JP6343888B2 - 耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具 - Google Patents

耐欠損性にすぐれた立方晶窒化硼素焼結体切削工具 Download PDF

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本発明は、立方晶窒化硼素(以下、cBNで示す)を主成分として、これを超高圧、高温下にて焼結成形してなるcBN焼結体切削工具に関し、特に、合金鋼、軸受鋼等の焼入れ材からなる高硬度鋼の断続切削加工において、欠けや欠損の発生を抑制し得るとともに、すぐれた切削性能を長期の使用に亘って維持し得るcBN焼結体切削工具に関するものである。
従来、高硬度鋼の切削工具としては、cBN焼結体を工具基体としたcBN焼結体切削工具等が知られており、工具寿命の向上を目的として種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、cBN焼結体を超高圧焼結により作製するにあたり、硬質粒子であるcBN粒子の表面に被膜を形成して、cBN粒子を被膜で包囲することにより、cBN粒子間や結合相間、またはcBN粒子と結合相間に現れるポアが解消され、耐摩耗性や靭性が向上することが開示されている。
また、特許文献2には、cBN粒子を包囲する被膜を金属層にし、cBN粒子を構成する硼素を結合相中に拡散することを促進させることにより、cBN焼結体の耐熱性や耐欠損性が向上することが開示されている。
特開昭58−61253号公報 国際公開2012/053375号公報
特許文献1には、結合強化金属としてのAlと、Alの酸化物および窒化物のうちの1種または2種を含有し、残りがcBNと不可避不純物からなる組成で、かつ結合強化金属がcBN粒子を0.1μm〜1μmの平均層厚で包囲した組織を有するcBN焼結体が開示されているが、この焼結体では、焼入れ鋼を切削する場合など刃先の温度が1000℃以上に達する用途では、断続切削に使用すると刃先が欠損しやすくなり、工具寿命が短命であるという課題があった。
また、特許文献2には、あらかじめ金属層としてTiAlにより表面を被覆したcBN粒子を原料として用いることにより、cBN粒子を構成する硼素と被覆したTiAlを反応させ、cBN粒子の周囲にTiBやAlBを配置する組織を有する焼結体が開示されているが、この焼結体では、硼素とTiAlを反応させることによりTiBだけでなくAlBも生成し、その結果、AlNもcBN周囲に生成する。AlBやAlNはcBNと付着強度が低いため、刃先への負荷の大きい断続切削に使用すると刃先が欠損しやすくなり、工具寿命が短命であるという課題があった。
そこで、本発明が解決しようとする技術的課題、すなわち、本発明の目的は、高負荷な切削条件が要求される高硬度鋼の断続切削加工を行った場合においても、工具刃先の欠けや欠損が生じにくく、長期に亘って、すぐれた切削性能を維持するcBN焼結体切削工具を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため、cBN工具を構成するcBN焼結体の硬質相成分であるcBN粒子に着目し、鋭意研究したところ、次のような知見を得た。
(1)cBN粒子表面にあらかじめTiO膜を被覆したcBN粒子を用いてcBN焼結体を作製することにより、結合相原料として含まれるAlとTiOが反応し解離する。
(2)前記解離により生じた金属TiがcBN粒子周囲に均一に供給される結果、cBNとTiとの反応をcBN粒子周辺において均一にすることが出来る。
(3)その結果、cBN粒子と結合相との結合力を飛躍的に向上させることができ、結果として高負荷の断続切削に使用しても欠損しにくいcBN焼結体を作製することが出来る。
(4)TiOから供給されるTiとcBNが反応するため、cBN粒子周囲には反応生成物としてTiの窒化物や硼化物が主に生成する。
(5)さらに、TiOとAlが反応し生成したAlは、cBN粒子周囲に生成するTiの窒化物や硼化物よりもcBN粒子から離れた位置に生成する。
前述の知見に基づき本発明者らは、幾多の実験を重ねることによって、刃先に高負荷および高温が加わる高硬度鋼の断続切削に使用しても欠損しにくく切削寿命の長い工具を製造することに成功した。本発明におけるcBN粒子を包囲する被覆層は、例えば、次のような方法で形成することができる。
(a)TiO層成膜工程:
