JP2007307690A - 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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和則 佐藤
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Abstract

【課題】高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体の表面に、(a)2〜10μmの平均層厚を有し、かつ、組成式:(Al1−XCr)N(ただし、原子比で、Xは0.2〜0.4を示す)を満足する蒸着形成されたAlとCrの複合窒化物層からなる下部層、(b)下部層の表面に設けた、0.3〜1μmの平均層厚を有する蒸着形成されたAlとCrの合金層からなる表面層、以上(a)、(b)で構成された硬質被覆層を備えた表面被覆切削工具。
【選択図】 なし

Description

この発明は、鋼や鋳鉄などを高速条件下で切削加工した場合に、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
一般に、被覆工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
また、被覆工具として、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された工具基体の表面に、
組成式:(Al1−XCr)N(ただし、原子比で、Xは0.2〜0.4を示す)、
を満足するAlとCrの複合窒化物[以下、(Al,Cr)Nで示す]層からなる硬質被覆層を2〜10μmの平均層厚で物理蒸着してなる被覆工具が知られており、かつ前記被覆工具の硬質被覆層である(Al,Cr)N層が、構成成分であるAlによって高温硬さと耐熱性、同Crによって高温強度、さらにCrとAlの共存含有によって高温耐酸化性を具備することから、これを各種の一般鋼や普通鋳鉄などの連続切削や断続切削加工に用いた場合にすぐれた切削性能を発揮することも知られている。
さらに、上記の被覆工具が、例えば図2に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に上記の工具基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を有するAlとCrの合金(以下、Al−Cr合金で示す)がセットされたカソード電極(蒸発源)との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方上記工具基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記工具基体の表面に、上記(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着することにより製造されることも知られている。
特許第3027502号明細書
近年の切削加工装置のFA化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴って切削加工は一段と高速化する傾向にあるが、上記の従来被覆工具においては、これを低合金鋼、炭素鋼、鋳鉄などの通常の切削条件下での切削加工に用いた場合には問題はないが、特に高熱の発生を伴う高速切削加工に用いた場合には、硬質被覆層の熱伝導性・熱放散性が不十分であるため、硬質被覆層は切削時に発生する高熱によって過熱され、かなりの温度上昇が避けられず、その結果、硬質被覆層が熱塑性変形をおこしたり、あるいは、偏摩耗を生じたりして、摩耗進行が促進され、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に鋼や鋳鉄などの切削加工を、高熱の発生を伴う高速切削条件で行った場合に、硬質被覆層がすぐれた熱伝導性・熱放散性を有する被覆工具を開発すべく、上記の従来被覆工具に着目し、研究を行った結果、
上記従来被覆超硬工具の硬質被覆層である(Al,Cr)N層を下部層とし、その表面に、0.3〜1μmの平均層厚でAl−Cr合金層からなる表面層を蒸着形成すると、このAl−Cr合金層は熱伝導性がよくすぐれた熱放散性を有し、高速切削加工時に硬質被覆層が高温に加熱されても熱が直ちに放散され、硬質被覆層が過熱されることがないため、熱塑性変形あるいは偏摩耗を生じることもなく、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮すること。
そして、上記硬質被覆層における下部層としての(Al,Cr)N層および表面層としてのAl−Cr合金層は、例えば、図1(a)に概略平面図で、同(b)に概略正面図で示される構造のアークイオンプレーティング装置、すなわち装置中央部に工具基体装着用回転テーブルを設け、カソード電極(蒸発源)として所定組成のAl−Cr合金を配置したアークイオンプレーティング装置を用い、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部に沿って複数の工具基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、蒸着形成される硬質被覆層の層厚均一化を図る目的で工具基体自体も自転させながら、
まず、前記Al−Cr合金のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記工具基体の表面に、下部層として(Al,Cr)N層を2〜10μmの平均層厚で蒸着形成した後、
前記Al−Cr合金のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間のアーク放電を継続させたまま、装置内雰囲気を窒素雰囲気からAr雰囲気へと徐々に切り替え、最終的にAr雰囲気中で、カソード電極(蒸発源)である前記Al−Cr合金とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、表面層としてのAl−Cr合金層を0.3〜1μmの平均層厚で蒸着形成することにより、
所定平均層厚の(Al,Cr)N層からなる下部層と、所定平均層厚のAl−Cr合金層からなる表面層を蒸着で形成できること。
という、研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)2〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
