JP5838769B2 - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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本発明は、硬質被覆層を構成する粒子の結晶構造をコントロールすることで、結晶粒を微細化し、皮膜硬度の向上を可能とし、先端摩耗が進行しやすい炭素鋼等の高速重切削という厳しい切削条件下で用いた場合でも、硬質被覆層がすぐれた耐熱亀裂性、耐溶着欠損性および耐摩耗性を示し、切削工具の長寿命化が可能となる表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、またスローアウエイチップを着脱自在に取り付けてソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
具体的な被覆工具としては、例えば、炭化タングステン基(以下、WC基で示す)超硬合金または炭窒化チタン基(以下、TiCN基で示す)サーメット等で構成された工具基体の表面に硬質皮膜を蒸着形成し、被覆工具の耐摩耗性、工具寿命の改善を図ったものが一般的に知られている。
例えば、特許文献1に示すように、工具基体表面に、(Al,Ti1−x)(N1−y)、但し0.56≦x≦0.75、0.6≦y≦1で示される化学組成からなり、且つNaCl型の結晶構造を有する厚さ0.8〜1.0μmの耐高温酸化性にすぐれた高硬度耐摩耗性皮膜が形成された被覆工具が知られている。
また、特許文献2、3に示すように、TiN、TiCN等の皮膜にAlを含有させ耐摩耗性、耐酸化性を向上させることも知られている。
特に、特許文献3においては、Al含有量を0.56〜0.75at%とし、Al含有量が0.75を超えてAlリッチになるとTiNのような立方晶ではなく、ウルツァイト型(B4)構造(六方晶に属する)の結晶に変態してしまい、このウルツァイト型(B4)構造は硬さが低く切削工具には不適であることが示されている。
特許2959760号公報 特公平4−53642号公報 特公平5−67705号公報
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴って切削加工は一段と高効率化する傾向にあるが、前記従来被覆工具においては、これを通常条件での切削加工に用いた場合には問題はないが、これを特に、炭素鋼や合金鋼等の高硬度被削材の、高い発熱を伴い、かつ、切刃に高負荷が作用する高送り、高切込みの高速重切削条件で用いた場合には、切削時に発生する高熱によって硬質被覆層が過熱されることにより、高温硬さの低下が生じるとともに、耐酸化性が不足し、その結果、耐摩耗性の低下が避けられないことに加えて、硬質被覆層の靭性が十分でないため、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、炭素鋼等の高硬度被削材の、高熱を発生し、かつ、切刃に対して高負荷が作用する高速連続高切込み切削加工若しくは断続重切削加工で用いた場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性靭性および耐酸化性を発揮する被覆工具を開発すべく、前記従来被覆工具に着目し研究を行った結果、以下の知見を得た。
(イ)従来被覆工具の硬質被覆層をAlTiNで構成した場合、AlTiNは、TiNにAlを添加することにより、TiNのもつ硬度および靭性に加え耐酸化性を向上させた皮膜であるが、Al含有量が60at%を超えると結晶構造が硬質の立方晶から軟質の六方晶に変化し始めることが指摘されている。
そこで、本発明者らは、硬質被覆層を構成するAlTiNの更なる耐酸化性向上を目的としたAl含有量の増加(60at%超)を実施するとともに窒素分圧を変えることにより基体界面近傍のAlTiNを構成する立方晶と六方晶の存在割合をコントロールして、その上に形成されるAlTiNの結晶粒が微細化し皮膜硬度が飛躍的に向上するとともに、Al含有量の増加(60at%超)による耐酸化性の向上と相乗して、高硬度被削材の、高熱を発生し、かつ、切刃に対して高負荷が作用する高速連続高切込み切削加工若しくは断続重切削加工においてもすぐれた切削性能を示すことを見出した。
(ロ)即ち、平均層厚0.5〜15μmであって、かつ、組成式:(AlTi1−x)N(ここで、xはAlの含有割合を示し、原子比で、0.60≦x≦0.75である)を満足するAlとTiの複合窒化物層であり、
(ハ)工具基体界面から0.3μmまでの厚みにおける前記複合窒化物層について、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いた結晶構造の面解析を行った場合に、六方晶の占める面積(hcp)と立方晶の占める面積(fcc)との面積比(hcp/fcc)が、0.03≦hcp/fcc<0.2の条件を満足するようにした。すなわち、立方晶の占める面積の20%を超えない範囲で六方晶が占める面積が観察されるように六方晶を形成した。
(ニ)前記の条件を満足するとき、界面付近の複合窒化物に六方晶粒が微量に存在することになり、その上に形成される複合窒化物の立方晶の粗大化が抑制され、立方晶の柱状粒を微細化することが可能になる。
(ホ)その結果、硬度が上昇し、耐摩耗性が向上する。
(ヘ)さらに、前記のようにAlの含有量を従前の硬質被覆層より多くしたことにより、耐酸化性が向上する。
つまり、本発明者らは、所定の組成と平均層厚を有する(AlTi1−x)N層からなる硬質被覆層を構成し、且つ、工具基体界面近傍に、六方晶の占める面積(hcp)と立方晶の占める面積(fcc)との面積比(hcp/fcc)が、0.03≦hcp/fcc<0.2の条件を満足するように六方晶粒が微量に存在する場合には、立方晶の粗大化が抑制され、立方晶の柱状粒を微細化することが可能であって、その結果、高熱発生を伴い、かつ、切刃に対して高負荷が作用する高切込みの高速重切削条件において、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性および耐酸化性を発揮することを見出した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、蒸着層からなる硬質被覆層が形成された表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が、
