JP5850400B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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この発明は、炭素鋼、合金鋼などの切削加工を、高熱発生を伴う高速切削条件で行った場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、表面被覆切削工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
例えば、特許文献1に示すように、被覆工具として、WC基超硬合金で構成された工具基体の表面に、AlとCrの複合窒化物[以下、(Al,Cr)Nで示す]層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆工具が知られており、かかる被覆工具においては、硬質被覆層を構成する前記(Al,Cr)N層が、すぐれた高温硬さ、耐熱性、高温強度、高温耐酸化性等を有することから、すぐれた切削性能を発揮することが知られている。
そして、上記従来の被覆工具は、例えば、物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング(AIP)装置に上記の工具基体を装入し、ヒータで工具基体を500℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成のAl−Cr合金がセットされたカソード電極との間に、電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、2Paの反応雰囲気とし、一方、上記工具基体には、−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記工具基体の表面に、上記(Al,Cr)N層を蒸着形成することにより製造し得ることが知られている。
ただ、近年の切削加工の高速化、高能率化に伴って、被覆工具には、耐欠損性、耐摩耗性の向上が求められており、これらの切削性能に応えるべく、種々の改善がなされているが、それらの一つとして、切削工具の残留応力を制御することにより耐欠損性、耐摩耗性を改善する提案もなされている。
例えば、特許文献2に示すように、周期律表の4a、5a、6a族元素、Si、Alの炭化物、窒化物、酸化物、硼化物およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種の単層または多層からなる硬質被覆層を被覆形成した被覆工具において、切れ刃近傍部の該硬質膜の残留圧縮応力をσAと表したとき、0GPa≦σA≦1.0GPaであり、中央部の該硬質膜の残留圧縮応力をσBと表したとき、1.5GPa≦σB≦2.5GPaである残留応力を形成することにより、被覆工具の耐欠損性、耐摩耗性の向上を図ることが提案されている。
そして、上記被覆工具は、プラズマ電流150A、Arガス流量50cc/min、Nガス流量100cc/min、Cガス流量10cc/min、成膜圧力0.53〜0.8Pa、バイアス電圧−150〜−200Vという物理蒸着法で作製し得ることが示されている。
また、例えば、特許文献3には、被覆工具ではなく、窒化珪素質焼結体からなる切削工具それ自体についてであるが、すくい面のノーズにて残留応力を2D法(2次元X線回折/フルデバイリングフィッティング法)で測定した際、すくい面に平行でかつすくい面の中心から測定点に最も近いノーズに向かう方向についての圧縮残留応力σ11を10〜30MPaとし、また、すくい面に平行でかつσ11方向と垂直な方向についての圧縮残留応力σ22を10MPa以下とすることによって、窒化珪素質焼結体からからなる切削工具の耐欠損性、耐摩耗性を向上させることが提案されている。
特許第3969230号明細書 特開2005−28520号公報 特開2010−264574号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と厳しい切削条件下で行われるようになってきている。
上記従来の被覆工具においては、ある程度の耐欠損性、耐摩耗性の向上は望み得るものの、これを炭素鋼、合金鋼などの、高熱発生を伴う高速切削加工に用いた場合には、依然として、欠損が発生しやすく、あるいは、摩耗損耗が大きくなり、これらを原因として、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、炭素鋼、合金鋼などの高速切削加工において、耐欠損性とともに耐摩耗性にもすぐれ、もって、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する被覆工具を提供すべく、硬質被覆層の残留応力の制御について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
従来、被覆工具を作製するにあたり、硬質被覆層の形成手段としては、化学蒸着法、物理蒸着法等が一般的に採用されており、そして、例えば、物理蒸着法の一種であるアークイオンプレーティング(AIP)法により硬質被覆層を成膜する際には、特許文献1として示したように、工具基体を装置内に装入し、所定のバイアス電圧を印加するとともに、装置内を所定温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成のAl−Cr合金ターゲットとの間にアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入し、所定圧の反応雰囲気中で蒸着することによって、硬質被覆層を成膜していた。