まず、ALD法(Atomic Layer Deposition:真空チャンバ内の基材に、原料化合物の分子を一層ごと反応させ、Arや窒素による原料化合物のパージを繰り返し行うことで成膜する方法で、CVD法の一種)を用い、炉内にcBN粒子を装入し、150℃程度に昇温し、Tiの先駆体であるTi[N(CH(テトラキスジメチルアミノチタン)および反応ガスとしてHOを用い、
(1)Ar+Ti[N(CH流入工程、
(2)Arガスパージ工程、
(3)Ar+HO流入工程、
(4)Arガスパージ工程
前記(1)〜(4)を1サイクルとして、このサイクルを目標層厚になるまで繰り返し行い、例えば、2時間かけて成膜することにより、平均層厚50nm以下のTiO層をcBN粒子表面に被覆形成する。
(b)成形工程:
前記の成膜工程(a)によって作製したTiO層で被覆されているcBN粒子を硬質相形成用原料粉末として用意するとともに、さらに、例えば、TiN粉末、TiCN粉末、TiAl粉末、Al粉末を結合相形成用原料粉末として用意し、これらの原料粉末を所定組成となるように配合し、所定サイズの成形体を作製して予備焼結体を作製する。
(c)焼結工程:
そして、この予備焼結体を、WC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、例えば、通常の焼結条件である圧力:5GPa、温度:1500℃、保持時間:30分間の条件で超高圧高温焼結し、cBN焼結体を作製する。
(d)TiOからAlおよびTi化合物層の形成過程:
TiOは、超高圧高温焼結処理時に原料中に含まれるAlと下記のような反応を生じる。
3TiO + 4Al → 3Ti + 2Al
この反応により生じたTi金属がcBNと反応することによりTiNやTiBといったTi化合物が形成する。ここで、TiOはcBN粒子表面を被覆するように存在しているため、TiOからのTi金属がcBN粒子の周囲に均一に供給される。その結果、cBN粒子周囲にTi化合物が形成される。
この時、Alは、前記(b)の成形工程において、結合相形成用原料粉末としてAl粉末を含有させなくても生成が確認されることから、前述のようにTiO由来の酸素と結合相中に含まれるAlとの反応によって生成されたものであることが分かる。
このようにして作製されたcBN焼結体からcBN工具を作製したところ、このcBN工具は、刃先に高負荷および高温が加わる高硬度鋼の断続切削時においてもクラックが発生しにくく、耐チッピング性および耐欠損性にすぐれており、その結果、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する。
つまり、前記cBN工具においては、従前のcBN焼結体切削工具のようにcBN粒子表面に金属Alが存在しないために、焼入れ鋼を切削する場合など刃先の温度が1000℃以上に達する用途でもcBN粒子表面における金属Alの溶融という問題が無く、また、cBNとの付着強度が低いAlBやAlNがcBN粒子表面に形成されることが回避されるため、刃先の強度低下を抑制することが出来、工具寿命を長くすることができる。
さらに、cBN粒子表面から離れた位置に生成されるAlは、結合相としての作用もするため、結合相形成用原料としてAl粒子を用いていない場合であっても、従前のcBN焼結体切削工具において耐酸化性と化学的安定性の性質を持つAlが果たしていた耐摩耗性向上という効果を奏することも可能となる。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 立方晶窒化硼素粒子と結合相とを含む焼結体を工具基体とする立方晶窒化硼素焼結体切削工具において、
前記立方晶窒化硼素粒子表面から50nm以内の範囲の領域に含まれるTiの窒化物、硼化物、酸化物およびそれらの固溶体の占める割合が、前記領域の全体積に対して80vol%以上であり、前記立方晶窒化硼素粒子表面から20nm以内の範囲の領域に含まれる金属AlおよびAl化合物の占める割合は、前記領域の全体積に対して6〜45vol%であり、前記結合相には少なくともAlが含まれていることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体切削工具。
(2) あらかじめTiO膜を被覆した立方晶窒化硼素粒子を含む硬質相形成用原料粉末と結合相形成用原料粉末とを配合混合後、成形、焼成して得た焼結体を前記工具基体とすることを特徴とする(1)に記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具の製造方法。」
を特徴とするものである。
本発明の構成について、さらに詳細に説明する。
cBN焼結体:
