JP2010188460A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】クレータ摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる被膜を備えた表面被覆切削工具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の表面被覆切削工具はA層とB層とを含む被膜を備え、A層は、化学式Ti1-a(M1)aNb(M1はCr、Hf、Ta、NbまたはSiの少なくとも1種の元素、0<a≦0.3、0.9<b≦1.1)で示される組成を有するa1層と、化学式Ti1-c(M2)cNd(M2はCr、Hf、Ta、NbまたはSiの少なくとも1種の元素、M1とM2とは少なくとも1種が相異なり、0<c≦0.3、0.9<d≦1.1)、または化学式Ti1-eAleNf(0.4<e≦0.8、0.9<f≦1.1)で示される組成を有するa2層とを含み、B層は、化学式Ti1-α(M3)αCβNγ(M3はCr、Hf、Ta、NbまたはSiの少なくとも1種の元素、0≦α≦0.3、0.9<β+γ≦1.1、0.1<β≦1.1)で示される組成を有するb1層を含み、A層におけるa1層とa2層とは交互に積層され、B層がA層よりも基材の表面層側に形成されていることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、基材と該基材上に形成された被膜とを備える表面被覆切削工具に関する。
種々の被削材を切削加工するのに用いられる表面被覆切削工具は、WC基超硬合金、サーメット、高速度鋼等の硬質の基材に対してその表面の耐摩耗性を改善したり表面保護機能を改善したりすることを目的として、TiN、TiCN、TiAlN等の硬質被膜でその表面を被覆することが行なわれてきた。特にTiAlNからなる被膜は優れた耐摩耗性を示すことから、チタンの窒化物、炭化物、炭窒化物等からなる被膜に代わってこのような表面被覆切削工具の被膜として広く用いられている。
しかしながら、被削材が多様化していることおよび加工効率を向上させるために高速の切削加工が求められることなどの理由から、以前に比し切削工具の寿命は非常に短くなっている。さらに、最近の切削工具の動向として、地球環境保全の観点から切削油剤を用いない乾式の加工(ドライ加工)が求められる傾向にある。
このため切削工具に要求される特性はますます高度なものとなっており、以って表面被覆切削工具の被膜に対しても種々の高度な特性が要求されている。
このような要求に応える試みとして、たとえばTiAlの炭化物、炭窒化物、複合窒化物において、Alの一部をCr、Ce、Mo、Nbに置き換えたものが提案されている(特許文献1)。
一方、組成式(TiX1-X)CY1-Y(ただし、原子比で、0.4≦X≦1、0≦Y≦1.0を示す)を満足する被膜がTiCN−Co−Ni合金であるサーメット上への形成された切削工具が提案されている(特許文献2)。
特開平9−300105号公報 特開2004−90289号公報
しかしながら、特許文献1に提案された被膜は、被膜の全体にわたりAlを必須の構成成分として含むものであるため、Alに起因するクレータ摩耗(すくい面の摩耗現象)を防止することは困難であった。また、特許文献2に開示された被膜は、添加元素の濃度範囲が不明であり、また、十分な耐酸化性を有する被膜を達成できておらず、結果として耐摩耗性の更なる改善が求められた。
本発明は、上記のような現状に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、クレータ摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる被膜を備えた表面被覆切削工具を提供することにある。
すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、基材と該基材上に形成された被膜とを備えた表面被覆切削工具であって、被膜は、少なくとも2層以上の層からなるA層と少なくとも1層以上の層からなるB層とを含み、上記A層は、化学式Ti1-a(M1)ab(M1はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、aはTiとM1との合計に対するM1の原子比、bはTiとM1の合計に対するNの原子比を表わし、0<a≦0.3、0.9<b≦1.1)で示される組成を有するa1層と、化学式Ti1-c(M2)cd(M2はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、M1とM2とは少なくとも1種が相異なる元素であり、cはTiとM2との合計に対するM2の原子比、dはTiとM2の合計に対するNの原子比を表わし、0<c≦0.3、0.9<d≦1.1)、または化学式Ti1-eAlef(eはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、fはTiとAlの合計に対するNの原子比を表わし、0.4<e≦0.8、0.9<f≦1.1)で示される組成を有するa2層とを含み、上記B層は、化学式Ti1-α(M3)αβγ(M3はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、αはTiとM3との合計に対するM3の原子比、βとγとは、それぞれTiとM3の合計に対するC、Nの原子比を表わし、0≦α≦0.3、0.9<β+γ≦1.1、0.1<β≦1.1)で示される組成を有するb1層を含み、A層におけるa1層とa2層とは交互に積層され、B層がA層よりも被膜の最表面側に形成されていることを特徴とする。
上記B層は、化学式Ti1-δ(M4)δεζ(M4はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、M3とM4とは少なくとも1種が相異なる元素であり、δはTiとM4との合計に対するM4の原子比、εとζとは、それぞれTiとM4の合計に対するC、Nの原子比を表わし、0≦δ≦0.3、0.9<ε+ζ≦1.1、0.1<ε≦1.1)、または化学式Ti1-ηAlηλμ(ηはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、λとμとは、それぞれTiとAlの合計に対するC、Nの原子比を表わし、0.4<η≦0.8、0.9<λ+μ≦1.1、0.1<λ≦1.1)で示される組成を有するb2層をさらに含み、B層におけるb1層とb2層とは交互に合計2層以上積層されていることが好ましい。
上記A層におけるa2層は、化学式Ti1-eAlef(eはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、fはTiとAlの合計に対するNの原子比を表わし、0.4<e≦0.8、0.9<f≦1.1)で示される組成を有する層であり、A層における積層周期が1nm〜30nmであることが好ましい。
上記B層におけるb2層は、化学式Ti1-ηAlηλμ(ηはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、λとμとは、それぞれTiとAlの合計に対するC、Nの原子比を表わし、0.4<η≦0.8、0.9<λ+μ≦1.1、0.1<λ≦1.1)で示される組成を有する層であり、B層における積層周期が1nm〜30nmであることが好ましい。
上記A層に存在する全金属元素に対するAl含有比率が、3原子%以上30原子%以下であることが好ましい。
上記B層に存在する全金属元素に対するAl含有比率が、1原子%以上20原子%以下であることが好ましい。
上記A層に存在する全金属元素に対するAl含有比率が、上記B層に存在する全金属元素に対するAl含有比率よりも高いことが好ましい。
上記原子比γ、ε、λは、それぞれ0.3以上0.55以下であることが好ましい。
上記基材は、サーメットにより構成されることが好ましい。
本発明によれば、被膜がA層とB層とを含むので、クレータ摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる被膜を備えた表面被覆切削工具を提供することができる。
成膜装置のターゲット設置部分の概略図である。 本発明における被膜構造の1の態様を示す概略図である。 本発明における被膜構造の他の態様を示す概略図である。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<表面被覆切削工具>
