JP2016165788A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

表面被覆切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP2016165788A
JP2016165788A JP2015047647A JP2015047647A JP2016165788A JP 2016165788 A JP2016165788 A JP 2016165788A JP 2015047647 A JP2015047647 A JP 2015047647A JP 2015047647 A JP2015047647 A JP 2015047647A JP 2016165788 A JP2016165788 A JP 2016165788A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
cutting
coated
tool
hard coating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015047647A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6471546B2 (ja
Inventor
英利 淺沼
Hidetoshi Asanuma
英利 淺沼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2015047647A priority Critical patent/JP6471546B2/ja
Publication of JP2016165788A publication Critical patent/JP2016165788A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6471546B2 publication Critical patent/JP6471546B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Abstract

【課題】炭素鋼、合金鋼、高硬度鋼等を、高熱発生を伴う高速切削条件で切削した場合にもすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供する。
【解決手段】WC基超硬合金、TiCN基サーメットからなる工具基体の表面に総層厚0.5〜10μmの硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具において、硬質被覆層は、A層とB層の交互積層構造からなり、A層は、組成式:(AlCr1−a)N(ただし、aは原子比)で表した場合に、0.50≦a≦0.70を満足し、B層は、組成式:(AlCr1−b)N(ただし、bは原子比)で表した場合に、0.75≦b≦0.99を満足し、A層の一層当たりの層厚をx(nm)、B層の一層当たりの層厚をy(nm)としたとき、5y≧x≧3y、かつ、250(nm)≧x+y≧100(nm)を満足する表面被覆切削工具
【選択図】図1