組成式:(Al1−XCr)N(ただし、原子比で、Xは0.2〜0.4を示す)を満足する蒸着形成されたAlとCrの複合窒化物層からなる下部層、
(b)上記AlとCrの複合窒化物層からなる下部層の表面に設けられ、0.3〜1μmの平均層厚を有する蒸着形成されたAlとCrの合金層からなる表面層、
上記(a)、(b)で構成された硬質被覆層を備えた、高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆工具(表面被覆切削工具)に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆工具の下部層、表面層に関し、上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)下部層
AlとCrの複合窒化物層((Al1−XCr)N層)の構成成分であるAl成分には硬質被覆層における高温硬さと耐熱性を向上させ、また、同Cr成分には高温強度を向上させ、さらに、CrとAlの共存含有によって高温耐酸化性を向上させる作用があるが、Crの含有割合を示すX値がAlとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.2未満になると、高速切削加工時の高熱下での高温強度を確保することができないために、チッピングの発生を抑制することが困難となり、一方、Crの含有割合を示すX値が0.4を超えると相対的にAlの含有割合が減少するため、所定の高温硬さおよび耐熱性を確保することができず、これが耐摩耗性低下の原因となることから、Crの含有割合を示すX値を0.2〜0.4と定めた。
また、その平均層厚が2μm未満では、自身のもつすぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するには不十分であり、一方その平均層厚が10μmを越えると、高速切削加工で切刃部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を2〜10μmと定めた。
(b)表面層
表面層を構成するAl−Cr合金層は、すぐれた熱伝導性・熱放散性とともに所定の高温強度を有する必要があり、Al−Cr合金層中のCr含有量が20原子%未満となると熱伝導性・熱放散性が極端に低下し、また、Cr含有量が40原子%を超えると高温強度が低下してしまうので、Al−Cr合金層中のCr含有量は20〜40原子%とする必要がある。ただ、この発明では、Al−Cr合金層を蒸着形成するにあたって、下部層である前記(Al1−XCr)N層を蒸着形成するのに使用したのと同じカソード電極(蒸発源)を用い、装置内雰囲気を窒素ガスからArガスへと徐々に切り替えることによってAl−Cr合金層を蒸着形成しているため、蒸着形成されたAl−Cr合金層中には、下部層におけるCr/Al割合とほぼ同じような割合でCrが含有される(即ち、ほぼ20〜40原子%のCrを含有するAl−Cr合金層が形成される)ことから、Al−Cr合金層の蒸着形成にあたっては、合金層の組成については特に厳密に管理しなくても、すぐれた熱伝導性・熱放散性と所定の高温強度を備えた20〜40原子%のCrを含有するAl−Cr合金層を蒸着形成することができる。
ただ、Al−Cr合金層の平均層厚が0.3μm未満であると、すぐれた熱伝導性・熱放散性という特性を十分発揮することができず、また、その平均層厚が1μmを超えると、被削材との間で溶着を生じやすくなり、切削特性を劣化させることになるので、Al−Cr合金層の平均層厚は0.3〜1μmと定めた。
この発明の被覆工具は、硬質被覆層の下部層を構成する(Al,Cr)N層が、すぐれた高温硬さ、耐熱性、高温強度を有し、また、表面層を構成するAl−Cr合金層が、所定の高温強度とともにすぐれた熱伝導性・熱放散性を備えていることから、硬質被覆層は全体として、すぐれた高温硬さ、耐熱性、高温強度および熱放散性を備え、その結果、高い発熱を伴う高速切削加工においても、硬質被覆層が過熱されることがなく偏摩耗、熱塑性変形の発生が抑えられ、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものである。
つぎに、この発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A−1〜A−10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比で、TiC/TiN=50/50)粉末、MoC粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体B−1〜B−6を形成した。
(a)ついで、上記の工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、また、カソード電極(蒸発源)として所定組成のAl−Cr合金を配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、
(c)次に、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して4Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する工具基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、カソード電極とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させ、前記工具基体の表面に、表3、表4に示される目標組成、目標平均層厚の(Al,Cr)N層を蒸着形成した後、
(d)前記カソード電極(蒸発源)とアノード電極との間のアーク放電を継続させつつ、同時に、装置内雰囲気を窒素ガス雰囲気からアルゴンガス雰囲気へと徐々に切り替え、最終的には0.5Paのアルゴンガス雰囲気中で、カソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に120Aの電流を流してアーク放電を発生させて、表3、表4に示される目標組成、目標平均層厚のAl−Cr合金層を表面層として蒸着形成することにより、