本発明の表面被覆切削工具は、基材と、該基材上に形成された被膜とを備えるものである。このような構成を有する本発明の表面被覆切削工具は、たとえばドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、またはクランクシャフトのピンミーリング加工用チップ等として極めて有用に用いることができる。そして、本発明の表面被覆切削工具は、Ti合金加工用またはインコネル合金等の耐熱合金加工用のドリル、エンドミル、フライス加工用または旋削加工用刃先交換型切削チップ、メタルソー、歯切工具、リーマ、タップ、等として特に有用に用いることができる。これらの中でも、本発明の表面被覆切削工具は、特に旋削加工用途において高い性能を発揮することができる。
<基材>
本発明の表面被覆切削工具の基材としては、このような切削工具の基材として知られる従来公知のものを特に限定なく使用することができる。たとえば、超硬合金(たとえばWC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはさらにTi、Ta、Nb等の炭窒化物等を添加したものも含む)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの)、高速度鋼、セラミックス(炭化チタン、炭化硅素、窒化硅素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、およびこれらの混合体など)、立方晶型窒化硼素焼結体、ダイヤモンド焼結体等をこのような基材の例として挙げることができる。このような基材として超硬合金を使用する場合、そのような超硬合金は、組織中に遊離炭素やη相と呼ばれる異常相を含んでいても本発明の効果は示される。
これらの中でも、特にサーメットにおいて、本発明における被膜を備える場合に、高い耐摩耗性を発揮することができる。すなわち、本発明の表面被覆切削工具は、サーメット基材上に被膜が形成されたものであることが望ましい。サーメットは、それ自体は切削時に欠けが発生しやすいことが欠点として挙げられる。本発明においては、特定の積層構造を有する被膜を形成することで、被膜靭性の向上により工具自身の靭性を向上させることができ、その効果は、靭性の低いサーメットにて顕著に現れる。また、サーメットを構成する硬質粒子であるTiCNと従来公知の被膜材質とは、結晶構造や格子定数の近さから、基材を構成する材料の粒子径を引き継いで被膜が成長する割合が特に高く、そのため後述するように成膜中に被膜の破壊による剥離を発生しやすい。本発明は被膜を特定の積層構造を有するものとすることにより、基材を構成する材料の粒子径の影響をなくして被膜を構成する組織を微細化できることから、サーメットにて特に効果が発揮される。
なお、これらの基材は、その表面が改質されたものであっても差し支えない。たとえば、超硬合金の場合はその表面に脱β層が形成されていたり、サーメットの場合には表面硬化層が形成されていてもよく、このように表面が改質されていても本発明の効果は示される。
<被膜>
本発明における被膜は、上記A層および上記B層を含む限り、さらに他の層を含んでいても差し支えない。なお、本発明における被膜は、基材上の全面を被覆するもののみに限られるものではなく、部分的に被膜が形成された態様をも含む。
本発明における被膜の合計厚み(2以上の層が形成される場合はその合計層厚)は、0.3μm以上20μm以下とすることが好ましく、より好ましくはその上限が10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、その下限が0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。その厚みが0.3μm未満の場合、耐摩耗性等の諸特性の向上作用が十分に示されない場合があり、20μmを超えると残留応力が大きくなり基材との密着性が低下する場合がある。なお、各層厚や被膜の合計厚みの測定方法としては、切削工具を切断し、その切削工具刃先部断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより求めることができる。以下、該被膜についてさらに詳細に説明する。
<A層>
A層は、化学式Ti1-a(M1)ab(M1はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、aはTiとM1との合計に対するM1の原子比、bはTiとM1の合計に対するNの原子比を表わし、0<a≦0.3、0.9<b≦1.1)で示される組成を有するa1層と、化学式Ti1-c(M2)cd(M2はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、M1とM2とは少なくとも1種が相異なる元素であり、cはTiとM2との合計に対するM2の原子比、dはTiとM2の合計に対するNの原子比を表わし、0<c≦0.3、0.9<d≦1.1)、または化学式Ti1-eAlef(eはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、fはTiとAlの合計に対するNの原子比を表わし、0.4<e≦0.8、0.9<f≦1.1)で示される組成を有するa2層とを含む層である。A層は、上記a1層と上記a2層とを、合計で2層以上積層してなる。
上記A層は、後述のB層に比して基材側に設ける層である。基材とA層とは直接的に接触することが望ましいが、A層と基材との間に各種中間層を形成してもよい。A層をB層よりも基材側に設けることにより、切削時の耐摩耗性を向上することができる。
上記A層はチタン含有金属の窒化物により構成されるので、チタン含有金属の炭窒化物または炭化物により構成される後述のB層に比して耐酸化性が高い。一般に、被膜を設けた切削工具においては、被膜の破壊は基材と被膜との界面で起こることが多いが、この界面または界面近傍に比較的耐酸化性が高い膜を設けることにより、基材からの剥離が抑制されて、被膜全体の耐摩耗性が高くなると推察される。または、チタン含有金属の炭窒化物または炭化物に比して、チタン含有金属の窒化物の方が基材との密着性が良好であるとも考えられる。
a1層の化学式Ti1-a(M1)abにおけるM1およびa2層の化学式Ti1-c(M2)cdにおけるM2で示される元素は、いずれも切削における逃げ面摩耗を抑制するのに効果を発揮する。従来、これらの元素をチタンに添加して耐摩耗性の向上を図る試みは種々行われているが、本発明においては後述のB層をあわせて被膜に含み、これらの元素の含有比率(原子比)を上記0<a≦0.3、0<c≦0.3の範囲とすることによって、特段に逃げ面摩耗を抑制する効果が発揮されることを見出した。
上記M1とM2とは少なくとも1種が相異なる元素である。すなわち、M1とM2とがいずれもCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される1種の元素である場合は、これらの元素が相異なるものであり、M1がCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される1種の元素で、M2がCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種の元素の場合は、M2の元素のいずれか一方または両方が、M1を構成する元素と異なるものとなる。同様に、M1を構成する元素とM2を構成する元素のそれぞれが、Cr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種の元素の場合も、いずれか一方または両方の元素が異なるものである。
特に、M1またはM2として、それぞれCr、Ta、HfまたはNbのいずれか単独とする場合、aおよびcの上限としては、0.15以下が望ましく、更に0.1以下がより望ましく、aおよびcの下限としては0.01以上が望ましく、0.03以上が更に望ましい。一方、M1またはM2として、Si単独とする場合は、aおよびcの上限としては0.22以下が望ましく、更に0.1以下が望ましく、aおよびcの下限としては0.01以上が望ましく、0.03以上が更に望ましい。
上述のように、M1またはM2としては、Cr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種の元素を組み合わせた組成としてもよい。この場合、2種以上の元素の合計原子比となるaおよびcが0<a≦0.3、0<c≦0.3である。aとcとは、0.25以下であることが望ましく、0.03以上であることが望ましい。なお、2種以上の元素の合計原子比が上記範囲を満たすものであれば、各元素の原子比は特に限定されない。
