JP2011104737A - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】高硬度鋼の高速重切削加工条件下において、硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層として、立方晶構造のNbNと六方晶構造のNbNの混合組織からなり、かつ、該混合組織についてX線回折による回折ピーク強度を調査したとき、立方晶構造のNbNの(200)面からの回折ピーク強度をIc、また、六方晶構造のNbNの(103)面と(110)面からの回折ピーク強度をIhとした場合、0.05≦Ic/Ih≦1.0を満足する回折ピーク強度比を有する表面被覆切削工具。
【選択図】 図1
【解決手段】WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層として、立方晶構造のNbNと六方晶構造のNbNの混合組織からなり、かつ、該混合組織についてX線回折による回折ピーク強度を調査したとき、立方晶構造のNbNの(200)面からの回折ピーク強度をIc、また、六方晶構造のNbNの(103)面と(110)面からの回折ピーク強度をIhとした場合、0.05≦Ic/Ih≦1.0を満足する回折ピーク強度比を有する表面被覆切削工具。
【選択図】 図1
Description
この発明は、軸受鋼、合金工具鋼、浸炭焼入れ鋼等の高硬度被削材を、高熱発生を伴い、かつ、切刃に高負荷が作用する高送り、高切込みの高速重切削条件で加工した場合にも、硬質被覆層がすぐれた潤滑性と高硬度を有し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
具体的な被覆工具としては、例えば、炭化タングステン基(以下、WC基で示す)超硬合金または炭窒化チタン基(以下、TiCN基で示す)サーメット等で構成された工具基体の表面に硬質皮膜を蒸着形成し、被覆工具の耐摩耗性、工具寿命の改善を図ったものが一般的に知られている。
例えば、特許文献1に示すように、工具基体表面に、ZrN、HfN、NbN、TaN、MoN、WNからなる一種以上の固体潤滑膜を形成し、この固体潤滑膜と硬質皮膜との組み合わせにより、耐凝着性を高めた被覆工具が知られている。
また、特許文献2に示すように、工具基体表面に、h− [(V,Cr,Nb,Ta)a(Ti,Zr,Hf,Al,Si)1−a](N,C,O,B)bで表した場合、0.5≦b≦1.0でかつ六方晶構造を有する硬質被覆層を形成することにより、耐摩耗性を改善した被覆工具が知られている。
また、特許文献3に示されるように、硬質被覆層をX線回折により測定した場合、六方晶構造の窒化ニオブの(103)面からの回折ピーク強度と六方晶構造の窒化ニオブの(110)面からの回折ピーク強度の合計量「Ih」と、立方晶構造の窒化ニオブの(220)面からの回折ピーク強度「Ic」との比の値Ih/Icを2.0以下とすることにより、Ti合金の切削加工に適した被覆工具が提供されることが記載されている。
例えば、特許文献1に示すように、工具基体表面に、ZrN、HfN、NbN、TaN、MoN、WNからなる一種以上の固体潤滑膜を形成し、この固体潤滑膜と硬質皮膜との組み合わせにより、耐凝着性を高めた被覆工具が知られている。
また、特許文献2に示すように、工具基体表面に、h− [(V,Cr,Nb,Ta)a(Ti,Zr,Hf,Al,Si)1−a](N,C,O,B)bで表した場合、0.5≦b≦1.0でかつ六方晶構造を有する硬質被覆層を形成することにより、耐摩耗性を改善した被覆工具が知られている。
また、特許文献3に示されるように、硬質被覆層をX線回折により測定した場合、六方晶構造の窒化ニオブの(103)面からの回折ピーク強度と六方晶構造の窒化ニオブの(110)面からの回折ピーク強度の合計量「Ih」と、立方晶構造の窒化ニオブの(220)面からの回折ピーク強度「Ic」との比の値Ih/Icを2.0以下とすることにより、Ti合金の切削加工に適した被覆工具が提供されることが記載されている。
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴って切削加工は一段と高効率化する傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、これを通常条件での切削加工に用いた場合には問題はないが、これを特に、軸受鋼、合金工具鋼、浸炭焼入れ鋼等の高硬度被削材の、高い発熱を伴い、かつ、切刃に高負荷が作用する高送り、高切込みの高速重切削条件で用いた場合には、切削時に発生する高熱によって硬質被覆層が過熱されることにより、高温硬さの低下が生じるとともに、潤滑性が不足し、その結果、耐摩耗性の低下が避けられず、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、高熱を発生し、かつ、切刃に対して高負荷が作用する高速重切削条件で用いた場合にも、硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮する被覆工具を開発すべく、上記の従来被覆工具に着目し研究を行った結果、以下の知見を得た。