Description

本発明は、表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関し、さらに詳しくは、例えば、炭素鋼、合金鋼、高硬度鋼等の高熱発生を伴う高速切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や高硬度鋼などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるインサート、被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、またインサートを着脱自在に取り付けてソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うインサート式エンドミル工具などが知られている。
そして、耐摩耗性に優れるという点から、炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメット等からなる工具基体の表面に、物理蒸着の一種であるアークイオンプレーティング法により、AlとCrの複合窒化物(以下、(Al,Cr)Nで示す)を硬質被覆層として被覆形成した被覆工具が従来から知られている。
例えば、特許文献1には、基体の表面に、組成(AlCr1−y)Xの少なくとも1層を硬質被覆層として被覆した切削工具であって、Xは、N、C、B、CN、BN、CBN、NO、CO、BO、CNO、BNOまたはCBNOであり、かつ、yは0.2≦y<0.7を満足することにより、六方晶構造が形成されず、立方晶構造の硬質被覆層であって、耐摩耗性を改善した被覆工具が提案されている。
そして、前記特許文献1で提案されている被覆工具の硬質被覆層は、例えば、図2に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に工具基体を装入し、ヒーターで工具基体を、450〜500℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を有するAl−Cr合金がセットされたカソード電極(蒸発源)との間に、電流:90〜100Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して窒素雰囲気とし、一方、前記工具基体には、例えば、−100〜−200Vのバイアス電圧を印加した条件で、工具基体の表面に蒸発した粒子を蒸着させることにより(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層が形成されることも知られている。
特許文献2には、切削工具基体の表面に、硬質被覆層が蒸着形成された被覆工具において、硬質被覆層は、(Cr,Al)N層または(Cr,Al,M)N層(但し、Mは、SiまたはBから選ばれる1種または2種の元素)を備え、該(Cr,Al)N層、(Cr,Al,M)N層は、立方晶構造からなる薄層Aと、立方晶構造と六方晶構造の混在する薄層Bの交互積層構造から構成され、各層におけるAl含有割合を原子比Xで表した場合、薄層AにおけるXは0.25≦X≦0.65、一方、薄層BにおけるXは0.75≦X≦0.95とすることにより、高速切削加工において、潤滑性と耐摩耗性にすぐれた被覆工具が提案されている。
そして、前記特許文献2で提案されている被覆工具の硬質被覆層は、例えば、図1に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に工具基体を装入し、一方側のカソード電極(蒸発源)として、所定成分組成の薄層A形成用Cr−Al−M合金、他方側のカソード電極(蒸発源)として、同じく所定成分組成をもった薄層B形成用Cr−Al−M合金を前記回転テーブルを挟んで対向配置し、それぞれのカソード電極(蒸発源)で、アーク放電を交互に繰り返し行うことにより、立方晶構造からなる薄層Aと、立方晶構造と六方晶構造の混在する薄層Bの交互積層構造が形成されることも知られている。
特表2006−524748号公報 特開2009−101474号公報
近年の切削加工装置の自動化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらには低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記従来の被覆工具においては、これを炭素鋼、合金鋼などの通常の切削加工条件で行うのに用いた場合には、格別の問題はないが、これを、特に高熱発生を伴う高速切削加工条件で行うのに用いた場合には、硬質被覆層の耐熱性不足、硬さ不足が原因で、摩耗進行がきわめて速く、このため比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者は、前述のような観点から、炭素鋼、合金鋼、高硬度鋼等の高熱発生を伴う高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具を開発すべく、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
(Al,Cr)N層において、その構成成分であるAlは、高温硬さと耐熱性を向上させ、Crは、耐溶着性と高温強度を向上させ、かつ、Al成分との共存含有によって、高温耐酸化性向上にも寄与し、その結果、(Al,Cr)N層は、すぐれた高温硬さと高温強度を示す。
しかし、(Al,Cr)N層を、
組成式:(AlCr1−b)N
で表した時、Al含有割合を示すbの値(但し、原子比)が0.75以上になると、通常は、六方晶構造の(Al,Cr)N結晶粒が形成されるようになる(例えば、前記特許文献1,2参照)ため、(Al,Cr)N層全体としての硬度が低下し、その結果、耐摩耗性が低下する。
そこで、本発明者は、Al含有割合を示すbの値(但し、原子比)が0.75以上である(Al,Cr)N層(以下、「B層」という場合もある)を単層として形成するのではなく、B層よりもAl含有割合が少ない立方晶構造を有する(Al,Cr)N層(以下、「A層」という場合もある)との交互積層構造として形成し、しかも、上記A層およびB層の層厚を、それぞれ適正範囲にコントロールすることによって、B層の結晶構造を六方晶ではなく立方晶構造に維持し得ることを見出したのである。
つまり、Al含有割合を高めた場合でも、(Al,Cr)N層全体を立方晶構造とすることができるため、得られた硬質被覆層は高硬度を有すると同時に耐熱性にすぐれ、これを工具基体表面に被覆形成した被覆工具は、炭素鋼、合金鋼、高硬度鋼等の高熱発生を伴う高速切削加工ですぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に総層厚0.5〜10μmの硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具において、
(a)前記硬質被覆層は、A層とB層の交互積層構造からなり、
(b)前記A層は、組成式:(AlCr1−a)N(ただし、aは原子比)で表した場合に、0.50≦a≦0.70を満足し、
(c)前記B層は、組成式:(AlCr1−b)N(ただし、bは原子比)で表した場合に、0.75≦b≦0.99を満足し、
(d)前記A層の一層当たりの層厚をx(nm)、前記B層の一層当たりの層厚をy(nm)としたとき、5y≧x≧3y、かつ、250(nm)≧x+y≧100(nm)を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。」
を特徴とする。
次に、本発明の被覆工具の硬質被覆層について、より詳細に説明する。
硬質被覆層の組成:
硬質被覆層のA層を構成する(Al,Cr)N層は、組成式:(AlCr1−a)N(ただし、aは原子比)で表した場合に、Alの含有割合を示すaの値が0.50未満では、相対的にCrの割合が多くなって、すぐれた耐溶着性と高温強度は得られるものの十分な硬さを確保することができなくなり、一方、aの値が0.70を超えると、六方晶構造の(Al,Cr)N結晶粒が形成されるようになるため、高温硬さが低下し、すぐれた耐摩耗性を発揮することができなくなる。
したがって、本発明では、A層を構成する(AlCr1−a)Nにおけるaの値を0.50≦a≦0.70と定めた。
また、前記A層とともに硬質被覆層の交互積層構造を形成するB層は、その組成を組成式:(AlCr1−b)N(ただし、bは原子比)で表した場合に、0.75≦b≦0.99を満足することが必要である。
上記B層におけるbの値を0.75以上とすることによって、硬質被覆層が高Al含有量となるため耐熱性が向上する。しかし、bの値が0.99を超えると、Cr含有量の相対的な減少によって高温強度が低下するとともに、層中に六方晶構造の(Al,Cr)N結晶粒が増加するため、硬さも低下し、耐摩耗性が低下傾向を示すようになる。
したがって、本発明では、B層を構成する(AlCr1−b)Nにおけるbの値を、0.75≦b≦0.99と定めた。
ここで注目すべきことは、上記B層と同一の組成を有する層(即ち、Alの含有割合が0.75以上0.99以下)を、A層との交互積層構造ではなく、それ自体単独の硬質被覆層として形成した場合には、(Al,Cr)N結晶粒の多くが六方晶構造の結晶粒となるため、硬質被覆層の硬さが大幅に低下し、耐摩耗性を発揮することはできない。
しかし、本発明では、上記A層とB層の層厚をそれぞれ適正範囲となるように定めて交互積層構造とすることによって、B層のAl含有割合を0.75以上0.99以下と高めた場合であっても、B層を六方晶ではなく立方晶構造のものとして形成することができる。
A層とB層の交互積層構造からなる硬質被覆層:
交互積層構造を構成するA層の一層の平均層厚をx(nm)、また、同じく交互積層構造を構成するB層の一層の平均層厚をy(nm)とした場合に、5y≧x≧3yとする。
xが3y未満であると、硬質被覆層中に占めるAlの含有割合が高いB層の占める割合が大きくなり、硬さの低い六方晶結晶構造の結晶粒が生成しやすくなって硬質被覆層の硬度が低下し、一方、xが5yを超えると、Alの含有割合が高いB層の占める割合が低下し、十分な耐熱性を発揮することができなくなる。
したがって、本発明では、A層の一層平均層厚xとB層の一層平均層厚yとの関係が、5y≧x≧3yを満足するように定める。
さらに、交互積層構造からなる硬質被覆層がより高い硬度を示すようにするためには、上記A層とB層のユニット厚さx+y(即ち、一層のA層と一層のB層をユニットとした場合の合計層厚)が100(nm)以上で250(nm)以下となるようにする。
上記ユニット厚さが100(nm)未満である場合には、相対的にB層の一層平均層厚yが小さくなり、硬質被覆層の耐熱性向上効果が少なくなり、一方、ユニット厚さが250(nm)を超えるようになると、B層において六方晶構造の結晶粒が生成しやすくなり、その結果、硬質被覆層の硬度低下を招くようになるためである。
したがって、本発明では、A層とB層のユニット厚さx+yを、250(nm)≧x+y≧100(nm)を満足するように定める。
硬質被覆層の総層厚:
前記交互積層構造からなる硬質被覆層の総層厚が0.5μm未満であると、長期の使用にわたって十分な耐摩耗性を発揮することができず、一方、総層厚が10μmを超えると、切削加工時にチッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生しやすくなることから、硬質被覆層の総層厚は、0.5〜10μmと定めた。
本発明の被覆工具によれば、工具基体表面に形成された硬質被覆層が、組成式:(AlCr1−a)N(ただし、aは原子比であって、0.50≦a≦0.70を満足する)で表されるA層と、組成式:(AlCr1−b)N(ただし、bは原子比であって、0.75≦b≦0.99を満足する)で表されるB層との交互積層構造として構成され、さらに、A層の一層当たりの層厚x(nm)と、B層の一層当たりの層厚y(nm)が、5y≧x≧3y、かつ、250(nm)≧x+y≧100(nm)の関係を満足することから、硬質被覆層はすぐれた耐熱性と高硬度を有し、その結果、炭素鋼、合金鋼、高硬度鋼等の高熱発生を伴う高速切削加工においても、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷を発生知ることなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
本発明被覆工具および比較被覆工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いたアークイオンプレーティング装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。 従来技術を説明する従来のアークイオンプレーティング装置の概略説明図である。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
なお、ここでは、炭化タングステン(WC)基超硬合金を工具基体とする被覆工具について述べるが、炭窒化チタン(TiCN)基サーメットを工具基体とした場合も同様である。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、VC粉末、Cr粉末、、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、ISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A−1〜A−3を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体B−1〜B−3を形成した。
(a)ついで、前記工具基体A−1〜A−3、B−1〜B−3のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部に沿って装着し、前記回転テーブルを挟んで対向する位置に、A層形成用Al−Cr合金およびB層形成用Al−Cr合金からなるカソード電極(蒸発源)を配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1 Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を600℃に加熱した後、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Al−Cr合金(カソード電極)とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)次に装置内雰囲気を0.5〜9.0Paの窒素雰囲気に保持して、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−20〜−150Vの直流バイアス電圧を印加し、カソード電極(蒸発源)であるA層形成用のAl−Cr合金電極とアノード電極との間に50〜250Aの電流を流してアーク放電を発生させて所定層厚のA層を形成し、次いで、B層形成用のAl−Cr合金電極とアノード電極との間に50〜250Aの電流を流してアーク放電を発生させて所定層厚のB層を形成し、これを交互に繰り返し行うことにより、表3に示される目標組成、目標層厚のA層とB層の交互積層構造からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、
本発明被覆工具としての表面被覆インサート(以下、本発明被覆インサートと云う)1〜10を製造した。
また、比較の目的で、
(a)前記工具基体A−1〜A−3、B−1〜B−3のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部に沿って装着し、前記回転テーブルを挟んで対向する位置に、カソード電極として異なる組成を有するAl−Cr合金(以下、それぞれを、C層形成用Al−Cr合金,D層形成用Al−Cr合金)を配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1 Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を600℃に加熱した後、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、Al−Cr合金(カソード電極)とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)次に装置内雰囲気を0.5〜9.0Paの窒素雰囲気に保持して、回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−20〜−150Vの直流バイアス電圧を印加し、カソード電極(蒸発源)であるC層形成用Al−Cr合金電極とアノード電極との間に50〜250Aの電流を流してアーク放電を発生させて所定組成のC層を蒸着形成し、次いで、D層形成用Al−Cr合金電極とアノード電極との間に50〜250Aの電流を流してアーク放電を発生させて所定組成のD層を蒸着形成することにより、表4に示される目標組成、目標層厚の交互積層からなる硬質被覆層を蒸着形成し、
比較被覆工具としての表面被覆インサート(以下、比較被覆インサートと云う)1〜5を製造した。
次いで、本発明被覆インサート1〜10、比較被覆インサート1〜5について、その硬質被覆層の交互積層構造を示す各層の組成を、硬質被覆層縦断面を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散型X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、上記の硬質被覆層の交互積層構造を示す各層の平均層厚を、透過型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表3、表4に、これらの測定値を示す。
次に、本発明被覆インサート1〜10および比較被覆インサート1〜5について、以下の切削条件で切削試験を行い、いずれの高速切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削条件A:
被削材:JIS・SCM420(HB300)の丸棒、
切削速度: 230m/min.、
切り込み: 0.25mm、
送り: 0.3mm/rev.、
切削時間: 5分、
の条件での合金鋼の連続高速切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、180m/min.、0.25 mm/rev.)。
切削条件B:
被削材:JIS・S50C(HB190)の丸棒、
切削速度: 260 m/min.、
切り込み: 0.2 mm、
送り: 0.35 mm/rev.、
切削時間: 5分、
の条件での炭素鋼の連続高速切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、190 m/min.、0.30 mm/rev.)。
切削条件C:
被削材:JIS・SKD11(HRC61)の丸棒、
切削速度: 100 m/min.、
切り込み: 0.2 mm、
送り: 0.25 mm/rev.、
切削時間: 3分、
の条件での高硬度鋼の連続高速切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、65 m/min.、0.1 mm/rev.)。
表5に、この測定結果を示す。