本発明被覆工具としての本発明表面被覆スローアウエイチップ(以下、本発明被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、これら工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、それぞれ図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、カソード電極(蒸発源)として種々の組成をもったAl−Cr合金を装着し、まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記工具基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ、カソード電極とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって工具基体表面をボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記工具基体に印加するバイアス電圧を−100Vに下げて、前記カソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記工具基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれの表面に、表5、表6に示される目標組成および目標平均層厚の(Al,Cr)N層を硬質被覆層として蒸着形成することにより、
従来被覆工具としての従来表面被覆スローアウエイチップ(以下、従来被覆チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
つぎに、上記の各種の被覆チップを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆チップ1〜16および従来被覆チップ1〜16について、
被削材:JIS・S55Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 320 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.2 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件A)での炭素鋼の乾式高速断続切削加工試験(通常の切削速度は200m/min.)、
被削材:JIS・SCM440の丸棒、
切削速度: 350 m/min.、
切り込み: 1.2 mm、
送り: 0.25 mm/rev.、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件B)での合金鋼の乾式高速連続切削加工試験(通常の切削速度は250m/min.)、
被削材:JIS・FC250の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 400 m/min.、
切り込み: 1.5 mm、
送り: 0.3 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件C)での鋳鉄の乾式高速断続切削加工試験(通常の切削速度は280m/min.)、
を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表7に示した。
Figure 2007307690
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原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表8に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表8に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(エンドミル)C−1〜C−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(エンドミル)C−1〜C−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表9に示される目標組成および目標平均層厚の(Al,Cr)N層を下部層として、また、同じく表9に示される目標組成、目標平均層厚のAl−Cr合金層を表面層として蒸着形成することにより、
本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬製エンドミル(以下、本発明被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の工具基体(エンドミル)C−1〜C−8の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表10に示される目標組成および目標平均層厚の(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着することにより、
従来被覆工具としての従来表面被覆超硬製エンドミル(以下、従来被覆エンドミルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆エンドミル1〜8および従来被覆エンドミル1〜8のうち、
本発明被覆エンドミル1〜3および従来被覆エンドミル1〜3については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCM440の板材、
切削速度: 120 m/min.、
溝深さ(切り込み): 5 mm、
テーブル送り: 400 mm/分、
の条件での合金鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は80m/min.)、
本発明被覆エンドミル4〜6および従来被覆エンドミル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・FC250の板材、
切削速度: 130 m/min.、
溝深さ(切り込み): 8 mm、
テーブル送り: 450 mm/分、
の条件での鋳鉄の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は80m/min.)、
本発明被覆エンドミル7,8および従来被覆エンドミル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S55Cの板材、
切削速度: 120 m/min.、
溝深さ(切り込み): 16 mm、
テーブル送り: 300 mm/分、
の条件での炭素鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は70m/min.)、
をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表9、表10にそれぞれ示した。
Figure 2007307690
Figure 2007307690