(イ)被覆工具の硬質被覆層を窒化ニオブで構成した場合、窒化ニオブからなる硬質被覆層は、高硬度及び高靭性を備え、かつ、化学的安定性にも優れることが一般的に知られているが、高硬度被削材を、高熱発生を伴うとともに切刃に高負荷が作用する高速重切削条件で使用した場合には、その硬度、靭性は十分であるとはいえない。
そこで、本発明者等は、窒化ニオブが有する複数の化合物形態、複数の結晶構造について詳細に検討したところ、特定の結晶構造からなる窒化ニオブが、特定の割合で混合した混合組織からなる窒化ニオブ層は、一段と優れた高温硬さと高靭性を備え、かつ、高温条件下での高硬度被削材との潤滑性に優れることを見出したのである。
そこで、本発明者等は、窒化ニオブが有する複数の化合物形態、複数の結晶構造について詳細に検討したところ、特定の結晶構造からなる窒化ニオブが、特定の割合で混合した混合組織からなる窒化ニオブ層は、一段と優れた高温硬さと高靭性を備え、かつ、高温条件下での高硬度被削材との潤滑性に優れることを見出したのである。
(ロ)即ち、窒化ニオブには、その化合物形態、結晶構造として、β−Nb2N(六方晶),γ−Nb4N3(正方晶),δ−NbN(立方晶),δ’−NbN(六方晶),ε−NbN(六方晶),η−NbN(六方晶)等があるが、アークイオンプレーティングにより窒化ニオブを成膜するにあたり、例えば、窒素圧力を9.3Paとした条件でバイアス電圧を付加し成膜したところ、図1に示すように、バイアス電圧が0〜−60Vでは、立方晶構造の窒化ニオブ(以下、これをc−NbNで示す)が優先的に成膜されるが、バイアス電圧を高くし、−70V以上のバイアス電圧範囲で成膜したところ、六方晶構造の窒化ニオブ(以下、これをh−NbNで示す)が優先的に成膜されるようになり、硬質被覆層としては、c−NbNとh−NbNの混合組織からなる窒化ニオブが成膜された。
なお、上記成膜したc−NbNとh−NbNについての結晶構造は、例えば、Kα照射によるX線回折を行い、その回折ピーク強度位置によって確認することができる。
なお、上記成膜したc−NbNとh−NbNについての結晶構造は、例えば、Kα照射によるX線回折を行い、その回折ピーク強度位置によって確認することができる。
(ハ)さらに、本発明者等は、バイアス電圧を適正範囲に維持してアークイオンプレーティングで窒化ニオブ層を成膜した場合に、硬質被覆層は所定比率のc−NbNとh−NbNが存在する混合組織となり、そして、所定比率の混合組織からなる窒化ニオブによって硬質被覆層を構成した場合には、高熱発生を伴い、かつ、切刃に対して高負荷が作用する高送り、高切込みの高速重切削条件において、硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、
硬質被覆層が、立方晶構造の窒化ニオブ(c−NbN)と六方晶構造の窒化ニオブ(h−NbN)の混合組織として構成され、かつ、該混合組織についてX線回折による回折ピーク強度を測定したとき、
立方晶構造の窒化ニオブ(c−NbN)の(200)面からの回折ピーク強度をIc、
六方晶構造の窒化ニオブ(h−NbN)の(103)面と(110)面からの回折ピーク強度をIhとした場合、
0.05≦Ic/Ih≦1.0
を満足する回折ピーク強度比を有することを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
「炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、
硬質被覆層が、立方晶構造の窒化ニオブ(c−NbN)と六方晶構造の窒化ニオブ(h−NbN)の混合組織として構成され、かつ、該混合組織についてX線回折による回折ピーク強度を測定したとき、
立方晶構造の窒化ニオブ(c−NbN)の(200)面からの回折ピーク強度をIc、
六方晶構造の窒化ニオブ(h−NbN)の(103)面と(110)面からの回折ピーク強度をIhとした場合、
0.05≦Ic/Ih≦1.0
を満足する回折ピーク強度比を有することを特徴とする表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆工具の硬質被覆層について説明する。
