JP2005224868A - 高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】サーメット基体の表面に、(Ti,Al,B)Nからなる素地にCrN相がオージェ分光分析装置による断面分析で0.3〜10面積%の割合で分散分布した組織を有し、前記(Ti,Al,B)Nからなる素地が、層厚方向にそって、Al最高含有点とAl最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAlおよびTiの含有割合が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、かつ隣り合う前記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである、硬質被覆層を1〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなる。
【選択図】 図1
Description
(a)例えば原料粉末として、上記の従来(Ti,Al,B)N層の形成にカソード電極(蒸発源)として用いられたTi−Al−B合金の組成に相当する組成を有する相対的にAl含有量の高いTi−Al−B合金粉末と、前記Ti−Al−B合金粉末に比して相対的にAl含有量の低いTi−Al−B合金粉末と、さらに窒化クロム(以下、CrNで示す)粉末を用い、これら原料粉末を所定の配合割合に配合し、混合した後、圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を、通常の条件、例えば真空雰囲気中、500〜600℃の範囲内の所定の温度に所定時間保持の条件で焼結して、相対的にAl含有量の高いTi−Al−B合金の素地にCrN相が分散分布した組織を有する高Al含有Ti系合金焼結体と、相対的にAl含有量の低いTi−Al−B合金の素地にCrN相が分散分布した組織を有する低Al含有Ti系合金焼結体を形成し、さらに、例えば図1(a)に概略平面図で、同(b)に概略正面図で示される構造のアークイオンプレーティング装置、すなわち装置中央部にサーメット基体装着用回転テーブルを設けた構造のアークイオンプレーティング装置を用い、前記回転テーブルを挟んで、一方側に上記の高Al含有Ti系合金焼結体、他方側に上記の低Al含有Ti系合金焼結体をいずれもカソード電極(蒸発源)として対向配置し、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置にテーブルの外周部に沿って複数のサーメット基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、蒸着形成される硬質被覆層の層厚均一化を図る目的でサーメット基体自体も自転させながら、前記の両側のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記サーメット基体の表面に硬質被覆層を形成すると、この結果の硬質被覆層は、TiとAlとBの複合窒化物[以下、(Ti,Al,B)Nで示す]からなる素地にCrN相が分散分布した組織を有し、かつ、上記の図2に示されるアークイオンプレーティング装置を用いて形成された従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する(Ti,Al,B)Nは、層厚全体に亘って実質的に均一な組成を有し、したがって均質な高温強度、さらに均質な高温硬さと耐熱性を有するが、前記(Ti,Al,B)Nの素地においては、回転テーブル上にリング状に配置された前記サーメット基体が上記の一方側の相対的にAl含有量の高い高Al含有Ti系合金焼結体のカソード電極(蒸発源)に最も接近した時点で層中にAl最高含有点が形成され、また前記サーメット基体が上記の他方側の相対的にAl含有量の低い低Al含有Ti系合金焼結体のカソード電極に最も接近した時点で層中にAl最低含有点が形成され、上記回転テーブルの回転によって層中には層厚方向にそって前記Al最高含有点とAl最低含有点が所定間隔をもって交互に繰り返し現れると共に、前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAlおよびTiの含有割合が連続的に変化する成分濃度分布構造をもつようになること。
上記Al最高含有点が、組成式:(Ti1-(M+Z)AlM BZ)N(ただし、原子比で、Mは0.40〜0.60、Z:0.01〜0.10を示す)、
上記Al最低含有点が、組成式:(Ti1-(X+Z)AlX BZ)N(ただし、原子比で、Xは0.10〜0.35、Z:0.01〜0.10を示す)、
を満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の厚さ方向の間隔を0.01〜0.1μmとすると共に、
上記素地に分散分布するCrN相の割合をオージェ分光分析装置による断面分析で0.3〜10面積%とすると、この結果の硬質被覆層の上記素地における上記Al最高含有点部分では、上記の従来(Ti,Al,B)N層のもつ高温硬さと耐熱性に相当するすぐれた高温硬さと耐熱性を示し、一方上記Al最低含有点部分では、前記Al最高含有点部分に比してAl含有量が低く、Ti含有量の高いものとなるので、一段と高い高温強度が確保され、かつこれらAl最高含有点とAl最低含有点の間隔をきわめて小さくしたことから、層全体の特性としてすぐれた高温硬さと耐熱性を保持した状態で一段とすぐれた高温強度を具備するようになると共に、前記素地に分散分布するCrN相が硬さはマイクロビッカース硬さで1500〜1800と相対的に低いが、特に繰り返しの機械的および熱的衝撃を吸収して、これを著しく緩和する作用を発揮するようになり、したがって、硬質被覆層がかかる構成の硬質被覆層を物理蒸着してなる被覆サーメット工具は、特に各種の鋼や鋳鉄などの高速切削加工を、高い機械的熱的衝撃を伴う高切り込みや高送りなどの重切削条件で行なった場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮するようになること。
以上(a)および(b)に示される研究結果を得たのである。