(a)0.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(AlTi1−x)N(ここで、xはAlの含有割合を示し、原子比で、0.60≦x≦0.75である)を満足するAlとTiの複合窒化物層からなり、
(b)前記工具基体の界面から0.3μmの厚みにおける前記複合窒化物層について、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いた結晶構造の面解析を行った場合に、六方晶の占める面積(hcp)と立方晶の占める面積(fcc)との面積比(hcp/fcc)が、0.03≦hcp/fcc<0.2の条件を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、本発明の被覆工具の硬質被覆層について説明する。
(a)硬質被覆層の組成
硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層の構成成分であるAl成分には硬質被覆層における高温硬さを向上させ、同Ti成分には高温強度を向上させる作用があるが、Alの割合を示すx値がTiとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.60未満になると、所定の耐酸化性を確保することができず、これが耐摩耗性低下の原因となり、一方、Alの割合を示すx値が同0.75を越えると、相対的にTiの含有割合が減少し、高速重切削加工で必要とされる高温強度を確保することができず、耐摩耗性が低下することから、x値を0.60〜0.75と定めた。
(b)硬質被覆層の平均層厚
また、硬質被覆層の平均層厚が0.5μm未満では、自身のもつすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するには不十分であり、一方、その平均層厚が15μmを越えると、前記の高速重切削では切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜15μmと定めた。
(c)工具基体界面から0.3μmまでの厚みにおける硬質被覆層
工具基体の界面から0.3μmまでの厚みにおける複合窒化物層について、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いた結晶構造の面解析を行った場合に、六方晶の占める面積(hcp)と立方晶の占める面積(fcc)との面積比(hcp/fcc)が、0.03≦hcp/fcc<0.2の条件を満足するように立方晶と六方晶の存在割合を後述する方法によりコントロールする。
こうすることにより、複合窒化物層のAl含有量が前記(a)のように、60at%以上と高含有量であるにも係わらず、界面付近に存在する微量の六方晶粒の影響により、立方晶粒の粗大化が抑制され、立方晶の柱状粒を微細化することができ、硬度および靭性が向上するため耐摩耗性が向上する。しかも、Alを従来の硬質被覆層に比べ多量(60at%以上)に含有している結果、耐酸化性が向上する。
したがって、本発明は、これまで両方を同時に向上させることが難しかった耐摩耗性と耐酸化性とを工具基体界面近傍における立方晶と六方晶の存在割合をコントロールするという、まったく新規な着想により実現したものである。
ここで、前記(c)において、六方晶を工具基体界面付近(厚み0.3μm以内)に0.03≦hcp(六方晶の占める面積)/fcc(立方晶の占める面積)<0.2の条件を満足するように存在させる技術的意義をさらに詳しく説明すると、前記の条件を満足するとき、界面付近に六方晶粒が微量に存在することになり、立方晶の粗大化成長が抑制される。この抑制効果により立方晶粒の微細化が促進され皮膜全体において、微細かつ緻密な結晶組織を構成し、従前の皮膜に比べ硬さが向上する。しかしながら、hcp/fccの値が0.2を超えると相対的に軟質の六方晶粒の割合が多くなるため、立方晶粒がもつ硬質の特性が低下するため好ましくない。したがって、工具基体界面付近(厚み0.3μm以内)における六方晶と立方晶は、0.03≦hcp(六方晶の占める割合)/fcc(立方晶の占める割合)<0.2の条件を満足するように存在させる。
なお、hcp(六方晶の占める割合)/fcc(立方晶の占める割合)の値の下限については、0.03以上であれば、前述の効果を奏することができるが、工具基体界面の六方晶の有意な効果を特定する際には、0.1<hcp(六方晶の占める割合)/fcc(立方晶の占める割合)<0.2とすることが好ましい。
このような硬質被覆層は、例えば、図1に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に基体を装入し、ヒーターで装置内を、例えば、500℃の温度に加熱した状態で、装置内に所定組成のAl−Ti合金からなるカソード電極(蒸発源)を配置し、アノード電極とカソード電極(蒸発源)との間に、例えば、電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば、2.5〜3.5Paの反応雰囲気とし、一方、基体には、例えば、−100Vのバイアス電圧を印加した条件で蒸着することに形成することができる。
そして、工具基体界面近傍における立方晶と六方晶の存在割合をコントロールするには、成膜中の窒素分圧を2.5〜3.5Paの範囲で調整することにより、窒素分圧が低圧側の時、立方晶の割合が多い皮膜が成膜され、一方、窒素分圧が高圧側の時、六方晶の割合が多い皮膜が成膜される。