M1またはM2として、それぞれCr、Ta、HfまたはNbのいずれか単独とする場合、M1とM2との元素の組合せは、相異なるものであれば特に限定されないが、M1がCrの場合はM2をHfとすることがよく、M1がHfの場合はM2をAl,Nbとすることがよく、M1がTaの場合はM2をHfとすることがよく、M1がNbの場合はM2をHfとすることがよく、M1がSiの場合はM2をCrとすることがよい。このような組合せとすることによって、クレータ摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる。
M1またはM2としては、Cr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種の元素を組み合わせた組成とする場合、例えば、M1がCrとSiの場合はM2をHfとSiとすることがよく、M1がTaとHfの場合はM2をNbとSiとすることが好ましい。このような組み合せとすることによって、クレータ摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる。
本発明においてM1またはM2の元素をTiNに添加した組成とすることにより逃げ面摩耗を低減することができる理由として、TiNにHf、NbまたはSiを添加した組成とすることで、耐酸化性がTiAlNに匹敵するレベルまで改善されることが挙げられる。特に、M1およびM2の少なくとも1つがHfの場合、Si、Nb、Taよりもクレータ摩耗の抑制にさらに効果を発揮できるので、望ましい。また、TiNにCrやTaを添加した組成とする場合は、被膜硬度を高めることができるので、逃げ面摩耗を低減することができる。
上記a2層が化学式Ti1-eAlef(eはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、fはTiとAlの合計に対するNの原子比を表わし、0.4<e≦0.8、0.9<f≦1.1)により構成される場合は、高い耐酸化性と高い膜強度を被膜に付与することができる。一方、a2層として化学式Ti1-eAlefで示される層を用いる場合、旋削において耐クレータ摩耗性が低いことが欠点となることがある。上記a1層と後述のB層を含むことにより、このような耐クレータ摩耗性の低下は抑制することができるが、より効果的にAlによる耐クレータ摩耗性の低下を防ぐためには、A層中のAl含有比率を少なくすることが望ましい。したがって、A層中に存在する全金属元素におけるAl含有比率が、3原子%以上30原子%以下の範囲であることが好ましい。より望ましくは、A層中に存在する全金属元素におけるAl含有比率が5原子%以上25原子%以下である。
ここで、上記A層中に存在する全金属元素におけるAl含有比率とは、A層中に含まれる金属(Ti、Al、M1および/またはM2)全部を考慮した場合のAl元素比率のことをいう。例えば、A層中に含まれる全金属元素がTi、Al、Cr、Hfであり、それぞれの含有比率が順にm1、m2、m3、m4であったとするとAl含有比率は(m2/(m1+m2+m3+m4)×100)原子%となる。
本発明において元素の含有比率、および化学式における組成量は、走査型二次電子顕微鏡(SEM)に付帯のエネルギー分散型ケイ光X線分析装置(EDX)、透過型電子顕微鏡(TEM)に付帯のEDX、波長分散型X線マイクロアナライザー(WDX型EPMA)、X線光電子分光(XPS)などよく知られた方法にて求めることができる。ただし、膜断面より膜組成分析が広い範囲可能との理由で金属元素の定量にはSEM付帯のEDXや、TEM付帯のEDXを用いることが望ましい。
A層中のAl含有比率を低減する手法としては、積層構造内のa2層Ti1-eAlefの1層あたりおよびその合計厚さを減少させることが挙げられる。例えば、A層が、a1層としてTi0.9Hf0.1N、a2層としてTi0.3Al0.7Nを含み、これらa1層とa2層との積層の場合、1層あたりの層厚比をTi0.9Hf0.1N:Ti0.3Al0.7N=1:1とした場合には、A層中のAl含有比率は、0.7/(0.9+0.1+0.3+0.7)×100%=35原子%となる。一方、1層あたりの層比をTi0.9Hf0.1N:Ti0.3Al0.7N=2:1とした場合には、A層中のAl含有比率は、0.7/(2×(0.9+0.1)+0.3+0.7)×100%=23原子%となり、上記のAl含有比率の好ましい範囲を満たすようになる。なお、上記例においては、Al含有比率に影響を及ぼす金属についてのみ原子比を示した。各例示におけるNの原子比は、本発明における範囲を満たすものであればよい。
上記A層は、後述のチタン含有金属の炭窒化物または炭化物を含むB層との組合せにおいて、上記化学式Ti1-a(M1)abで示される組成を有する層(a1層)と、化学式Ti1-c(M2)cdまたは化学式Ti1-eAlefで示される組成を有する層(a2層)とを交互に積層した構造とすることで、すなわち異なる組成を有する窒化物からなる層の2種以上の多層構造とすることにより、A層として窒化物からなる層の多層構造を被膜に含まない場合に比較して、成膜時の膜剥離を抑制することができる。チタン含有金属の窒化物を含むA層とチタン含有金属の炭窒化物または炭化物を含むB層とは、物理蒸着または化学蒸着等により形成することができるが、上記A層は柱状構造となる。そして、たとえば後述するように、好ましい形態として上記A層に上記B層が隣接して形成される場合は、上記B層の成長当初は窒化物を含むA層の柱状構造を引き継いだ形で成長するため、柱状組織は500nm〜1μmと大きな組織である。その後、B層自身の成長形態に則って、柱状晶が小さくなりながら成長していく。このとき、炭窒化物または炭化物の組織の変化に伴い、膜中で破壊がおこり、成膜中に膜が剥離しやすい。一方、窒化物層が多層構造となっている場合、窒化物層の柱状組織は、10nm〜400nmと小さな組織であるため、炭窒化物または炭化物の柱状晶も初めからこの組織を受け継ぎ、炭窒化物または炭化物自身の成長形態に則っても柱状晶構造は大きく変化せず、成膜中の膜剥離は起こしにくい。
A層におけるa1層とa2層との積層周期は、1nm以上30nm以下が望ましいが、下限は2nm以上がより望ましく、さらに望ましくは4nm以上である。上限は20nm以下がより望ましく、さらに望ましくは15nm以下である。被膜において、膜厚方向に対して上記積層周期が一定である必要はなく、本発明の好ましい範囲を満足する積層周期を切削に供する刃先の一部分に備えていればよい。このときA層中の積層周期が1nm〜30nmであることが望ましい。積層周期とは化学式Ti1-a(M1)abで示される組成を有するa1層と化学式Ti1-c(M2)cdまたはTi1-eAlefで示される組成を有するa2層との積層単位を足し合わせた厚み(以下、単位積層構造の厚みということがある)であり、化学式Ti1-a(M1)abで示される組成を有するa1層の1層分の厚みが10nm、化学式Ti1-c(M2)cdまたはTi1-eAlefで示される組成を有するa2層の1層分の厚みが5nmの場合、積層周期は15nmとなり、本発明においては、この積層周期において各層を複数回繰り返し形成することで所定の膜厚まで到達させてA層とする。
上記A層の単位積層構造において、a1層とa2層とは、いずれを基板側に形成してもよいが、a2層が化学式Ti1-eAlefで示される組成により構成される場合は、a1層を基板側に設けることによって、基板との密着性が良好なものとなり、切削時の被膜の基板からの剥がれをより防止することができる。
上記A層の合計厚みは特に限定されるものではないが、0.2μm〜15μmとすることが好ましく、0.5μm〜10μmとすることがより好ましい。また、a1層の合計厚みとa2層の合計厚みとが、それぞれ0.1μm〜8μmであることが好ましく、0.2μm〜6μmであることがより好ましい。A層、a1層またはa2層がこのような合計厚みを満足する場合は、成膜時に膜剥離なく形成することができる。本発明において膜厚および層厚は切削工具の刃先部分で測定した値をいう。
<B層>
本発明におけるB層は、化学式Ti1-α(M3)αβγ(M3はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、αはTiとM3との合計に対するM3の原子比、βとγとは、それぞれTiとM3の合計に対するC、Nの原子比を表わし、0≦α≦0.3、0.9<β+γ≦1.1、0.1<β≦1.1)で示される組成を有するb1層を含む。