さらに、上記(Ti,Al,B)Nからなる素地が、層厚方向にそって、Al最高含有点とAl最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAlおよびTiの含有割合が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、
上記Al成分最高含有点が、組成式:(Ti1-(M+Z)AlM BZ)N(ただし、原子比で、Mは0.40〜0.60、Z:0.01〜0.10を示す)、
上記Al成分最低含有点が、組成式:(Ti1-(X+Z)AlX BZ)N(ただし、原子比で、Xは0.10〜0.35、Z:0.01〜0.10を示す)、
を満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである、
高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)素地のAl最高含有点の組成
硬質被覆層の素地を構成する(Ti,Al,B)NにおけるAl最高含有点のTi成分は、高温強度を向上させ、同Al成分は、高温硬さおよび耐熱性を向上させ、さらに同B成分は一段と高温硬さを向上させる作用があり、したがってAlおよびB成分の含有割合が高くなればなるほど高温硬さと耐熱性は向上したものになり、高熱発生を伴う高速切削に適応したものになるが、Alの含有割合を示すM値がTiとBの合量に占める割合(原子比)で0.60を越え、またBの含有割合を示すZ値が同0.10を越えると、高い高温強度を有するAl最低含有点が隣接して存在しても層自体の高温強度の低下は避けられず、この結果チッピングなどが発生し易くなり、一方同M値が同0.40未満でも、また同Z値が0.01未満でも前記高温硬さと耐熱性に所望の向上効果が得られないことから、M値を0.40〜0.60、Z値を0.01〜0.10と定めた。
上記の通りAl最高含有点は高温硬さおよび耐熱性のすぐれたものであるが、反面高温強度の劣るものであるため、このAl最高含有点の高温強度不足を補う目的で、Ti含有割合が高く、一方Al含有量が低く、これによってすぐれた高温強度を有するようになるAl最低含有点を厚さ方向に交互に介在させるものであり、したがってAlの割合を示すX値がTiおよびB成分との合量に占める割合(原子比)で0.35を越えると、相対的にTiの割合が少なくなることから、所望のすぐれた高温強度を確保することができず、一方同X値が0.10未満になると、Al最低含有点に所定の高温硬さおよび耐熱性を具備せしめることができず、これが摩耗進行の原因となることから、Al最低含有点でのAlの割合を示すX値を0.10〜0.35と定めた。
Al最低含有点におけるB成分も、上記の通りAl成分との共存で高温硬さを向上させ、もって高熱発生を伴う高速切削に適応させる目的で含有するものであり、したがってZ値が0.01未満では所望の高温硬さ向上効果が得られず、一方Z値が0.10を越えるとAl最低含有点の高温強度に低下傾向が現れるようになり、所望の耐チッピング性向上が困難になることから、Z値を0.01〜0.10と定めた。
その間隔が0.01μm未満ではそれぞれの点を上記の組成で明確に形成することが困難であり、この結果硬質被覆層に所望の高温硬さと耐熱性、さらに高温強度を確保することができなくなり、またその間隔が0.1μmを越えるとそれぞれの点がもつ欠点、すなわちAl最高含有点であれば高温強度不足、Al最低含有点であれば高温硬さおよび耐熱性不足が層内に局部的に現れ、これが原因でチッピングが発生し易くなったり、摩耗進行が促進されるようになることから、その間隔を0.01〜0.1μmと定めた。
硬質被覆層の素地に分散分布するCrN相は、上記の通り特に切刃部に機械的および熱的衝撃が速いピッチで繰り返し付加されるスローアウエイチップによる高速断続旋削加工や、エンドミルおよびドリルなどによる高速切削加工時に、前記機械的および熱的衝撃をよく吸収して、硬質被覆層にチッピングが発生するのを抑制する作用をもつが、硬質被覆層におけるCrN相の割合が、オージェ分光分析装置による面分析で0.3面積%未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方同割合が10面積%を超えると素地によってもたらされる特性が急激に低下し、摩耗促進やチッピング発生の原因となることから、CrN相の硬質被覆層における割合を0.3〜10面積%と定めた。
その層厚が1μm未満では、所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
また、別途従来硬質被覆層形成用カソード電極として、TiとAlとBの含有割合が異なる各種のTi−Al−B合金も用意した。
被削材:JIS・S55Cの丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:4mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件A)での炭素鋼の乾式連続高速高切り込み切削加工試験(通常の切削速度および切り込みは、200m/min.および2.5mm)、
被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:250m/min.、
切り込み:1.5mm、
送り:0.45mm/rev.、
切削時間:5分、
の条件(切削条件B)での合金鋼の乾式断続高速高送り切削加工試験(通常の切削速度および送りは、180m/min.および0.3mm/rev.)、さらに、
被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:280m/min.、
切り込み:3mm、
送り:0.2mm/rev.、
切削時間:3分、
の条件(切削条件C)での合金鋼の乾式断続高速高切り込み切削加工試験(通常の切削速度および切り込みは、200m/min.および1.5mm)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD61の板材、
切削速度:150m/min.、
溝深さ(切り込み):2.5mm、
テーブル送り:720mm/分、