本発明者らは、上記従来のAIP法による(Al,Cr)Nからなる硬質被覆層の成膜に際し、工具基体とターゲット間に磁場をかけ、硬質被覆層の圧縮残留応力に及ぼす磁場の影響を調査検討したところ、AIP法による硬質被覆層の成膜を所定強度かつ所定分布を示す磁場中で行うことによって、硬質被覆層に形成される圧縮残留応力の値を制御することができ、そして、このようにして硬質被覆層の圧縮残留応力値を適正化した(Al,Cr)Nからなる硬質被覆層を備えた被覆工具は、炭素鋼、合金鋼などの高熱発生を伴う高速切削加工において、すぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、AlとCrの複合窒化物層からなる硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、
上記硬質被覆層は、平均膜厚が1〜10μm、AlとCrの合量に占めるCrの含有割合は0.2〜0.5(但し、原子比)であり、すくい面と逃げ面の交差稜線部から50μmの位置を中心位置とした半径50μmの範囲内の逃げ面のAlとCrの複合窒化物層について、2D法(2次元X線回折/フルデバイリングフィッティング法)により残留応力を測定した場合、
(a)上記交差稜線部と平行な方向の圧縮残留応力σ11は、0.5GPa≦σ11≦4.5GPaの関係を満足し、
(b)上記σ11と直交する方向の圧縮残留応力σ22は、0GPa≦σ22≦4.0GPaの関係を満足し、
(c)さらに、上記σ11と上記σ22は、σ11−σ22≧0.5GPaの関係を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆工具について詳細に説明する。
(a)硬質被覆層の種別、平均層厚:
この発明の硬質被覆層は、AlとCrの複合窒化物層((Al,Cr)N層)からなる。
上記(Al,Cr)N層は、Al成分が高温硬さと耐熱性を向上させ、Cr成分が高温強度を向上させ、さらにCrとAlの共存含有によって高温耐酸化性が向上することから、高温硬さ、耐熱性、高温強度及び高温耐酸化性にすぐれた硬質被覆層として既によく知られている。
本発明では、Alとの合量に占めるCrの含有割合(原子比、以下同じ)が0.2未満では、高速切削加工時の高温強度を確保することが困難となり、一方、Alとの合量に占めるCrの含有割合(原子比)が0.5を越えると、相対的にAlの含有割合が少なくなり、高温硬さの低下、耐熱性の低下を招き、その結果、偏摩耗の発生、熱塑性変形の発生等により耐摩耗性が劣化するようになることから、Alとの合量に占めるCrの含有割合(原子比)は、0.2〜0.5と定めた。
また、(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層の平均層厚は、1μm未満では、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮することができず、工具寿命短命の原因となり、一方、その平均層厚が10μmを越えると、刃先部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚は1〜10μmと定めた。
(b)硬質被覆層に形成される圧縮残留応力:
本発明では、上記(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層の逃げ面、特に、少なくとも、すくい面と逃げ面の交差稜線部(以下、「切れ刃稜線部」という)から50μmの位置を中心位置とした半径50μmの範囲内の逃げ面、において測定される圧縮残留応力の値σ11、σ22を所定の数値範囲に定め、かつ、σ11とσ22の相互の関係を規定することによって、耐欠損性、耐摩耗性の改善を図っている。
図1、図2を用いて説明すると、図1(a)はボールエンドミルの全体の概略図、図1(b)はボールエンドミルの先端の概略図、図2(a)はスクエアエンドミルの全体の概略図、図2(b)はスクエアエンドミル先端の概略図である。
図1(b)、図2(b)において、切れ刃稜線部と1点で接した半径50μmの範囲内の逃げ面のAlとCrの複合窒化物層において、2D法(2次元X線回折/フルデバイリングフィッティング法)により2方向の圧縮残留応力σ11、σ22を測定した。σ11は、測定範囲の円の中心から切れ刃稜線部との接点の方向、σ22は上記σ11と直交する方向の圧縮残留応力である。なお測定範囲は全て逃げ面の領域を含み、逃げ面の領域からはみ出さないものとする。
本発明によれば、σ11は、0.5GPa≦σ11≦4.5GPaの関係を満足し、σ22は、0GPa≦σ22≦4.0GPaの関係を満足し、さらに、上記σ11、σ22は、σ11−σ22≧0.5GPaの関係を満足することが必要である。
ここで、σ11が0.5GPa未満、また、σ22が0GPa未満(これは即ち、σ22が引張残留応力になることを意味する)であると、硬質被覆層の硬さが低くなるため、耐摩耗性が低下し、一方、σ11が4.5GPaを超え、また、σ22が4.0GPaを超えると、硬質被覆層が剥離を起こしやすくなることから、本発明では、σ11については、0.5GPa≦σ11≦4.5GPa、また、σ22については、0GPa≦σ22≦4.0GPaと定めた。
さらに、本発明では、σ11、σ22相互の関係について、σ11−σ22≧0.5GPaと定めたが、これは次のような理由による。
即ち、切削加工時にチッピング、欠損、摩耗を起こす力の方向(σ22の方向)に対して直交する方向(σ11の方向)に大きな圧縮残留応力が存在することで、このσ11が、チッピング、欠損、摩耗を発生させる力に対して抵抗する役割を果たすことによって、チッピング、欠損、摩耗の発生・進展を抑制する。
ただ、σ22が大きくなり、σ11とσ22の関係が、σ11−σ22<0.5GPaとなったような場合には、切れ刃稜線部に対して残留応力が集中することになるので、チッピング、欠損が発生しやすくなる。
したがって、本発明では、σ11、σ22相互の関係について、σ11−σ22≧0.5GPaと定めた。
