層数は、上記硬質被膜層全体の厚さが上記範囲内となる限り、上記第一単位層、上記第二単位層をそれぞれ一層ずつ積層させる態様が含まれるとともに、両層をそれぞれ2層以上、具体的には20~2500層ずつ交互積層させたものとすることができる。
≪表面被覆切削工具の製造方法≫
本実施形態に係る表面被覆切削工具の製造方法は、基材準備工程、WC層被覆工程、及びTi層被覆工程を少なくとも含む。本実施形態に係る表面被覆切削工具の製造方法はこれらの工程を含む限り、その他の工程を含んでもよい。以下、各工程について説明する。
<基材準備工程>
基材準備工程では、上記基材を準備する。上記基材としては、上述したようにこの種の基材として従来公知のものであればいずれのものも使用することができる。基材は、製造してもよいし、市販品を購入してもよい。基材を製造する場合、従来公知の方法を用いて製造してもよい。例えば、上記基材が超硬合金からなる場合、所定の配合組成(質量%)からなる原料粉末を市販のアトライターを用いて均一に混合して、続いてこの混合粉末を所定の形状(例えば、SEET13T3AGSN、CNMG120408等)に加圧成形した後に、所定の焼結炉において1300~1500℃以下で、1~2時間焼結することにより、超硬合金からなる上記基材を得ることができる。市販品を購入する場合、市販品としては、例えば、住友電工ハードメタル株式会社製のEH520(商品名)が挙げられる。
<WC層被覆工程>
WC層被覆工程では、上記基材の表面の少なくとも一部をWC層で被覆する。ここで、「基材の表面の少なくとも一部」には、切削加工時に被削材と接する部分及び切り屑と接する部分が含まれる。
上記基材の少なくとも一部をWC層で被覆する方法としては、特に制限されないが、例えば、物理蒸着法(PVD法)によってWC層を形成することが挙げられる。
上記物理蒸着法としては、従来公知の物理蒸着法を特に限定することなく用いることができる。このような物理蒸着法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、電子イオンビーム蒸着法等を挙げることができる。特に原料元素のイオン率が高いカソードアークイオンプレーティング法又はスパッタリング法を用いると、被膜を形成する前に基材表面に対して金属又はガスイオンボンバードメント処理が可能となるため、被膜と基材との密着性が格段に向上するので好ましい。
アークイオンプレーティング法によりWC層を形成する場合、例えば以下のような条件を挙げることができる。すなわち、まずWCターゲットを装置内のアーク式蒸発源にセットし、基板(基材)温度を350~500℃及び該装置内のガス圧を0.5~5.0Paに設定する。上記ガスとしては、アルゴンガスを導入する。そして、基板(負)バイアス電圧を10~700V且つDC又はパルスDC(周波数30~300kHz)に維持したまま、カソード電極に80~150Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりWC層を形成することができる。この時、WC層の形成初期(膜厚が0.01μm以下の範囲)にバイアス電圧を650~700V印加し、その後は低電圧(10V以上200V以下)と高電圧(200V以上700V以下)とを10~200nmの範囲で当該膜厚が成長する間隔で交互に印加することが好ましい。アークイオンプレーティング法に用いる装置としては、例えば、株式会社神戸製鋼所製のAIP(商品名)が挙げられる。
<Ti層被覆工程>
本実施形態に係る表面被覆切削工具の製造方法は、上記WC層被覆工程の後にTi層被覆工程を更に含む。Ti層の形成方法は、特に制限なく、従来の方法を用いることが可能である。具体的には、例えば、上述したPVD法によってTi層を形成することが挙げられる。同一の装置を用いて、上記WC層被覆工程とTi層被覆工程とを連続して行ってもよい。
アークイオンプレーティング法によりWC層直上にTi層を形成する場合、基材へのWC層の形成が終了後、30秒以内にWC層の直上にTi層の形成を開始することが好ましい。すなわち、WC層成膜終了時から、Ti層成膜開始までの時間は、30秒以内であることが好ましい。基材へのWC層の形成が終了後、30秒が経過した後にWC層の直上にTi層を形成した場合、Ti層中のチタンが酸化物等を形成する傾向にある。係る場合、優れた耐欠損性を有しつつ、優れた耐反応性及び耐摩耗性を有する、表面被覆切削工具を提供することが達成できないものと考えられる。
アークイオンプレーティング法によりTi層を形成する場合、例えば以下のような条件を挙げることができる。すなわち、まずTiターゲットを装置内のアーク式蒸発源にセットし、基板(基材)温度を350~500℃及び該装置内のガス圧を0.1~2.0Paに設定する。上記ガスとしては、アルゴンガスを導入する。そして、基板(負)バイアス電圧を0~100V且つDC又はパルスDC(周波数10~300kHz)に維持したまま、カソード電極に80~180Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりTi層を形成することができる。アークイオンプレーティング法に用い得る装置は、WC層被覆工程と同様である。
