JP5672444B2 - 耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル - Google Patents

耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル Download PDF

Info

Publication number
JP5672444B2
JP5672444B2 JP2010253616A JP2010253616A JP5672444B2 JP 5672444 B2 JP5672444 B2 JP 5672444B2 JP 2010253616 A JP2010253616 A JP 2010253616A JP 2010253616 A JP2010253616 A JP 2010253616A JP 5672444 B2 JP5672444 B2 JP 5672444B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
drill
tip
hkl
diameter
coated
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2010253616A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2012101336A (ja
Inventor
田中 耕一
耕一 田中
田中 裕介
裕介 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2010253616A priority Critical patent/JP5672444B2/ja
Priority to CN2011103569148A priority patent/CN102528130A/zh
Publication of JP2012101336A publication Critical patent/JP2012101336A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5672444B2 publication Critical patent/JP5672444B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Drilling Tools (AREA)

Description

本発明は、ドリル本体の先端部外周にフルート溝が形成されるとともに、このフルート溝のドリル回転方向を向く内周面の先端に切刃が設けられ、主として金属材よりなる加工物に穴明け加工をするのに用いられるドリルに関するものである。
このようなドリルとしては、軸線を中心として該軸線回りにドリル回転方向に回転される概略円柱状のドリル本体の先端側が切刃部とされ、この切刃部の外周に一対のフルート溝が、軸線に関して互いに対称となるように、該切刃部の先端面、すなわちドリル本体の先端逃げ面から後端側に向かうに従い軸線回りにドリル回転方向の後方側に捩れる螺旋状に形成され、これらのフルート溝の内周面のうちドリル回転方向を向く部分の先端側の前記先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成された、いわゆる2枚刃のソリッドドリルが知られている。従って、このようなソリッドドリルでは、前記フルート溝内周面のドリル回転方向を向く部分の先端側がこの切刃のすくい面となり、切刃によって生成された切屑は、このすくい面からフルート溝の内周面を摺接しつつ、該フルート溝の捩れによって後端側に送り出されて排出されることとなる。そして、さらにこのようなドリルでは、ドリル本体の耐摩耗性の向上のために種々の方法が採用されている。
例えば、特許文献1においては、ロックウェル硬度50(Cスケール)を越える高硬度スチールの切削加工において、皮膜の密着性、並びに耐摩耗性を改善したエンドミル、ドリルを提供する目的で、TiとAlの複合窒化物、炭窒化物、炭化物を被覆したエンドミル、ドリルにおいて、被覆層のX線回折における(111)面の回折強度をI(111)、(200)面の回折強度をI(200)とした時にI(200)/I(111)の値が2.0以下とすることにより構成するエンドミル、ドリルが開示されている。
また、特許文献2においては、切刃部の長いドリルにおいても、切屑詰まりの発生を防いで折損等の生じることのないドリルを提供する目的で、ドリル本体の先端部外周にフルート溝が形成され、このフルート溝の内周面に形成されたすくい面とドリル本体の先端逃げ面との交差稜線部に切刃が形成されるとともに、ドリル本体の先端部の表面には硬質被膜が被覆されたドリルであって、この硬質被膜を、切刃の外周端から後端側に向けて切刃の外径Dに対して3D以内の長さMの範囲までに被覆したドリルが開示されている。
また、特許文献3においては、切刃部の長いドリルにおいても、切屑詰まりの発生を防いで折損等の生じることのないドリルを提供する目的で、ドリル本体の先端部外周にフルート溝を形成し、このフルート溝の内周面に形成されたすくい面とドリル本体の先端逃げ面との交差稜線部に切刃を形成するとともに、ドリル本体の先端部の表面には硬質被膜を被覆し、さらにフルート溝の内周面には、この硬質被膜を被覆した後にポリッシュ加工を施したドリルが開示されている。