(c)硬質被覆層の蒸着形成
この発明の硬質被覆層は、例えば、図3(a)、(b)に示すようなアークイオンプレーティング装置(AIP装置)を用い、工具基体の温度を370〜450℃に維持しつつ、工具基体をAIP装置内で自公転させ、ターゲット表面中心とターゲットに最近接した工具基体の逃げ面が平行となるように姿勢制御をしながら、ターゲットと工具基体間に所定の磁場を印加しながら蒸着することによって、形成することができる。
例えば、AIP装置の一方には基体洗浄用のTi電極からなるカソード電極、他方には70at%Al−30at%Cr合金からなるターゲット(カソード電極)を設け、
まず、炭化タングステン(WC)基超硬合金からなる工具基体を洗浄・乾燥し、AIP装置内の回転テーブル上に装着し、真空中で基体洗浄用のTi電極とアノード電極との間に100Aのアーク放電を発生させて、工具基体に−1000Vのバイアス電圧を印加しつつ工具基体表面をボンバード洗浄し、
ついで、Al−Cr合金ターゲットの表面最大磁場が2.5mT以上であって、かつ、アークスポットがターゲット外側に移動することで発生する異常放電発生を防止するように磁場を印加し、
ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入し9.3Paの雰囲気圧力とし、工具基体の温度を370〜450℃に維持し、工具基体に−50Vのバイアス電圧を印加しつつ、Al−Cr合金ターゲット(カソード電極)とアノード電極との間に100Aのアーク放電を発生させ、工具基体がターゲットに最接近した際には、逃げ面とターゲット面が平行となるように工具基体を支持して自公転させつつ蒸着することによって、本発明の圧縮残留応力を有する(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することができる。
なお、上記のAl−Cr合金ターゲットの表面最大磁場が2.5mT以上である場合に、アークスポットがターゲット外側に移動することで発生する異常放電発生防止を図るためには、例えば、図4(a)に示すように、ターゲットの背面側(工具基体に面しない側)に磁場発生源である電磁コイルを配置するとともに、ターゲットの周側に永久磁石(例えば、フェライト磁石)を配置する磁場印加手段を採用すればよく、これによって、図4(b)に示すように、ターゲットの磁場分布に凹の部分(図4(b)中に「矢印」で示す)を作り、その部分にアークスポットを集中させることで、ターゲットの表面最大磁場が2.5mT以上であっても、異常放電の発生を防止することができる。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層が(Al,Cr)N層からなるとともに、切れ刃稜線部近傍の逃げ面の硬質被覆層の圧縮残留応力の値σ11およびσ22が特定の数値範囲に維持され(0.5GPa≦σ11≦4.5GPa,0GPa≦σ22≦4.0GPa)、しかも、σ11とσ22が特定の関係を有する(σ11−σ22≧0.5GPa)ことによって、炭素鋼、合金鋼などの高熱発生を伴う高速切削加工において、すぐれた耐欠損性、耐摩耗性を発揮し、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮するのである。
(a)はボールエンドミルの全体の概略図、(b)はボールエンドミルの先端の概略図を示す。 (a)はスクエアエンドミルの全体の概略図、(b)はスクエアエンドミル先端の概略図を示す。 本発明の表面被覆切削工具を作製するための、AIP装置の概略説明図を示し、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。 本発明における異常放電発生防止のためのターゲットへの磁場印加手段一例を示し、(a)は、ターゲット、電磁コイルおよび永久磁石の位置関係の概略を示し、(b)は、工具基体側のターゲット表面に形成される磁場分布の概略を示す。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
ここでは、エンドミルに適用した場合について説明するが、これに限られるものではなく、インサート、ドリル等に対しても当然に適用できるものであることは言うまでもない。
原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mmの工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記丸棒焼結体から、研削加工にて、切刃部の直径×長さが6mm×13mmの寸法、並びにねじれ角30度の2枚刃ボール形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)A〜C及び、2枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)D,Eをそれぞれ製造した。
(a)上記の工具基体A〜Eのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図3に示すAIP装置の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、AIP装置の一方にボンバード洗浄用のTiカソード電極を、他方側に所定組成のAl−Cr合金からなるターゲット(カソード電極)を配置し、
(b)まず、装置内を排気して真空に保持しながら、ヒーターで工具基体を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Tiカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)ついで、図4に示すように、ターゲットの背面に電磁コイルを配置するとともに、ターゲット周側にフェライト磁石を配置した上記Al−Cr合金ターゲットに、表面最大磁場が2.5〜7.0mTの範囲内となるように表2に示す種々の磁場を印加し、
