JP6459391B2 - 耐チッピング性にすぐれた表面被覆切削工具 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、結合相と硬質相とからなる焼結合金の工具基体の表面に周期律表4a、5a、6a族元素、Al、Siの炭化物、窒化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種の硬質被覆層を形成した被覆工具において、被覆工具の断面組織を観察したときに、工具基体の結合相と硬質被覆層との界面の少なくとも1部に、凸状結合相が形成されていることにより、耐欠損性および耐チッピング性にすぐれ、高速度、高送りの過酷な切削条件に対しても長時間安定した加工が可能な被覆工具が開示されている。
また、特許文献2には、工具基体と該工具基体上に形成された硬質被覆層とを備えるものであって、工具基体は、硬質粒子と該硬質粒子を結合する結合相とを含み、硬質被覆層に接する硬質粒子は、硬質被覆層に接する側の表面に凹凸が形成されており、被覆工具のすくい面に対する法線を含む平面で被覆工具を切断したときの断面において、工具基体のすくい面側の表面は、硬質被覆層に接する側の表面に位置する長さ50μmのすくい面側基準線における面粗度Rz,sが1μm以上30μm以下であり、工具基体の逃げ面側の表面は、被膜に接する側の表面に位置する長さ50μmの逃げ面側基準線における面粗度Rz,nが0.5μm以上5μm以下であり、かつRz,sはRz,nよりも大きいことにより、工具基体と硬質被覆層との密着性が良好に保たれ、加工面品位にすぐれた被覆工具が得られる旨、開示されている。
(2)TiAlN層は、その構成成分であるTi成分によってすぐれた強度と靭性を確保することができ、Alは高温硬さと耐熱性を向上させ、AlとTiが共存含有した状態でさらに高温耐酸化性を向上させる作用がある。さらに、岩塩型結晶構造を有するため、高硬度でありcBN焼結体からなる工具基体上に形成することで耐摩耗性を向上させることができる。
(3)一方、TiAlSiN層は、前記TiAlN層にSi成分を含有させることで、一層耐熱性が向上する。酸化開始温度が高くて高温耐酸化性が高いため、特に切削時に高温となるような高速切削時の耐摩耗性が向上する。
(4)cBN焼結体からなる工具基体上に所定の組成のTiAlN層を成膜し、その上に所定の組成のTiAlSiN層を積層させることで、TiAlN層が密着層として機能し、工具基体表面と硬質被覆層との密着性が向上するが、工具基体表面に露出しているcBN粒子表面に三次元的な凹凸を形成することにより、cBN粒子が硬質被覆層と接触する面積を効率的に増やすことができる。
(5)cBN粒子表面に形成する凹凸形状を制御することにより、cBN粒子自身の強度低下を招くことなく、cBN粒子の表面積を増やすことができ、その結果、硬質被覆層との密着性と工具基体自身の強度の両方を向上させることができる。
「(1) 少なくとも切削に使用する刃先が立方晶窒化硼素焼結体からなる工具基体上に平均総層厚2.0〜8.0μmの硬質被覆層が被覆されており、
前記立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素粒子と、Tiの窒化物、炭化物、炭窒化物、硼化物およびAlの窒化物、酸化物からなる群から少なくとも1種以上と不可避の不純物を含む結合相からなり、
前記立方晶窒化硼素粒子の平均粒径は0.5〜4.0μmかつ焼結体全体に対する含有割合は40〜70体積%であり、
前記硬質被覆層は、工具基体表面に形成したA層と、その上に形成したB層とからなり、
前記A層の組成は、Ti1−aAlaN(但し、0.3≦a≦0.7)であり、
前記B層の組成は、Ti1−b−cAlbSicN(但し、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.1)であり、
前記工具基体の逃げ面上において、硬質被覆層と接する立方晶窒化硼素粒子の表面に球面状の凹部が存在し、
前記凹部の表面積が、硬質被覆層と接する立方晶窒化硼素粒子の表面積に対して18〜78面積%を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記立方晶窒化硼素粒子の表面に存在する球面状の凹部は、該凹部の幅Lが0.1〜1.0μm、深さDが0.01〜0.1μm、かつ、幅Lと深さDの比L/Dの値が2以上であり、さらに、該凹部の曲率が0.1〜2μm−1以下であることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