また、特許文献4においては、密着性や皮膜特性が良好で、優れた耐摩耗性を発揮すると共に、切屑排出性も良好であって切屑詰まりが起こらず、しかも工業的に効率良く製造することのできる様な硬質膜被覆ツイストドリル、およびその様なツイストドリルを製造する為の有用な方法を提供する目的で、切刃部における少なくともドリルマージン部に硬質膜を被覆した硬質膜被覆ツイストドリルを製造するに当たり、高速度工具鋼からなる丸棒形状の母材表面のドリル切削作用相当部に、アーク放電式イオンプレーティング法によって、2種以上の金属元素を含む炭化物、窒化物または炭窒化物からなる硬質膜を被覆した後、少なくともドリル溝相当部を切削加工または研削加工してドリル母材地肌面が露出したドリル溝を形成したドリルが開示されている。
特開平9−291353号公報 特開2003−275909号公報 特開2003−275910号公報 特開平8−174341号公報
近年のドリル加工装置のFA化はめざましく、加えてドリル加工に対する省力化、省エネ化、低コスト化さらに効率化の要求も強く、これに伴い、高送り、高切り込みなどより高効率の深穴用ドリル加工が要求される傾向にあるが、前記従来表面被覆ドリルにおいては、各種の鋼や鋳鉄を通常条件下でドリル加工した場合に特段の問題は生じないが、耐摩耗性が必要とされるとともに切屑がドリルのフルート溝につまり易い、高送り・乾式の深穴用ドリル加工に用いた場合には、フルート溝に切屑がつまり易く、これが原因で、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、高送り・乾式の深穴用ドリル加工に用いられた場合にも優れた耐摩耗性と切屑排出性を示し表面被覆ドリルの長寿命化を図るべく、ドリル基体の上に直接または中間層を介して、最表面に配向制御層としてTi1−aAlN{a=0〜0.5}の組成からなる層を構成すると共に、該配向制御層の配向性に着目し鋭意研究を行った結果、次のような知見を得た。
(a)配向制御層として、Ti1−aAlN{a=0〜0.5}の組成からなる層の形成を、例えば、図1の概略説明図に示される物理蒸着装置の1種である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置にドリル基体の先端を水平より上側、すなわちドリル先端がハースから遠ざかるように装着し、例えば、
工具基体温度:360〜450℃、
蒸発源1:金属Ti、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:10〜12kW、
蒸発源2:金属Al、
蒸発源2に対するプラズマガン放電電力:7〜9kW、
反応ガス流量:窒素(N)ガス 50〜100sccm、
放電ガス:アルゴン(Ar)ガス 45〜60sccm、
ドリル基体に印加する直流バイアス電圧:+3〜+8V、
アシストガンの放電電力:2kW
という特定の条件下で、かつ、ハースの距離に沿って成膜速度が漸次減少するように調整し、かつ、工具基体の側方からアシストプラズマガンによるプラズマ照射を行いながら、反応性蒸着形成した場合、この結果形成された硬質被覆層を備えた表面被覆ドリルは、従来の表面被覆ドリルに比して、高速・乾式の深穴加工において、すぐれた耐摩耗性および切屑排出性を示すことを見出した。
(b)前記硬質被覆層を微小領域X線回折法によって測定したところ、(hkl)ピーク強度から(111)、(200)、(220)の3ピークを用いて計算した配向係数TChkl(x)としたときにTC111(x)の値が、先端からドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において3>TC111(x)>0.5の範囲で漸次減少し、かつ、TC111が最も低い場所でTC200がTC111の1.5倍以上になることを確認した。但し、ここで述べるTChkl(x)とは、数式1で計算される数値であり、ただし、Ihkl(x)は先端からドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離における(hkl)ピークの回折強度、I hkl(x)はICDD38−1420に記載される(hkl)ピークの回折強度比であり、I 111は75、I 200は100、I 220は50である。
(c)そして、表面被覆ドリルの硬質被覆層を、前記配向組織を持つ硬質被覆層(以下、配向制御層)で構成すると以下のような効果を発揮する。すなわち、逃げ面の先端部は高熱・高負荷がかかるため、(111)配向組織の皮膜にて構成し、高い耐摩耗性を実現する。さらに、フルート溝のうち、熱的・力学的負荷が大きい先端部(111)配向組織の皮膜にて構成し、かつ、荷重圧力が押し込みからせん断へ徐々に変化するフルート溝に沿って、(111)配向係数を徐々に低下させ、かつフルート溝に沿って漸次変化することで長期間に亘り各位置での皮膜の強度を高く維持する機構を実現し、高速・乾式の深穴加工においても長い工具寿命を発揮することを見出したのである。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1)超硬合金焼結体あるいは立方晶窒化硼素焼結体あるいはサーメットあるいは高速度鋼からなるドリル基体の上に直接または中間層を介して、最表面に配向制御層としてTi1−aAlN{a=0〜0.5}の組成からなる層が存在し、かつ、
前記ドリルのフルート溝のうち、先端からドリル基体の長さに沿ってドリルの直径Dの5倍の長さまでの領域において、先端から前記ドリルの直径Dのx倍の距離における位置において微小領域X線回折法によって測定される(hkl)ピーク強度から、(111)、(200)、(220)の3ピークを用いて計算した配向係数TChkl(x)とした時に、TC111(x)の値が、先端から前記ドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において、3>TC111(x)>0.5の範囲で漸次減少し、かつ、TC111(x)が最も低い場所でTC200(x)がTC111(x)の1.5倍以上となることを特徴とする表面被覆ドリル。
