JP2005224915A - 高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面被覆サーメット製切削工具が、超硬合金またはサーメットで構成されたサーメット製基体の表面に、AlとTiとSiの複合窒化物からなる素地に、酸化アルミニウム相がオージェ分光分析装置による断面観察で1〜15面積%の割合で分散分布した組織を有し、さらに、前記素地が、層厚方向にそって、AlとTiの最高含有点が所定間隔にて交互に繰り返し存在、かつAl最高含有点からTi最高含有点、Ti最高含有点からAl最高含有点へAlおよびTiの含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有すると共に、前記Al最高含有点が、特殊な組成式を満足し、かつ隣り合う上記AlとTiの最高含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである硬質被覆層を1〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなる。
【選択図】図1
Description
(a)例えば原料粉末として、相対的にAl含有量の高いAl−Ti−Si合金粉末および相対的にTi含有量の高いTi−Al−Si合金粉末、さらに酸化アルミニウム(以下、Al2O3で示す)粉末を用い、これら原料粉末を所定の配合割合に配合し、混合した後、圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を、通常の条件、例えば真空雰囲気中、500〜600℃の範囲内の所定の温度に所定時間保持の条件で焼結して、相対的にAl含有量の高いAl−Ti−Si合金の素地にAl2O3相が分散含有した組織を有するAl系合金焼結体と、相対的にTi含有量の高いTi−Al−Si合金の素地にAl2O3相が分散含有した組織を有するTi系合金焼結体を形成し、さらに、例えば図1(a)に概略平面図で、同(b)に概略正面図で示される構造、すなわち装置中央部にサーメット基体装着用回転テーブルを設けた構造のアークイオンプレーティング装置を用い、前記回転テーブルを挟んで、一方側に上記のAl系合金焼結体、他方側に上記のTi系合金焼結体をカソード電極(蒸発源)として対向配置し、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置にテーブル外周部に沿って複数のサーメット基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、蒸着形成される硬質被覆層の層厚均一化を図る目的でサーメット基体自体も自転させながら、前記の両側のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記サーメット基体の表面に硬質被覆層を形成すると、この結果の硬質被覆層は、AlとTiとSiの複合窒化物[以下、(Al/Ti,Si)Nで示す]からなる素地にAl2O3相が分散分布した組織を有し、かつ、上記の図2に示されるアークイオンプレーティング装置を用いて形成された従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する(Ti,Al,Si)N層は、層厚全体に亘って実質的に均一な組成を有し、したがって均質な高温硬さと耐熱性、さらに均質な高温強度を有するが、前記(Al/Ti,Si)Nの素地においては、回転テーブル上にリング状に配置された前記サーメット基体が上記の一方側の上記Al系合金焼結体のカソード電極(蒸発源)に最も接近した時点で素地中にAl最高含有点が形成され、また前記サーメット基体が上記の他方側の上記Ti系合金焼結体のカソード電極に最も接近した時点で素地中にTi最高含有点が形成され、上記回転テーブルの回転によって素地中には層厚方向にそって前記Al最高含有点とTi最高含有点が所定間隔をもって交互に繰り返し現れると共に、前記Al最高含有点から前記Ti最高含有点、前記Ti最高含有点から前記Al最高含有点へAlおよびTiの含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造をもつようになること。
上記Al最高含有点が、組成式:(Al1-(E+Z) TiESiZ)N(ただし、原子比で、Eは0.05〜0.25、Zは0.01〜0.15を示す)、
上記Ti最高含有点が、組成式:(Ti1-(X+Z)AlXSiZ)N(ただし、原子比で、Xは0.05〜0.25、Zは0.01〜0.15を示す)、
をそれぞれ満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とTi最高含有点の厚さ方向の間隔を0.01〜0.1μmとすると共に、
前記素地に分散分布するAl2O3相の割合をオージェ分光分析装置による断面観察で1〜15面積%とすると、この結果の硬質被覆層の前記素地における上記Al最高含有点部分では、上記の従来(Ti,Al,Si)N層に比してAl含有量が相対的に高くなることから、より一段とすぐれた高温硬さと耐熱性を示し、一方同じく上記Ti最高含有点部分では、前記従来(Ti,Al,Si)N層に比してTi含有量が相対的に高くなることから、一段と高い高温強度を具備し、かつ、これらAl最高含有点とTi最高含有点の間隔をきわめて小さくしたことから、素地全体の特性として高い高温強度を保持した状態ですぐれた高温硬さと耐熱性を具備するようになると共に、前記素地に分散分布するAl2O3相によってさらに一段と高い高温硬さとすぐれた熱的安定性が確保されることから、かかる構成の硬質被覆層を物理蒸着してなる被覆サーメット工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、特に高熱発生および高い機械的衝撃を伴う、高速重切削条件で行なった場合にも、硬質被覆層にチッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を発揮するようになること。
以上(a)および(b)に示される研究結果を得たのである。
さらに、上記(Al/Ti,Si)Nからなる素地が、層厚方向にそって、Al最高含有点とTi最高含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Ti最高含有点、前記Ti最高含有点から前記Al最高含有点へAlおよびTiの含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、