の条件での工具鋼の乾式高速高切り込み溝切削加工試験(通常の切削速度および溝深さ(切り込み)は、60m/min.および1mm)、本発明被覆エンドミル4〜6および従来被覆エンドミル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S45Cの板材、
切削速度:200m/min.、
溝深さ(切り込み):1mm、
テーブル送り:1000mm/分、
の条件での炭素鋼の乾式高速高送り溝切削加工試験(通常の切削速度およびテーブル送りは、100m/min.および470mm/分)、本発明被覆エンドミル7,8および従来被覆エンドミル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・FC250の板材、
切削速度:220m/min.、
溝深さ(切り込み):10mm、
テーブル送り:480mm/分、
の条件での鋳鉄の乾式高速高切り込み溝切削加工試験(通常の切削速度および溝深さ(切り込み)は、100m/min.および8mm)をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表8,9にそれぞれ示した。
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・FCD600の板材、
切削速度:125m/min.、
送り:0.21mm/rev、
穴深さ:6mm、
の条件でのダクタイル鋳鉄の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、80m/min.および0.14mm/rev.)、本発明被覆ドリル4〜6および従来被覆ドリル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SS400の板材、
切削速度:150m/min.、
送り:0.28mm/rev、
穴深さ:16mm
の条件での構造用鋼の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、100m/min.および0.23mm/rev.)、本発明被覆ドリル7,8および従来被覆ドリル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・S50Cの板材、
切削速度:120m/min.、
送り:0.32mm/rev、
穴深さ:22mm
の条件での炭素鋼の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、60m/min.および0.27mm/rev.)、をそれぞれ行い、いずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表10,11にそれぞれ示した。
一方前記従来被覆サーメット工具の硬質被覆層では厚さ方向に沿って組成変化が見られず、かつ目標組成と実質的に同じ組成および目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示すことが確認された。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、通常の条件での高速切削加工は勿論のこと、特に各種の鋼や鋳鉄などの高速切削加工を、高い機械的衝撃を伴う高切り込みや高送りなどの重切削条件で行なった場合にも、すぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すものであるから、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基サーメットまたは炭窒化チタン系サーメットで構成されたサーメット基体の表面に、TiとAlとB(ボロン)の複合窒化物からなる素地に、窒化クロム相が、オージェ分光分析装置による面分析で0.3〜10面積%の割合で分散分布した組織を有する硬質被覆層を1〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなり、
さらに、上記TiとAlとBの複合窒化物からなる素地が、層厚方向にそって、Al最高含有点とAl最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAlおよびTiの含有割合が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、
上記Al最高含有点が、組成式:(Ti1-(M+Z)AlM BZ)N(ただし、原子比で、Mは0.40〜0.60、Z:0.01〜0.10を示す)、
上記Al最低含有点が、組成式:(Ti1-(X+Z)AlX BZ)N(ただし、原子比で、Xは0.10〜0.35、Z:0.01〜0.10を示す)、
を満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmであること、
を特徴とする高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004032828A JP2005224868A (ja) | 2004-02-10 | 2004-02-10 | 高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 |
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JP2008030158A (ja) * | 2006-07-28 | 2008-02-14 | Mitsubishi Materials Corp | 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 |
US8123131B2 (en) * | 2006-04-17 | 2012-02-28 | Fujifilm Corporation | Antenna containing substrate |
-
2004
- 2004-02-10 JP JP2004032828A patent/JP2005224868A/ja active Pending
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