ただし、配向係数TChkl(x)は前述の数式(1)で計算する。
(2)漸次減少する際のTC111(x)の最大値をTCmax、最小値をTCminとしたとき、TCmax/TCmin>1.5であることを特徴とする(1)に記載の表面被覆ドリル。
(3)TC200(x)の値が、先端から前記ドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において漸次増加することを特徴とする(1)または(2)に記載の表面被覆ドリル。
(4)(111)ピークの半値幅FWHM111(x)の値が、先端から前記ドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において漸次増加することを特徴とする(1)に記載の表面被覆ドリル。
(5)前記配向制御層の層厚が、最もドリル先端に近い位置から、後方にかけて、0.2〜5.0μmの範囲で漸次増加することを満たす(1)に記載の表面被覆ドリル。
(6)前記中間層が、Tiの窒化物または炭化物、またはTiとAlとからなる複合窒化物、TiとAlとSiとからなる複合窒化物、CrとAlとからなる複合窒化物のうち、いずれかの単層または前記硬質膜群から選ばれる複数の層構造からなる積層構造を有し、層厚5μm以下であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の表面被覆ドリル。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に説明する。
本発明の表面被覆ドリルの硬質被覆層を構成する配向制御層において、ドリルのフルート溝のうち、先端からドリル基体の長さに沿って直径の5倍の長さまでの領域において、先端から前記ドリルの直径Dのx倍の距離における位置において微小領域X線回折法によって測定される(hkl)ピーク強度から、(111)、(200)、(220)の3ピークを用いて計算した配向係数TChkl(x)とした時に、TC111(x)の値が、先端からドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において、3>TC111(x)>0.5の範囲で漸次減少し、かつ、TC111(x)が最も低い場所でTC200(x)がTC111(x)の1.5倍以上とする。ここで、TC111(x)の値は、計算上3以上となることはなく、一方、0.5を下回ると最低限の強度を維持できない。そこで、3>TC111(x)>0.5と定めた。
また、「TC111(x)の値が、先端から前記ドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において、3>TC111(x)>0.5の範囲で漸次減少する」とは、特定位置を、X線を照射する中心目標とし測定した場合に、前記内容により定義された数値が、特定位置からドリル後端方向へ少なくとも5mmを超えて離れた位置を、X線を照射する中心目標とし測定した場合に、同様に定義された数値よりも小さいことを指す。すなわち、前記条件を満たすならば、例えば、特定位置からの距離が5mm以下となる領域中をX線を照射する中心目標として測定したTC111(x)の値が漸次減少していなくとも、本発明の範囲を外れるものではない。
そして、本発明者らは、配向制御層を蒸着形成するための数多くの試験を行った結果、圧力勾配型プラズマガンを用いて、Arプラズマを原料が入ったハースに照射して蒸発させ、基板上に皮膜を物理蒸着させる反応性蒸着法を用いて、ドリル基体上での成膜速度がドリル基体の先端からの距離に沿って漸次増加するように調整され、かつ、ドリルに対して平行となる角度から10度の角度に保持されたアシストプラズマガンによる側面からのプラズマ照射を行いながら、反応性蒸着を行うと、ドリルのフルート溝のうち、先端からドリル基体の長さに沿って直径の5倍の長さまでの領域において、被膜断面の結晶配向を観察した際、図2に示す通り、ドリル先端部では、配向制御層が、TC値3によって構成される一方で、例えば、ドリル基体のフルート溝のうち、ドリル先端から直径の5倍の位置においては、配向制御層が、TC値1によって構成されていることを見出した。
本発明の表面被覆ドリルは、超硬合金焼結体あるいは立方晶窒化硼素焼結体あるいはサーメットあるいは高速度鋼からなるドリル基体の上に直接またはTiの窒化物または炭化物、またはTiとAlとからなる複合窒化物、TiとAlとSiとからなる複合窒化物、CrとAlとからなる複合窒化物のうち、いずれかの単層または前記硬質膜群から選ばれる複数の層構造からなる積層構造を有する層厚5μm以下の中間層を介して、最表面に配向制御層としてTi1−aAlN{a=0〜0.5}の組成からなる層が存在し、かつ、前記ドリルのフルート溝のうち、先端からドリル基体の長さに沿って直径の5倍の長さまでの領域において、先端からドリルの直径Dのx倍の距離における位置において微小領域X線回折法によって測定される(hkl)ピーク強度から、(111)、(200)、(220)の3ピークを用いて計算した配向係数TChkl(x)とした時に、TC111(x)の値が、先端からドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において、3>TC111(x)>0.5の範囲で漸次減少し、かつ、TC111(x)が最も低い場所でTC200(x)がTC111(x)の1.5倍以上となることから、優れた耐摩耗性と切屑排出性が実現できる。
本発明の表面被覆ドリルの硬質被覆層(配向制御層)を蒸着形成するための圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置の概略図を示す。 本発明の表面被覆ドリルの硬質被覆層(配向制御層)の概略図を示す。