この発明の硬質被覆層は、c−NbN(立方晶構造の窒化ニオブ)とh−NbN(六方晶構造の窒化ニオブ)の混合組織として構成するが、このような混合組織からなる硬質被覆層は、例えば、以下の条件のアークイオンプレーティングによって形成することができる。
成膜条件:
カソード電極: 金属Nb
反応ガス: N2、
反応ガス圧力: 1.0〜30 Pa、
バイアス電圧: −70〜−200 V、
そして、蒸着形成された上記c−NbNとh−NbNの混合組織からなる窒化ニオブ層について、Kα照射によるX線回折を行い、c−NbNの(200)面からの回折ピーク強度をIc、また、h−NbNの(103)面と(110)面からの回折ピーク強度をIhとして、回折ピーク強度比Ic/Ihの値を求めると、Ic/Ihは0.05〜1.0となる。
図1から明らかなように、この回折ピーク強度Ic,Ihの値は、上記アークプレーティング法における成膜条件の内のバイアス電圧によって変化し、その結果、回折ピーク強度比Ic/Ihの値(即ち、c−NbNとh−NbNとの混合比率)も、上記アークプレーティング法におけるバイアス電圧によって大きく影響される。
そして、バイアス電圧が−70V未満の場合には、c−NbNの形成割合が高くh−NbNの形成が少ないため、回折ピーク強度比Ic/Ih>1.0となるが、c−NbNの混合比率が増加すると硬質被覆層の硬さを低下させ、耐摩耗性が劣化傾向を示すようになる。
一方、バイアス電圧が−200Vを超えると、優先的にh−NbNが形成され、c−NbNの形成割合が低下するため、回折ピーク強度比が0.05>Ic/Ihとなるが、h−NbNの混合比率の増加によって硬質被覆層の硬さ、高硬度被削材に対する潤滑性は大となるものの、半面、硬質被覆層の靭性の低下が生じるため、重切削加工においてチッピングが発生しやすくなる。
したがって、この発明では、c−NbNとh−NbNとの混合比率を表す回折ピーク強度比Ic/Ihの値を0.05〜1.0と定めた。
カソード電極: 金属Nb
反応ガス: N2、
反応ガス圧力: 1.0〜30 Pa、
バイアス電圧: −70〜−200 V、
そして、蒸着形成された上記c−NbNとh−NbNの混合組織からなる窒化ニオブ層について、Kα照射によるX線回折を行い、c−NbNの(200)面からの回折ピーク強度をIc、また、h−NbNの(103)面と(110)面からの回折ピーク強度をIhとして、回折ピーク強度比Ic/Ihの値を求めると、Ic/Ihは0.05〜1.0となる。
図1から明らかなように、この回折ピーク強度Ic,Ihの値は、上記アークプレーティング法における成膜条件の内のバイアス電圧によって変化し、その結果、回折ピーク強度比Ic/Ihの値(即ち、c−NbNとh−NbNとの混合比率)も、上記アークプレーティング法におけるバイアス電圧によって大きく影響される。
そして、バイアス電圧が−70V未満の場合には、c−NbNの形成割合が高くh−NbNの形成が少ないため、回折ピーク強度比Ic/Ih>1.0となるが、c−NbNの混合比率が増加すると硬質被覆層の硬さを低下させ、耐摩耗性が劣化傾向を示すようになる。
一方、バイアス電圧が−200Vを超えると、優先的にh−NbNが形成され、c−NbNの形成割合が低下するため、回折ピーク強度比が0.05>Ic/Ihとなるが、h−NbNの混合比率の増加によって硬質被覆層の硬さ、高硬度被削材に対する潤滑性は大となるものの、半面、硬質被覆層の靭性の低下が生じるため、重切削加工においてチッピングが発生しやすくなる。
したがって、この発明では、c−NbNとh−NbNとの混合比率を表す回折ピーク強度比Ic/Ihの値を0.05〜1.0と定めた。
なお、この発明でいう「h−NbNの(103)面と(110)面からの回折ピーク強度Ih」は、図1からも分かるように、2θ≒61.9°に出現する(103)面からのX線回折強度と、2θ≒62.6°に出現する(110)面からのX線回折強度との合計に相当する値である。
この発明では、回折ピーク強度比Ic/Ihの値を0.05〜1.0の範囲に維持することによって、軸受鋼、合金工具鋼、浸炭焼入れ鋼等の高硬度被削材を、高熱発生を伴い、かつ、切刃に対して高負荷が作用する高送り、高切込みの高速重切削条件において切削加工する場合でも、硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮することによって、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を維持することができる。
なお、c−NbNとh−NbNとの混合組織からなるこの発明の硬質被覆層は、その平均層厚が0.3μm未満では、長期に亘ってすぐれた潤滑性、耐摩耗性を発揮することができず、工具寿命が短命化し、一方、その平均層厚が8.0μmを超えるとチッピングを発生しやすくなることから、平均層厚は0.3〜8.0μmとすることが望ましい。