実施例1と同様、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、VC粉末、Cr粉末、およびCo粉末からなる原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、直径が13mmの工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の丸棒焼結体から、研削加工にて、切刃部の直径×長さが10mm×22mmの寸法、並びにねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)A−1〜A−3をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(エンドミル)A−1〜A−3の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、実施例1と同一の条件で、表6に示される目標組成、目標層厚のA層とB層の交互積層構造からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬製エンドミル(以下、本発明被覆エンドミルと云う)1〜6をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、前記工具基体(エンドミル)A−1〜A−3の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、実施例1と同様の工程で、表7に示される目標組成、目標層厚の交互積層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、比較被覆工具としての表面被覆超硬製エンドミル(以下、比較被覆エンドミルと云う)1〜5をそれぞれ製造した。
次いで、本発明被覆エンドミル1〜6、比較被覆エンドミル1〜5について、その硬質被覆層の交互積層構造を示す各層の組成を、硬質被覆層縦断面を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散型X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、上記の硬質被覆層の交互積層構造を示す各層の平均層厚を、透過型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表6、表7に、これらの測定値を示す。
つぎに、本発明被覆エンドミル1〜6および比較被覆エンドミル1〜5について、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmの、JIS・SCM420(HB300)の板材、
切削速度: 250m/min.、
溝深さ(切り込み):15mm、
テーブル送り: 830mm/min.、
の条件(切削条件D)での合金鋼の湿式高速溝切削加工試験(通常の切削速度およびテーブル送りは、それぞれ、195m/min.、660mm/min.)、
を行い、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。
この測定結果を表6、表7にそれぞれ示した。