B層は、上記A層に比して上層、すなわちA層よりも被膜の最表層側に設ける。B層を表層側に設置することにより、クレータ摩耗を低減することができる。B層はチタン含有金属の炭窒化物または炭化物であるため、A層に比して、硬度が高く、摩擦係数が低く、耐溶着性にも優れている。これらの効果によりクレータ摩耗を低減することができると考えている。本発明においてはA層とB層とをこの順で設けることにより、クレータ摩耗の低減効果を従来の被膜に比べて優れたものとすることができる。また、基材とB層との間には必ずA層が存在するが、A層とB層とは必ずしも接する必要はなく、なんらかの介在層が存在していてもよいが、A層とB層とが隣接して設けられる場合は、上述のように成膜中の膜剥離をより防止することができるので好ましい。
上記M3として、Cr、Ta、HfまたはNbのいずれか単独とする場合、αの上限としては0.15以下が望ましく、0.1以下がより望ましい。αの下限としては0.01以上が望ましく、0.03以上がより望ましい。一方、M3がSi単独の場合は、αの上限としては0.22以下が望ましく、0.1以下がより望ましい。αの下限としては0.01以上が望ましく、0.03以上がより望ましい。このような原子比とする場合は、耐摩耗性をより向上させることができる。
上記M3としては、Cr、Ta、Hf、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種以上を組み合わせた組成としてもよい。この場合、2種以上の元素の合計原子比となるαが0以上であり0.3以下の範囲であれば、これらの各元素の原子比は特に限定されない。このように2種以上を組み合わせた組成とする場合、αは、より好ましくは0.25以下であり、0.03以上であることが望ましい。
本発明において上記B層には、化学式Ti1-δ(M4)δεζ(M4はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、M3とM4とは少なくとも1種が相異なる元素であり、δはTiとM4との合計に対するM4の原子比、εとζとは、それぞれTiとM4の合計に対するC、Nの原子比を表わし、0≦δ≦0.3、0.9<ε+ζ≦1.1、0.1<ε≦1.1)、または化学式Ti1-ηAlηλμ(ηはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、λとμとは、それぞれTiとAlの合計に対するC、Nの原子比を表わし、0.4<η≦0.8、0.9<λ+μ≦1.1、0.1<λ≦1.1)で示される組成を有するb2層をさらに含むことが好ましい。
B層がb1層とb2層とを含む場合、B層にはこれらの層を合計で2層以上交互に積層する。これらの積層数は特に限定されないが、b2層として化学式Ti1-ηAlηλμで示される組成から構成される層とする場合、後述のようにAlの含有比率によりその積層数や厚みを調整することが好ましい。b2層として化学式Ti1-δ(M4)δεζで示される組成から構成される層を採用する場合、M3とM4とは少なくとも1種が異なる元素とする。このようなM3およびM4の元素の組合せの選択は、上記M1とM2の組合せと同様とすればよい。すなわち、M3とM4とがいずれもCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される1種の元素である場合は、これらの元素が相異なるものであり、M3がCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される1種の元素で、M4がCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種の元素の場合は、M4の元素のいずれか一方または両方が、M3を構成する元素と異なるものとなる。同様に、M3を構成する元素とM4を構成する元素のそれぞれが、Cr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種の元素の場合も、いずれか一方または両方の元素が異なるものである。
上記M4として、Cr、Ta、HfまたはNbのいずれか単独とする場合、δの上限としては0.15以下が望ましく、0.1以下がより望ましい。δの下限としては0.01以上が望ましく、0.03以上がより望ましい。一方、M4がSi単独の場合は、δの上限としては0.22以下が望ましく、0.1以下がより望ましい。δの下限としては0.01以上が望ましく、0.03以上がより望ましい。このような原子比とする場合は、耐摩耗性をより向上させることができる。
上記M4としては、Cr、Ta、Hf、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種以上を組み合わせた組成としてもよい。この場合、2種以上の元素の合計原子比となるδが0以上であり0.3以下の範囲であれば、これらの各元素の原子比は特に限定されない。このように2種以上を組み合わせた組成とする場合、δは、より好ましくは0.25以下であり、0.03以上であることが望ましい。
ここで、M3およびM4として用いられる各元素は、切削における逃げ面摩耗を抑制するのに効果を発揮する。従来、これらの元素を添加して耐摩耗性の向上を図る試みは種々行われているが、本発明においては、上記A層とB層との組合せにおいて、その含有比率が0≦α≦0.3、0≦δ≦0.3の範囲にて、特段に逃げ面摩耗を抑制する効果を発揮できることを見出した。
M3またはM4として、Cr、Ta、HfまたはNbのいずれかを単独とする場合、αおよびδの上限としてはそれぞれ0.15以下が望ましく、0.1以下がより望ましい。αおよびδの下限としては0.01以上が望ましく、0.03以上がより望ましい。一方、M3またはM4としてSi単独とする場合は、αおよびδの上限としては0.22以下が望ましく、0.1以下がより望ましい。αおよびδの下限としては0.01以上が望ましく、0.03以上がより望ましい。
上述のように、M3またはM4としては、Cr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種の元素を組み合わせた組成としてもよい。この場合、2種以上の元素の合計原子比となるαおよびδが0≦α≦0.3、0≦δ≦0.3である。αとδとは、0.25以下であることが望ましく、0.03以上であることが望ましい。なお、2種以上の元素の合計原子比が上記範囲を満たすものであれば、各元素の原子比は特に限定されない。
M3またはM4として、それぞれCr、Ta、HfまたはNbのいずれか単独とする場合、M3とM4との元素の組合せは、相異なるものであれば特に限定されないが、M3がCrの場合はM4をHf,Nbとすることがよく、M3がHfの場合はM4をAl,Nbとすることがよく、M3がTaの場合はM4をHfとすることがよく、M3がNbの場合はM4をHfとすることがよく、M3がSiの場合はM4をCrとすることがよい。このような組合せとすることによって、クレータ摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる。
M3またはM4としては、Cr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも2種の元素を組み合わせた組成とする場合、例えば、M3がCrとSiの場合はM4をHfとSiとすることがよく、M3がTaとHfの場合はM4をNbとSiとすることがよい。このような組み合せとすることによって、クレータ摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる。
B層においてこれらのM3またはM4の元素を含むことにより逃げ面摩耗を低減することができる理由として、TiCNまたはTiCにHf、Nb、Siを添加することで、耐酸化性がTiAlCNに匹敵するレベルまで改善されることが挙げられる。また、TiCNまたはTiCにCrやTaを添加した組成とする場合は、被膜硬度を高めることができるので、逃げ面摩耗を低減することができる。
特に、M3およびM4の少なくとも1つとしてHfを含む場合は、Si、Nb、Taを単独で含む場合に比べてクレータ摩耗の抑制に効果があり望ましい。
上記b2層が化学式Ti1-ηAlηλμ(ηはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、λとμとは、それぞれTiとAlの合計に対するC、Nの原子比を表わし、0.4<η≦0.8、0.9<λ+μ≦1.1、0.1<λ≦1.1)により構成される場合は、旋削において耐クレータ摩耗性が低いことが欠点となることがある。上記A層とB層との組合せにより、このようなクレータ摩性の低減は防止することができるが、より好ましくはB層中のAl含有比率を少なくすることである。したがって、B層中に存在する全金属におけるAl含有比率が、3原子%以上20原子%以下である。より望ましくは、5原子%以上、15原子%以下である。このとき、A層よりもB層におけるAl含有量を低くしておく方がクレータ摩耗を低減するのにより効果的であり、A層中のAl含有比率よりもB層中のAl含有比率が低いことが望ましい。