なお、c−NbNとh−NbNとの混合組織からなるこの発明の硬質被覆層は、その平均層厚が0.3μm未満では、長期に亘ってすぐれた潤滑性、耐摩耗性を発揮することができず、工具寿命が短命化し、一方、その平均層厚が8.0μmを超えるとチッピングを発生しやすくなることから、平均層厚は0.3〜8.0μmとすることが望ましい。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層を、立方晶構造の窒化ニオブ(c−NbN)と六方晶構造の窒化ニオブ(h−NbN)の混合組織として構成し、かつ、X線回折により該混合組織について回折ピーク強度を測定したとき、立方晶構造の窒化ニオブ(c−NbN)の(200)面からの回折ピーク強度Icと、六方晶構造の窒化ニオブ(h−NbN)の(103)面と(110)面からの回折ピーク強度Ihとの回折ピーク強度比Ic/Ihを、0.05〜1.0と定めたことにより、軸受鋼、合金工具鋼、浸炭焼入れ鋼等の高硬度被削材を、高熱発生を伴い、かつ、切刃に対して高負荷が作用する高送り、高切込みの高速重切削条件において用いた場合でも、硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮することによって、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を維持するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A1〜A10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体B1〜B6を形成した。
ついで、上記の工具基体A1〜A10およびB1〜B6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、アークイオンプレーティング装置の回転テーブル上に装着し、アークイオンプレーティング装置のカソード電極として金属Nbを装着し、また、ボンバード洗浄用カソード電極として金属Tiも装着し、
まず装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加して、ボンバード洗浄用カソード電極の金属Tiとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をTiボンバード洗浄し、
ついで、装置内に反応ガスとして、窒素ガスを導入して表3に示される反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表3に示される直流バイアス電圧を印加して、金属Nbカソード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、表3に示される目標層厚の窒化ニオブ層を蒸着形成することにより、
ISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状の本発明被覆工具1〜16(以下、本発明チップ1〜16という)をそれぞれ製造した。
まず装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加して、ボンバード洗浄用カソード電極の金属Tiとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をTiボンバード洗浄し、
ついで、装置内に反応ガスとして、窒素ガスを導入して表3に示される反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表3に示される直流バイアス電圧を印加して、金属Nbカソード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、表3に示される目標層厚の窒化ニオブ層を蒸着形成することにより、
ISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状の本発明被覆工具1〜16(以下、本発明チップ1〜16という)をそれぞれ製造した。
比較の目的で、上記の工具基体A1〜A10およびB1〜B6のそれぞれを、本発明と同様な方法でTiボンバード洗浄し、
ついで、装置内に反応ガスとして、窒素ガスを導入して表4に示される反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表4に示される直流バイアス電圧を印加して、金属Nbカソード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、表4に示される目標層厚の窒化ニオブ層を蒸着形成することにより、
ISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状の比較例被覆工具1〜16(以下、比較例チップ1〜16という)をそれぞれ製造した。
ついで、装置内に反応ガスとして、窒素ガスを導入して表4に示される反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に表4に示される直流バイアス電圧を印加して、金属Nbカソード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、表4に示される目標層厚の窒化ニオブ層を蒸着形成することにより、
ISO・CNMG120408に規定するスローアウエイチップ形状の比較例被覆工具1〜16(以下、比較例チップ1〜16という)をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明チップ1〜16および比較例チップ1〜16のそれぞれの硬質被覆層について、Kα照射によるX線回折を行い、c−NbNの(200)面からの回折ピーク強度Ic、また、h−NbNの(103)面からの回折ピーク強度Ihを求め、回折ピーク強度比Ic/Ihの値を算出した。
この算出値を表3、表4に示す。
なお、図1には、比較例チップ1(バイアス電圧−50V)、本発明チップ5(バイアス電圧−100V)、本発明チップ10(バイアス電圧−200V)、比較例チップ10(バイアス電圧−300V)について測定したX線回折チャートを示す。
表3、表4から、本発明チップ1〜16の回折ピーク強度比Ic/Ihの値は、いずれも0.05〜1.0の範囲内であるのに対して、比較例チップ1〜16の回折ピーク強度比Ic/Ihの値は、いずれも0.05〜1.0の範囲を外れたものであることが分かる。
この算出値を表3、表4に示す。
なお、図1には、比較例チップ1(バイアス電圧−50V)、本発明チップ5(バイアス電圧−100V)、本発明チップ10(バイアス電圧−200V)、比較例チップ10(バイアス電圧−300V)について測定したX線回折チャートを示す。
表3、表4から、本発明チップ1〜16の回折ピーク強度比Ic/Ihの値は、いずれも0.05〜1.0の範囲内であるのに対して、比較例チップ1〜16の回折ピーク強度比Ic/Ihの値は、いずれも0.05〜1.0の範囲を外れたものであることが分かる。
つぎに、上記の各種の被覆チップを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明チップ1〜16および比較例チップ1〜16について、
被削材:JIS・SKD61(HRC60)の丸棒、
切削速度:130 m/min.、
切り込み:0.2 mm、
送り:0.15 mm/rev.、
切削時間:2 分、
の条件(切削条件A)での焼入れ合金鋼の乾式高速高送り切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、100m/min.、0.1mm/rev.)、
被削材:JIS・SCM420(HRC61)の丸棒、
切削速度:190 m/min.、
切り込み:0.25 mm、
送り:0.1 mm/rev.、
切削時間:3 分、
の条件(切削条件B)での浸炭焼入れ合金鋼の乾式高速高切込み切削加工試験(通常の切削速度および切込みは、それぞれ、170m/min.、0.2mm)、
被削材:JIS・SUJ3(HRC60)の丸棒、
切削速度:200 m/min.、
切り込み:0.25 mm、
送り:0.15 mm/rev.、
切削時間:2 分、
の条件(切削条件B)での焼入れ軸受鋼の乾式高速高送り・高切込み切削加工試験(通常の切削速度、送りおよび切込みは、それぞれ、180m/min.、0.1mm/rev.、0.2mm)、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
被削材:JIS・SKD61(HRC60)の丸棒、
切削速度:130 m/min.、
切り込み:0.2 mm、
送り:0.15 mm/rev.、
切削時間:2 分、
の条件(切削条件A)での焼入れ合金鋼の乾式高速高送り切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、100m/min.、0.1mm/rev.)、
被削材:JIS・SCM420(HRC61)の丸棒、
切削速度:190 m/min.、
切り込み:0.25 mm、
送り:0.1 mm/rev.、
切削時間:3 分、
の条件(切削条件B)での浸炭焼入れ合金鋼の乾式高速高切込み切削加工試験(通常の切削速度および切込みは、それぞれ、170m/min.、0.2mm)、
被削材:JIS・SUJ3(HRC60)の丸棒、
切削速度:200 m/min.、