表5〜7に示される結果から、本発明被覆工具は、工具基体の表面にそれぞれ所定の組成、層厚のA層とB層の交互積層構造からなる硬質被覆層が形成されていることによって、硬質被覆層がすぐれた耐熱性と高硬度を有することから炭素鋼、合金鋼、高硬度鋼等の高速切削加工において、チッピング、欠損、剥離等の異常損傷の発生を招くことなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する。
これに対して、硬質被覆層を構成する層のいずれかが本発明で規定した組成、層厚等から外れる比較被覆工具においては、耐摩耗性が十分でなく、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の被覆工具は、炭素鋼、合金鋼、高硬度鋼等の高速切削加工ばかりでなく、一般的な被削材の切削加工においても、すぐれた耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の自動化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に総層厚0.5〜10μmの硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具において、
    (a)前記硬質被覆層は、A層とB層の交互積層構造からなり、
    (b)前記A層は、組成式:(AlCr1−a)N(ただし、aは原子比)で表した場合に、0.50≦a≦0.70を満足し、
    (c)前記B層は、組成式:(AlCr1−b)N(ただし、bは原子比)で表した場合に、0.75≦b≦0.99を満足し、
    (d)前記A層の一層当たりの層厚をx(nm)、前記B層の一層当たりの層厚をy(nm)としたとき、5y≧x≧3y、かつ、250(nm)≧x+y≧100(nm)を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。
JP2015047647A 2015-03-10 2015-03-10 表面被覆切削工具 Active JP6471546B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015047647A JP6471546B2 (ja) 2015-03-10 2015-03-10 表面被覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015047647A JP6471546B2 (ja) 2015-03-10 2015-03-10 表面被覆切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016165788A true JP2016165788A (ja) 2016-09-15
JP6471546B2 JP6471546B2 (ja) 2019-02-20