つぎに、本発明の表面被覆ドリルを実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、平均粒径0.8μmのWC粉末、同2.3μmのCr粉末、同1.5μmのVC粉末および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、工具基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さが8mm×48mmの寸法、並びにねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製のドリル基体D−1〜D−4をそれぞれ製造した。
ついで、これらのドリル基体D−1〜D−4の切刃に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1の概略図に示される物理蒸着装置の1種である圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置に装着し、
工具基体温度:360〜450℃、
蒸発源1:金属Ti、
蒸発源1に対するプラズマガン放電電力:10〜12kW、
蒸発源2:金属Al、
蒸発源2に対するプラズマガン放電電力:7〜9kW、
反応ガス流量:窒素(N)ガス 50〜100sccm、
放電ガス:アルゴン(Ar)ガス 45〜60sccm、
ドリル基体に印加する直流バイアス電圧:+3〜+8V、
アシストガンの放電電力:2kW
という特定の条件(表2)下、ドリル基体上での成膜速度がドリル基体の先端からの距離に沿って漸次増加するように調整する目的で、ドリル基体を、例えば、図1に示すように、ドリル基体の先端部を水平から上方に向け、かつ、ハース載置平面の鉛直方向の軸に対して、25度の角度を保ったまま自転させると同時に、該鉛直方向の軸を回転中心軸として公転させながら、ドリルに対して平行となる角度から10度の角度に保持されたアシストプラズマガンによる側面からのプラズマ照射を行いながら、反応性蒸着をして、表3に示される組成および組織を有する配向制御層を形成した本発明表面被覆ドリル1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、前記ドリル基体D−1〜D−4の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示される圧力勾配型Arプラズマガンを利用したイオンプレーティング装置にドリル基体の全域に亘って均一な硬質被覆層が形成する目的で、ドリル基体を、ハース載置平面と平行を保ったまま自転させる(図示せず)と同時に、該鉛直方向の軸を回転中心軸として公転させながら反応性蒸着をして、ドリル基体D−1〜D−4の表面に、表4に示される均一な組成および組織を有する従来層を形成した比較表面被覆ドリル1〜13をそれぞれ製造した。
つぎに、前記本発明表面被覆ドリル1〜13および比較表面被覆ドリル1〜13について、
被削材−平面寸法:100mm×250mm、厚さ:50mmのSCM440の板材、
切削速度: 80m/min.、
送り: 0.20mm/rev.、
穴深さ: 24mm、
の条件での合金鋼の乾式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度および送りは、それぞれ、60m/min.および0.18mm/rev.)、
を行い、先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまで、若しくは工具の欠損に至るまでの穴あけ加工数を測定した。この測定結果を表3、4にそれぞれ示した。
この結果得られた本発明表面被覆ドリル1〜13の硬質被覆層を構成する配向制御層、さらに、比較表面被覆ドリル1〜13の硬質被覆層を構成する従来層の組成を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、前記の硬質被覆層の平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表3、4に示される結果から、本発明表面被覆ドリルは、ドリルのフルート溝のうち、先端からドリル基体の長さに沿って直径の5倍の長さまでの領域において、先端から前記ドリルの直径Dのx倍の距離における位置において微小領域X線回折法によって測定される(hkl)ピーク強度から、(111)、(200)、(220)の3ピークを用いて計算した配向係数TChkl(x)とした時に、TC111(x)の値が、先端からドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において、3>TC111(x)>0.5の範囲で漸次減少し、かつ、TC111(x)が最も低い場所でTC200(x)がTC111(x)の1.5倍以上となることから、優れた耐摩耗性と切屑排出性が実現できる。
これに対して、硬質被覆層を構成する結晶の配向係数TChkl(x)が、ドリル先端から後方に向けて変化しない従来層を有する比較表面被覆ドリルにおいては、切屑排出性が十分でないために、チッピング、欠損、剥離の発生等により、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の表面被覆ドリルは、硬質被覆層(配向制御層)を構成する結晶粒の配向係数が、ドリル先端から後方に向けて、3〜0.5の範囲で漸次減少していることから、優れた切屑排出性を備えており、そして、この優れた切屑排出性は、高送り・乾式の深穴用ドリル加工条件においても、長期間にわたり高い耐摩耗性を維持するものである。