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上記の実施例2で製造した直径が8mm(工具基体C−1〜C−3形成用)、13mm(工具基体C−4〜C−6形成用)、および26mm(工具基体C−7、C−8形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mm(工具基体D−1〜D−3)、8mm×22mm(工具基体D−4〜D−6)、および16mm×45mm(工具基体D−7、D−8)の寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製の工具基体(ドリル)D−1〜D−8をそれぞれ製造した。
ついで、これらの工具基体(ドリル)D−1〜D−8の切刃に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表11に示される目標組成および目標平均層厚の(Al,Cr)N層を下部層として、また、同じく表11に示される目標組成、目標層厚のAl−Cr合金層を表面層として蒸着形成することにより、
本発明被覆工具としての本発明表面被覆超硬製ドリル(以下、本発明被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の工具基体(ドリル)D−1〜D−8の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表12に示される目標組成および目標平均層厚を有する(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、
従来被覆工具としての従来表面被覆超硬製ドリル(以下、従来被覆ドリルと云う)1〜8をそれぞれ製造した。
つぎに、上記本発明被覆ドリル1〜8および従来被覆ドリル1〜8のうち、本発明被覆ドリル1〜3および従来被覆ドリル1〜3については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・FC250の板材、
切削速度: 150 m/min.、
送り: 0.15 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件での鋳鉄の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は100m/min.)、
本発明被覆ドリル4〜6および従来被覆ドリル4〜6については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S55Cの板材、
切削速度: 130 m/min.、
送り: 0.25 mm/rev、
穴深さ: 15 mm、
の条件での炭素鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は80m/min.)、
本発明被覆ドリル7,8および従来被覆ドリル7,8については、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCM440の板材、
切削速度: 100 m/min.、
送り: 0.25 mm/rev、
穴深さ: 28 mm、
の条件での合金鋼の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は60m/min.)、
をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表11、表12にそれぞれ示した。
Figure 2007307690
Figure 2007307690
この結果得られた本発明被覆工具としての本発明被覆チップ1〜16、本発明被覆エンドミル1〜8、および本発明被覆ドリル1〜8の硬質被覆層の下部層を構成する(Al,Cr)N層の組成、並びに、従来被覆工具としての従来被覆チップ1〜16、従来被覆エンドミル1〜8、および従来被覆ドリル1〜8の(Al,Cr)N層からなる硬質被覆層の組成を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
さらに、本発明被覆工具の表面層を構成するAl−Cr合金層の組成を同じく透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、本発明被覆工具の(Al,Cr)N層およびAl−Cr合金層、さらに、従来被覆工具の(Al,Cr)N層の平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表7、9〜12に示される結果から、本発明被覆工具は、鋼や鋳鉄の高い発熱を伴う高速切削条件での切削加工でも、(Al,Cr)N層からなる下部層が、すぐれた高温硬さ、耐熱性および高温強度を有し、かつ、Al−Cr合金層からなる表面層が、すぐれた熱伝導性・熱放散性を備えることによって、硬質被覆層が過熱されることを防止し、偏摩耗、熱塑性変形の発生を抑えることによって、チッピングの発生もなく、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層が(Al,Cr)N層で構成された従来被覆工具においては、いずれも高速切削時に発生する高熱によって、偏摩耗あるいは熱塑性変形を生じ、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆工具は、一般鋼や普通鋳鉄など通常条件での切削加工は勿論のこと、高い熱発生を伴う高速切削加工においても、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置のFA化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
硬質被覆層を形成するのに用いたアークイオンプレーティング装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)2〜10μmの平均層厚を有し、かつ、
    組成式:(Al1−XCr)N(ただし、原子比で、Xは0.2〜0.4を示す)を満足する蒸着形成されたAlとCrの複合窒化物層からなる下部層、
    (b)上記AlとCrの複合窒化物層からなる下部層の表面に設けられ、0.3〜1μmの平均層厚を有する蒸着形成されたAlとCrの合金層からなる表面層、
    上記(a)、(b)で構成された硬質被覆層を備えた、高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具。
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