cBN焼結体は、通常、硬質相成分と結合相成分からなるが、本発明のcBN工具の工具基体であるcBN焼結体は、硬質相成分として、Tiの窒化物、硼化物、酸化物およびそれらの固溶体の少なくとも1種以上のTi化合物により構成されている被覆層によって被覆されているcBN粒子と結合相とを含有している。
すなわち、本発明におけるcBN焼結体は、例えば、あらかじめTiOによって被覆したcBN粒子からなる硬質相形成用原料とTiN粉末、TiCN粉末、TiAl粉末、Al粉末の少なくとも1種からなる結合相形成用原料粉末を混合、成形、焼成してcBN焼結体を製造することによって、cBN粒子表面近傍における金属AlやAlBやAlNの存在割合を著しく低減しているため、溶融温度が低い金属Alに起因する1000℃以上に達する用途における刃先の強度低下、欠損の発生を回避するとともに、cBNとの付着強度が低いAlBやAlNに起因する高負荷切削条件における欠損、チッピングの発生を回避している。
cBNの平均粒径:
本発明で用いるcBN粒子の平均粒径は、特に限定されるものではないが、0.5〜8.0μmの範囲であることが好ましい。
硬質なcBN粒子を焼結体内に含むことにより耐欠損性を高める効果に加えて、平均粒径が0.5〜8.0μmのcBN粒子を焼結体内に分散することにより、工具使用中に工具表面のcBN粒子が脱落して生じる刃先の凹凸形状を起点とする欠損、チッピングを抑制するだけでなく、工具使用中に刃先に加わる応力により生じるcBN粒子と結合相との界面から進展するクラック、あるいはcBN粒子が割れて進展するクラックの伝播を焼結体中に分散した所定の粒径のcBN粒子により抑制することにより、すぐれた耐欠損性を有することができる。
したがって、本発明で用いるcBN粒子の平均粒径は、0.5〜8.0μmの範囲とすることが好ましい。
ここで、cBNの平均粒径は、作製したcBN焼結体の断面組織を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)にて観察し、二次電子像を得る。得られた画像内のcBN粒子の部分を画像処理にて抜き出し、画像解析によって各cBN粒子の最大長を求め、それを各cBN粒子の直径とし、この直径より計算し求めた各粒子の体積を基に縦軸を体積百分率[%]、横軸を直径[μm]としてグラフを描画させ、体積百分率が50%の値を取得した1画像におけるcBN粒子の平均粒径とし、少なくとも3画像を処理し求めた値の平均値をcBNの平均粒径[μm]とした。画像処理に用いる観察領域として、cBN粒子の平均粒径3μmの場合、15μm×15μm程度の視野領域が望ましい。
cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合:
cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合が50vol%未満では、焼結体中に硬質物質が少なく、工具として使用した場合に、耐欠損性が低下する。一方、80vol%を超えると、焼結体中にクラックの起点となる空隙が生成し、耐欠損性が低下する。そのため、本発明が奏する効果をより一層発揮するためには、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合は、50〜80vol%の範囲とすることが好ましい。
ここで、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合(vol%)は、cBN焼結体の断面組織をSEMによって観察し、得られた二次電子像内のcBN粒子の部分を画像処理によって抜き出し、画像解析によってcBN粒子が占める面積を算出し、少なくとも3画像を処理し求めた値の平均値をcBN粒子の含有割合(vol%)とした。画像処理に用いる観察領域として、cBN粒子の平均粒径3μmの場合、15μm×15μm程度の視野領域が望ましい。
cBN粒子表面近傍の組成:
本発明は、cBN粒子表面を溶融温度が高くcBNとの付着強度も高いTi化合物で囲繞することによって、刃先が1000℃以上となるような切削条件のもとであっても、欠損やチッピングを抑制し、工具寿命の長期化を達成するものであるが、その構成をより具体的に定義するものとして、cBN粒子表面から50nm以内の範囲の領域に含まれるTiの窒化物、硼化物、酸化物およびそれらの固溶体の占める割合が、前記領域の全体積に対して80vol%以上であると定義した。