cBN焼結体中に、微細な硬質なcBN粒子が分散していることにより、工具使用中に工具基体表面のcBN粒子が脱落して生じる刃先の凹凸形状を起点とするチッピングの発生を抑制することができる。その理由は、たとえ、工具基体表面のcBN粒子が脱落したとしても、その粒子が所定の粒径以下の微細粒子であるためチッピングを誘発するような大きな凹凸形状とならないためである。
また、焼結体中の微細cBN粒子が、工具使用中に刃先に加わる応力により生じるcBN粒子と結合相との界面から進展するクラック、あるいはcBN粒子が割れて進展するクラックの伝搬を分散・緩消する役割を担うため、すぐれた耐欠損性を発揮することが出来る。
しかしながら、平均粒径が0.5μm未満になると、微細すぎて硬質粒子としてのcBN粒子の機能が十分に発揮できない。一方、4.0μmを超えると、cBN粒子が脱落した際に基体上に形成される凹凸形状が大きくなるため、工具使用中に基体のチッピングを誘発する恐れがある。
したがって、cBN粒子の平均粒径は、0.5〜4.0μmと定めた。
ここで、cBN粒子の平均粒径は、作製したcBN焼結体の断面組織を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy:SEM)にて観察して得られた二次電子画像内のcBN粒子の部分を画像処理にて抜き出し、画像解析によって各cBN粒子の最大長を求め、それを各cBN粒子の直径とし、1画像におけるcBN粒子の直径の平均値を求め、少なくとも3画像について求めた平均値の平均をcBNの平均粒径[μm]とした。画像処理に用いる観察領域は予備観察を行うことによって定めたが、cBN粒子の平均粒径が0.5〜4.0μmであることをかんがみ、15μm×15μm程度の視野領域とすることが望ましい。
cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合が40体積%未満では、焼結体中に硬質物質が少なく、cBN焼結体の硬度が低下するため、耐摩耗性が低下する。一方、70体積%を超えると、結合相が不足するため、焼結体中にクラックの起点となる空隙が生成し、耐欠損性が低下する。そのため、本発明が奏する効果をより一層発揮するためには、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合は、40〜70体積%の範囲とすることが好ましい。
ここで、cBN焼結体に占めるcBN粒子の含有割合(体積%)の測定方法は、cBN焼結体の断面組織をSEMによって観察して得られた二次電子画像内のcBN粒子の部分を画像処理によって抜き出し、画像解析によって観察領域におけるcBN焼結体の全体の面積に対するcBN粒子が占める面積を算出し、少なくとも3画像を処理し求めた値の平均値をcBN粒子の含有割合(体積%)とした。画像処理に用いる観察領域は、cBN粒子の平均粒径が0.5〜4.0μmであることをかんがみ、15μm×15μm程度の視野領域とすることが望ましい。
本発明の硬質被覆層は、硬質被覆層は少なくとも工具基体直上のTi1−aAlaNの成分系からなる下部層Aとその上に形成されたTi1−x―yAlxSiyNの成分系からなる上部層Bとからなる積層構造を有している。この硬質被覆層は、下部層AであるTiAlN層に含まれるTi成分によってすぐれた強度と靭性を確保し、Alが高温硬さと耐熱性を向上させると共にAlとTiが共存含有した状態でさらに高温耐酸化性を向上させる作用があるとともに岩塩型結晶構造を有するため、高硬度であり工具基体上に形成することで耐摩耗性を向上させることができる。
また、上部層BであるTiAlSiN層は、前記TiAlN層にSi成分を含有させることで、一層耐熱性が向上し、酸化開始温度が高くて高温耐酸化性が高いため、特に切削時に高温となるような高速切削時の耐摩耗性が向上する。
特に平均総層厚が2.0〜8.0μmのとき、その効果が際立って発揮される。その理由は、平均総層厚が2.0μm未満では、工具基体表面粗さに比べ硬質被覆層の層厚が薄いため、長期の使用に亘っての耐摩耗性を十分確保することができない。一方、その平均総層厚が8.0μmを越えると、硬質被覆層を構成する複合窒化物の結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。したがって、その平均総層厚を2.0〜8.0μmと定めた。
下部層Aは、AlのTiとAlの合量に占める含有割合a(但し、aは原子比)が、0.3≦a≦0.7を満足する。