<その他の工程>
本実施形態に係る製造方法では、上述した工程の他にも、上記基材と上記WC層との間に硬質被膜層を形成する硬質被膜層被覆工程を適宜行ってもよい。上述の硬質被膜層は、従来の方法によって形成されてもよい。具体的には、例えば、上述したPVD法によって硬質被膜層を形成することが挙げられる。
本実施の形態を実施例によりさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本実施の形態が限定されるものではない。
<実施例1>
(基材準備工程)
まず、基材準備工程として、JIS規格K30超硬合金(形状:JIS規格AXMT170530)及びJIS規格K20超硬合金(形状:JIS規格CNMG120408)を基材としてそれぞれ準備した。次に、上記各基材をアークイオンプレーティング装置(株式会社神戸製鋼所製、商品名:AIP)の所定の位置にセットした。
(WC層被覆工程)
WC層被覆工程として、アークイオンプレーティング法により上記基材の上にWC層を形成した。具体的には以下の方法で行った。まずWCターゲット(組成がWCであってC量が5.9質量%である焼結ターゲット又は溶成ターゲット)をアークイオンプレーティング装置のアーク式蒸発源にセットした。次に、基材温度を450℃及び該装置内のガス圧を1.3Paに設定した。上記ガスとしては、アルゴンガスを導入した。そして、基材(負)バイアス電圧を30V且つDC又はパルスDC(周波数30kHz)に維持したまま、カソード電極に120Aのアーク電流を供給した。アーク電流の供給でアーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりWC層を形成した。ここで、WC層の形成初期(膜厚が0.2μm以下の範囲)では、基材温度を450℃とし、且つ低周波数30kHzのバイアスと高周波数300kHzのバイアスとを0.5分間隔で交互に印加した。
(Ti層被覆工程)
WC層被覆工程を行った後に以下の手順にて、WC層の直上にTi層を形成した。なお、Tiからなるターゲット(Tiターゲット)は、前述のWC層被覆工程を行う前に上記アークイオンプレーティング装置のアーク式蒸発源にセットした。次に、基材温度を420℃及び該装置内のガス圧を1.0Paに設定した。上記ガスとしては、アルゴンガスを導入した。そして、基材(負)バイアス電圧を30VDCに維持したまま、カソード電極に150Aのアーク電流を供給した。アーク電流の供給でアーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりTi層をWC層の直上に形成した。WC層成膜終了時から、Ti層成膜開始までの時間は、17秒とされた。以上により、実施例1の表面被覆切削工具が製造された。以上のようにして、タングステンと炭素とからなる厚さ1.1μmのWC層と、上記WC層の直上に設けられたチタンを含む厚さ1.2μmのTi層とを含む被膜を有する、基材が異なる2種の表面被覆切削工具が準備された。
<実施例2~実施例20>
実施例1と同様に、基材準備工程及びWC層被覆工程が行われた。その後、Ti層被覆工程の基材温度を350~500℃の範囲内で変動させ、該装置内のガス圧を0.1~2.0Paの範囲内で変動させた。ガスとしては、アルゴンガスを導入した。そして、基材(負)バイアス電圧を0~100V且つDC又はパルスDC(周波数10~300kHz)に維持したまま、カソード電極にアーク電流を80~180Aの範囲で変動させて供給した。アーク電流の供給でアーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりTi層をWC層の直上に形成した。DCの際は、バイアス電圧を高くすることによりTi層の膜硬度は高くなり、パルスDCの際は、周波数を高くし、かつバイアス電圧を低くすることにより、Ti層の膜硬度は高くなる。WC層成膜終了時から、Ti層成膜開始時までの時間は、30秒以内とされた。以上により、実施例2~実施例20に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いてそれぞれ2種準備された。なお、基材温度を350~500℃の範囲内で高くすれば(101)面に由来するピークの半価幅が大きくなるという傾向を有し、低くすれば当該半価幅が小さくなるという傾向を有する。ガス圧を0.1~2.0Paの範囲内で高くすれば(101)面に由来するピークにおける2θが大きくなるという傾向を有し、低くすれば当該2θが小さくなるという傾向を有する。
<実施例21~実施例24>
WC層被覆工程を行う前に以下の手順にて、基材の直上に硬質被膜層を形成した。まず表1に記載の硬質被膜層の組成の欄における金属組成を含むターゲット(焼結ターゲット又は溶成ターゲット)をアークイオンプレーティング装置のアーク式蒸発源にセットした。次に、基材温度を350~500℃の範囲で変動させ、該装置内のガス圧を0.8~5.0Paの範囲で変動させた。反応ガスとしては、アルゴンガスを導入した。その後、カソード電極にアーク電流を80~150Aの範囲で変動させて供給した。アーク電流の供給でアーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによって、表1に記載の厚さまで硬質被膜層を形成した。なお、実施例22及び実施例24に係る交互積層構造の硬質被膜層を形成する場合は、表1において左側に記載されているものから順に第一単位層、第二単位層として目的の厚さになるまで繰り返して積層した。その後、表1に記載の厚みを有するWC層及びTi層の形成が、実施例2~実施例20と同様の手順で行われることにより、実施例21~実施例24に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いてそれぞれ2種準備された。
<比較例1>
表1に示すように、基材の直上に従来公知の方法を用いて硬質被膜層としてTiN層が設けられ、TiN層の直上にTi層が設けられた。また、当該Ti層はXRDスペクトルにおける最大強度を示す面が(002)面であった。これにより、表1に示す比較例1に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いて2種準備された。
<比較例2>
基材温度を250℃とすること以外は、実施例7と同様の方法により、比較例2に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いて2種準備された。比較例2において、WC層の直上に設けられたTi層は、XRDスペクトルにおける最大強度を示す面が(002)面であった(表1)。
<比較例3>
表1に示すように、Ti層の直上に従来公知の方法を用いてTiN層を形成したこと以外は、実施例7と同様の方法により、比較例3に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いて2種準備された。
<比較例4>
表1に示すように、装置内のガス圧を2.5Paとすること以外は、実施例7と同様の方法により、比較例4に示す表面被覆切削工具が、異なる基材を用いて2種準備された。比較例4において、WC層の直上に設けられたTi層は、XRDスペクトルにおける最大ピーク位置(2θ)が40.230°であり、半価幅が0.120°であった。
<評価>
(XRD測定)
XRD測定用装置(パナリティカル製、商品名:X’pert)を用いて、以下の条件で上述のTi層における任意の3点を測定した。最大ピークを示した測定面は、表1の「最大ピークを示した測定面」に示され、最大ピークを示した位置は、表1の「最大ピーク位置」に示され、最大ピークの半価幅は、表1の「半価幅」の欄に示さている。なお、上記Ti層が最表面でない場合(比較例3)は、機械研磨等で上記Ti層を露出させてからXRD測定を行った。
XRD法の測定条件
走査軸 :2θ-θ
X線源 :Cu-Kα線(1.541862Å)
検出器 :0次元検出器(シンチレーションカウンタ)
管電圧 :45kV
管電流 :40mA
入射光学系 :ミラーの利用
受光光学系 :アナライザ結晶(PW3098/27)の利用
ステップ :0.03°
積算時間 :2秒
スキャン範囲(2θ) :10°~120°
(層の厚みの測定)
WC層、Ti層、硬質被膜層(第一単位層、第二単位層)、及び被膜の厚さは、以下のようにして求めた。まず透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製、商品名:JEM-2100F)を用いて、基材の表面の法線方向に平行な断面サンプルにおける任意の3点を測定した。その後、測定された3点の厚さの平均値をとることで求めた。結果は、下記表1の「層厚」の欄に示されている。表1中、「WC層」及び「硬質被膜層」における「-」との表記は、該当する層が被膜中に存在しないことを示す。また、実施例22における「AlCrN(11nm)/TiAlSiN(9nm)/TiSiN(13nm)/TiAlSiN(9nm)多層構造」の表記は、硬質被膜層が、厚さ11nmのTiAlSiN層(第一単位層)、厚さ9nmのTiAlSiN層(第二単位層)、厚さ13nmのTiSiN層(第一単位層)、及び厚さ9nmのTiAlSiN層(第二単位層)を上下交互積層した多層構造(合計厚み0.7μm)により形成されていることを示している。実施例24も同様である。
Figure 0007251347000001
<切削試験>
上述のようにして作製した試料(実施例1~24、比較例1~4)の切削工具を用いて、評価試験1(正面フライス加工試験)及び評価試験2(旋削加工試験)を実施した。表面被覆切削工具の基材として、評価試験1には、材質がK30超硬合金(JIS)であり、形状がAXMT170530(JIS)である基材(フライス加工用刃先交換型切削チップ)を用いた。評価試験2には、材質がK20超硬合金(JIS)であり、形状がCNMG120408(JIS)である基材(旋削加工用刃先交換型切削チップ)を用いた。各試験の切削条件を以下に示す。評価試験1は、切削時間が長いほど耐欠損性及び耐反応性に優れる切削工具として評価することができる。評価試験2は、切削時間が長いほど耐摩耗性に優れる切削工具として評価することができる。評価試験の結果は、表2に示されている。
(評価試験1(正面フライス加工試験)の切削条件)
被削材(材質) :Ti-6Al-4V
速度 :50m/分
送り :0.1mm/刃
軸方向への切込み(ap):10mm
径方向への切込み(ae):10mm
切削環境 :WET
評価法 :切削工具が欠損するまでの切削時間
(評価試験2(旋削加工試験)の切削条件)
被削材(材質) :インコネル718
速度 :50m/分
送り :0.15mm/rev
切り込み :0.5mm
切削環境 :WET
評価法 :逃げ面摩耗量0.2mm又は欠損までの切削時間
Figure 0007251347000002
上記切削試験の結果から、実施例1~24の切削工具は、比較例1~4の切削工具に比べて、耐欠損性、耐反応性、及び耐摩耗性に優れていることが分かった。このことから、優れた耐欠損性を有しつつ、難削材を加工した場合においても優れた耐反応性及び耐摩耗性を有する、最表面層にチタンを含む層を含む表面被覆切削工具が提供されることが示された。
以上のように本発明の実施形態及び実施例について説明を行なったが、上述の各実施形態及び各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 すくい面
2 逃げ面
3 刃先稜線部
10 基材
11 WC層
12 Ti層
13 硬質被膜層
50 被膜
100 表面被覆切削工具
131 第一単位層
132 第二単位層。

Claims (8)

  1. 基材と、前記基材上に設けられた被膜とを備える表面被覆切削工具であって、
    前記被膜は、タングステンと炭素とからなるWC層と前記WC層の直上に設けられた金属チタンのみからなるTi層とを含み、
    前記Ti層は、最表面層であり、
    前記Ti層は、X線回折スペクトルにおいて、2θ=40.18~40.22゜の位置に最大ピークを有し、
    前記最大ピークの半価幅は、0.1~0.118°であり、
    前記最大ピークは、(101)面に由来する、
    表面被覆切削工具。
  2. 前記WC層は、その厚さが0.5μm以上2.5μm以下であり、
    前記Ti層は、その厚さが0.5μm以上1.5μm以下である、
    請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記被膜は、前記基材と前記WC層との間に設けられた少なくとも一層の硬質被膜層を更に含み、
    前記硬質被膜層は、前記WC層とは組成が異なる第一単位層を少なくとも含み、
    前記第一単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は前記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる、
    請求項1又は請求項2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記第一単位層は、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は前記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる、請求項3に記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記硬質被膜層は、前記WC層及び前記第一単位層とは組成が異なる第二単位層を更に含み、
    前記第二単位層は、周期表4族元素、5族元素、6族元素、Al及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は前記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる、請求項3又は請求項4に記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記第二単位層は、Ti、Cr、Al、及びSiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、又は前記元素の少なくとも1種と、炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素とからなる化合物からなる、請求項5に記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記第一単位層及び前記第二単位層は、それぞれが交互に1層以上積層された多層構造を形成している、請求項5又は請求項6に記載の表面被覆切削工具。
  8. 前記基材は、超硬合金、サーメット、高速度鋼、セラミックス、立方晶窒化硼素焼結体、及びダイヤモンド焼結体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
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