Family

ID=56897207

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015047647A Active JP6471546B2 (ja) 2015-03-10 2015-03-10 表面被覆切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6471546B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20220297198A1 (en) * 2021-03-18 2022-09-22 Tungaloy Corporation Coated cutting tool

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006524748A (ja) * 2003-04-28 2006-11-02 ユナキス・バルツェルス・アクチェンゲゼルシャフト AlCr含有の硬質材料層を有する工作物および製造方法
US20090075114A1 (en) * 2007-07-13 2009-03-19 Hauzer Techno Coating Bv Method for the manufacture of a hard material coating on a metal substrate and a coated substrate
JP2009101474A (ja) * 2007-10-24 2009-05-14 Mitsubishi Materials Corp 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009101491A (ja) * 2007-10-25 2009-05-14 Mitsubishi Materials Corp 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009101490A (ja) * 2007-10-25 2009-05-14 Mitsubishi Materials Corp 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006524748A (ja) * 2003-04-28 2006-11-02 ユナキス・バルツェルス・アクチェンゲゼルシャフト AlCr含有の硬質材料層を有する工作物および製造方法
US20090075114A1 (en) * 2007-07-13 2009-03-19 Hauzer Techno Coating Bv Method for the manufacture of a hard material coating on a metal substrate and a coated substrate
JP2009101474A (ja) * 2007-10-24 2009-05-14 Mitsubishi Materials Corp 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009101491A (ja) * 2007-10-25 2009-05-14 Mitsubishi Materials Corp 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009101490A (ja) * 2007-10-25 2009-05-14 Mitsubishi Materials Corp 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20220297198A1 (en) * 2021-03-18 2022-09-22 Tungaloy Corporation Coated cutting tool
US11931811B2 (en) * 2021-03-18 2024-03-19 Tungaloy Corporation Coated cutting tool

Also Published As

Publication number Publication date
JP6471546B2 (ja) 2019-02-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6011249B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5594576B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5594577B2 (ja) 表面被覆切削工具
WO2014061292A1 (ja) 表面被覆切削工具
JP5440345B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP6376466B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5445847B2 (ja) 高速重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5429693B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5440346B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP6503818B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP6471546B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5035527B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4244377B2 (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP2011240438A (ja) 耐熱性および耐溶着性にすぐれた表面被覆切削工具
JP5459618B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4244379B2 (ja) 高速切削加工で表面被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP5975338B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5686254B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5077743B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5440350B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4120499B2 (ja) 高速切削加工で表面被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP5688686B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5975343B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5688685B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4257512B2 (ja) 高速切削加工で表面被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170926

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180613

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180622

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180808

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180827

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181225

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190107

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6471546

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150