上記Al最高含有点が、組成式:(Al1-(E+Z) TiESiZ)N(ただし、原子比で、Eは0.05〜0.25、Zは0.01〜0.15を示す)、
上記Ti最高含有点が、組成式:(Ti1-(X+Z)AlXSiZ)N(ただし、原子比で、Xは0.05〜0.25、Zは0.01〜0.15を示す)、
を満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とTi最高含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである、
高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
(a)素地のAl最高含有点の組成
硬質被覆層の素地である(Al/Ti,Si)NにおけるAl最高含有点のAl成分は、高温硬さと耐熱性を向上させ、同Ti成分は高温強度を向上させ、さらに同Si成分は一段と耐熱性を向上させる作用があり、したがってAl成分およびSi成分の含有割合が高くなればなるほど高温硬さと耐熱性は向上し、高熱発生を伴う高速切削ですぐれた耐摩耗性を発揮するようになるが、Tiの割合を示すE値がAlとSiの合量に占める割合(原子比)で0.05未満になると、相対的にAlの割合が多くなり過ぎて、高い高温強度を有するTi最高含有点が隣接して存在しても素地自体の高温強度低下は避けられず、この結果特に重切削条件下ではチッピングなどが発生し易くなり、一方Ti成分の割合を示すE値が同0.25を越えると、相対的にAlの割合が少なくなることから、高温硬さと耐熱性の低下は避けられず、これが特に高速切削条件下では摩耗促進の原因となり、またSi成分の割合を示すZ値がAlとTiの合量に占める割合(原子比)で0.01未満では所望の耐熱性向上効果が得られず、さらに同Z値が0.15を超えると、チッピングなどの発生原因となる高温強度低下が起るようになることから、E値を0.05〜0.25、Z値を0.01〜0.15とそれぞれ定めた。
上記の通りAl最高含有点は高温硬さと耐熱性のすぐれたものであるが、反面高温強度の劣るものであるため、このAl最高含有点の高温強度不足を補う目的で、Ti含有割合が高く、これによって高い高温強度を有するようになるTi最高含有点を厚さ方向に交互に介在させるものであり、したがってAlの割合を示すX値がTiとSiの合量に占める割合(原子比)で0.25を越えると、相対的にAlの割合が多くなり過ぎて、所望のすぐれた高温強度を確保することができず、一方同X値が同じく0.05未満になると、相対的にTiの割合が多くなり過ぎて、Ti最高含有点における高温硬さと耐熱性が急激に低下し、これが摩耗促進の原因となることから、X値を0.05〜0.25と定めたものであり、またSi成分の割合を示すZ値は上記のAl最高含有点におけると同じ理由で0.01〜0.15と定めた。
その間隔が0.01μm未満ではそれぞれの点を上記の組成で明確に形成することが困難であり、この結果硬質被覆層に所望の高温強度、さらに高温硬さと耐熱性を確保することができなくなり、またその間隔が0.1μmを越えるとそれぞれの点がもつ欠点、すなわちAl最高含有点であれば高温強度不足、Ti最高含有点であれば高温硬さおよび耐熱性不足が層内に局部的に現れ、これが原因で切刃にチッピングが発生し易くなったり、摩耗進行が促進されるようになることから、その間隔を0.01〜0.1μmと定めた。
Al2O3相は、上記の通り硬質被覆層に一段と高い高温硬さとすぐれた熱的安定性を付与し、もって高い発熱を伴なう、高速切削でも硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮するようにする作用をもつが、硬質被覆層におけるAl2O3相の割合が、オージェ分光分析装置による断面観察で1面積%未満では前記作用に所望の効果が得られず、一方同割合が15面積%を超えると素地によってもたらされるすぐれた高温強度が急激に低下するようになることから、Al2O3相の硬質被覆層における割合を1〜15面積%と定めた。
その層厚が1μm未満では、所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
被削材:JIS・FC350の丸棒、
切削速度:300m/min.、
切り込み:6mm、
送り:0.3mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件A)での鋳鉄の乾式連続高速高切り込み切削加工試験(通常の切削速度および切り込みは、230m/min.および4mm)、
被削材:JIS・S50Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:280m/min.、
切り込み:5.5mm、
送り:0.4mm/rev.、
切削時間:4分、
の条件(切削条件B)での炭素鋼の乾式断続高速高切り込み切削加工試験(通常の切削速度および切り込みは、200m/min.および4mm)、
被削材:JIS・SCr420Hの丸棒、
切削速度:220m/min.、
切り込み:4mm、
送り:0.8mm/rev.、
切削時間:10分、
の条件(切削条件C)での合金鋼の乾式連続高速高送り切削加工試験(通常の切削速度および送りは、150m/min.および0.6mm/rev.)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SNCM439の板材、
切削速度:180m/min.、
溝深さ(切り込み):1.5mm、
テーブル送り:1000mm/分、
の条件での合金鋼の乾式高速高送り溝切削加工試験(通常の切削速度およびテーブル送りは、100m/min.および500mm/分)、本発明被覆エンドミル4〜6および従来被覆エンドミル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCM440の板材、
切削速度:200m/min.、
溝深さ(切り込み):5mm、
テーブル送り:940mm/分、
の条件での合金鋼の乾式高速高切り込み溝切削加工試験(通常の切削速度および溝深さは、100m/min.および3mm)、本発明被覆エンドミル7,8および従来被覆エンドミル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD61の板材、