切り込み:0.25 mm、
送り:0.15 mm/rev.、
切削時間:2 分、
の条件(切削条件B)での焼入れ軸受鋼の乾式高速高送り・高切込み切削加工試験(通常の切削速度、送りおよび切込みは、それぞれ、180m/min.、0.1mm/rev.、0.2mm)、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表5に示した。
表3〜5に示される結果から、本発明の被覆工具は、軸受鋼、合金工具鋼、浸炭焼入れ鋼等の高硬度被削材を、高熱発生を伴い、かつ、切刃に高負荷が作用する高送り、高切込みの高速重切削条件で加工した場合にも、硬質被覆層がすぐれた潤滑性と高硬度を有し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、比較例被覆工具においては、高硬度被削材を高速重切削条件で加工した場合、硬さ、潤滑性、靭性の不足によって、溶着、チッピング等の発生によって、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
なお、被覆チップばかりでなく、被覆エンドミル、被覆ドリルを作成し、同様な切削試験を行ったところ、被覆エンドミル、被覆ドリルについても、被覆チップの場合と同様な結果が得られた。
なお、被覆チップばかりでなく、被覆エンドミル、被覆ドリルを作成し、同様な切削試験を行ったところ、被覆エンドミル、被覆ドリルについても、被覆チップの場合と同様な結果が得られた。
上述のように、この発明の被覆工具は、一般鋼や普通鋳鉄などの切削加工は勿論のこと、軸受鋼、合金工具鋼、浸炭焼入れ鋼等の高硬度被削材の高い発熱を伴うとともに、切刃に高負荷が作用する高速重切削加工に用いた場合でも、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性、耐チッピング性を発揮し、すぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、硬質被覆層が蒸着形成された表面被覆切削工具において、
硬質被覆層が、立方晶構造の窒化ニオブと六方晶構造の窒化ニオブの混合組織として構成され、かつ、該混合組織についてX線回折による回折ピーク強度を測定したとき、
立方晶構造の窒化ニオブの(200)面からの回折ピーク強度をIc、
六方晶構造の窒化ニオブの(103)面と(110)面からの回折ピーク強度をIh、
とした場合、
0.05≦Ic/Ih≦1.0
を満足する回折ピーク強度比を有することを特徴とする表面被覆切削工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009263876A JP2011104737A (ja) | 2009-11-19 | 2009-11-19 | 表面被覆切削工具 |
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JP2009263876A JP2011104737A (ja) | 2009-11-19 | 2009-11-19 | 表面被覆切削工具 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011104737A true JP2011104737A (ja) | 2011-06-02 |
Family
ID=44228828
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Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
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Country Status (1)
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JP (1) | JP2011104737A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104023882A (zh) * | 2011-12-26 | 2014-09-03 | 三菱综合材料株式会社 | 硬质包覆层发挥优异的耐崩刀性及耐磨损性的表面包覆切削工具 |
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-
2009
- 2009-11-19 JP JP2009263876A patent/JP2011104737A/ja not_active Withdrawn
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