B層中のAl含有比率を低減する手法としては、前述したA層中におけるAl含有比率を低減する手法と同様に、積層構造内の化学式Ti1-ηAlηλμで示される組成により構成される層の1層あたりの厚さを減少させる方法をとることができる。先に述べた様にAlは、耐クレータ性の面で劣化する材料であるが、切削時の被削材の仕上げ面を良好にする効果があり、この用途で有用である。
これら化学式Ti1-α(M3)αβγで示される組成により構成されるb1層と、化学式Ti1-δ(M4)δεζまたは化学式Ti1-ηAlηλμで示される組成により構成されるb2層とを積層することで、b1層単層を用いるよりも、さらにクレータ、逃げ面耐摩耗性を向上させることができる。異種材料の積層によって、ミクロ亀裂の進展が抑制できていると考えられる。さらに、成膜時の膜剥離を抑制することができる。炭窒化物または炭化物は、硬度が高いため、組成によっては靭性が低い欠点がある。また、窒化物に比較して、成膜時の残留応力により膜破壊を起こしやすい場合もある。従って被膜中にb1層とb2層との多層構造を形成させることで、ミクロ亀裂の進展をより抑制することができ、ある残留応力に対して、単層の場合に比べて成膜中に被膜が剥離しにくい。
B層においてb1層とb2層を交互に積層させる場合、その積層周期が1nm〜30nmであることが望ましい。積層周期とは、前述したA層における定義と同様であり、化学式Ti1-α(M3)αβγで示される組成を有するb1層と化学式Ti1-δ(M4)δεζまたは化学式Ti1-ηAlηλμで示される組成を有するb2層との積層単位を足し合わせた厚み(以下、単位積層構造の厚みということがある)である。積層周期は、1nm以上、30nm以下が望ましいが、下限は2nm以上がより望ましく、さらに望ましくは4nm以上である。上限は20nm以下がより望ましく、さらに望ましくは15nm以下である。被膜において、膜厚方向に対して上記積層周期が一定である必要はなく、本発明の好ましい範囲を満足する積層周期を切削に供する刃先の一部分に備えていればよい。
上記B層の単位積層構造において、b1層とb2層とは、いずれを基板側(A層側)に形成してもよいが、b2層が化学式Ti1-ηAlηλμで示される組成により構成される場合は、b1層をより基板側に設けることによって、基板との密着性が良好なものとなり、切削時の被膜の基板からの剥がれをより防止することができる。
上記B層の合計厚みは特に限定されるものではないが、0.2μm〜10μmとすることが好ましく、1μm〜6μmとすることがより好ましい。また、b1層の合計厚みとb2層の合計厚みとが、それぞれ0.1μm〜6μmであることが好ましく、0.4μm〜4μmであることがより好ましい。また、A層の合計厚み(dA)に対するB層の合計厚み(dB)の比(dB/dA)が、0.4〜5であることが好ましい。B層がこのような合計厚みおよび合計厚みの比を満足する場合は、耐クレータ摩耗性と耐逃げ面摩耗性を両立させることができる。
<A層およびB層>
上記のようなA層とB層との組合せとしては、例えば、A層の基材側にa1層を形成し、a1層上にa2層として化学式Ti1-c(M2)cdで示される組成を有する層を形成した積層単位を含み、B層としてb1層を形成する第1の態様が挙げられる。第2の態様としては、A層の基材側にa1層を形成し、a1層上にa2層として化学式Ti1-eAlefで示される組成を有する層を形成した積層単位を含み、B層としてb1層を形成する態様が挙げられる。これら第1および第2の態様の被膜構造の概略図を図2に示す。図2に示されるように、第1および第2の態様においては、基板10上に各対応するa1層13とa2層14とからなる積層単位を含むA層11と、b1層15からなるB層12とが形成されている。また、B層がb1層とb2層とを含む場合については、A層の基材側にa1層を形成し、a1層上にa2層として化学式Ti1-c(M2)cdで示される組成を有する層を形成した積層単位を含み、B層としてA層側にb1層を形成し、その上にb2層として化学式Ti1-δ(M4)δεζで示される組成を有する層を形成した積層単位を含む第3の態様が挙げられる。また、A層の基材側にa1層を形成し、a1層上にa2層として化学式Ti1-c(M2)cdで示される組成を有する層を形成した積層単位を含み、B層としてA層側にb1層を形成し、その上にb2層として化学式Ti1-ηAlηλμで示される組成を有する層を形成した積層単位を含む第4の態様が挙げられる。A層の基材側にa1層を形成し、a1層上にa2層として化学式Ti1-eAlefで示される組成を有する層を形成した積層単位を含み、B層としてA層側にb1層を形成し、その上にb2層として化学式Ti1-δ(M4)δεζで示される組成を有する層を形成した積層単位を含む第5の態様が挙げられる。A層の基材側にa1層を形成し、a1層上にa2層として化学式Ti1-eAlefで示される組成を有する層を形成した積層単位を含み、B層としてA層側にb1層を形成し、その上にb2層として化学式Ti1-ηAlηλμで示される組成を有する層を形成した積層単位を含む第6の態様が挙げられる。これら第3〜第6の態様の被膜構造の概略図を図3に示す。図3に示されるように、第3〜第6の態様においては、基板10上に各対応するa1層13とa2層14とからなる積層単位を含むA層11と、b1層15とb2層16とからなる積層単位を含むB層12とが形成されている。その他、上記第1〜第6の各態様において、A層における積層順を入れ替えて、a2層を基材側に形成しa1層をその上に形成する組合せ、B層における積層順を入れ替えて、b2層をA層側に形成しb1層をその上に形成する組合せ、A層およびB層における積層順を入れ替えた態様も考えられる。
<その他の層>
本発明における被膜には、上記A層およびB層を含む限り、それらの他に上記介在層や中間層、その他、基材の表面に設ける表面層を含むことができる。このような層としては、切削工具の被覆において被膜強度や耐摩耗性を付与するものとして従来用いられる被膜を用いることができる。このような介在層、中間層または表面層としては、TiN、AlN、Ti0.8Si0.2N、Al0.7Cr0.3N、CrNの組成を有する層を例示することができ、介在層としては、Ti0.8Si0.2N、中間層としては、TiN,CrN、表面層としては、AlN,Al0.7Cr0.3Nを用いる場合に、特に本発明の被膜と合わせて用いることによる被膜強度や耐摩耗性の向上効果が見られる。
このようなその他の層の厚みは、合計層厚を0.01μm〜3μm程度とすることが好ましい。また、その他の層の各層厚を0.01μm〜3μmの範囲に収めることが望ましく、中でもA層とB層との間に設けられる上記中間層は、0.01μm〜0.2μmとしておくことによって、本発明の効果を良好に維持することができる。
<製造方法>
本発明における被膜は、上記組成を有する限りその製造方法は特に限定されるものではないが、物理蒸着法(PVD法)により形成されることが望ましい。このような物理蒸着法としては、たとえばバランストマグネトロンスパッタリング法、アンバランストマグネトロンスパッタリング法、アークイオンプレーティング法、これらを各組み合わせた方法等を挙げることができる。被膜を物理蒸着法により形成することによって、本発明における被膜組成を実現することができる。
上記A層およびB層を好適に形成する具体的な条件を以下に例示する。すなわち、アークイオンプレーティング法を採用する場合、所望の組成が得られるように適切な配合比で各対応する金属元素を含んだターゲットをアーク式蒸発源にセットする。用いるアークイオンプレーティング装置の1例を成膜装置のターゲット設置部分の概略図として図1に示す。ターゲット1,2,3,4はTi、Al、Hf、Cr、Nb、TaまたはSi元素の組合せからなっており、ガス導入口5から導入する反応ガスとしての窒素と反応して、基材10上に窒化物膜が形成される。A層中のa1層を形成するためにターゲット1にTi、M1からなるターゲットをセットする。一方、a2層を形成するためにターゲット2にTiおよびM2、またはTiおよびAlからなるターゲットをセットする。基材は図のように、装置中央部の回転テーブル7により回転しており、ターゲット1面の前面にある場合は、a1層である化学式Ti1-a(M1)abからなる層が形成される。次に、回転してターゲット2面の前面にある場合は、a2層である化学式Ti1-c(M2)cd、またはTi1-eAlefからなる層が形成される。基材温度をヒータ6により400〜700℃、該装置内の反応ガス圧を2.0〜6.0Paに設定し、反応ガスとして窒素ガスを導入する。そして、基板(負)バイアス電圧を−30V〜−150Vに維持したまま、カソード電極に50〜120Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりA層を形成することができる。