切削速度:120m/min.、
溝深さ(切り込み):3mm、
テーブル送り:300mm/分、
の条件での工具鋼の乾式高速高送り溝切削加工試験(通常の切削速度およびテーブル送りは、60m/min.および120mm/分)をそれぞれ行い、いずれの溝切削加工試験でも切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。この測定結果を表8,9にそれぞれ示した。
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・FC250の板材、
切削速度:180m/min.、
送り:0.18mm/rev、
穴深さ:8mm、
の条件での鋳鉄の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、100m/min.および0.12mm/rev.)、本発明被覆ドリル4〜6および従来被覆ドリル4〜6については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SKD61の板材、
切削速度:120m/min.、
送り:0.26mm/rev、
穴深さ:16mm、
の条件での工具鋼の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、50m/min.および0.2mm/rev.)、本発明被覆ドリル7,8および従来被覆ドリル7,8については、
被削材:平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのJIS・SCM439の板材、
切削速度:150m/min.、
送り:0.4mm/rev、
穴深さ:32mm、
の条件での合金鋼の湿式高速高送り穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、100m/min.および0.3mm/rev.)、をそれぞれ行い、いずれの湿式穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表10,11にそれぞれ示した。
一方前記従来被覆サーメット工具の硬質被覆層では厚さ方向に沿って組成変化が見られず、かつ目標組成と実質的に同じ組成および目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示すことが確認された。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、高熱発生および高い機械的衝撃を伴う高速重切削条件で行なった場合にも、チッピングの発生なく、すぐれた耐摩耗性を発揮するものであるから、切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン系サーメットで構成されたサーメット基体の表面に、AlとTiとSiの複合窒化物からなる素地に、酸化アルミニウム相がオージェ分光分析装置による断面観察で1〜15面積%の割合で分散分布した組織を有する硬質被覆層を1〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなり、
さらに、上記AlとTiとSiの複合窒化物からなる素地が、層厚方向にそって、Al最高含有点とTi最高含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Ti最高含有点、前記Ti最高含有点から前記Al最高含有点へAlおよびTiの含有割合がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有すると共に、
上記Al最高含有点が、組成式:(Al1-(E+Z) TiESiZ)N(ただし、原子比で、Eは0.05〜0.25、Zは0.01〜0.15を示す)、
上記Ti最高含有点が、組成式:(Ti1-(X+Z)AlXSiZ)N(ただし、原子比で、Xは0.05〜0.25、Zは0.01〜0.15を示す)、
を満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とTi最高含有点の間隔が、0.01〜0.1μmであること、
を特徴とする高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2004037767A JP2005224915A (ja) | 2004-02-16 | 2004-02-16 | 高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 |
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JP2004037767A JP2005224915A (ja) | 2004-02-16 | 2004-02-16 | 高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 |
Publications (1)
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JP2005224915A true JP2005224915A (ja) | 2005-08-25 |
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Family Applications (1)
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JP2004037767A Pending JP2005224915A (ja) | 2004-02-16 | 2004-02-16 | 高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 |
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2004
- 2004-02-16 JP JP2004037767A patent/JP2005224915A/ja active Pending
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