本発明の被覆工具は、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、蒸着層からなる硬質被覆層が形成された表面被覆切削工具において、硬質被覆層が、(a)0.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(AlTi1−x)N(ここで、xはAlの含有割合を示し、原子比で、0.60≦x≦0.75である)を満足するAlとTiの複合窒化物層からなり、(b)工具基体の界面から0.3μmまでの厚みにおける複合窒化物層について、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いた結晶構造の面解析を行った場合に、六方晶の占める面積(hcp)と立方晶の占める面積(fcc)との面積比(hcp/fcc)が、0.03≦hcp/fcc<0.2の条件を満足することにより、立方晶の粗大化成長が抑制され、微細化が促進されるため、耐摩耗性および耐酸化性を向上させることができる。
被覆工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いたアークイオンプレーティング装置の概略正面図である。 本発明チップ1の硬質被覆層の断面を透過型電子顕微鏡で観察した時の撮像写真を示す。 比較チップ1の硬質被覆層の断面を透過型電子顕微鏡で観察した時の撮像写真を示す。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、Co粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、VC粉末、Cr粉末、およびWC粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・SEEN1203AFEN1のチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A1〜A5、および 焼結後、切刃部分にR:0.8のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408−MSのチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A6〜A10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するCo粉末、Ni粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、MoC粉末、WC粉末およびTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・SEEN1203AFEN1のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体B1〜B3および、焼結後、切刃部分にR:0.8のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408−MSのチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体B4〜B6を形成した。
(a)ついで、前記工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、前記回転テーブルを挟んで相対向する両側にカソード電極(蒸発源)を配置し、カソード電極(蒸発源)として所定組成のAl−Ti合金を配置し、また、ヒーターと対向する側にTiボンバード洗浄用カソード電極(蒸発源)としてTi合金を配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつTiボンバード洗浄用カソード電極のTi合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をTiボンバード洗浄し、
(c)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表3に示す2.5〜3.5Paの窒素ガス分圧の反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極のAl−Ti合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表3に示される目標組成で(Al,Ti)N層を0.3μmの目標層厚で蒸着形成した後、前記カソード電極(蒸発源)とアノード電極との間のアーク放電を停止し、
(d)ついで、装置内に反応ガスとして、窒素ガスを導入して(c)における反応雰囲気よりも減圧した表3に示す窒素ガス分圧の反応雰囲気とすると共に、カソード電極のAl−Ti合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させる。このようにして、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表3に示される目標層厚の(Al,Ti)N層を蒸着形成することにより、
ISO・SEEN1203AFEN1および、ISO・CNMG120408−MSに規定するスローアウエイチップ形状の本発明被覆工具1〜16(以下、本発明チップ1〜16という)をそれぞれ製造した。
さらに、本発明チップ1〜16について、電子後方散乱回折装置(EBSD)を用いた(Al,Ti)N層の結晶構造の面解析を行い、工具基体界面から0.3μmの厚みの任意の領域における六方晶の占める面積(hcp)と立方晶の占める面積(fcc)を求め、その面積比の値hcp/fccを算出した。これらの値を、表3に示す。
比較の目的で、前記工具基体A1〜A10およびB1〜B6のそれぞれを、本発明と同様な方法でTiボンバード洗浄し、次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して表4に示す1〜4Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極のAl−Ti合金とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表4に示される目標組成、目標層厚の(Al,Ti)N層を蒸着形成することにより、 ISO・SEEN1203AFEN1および、ISO・CNMG120408−MSに規定するスローアウエイチップ形状の比較被覆工具1〜16(以下、比較チップ1〜16という)をそれぞれ製造した。
なお、比較チップ1〜16について、実施例と同様に、電子後方散乱回折装置(EBSD)を用いた(Al,Ti)N層の結晶構造の面解析を行い、工具基体界面から0.3μmの厚みの領域の断面における六方晶の占める面積(hcp)と立方晶の占める面積(fcc)を求め、その面積比の値hcp/fccを算出した。これらの値を、表4に示した。
つぎに、前記各種の被覆チップを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明チップ1〜5,11〜13および比較チップ1〜5,11〜13について、
被削材:JIS・S55Cの丸棒、
切削速度:330m/min.、
切り込み:2.5mm、
送り:0.25mm/rev.、
の条件(切削条件A)での炭素鋼の乾式高速連続高切込み切削加工試験(通常の切削速度、切込みは、送りは、それぞれ、180m/min.、1.5mm、0.10 mm/rev.)、
を行い、切刃の逃げ面摩耗幅0.2mmに達するまでの切削時間(分)を測定した。この測定結果を同じく表5に示した。
また、前記各種の被覆チップを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明チップ6〜10,14〜16および比較チップ6〜10,14〜16について、
被削材:平面寸法100mm×250mm 厚さ50mmの
JIS・SCM440の板材、
切削速度:250m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.20mm/rev.、
切削時間:3分、
の条件(切削条件Bという)での合金鋼の乾式断続重切削加工試験(通常の切削速度、切り込み及び送りは、それぞれ、150m/min.、1.0mm、0.10mm/rev.)を行い、切刃の逃げ面摩耗幅0.2mmに達するまでの切削長(m)を測定した。この測定結果を表5に示した。
この結果得られた本発明被覆工具としての本発明チップ1〜16の硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層の組成、並びに、比較被覆工具としての比較チップ1〜16の硬質被覆層を構成する(Al,Ti)N層の組成を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、前記硬質被覆層を構成する各層の平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
さらに、本発明チップ1および比較チップ1の硬質被覆層の断面を透過型電子顕微鏡で観察した時の撮像写真を図2および図3に示す。これらの図から分かるように、本発明の硬質被覆層は、工具基体から成長する立方晶が微細化されているのに対して、比較例の硬質被覆層は、工具基体から成長する立方晶が粗大化していることが分かる。
表3〜5に示される結果から、本発明の被覆工具は、炭素鋼や合金鋼等の高硬度被削材を、高熱発生を伴い、かつ、切刃に高負荷が作用する高速重切削条件や断続重切削加工で加工した場合にも、硬質被覆層がすぐれた硬度、靭性および耐酸化性を有し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、比較例の被覆工具においては、高硬度被削材を高速重切削条件や断続重切削加工で加工した場合、硬さ、靭性、耐酸化性等の不足が原因で、溶着、チッピング等が発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
なお、被覆チップばかりでなく、被覆エンドミル、被覆ドリルを作製し、同様な切削試験を行ったところ、被覆エンドミル、被覆ドリルについても、被覆チップの場合と同様な結果が得られた。
前述のように、本発明の被覆工具は、一般鋼や普通鋳鉄などの切削加工は勿論のこと、炭素鋼や合金鋼等の高硬度被削材の高い発熱を伴うとともに、切刃に高負荷が作用する高速重切削加工や断続重切削加工に用いた場合でも、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性および耐酸化性を発揮し、すぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、蒸着層からなる硬質被覆層が形成された表面被覆切削工具において、
    前記硬質被覆層が、
    (a)0.5〜15μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(AlTi1−x)N(ここで、xはAlの含有割合を示し、原子比で、0.60≦x≦0.75である)を満足するAlとTiの複合窒化物層からなり、
    (b)前記工具基体の界面から0.3μmの厚みにおける前記複合窒化物層について、電子線後方散乱回折装置(EBSD)を用いた結晶構造の面解析を行った場合に、六方晶の占める面積(hcp)と立方晶の占める面積(fcc)との面積比(hcp/fcc)が、0.03≦hcp/fcc<0.2の条件を満足することを特徴とする表面被覆切削工具。
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