Al成分の含有量が0.3未満では、Al成分を含有することによる高温硬さと耐熱性の向上が十分得られず、所望の性能が得られない。また、Al成分の含有量が0.7を超えると、TiAlN層が岩塩型結晶構造を維持できず、硬さが極端に低下するため、望ましくない。
上部層Bは、AlおよびSiのTiとAlとSiの合量に占める含有割合b、c(但し、b、cはいずれも原子比)が、それぞれ、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.1を満足する。
この条件を満たすとき、上部層Bを構成するTi1−b―cAlbSicN層は所望の耐酸化性および切削時に高温となるような高速切削時における高い耐摩耗性を発揮する。
一方、Al成分の含有割合bが0.3未満では、Al成分を含有することによる高温硬さと耐熱性の向上が十分得られず、所望の性能が得られない。また、Al成分の含有割合bが0.7を超えると、AlTiSiN層が岩塩型結晶構造を維持できず、硬さが極端に低下するため、望ましくない。Si成分の含有割合cが0.01未満では所望の耐摩耗性が発揮されず、0.1を超えると結晶格子の歪みが大きくなり、耐欠損性が低下するため好ましくない。
本発明における硬質被覆層と接するcBN粒子の表面形状は、通常、cBN粒子を造粒する過程で形成される凹部とは異なり、球面状の凹部を有している。ここで、球面状の凹部とは、cBN粒子上に形成した凹部の断面形状において、凹部の領域を挟む凸部と凸部を結んだ線を円弧に近似でき、曲率が求められる形状とする。cBN粒子上に凹凸を設けることで、皮膜と接触する表面積を増加させ、密着力を向上させることができるが、一方で、過剰な凹凸があると切削時に凹部に力が集中し、cBN粒子が破壊されやすくなる上、基体表面における皮膜のつきまわり性が損なわれ、所望の密着性が得られなくなる。凹部の形状を球面状に制御することで、凹部がcBN粒子の破壊の起点となることを防ぎ、さらに皮膜のつきまわり性も損ねず、皮膜と粒子の接触する表面積を大きくすることができる。
この凹部の形状は、除膜後に表面観察を実施し、特定する。具体的には、厚み0.1μm程度まで集束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)を用いた加工で皮膜を削り、その後、エッチングによって除膜し、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いてcBN粒子表面の形状を測定する。
前述のような方法により、凹部の形状を特定した場合、本発明において、硬質被覆層と接するcBN粒子の表面に形成される球面状の凹部の好ましい形状としては、幅が0.1〜1.0μm、深さが0.01〜0.1μmかつ幅をL、深さをDとしたときL≧2Dであり、凹部の断面形状において、凹部の領域を挟む凸部と凸部を結んだ線の曲率が0.1〜2μm−1以下であることが好ましい。幅が0.1μm未満あるいは曲率が2μm−1を超えると、凹部に力が集中しやすくなり、基体の強度が低下する。深さが0.1μmを超えると、cBN粒子が大きく削られるため、基体の強度が低下する。幅が1.0μmを超える場合あるいは深さが0.01μm未満か曲率が0.1μm−1未満であると、cBN粒子と皮膜の接触する表面積を十分大きくできず、所望の密着性向上効果が得られない。なお、L<2Dであると、凹部の断面形状において、凹部の領域を挟む凸部と凸部を結んだ線を円弧に近似できず、上記に示す曲率が求められない。
また、上記球面状の凹部は、硬質被覆層と接する立方晶窒化硼素粒子の表面積に対して面積割合で18〜78面積%を占めることがより好ましい。これは、18面積%未満では凹部が存在することによる密着性向上の効果が必ずしも十分でなく、一方で78面積%を超えると凹部同士が繋がってしまい、凹部の形状を制御することが困難になり、かえって硬質被覆層とcBN粒子の接触する表面積が低下するためである。
以上の手順にて複数の凹部について幅、深さ、曲率を求め、それらの値を平均したものを本発明工具のcBN粒子の表面に形成される球面状の凹部の形状とする。測定領域は、cBN粒子の平均粒径が0.5〜4.0μmであることをかんがみ、15μm×15μm程度の視野領域とすることが望ましく、測定領域内のcBN粒子上に形成した全ての凹部を測定する。また、凹部の表面積が硬質被覆層と接する立方晶窒化硼素粒子の表面積に対して占める面積割合についても、同じ測定領域内の各cBN粒子および凹部にて表面積を測定し、それらを平均することで算出する。