(d)ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して9.3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体の温度を370〜450℃の範囲内に維持するとともに−50Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記Al−Cr合金ターゲットとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記工具基体の表面に、表1に示される組成および目標平均層厚の(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、
本発明被覆工具としての表面被覆エンドミル1〜10(以下、本発明1〜10という)をそれぞれ製造した。硬質被覆層の組成は、EPMAを用いて逃げ面の切れ刃稜線部から50μmの位置で5点測定を行い、それらの平均値から算出した。
なお、図3に示すAIP装置では、工具基体がAl−Cr合金ターゲットに最接近する際に、逃げ面とAl−Cr合金ターゲット面が平行となるように装着支持されている。
比較例:
比較の目的で、上記の工具基体(エンドミル)A〜Eに対して、上記実施例における(c)の条件を変更し(例えば、磁場を形成しないもの、ターゲット周側にフェライト磁石を配置しないで磁場を形成したもの、磁場の大きさが2.5mT未満であるもの等)て、その他は実施例と同一の条件で、比較例被覆工具としての表面被覆エンドミル(以下、比較例1〜10という)をそれぞれ製造した。
上記で作製した本発明1〜10および比較例1〜10について、エンドミル先端から2.0mmにおける切れ刃稜線部と1点で接した半径50μmの範囲内の逃げ面のAlとCrの複合窒化物層において、2D法(2次元X線回折/フルデバイリングフィッティング法)により2方向の圧縮残留応力σ11、σ22を測定した。σ11は、測定範囲の円の中心から切れ刃稜線部との接点の方向、σ22は上記σ11と直交する方向の圧縮残留応力である。
2D法(2次元X線回折/フルデバイリングフィッティング法)とは、2次元に広がる回折線全体を同時に検出することでデバイリング全体の歪みから全応力成分を算出する方法である。
σ11、σ22については、それぞれ5点測定を行い、その測定値の平均値をσ11、σ22とした。
表2、表3に、上記で測定・算出したσ11,σ22,σ11−σ22の値を示す。
なお、具体的な残留応力測定条件は、概ね、以下のとおりである。
解析法:2D法(2次元X線回折/フルデバイリングフィッティング法)
X線源:Cu−Kα線 出力=50kV,22mA
X線回折ピーク:2θ=80°(220)面のピークを使用
なお、(Al,Cr)Nのポアソン比=0.200、ヤング率=300000MPaを用いて残留応力を算出した。



つぎに、上記本発明1〜10および比較例1〜10のエンドミルについて、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S55Cの板材、
切削速度: 284 m/min.、
溝深さ(切り込み): 2.0 mm、
切削幅: 0.3 mm
送り: 2000 mm/min.、
切削長:340m、
の条件(切削条件Aという)での炭素鋼の高速溝切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。なお逃げ面摩耗幅が0.2mmを超えた場合は寿命とみなし、その時の切削長を記録した。
この測定結果を表4に示した。

表4に示される結果から、σ11,σ22,σ11−σ22の値が、本発明で規定した関係を満足する(Al,Cr)Nからなる硬質被覆層を備えた本発明被覆工具は、炭素鋼、合金鋼などの高熱発生を伴う高速切削加工においてすぐれた耐欠損性とともにすぐれた耐摩耗性を発揮することが分かる。
これに対して、硬質被覆層の残留圧縮応力の値が本発明で規定する範囲を外れた比較例被覆工具では、チッピング、欠損の発生あるいは耐摩耗性の低下によって、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、炭素鋼、合金鋼などの高速切削加工ばかりでなく、一般鋼などの通常条件での切削加工に供した場合でも長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであり、さらに、ミーリング加工ばかりでなく、旋削加工、ドリル加工用の被覆工具としても適用できるものである。














Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金で構成された工具基体の表面に、AlとCrの複合窒化物層からなる硬質被覆層が形成されている表面被覆切削工具において、上記硬質被覆層は、平均膜厚が1〜10μm、AlとCrの合量に占めるCrの含有割合は0.2〜0.5(但し、原子比)であり、すくい面と逃げ面の交差稜線部から50μmの位置を中心位置とした半径50μmの範囲内の逃げ面のAlとCrの複合窒化物層について、2D法により残留応力を測定した場合、
    (a)上記交差稜線部と平行な方向の圧縮残留応力σ11は、0.5GPa≦σ11≦4.5GPaの関係を満足し、
    (b)上記σ11と直交する方向の圧縮残留応力σ22は、0GPa≦σ22≦4.0GPaの関係を満足し、
    (c)さらに、上記σ11と上記σ22は、σ11−σ22≧0.5GPaの関係を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。
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