なお、cBN粒子表面を溶融温度が高くcBNとの付着強度も高いTi化合物で囲繞する結果、cBN粒子表面近傍に融点が低い金属AlおよびcBNとの付着強度が低いAlBやAlNなどのAl化合物の存在割合が低減することになるが、その構成をより具体的に定義するものとして、立方晶窒化硼素粒子表面から20nm以内の範囲の領域に含まれる金属AlおよびAl化合物の占める割合は50vol%より少ないことが望ましく、より好ましくは45vol%であることが望ましい。

cBN粒子表面近傍の組成の測定方法:
cBN焼結体の断面組織をオージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)にてcBN焼結体組織を観察し、Ti、Al、B、N元素の元素マッピング像を取得する。得られたBとN元素の情報からcBN界面を決定し、界面から厚み50nmの範囲領域を決定する。cBN界面から厚み50nmの領域の面積を100%として、Ti元素がcBN界面から厚み50nmの領域内を占める割合を求める。また、得られたBとN元素の情報からcBN界面を決定し、界面から厚み20nmの範囲領域を決定する。cBN界面から厚み20nmの領域の面積を100%としてAl元素がcBN界面から厚み20nmの領域内を占める割合を求める。画像は、1個のcBN粒子全体について、cBN界面から厚み50nm離れた領域が含まれる倍率が望ましく、5画像を前記方法にて処理し求めたそれぞれの値の平均値からcBN粒子表面から50nm以内の範囲の領域に含まれるTi化合物の占める割合とcBN粒子表面から平均厚み20nm以内の範囲の領域に含まれるAl化合物の占める割合を算出する。cBN粒子の選択として、測定するcBN粒子のcBN界面から50nm離れた領域内に、他のcBN粒子が含まれない粒子を測定対象とし、cBN粒子の平均粒径が2μmの場合、3.5μm×3.5μm程度の視野領域が望ましい。
本発明は、cBN粒子表面を溶融温度が高くcBNとの付着強度も高いTi化合物で囲繞することによって、刃先が1000℃以上となるような切削条件のもとであっても、欠損やチッピングが抑制され、工具寿命の長期化が達成されるという効果を奏する。
cBN粒子表面から50nm以内の領域に含まれるTi窒化物、Ti硼化物、Ti酸化物およびそれらの固溶体が占める割合が80vol%以上であるcBN粒子の断面のSEMによる二次電子画像より、cBNとAlを抜き出した図を示す。
以下に、本発明のcBN工具を実施例に基づいて具体的に説明する。
原料粉末としてのcBN粒子の作製:
平均粒径0.5〜8.0μmのcBN粒子を基材とし、これに、ALD法(Atomic Layer Deposition:真空チャンバ内の基材に、原料化合物の分子を一層ごと反応させ、Arや窒素による原料化合物のパージを繰り返し行うことで成膜する方法で、CVD法の一種)を用い、薄層のTiO層を被覆形成した。より具体的にいえば、炉内に、平均粒径0.5〜8.0μmのcBN粒子を装入し、炉内を350℃に昇温し、成膜用ガスとして、Tiの先駆体であるTi[N(CH、および、反応ガスとしてHOを用い、
(1)Ar+Ti[N(CH流入工程、
(2)Arガスパージ工程、
(3)Ar+HO流入工程、
(4)Arガスパージ工程
前記(1)〜(4)を1サイクルとして、このサイクルを目標層厚になるまで繰り返し行い、所定の層厚のTiO層をcBN粒子表面に被覆形成する。
成形工程:
前述の工程によって作製したTiOの薄膜で被覆されたcBN粒子を硬質相形成用原料粉末として用意するとともに、いずれも0.3〜0.9μmの範囲内の平均粒径を有するTiN粉末、TiC粉末、Al粉末、TiAl粉末、WC粉末を結合相形成用原料粉末として用意し、これら原料粉末の中から選ばれたいくつかの原料粉末とcBN粒子粉末の合量を100vol%としたときのcBN粒子粉末の含有割合が50〜80vol%となるように配合し、湿式混合し、乾燥した後、油圧プレスにて成形圧1MPaで直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法にプレス成形し、ついでこの成形体を、圧力:1Pa以下の真空雰囲気中、1000℃で30分間保持して熱処理し、揮発成分および粉末表面への吸着成分を除去して予備焼結体とし、この予備焼結体を別途用意したCo:8質量%、WC:残りの組成、並びに直径:50mm×厚さ:2mmの寸法をもったWC基超硬合金製支持片と重ね合わせた状態で、通常の超高圧焼結装置に装入し、通常の条件である圧力:5GPa、温度:1500℃、保持時間:30分間の条件で超高圧高温焼結し、cBN焼結体円板を作製する。この超高圧高温焼結処理時に、cBN粒子表面に予め被覆されていたTiO層が原料中に含まれるAlと反応し生じるTiとcBNとが反応することにより、cBN粒子表面にTi化合物層が形成される。