原料粉末として、0.5〜4.0μmの平均粒径を有するcBN粒子を硬質相形成用原料粉末として用意するとともに、いずれも0.3〜0.9μmの範囲内の平均粒径を有するTiN粉末、TiC粉末、TiCN粉末、Al粉末、AlN粉末、Al2O3粉末を結合相形成用原料粉末として用意する。
これら中からいくつかの原料粉末とcBN粉末の合量を100体積%としたときのcBN粒子の含有割合が40〜70体積%となるように表1に示される配合比で配合する。
次いで、この原料粉末をボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、成形圧100MPaで直径:50mm×厚さ:1.5mmの寸法にプレス成形し、ついでこの成形体を、圧力:1Pa以下の真空雰囲気中、900〜1300℃の範囲内の所定温度に保持して仮焼結し、その後、超高圧焼結装置に装入して、圧力:5GPa、温度:1200〜1400℃の範囲内の所定の温度で焼結することにより、cBN焼結体を作製する。
この焼結体をワイヤー放電加工機で所定寸法に切断し、Co:5質量%、TaC:5質量%、WC:残りの組成およびISO規格CNGA120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製インサート本体のろう付け部(コーナー部)に、質量%で、Cu:26%、Ti:5%、Ag:残りからなる組成を有するAg系ろう材を用いてろう付けし、上下面および外周研磨、ホーニング処理を施すことによりISO規格CNGA120408のインサート形状をもった本発明用の工具基体1〜6を製造する。
また、原料粉末としてのcBN粒子の平均粒径、cBN粒子の含有割合の少なくとも片方を前述の範囲外とすることによって比較品用の工具基体7〜12を製造した。
その結果を表1に示す。
前述の工程によって作製した工具基体1〜6に対して、図2に示したようなアークイオンプレーティング装置を用いて、硬質被覆層を形成した。
(a)工具基体1〜6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、アークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着する。また、カソード電極(蒸発源)として、所定組成のTi−Al合金およびTi−Al−Si合金を配置する。
(b)まず、装置内を排気して10−2Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、0.5〜2.0PaのArガス雰囲気に設定し、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−400〜−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、もって工具基体表面をアルゴンイオンによって5〜30分間ボンバード処理する。
(c)次に、Arガス圧力を2.0〜6.0Pa、工具基体に印加する直流バイアス電圧を−200〜−600Vに設定し、20〜120分間ボンバード処理する。
(d)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して2〜10Paの所定の反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−25〜100Vの所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Ti−Al合金からなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に90〜200Aの所定の電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表2に示される目標平均組成、目標平均層厚の(Ti,Al)N層を蒸着形成する。
(e)次いで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して同じく2〜10Paの所定の反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−25〜100Vの所定の直流バイアス電圧を印加し、かつ、前記Ti−Al−Si合金からなるカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に90〜200Aの所定の電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表2に示される目標平均組成、目標平均層厚の(Ti,Al,Si)N層を蒸着形成する。