つぎに、B層を形成する。まず、所望の組成が得られるように適切な配合比で各対応する金属元素を含んだターゲットをアーク式蒸発源にセットする。ターゲットはTi、Al、Hf、Cr、Nb、Ta、Si元素の組合せからなっており、反応ガスとしての窒素、炭化水素ガス(主にはメタン)と反応して、基材上に炭窒化物膜または炭化物膜が形成される。B層を構成するb1層を形成するためにTiおよびM3からなるターゲットをターゲット3にセットする。一方、b2層を含む場合は、b2層を形成するためにターゲット4にTiとM4、またはTiとAlからなるターゲットをセットする。
基材10は図のように、装置中央部の回転テーブル7により回転しており、ターゲット3面の前面にある場合は、b1層である化学式Ti1-α(M3)αβγからなる層が形成される。次に、回転してターゲット4面の前面にある場合は、b2層である化学式Ti1-δ(M4)δεζ、またはTi1-ηAlηλμからなる層が形成される。基材温度をヒータ6により400〜700℃とし、該装置内の反応ガス圧を2.0〜6.0Paに設定し、ガス導入口5から反応ガスとして窒素ガス、メタンガスを導入する。そして、基板(負)バイアス電圧を−300V〜−550Vに維持したまま、カソード電極に40〜120Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源から金属イオン等を発生させることによりB層を形成することができる。
A層とB層の形成においては、A層を形成した後、基材を装置から取り出さずにB層を形成することが望ましい。装置にターゲットがセットできる面が多くある場合は、A層とB層を形成する原料金属ターゲットは異なることもあり得るが、装置のターゲットをセットできる面が三面より少ない場合は、A層とB層の原料金属ターゲットは一致する。しかし、A層を形成後、一旦基材を装置外に取り出し、再度別の装置、またはターゲット材質を交換してB層を形成しても構わない。
その他の層についても、上記ターゲットを所望の組成を有するものに置換することによって、A層とB層の形成方法と同様に形成することができる。
また、アンバランストマグネトロンスパッタリング法を採用する場合の方法を述べる。同法を採用するにあたり用いた成膜装置のターゲット設置部分の一例を図1に示す。ターゲットの設置はアークイオンプレーティング法と同様である。まず、A層を形成する場合を述べる。まず、所望の組成が得られるように適切な配合比で各対応する金属元素を含んだターゲット1,2をスパッタ蒸発源1,2に各々セットする。ターゲットはTi、Al、Hf、Cr、Nb、Ta、Si元素の組合せからなっており、希ガスにてスパッタリングされた金属元素が、ガス導入口5から導入された反応ガスとしての窒素と反応して、基材10上に窒化物膜が形成される。基板(基材)温度をヒータ6により400〜600℃とし、該装置内の反応ガス圧を300mPa〜800mPaに設定し、A層を形成するために反応ガスとして窒素を導入する(なお、反応ガスの導入に際しては、希ガス/反応ガスの体積比を1〜5に設定することが好ましい)。そして、基板(負)バイアス電圧を0V〜−90Vに維持したまま、ターゲットに0.12〜0.3W/mm2の電力密度を発生させる。
基材10は図のように、装置中央部の回転テーブル7により回転しており、ターゲット1面の前面にある場合は、a1層である化学式Ti1-a(M1)abからなる層が形成される。次に、回転してターゲット2面の前面にある場合は、a2層である化学式Ti1-c(M2)cd、またはTi1-eAlefからなる層が形成される。
次にB層を形成する場合を述べる。まず、所望の組成が得られるように適切な配合比で各対応する金属元素を含んだターゲット3,4を各々スパッタ蒸発源3,4にセットする。ターゲットはTi、Al、Hf、Cr、Nb、Ta、Si元素の組合せからなっており、希ガスにてスパッタリングされた金属元素が、ガス導入口5から導入された反応ガスとしての窒素及び炭化水素ガスと反応して、基材10上に窒化物膜が形成される。基板(基材)温度をヒータ6により400〜600℃とし、該装置内の反応ガス圧を300mPa〜800mPaに設定し、B層を形成するために反応ガスとして窒素と炭化水素ガス(アセチレンが望ましい)を導入する(なお、反応ガスの導入に際しては、希ガス/反応ガスの体積比を1〜5に設定することが好ましい)。そして、基板(負)バイアス電圧を0V〜−90Vに維持したまま、ターゲットに0.12〜0.3W/mm2の電力密度を発生させる。
基材10は図のように、装置中央部の回転テーブル7により回転しており、ターゲット3面の前面にある場合は、b1層である化学式Ti1-α(M3)αβγからなる層が形成される。次に、回転してターゲット4面の前面にある場合は、b2層である化学式Ti1-δ(M4)δεζ、またはTi1-ηAlηλμからなる層が形成される。
その他の層についても、上記ターゲットを所望の組成を有するものに置換することによって、A層とB層の形成方法と同様に形成することができる。
上記のような製造方法により本発明における被膜を有する表面被覆切削工具を形成することができる。このようにして製造された本発明の表面被覆切削工具は、クレータ摩耗を低減するとともに高度な耐摩耗性を付与することができる被膜を備えたものであり、良好な切削性能を有する。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の各被膜を構成する各層の金属組成(化合物の組成)は二次電子顕微鏡に付帯のエネルギー分散型ケイ光X線分光計(SEM−EDX)により確認した。炭素、窒素含有率は、X線光電子分光(XPS)により金属の含有率と同時に求めることができる。積層周期は被膜の断面を透過電子顕微鏡(TEM)により観察し、EDXで同定することで各層の構成元素を決定した後、積層周期10層分の距離を求めて、1層あたりの平均積層周期を求めた。積層周期10層分から算出した平均積層周期を5つ求め、更にこの5つの平均値を積層周期とした。
<実施例1〜19>
本実施例において基材上に形成される被膜は、以下のように陰極式アークイオンプレーティング法またはスパッタリング法により形成した。
<陰極式アークイオンプレーティング(AIP)法>
まず、基材として、グレードがP20(JIS B 4053−1998)のサーメットであり、形状がCNMG120408(JIS B 4121−1998)である切削チップを準備し、これを洗浄した後、陰極式アークイオンプレーティング装置(成膜装置)内の基板取り付け位置にセットした。なお、このような成膜装置としては従来公知の構成のものを特に制限なく使用することができる。
そして、真空ポンプにより該装置内を1×10-4Pa以下に減圧するとともに、該装置内に設置されたヒータにより上記基材の温度を550℃に加熱し、1時間保持した。
次に、アルゴンガスを導入して該装置内の圧力を3.0Paに保持し、基板(基材)バイアス電圧を徐々に上げながら−1500Vとし、基材の表面のクリーニングを15分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
次いで、上記基材表面に形成されるA層として、その化学組成が以下の表1に示したものとなるように各対応する元素を含んだ各ターゲットを2つの原料蒸発源(アーク式蒸発源)にそれぞれセットした。ターゲット1、2の各々として、形成される被膜組成が表1のa1層、a2層に記載の組成となるような組成のターゲットをセットした。表1において組成は各元素の原子比で記載しており、金属全体(TiおよびM1、TiおよびM2、またはTiおよびAl)を1とした場合の含有率を示した。すなわち、表1のa1層のTi、M1、Nの欄は、それぞれ形成される被膜の化学式Ti1-a(M1)abにおける1−a、a、bに該当する。表1のa2層のTi、M2、Nの欄は、それぞれ形成される被膜の化学式Ti1-c(M2)cdにおける1−c、c、dに該当する。また、表1において、a2層が化学式Ti1-eAlefで示される組成を有する場合について、便宜上M2の欄にAlと表わし、a2層のTi、M2、Nの欄はそれぞれ化学式Ti1-eAlefにおける1−e、e、fを各欄に記載した。基板(基材)温度を550〜650℃および該装置内の反応ガス圧を4.0Paに設定し、反応ガスとして、窒素を導入した。そして、基板バイアス電圧を−30に維持したまま、カソード電極に40〜120Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源から金属イオン等を発生させA層を形成した。