この時、TiO層中の酸素と結合相中のAlとに由来するAlがcBN粒子表面と離れて生成される。
加工工程:
このcBN焼結体円板をワイヤー放電加工機で所定寸法に切断し、Co:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびISO規格CNGA120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ag:残りからなる組成を有するAg系ろう材を用いてろう付けし、上下面および外周研磨、ホーニング処理を施すことによりISO規格CNGA120408のインサート形状をもった本発明cBN工具1〜10を製造した。なお、cBN粒径、cBN含有量、Ti化合物が占める割合、Al化合物が占める割合は、前述した方法により算出した。
その結果を表1に示す。
比較のため、原料粉末として、1層目にAlN層を2層目にTiO層を被覆したcBN粉末を用意した。なお、AlN層はTiOと同じALD法を用い、原料にはAl(CHとNHを用いて成膜した。また、いずれも0.3〜0.9μmの範囲内の平均粒径を有するTiN粉末、TiC粉末、Al粉末、TiAl粉末、WC粉末を結合相形成用原料粉末として用意し、これら原料粉末の中から選ばれたいくつかの原料粉末とcBN粒子粉末の合量を100vol%としたときのcBN粒子粉末の含有割合が60vol%となるように配合した後、本発明の場合と同様な処理操作(乾燥、成形、熱処理、予備焼結、焼結等)を行うことにより、比較品cBN工具11〜15を製造した。
その結果を表2に示す。
なお、表1および表2中の焼結体の結合相組成は、cBN焼結体のXRD(X−ray Diffraction)により決定した。
本発明cBN工具1〜10および比較品cBN工具11〜15について、
被削材:クロム鋼鋼材SCr420(HRC58〜62)の軸方向に8本の溝入りφ100mm丸棒、
切削速度:180m/min.、
切り込み:0.1mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削油:乾式
という切削条件で、加工時間0.5分毎に刃先の欠損の有無を確認した。
表3および表4に、前記切削加工試験の結果を示す。
表1〜4に示される結果から、本発明cBN工具1〜10は、cBN粒子表面が、Ti化合物で囲繞されていることにより、高負荷・高温が加わる切削時においても欠損、チッピングが発生しにくいため、断続的・衝撃的負荷が作用する高硬度鋼の断続切削加工に用いた場合でも、欠損の発生は抑制される。その結果、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する。
これに対して、比較品cBN工具11〜15は、cBN粒子表面に本発明で規定したようなTi化合物層を有していないため、cBN粒子表面に金属AlやAl化合物が存在するため、いずれも高硬度鋼の断続切削加工に用いた場合には、比較的短時間で寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明のcBN工具は、耐チッピング性、耐欠損性にすぐれることから、高硬度鋼の断続切削以外の切削条件でも適用可能であり、切削加工装置の高性能化ならびに切削加工の省力化および省エネ化、低コスト化に十分満足に対応できる。

Claims (2)

  1. 立方晶窒化硼素粒子と結合相とを含む焼結体を工具基体とする立方晶窒化硼素焼結体切削工具において、
    前記立方晶窒化硼素粒子表面から50nm以内の範囲の領域に含まれるTiの窒化物、硼化物、酸化物およびそれらの固溶体の占める割合が、前記領域の全体積に対して80vol%以上であり、前記立方晶窒化硼素粒子表面から20nm以内の範囲の領域に含まれる金属AlおよびAl化合物の占める割合は、前記領域の全体積に対して6〜45vol%であり、前記結合相には少なくともAlが含まれていることを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体切削工具。
  2. あらかじめTiO膜を被覆した立方晶窒化硼素粒子を含む硬質相形成用原料粉末と結合相形成用原料粉末とを配合混合後、成形、焼成して得た焼結体を前記工具基体とすることを特徴とする請求項1に記載の立方晶窒化硼素基焼結体切削工具の製造方法。
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