前述したような(a)〜(e)の工程を経て、図1に示す本発明切削工具1〜6を製造する。
工具基体を作製する際、外周研磨、ホーニング処理等によって表面を研削することで硬さの小さい結合相が優先的に除去され、表面にcBN粒子が露出する。さらに、前記(b)〜(c)のように成膜前にボンバード処理を実施することで表面に露出するcBN粒子表面の凹部の形状を制御することができる。
硬質被覆層と接触するcBN粒子表面の凹部は、前述したアルゴンイオンによるボンバード処理によって形成される。凹部の形状は工具基体作製時の機械研磨処理と組み合わせることで制御する。すなわち、突起状の部分は削られやすいため、cBN粒子上の研磨筋を基点としてボンバードメント処理を実施することで凹部の形状を制御する。比較的低圧かつ高バイアスのボンバード処理では、アルゴンイオンが強くcBN粒子に叩きつけられるため、凹部の深さを優先して大きくすることができる。一方、比較的高圧かつ低バイアスのボンバード処理では、アルゴンイオンのcBN粒子に叩きつけられる力が相対的に小さくなるため、突起状の部分を優先的に削ることができ、凹部の幅を広く、曲率を小さく制御することができる。これらの操作を組み合わせることで、凹部の形状を制御する。工具基体に対して前述のような処理を行った後、所定の組成、構成にて硬質被覆層を成膜することで本発明の表面被覆切削工具を得る。
観察領域は、15μm×15μm程度であって、cBN焼結体中のcBN粒子および硬質被覆層の全体が観察できる倍率とする。
この二次電子画像から前述したような方法を用いて、cBN粒子の平均粒径、硬質被覆層の平均層厚を測定した。
また、前述した手順にて、除膜後のcBN粒子表面をAFMによって観察し、硬質被覆層と接触するcBN粒子表面の凹部の三次元形状を得た。得られた三次元形状から、前述の手順で凹部の幅と深さ、曲率およびcBN粒子の表面積に占める凹部の面積割合を算出した。そして、測定した凹部の幅と深さ、曲率の平均を求め平均幅、平均深さ、平均曲率を算出した。
また、図4には、cBN表面の凹部を、本発明で規定する球面状の凹部と判定したケース(図4(a),(b))と、本発明外の凹部形状と判定したケース(図4(c))のcBN表面形状の模式図を示す。
切削条件A:
被削材:クロム鋼鋼材SCr420の浸炭焼入れ材(HRC60)の丸棒、
切削速度:250m/min.、
切り込み:0.2mm、
送り:0.12mm、
の乾式連続切削、
切削条件B:
被削材:クロムモリブデン鋼鋼材SCM415の浸炭焼入れ材(HRC60)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:150m/min.、
切り込み:0.2mm、
送り:0.2mm、
の乾式断続切削、
という切削条件で、最大切削長を切削条件Aでは900m、切削条件Bでは1200mとし、切削長100m毎に刃先のチッピングと逃げ面摩耗量を評価した。
その結果を表4に示す。
Claims (2)
- 少なくとも切削に使用する刃先が立方晶窒化硼素焼結体からなる工具基体上に平均総層厚2.0〜8.0μmの硬質被覆層が被覆されており、
前記立方晶窒化硼素焼結体は、立方晶窒化硼素粒子と、Tiの窒化物、炭化物、炭窒化物、硼化物およびAlの窒化物、酸化物からなる群から少なくとも1種以上と不可避の不純物を含む結合相からなり、
前記立方晶窒化硼素粒子の平均粒径は0.5〜4.0μmかつ焼結体全体に対する含有割合は40〜70体積%であり、
前記硬質被覆層は、工具基体表面に形成したA層と、その上に形成したB層とからなり、
前記A層の組成は、Ti1−aAlaN(但し、0.3≦a≦0.7)であり、
前記B層の組成は、Ti1−b−cAlbSicN(但し、0.3≦b≦0.7、0.01≦c≦0.1)であり、
前記工具基体の逃げ面上において、硬質被覆層と接する立方晶窒化硼素粒子の表面に球面状の凹部が存在し、
前記凹部の表面積が、硬質被覆層と接する立方晶窒化硼素粒子の表面積に対して18〜78面積%を占めることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記立方晶窒化硼素粒子の表面に存在する球面状の凹部は、該凹部の幅Lが0.1〜1.0μm、深さDが0.01〜0.1μm、かつ、幅Lと深さDの比L/Dの値が2以上であり、さらに、該凹部の曲率が0.1〜2μm−1以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
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