Claims (6)

  1. 超硬合金焼結体あるいは立方晶窒化硼素焼結体あるいはサーメットあるいは高速度鋼からなるドリル基体の上に直接または中間層を介して、最表面に配向制御層としてTi1−aAlN{a=0〜0.5}の組成からなる層が存在し、かつ、
    前記ドリルのフルート溝のうち、先端からドリル基体の長さに沿ってドリルの直径Dの5倍の長さまでの領域において、先端から前記ドリルの直径Dのx倍の距離における位置において微小領域X線回折法によって測定される(hkl)ピーク強度から、(111)、(200)、(220)の3ピークを用いて計算した配向係数TChkl(x)とした時に、TC111(x)の値が、先端から前記ドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において、3>TC111(x)>0.5の範囲で漸次減少し、かつ、TC111(x)が最も低い場所でTC200(x)がTC111(x)の1.5倍以上となることを特徴とする表面被覆ドリル。
    但し、ここで述べるTChkl(x)とは、数式1で計算される数値であり、ただし、Ihkl(x)は先端から前記ドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離における(hkl)ピークの回折強度、I hkl(x)はICDD38−1420に記載される(hkl)ピークの回折強度比であり、I 111は72、I 200は100、I 220は45である。
  2. 漸次減少する際のTC111(x)の最大値をTCmax、最小値をTCminとしたとき、TCmax/TCmin>1.5であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆ドリル。
  3. TC200(x)の値が、先端から前記ドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において漸次増加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面被覆ドリル。
  4. (111)ピークの半値幅FWHM111(x)の値が、先端から前記ドリル基体の長さ方向に沿ってドリルの直径Dのx倍の距離において漸次増加することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆ドリル。
  5. 前記配向制御層の層厚が、最もドリル先端に近い位置から、後方にかけて、0.2〜5.0μmの範囲で漸次増加することを満たす請求項1に記載の表面被覆ドリル。
  6. 前記中間層が、Tiの窒化物または炭化物、またはTiとAlとからなる複合窒化物、TiとAlとSiとからなる複合窒化物、CrとAlとからなる複合窒化物のうち、いずれかの単層または複数の層構造からなる積層構造を有し、層厚5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の表面被覆ドリル。
JP2010253616A 2010-11-12 2010-11-12 耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル Expired - Fee Related JP5672444B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010253616A JP5672444B2 (ja) 2010-11-12 2010-11-12 耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル
CN2011103569148A CN102528130A (zh) 2010-11-12 2011-11-11 耐磨性和切屑排出性优异的表面包覆钻头