すなわち、アーク式蒸発源から発生した金属イオン、金属元素、またはクラスター等がプラズマ雰囲気中で上記反応ガスと反応することにより、基材上に窒化物が形成(析出)されることになる。前述のとおり、中央で回転している基材が2つの蒸発源のそれぞれ正面に来たときに、それぞれの窒化物が形成されることで積層構造が形成される。
このときの基板の回転数およびアーク電流(A)を表1に示す。アーク電流は、ターゲットから発生する金属イオンの量を決定するもので、アーク電流が高くなればなるほど金属イオンの量は多くなる。アーク電流を調整することで、a2層としてTiAlN系の材質を選択した場合のAl含有比率の調整を行なうことができる。また、基板の回転数は、a1層、およびa2層の層厚に影響を与える。回転数が小さい場合は、ターゲット正面を通過する時間が長くなるため、層厚が厚くなる。
表1にa1層およびa2層の化学組成、および各層の1層分の層厚を示す。a1層とa2層の各1層の層厚を足し合わせることで積層周期となる。アーク電流(A)を減少させることで層厚が薄くなる。
つづいてB層を形成する。A層の合計層厚が2μmとなったところでアーク式蒸発源に供給する電流を停止し、基板(基材)温度を450〜600℃および該装置内の反応ガス圧を2.5Paに設定し、表2に示した化学組成に対応する反応ガスとして、窒素及びメタンを導入した。雰囲気ガスとしてArを導入した。窒素とメタンの流量比率は、メタン/(窒素+メタン)(表2、表5中、CH4/(N2+CH4))が0.2〜0.5として、基板バイアス電圧を−450〜−650Vに維持したまま、カソード電極に40〜120Aのアーク電流を供給し、アーク式蒸発源3,4から金属イオン等を発生させB層を形成した。ターゲット3,4の各々として、形成される被膜組成が表3のb1層、b2層に記載の組成となるような組成のターゲットをセットした。表3における組成表記は表1における表記と同様である。すなわち、表3のb1層のTi、M3、C、Nの欄はそれぞれ化学式Ti1-α(M3)αβγにおける1−α、α、β、γに該当する。表2のb2層のTi、M4、C、Nの欄はそれぞれ化学式Ti1-δ(M4)δεζにおける1−δ、δ、ε、ζに該当する。また、表3において、b2層が化学式Ti1-ηAlηλμで示される組成を有する場合について、便宜上M4の欄にAlと表わし、b2層のTi、M4、C、Nの欄はそれぞれ化学式Ti1-ηAlηλμにおける1−η、η、λ、μを各欄に記載した。また、B層成膜時のメタン、窒素流量におけるメタン流量比率(CH4/(N2+CH4))を表3に示す。
すなわち、アーク式蒸発源から発生した金属イオン、金属元素、またはクラスター等がプラズマ雰囲気中で上記反応ガスと反応することにより、基材上に窒化物が形成(析出)されることになる。A層の場合と同様に、すなわち、中央で回転している基材が2つの蒸発源のそれぞれ正面に来たときに、それぞれの炭窒化物が形成されることで積層構造が形成される。回転数を増加させ、アーク電流を減少させることで層厚が薄くなる。アーク電流を調整することで、b2層としてTiAlCN系またはTiAlC系の材質を選択した場合のAl含有比率の調整を行なうことができる。
表3にb1層およびb2層形成時のアーク電流と基板の回転数を示す。B層の合計層厚は3μmとした。
装置内を常温まで冷却後、該装置内を大気に開放した後、被膜が基材上に形成された表面被覆切削工具を装置から取り出して、本発明の表面被覆切削工具を得た。
また、表3に、積層周期中のb1層とb2層の各1層分の層厚を記載した。2つの層厚を足し合わせることで積層周期となる。
<スパッタリング(SP)法>
まず、基材として、上記の陰極式アークイオンプレーティング法で用いたのと同じ基材を準備し、これを洗浄した後、スパッタリング装置(成膜装置)内の基板取り付け位置にセットした。次いで、装置内の2つのターゲットに、上記基材表面に形成される各層を形成する原料として、形成される被膜化学組成が以下の表4に示したものとなるように、各対応する元素を含んだターゲットをそれぞれセットした。該ターゲットは、合金ターゲット、粉末焼結体ターゲットでもよいし、金属単体のターゲットを上記化学組成となるように分割して用いることもできる。なお、このような成膜装置としては従来公知の構成のものを特に制限なく使用することができる。
そして、真空ポンプにより該装置内を1×10-4Pa以下に減圧するとともに、該装置内に設置されたヒータにより上記基材の温度を500℃以上に加熱し、1時間保持した。
次に、アルゴンガスを導入して該装置内の圧力を500mPa〜650mPaに保持し、基板(基材)バイアス電圧を徐々に上げながら−600Vとし、基材の表面のクリーニングを30分間行なった。続いて、基板バイアス電圧を−350Vとし、ホロカソード型ガス活性化源を用いて基材表面のクリーニングをさらに60分間行なった。その後、アルゴンガスを排気した。
次いで、基板(基材)温度を400〜550℃および該装置内の反応ガス圧を500mPa〜650mPaに設定し、表4に示した化学組成に対応する反応ガスとして、窒素を導入した。なお、反応ガスの導入に際しては、希ガス/反応ガスの体積比を1〜5に設定した。
そして、基板バイアス電圧を−50〜−130Vに維持したまま、ターゲットに0.12〜0.3W/mm2の電力密度を発生させることにより、A層を形成した。ターゲット1,2の各々として、形成される被膜組成が表6のa1層、a2層に記載の組成となるような組成のターゲットをセットした。表6における各層の表記は表1と同様である。なお、ターゲットに供給するスパッタ電力密度、基板の回転数も表4に示す。電力密度が上がると金属蒸発量増加し、a1層、a2層の膜厚を厚くできる。また、基板の回転数を減少させると、a1層、a2層の膜厚を厚くできる。A層の合計厚みが3μmとなったところで電力供給を停止した。
なお、上記反応ガスには必ず希ガス(アルゴンが好ましいがこれのみに限定されない)を混在させた。陰極式アークイオンプレーティング法と同様に中央で回転している基材が2つの蒸発源のそれぞれ正面に来たときに、それぞれの窒化物が形成されることで積層構造が形成される。A層が所定の合計膜厚になったときに、ターゲットへの電力の供給を停止させた。
つづいて、B層を形成する。上記電力の供給を停止させた状態で、基板(基材)温度を400〜550℃および該装置内の反応ガス圧を500mPa〜650mPaに設定し、窒素、アセチレンを導入した。なお、反応ガスの導入に際しては、希ガス/反応ガスの体積比を1〜5に設定した。反応ガスである窒素とアセチレンのガス流量比は、アセチレン/(窒素+アセチレン)=0.25〜0.5とした。表7にアセチレン/(窒素+アセチレン)量を記載した。
そして、基板バイアス電圧を−50〜−130Vに維持したまま、ターゲットに0.12〜0.3W/mm2の電力密度を発生させることにより、B層を形成した。ターゲット3,4の各々として、形成される被膜組成が表7のb1層、b2層に記載の組成となるような組成のターゲットをセットした。記載方法は表1と同様である。なお、ターゲットに供給するスパッタ電力密度、基板の回転数も表7に示す。電力密度が上がると金属蒸発量増加し、b1層、b2層の膜厚を厚くできる。また、基板の回転数を減少させると、b1層、b2層の膜厚を厚くできる。B層の厚さが3μmとなったところで電力供給を停止した。このようにして本発明の表面被覆切削工具を製造した。
なお、各被膜を構成する層の組成については表1、表2、表3、表4、表6および表7に記載した組成に対応するものである。
<比較例1〜14>
各比較例についても実施例と同様の方法により基板上に被膜を形成させた。各被膜を構成する層の組成については表2、表4、表6および表7に記載した組成に対応するものである。
<膜剥離状態の観察>
切削工具は、上述のようにグレードがP20(JIS B 4053−1998)のサーメットであり、形状がCNMG120408(JIS B 4121−1998)である基材を用いて製造した。光学顕微鏡100倍の視野において刃先での膜剥離有無をカウントした。40コーナー観察し、(剥離なしのコーナー数)−(剥離ありのコーナー数)を表3および表6に記載した。全部のコーナーで剥離がない場合は、40−0と記載し、剥離コーナーが10個あった場合は、30−10と記載した。これによれば、窒化物層に多層構造を有する方が、膜剥離は発生しにくいことがわかる。
<切削試験1>
上記のようにして製造された実施例1〜19の表面被覆切削工具および比較例1〜14の表面被覆切削工具について、以下の切削条件により連続旋削試験を実施した。切削工具は、上述のようにグレードがP20(JIS B 4053−1998)のサーメットであり、形状がCNMG120408(JIS B 4121−1998)である基材を用いて製造した。逃げ面摩耗量とクレータ摩耗幅とを測定した。逃げ面摩耗量が小さいもの程耐摩耗性に優れていることを示し、クレータ摩耗量が小さいもの程クレータ摩耗が低減されていることを示す。その結果を以下の表3および表6に示す。切削条件は、Vc=150m/min、f=0.2mm/rev.、Ad=1.5mm、dryで行なった。被削材はJIS−SCM435を用いた。Vcは切削速度、fは送り、Adは切込み量をそれぞれ示し、dryは切削試験に於いて切削油を用いない乾式切削としたことを示す。
<切削試験2>
上記のようにして製造された実施例1〜19の表面被覆切削工具および比較例1〜14の表面被覆切削工具について、以下の条件で切削を所定時間行い、最終の被削材表面の光沢を、目視で3段階評価した。切削工具は、上述のようにグレードがP20(JIS B 4053−1998)のサーメットであり、形状がCNMG120408(JIS B 4121−1998)である基材を用いて製造した。切削条件は、Vc=60m/min、f=0.15mm/rev、Ad=1.0mm、wetでおこなった。被削材はJIS−SCM415を用いた。wetとは切削試験に於いて切削油を用いる湿式切削としたことを示す。光沢は3段階評価とし、3の面光沢が最も優れており、1の面光沢が最も劣っている。面光沢が1とは仕上げ面部に切削時のむしれが多く、全面が白濁している場合につけた、2とは仕上げ面部に切削時のむしれがあるものの、時折金属光沢部も見受けられて、白濁部と光沢部が混在している場合につけた、3とは仕上げ面部に切削時のむしれがなく全面が金属光沢を有している場合につけたであることを示す。結果を表5および表8に示す。
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表5および表8より明らかなように、本発明の実施例の表面被覆切削工具は、比較例の表面被覆切削工具に比し、クレータ摩耗の低減化および耐摩耗性の向上の両者において優れた結果を示していることは明らかである。したがって、本発明の表面被覆切削工具は優れた切削性能を有したものである。
なお、上記した実施例においては、基材上に被膜としてA層およびB層のみを形成した構造であるが、基材上に前述のような介在層を形成し、その介在層上にA層を形成することもでき、基材と被膜との密着性をさらに向上させることができる。また、A層とB層との間に中間層を設けても、B層上にその他の層や表面層を設けても本発明の効果は奏される。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明における被膜は、切削工具に限らず、基材との密着性や被膜強度を向上させる目的で、種々の基材の被膜として用いることができる。
100 成膜装置、1,2,3,4 ターゲット、5 ガス導入口、6 ヒータ、7 回転テーブル、10 基材、11 A層、12 B層、13 a1層、14 a2層、15 b1層、16 b2層。

Claims (9)

  1. 基材と該基材上に形成された被膜とを備えた表面被覆切削工具であって、
    前記被膜は、少なくとも2層以上の層からなるA層と少なくとも1層以上の層からなるB層とを含み、
    前記A層は、化学式Ti1-a(M1)ab(M1はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、aはTiとM1との合計に対するM1の原子比、bはTiとM1の合計に対するNの原子比を表わし、0<a≦0.3、0.9<b≦1.1)で示される組成を有するa1層と、化学式Ti1-c(M2)cd(M2はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、M1とM2とは少なくとも1種が相異なる元素であり、cはTiとM2との合計に対するM2の原子比、dはTiとM2の合計に対するNの原子比を表わし、0<c≦0.3、0.9<d≦1.1)、または化学式Ti1-eAlef(eはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、fはTiとAlの合計に対するNの原子比を表わし、0.4<e≦0.8、0.9<f≦1.1)で示される組成を有するa2層とを含み、
    前記B層は、化学式Ti1-α(M3)αβγ(M3はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、αはTiとM3との合計に対するM3の原子比、βとγとは、それぞれTiとM3の合計に対するC、Nの原子比を表わし、0≦α≦0.3、0.9<β+γ≦1.1、0.1<β≦1.1)で示される組成を有するb1層を含み、
    前記A層におけるa1層とa2層とは交互に積層され、
    前記B層が前記A層よりも前記被膜の最表面側に形成されている表面被覆切削工具。
  2. 前記B層は、化学式Ti1-δ(M4)δεζ(M4はCr、Hf、Ta、NbおよびSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素であって、M3とM4とは少なくとも1種が相異なる元素であり、δはTiとM4との合計に対するM4の原子比、εとζとは、それぞれTiとM4の合計に対するC、Nの原子比を表わし、0≦δ≦0.3、0.9<ε+ζ≦1.1、0.1<ε≦1.1)、または化学式Ti1-ηAlηλμ(ηはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、λとμとは、それぞれTiとAlの合計に対するC、Nの原子比を表わし、0.4<η≦0.8、0.9<λ+μ≦1.1、0.1<λ≦1.1)で示される組成を有するb2層をさらに含み、
    前記B層におけるb1層とb2層とは交互に合計2層以上積層されている、請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記A層におけるa2層は、化学式Ti1-eAlef(eはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、fはTiとAlの合計に対するNの原子比を表わし、0.4<e≦0.8、0.9<f≦1.1)で示される組成を有する層であり、
    前記A層における積層周期が1nm〜30nmである、請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記B層におけるb2層は、化学式Ti1-ηAlηλμ(ηはTiとAlとの合計に対するAlの原子比、λとμとは、それぞれTiとAlの合計に対するC、Nの原子比を表わし、0.4<η≦0.8、0.9<λ+μ≦1.1、0.1<λ≦1.1)で示される組成を有する層であり、
    前記B層における積層周期が1nm〜30nmである、請求項2または3に記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記A層に存在する全金属元素に対するAl含有比率が、3原子%以上30原子%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  6. 前記B層に存在する全金属元素に対するAl含有比率が、1原子%以上20原子%以下である、請求項2から5のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  7. 前記A層に存在する全金属元素に対するAl含有比率が、前記B層に存在する全金属元素に対するAl含有比率よりも高い、請求項2から6のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  8. 前記原子比γ、ε、λは、それぞれ0.3以上0.55以下である、請求項2から7のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  9. 前記基材は、サーメットにより構成される、請求項1から8のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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