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010253616A JP5672444B2 (ja) 2010-11-12 2010-11-12 耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2012101336A JP2012101336A (ja) 2012-05-31
JP5672444B2 true JP5672444B2 (ja) 2015-02-18

Family

ID=46336842

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010253616A Expired - Fee Related JP5672444B2 (ja) 2010-11-12 2010-11-12 耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP5672444B2 (ja)
CN (1) CN102528130A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20200141007A1 (en) * 2017-04-07 2020-05-07 Sandvik Intellectual Property Ab Coated cutting tool

Family Cites Families (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9001A (en) * 1852-06-08 Keflector-lamp
US6000A (en) * 1849-01-02 Abunah s
JPH03281773A (ja) * 1990-03-30 1991-12-12 Hitachi Ltd 表面処理法
JP3445899B2 (ja) * 1996-04-26 2003-09-08 ウンアクシス バルツェルス アクチェンゲゼルシャフト 表面被覆エンドミル
JP3122070B2 (ja) * 1997-10-17 2001-01-09 日本ピラー工業株式会社 摩擦摺動部材及びその製造方法
JP2003025114A (ja) * 2001-07-16 2003-01-29 Toshiba Tungaloy Co Ltd 酸化アルミニウム被覆工具
US7150925B2 (en) * 2001-10-30 2006-12-19 Mitsubishi Materials Kobe Tools Corporation Surface coated cemented carbide cutting tool having hard coating layer exhibiting excellent wear resistance in high speed machining
JP3844285B2 (ja) * 2001-10-30 2006-11-08 三菱マテリアル神戸ツールズ株式会社 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP4370966B2 (ja) * 2004-03-30 2009-11-25 三菱マテリアル株式会社 溝付き工具
EP1772217B1 (en) * 2004-07-29 2013-04-03 Kyocera Corporation Surface coated cutting tool
KR100996838B1 (ko) * 2005-03-28 2010-11-26 쿄세라 코포레이션 초경합금 및 절삭 공구
SE529023C2 (sv) * 2005-06-17 2007-04-10 Sandvik Intellectual Property Belagt skär av hårdmetall
KR100832868B1 (ko) * 2006-06-22 2008-05-28 한국야금 주식회사 절삭공구/내마모성 공구용 표면 피복 부재용 박막
JP5116777B2 (ja) * 2008-01-29 2013-01-09 京セラ株式会社 切削工具
JP2009285760A (ja) * 2008-05-28 2009-12-10 Kyocera Corp 切削工具

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20200141007A1 (en) * 2017-04-07 2020-05-07 Sandvik Intellectual Property Ab Coated cutting tool

Also Published As

Publication number Publication date
JP2012101336A (ja) 2012-05-31
CN102528130A (zh) 2012-07-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5036338B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5035956B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5344129B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5207109B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5590331B2 (ja) 耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル
JP5182501B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009090395A (ja) 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5560513B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5672444B2 (ja) 耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル
JP5682217B2 (ja) 耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル
JP2015066644A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性と耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP5240665B2 (ja) すぐれた切屑排出性を示す表面被覆切削工具
JP5590332B2 (ja) 耐摩耗性と切屑排出性に優れた表面被覆ドリル
JP5099587B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP2007307691A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009090396A (ja) 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP2004338058A (ja) 高速重切削条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP2013116551A (ja) 耐酸化性と耐摩耗性にすぐれた表面被覆工具
JP2015104757A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性と耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具
JP4697389B2 (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP5892331B2 (ja) 潤滑特性と耐摩耗性にすぐれた表面被覆ドリル
JP2011194536A (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5240498B2 (ja) 硬質被覆層がすぐれた耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具
JP5229487B2 (ja) すぐれた切屑排出性を示す表面被覆切削工具
JP2004074378A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130927

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140530

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140530

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140626

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141126

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141209

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5672444

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees